説明

配線板形成用積層体、配線板及び半導体装置の製造方法

【課題】熱伝導性に優れた配線板を形成可能で加工性に優れる配線板形成用積層体、これを用いて製造される配線板、及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】配線板形成用積層体を、回路形成用の第一の金属層、絶縁層及び第二の金属層がこの順に積層された配線板用材料と、前記配線板用材料の第二の金属層上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けられ、耐熱性樹脂層を有するセパレータと、を含んで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板形成用積層体、配線板及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子としてLEDを実装する配線板は液晶ディスプレイのバックライトなどの用途で、広く用いられている。このような配線板にはLEDが発生する熱を効率的に外部に逃がすことが求められるので、回路層とは反対側の面(以下、「裏面」ともいう)にアルミ、銅などの金属板を配したいわゆる金属ベース配線板が使用されることが多い。通常、金属ベース配線板は、熱を遅滞なく伝導して取り除けるように、金属等からなる筐体に両面粘着テープを介して貼り付けることが行われている。
金属ベース配線板に使用される金属板は配線板の部材としては、比較的高価であり、金属板の厚みが厚くなると、材料費が大きくなるほか、重量増、熱抵抗の増大などの課題が多くなる傾向にある。そのため、薄い金属板を使用することが軽量化、熱抵抗の低減、コスト削減等の点で好ましい。しかし、金属板が薄いと、フレキシブルになりすぎるため、回路加工、組立時の作業性が悪化する傾向にある。そのため、300μm以下の金属板を使用することはほとんど行われていない。
またこのような薄い配線板では、回路加工時に裏面の金属箔を保護するために、レジスト、保護フィルムなどを設置することがある。この場合、回路加工後にこれらを剥離する際に、配線板が変形してしまうなどの課題があった。このような変形を防止するために、スティフナなどの支持体あるいは裏打ち材が付設される場合がある。しかし、これらはコストアップの原因になっていた。
【0003】
上記に関連して、裏面に金属板を有さない配線板の裏面に、粘着剤層と、金属箔又は高分子材料を積層した金属箔のセパレータとを設置する技術が開示され、耐リフロー性、耐洗浄性に優れるとされている(例えば、特許文献1参照)。また同様にセパレータとして、塩化ビニリデン系共重合体膜で被覆した紙を用いる技術(例えば、特許文献2参照)やセラミックスと紙からなる複合材料を用いる技術(例えば、特許文献3参照)が開示され、耐リフロー性、耐洗浄性、打ち抜き性に優れるとされている。
さらにセパレータとしてガラスやセラミックスを用いる技術が開示され、耐熱性や耐エッチング性に優れるとされている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−64919号公報
【特許文献2】特開平8−222818号公報
【特許文献3】特許第4480814号公報
【特許文献4】特許第4178869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の技術では、形成される配線板の熱伝導性や加工性が十分とはいえない場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、熱伝導性に優れる配線板を形成可能で加工性に優れる配線板形成用積層体、これを用いて製造される配線板、及び半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 回路形成用の第一の金属層、絶縁層及び第二の金属層がこの順に積層された配線板用材料と、前記配線板用材料の第二の金属層上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けられ、耐熱性樹脂層を有するセパレータと、を含む配線板形成用積層体。
【0007】
<2> 前記配線板用材料の平均厚さが50μm以上500μm以下である、前記<1>に記載の配線板形成用積層体。
【0008】
<3> 前記耐熱性樹脂層は、250℃で1分間の熱処理後の収縮率が長さ基準で3%以下である耐熱性樹脂を含む、前記<1>又は<2>に記載の配線板形成用積層体。
【0009】
<4> 前記セパレータは、アルミニウム箔及び銅箔からなる群より選ばれる少なくとも一方をさらに含む、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体。
【0010】
<5> 前記粘着剤層は、アクリル樹脂を含む、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体。
【0011】
