説明

酵素安定化剤としてカルボキシル基を含有するベンゾフェノンまたは安息香酸アニリド誘導体

本出願は、プロテアーゼ阻害剤として機能し、かつ酵素安定化剤として適当な、カルボキシル基を含むベンゾフェノンまたは安息香酸アニリド誘導体を含有する洗浄剤および清浄剤に関する。さらなる課題は、プロテアーゼの可逆的阻害剤としてのそのような化合物の使用であり、洗浄剤または清浄剤処方のための安定化剤としての使用であり、さらにそれに関する方法および用途である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基を含有し、プロテアーゼ阻害剤として働き、故に適当な酵素安定化剤であるベンゾフェノンまたは安息香酸アニリド誘導体を含有する洗浄剤または清浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤および清浄剤における酵素の使用は、先行技術において確立されている。酵素は、それらの特異的活性によりそれぞれの薬剤の性能範囲を拡大する働きをする。これらは特に、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼおよびセルラーゼのような加水分解酵素を含む。上述した初めの3つの酵素は、タンパク質、デンプンおよび脂肪を加水分解する結果、汚れの除去に直接的に貢献する。セルラーゼは、それらの組織効果のため特に使用される。洗剤および清浄剤酵素の他の群は、酸化酵素、特にオキシダーゼであり、それらは好ましくは、汚れを漂白するためまたは漂白剤そのものを作り出すために、必要に応じて他の成分と併用して用いられる。持続的な最適化を受けるこれらの酵素に加えて、特定のタイプの汚れに最適にアプローチできるように、洗浄剤および清浄剤に用いられるさらなる酵素が絶えず利用可能とされ、特に、例えばペクチナーゼ、β−グルカナーゼ、マンナーゼまたは特に特定の植物由来ポリマーの加水分解のための他のヘミセルラーゼが利用可能である。
【0003】
プロテアーゼは、長い間に確立され、実際にすべての現代の効果的な洗浄剤および清浄剤に含まれる酵素であり、特にセリンプロテアーゼが含まれ、またスブチラーゼも含まれる。それらは、洗浄されるもののタンパク質性の汚れの分解を引き起こす。しかしながら、それらはまた、各薬剤に含まれる全ての他のタンパク質(即ち、特に他の酵素)を加水分解するのと同様に、自己加水分解(自己タンパク質分解)を受ける。これは、比較的良好な反応条件が広まっている場合に、特に洗浄工程中、即ち水性洗浄溶液中で起こる。しかしながら、これはまた各薬剤の貯蔵の間にも起こり、酵素活性(例えばプロテアーゼ活性)の一定の損失の原因であり、長期の貯蔵期間にも関連している。一般的に、洗剤または清浄剤中の酵素活性は、より長い貯蔵期間により酵素活性の低下を伴い、貯蔵期間に反比例する。これは、反応媒体と加水分解試薬のいずれもが処方中に含まれる水とともに利用可能であるため、特に水を含有するゲル状または液状処方において特に問題である。
【0004】
従って、洗浄剤および清浄剤の開発における1つの目標は、特に貯蔵中の薬剤に含まれる酵素を安定化させることである。これは様々な好ましくない影響、例えば物理的作用または酸化に起因する変性あるいは分解に対する保護をいうものと解される。これらの開発の1つの重点は、薬剤に含まれるタンパク質および/または酵素のタンパク質分解切断に対する保護からなる。これは、例えば特異的酵素顆粒中の酵素のカプセル化あるいは2室系(two-chamber systems)または多室系(multi-chamber systems)で剤を仕上げることで物理的障壁を作ることにより達成され得る。しばしば使用される他の方法は、プロテアーゼを阻害し、従って全体としてみると薬剤に含まれるプロテアーゼおよび他のタンパク質ならびに酵素に対する安定化剤として働く化合物として薬剤に加えられるという事実からなる。プロテアーゼ活性は、特に貯蔵の間に一時的に抑制されるべきであるが、洗浄工程では抑制されるべきではないため、これらは可逆的プロテアーゼ阻害剤でなければならない。
【0005】
先行技術において既知の可逆的プロテアーゼ阻害剤は、ポリオール、特にグリセロールおよび1,2−プロピレングリコール、ベンザミジン塩酸塩、ホウ砂、ホウ酸、ボロン酸あるいはその塩またはエステルを含む。そのうち芳香族基の誘導体、例えばオルト−、メタ−またはパラ−置換フェニルボロン酸、特に4−ホルミルフェニルボロン酸(4−FPBA)および/または前述した化合物の塩あるいはエステルを特に言及すべきである。ホウ酸誘導体がポリオールとともに使用される場合に、それらは酵素を安定化させる複合体を形成し得るため、特に良好な保護が得られる。ペプチドアルデヒド、即ち還元されたC末端を有するオリゴペプチド、特に2〜5個のモノマーのオリゴペプチドが、この目的のために記載されている。とりわけ、可逆的プロテアーゼ阻害剤にはオボムコイドおよびロイペプチンが含まれる。特異的可逆的ペプチド阻害剤ならびにプロテアーゼの融合タンパク質および特異的ペプチド阻害剤が、この目的のために使用される。
【0006】
しかしながら、グリセロールおよび1,2−プロピレングリコールのようなポリオールは、高い使用濃度を必要とし、そのため各薬剤の他の活性成分が少ない割合でのみ存在し得るため、有利でないことがわかった。
【0007】
比較的低濃度で効果があるセリンプロテアーゼ阻害剤のうち、ホウ酸誘導体が主要な位置付けをとる。例えば国際特許出願WO96/21716A1は、プロテアーゼ阻害剤として働くホウ酸誘導体が洗浄剤および清浄剤における酵素の安定化にも適していることを開示する。特に効果的な安定化剤の選択が、国際特許出願WO96/41859A1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第96/21716号パンフレット
【特許文献2】国際公開第96/41859号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、それらの安定効果にかかわらず、ホウ酸誘導体には重大な不利な点がある。ホウ酸塩のような多くのホウ酸誘導体は、いくつかの他の洗浄剤および/または清浄剤成分とともに望ましくない副産物を形成し、それは各薬剤における好ましい清浄目的にもはや使用できず、また洗浄したものに不純物として後に残ることさえある。
【0010】
従って生じる目的は、プロテアーゼ阻害剤として働き、その結果洗浄剤および清浄剤における酵素安定化剤として適当なホウ素非含有化合物を特定することである。
【0011】
ここで、概して液状、ゲル状またはペースト状である洗浄剤および清浄剤(特に水を含むものを含む)の使用が特に興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、下記の薬剤により達成される。
【0013】
プロテアーゼおよび下記一般構造式の化合物を含有する洗浄剤または清浄剤。
【化1】

