説明

酵素に基づく時間・温度インジケーター

本発明は、固定化酵素とこの酵素の基質を含む、温度の経時変化を表示するための時間・温度インジケーターであって、酵素により触媒される基質の反応によって、時間及び温度依存的に反応生成物が生成し、そしてこの反応生成物の形成が、基質及び/又は生成物の濃度に関連する物理的特性をモニターすることにより検出できる、インジケーターに関する。本発明は更に、酵素触媒反応の工程を含む時間・温度の表示方法、酵素に基づく時間・温度インジケーターを包装材料又はラベルに印刷する方法、酵素に基づく時間・温度インジケーターの成分を含む印刷インク又は印刷インク濃縮液、並びに酵素に基づく時間・温度インジケーターを含む包装材料又はラベルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素に基づく時間・温度インジケーター、酵素触媒反応の工程を含む時間・温度表示の方法及び酵素に基づく時間・温度インジケーターを包装材料又はラベルに印刷する方法に関する。本発明は更に、酵素に基づく時間・温度インジケーターの成分を含む印刷インク又は印刷インク濃縮液、並びに酵素に基づく時間・温度インジケーターの少なくとも1つの成分を含む包装材料又はラベルに関する。
【0002】
腐敗しやすい材料が使用されるとき、その材料の寿命及び現在有効な状態を究明することがしばしば望ましい。包装への使用期限の適用で以前は充分だと考えられていたが、多数の製品に関して、このような手続きは今ではあまりに不正確で、充分に不正開封防止できない。詳細には、腐敗しやすい製品の状態は、一般に時間の関数であるだけでなく、他の変数(特に温度など)の関数でもある。
【0003】
US-B-3,999,946は、この問題に取り組み、腐敗しやすい製品に時間/温度履歴を与えるインジケーターを供給することを提案している。貯蔵の長さと製品の貯蔵温度により、元々無色のアセチレンに基づくインジケーターは、特徴的な不可逆的な色変化を示すため、ここから貯蔵した腐敗しやすい製品の品質が推察できる。
【0004】
US-B-5,053,339(WO 92/09870)は、インジケーターを含む層、障壁層(インジケーターには不透過性であり、かつアクチベーターには透過性である)及びアクチベーターを含む層よりなる、時間−温度インジケーター(TTI)を記載している。温度に応じて、アクチベーターは、障壁層を通って拡散してインジケーター層に入り、そこで色変化を起こす。
【0005】
WO 99/39197は、経時劣化及び温度感受性製品の包装のため、又は同製品への適用のための基体に関し、この基体は、基体のその領域に配置された、マトリックスとそこに埋め込まれた少なくとも1つの可逆的インジケーターとを含む平面の時間−温度インジケーターを有し、このインジケーターは、転移反応に基づくフォトクロミック特性を有する。印刷に使用されるTTIの性質と量は、腐敗しやすい製品に適合させることができる。更に、TTIは、溶液の形で、かつ/又は水性分散液の形で使用することができる。
【0006】
また、温度上昇につれて色変化を起こす、基質に及ぼす酵素の作用を利用する、先行技術において知られているアプローチが存在する。Hoffmanの米国特許2,553,369号は、デンプン−インドール複合体を加水分解することにより、その特徴的な色を消失させるためのデンプン消化酵素の使用を教示している。これらの成分は、水溶液に溶解される。クラーク(Clark)の米国特許2,671,028号のデバイスでは、基質に及ぼす酵素の作用が、温度の上昇によりpHの変化を起こし、それによってインジケーターで色変化を誘発する。これらの成分もまた水溶液中にある。英国特許1,366,797号では、凍結すると活性化されるデバイスは、半透性隔膜(これの透過性は、温度が上昇するにつれ上昇する)を通って拡散するアンモニアガスを発生させるために、水溶液中に適切な酵素及び基質を含む。このアンモニアは、隔膜の反対側のpHインジケーターと反応する。
【0007】
更に、US-B-4,926,762において、Klibanovらは、腐敗しやすい商品の輸送及び取扱い条件をモニターするために使用される、経時温度変化のインジケーターを教示している。更に具体的には、US-B-4,926,762の開示は、支持媒体としての固体有機溶媒又は溶媒の混合物に懸濁された、酵素とこの酵素の基質よりなる、温度変化インジケーターに関する。この有機溶媒又は溶媒混合物は、特定の温度で、又は特定の温度範囲内で融解するように選ばれる。このインジケーターの温度が、選ばれた温度又は臨界温度を超えて上昇すると、この固体有機溶媒支持体は融解して、酵素反応が起こり、更なる温度変動に対して安定である視覚的に検出できる生成物が得られる。
【0008】
WO 92/05415においてLivesleyもまた、例えば、製品寿命を表示するための時間・温度インジケーターであって、包装に直接具体化されているか、又は包装に適用されたラベルが、漸増する濃度で据え付けられた酵素により触媒されて、様々に着色された反応生成物(これの発色は、時間及び温度状態によりラベルに沿って又はラベルの周囲で進行する)を直接生成させる基質を有するインジケーターを記載している。このラベルは、以下の物理フォーマットを有する:(1)自己接着性紙ラベル(紙を酵素基質で浸漬し、次に種々の印刷法の1つを用いて酵素溶液をこのラベルに適用することにより、必要なグラフィックの単層ラベルが得られる)。次に完成したラベルは、食品包装に適用するまで、凍結保存することができる;(2)酵素基質で浸漬した自己接着性ラベル、及び必要な酵素パターンで印刷した透明自己接着性積層ラベル(2つのラベル層の積層により、酵素反応が活性化する);(3)酵素基質を含む紙ラベルを、製造工程で製品包装に積層し、次に酵素溶液を刷り重ねることができる;並びに(4)酵素基質を、これが包装材料に直接印刷されるラベルを構成するように、インク配合物に直接組み込み、そして次に酵素溶液を、第2のインク配合物を用いて、後の好都合な時点で基質パッチに刷り重ねることができる。
【0009】
しかし、酵素を使用することの重大な不都合は、これらが多くの化合物に比較して、高価で比較的不安定である(酵素が正常に機能する水性媒体中で使用されるときでさえ)という事実から生じる。更に、酵素は、商業的に合理的な期間(数ヶ月〜数年)、冷凍(−80℃〜液体N2温度)、又は適切なイオン強度、pHなどの水性溶媒中での維持に頼ることなく、その活性と機能的完全性を保持するように貯蔵するのが難しい。先行技術における酵素に基づく時間・温度インジケーターは、液体溶液の均一系フォーマットで酵素反応を実施するが、ここでイオン強度、緩衝液、金属イオンの濃度のような条件は、反応の要件により決定される。溶液中の酵素を数日〜数週間、安定に保持するのに必要な、グリセロール、キレート形成試薬などのような安定化剤の存在は、一般に酵素の反応性を妨げるか、又は少なくとも遅らせる。
【0010】
よって、酵素反応に必要な酵素の量を、できるだけ低く保持でき、そしてこの酵素は、不活化及び/又はタンパク質分解を回避するやり方で、TTIが活性化される前後に貯蔵及び取扱いができる、酵素に基づく時間・温度インジケーター(TTI)に対するニーズが存在する。よって、先行技術から出発して、本発明の根底にある問題は、比較的に安価であり、かつ取扱いが簡単であり、そしてラベル付けされた製品の品質が正確に決定できるようにする、酵素に基づく時間・温度インジケーターを提供することである。
【0011】
本発明の問題は、固定化酵素とこの酵素の基質を含む、温度の経時変化を表示するための時間・温度インジケーターであって、酵素により触媒される基質の反応によって、時間及び温度依存的に反応生成物が生成し、そしてこの反応生成物の形成が、基質及び/又は生成物の濃度に関連する物理的特性をモニターすることにより検出できる、インジケーターによって解決される。物理的特性は、検出可能なシグナルを生成させ、基質と反応生成物を区別でき、そして少なくともこれらの一方の濃度に対応するため、検出可能なシグナルが反応の進行の解明に役立つならば、基質及び/又は反応生成物の任意の固有特性であってよい。
【0012】
好ましい実施態様において、本発明の時間・温度インジケーターは、基質とは異なる色の反応生成物を生成させる酵素触媒反応に基づく。例えば、基質は淡色又は無色であり、そして反応生成物は着色されている。あるいは、基質は着色しており、そして反応生成物は淡色又は無色である。しかし、基質及び/又は生成物の濃度に関連する物理的特性は、可視スペクトルの色に限定されるのではなく、IR又はUV範囲内の波長の吸収及び/又は発光をも含む。