<6> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体の回路形成用の第一の金属層に回路形成されてなる配線板。
【0012】
<7> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体の回路形成用の第一の金属層に回路を形成する工程と、形成された回路上にリフロー処理によって半導体素子を実装する工程と、前記セパレータを前記粘着剤層との界面で剥離して、前記粘着剤層上に筐体を貼付する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱伝導性に優れる配線板を形成可能で加工性に優れる配線板形成用積層体、これを用いて製造される配線板、及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
<配線板形成用積層体>
本発明の配線板形成用積層体は、回路形成用の第一の金属層、絶縁層及び第二の金属層がこの順に積層された配線板用材料と、前記配線板用材料の第二の金属層上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けられ、耐熱性樹脂層を有するセパレータと、を含んで構成される。また前記配線板形成用積層体は、必要に応じてその他の層を更に含んでいてもよい。
【0016】
配線板材料上に設けられた粘着剤層及びセパレータを有することで、配線板材料の取り扱い性に優れ、配線板材料自体の厚みをより薄くすることができ、熱伝導性がより向上する。また外形加工性が向上する。これは例えば、セパレータがスティフナ(補強材)として機能するためと考えることができる。さらに第二の金属層が粘着剤層及びセパレータで被覆されているため、通常用いられるエッチング処理によって第一の金属層に回路形成することができ、生産性が向上する。
またセパレータが耐熱性を有することから、形成された回路上にリフロー処理によって半導体素子等を実装する際の配線板の変形を抑制することができる。
さらに半導体素子等の実装に先立って粘着剤層が設けられていることで、配線板の第二の金属層と粘着剤層の密着性に優れ、配線板と筐体との熱伝導性により優れた半導体装置を生産性よく製造することができる。
【0017】
また配線板材料が回路形成用の第一の金属層に加えて、第二の金属層を有することで熱伝導性に優れる配線板を構成できる。また第二の金属層が粘着剤層及びセパレータで被覆されていることで、配線板形成用積層体を加工処理して半導体素子が実装された配線板を製造する際に第二の金属層が酸化等されることを抑制し、熱伝導性が低下することを抑制できる。
【0018】
[配線板材料]
配線板材料は、回路形成用の第一の金属層と、絶縁層と、第二の金属層とがこの順に積層され、必要に応じてその他の層をさらに含んで構成される。
第一の金属層は回路を形成可能な金属からなるものであれば特に制限はない。一般的には金属箔を用いて構成される。金属箔としては、銅、アルミ、鉄、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロム、モリブデン又はこれらの合金の箔が好適に用いられる。これらの中でも銅箔が好ましい。
第一の金属層の厚みは回路を形成可能である限り特に制限されない。例えば、熱伝導性、加工性及び軽量化の観点から、平均厚さが5μm以上500μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。第一の金属層の平均厚さは5点の厚さをマイクロメータ等を用いて測定し、その算術平均値として与えられる。また他の層の平均厚さについても同様である。
金属箔の絶縁層と接する面には、絶縁層との接着力を高めるために、化学的粗化、コロナ放電、サンディング、めっき、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等によって機械的又は化学的な処理が施されていてもよい。
第一の金属層は絶縁層の全面に設けられていても、一部の領域にのみ設けられていてもよい。
【0019】
第二の金属層は、絶縁層の第一の金属層が設けられた面とは反対側の面(以下、「裏面」ともいう)に設けられる。配線板材料が第二の金属層を有することで熱伝導性と加工性に優れる配線板を構成できる。
第二の金属層は一般的には金属箔を用いて構成される。第二の金属箔としては、第一の金属層における金属箔と同様のものを挙げることができ、銅箔が好適に用いられる。
第二の金属層の厚みは特に制限されないが、熱伝導性、加工性及び軽量化の観点から、平均厚さが50μm以上500μm以下であることが好ましく、70μm以上200μm以下であることがより好ましい。
第二の金属層を構成する金属箔の絶縁層と接する面には、絶縁層との接着力を高めるために、化学的粗化、コロナ放電、サンディング、めっき、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等によって機械的又は化学的な処理が施されていてもよい。
