説明

配線導体の形成方法

【課題】配線導体が大きく細ること、および配線導体の絶縁層と接する底面が両側から大きくえぐれることを抑制し、それにより微細な配線導体を高密度で形成することが可能な配線導体の形成方法を提供すること。
【解決手段】無電解銅めっき層2および電解銅めっき層4を、配線導体5間の無電解銅めっき層2が消失するまでエッチング液でエッチング処理することにより電解銅めっき層4およびその下の無電解銅めっき層2から成る配線導体を形成するエッチング工程において、無電解銅めっき層2に対するエッチング速度が電解銅めっき層4に対するエッチング速度の1.6倍以下である第1のエッチング液を用いてエッチング処理した後、無電解銅めっき層2に対するエッチング速度が電解銅めっき層4に対するエッチング速度の2.4倍以上である第2のエッチング液を用いてエッチング処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線導体の形成方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
従来、例えば配線基板における微細な配線導体を形成する方法としてセミアディティブ法が知られている。セミアディティブ法は、図3(a)に示すように、例えば配線導体が形成される絶縁層11の表面に無電解銅めっき層12を0.1〜1.5μm程度の厚みに被着させ、次に図3(b)に示すように、無電解銅めっき層12の表面に配線導体のパターンに対応した開口13aを有するめっきレジスト層13を形成し、次に図3(c)に示すように、めっきレジスト層13の開口13a内に露出する無電解銅めっき層12上に配線導体に対応したパターンの電解銅めっき層14を5〜20μm程度の厚みに被着させ、次に図4(d)に示すように、めっきレジスト層13を無電解銅めっき層12上から除去した後、図4(e)に示すように、電解銅めっき層14のパターンから露出する無電解銅めっき層12を、電解銅めっき層14のパターン間の無電解銅めっき層12が消失するまで電解銅めっき層14とともにエッチングすることにより、残った電解銅めっき層14およびその下の無電解銅めっき層12から成る配線導体15を形成する方法である。なお、無電解銅めっき層12および電解銅めっき層14をエッチングするエッチング液としては、例えば過酸化水素および硫酸を含むエッチング液が用いられており、このエッチング液は一般的に電解めっき層14に対するエッチング速度よりも無電解銅めっき層12に対するエッチング速度が大きいものが多い。
【0003】
ところが、このセミアディティブ法によると、電解銅めっき層14のパターン間に露出する無電解銅めっき層12をエッチングする際に電解銅めっき層14も同時にエッチングされてしまうので形成される配線導体15は、その分だけパターン幅が細ってしまう。そこで、エッチングにより配線導体15のパターン幅が細る分を考慮してめっきレジスト層13の開口13aの幅を配線導体15のでき上がりのパターン幅よりも1〜2μm程度広めに設計する必要がある。このような設計を行なった場合、例えば幅が10μm程度の配線パターンが隣接間隔10μm程度で配置される配線導体15を形成しようとすると、めっきレジスト層13における隣接する開口13a間の幅が8〜9μmと極端に狭くなってしまい、その部分でめっきレジスト層13が剥れたり倒れたりしやすくなる。このようなめっきレジスト層13の剥れや倒れは、無電解銅めっき層12上の電解銅めっき層14の正常な被着を阻害し、その結果、配線導体15に断線や短絡を引き起こしてしまう。
【0004】
ところで、上述したように電解銅めっき層14に対するエッチング速度と無電解銅めっき層12に対するエッチング速度が違うエッチング液を用いて電解銅めっき層14および無電解銅めっき層12をエッチングして配線導体15を形成する場合、無電解銅めっき層12に対するエッチング速度が電解銅めっき層14に対するエッチング速度よりも速ければ速いほど、電解銅めっき層14をエッチングする量が少なくなるので、形成される配線導体15のパターン幅の細りを低減することができる。したがって、その分だけめっきレジスト層13の開口13a間の幅を広くできるので、細い配線パターンが狭い間隔で隣接して形成される場合であってもめっきレジスト層13における開口13a間の幅を確保してその部分におけるめっきレジスト層13の剥れや倒れを有効に防止できる。
【0005】
しかしながら、例えば無電解銅めっき層12に対するエッチング速度が電解銅めっき層14に対するエッチング速度よりも2.5倍以上速いエッチング液を用いて電解銅めっき層14および無電解銅めっき層12をエッチングして配線導体15を形成した場合、図5(a)に示すように、エッチングの初期から無電解銅めっき層12と電解銅めっき層14との界面に沿って無電解銅めっき層12に対する横方向へのエッチングが大きく進み、その結果、図5(b)に示すように、配線導体15の絶縁層11と接する底面が両側から大きくえぐれて配線導体15の絶縁層11に対する接合強度が弱くなり、配線導体15が絶縁層11から剥れてしまい易くなるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−314233