【0013】
好ましくは、本発明の時間・温度インジケーターは更に、緩衝系及び/又は酵素特異的コファクターを含む。一旦TTIが組立てられると、酵素反応は、好ましくは約6.5〜約9.5のpHに緩衝される。時間・温度表示の全過程は、塩基又は酸緩衝系のいずれかで起こるため、適切な緩衝剤は、ホスフェート、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(TRIS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)−メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、ジエタノールアミン及びグルタル酸ジメチルを含む。安定化剤及び他の従来の添加剤のような追加の物質は、必要であれば使用することができる。
【0014】
本発明の時間・温度インジケーターは、好ましくは基質の変換を触媒することにより、異なる色の反応生成物を直接生成させる酵素を含む。この酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ又はリガーゼであってよい。
【0015】
オキシドレダクターゼは、酸化還元を触媒する。酸化された基質は、水素又は電子供与体と見なされる。一般に、これらの酵素は、酸化を受ける供与基により、又は受容体により分類される。デヒドロゲナーゼは、これらの酵素に関してしばしば使用される別名である。オキシダーゼという名称は、O2が受容体である場合にのみ使用される。本発明の有用なオキシドレダクターゼは、特に限定されないが、供与体のCH−OH基に作用するもの、供与体のアルデヒド又はオキソ基に作用するもの、供与体のCH−CH基に作用するもの、供与体のCH−NH2基に作用するもの、供与体のCH−NH基に作用するもの、NADH又はNADPHに作用するもの、供与体としての他の含窒素化合物に作用するもの、供与体の硫黄基に作用するもの、供与体としてのジフェノール及び関連物質に作用するもの、受容体としての過酸化物に作用するもの(ペルオキシダーゼ)、供与体としての水素に作用するもの、供与体として水素に作用するもの、分子酸素が組み込まれた単一供与体に作用するもの、受容体としてのスーパーオキシドに作用するもの、金属イオンを酸化するもの、−CH2基に作用するもの、供与体としての鉄−硫黄タンパク質に作用するもの、供与体としての還元フラボドキシンに作用するもの、供与体中のリンに作用するもの並びにx−H及びy−Hに作用してx−y結合を形成するものを含む。
【0016】
トランスフェラーゼは、一方の化合物(一般に供与体と見なされる)から別の化合物(一般に受容体と見なされる)にある基(例えば、メチル又はグリコシル基)を転移させる酵素である。一般に、これらの酵素は、供与基により、又は受容体により分類される。本発明の有用なトランスフェラーゼは、特に限定されないが、1個の炭素基を転移させるもの、アルデヒド又はケトン残基を転移させるもの、アシルトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、アルキル又はアリール基(メチル基を除く)を転移させるもの、含窒素基を転移させるもの、リン含有基を転移させるもの、硫黄含有基を転移させるものを含む。
【0017】
ヒドロラーゼは、C−O、C−N、C−C、及び無水リン酸結合を含む幾つかの他の結合の加水分解を触媒する酵素である。一般に、これらの酵素は、加水分解される結合の性質により、又は基質の性質により分類される。系統名は常にヒドロラーゼを含むが、一般に使用される名称は、多くの場合、基質の名称に接尾語の−アーゼを付けて形成される。この接尾語を伴う基質の名称が、加水分解酵素を意味することは了解されている。本発明の有用なヒドロラーゼは、特に限定されないが、エステル結合に作用するもの、グリコシド結合に作用するもの、エーテル結合に作用するもの、ペプチド結合に作用するもの、炭素−窒素結合(ペプチド結合を除く)に作用するもの、酸無水物に作用するもの、炭素−炭素結合に作用するもの、ハロゲン化物結合に作用するもの、リン−窒素結合に作用するもの、硫黄−窒素結合に作用するもの、炭素−リン結合に作用するもの、硫黄−硫黄結合に作用するもの、炭素−硫黄結合に作用するものを含む。
【0018】
リアーゼは、脱離によりC−C、C−O、C−N、及び他の結合を切断して、二重結合若しくは環を残す酵素、又は逆に二重結合に基を付加する酵素である。本発明の有用なリアーゼは、特に限定されないが、炭素−炭素リアーゼ、炭素−酸素リアーゼ、炭素−窒素リアーゼ、炭素−硫黄リアーゼ、炭素−ハロゲン化物リアーゼ及びリン−酸素リアーゼを含む。
【0019】
イソメラーゼは、1個の分子内の幾何学的又は構造的変化を触媒する。異性のタイプにより、これらは、ラセマーゼ、エピメラーゼ、cis−trans−イソメラーゼ、イソメラーゼ、トートメラーゼ、ムターゼ又はシクロイソメラーゼと呼ばれる。下位分類は、一般に異性のタイプにより定義され、下位分類の下位は、基質のタイプによる。本発明の有用なイソメラーゼは、特に限定されないが、ラセマーゼ及びエピメラーゼ、cis−trans−イソメラーゼ、分子内オキシドレダクターゼ、分子内トランスフェラーゼ(いわゆるムターゼ)及び分子内リアーゼを含む。
【0020】
リガーゼは、ATP(又は同様の三リン酸)のピロリン酸結合の加水分解と一体となった、2個の分子の結合を触媒する。形成される結合は、しばしば高エネルギー結合である。下位分類は、一般に形成される結合のタイプにより定義される。本発明の有用なイソメラーゼは、特に限定されないが、炭素−酸素結合を形成するもの、炭素−硫黄結合を形成するもの、炭素−窒素結合を形成するもの、炭素−炭素結合を形成するもの、リン酸エステル結合を形成するもの、窒素−金属結合を形成するものを含む。
【0021】
好ましくは、本発明に使用される酵素は、アミダーゼ、リパーゼ、グリコシラーゼ、カルボン酸エステラーゼ及びエーテルヒドロラーゼよりなる群から選択される、ヒドロラーゼである。
【0022】
特に好ましいのは、アリールエステラーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、リゾホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コリンエステラーゼ、L−アラビノノラクトナーゼ、グルコノラクトナーゼ、パルミチン酸レチニルエステラーゼ、アシルグリセロールリパーゼ、1,4−ラクトナーゼ、ガラクトリパーゼ、D−アラビノノラクトナーゼ、6−ホスホグルコノラクトナーゼ、4−メチルオキサロ酢酸エステラーゼ、ホルボール−ジエステルヒドロラーゼ、メチルウンベリフェリル酢酸デアセチラーゼ、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)エステラーゼ、L−ラムノノ−1,4−ラクトナーゼ及びキシロノ−1,4−ラクトナーゼよりなる酵素の群から選択される、カルボン酸エステラーゼである。
【0023】
特に好ましい実施態様において、本発明は、トリアシルグリセロールリパーゼ(好ましくは膵トリアシルグリセロールリパーゼ)の活性による脂質の酵素加水分解と、これに続くpH値の低下により引き起こされるpHインジケーターの色変化に基づく。トリアシルグリセロールリパーゼ触媒反応に適切な基質は、特に限定されないが、三カプロン酸グリセリン、トリペラルゴニン、トリブチリン及びアジピン酸ビス−3,5,5−トリメチル−ヘキシル、多価アルコールと有機及び無機酸との混合エステルを含む。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様において、好ましくはアリールホルムアミダーゼ、ホルミルテトラヒドロ葉酸デホルミラーゼ、アリール−アシルアミダーゼ、アミノアシラーゼ、5−アミノペンタンアミダーゼ、馬尿酸ヒドロラーゼ、N−メチル−2−オキソグルタルアミド酸ヒドロラーゼ、アルキルアミダーゼ、長鎖脂肪酸−アシル−グルタミン酸デアシラーゼ、N,N−ジメチルホルムアミダーゼ、N−ベンジルオキシカルボニルグリシンヒドロラーゼ、ウレタナーゼ、アリールアルキルアシルアミダーゼよりなる群から選択される、アミダーゼが使用され、そしてこれらは、色素又は染料前駆体の少なくとも1つのアミド結合を加水分解することにより、色素又は染料が生成する。
【0025】
例えば、イルガフォア・レッド(Irgaphor Red)502A(下記参照)中の2個のアミド結合の加水分解によって、可溶性色素前駆体の黄色から色素沈殿物の橙色への色変化が生じる。
【0026】
【化8】