第二の金属層は絶縁層の全面に設けられていても、一部の領域にのみ設けられていてもよいが、熱伝導性と加工性の観点から、絶縁層の全面に設けられていることが好ましい。
【0020】
絶縁層は絶縁性の樹脂シートから構成されることが好ましい。絶縁層を構成する樹脂は特に制限されない。樹脂としては例えば、ポリイミド、ポリエステル等の高分子量樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、これらの混合物等を挙げることができる。また絶縁層は樹脂に加えて、各種フィラーをさらに含んでいてもよい。
絶縁層の厚みは特に制限されない。例えば、平均厚さを3μm以上200μm以下とすることができ、9μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0021】
配線板材料の厚みは特に制限されないが、熱伝導性と軽量化の観点から、平均厚さが50μm以上700μm以下であることが好ましく、50μm以上500μm以下であることがより好ましく、70μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
尚、配線板材料の平均厚さは、5点の厚さをマイクロメータ等を用いて測定し、その算術平均値として与えられる。
【0022】
前記配線板材料として具体的には、従来の芳香族ポリイミドのような非熱可塑性ポリイミドのフィルムを高分子絶縁フィルムとして用いた金属箔付フレキシブル基板、ポリイミドフィルム上に銅などの金属を蒸着やスパッタで成膜した配線板材料、熱成形可能な液晶ポリマーを使用した配線板材料などを挙げることができる。特に、耐熱性に優れる点で、特開2007−273829号公報、WO2007/049502号パンフレット、特開2007−168123号公報等に記載されているエポキシ樹脂やアクリル樹脂等を用いた接着剤を用いないフレキシブル基板又はフレキシブルプリント配線板を好ましく用いることができる。
【0023】
[粘着剤層]
配線板形成用積層体は、前記配線板材料における第二の金属層上に粘着剤層が設けられる。粘着剤層は粘着剤の少なくとも1種を含んで構成される。
粘着剤は、例えば、高分子量成分、及び必要に応じてタッキファイヤ等のその他添加物を含んで構成される。粘着剤を構成する高分子量成分として具体的には、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ブタジエンゴム、アクリルゴム、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、これらの混合物等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、耐熱性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とし、架橋剤により架橋された粘着剤が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種とこれらと共重合可能な不飽和モノマーを材料として構成される。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびそれらの混合物を意味する。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、スチレン等を挙げることができる。
【0026】
本発明に好適に用いられる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは30万〜120万であり、より好ましくは40万〜80万である。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が30万以上であると、通常の架橋剤配合量を添加した場合にも、粘着剤の凝集力が十分に得られ、良好な粘着特性が得られる。また重量平均分子量が120万以下であると良好な粘着特性が得られる。
尚、アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0027】
架橋剤としては特に制限されない。例えば、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、金属キレートなどが挙げられる。架橋剤の含有率としては例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に対して1質量%〜10質量%であることが好ましく、2質量%〜5質量%であることがより好ましい。
また粘着剤は、さらに粘着付与樹脂、老化防止剤、充填剤など各種添加剤を含んでいてもよい。
【0028】
粘着剤層の膜厚は特に制限されない。例えば平均厚さで100μm以下とすることができる。熱伝導性の観点から、平均厚さが1μm〜100μmであることが好ましく、3μm〜80μmであることがより好ましく、5μm〜70μmであることがさらに好ましい。