【特許文献2】特開2003−338676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、セミアディティブ法において配線導体を形成する際に、配線導体形成のためのエッチングにより配線導体が大きく細ること、および配線導体の絶縁層と接する底面が両側から大きくえぐれることを抑制し、それにより微細な配線導体を高密度で形成することが可能な配線導体の形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線導体の形成方法は、配線導体が形成される絶縁層の表面に無電解銅めっき層を被着させる無電解銅めっき工程と、無電解銅めっき層の表面に配線導体のパターンに対応する開口を有するめっきレジスト層を被着させるレジスト形成工程と、開口内の無電解銅めっき層上に電解銅めっき層を配線導体に対応するパターンに被着させる電解銅めっき工程と、無電解銅めっき層上からめっきレジスト層を剥離するレジスト除去工程と、無電解銅めっき層および電解銅めっき層を、配線導体間の無電解銅めっき層が消失するまでエッチング液でエッチング処理することにより電解銅めっき層およびその下の無電解銅めっき層から成る配線導体を形成するエッチング工程と、を行なう配線基板の製造方法であって、エッチング工程は、無電解銅めっき層に対するエッチング速度が電解銅めっき層に対するエッチング速度の1.6倍以下である第1のエッチング液を用いてエッチング処理した後、前記無電解銅めっき層に対するエッチング速度が電解銅めっき層に対するエッチング速度の2.4倍以上である第2のエッチング液を用いてエッチング処理することにより行なわれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の配線導体の形成方法によれば、まず無電解銅めっき層に対するエッチング速度が電解銅めっき層に対するエッチング速度の1.6倍以下である第1のエッチング液を用いてエッチング処理することにより、エッチングの初期に無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面に沿って無電解銅めっき層に対する横方向へのエッチングが大きく進むことを抑制しつつ主として厚み方向に大きくエッチングして無電解銅めっき層を薄くし、しる後、前記無電解銅めっき層に対するエッチング速度が電解銅めっき層に対するエッチング速度の2.4倍以上である第2のエッチング液を用いて配線導体間の残余の無電解銅めっき層が消失するまでエッチング処理することにより、配線導体が大きく細ることおよび配線導体の絶縁層と接する底面が両側から大きくえぐれることを抑制し、それにより微細な配線導体を高密度で形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の配線導体の形成方法の実施形態の一例を説明するための工程毎の模式断面図である。
【図2】(d)〜(f)は、本発明の配線導体の形成方法の実施形態の一例を説明するための工程毎の模式断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、従来の配線導体の形成方法を説明するための工程毎の模式断面図である。
【図4】(d),(e)は、従来の配線導体の形成方法を説明するための工程毎の模式断面図である。
【図5】(a),(b)は、従来の配線導体の形成方法を説明するための要部拡大断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
次に、本発明の配線導体の形成方法における実施形態の一例を添付の図を基に説明する。まず、図1(a)に示すように、絶縁層1の表面に無電解銅めっき層2を被着させる。無電解銅めっき層2の厚みは0.5〜1.5μmの範囲が好ましい。無電解銅めっき層2の厚みが0.5μm未満の場合、無電解銅めっき層2の表面に後述する電解銅めっき層4を良好に被着させることが困難となる傾向にあり、1.5μmを超えると、無電解銅めっき層2をエッチングする際にそのエッチングに長時間を要することになる。なお、無電解銅めっき層2を被着させるには、周知の無電解銅めっき方法を採用すればよい。
【0012】
次に、図1(b)に示すように、無電解銅めっき層2の表面にめっきレジスト層3を形成する。めっきレジスト層3は、後述する配線導体5のパターンに対応した開口3aを有しており、厚みは10〜30μm程度である。このようなめっきレジスト層3は、感光性ドライフィルムレジストを無電解銅めっき層2の表面に貼着するとともに開口3aを有する所定のパターンに露光および現像することにより形成される。
【0013】
次に、図1(c)に示すように、めっきレジスト層3の開口3a内に露出する無電解銅めっき層2の表面に厚みが5〜20μmの電解銅めっき層4を後述する配線導体5に対応したパターンに被着させる。電解銅めっき層4を被着させるには、周知の電解銅めっき法を採用すればよい。
【0014】
次に、図2(d)に示すように、めっきレジスト層3を剥離して除去する。めっきレジスト層3の剥離には、例えば水酸化ナトリウム等を含むアルカリ系の剥離液を用いればよい。
【0015】
次に、図2(e)に示すように、無電解銅めっき層2および電解銅めっき層4の表面を無電解銅めっき層2の厚みが30〜70%に減るまで第1のエッチング液によりエッチングする。この第1のエッチング液としては、無電解銅めっき層2に対するエッチング速度が電解銅めっき層4に対するエッチング速度の1.6倍以下のエッチング液を用いる。このような第1のエッチング液を用いてエッチングすることにより、エッチングの初期において無電解銅めっき層2と電解銅めっき層4との界面に沿って無電解銅めっき層2が横方向へ大きくエッチングされることを防止しつつ、無電解銅めっき層2を厚み方向に大きくエッチングすることができる。なお、第1のエッチング液として無電解銅めっき層2に対するエッチング速度が電解銅めっき層4に対するエッチング速度の1.6倍を超えるエッチング液を用いてエッチングすると、無電解銅めっき層2と電解銅めっき層4との界面に沿って無電解銅めっき層2が横方向に大きくエッチングされてしまい、その結果、後述する第2のエッチング液でエッチングして配線導体5を形成した場合に、配線導体5の絶縁層1と接する底面が大きくえぐれてしまう。したがって、第1のエッチング液の無電解銅めっき層2に対するエッチング速度は電解銅めっき層4に対するエッチング速度の1.6倍以下であることが好ましい。