【0027】
[式中、Rは、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基である]。
【0028】
また、ピグメント・バイオレット37の化学は、反応中に有意な色変化を伴うアミダーゼ触媒反応の基本として利用することができる(下記参照)。
【0029】
【化9】

【0030】
R’は、下記式:
【0031】
【化10】

【0032】
[式中、R”は、アルコキシアルキル及びアルコキシアリールを含む、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基である]で示される基を表す。
【0033】
本発明の更に別の好ましい実施態様は、酵素に基づくTTIであって、基質が、一般式(III):
【0034】
【化11】

【0035】
[式中、
Xは、発色団であり、Oは、酸素であり、そしてR'''は、そのグリコシド炭素原子を介してOに結合している糖残基、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基、及び下記式:
【0036】
【化12】

【0037】
(式中、R”は、アルコキシアルキル及びアルコキシアリールを含む、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基である)で示される基を表す]で示される化合物の群から選択され、そして酵素が、グリコシラーゼ、エーテルヒドロラーゼ又はカルボン酸エステラーゼである、TTIに関する。
【0038】
グリコシラーゼは、好ましくはα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ、エンド−1,4−β−キシラナーゼ、デキストラナーゼ、オリゴ糖α−1,6−グルコシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−フルクトフラノシダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、α,α−トレハラーゼ、β−グルクロニダーゼ、キシラン エンド−1,3−β−キシロシダーゼ、アミロ−α−1,6−グルコシダーゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、ヒアルロノグルクロニダーゼ、キシラン1,4−β−キシロシダーゼ、β−D−フコシダーゼ、グルカン エンド−1,3−β−D−グルコシダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、α−L−ラムノシダーゼ、β−L−ラムノシダーゼ、グルコシルセラミダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、ガラクトシルガラクトシルグルコシルセラミダーゼ、ショ糖α−グルコシダーゼ、α−N−アラビノフラノシダーゼ、グルカン1,3−β−グルコシダーゼ、グルカン エンド−1,3−α−グルコシダーゼ、マンナン1,2−(1,3)−α−マンノシダーゼ、マンナン エンド−1,4−β−マンノシダーゼ、β−L−アラビノシダーゼ、グルカン1,3−α−グルコシダーゼ、6−ホスホ−β−ガラクトシダーゼ、6−ホスホ−β−グルコシダーゼ、マルトース−6’−リン酸グルコシダーゼ、ガラクタン1,3−β−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトフラノシダーゼよりなる群から選択される。
【0039】
特に好ましいのは、天然の染料前駆体を使用することにより、染料、例えば、インジゴ(青色)を生成させることである。インジゴの天然前駆体は、β−グルコシドであるインジカン(ナンバンアイ(Indigofera tinctoria)由来)である。普通の市販されている酵素である、β−グルコシダーゼは、無色の前駆体を青色の色素に容易に変換する。
【0040】
【化13】

【0041】
また、テキスタイルを着色するための建染染料から知られている原理を、本発明の酵素に基づくTTIにおいて利用することができる。建染染料は、テキスタイル素地に還元された可溶性の形で適用され、次に酸化することにより最初の不溶性色素にする染料である。普通の建染染料は、キノン系染料であり、そして特に普及しているものは、アントラキノン類及びインジゴイド類である。これらの染料は、本質的に水不溶性であり、繊維を直接染色できない。しかし、アルカリ溶液中で還元すると、染料の水溶性アルカリ金属塩が生じる。このロイコ型で、これらの染料は、テキスタイル繊維に対する親和性を有する。続いての酸化により、最初の不溶性染料が再形成される。これらは、建染染料(vat dyes)と呼ばれるが、この理由は、布が導入される前に、最初は水不溶性であるので大きなバット(vat)で特別な前処理を受けるためであり、ここで、通常は苛性ソーダ及び次亜硫酸塩の添加により可溶性にする。この混合物又は染料液中で、テキスタイルを浸漬する。次にある種の化学物質を加えることにより、布又は繊維中で染料を変化させて不溶性の形に戻す。これは定着プロセスと呼ばれる。全ての建染染料は、特に洗浄に対して堅牢である。
【0042】
例えば、下記式:
【0043】
【化14】

【0044】
で示される化合物中のOとR''''の間の結合(これは、エーテル結合、エステル結合であってもよいか、あるいは酸素は、糖残基のグリコシド炭素原子に結合していてもよい)の加水分解は、それぞれエーテルヒドロラーゼ、カルボン酸エステラーゼ及びグリコシラーゼの触媒活性により加水分解することができる。こうして形成されるエノール型は、互変異性を受けることにより、ケト型になり、続いて空気中に存在する酸素により酸化されよう(下記参照)。当然ながら、OとR''''の間の切断可能な結合は、前述の結合に限定されるわけではなく、亜リン酸のチオエステル類及び他の酸のエステル類、更には酸無水物のような他のタイプのエステル結合をも含むものである。
【0045】
【化15】

【0046】
更に当然ながら、上述の原理及び本発明の酵素に基づくTTIにおけるその使用は、インジゴに限定されるものではなく、例えば、C.I.ピグメント・ブルー60(インダントロン)の化学をも含む:
【0047】
【化16】