粘着剤層の平均厚さが1μm以上であると、十分な粘着性が得られる傾向があり、回路加工時のエッチング工程で、第二の金属層を適切に保護することができる。また100μm以下であると、良好な熱伝導性が得られる傾向があり、さらに生産性に優れる。
【0029】
[セパレータ]
セパレータは、前記粘着剤層上に設けられるものであり、少なくとも耐熱性樹脂層を有し、必要に応じてその他の層を含んで構成される。前記セパレータは、耐熱性樹脂層からなるものであってもよく、またその他の層(好ましくは基材)を含み、その他の層の一方の面若しくは両面に耐熱性樹脂層を有していてもよい。セパレータがその他の層を含む場合、前記粘着剤層に対向する面とは反対側の面上に耐熱性樹脂層を少なくとも有することが好ましく、その他の層の両面に耐熱性樹脂層を有することがより好ましい。
【0030】
ここで耐熱性とは250℃の雰囲気下で1分間熱処理した後の収縮率が、長さ基準で3%以下であることを意味する。具体的には、以下のようにして収縮率が算出される。
長さ10cm×10cm、厚さ20μm〜100μmのシート状に加工した評価用の樹脂シートを用意する。評価用の樹脂シートについて25℃で対角線の長さを測定する。次いで250℃の雰囲気下で1分間熱処理した後、室温で放冷した評価用の樹脂シートについて25℃で対角線の長さを測定し、熱処理後の対角線の長さを熱処理前の対角線の長さで除して収縮率を算出する。
【0031】
耐熱性を有する樹脂として具体的には、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を挙げることができる。中でも低収縮性の観点から、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0032】
ポリイミド樹脂は、耐熱性樹脂として通常用いられるポリイミド樹脂から適宜選択して用いることができる。またエポキシ樹脂は、耐熱性樹脂として通常用いられるエポキシ樹脂から適宜選択して用いることができる。さらにポリアミドイミド樹脂は、耐熱性樹脂として通常用いられるポリアミドイミド樹脂から適宜選択して用いることができる。
【0033】
セパレータにおける耐熱性樹脂層の厚みは、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性及び加工性の観点から、平均厚みが0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.3μm〜7μmであることがより好ましい。
【0034】
セパレータは耐熱性樹脂層に加えて、その他の層として基材を含むものであることが好ましい。基材を含むことで、加工性や取り扱い性がより向上する。
セパレータの基材としては特に制限はないが、はんだリフロー工程で著しい変形や変質が起こらない耐熱性があるものが好ましい。具体的には、紙、不織布、金属箔等を挙げることができる。中でも、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐水性の観点から、アルミニウム箔、銅箔、ポリイミド樹脂シート、及びポリエチレンナフタレート樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1種の基材であることが好ましく、アルミニウム箔、及び銅箔からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属箔であることがより好ましい。
【0035】
セパレータにおける基材の厚みは特に制限されないが、加工性や取り扱い性の観点から平均厚さが5μm〜200μmであることが好ましく、20μm〜60μmであることがより好ましい。
【0036】
セパレータが基材と耐熱性樹脂層とから構成される場合、耐熱性樹脂層は、少なくとも基材の粘着剤層に対向する面とは反対側の面上に設けられていることが好ましく、基材の両面に耐熱性樹脂層が設けられていることがより好ましい。本発明においては、耐食性及び耐熱性の観点から、片面に設けられていることもまた好ましい。
【0037】
本発明におけるセパレータは、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性及び加工性の観点から、アルミ箔、銅箔、ポリイミド樹脂シート、及びポリエチレンナフタレート樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1種の基材と、該基材上に設けられた、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である耐熱性樹脂層とを有することが好ましく、アルミ箔、及び銅箔からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属箔である基材と、該基材上に設けられた、ポリイミド樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である耐熱性樹脂層とを有することがより好ましい。