【0016】
次に、図2(f)に示すように、無電解銅めっき層2および電解銅めっき層4の表面を電解銅めっき層4のパターン間の無電解銅めっき層2が消失するまで第2のエッチング液によりエッチングして配線導体5を形成する。この第2のエッチング液としては、無電解銅めっき層2に対するエッチング速度が電解銅めっき層4に対するエッチング速度の2.4倍以上のエッチング液を用いる。このような第2のエッチング液を用いてエッチングすることにより、配線導体5の細りを抑制しつつ電解銅めっき層4の間の残余の無電解銅めっき層をエッチング除去することが可能となる。このとき、エッチングの初期において無電解銅めっき層2と電解銅めっき層4との界面に沿って無電解銅めっき層2が横方向へ大きくエッチングされていないことから、配線導体5の絶縁層1と接する底面が両側から大きくえぐれることを抑制し、それにより微細な配線導体5を高密度で形成することが可能となる。なお、、第2のエッチング液として無電解銅めっき層2に対するエッチング速度が電解銅めっき層4に対するエッチング速度の2.4倍未満のエッチング液を用いてエッチングすると、無電解銅めっき層2とともに電解銅めっき層4も大きくエッチングされるので配線導体5が大きく細ってしまう。したがって、第2のエッチング液の無電解銅めっき層2に対するエッチング速度は電解銅めっき層4に対するエッチング速度の2.4倍以上であることが好ましい。
【実施例1】
【0017】
次に本発明の実施例を説明する。先ず、エポキシ樹脂にシリカフィラーを分散させて成る絶縁層の表面に厚みが1.0μmの無電解銅めっき層を被着させた。次に無電解銅めっき層の表面に厚みが25μmのめっきレジスト層を幅が17μmの配線導体のパターンに対応する開口を有するように形成した。次にめっきレジスト層の開口内に露出する無電解銅めっき層上に厚みが15μmの電解銅めっき層を幅が17μm配線導体に対応するパターンに被着させた後、めっきレジスト層を剥離した。次に、無電解銅めっき層に対するエッチング速度が電解銅めっき層に対するエッチング速度の1.6倍である第1のエッチング液を用いて無電解銅めっき層の厚みが0.4μmとなるまでエッチングした後、無電解銅めっき層に対するエッチング速度が電解銅めっき層に対するエッチング速度の2.4倍である第2のエッチング液を用いて電解銅めっき層のパターン間の残余の無電解銅めっき層が消失するまでエッチングすることにより配線導体を形成した。このときの配線導体の幅は、16.3μmであり、約0.7μmの細りが発生した。また、配線導体の絶縁層と接する底面のえぐれの幅は片側で約1.7μmであった。また、比較のために上述した第1のエッチング液を単独で用いた場合と、第2のエッチング液を単独で用いた場合について配線導体の細りおよびえぐれについて測定した。第1のエッチング液を単独で用いてエッチングした場合、配線導体の幅は15.7μmとなり、本発明の方法よりも大きな細りが発生した。また配線導体の絶縁層と接する底面のえぐれの幅は片側で約1.7μmであり、本発明の方法と同等であった。第2のエッチング液を単独で用いてエッチングした場合、配線導体の絶縁層と接する底面のえぐれが片側で約3μm程度と極めて大きなものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、配線基板や半導体装置における配線導体の形成方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 絶縁層
2 無電解銅めっき層
3 めっきレジスト層
3a 開口
4 電解銅めっき層
5 配線導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線導体が形成される絶縁層の表面に無電解銅めっき層を被着させる無電解銅めっき工程と、前記無電解銅めっき層の表面に前記配線導体のパターンに対応する開口を有するめっきレジスト層を被着させるレジスト形成工程と、前記開口内の前記無電解銅めっき層上に電解銅めっき層を前記配線導に対応するパターンに被着させる電解銅めっき工程と、前記無電解銅めっき層上から前記めっきレジスト層を剥離するレジスト除去工程と、前記無電解銅めっき層および電解銅めっき層を、前記配線導体間の前記無電解銅めっき層が消失するまでエッチング液でエッチング処理することにより前記電解銅めっき層およびその下の前記無電解銅めっき層から成る前記配線導体を形成するエッチング工程と、を行なう配線基板の製造方法であって、前記エッチング工程は、前記無電解銅めっき層に対するエッチング速度が前記電解銅めっき層に対するエッチング速度の1.6倍以下である第1のエッチング液を用いてエッチング処理した後、前記無電解銅めっき層に対するエッチング速度が前記電解銅めっき層に対するエッチング速度の2.4倍以上である第2のエッチング液を用いてエッチング処理することにより行なわれることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−181640(P2011−181640A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43617(P2010−43617)
【出願日】平成22年2月27日(2010.2.27)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】