【0048】
C.I.ピグメント・ブルー60のピグメント型はまた、対応するロイコ型からも得られる。
【0049】
本発明の酵素に基づくTTIに好ましい更なる酵素は、アルカリホスファターゼ(AP)、ペルオキシダーゼ(POD)及びβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)を含む。これらの酵素に適した基質は、アルカリホスファターゼには4−ニトロフェニルリン酸(pNPP)、4−メチルウンベリフェリルリン酸(MUP)及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP);ペルオキシダーゼには3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及び2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸](ABTS);そしてβ−ガラクトシダーゼにはクロロフェノール−レッド−β−D−ガラクトピラノシド(CPRG)である。
【0050】
前述のマーカー酵素と対応する基質は両方とも、ロシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics GmbH)(ペンツベルク、ドイツ)から購入することができる。例えば、PODは、西洋ワサビ由来の凍結乾燥ペルオキシダーゼとして、更には感度を高めるために重合(約20個のPOD分子)し、かつMH活性化したPODの凍結乾燥調剤として入手できる。MH活性化ポリPODは、スルフヒドリル基との結合に直接使用することができる。更に、β−ガラクトシダーゼは、大腸菌(Escherichia coli)で発現された凍結乾燥組換えβ−ガラクトシダーゼとして購入することができる。ウシ小腸から単離された未変性APを使用することはできるが、酵母ピチア・パストリス(Pichia pastoris)中で非常に活性な酵素としてのウシ小腸のアルカリホスファターゼの発現に由来する組換えAPを利用するのが好ましい。アルカリホスファターゼは、第1級及び第2級アルコール類、糖類、環状アルコール類、フェノール類並びにアミン類のエステルのような、多数のリン酸エステルの加水分解を触媒する、ホモダイマーのオルトリン酸−モノエステル・ホスホヒドロラーゼである。ホスホジエステル類は反応しない。この酵素はまた、無機ピロリン酸を加水分解する。この酵素の動態特性は、酵素の純度、酵素の濃度、緩衝液、pHなどのような多くの因子に依存する。
【0051】
3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及び2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸]は両方とも、適切なPOD基質である。TMBは、370nmで検出可能な可溶性の淡青色の反応生成物を形成する。硫酸でPOD反応を停止させることにより、反応生成物は、450nmで測定することができる。ABTSは、405nmで検出可能な可溶性の緑色の反応生成物を形成する。TMB及びABTSは、結晶性粉末としてロシュから購入することができる。クロロフェノールレッド−β−D−ガラクトピラノシド(CPRG)は、405nmで検出可能な可溶性の反応生成物を形成する、適切な発色性β−Gal基質である。4−ニトロフェニルリン酸(pNPP)は、405nmで検出可能な可溶性の黄色の反応生成物を形成する発色性AP基質である。pNPP反応は、検出の前にNaOHで停止させることができる。更に、4−メチルウンベリフェリルリン酸(MUP)は、蛍光発生性AP基質である。これは、可溶性の蛍光性反応生成物のメチルウンベリフェロンを形成するが、これは、360nmで励起及び450nmで発光の蛍光検出により測定することができる。また、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)は、不溶性の暗青色の反応生成物を形成する、適切なAP基質である。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸は、アルカリホスファターゼにより脱リン酸して、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルになる。この反応生成物は、更に自然に酸素と反応することにより、不溶性の暗青色のインジゴ染料を形成する。この青色の沈殿物は、水性系において不溶性である。酸素の代わりに、他の電子受容体、例えば、ニトロブルーテトラゾリウム塩化物(NBT)を使用してもよい。NBTもまた、還元プロセスにより青色の不溶性沈殿物に変換されるため、BCIPとNBTを合わせると、発色の強化と検出感度の上昇が観測される。
【0052】
本発明の好ましい実施態様において、時間・温度インジケーターの酵素は、包装材料又はラベルに直接組み込まれており、そして基質は、包装材料又はラベルに直接印刷されるインク配合物として提供される。
【0053】
更に好ましくは、酵素は、共有結合、複合体形成及び/又は接着により、包装材料又はラベル上に又はこれらの中に固定化されている。
【0054】
好ましくは、包装材料又はラベルは、原理上は酵素を固定化できる任意の物質であってよい担体マトリックスを含むことを特徴とする。即ち、このマトリックスは、溶液分析用の試薬ストリップに利用されるものなどの、多くの既知の形を採ることができる。例えば、米国特許3,846,247号は、フェルト、多孔性セラミックストリップ及びガラス繊維の織物又はマットの使用を教示している。紙の代用品として、米国特許3,522,928号は、木の棒、布、スポンジ材料及び粘土質物質の使用を教示している。紙の代わりの合成樹脂フリース及びガラス繊維フェルトの使用は、英国特許1,369,139号に示唆されている。別の英国特許1,349,623号は、下地の紙マトリックスのカバーとして細フィラメントの光透過性網の使用を示唆している。フランス特許2,170,397号は、50%を超えるポリアミド繊維を中に含む担体マトリックスの使用を教示している。担体マトリックスに対する別のアプローチが、米国特許4,046,513号に開示されており、ここでは適切な担体マトリックスに試薬を印刷するという概念が採用されている。米国特許4,046,514号は、反応物系に試薬を有するフィラメントの交織又は編物を開示している。よって当然のことながら、本発明の時間・温度インジケーターを製造する際、全てのこのような担体マトリックスの概念は、他のものと同様に採用できる。
【0055】
酵素は、多くの化学物質に比較して、一般に高価であり、かつ酵素が通常機能する水性媒体中で使用されるときでさえ比較的不安定である。更に、酵素は、商業的に合理的な期間(数ヶ月〜数年)、冷凍(−80℃〜液体N2温度)、又は適切なイオン強度、pHなどの水性溶媒中での維持に頼ることなく、その活性と機能的完全性を保持するように貯蔵するのが難しい。
【0056】
これらの不都合を回避するために、酵素を固体支持材料(例えば、包装材料又はラベル)上又はこれらの中に結合させるための酵素固定化法を利用することができる。固定化によって、幾つかの応用に特有の、厳しい溶媒環境中でも、そして極端な温度の下でさえ、酵素触媒の安定性を改善することができ、そしてその機能的完全性を保護することができる(Hartmeier, W., Trends in Biotechnology 3: 149-153 (1985))。
【0057】
多くの酵素固定化法の有用なレビューが文献に掲載されている(Maugh, T.H., Science 223: 474-476 (1984);Tramper, J., Trends in Biotechnology 3: 45-50 (1985))。Maughは、酵素の固定化への5つの一般的アプローチを記述している。これらは、以下を含む:固体支持体(イオン交換樹脂など)への吸着;支持体(イオン交換樹脂、多孔性セラミックス又はガラスビーズなど)への共有結合;ポリマーゲルへの取り込み;封入;及び可溶性タンパク質の沈殿(これらを二官能性試薬とランダムかつ不定なやり方で架橋することによる)。更には、目的の酵素活性を高レベルで発現していた全細胞(通常は死んでおり透過性である)を固定化することができる(例えば、Nagasawa, T.とYamada, H., Trends in Biotechnology 7: 153-158 (1989))。
【0058】
原則として、これらの固定化手順のそれぞれは、本発明の時間・温度インジケーターの酵素を固定化するために使用することができる。
【0059】
酵素を固定化するための1つのアプローチは、ポリペプチドを担体材料の表面に共有結合させることである。例えば、H.H. Weetal, 「シランカップリング剤により無機支持体に共有結合している固定化タンパク質の調製」, Applied Biochem. and Biotech. 41:157 (1993)を参照されたい。また、酵素が、多孔性支持体への共有結合により、その表面上に又はその中に固定化されている、多孔性支持体を含む材料を使用することができる。例えば、内部に結合している酵素を含む発泡ポリウレタン製品が適している。この材料は、次の発泡工程に先立って、イソシアネートでキャップしたポリウレタンを酵素の水性分散液と、発泡条件下で接触させる(これによって、ポリウレタンが発泡して、こうして生成したポリウレタンフォームに酵素は一体化して結合する)ことを含む方法により調製することができる。イソシアネートでキャップしたポリウレタンは、トルエンジイソシアネートとポリヒドロキシ化合物(ポリオキシブチレンポリオールポリマー、エチレングリコールジエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオールポリマー、ペンタエリトリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン及びポリオキシプロピレンポリオールポリマーよりなる群から選択される)との反応生成物であってよい。
【0060】
水性酵素分散液と密に接触させると、このイソシアネートでキャップしたポリウレタンは、化学的に非常に活性になる。その遊離イソシアナト基の幾つかは、酵素のアミン基と反応し、そしてあるものは水と反応して、二酸化炭素を与え、ポリウレタン分子上のアミン基を形成する。これらの後者のアミン基は、隣接するポリウレタン分子上の遊離イソシアナト基と反応し、そしてこの反応(尿素結合を形成する)が、ポリウレタンの更なる成長を引き起こし、またポリウレタン分子間の架橋を導入する。架橋剤(ポリアミン、ポリチオール、ポリ酸)又は酸化防止剤、充填剤などのような他の添加剤もまた発泡中に存在してもよい。
【0061】