【0038】
セパレータの粘着剤層に対向する面は、粘着剤層に対する剥離性を有していることが好ましい。これにより配線板を筐体に貼付する工程をより効率的に実施することができる。
セパレータの粘着剤層に対向する面に剥離性を付与する方法は特に制限されない。例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で表面処理する方法を挙げることができる。
【0039】
<配線板形成用積層体の製造方法>
配線板形成用積層体の製造方法は、回路形成用の第一の金属層、絶縁層及び第二の金属層がこの順に積層された配線板用材料の第二の金属層上に、粘着剤層と、耐熱性樹脂層を有するセパレータとをこの順に積層可能であれば特に制限されない。
例えば、配線板材料の第二の金属層上に粘着剤層を設ける工程と、前記粘着剤層上にセパレータを積層する工程とを含む第一の製造方法、セパレータ上に粘着剤層を設ける工程と、セパレータ上に設けられた粘着剤層が、配線板材料の第二の金属層と接するように配線板材料上に粘着剤層が設けられたセパレータを積層する工程とを含む第二の製造方法等を挙げることができる。中でも、生産性の観点から、第二の製造方法であることが好ましい。
【0040】
セパレータ上に粘着剤層を設ける工程としては、粘着剤層形成に通常用いられる方法を特に制限なく適用することができる。例えば、セパレータ上に粘着剤を含む粘着剤層用組成物を塗布又はラミネートする方法等を挙げることができる。また、別の基材上に粘着剤層を形成した後、別の基材上に形成された粘着剤層をセパレータ上に転写してもよい。別の基材を用いる場合、別の基材としては例えば、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムなどが使用される。
セパレータの粘着剤層が設けられる面は、離型剤で表面処理されていることが好ましい。用いられる離型剤については既述の通りである。
【0041】
配線板材料の第二の金属層と接するように配線板材料上に、粘着剤層が設けられたセパレータを積層する工程としては、例えば、プレス方法、ホットロールラミネート方法等が挙げられるが、連続的に製造でき、効率が良い点でホットロールラミネート方法が好ましい。
プレス方法、ホットロールラミネート方法等は当該技術分野で通常行なわれる方法から適宜選択して行うことができる。例えば、ホットロールラミネート方法としては、シリコーンゴム被覆ロールを備えたホットロールラミネータを用いて、20℃〜50℃、圧力0.1〜1MPaという条件で行うことができる。
【0042】
<半導体装置の製造方法>
本発明の半導体装置の製造方法は、前記配線板形成用積層体の回路形成用の第一の金属層に回路を形成する工程と、形成された回路上にリフロー処理によって半導体素子を実装する工程と、前記セパレータを前記粘着剤層との界面で剥離して、前記粘着剤層上に筐体を貼付する工程とを含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
前記配線板形成用積層体を用いることで、保護フィルム等の剥離、積層工程を設ける必要がなく生産性が向上する。またリフロー処理時に第二の金属層が粘着剤層とセパレータとで保護されているため、第二の金属層の熱抵抗の上昇を抑制でき、優れた放熱性を達成することができる。
【0043】
配線板形成用積層体の回路形成用の第一の金属層に回路を形成する工程は、配線板材料の金属層を回路加工するのに通常用いられる方法から適宜選択して行うことができる。例えば、印刷、フォトレジストフィルム等を使用して、第一の金属層上に回路形成用のレジストを所望の形状に形成する工程と、第一の金属層のレジストが形成されていない領域を、金属箔を腐食性の液でエッチングして除去する工程とを含む方法で回路を形成することができる。
本発明においては、第二の金属層が粘着剤層とセパレータとで保護されているため、第二の金属層がエッチングによってダメージを受けることなく、第一の金属層に回路を形成することができる。
さらに第一の金属層及び第二の金属層の厚みを薄くすること(例えば、30μm以上100μm以下)で、配線板形成用積層体の外周部に保護材を使用する必要がなくなり、より容易に回路加工ができる。
【0044】
形成された回路上にリフロー処理によって半導体素子を実装する工程においては、例えば、必要に応じて、ソルダーレジストを回路面に形成する工程や、配線板形成用積層体を必要な大きさに外形加工する工程を実施した後、半導体素子を回路上に配置し、リフロー処理によって半導体素子を回路上に実装する。このとき半導体素子以外のその他の部品を同時に実装してもよい。リフロー処理は、実装に使用するはんだ材料等に応じて適宜選択される通常用いられる条件で行われる。
本発明においては、セパレータの表面に耐熱性樹脂層を有することから、リフロー処理によって、260℃程度にまで加熱されても、第二の金属層の熱抵抗が上昇することを効果的に抑制することができる。
【0045】
回路上に半導体素子が実装された後、セパレータを粘着剤層との界面で剥離して、セパレータが除去された粘着剤層の面上に筐体を貼付することで、半導体装置を製造することができる。
セパレータを粘着剤層との界面で剥離する方法及び粘着剤層上に筐体を貼付する方法は、特に制限されず通常行なわれる方法から適宜選択することができる。
粘着剤層上に筐体を貼付する方法は、粘着剤層と筐体とを接触させ、実装された半導体素子等の部品以外の配線板の領域に圧力を加える方法であることが好ましい。加える圧力は特に制限されず粘着剤層の構成に応じて適宜選択される。
【0046】
従来の半導体装置の製造方法においては、一般に、両面に金属層を有する配線板材料の片面に保護フィルムを配置して回路加工した後、保護フィルムを剥離する。次いでリフロー処理により半導体素子を実装した後、半導体素子の実装面とは反対側に粘着剤層とセパレータを積層する。次いでセパレータを剥離して粘着剤層上に筐体を貼付する。
このように積層、剥離の工程が、本発明の半導体装置の製造方法よりも多くなるため、工程が煩雑になる。また、リフロー処理時に回路加工されていない金属面が酸化し、熱抵抗が悪化する場合があるが、本発明においてはリフロー処理時においても回路加工されていない金属面が保護されているため、熱抵抗の上昇を抑制することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
日立化成工業(株)製のポリイミド基板MCF−5000I(平均厚み150μmの配線板材料、銅箔平均厚み35μm、絶縁層平均厚み15μm、銅箔平均厚み100μmの3層構造)の100μm厚の銅箔面に、両面セパレータ付き両面粘着テープ(セパレータ:片面に5μmのエポキシ樹脂層が設けられた耐熱性樹脂被覆アルミ箔、平均厚み35μm、エポキシ樹脂の収縮率0.1%;粘着剤層:アクリル系粘着剤、平均厚み50μm)の片面のセパレータを剥離した後、ホットロールラミネータ(ラミーコーポレーション社製HOTDOG LMP−350EX)を用いて、温度25℃、圧力0.3MPaの条件で貼り付けて、配線板形成用積層体を得た。
【0049】
尚、セパレータを構成する耐熱性樹脂の収縮率は以下のようにして測定した。厚さ50μの耐熱性樹脂フィルムを用意し、これを10cm×10cmに切断して対角線の長さを25℃で測定した。次いで250℃のオーブン中に1分間熱処理した後、室温で放冷した。熱処理後の耐熱性樹脂フィルムについて対角線の長さを測定し、これを熱処理前の対角線の長さで除して収縮率を算出した。
【0050】
得られた配線板形成用積層体を用いて、35μm厚の銅箔面上にエッチングレジストを設けた後、銅箔を塩化鉄水溶液中で腐食、溶解して、回路加工した。その後、ソルダーレジストを所定箇所に印刷して、150℃で2時間硬化処理した。その後、幅5mm、長さ400mmに外形加工して、回路が形成された面とは反対側の面上に粘着剤層とセパレータとが積層された配線板を得た。
【0051】
得られた配線板の回路上に、LEDチップ及びコネクタを配置した後、リフロー処理(温度265℃)によってLEDチップ及びコネクタをはんだで実装した。
その後、セパレータを剥離し、露出した粘着剤層をアルミ筐体(大きさ10mm×430mm×2mm)に貼付して半導体装置を得た。
尚、貼付時にはLEDチップ及びコネクタが実装されていない配線板部分に圧力を加えて固定した。
得られた半導体装置の通電時のLEDチップの表面温度を測定したところ、80℃であった。
【0052】
<実施例2>
実施例1において、セパレータとして:片面に5μmのポリイミド樹脂層(ポリイミド樹脂の収縮率0.1%)が設けられた耐熱性樹脂被覆アルミ箔を用いたこと以外は、実施例1と同様にして半導体装置を得た。
得られた半導体装置の通電時のLEDチップの表面温度を測定したところ、80℃であった。
【0053】
<比較例1>
日立化成工業(株)製のポリイミド基板MCF−5000I(平均厚み150μmの配線板材料、銅箔平均厚み35μm、絶縁層平均厚み15μm、銅箔平均厚み100μmの3層構造)の100μm厚の銅箔面に、保護フィルム(片面に粘着剤層(平均厚み50μm)が設けられた非耐熱性のポリエチレンフィルム(平均厚み50μm))を貼り付けた。
ポリエチレンフィルムの貼り付け時にポリエチレンフィルムに引っ張り張力が発生したため、基板にそりが生じ、その後のプロセスに通せなかった。
【0054】
<比較例2>
日立化成工業(株)製のポリイミド基板MCF−5000I(平均厚み150μmの配線板材料、銅箔平均厚み35μm、絶縁層平均厚み15μm、銅箔平均厚み100μmの3層構造)の100μm厚の銅箔面に、保護フィルム(片面に粘着剤層(平均厚み50μm)が設けられた非耐熱性のポリエチレンテレフタレートフィルム(平均厚み50μm、収縮率20%))を貼り付けて、配線板形成用積層体を得た。
【0055】