あるいは、時間・温度インジケーターの酵素は、ビオチン化酵素のビオチン残基と包装材料又はラベルの表面に結合したアビジンポリペプチドとにより形成される、アビジン−ビオチン複合体を介して、固体支持材料(例えば、包装材料又はラベル)上又はこれらの中に固定化することができる。
【0062】
アビジンで被覆された包装材料又はラベルの表面は、時間・温度インジケーターフォーマット内での酵素反応の担体として使用することができる。ビオチン−ストレプトアビジン相互作用は、特異的かつ強力(Kd=10-15M)であるため、ビオチン化酵素は、堆積の空間に特異的に付着する。ビオチンは、ビオチン−タンパク質リガーゼ酵素(ビオチンを活性化することにより、ビオチニル−5’−アデニル酸を形成し、そしてビオチンをビオチン受容性タンパク質に転移させる)を用いることにより、ポリペプチド内に容易に組み込まれて、ビオチン化酵素が得られる。
【0063】
修飾された包装材料又はラベルを調製するために使用することができるアビジン及びビオチン誘導体は、ストレプトアビジン、スクシニル化アビジン、モノマーアビジン、ビオシチン(即ち、ビオチン−ε−N−リジン)、ビオシチンヒドラジド、2−イミノビオチンのアミン又はスルフヒドリル誘導体及びビオチニル−ε−アミノカプロン酸ヒドラジドを含む。ビオチン誘導体[ビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビオチニル−ε−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、6−(ビオチンアミド)ヘキサン酸スルホスクシンイミジル、N−ヒドロキシスクシンイミドイミノビオチン、ビオチンブロモアセチルヒドラジド、p−ジアゾベンゾイルビオシチン及び3−(N−マレイミドプロピオニル)ビオシチンなど]はまた、酵素を修飾表面上に連結するために結合させることができる。
【0064】
本発明の特定の実施態様において、時間・温度インジケーターの酵素は、緩衝液並びに少なくとも1つの凍害防御物質、好ましくはアラニン及びマンニトール(ここで、マンニトール対アラニンの質量比は、0.1〜1の範囲である)を含む、固定化酵素の安定な凍結乾燥配合物である。
【0065】
凍結乾燥(freeze drying)、即ち、lyophilizationは、1つの脱水法である。これは、生成物が凍結状態(真空下の氷昇華)かつ真空下(穏やかな加熱による乾燥)にある間に行われる。このような条件は、生成物を安定化し、そして酸化及び他の分解過程を最小化する。凍結乾燥の条件によって、このプロセスは低温で実施することができ、よって熱に不安定な生成物を保存することができる。凍結乾燥は、凍結温度より高温での長期貯蔵を必要とする、感熱性生成物、例えば、酵素を処理するための一般に認められた方法になっている。凍結乾燥における工程は、前処理、凍結、一次乾燥及び二次乾燥を含む。
【0066】
前処理は、凍結の前に生成物を処理する任意の方法を含む。これは、生成物の濃縮、処方の見直し(即ち、安定性を増大させるか、かつ/又は処理を改善するための成分の添加)、高蒸気圧溶媒の減少又は表面積の増大を含むことができる。前処理の方法は、以下を含む:凍結濃縮、溶液相濃縮、及び特に生成物の外観を保存するため又は反応性生成物を凍害防御するために処方すること。「凍害防御」という用語は、全ての凍結乾燥過程中(即ち、凍結と乾燥の両方の間)の安定化を意味する。
【0067】
第2工程は、生成物を凍結することである。生成物を凍結することで、分子運動を減少させることにより、化学活性を減少させる。凍結は、凍結乾燥において本質的に脱水工程である;一旦溶媒マトリックスが固体(凍結)状態になれば、(少量の結合水を含んでいたとしても)溶質マトリックスは「ドライ」である。生成物の凍結に関する経験則は、生成物容器は、好ましくはその全容量定格の半分を超えて生成物で充填すべきでないことである。実際には、これはまた、凍結、氷昇華及び最後の水/溶媒除去を促進するために一定の深さまでに限って生成物を充填することを意味する。このことは、多くの場合に、表面対深さの比が、生成物の深さにより凍結乾燥が妨げられないような比であることを保証する助けとなる。
【0068】
一次乾燥は、低圧及び低温(ケーク軟化及び圧壊を減少させるのに充分に低い)での氷結晶の昇華から始めてもよい。昇華による氷結晶の除去後、残ったマトリックスは、なお結合水/溶媒を含んでいるかもしれないが、これらは、低圧条件下でゆっくり加熱することにより除去することができる。乾燥温度は、乾燥マトリックス中の含水量が低下するにつれ徐々に上昇させてよい。生成物マトリックスのどんな局部的過熱も、局在する生成物の崩壊及び/又は圧壊を引き起こしうる。生成物が0℃を超える温度に達すると、二次乾燥が既に始まっていることがある。二次乾燥中の生成物はしばしば乾燥しているように見える。しかし、外見上乾燥している生成物中に少量の「結合」溶媒がまだ残っていることがある。二次乾燥中、真空ポンプで低圧条件を作り出し、これによって結合溶媒の除去を促進する。凍結乾燥生成物中の残留水又は溶媒の量は、生成物が二次乾燥に留まる時間の長さに依存する。水/溶媒含量の最終レベルは、生成物の貯蔵に重要であり、例えば、含水量が高すぎると、生成物マトリックスは、貯蔵温度が上昇すると融解及び圧壊という目に遭うかもしれない。よって生成物の広い面積及び容量にわたる水/溶媒除去の均一性が、周囲温度での凍結乾燥生成物貯蔵中の局部的崩壊から生成物を保護するのに非常に重要である。
【0069】
処方は、凍結乾燥中のタンパク質の分解に及ぼす相当大きな作用、更には凍結乾燥型の安定性に及ぼす強い影響を与えることが知られている。これらのパラメーターに影響を及ぼす種々の処方の変数は、主としてpH、存在する塩の量、賦形剤のタイプと量、選ばれた凍害防御のタイプ、並びに凍結、昇華及び乾燥操作のために選ばれる、温度、圧力及び時間である。これらの様々な変数は、得られる凍結乾燥生成物の物理的状態(即ち、ガラス質の非晶質、軟らかい(soft)非晶質、結晶又はこれらの状態の組合せ)に影響する。
【0070】
結晶形のアラニンは、昇華及び乾燥中に凍結乾燥生成物の圧壊を防止するという利点を有しており、大きな比表面積を持つ凍結乾燥生成物の製造を可能にし、よってより迅速な乾燥を可能にしている(Pikal M.J., タンパク質の凍結乾燥, Biopharm. 26-30 Oct. 1990)。タンパク質を取り囲む非晶質形のマンニトールの存在は、凍結中、タンパク質に結合した非結晶化水の存在を保証しており、よってタンパク質の変性を防止する。更には、ポリオールの存在は、疎水性相互作用によって、熱分解に対してタンパク質を安定化する(Back J.F., Oakenfull D., Smith M.B., 糖類及びポリオールの存在下でのタンパク質の熱安定性の増大, Biochemistry, 1979, 18, 23, 5191-96)。
【0071】
アラニンとマンニトールとの組合せ使用によって、凍結中、非晶質固体相(本質的にタンパク質とマンニトールよりなる)により凍害防御された、酵素を含む安定な凍結乾燥生成物を得ることができるが、この非晶質相は、凍結溶液の昇華及び乾燥後に得られる凍結乾燥生成物中に共存し、結晶相は本質的にアラニンよりなる。
【0072】
本発明の時間・温度インジケーターは、好ましくは包装されるか、かつ/又は腐敗しやすい商品、特に医薬品、生物製剤又は食料品に貼り付けられる。
【0073】
時間・温度インジケーターの酵素は、好ましくは、色変化の速度が、一定の温度を仮定すると時間によってのみ変化するように、ある範囲の濃度の基質と一緒に提供される。特に、時間・温度インジケーターは、普通の時間・温度条件により、色変化がこのフォーマットに沿って、又はその周りに進行するフォーマットに具体化される。
【0074】
別の実施態様において、本発明はまた、時間及び温度依存的な酵素の基質の反応生成物への酵素触媒反応の工程を含むことを特徴とする、時間・温度の表示方法であって、反応生成物の形成が、基質及び/又は生成物の濃度に対応する物理的特性をモニターすることにより検出され、そして酵素が、固体支持体上に又はその中に固定化されている、方法に関する。
【0075】
好ましくは、反応生成物の形成は、基質と生成物の間の色差に基づく色の変化により視覚化される。
【0076】
時間・温度の表示方法の好ましい形において、酵素は、包装材料又はラベルに直接組み込まれており、そして基質は、包装材料又はラベルに直接印刷されるインク配合物として提供される。更に好ましくは、この酵素は、共有結合、複合体形成及び/又は接着により、包装材料又はラベル上に又はこれらの中に固定化されている。
【0077】
本発明はまた、時間−温度インジケーターの酵素の少なくとも1つの基質を含むことを特徴とする、印刷インク又は印刷インク濃縮液であって、時間及び温度依存的な固定化酵素により触媒される基質の反応によって、基質及び/又は生成物のその濃度に対応する物理的特性をモニターすることにより検出できる反応生成物が生成する、インク又はインク濃縮液に関する。好ましくは、本発明の印刷インク又は印刷インク濃縮液はまた、緩衝系及び/又は酵素特異的コファクターを含む。
【0078】
本発明の印刷インクは、基質、特にアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼ化合物を、0.01〜100μM、好ましくは0.05〜50μM、特に0.1〜10μM、更には1〜5μMの濃度で含むことを特徴とし、そして例えば、電子写真、凹版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷又は凸版印刷に使用することができる。
【0079】
印刷インクは、例えば、着色料(インジケーター)、結合剤、並びに場合により溶媒及び/又は場合により水と添加剤を含む、液体又はペースト状分散液である。液体印刷インクにおいて、結合剤、及び(当てはまれば)添加剤は、一般に溶媒に溶解される。ブルックフィールド(Brookfield)型粘度計での通常の粘度は、液体印刷インクでは、例えば、20〜5000mPa・s、例えば、20〜1000mPa・sである。ペースト状印刷インクでは、この値は、例えば、1〜100Pa・s、好ましくは5〜50Pa・sの範囲である。当業者であれば、印刷インクの成分及び組成には精通していよう。
【0080】
印刷インクは、例えば、電子写真、凹版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リソグラフィー又は凸版印刷に使用することができる。適切な印刷インクは、溶剤型印刷インク及び水性印刷インクの両方である。興味深いものは、例えば、水性アクリレートに基づく印刷インクである。このようなインクは、下記式:
【0081】
【化17】

【0082】
で示される基を含む少なくとも1種のモノマーの重合により得られ、そして水又は含水有機溶媒に溶解されている、ポリマー又はコポリマーを含むものと理解すべきである。適切な有機溶媒は、当業者に通常使用される水混和性溶媒、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール並びにプロパノール、ブタノール及びペンタノールの異性体など)、エチレングリコール及びそのエーテル類(エチレングリコールメチルエーテル及びエチレングリコールエチルエーテルなど)、並びにケトン類(アセトン、エチルメチルケトン又はシクロヘキサノンなど)、例えば、イソプロパノールである。水とアルコールが好ましい。
【0083】
適切な印刷インクは、例えば、結合剤として主としてアクリレートポリマー又はコポリマーを含むことを特徴とし、そして溶媒は、例えば、水、C1−C5アルコール、エチレングリコール、2−(C1−C5アルコキシ)−エタノール、アセトン、エチルメチルケトン及びこれらの任意の混合物よりなる群から選択される。
【0084】
結合剤に加えて、印刷インクはまた、当業者に知られている通常の添加剤を、通常の濃度で含んでいてもよい。凹版又はフレキソ印刷には、印刷インクは、通常、印刷インク濃縮液の希釈により調製し、次にそれ自体既知の方法により使用することができる。印刷インクはまた、例えば、酸化的に乾燥するアルキド樹脂系を含んでいてもよい。印刷インクは、場合によりコーティングの加熱を伴って、当該分野で通常の既知のやり方で乾燥する。適切な水性印刷インク組成物は、例えば、酵素特異的基質、分散剤及び結合剤を含む。
【0085】
考慮される分散剤は、例えば、通常の分散剤(1種以上のアリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物に基づくか、若しくは1種以上の水溶性オキサアルキル化フェノール類に基づく水溶性分散剤、非イオン性分散剤又はポリマー酸など)を含む。
【0086】
アリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物は、例えば、芳香族化合物(ナフタレン自体又はナフタレン含有混合物)のスルホン化と、これに続く、生じるアリールスルホン酸のホルムアルデヒドとの縮合により入手できる。このような分散剤は、既知であり、例えば、US-A-5,186,846及びDE-A-197 27 767に記述されている。適切なオキサアルキル化フェノール類は、同様に既知であり、例えば、US-A-4,218,218及びDE-A-197 27 767に記述されている。適切な非イオン性分散剤は、例えば、アルキレンオキシド付加物、ビニルピロリドン、酢酸ビニル又はビニルアルコールの重合生成物、及びビニルピロリドンと酢酸ビニル及び/又はビニルアルコールとのコ−又はター−ポリマーである。また、例えば、分散剤及び結合剤の両方として機能する、ポリマー酸を使用することもできる。
【0087】
言及できる適切な結合剤成分の例は、アクリレート基含有、ビニル基含有及び/又はエポキシ基含有のモノマー、プレポリマー及びポリマー並びにこれらの混合物を含む。更に別の例には、メラミン・アクリレート及びシリコーン・アクリレートがある。アクリレート化合物はまた、非イオン修飾(例えば、アミノ基を備えている)又はイオン修飾(例えば、酸基又はアンモニウム基を備えている)されていてもよく、水性分散液又はエマルションの形状で使用することができる(例えば、EP-A-704,469、EP-A-12,339)。更には、所望の粘度を得るために、無溶媒アクリレートポリマーを、いわゆる反応性希釈剤、例えば、ビニル基含有モノマーと混合することができる。更に別の適切な結合剤成分は、エポキシ基含有化合物である。
【0088】
印刷インク組成物はまた、更なる成分として、例えば、水分保持作用を有する物質(湿潤剤)、例えば、多価アルコール類、ポリアルキレングリコール類を含んでいてもよく、これらにより、この組成物はインクジェット印刷に特に適したものになる。
【0089】
当然ながら、印刷インクは、印刷業及び塗装業において通例であるような、更に別の助剤、例えば、保存料(グルタルジアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレン尿素など)、酸化防止剤、脱気剤/消泡剤、粘度調節剤、流動性向上剤、沈降防止剤、艶出し剤、滑沢剤、接着促進剤、皮張り防止剤、艶消し剤、乳化剤、安定化剤、疎水性剤、光安定化剤、風合い向上剤(handle improver)及び静電防止剤を含んでもよい。このような剤が組成物中に存在するとき、これらの総量は、一般に、調製物の重量に基づいて≦1重量%である。
【0090】
印刷インクはまた、例えば、可溶化剤、例えば、ε−カプロラクタムを含んでいてもよい。印刷インクは、特に粘度を調整する目的のために、天然又は合成由来の増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤の例は、市販のアルギン酸増粘剤、デンプンエーテル類又はイナゴマメ粉エーテル類を含む。印刷インクは、このような増粘剤を、印刷インクの総重量に基づいて、例えば、0.01〜2重量%の量で含む。
【0091】
また、印刷インクは、例えば、5〜9(特に6.5〜8)のpH値を確立するために、緩衝剤、例えば、ホウ砂、ボレート、ホスフェート、ポリホスフェート又はシトレートを、例えば、0.1〜3重量%の量で含んでいてもよい。
【0092】
更に別の添加剤として、このような印刷インクは、界面活性剤又は湿潤剤を含んでもよい。考慮される界面活性剤は、市販のアニオン性及び非イオン性界面活性剤を含む。考慮される湿潤剤は、例えば、印刷インク中に0.1〜30重量%(特に2〜30重量%)の量の、例えば、尿素又は乳酸ナトリウム(有利には50〜60%水溶液の形状で)とグリセロール及び/又はプロピレングリコールとの混合物を含む。
【0093】
更には、印刷インクはまた、通常の添加剤、例えば、発泡低下剤、あるいは特に真菌及び/又は細菌の増殖を阻害する物質を含んでいてもよい。このような添加剤は、通常、印刷インクの総重量に基づいて、0.01〜1重量%の量で使用される。
【0094】
言及してもよい印刷材料は、例えば、以下を含む:
− セルロース系材料(紙、板紙、ボール紙など(これらはまた、ワニスを塗ったり、何か他のコーティングをしてもよい))、
− 金属材料(アルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛又はこれらの金属の合金の箔、シート又は部品など(これらは、ワニスを塗ったり、何か他のコーティングをしてもよい))、
− ケイ酸塩材料(ガラス、陶磁器及びセラミックスなど(これらも同様にコーティングしてもよい))、
− 全ての種類のポリマー材料(ポリスチレン、ポリアミド類、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート類、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリ塩化ビニル並びに対応するコポリマー及びブロックコポリマーなど)、
− ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混紡、セルロース系材料(木綿、木綿混紡、ジュート、亜麻、ヘンプ及びラミーなど)、ビスコース、ウール、絹、ポリアミド、ポリアミド混紡、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラス繊維織物の、テキスタイル材料、編物、織物、不織布製品及び既製品、
− 食料品及び化粧品。
【0095】
特に適切な印刷材料は、例えば、紙、コート紙、ボール紙及びプラスチック又は金属箔(アルミニウム箔など)である。
【0096】
好ましいのは、水性印刷インクが使用される印刷方法である。印刷材料の印刷は、好ましくは、連続式又は滴下式インクジェット印刷法により実施される。水性インクジェットインクが好ましい。
【0097】
インクは、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中の時間・温度インジケーターの酵素の溶液よりなる非水性インクであってもよい。この目的に使用することができる溶媒の例は、アルキルカルビトール類、アルキルセロソルブ類、ジアルキルホルムアミド類、ジアルキルアセトアミド類、アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジオキサン、酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、酢酸ブチル、リン酸トリエチル、エチルグリコールアセテート、トルエン、キシレン、テトラリン(Tetralin)又は石油エーテル画分である。インクビヒクルとして、最初に加熱しなければならない溶媒としての固形ワックスの例は、ステアリン酸又はパルミチン酸である。
【0098】
インクは、水混和性有機溶媒、例えば、C1−C4アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール又はイソブタノール;アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン類又はケトンアルコール類、例えば、アセトン、ジアセトンアルコール;エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン;窒素含有複素環化合物、例えば、N−メチル−2−ピロリドン又は1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン;ポリアルキレングリコール類、例えば、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコール;C2−C6アルキレングリコール類及びチオグリコール類、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール及びジエチレングリコール;更に別のポリオール類、例えば、グリセロール又は1,2,6−ヘキサントリオール;並びに多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル類、例えば、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−エタノール又は2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール;好ましくはN−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコール、グリセロール又は特に1,2−プロピレングリコールを、通常、インクの総重量に基づいて、2〜30重量%、特に5〜30重量%、そして好ましくは10〜25重量%の量で含んでいてもよい。
【0099】
インクはまた、可溶化剤、例えば、ε−カプロラクタムを含んでいてもよい。印刷インクは、特に粘度を調整する目的で、天然又は合成由来の増粘剤を含んでいてもよい。
【0100】
更には、本発明の色素調製物は、特に結合剤硬化が紫外線により行われるとき、重合を開始させる光開始剤を含んでいてもよい。
【0101】
ラジカル光重合、即ち、アクリレート類、及び必要ならばビニル化合物の重合に適切な光開始剤は、例えば、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体(4−フェニルベンゾフェノン及び4−クロロベンゾフェノンなど)、アセトフェノン誘導体(1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなど)、ベンゾイン及びベンゾインエーテル類(メチル、エチル及びブチルベンゾインエーテルなど)、ベンジルケタール類(ベンジルジメチルケタールなど)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、アシルホスフィンオキシド類(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなど)及びビスアシルホスフィンオキシド類である。
【0102】