その後、35μm厚の銅箔面上にエッチングレジストを設けた後、銅箔を塩化鉄水溶液中で腐食、溶解して、回路加工した。その後、ソルダーレジストを所定箇所に印刷して、150℃で2時間硬化処理した。その後、幅5mm、長さ400mmに外形加工して、回路が形成された面とは反対側の面上に粘着剤層とポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層された配線板を得た。
【0056】
得られた配線板の回路上に、LEDチップ及びコネクタを配置した後、リフロー処理(温度265℃)によってLEDチップ及びコネクタをはんだで実装した。
その際、ポリエチレンテレフタレートフィルムが熱で収縮したため、基板が変形し、LEDチップが所定位置に実装できなかった。
【0057】
<比較例3>
日立化成工業(株)製のポリイミド基板MCF−5000I(平均厚み150μmの配線板材料、銅箔平均厚み35μm、絶縁層平均厚み15μm、銅箔平均厚み厚100μmの3層構造)の100μm厚の銅箔面に、保護フィルム(片面に粘着剤層(平均厚み50μm)が設けられた非耐熱性のポリエチレンテレフタレートフィルム(平均厚み50μm、収縮率20%))を貼り付けて、配線板形成用積層体を得た。
【0058】
その後、35μm厚の銅箔面上にエッチングレジストを設けた後、銅箔を塩化鉄水溶液中で腐食、溶解して、回路加工した。その後、ソルダーレジストを所定箇所に印刷して、150℃で2時間硬化処理した。保護フィルムを剥離した後、幅5mm、長さ400mmに外形加工して、配線板を得た。
【0059】
得られた配線板の回路上に、LEDチップ及びコネクタを配置した後、リフロー処理によってLEDチップ及びコネクタをはんだで実装した。
その後、両面セパレータ付き粘着テープ(セパレータ:ポリエチレンテレフタレートフィルム;粘着剤層:アクリル系粘着剤、平均厚み50μm)の片面のセパレータを剥離した後、LEDチップが実装された配線板の実装面とは反対側の面上に粘着テープを貼り付けて。粘着テープの貼り付け時にはLEDチップが実装されていない配線板部分に圧力を加えて貼り付けたため、配線板の銅箔面と粘着テープの間に部分的に空隙が生じた。
次いで粘着テープのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、露出した粘着剤層をアルミ筐体に貼付して半導体装置を得た。
尚、貼付時にはLEDチップ及びコネクタが実装されていない基板部分に圧力を加えて固定した。
得られた半導体装置の通電時のLEDチップの表面温度を測定したところ、88℃であった。
【0060】
以上の結果から、本発明の配線板形成用積層体は加工性に優れ、優れた熱伝導性を有する配線板を形成可能であることが分かる。また本発明の半導体装置の製造方法によれば、熱伝導性に優れる半導体装置を、効率よく製造できることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成用の第一の金属層、絶縁層及び第二の金属層がこの順に積層された配線板用材料と、
前記配線板用材料の第二の金属層上に設けられた粘着剤層と、
前記粘着剤層上に設けられ、耐熱性樹脂層を有するセパレータと、を含む配線板形成用積層体。
【請求項2】
前記配線板用材料の平均厚さが50μm以上500μm以下である、請求項1に記載の配線板形成用積層体。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂層は、250℃で1分間の熱処理後の収縮率が長さ基準で3%以下である耐熱性樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載の配線板形成用積層体。
【請求項4】
前記セパレータは、アルミニウム箔及び銅箔から選ばれる少なくとも一方を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体。
【請求項5】
前記粘着剤層は、アクリル樹脂を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体の回路形成用の第一の金属層に回路形成されてなる配線板。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の配線板形成用積層体の回路形成用の第一の金属層に回路を形成する工程と、
形成された回路上にリフロー処理によって半導体素子を実装する工程と、
前記セパレータを前記粘着剤層との界面で剥離して、前記粘着剤層上に筐体を貼付する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。


【公開番号】特開2012−164973(P2012−164973A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5539(P2012−5539)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】