カチオン光重合、即ち、ビニル化合物又はエポキシ基含有化合物の重合に適切な光開始剤は、例えば、アリールジアゾニウム塩(ヘキサフルオロリン酸4−メトキシベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロホウ酸ベンゼンジアゾニウム及びテトラフルオロヒ酸トルエンジアゾニウムなど)、アリールヨードニウム塩(ヘキサフルオロヒ酸ジフェニルヨードニウムなど)、アリールスルホニウム塩(ヘキサフルオロリン酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロリン酸ベンゼン−及びトルエン−スルホニウム並びにビス[4−ジフェニルスルホニオ−フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロリン酸など)、ジスルホン類(ジフェニルジスルホン及びフェニル−4−トリルジスルホンなど)、ジアゾジスルホン類、イミドトリフラート類、ベンゾイントシラート類、イソキノリニウム塩(ヘキサフルオロリン酸N−エトキシイソキノリニウムなど)、フェニルピリジニウム塩(ヘキサフルオロリン酸N−エトキシ−4−フェニルピリジニウムなど)、ピコリニウム塩(ヘキサフルオロリン酸N−エトキシ−2−ピコリニウムなど)、フェロセニウム塩、及びチタノセン類である。
【0103】
本発明のインク組成物中に光開始剤(一般に、紫外線による結合剤硬化に必要である)が存在するとき、その含量は、一般に、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%である。
【0104】
言及してもよい増粘剤の例は、市販のアルギン酸増粘剤、デンプンエーテル類又はイナゴマメ粉エーテル類、特にアルギン酸ナトリウムそれ自体又は変性セルロース(例えば、メチル−、エチル−、カルボキシメチル−、ヒドロキシエチル−、メチルヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−又はヒドロキシプロピルメチル−セルロース)との混合物(特に、好ましくは20〜25重量%のカルボキシメチルセルロースを有するもの)を含む。言及してもよい合成増粘剤は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸又はポリ(メタ)アクリルアミドに基づくものである。
【0105】
インクは、このような増粘剤を、インクの総重量に基づいて、例えば、0.01〜2重量%、特に0.01〜1重量%、そして好ましくは0.01〜0.5重量%の量で含む。
【0106】
また、インクは、緩衝剤、例えば、ホウ砂、ボレート、ホスフェート、ポリホスフェート又はシトレートを含んでいてもよい。例としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含む。これらは特に、例えば、4〜9、特に5〜8.5のpH値を確立するために、インクの総重量に基づいて、0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で使用される。
【0107】
更に別の添加剤として、インクは、界面活性剤又は湿潤剤を含んでいてもよい。
【0108】
界面活性剤として、市販のアニオン性又は非イオン性界面活性剤が考慮される。本発明のインク中の適切な湿潤剤は、例えば、好ましくは0.1〜30重量%、特に2〜30重量%の量の、例えば、尿素又は乳酸ナトリウム(有利には50〜60%水溶液の形状)とグリセロール及び/又はプロピレングリコールとの混合物を含む。
【0109】
更には、インクはまた、通常の添加剤、例えば、保存料(グルタルジアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレン尿素など)、酸化防止剤、脱気剤/消泡剤、粘度調節剤、流動性向上剤、沈降防止剤、艶出し剤、滑沢剤、接着促進剤、皮張り防止剤、艶消し剤、乳化剤、安定化剤、疎水性剤、光安定化剤、風合い向上剤及び静電防止剤を含んでもよい。このような物質は、通常、インクの総重量に基づいて、0.01〜1重量%の量で使用される。
【0110】
インクは、個々の成分を所望の量の水中で一緒に混合することにより、通常のやり方で調製することができる。
【0111】
本発明のインクは、画像が形成される基体に向けられた液滴の形状でインクが小開口部から絞り出される種類の記録システムにおける使用に特に適している。適切な基体は、例えば、紙、テキスタイル繊維材料、金属箔又はプラスチック箔である。適切な記録システムは、例えば、紙又はテキスタイルの印刷に使用するための市販のインクジェットプリンターである。
【0112】
使用の性質に応じて、例えば、インクの粘度又は他の物理的特性、特に問題の基体に対するインクの親和性に影響する特性は、相応に適合させることが必要であろう。
【0113】
インクジェット印刷において、インクの個々の液滴は、制御されたやり方でノズルから基体上に噴霧される。この目的には、圧倒的に連続インクジェット方式及びドロップオンデマンド方式が用いられる。連続インクジェット方式では、液滴が連続的に生成し、そして印刷に必要とされない液滴は回収容器に運ばれて再生利用される。しかしドロップオンデマンド方式では、必要に応じて液滴が生成して印刷される;即ち、液滴は、印刷に必要なときにのみ生成する。液滴の生成は、例えば、圧電インクジェットヘッドを用いて、又は熱エネルギーを用いて(バブルジェット)行うことができる。
【0114】
続く結合剤の硬化、即ち、印刷の定着は、熱又は高エネルギー放射線の助けを借りて、通常のやり方で行うことができる。この目的には、印刷は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素)下で電子による(電子ビーム硬化)か、又は高エネルギー電磁放射線(好ましくは、220〜450nmの波長範囲)によるかのいずれかで照射される。このような手順において、インジケーターの分解を回避するために、選ばれた光強度は、硬化速度に適合させるべきである。
【0115】
本発明の別の実施態様は、包装材料又はラベルに直接組み込まれた酵素を含むことを特徴とする、包装材料又はラベルに関する。好ましくは、酵素は、共有結合、複合体形成及び/又は接着により、包装材料又はラベル上に又はこれらの中に固定化されている。
【0116】
更に別の実施態様において、本発明はまた、包装材料又はラベルを印刷する方法であって、
(a) 場合により、包装材料又はラベルに酵素を含む溶液を印刷する工程、
(b) 場合により、包装材料又はラベルへの酵素の共有結合、複合体形成及び/又は接着を形成することにより、酵素を包装材料又はラベル上に又はこれらの中に固定化する工程、並びに
(c) 固定化酵素を含む包装材料又はラベルに、酵素の基質を含む溶液を印刷する工程であって、酵素により触媒される基質の反応によって、時間及び温度依存的に反応生成物が生成し、そしてこの反応生成物の形成は、基質及び/又は生成物の濃度に関連する物理的特性をモニターすることにより検出することができる工程
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0117】
インクジェット印刷法が利用されるとき、この手順は有利には以下のとおりである:
【0118】
工程a)において、基質とは異なる色を有する反応生成物が直接生成するように、酵素特異的基質を変換することができる、少なくとも1つの酵素を含む溶液は、上で定義されるように、インクジェット印刷法を用いて包装材料又はラベルに、特に経時劣化及び温度感受性製品のこのような包装材料に適用される包装又はラベルに適用される。
【0119】
好ましい実施態様では、工程a)において、インクジェット印刷法を用いて、時間の関数としてインジケーターの色の変化を再現する参照スケールを追加的に適用することができ、そして有効期限、製品識別、重量、含量などのような更なるテキスト(又は情報)を、好ましくは黒インクで適用することができる。
【0120】
工程a)に続いて工程b)が行われ、ここで酵素は、包装材料又はラベルへの酵素の共有結合、複合体形成及び/又は接着を形成することにより、包装材料又はラベル上に又はこれらの中に固定化される。好ましくは、時間・温度インジケーターの酵素は、工程a)の酵素のビオチン化型のビオチン残基と、包装材料又はラベルの表面に結合したアビジンポリペプチドとにより形成される、アビジン−ビオチン−複合体を介して固定化される。ビオチン−ストレプトアビジン相互作用は、特異的かつ強力(Kd=10-15M)であるため、ビオチン化酵素は、固体アビジン修飾支持体に堅く結合する。
【0121】
工程b)に続いて酵素特異的基質の適用が行われ、ここで固定化酵素により触媒される基質の反応によって、時間及び温度依存的に反応生成物が生成し、そしてこの反応生成物の形成は、基質及び/又は生成物のその濃度に関連する物理的特性をモニターすることにより検出できる。工程a)の酵素がアルカリホスファターゼであるとき、好ましくは、4−ニトロフェニルリン酸(pNPP)が発色性基質として使用される。APによるpNPPの変換によって、黄色の反応生成物が生じ、そしてこれは405nmで容易に検出できる。
【0122】
時間−温度インジケーターと共に印刷される参照スケールを用いて、品質等級の絶対的な決定が可能である。読み取りを楽にするために、時間−温度インジケーター及び参照スケールは、有利には淡色の包装材料又はラベル上に配置される。
【0123】
例えば、工程a)及び工程c)において、上述のように酵素及び基質を含む、印刷インク、印刷インク濃縮液及び/又はインクジェット用インクは、経時劣化及び温度感受性製品の包装にバーコードの形で適用することができる。インジケーターの時間及び/又は温度が誘発する脱色又は着色は、有利には、一旦有効期限が過ぎると、もはやバーコードをスキャナーで読みとることができないように調整される。あるいは、インジケーターの時間及び/又は温度依存的な脱色はまた、読みとれるが、読みとると有効期限に関する情報が与えられるような、バーコードの変化を引き起こすことができる。
【0124】
本発明はまた、経時劣化及び温度感受性製品の品質を決定する方法であって、
(a) 包装材料又はラベルに直接組み込まれた酵素を含む包装材料又はラベルに、少なくとも1つの固定化酵素に対する基質を含む印刷インク又は印刷インク濃縮液を印刷する工程であって、時間及び温度依存的に酵素により触媒される基質の反応によって、反応生成物が生成し、そしてこの反応生成物の形成が、基質及び/又は生成物のその濃度に対応する物理的特性をモニターすることにより検出できる工程、並びに
(b) 時間又は温度が誘発する反応生成物の生成の程度を決定し、そして反応生成物の生成の程度から経時劣化及び温度感受性製品の品質を推定する工程、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0125】
製品の品質は、参照スケールの助けを借りて脱色又は着色の程度を評価することにより決定されるのが好ましい。
【0126】
特に腐敗しやすい材料の包装である、インジケーターの着色は、所定の時点で、好ましくは例えば、工程c)での基質の印刷直後に起こってよい。
【0127】
よって時間−温度時計は、所定の望まれる時点で開始させることができる。本発明の考察には脱色が好ましいが、着色過程が時間−温度時計の基礎となるインジケーターの使用も考えられる。
【0128】
経時劣化又は温度感受性製品の品質の実際の決定には、工程c)におけるインジケーターの活性化が先行する。後の時点で、時間又は温度が誘発する脱色の程度が測定されて、製品の品質はそこから推察される。ヒトの眼の助けを借りて評価が行われるとき、一定の品質等級、一定の時点などを一定の程度の脱色に割り当てる参照スケールは、例えば、基質と平行に、又は基質の下に配置するのが有利であろう。
【0129】
本発明の方法は、食料品(例えば、冷凍食品)、医薬、薬物、移植臓器及び腐敗しやすい原料のような、腐敗しやすい製品に印を付けるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化酵素とこの酵素の基質を含む、温度の経時変化を表示するための時間・温度インジケーターであって、酵素により触媒される基質の反応によって、時間及び温度依存的に反応生成物が生成し、そしてこの反応生成物の形成が、基質及び/又は生成物の濃度に関連する物理的特性をモニターすることにより検出できるインジケーター。
【請求項2】
酵素触媒反応により、基質とは異なる色の反応生成物が生成する、請求項1記載の時間・温度インジケーター。
【請求項3】
酵素が、アミダーゼ、リパーゼ、グリコシラーゼ、カルボン酸エステラーゼ又はエーテルヒドロラーゼである、請求項1又は2記載の時間・温度インジケーター。
【請求項4】
基質が、
(a) 一般式(I):
【化1】


で示される化合物、又は
(b) 一般式(II):
【化2】


[式中、
R’は、下記式:
【化3】


(式中、R”は、アルコキシアルキル及びアルコキシアリールを含む、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基である)で示される基であり、好ましくは
R’は、下記式:
【化4】


で示される基である]で示される化合物よりなる群から選択される色素前駆体である、請求項1〜3のいずれか1項記載の時間・温度インジケーター。
【請求項5】
基質が、一般式(III):
【化5】


[式中、
Xは、発色団であり、Oは、酸素であり、そしてR'''は、そのグリコシド炭素原子を介してOに結合している糖残基、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基、及び下記式:
【化6】


(式中、R”は、アルコキシアルキル及びアルコキシアリールを含む、非置換であるか又は置換されている、脂肪族又は芳香族残基である)で示される基を表す]で示される化合物の群から選択され、そして酵素が、グリコシラーゼ、エーテルヒドロラーゼ又はカルボン酸エステラーゼである、請求項1〜3のいずれか1項記載の時間・温度インジケーター。
【請求項6】
基質が、下記式:
【化7】


で示される、請求項1〜3のいずれか1項記載の時間・温度インジケーター。
【請求項7】
酵素が、包装材料又はラベルに直接組み込まれており、そして基質が、該包装材料又はラベルに直接印刷されるインク配合物として提供される、請求項1〜6のいずれか1項記載の時間・温度インジケーター。
【請求項8】
酵素が、共有結合、複合体形成及び/又は接着により、包装材料又はラベル上に又はこれらの中に固定化されている、請求項7記載の時間・温度インジケーター。
【請求項9】
時間及び温度依存的な酵素の基質の反応生成物への酵素触媒反応の工程を含むことを特徴とする、時間・温度の表示方法であって、反応生成物の形成が、基質及び/又は生成物の濃度に対応する物理的特性をモニターすることにより検出され、そして酵素が、固体支持体上に又はその中に固定化されている方法。
【請求項10】
時間・温度インジケーターの酵素の少なくとも1つの基質を含むことを特徴とする、印刷インク又は印刷インク濃縮液であって、時間及び温度依存的な酵素により触媒される基質の反応によって、基質及び/又は生成物の濃度に対応する物理的特性をモニターすることにより検出できる反応生成物が生成する、インク又はインク濃縮液。
【請求項11】
包装材料又はラベルに直接組み込まれている、酵素を含むことを特徴とする、包装材料又はラベル。

【公表番号】特表2008−516190(P2008−516190A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525285(P2007−525285)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053784
【国際公開番号】WO2006/015961
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】