[式中、
(a)Xはカルボニル基(C=O)または酸アミド基(NHCO)を表し、
(b)R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、
(c)R6、R7、R8、R9およびR10(環2における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、かつ、
(d)場合により、R1〜R10の2つの基(A)および(B)は互いにオルト位にあってよく、ここで(A)は、(b)および/または(c)に記載の必須のカルボキシル基(COOH)または場合により付加的なカルボキシル基であり、かつ(B)はヒドロキシメチル基であり、それらは上記の基としてまたは場合によりCH−O−CO−基として存在し、それらを含む環の炭素原子とともに五員環ラクトンを表す。]
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、洗剤または清浄剤は、特に繊維製品および/または固体表面の洗浄あるいは清浄に適した全ての薬剤を含むと理解される。この目的のために適当な成分について、以下に詳細に説明する。
【0015】
本発明によれば、プロテアーゼはタンパク質の酸アミド結合を加水分解することができる全ての酵素を含むと理解される。該プロテアーゼも、以下に詳細に述べる。
【0016】
該一般構造式により表される化合物は、特徴(a)に従ってケト基または酸アミド基により結合する2つのベンゼン環を有する芳香族化合物である。従って、これはベンゾフェノン誘導体または安息香酸アニリド誘導体である。
【0017】
このベンゾフェノン誘導体は、特徴(b)および(c)に従って、基R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)および/またはR6、R7、R8、R9およびR10(環2における)として水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを有する。2つの環それぞれに少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が存在することが必須条件である。
【0018】
同じことは安息香酸アニリド誘導体についても当てはまる。ここで、環1は安息香酸および/またはその置換生成物に起因し得る環であり、環2はアニリンおよび/またはその置換生成物に起因し得る環であることにより、環1および2は区別し得る。この安息香酸アニリド誘導体も、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを、R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)および/またはR6、R7、R8、R9およびR10(環2における)として有し得る。この場合も、2つの環それぞれに少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が存在することが必須条件である。
【0019】
特徴(d)によると、互いにオルト位にある(A)および(B)としてR1〜R10の2つの基を、2つの環1または2の1つにおける置換可能な基として有する場合、ベンゾフェノンや安息香酸アニリド誘導体も本発明に関連する。(A)は、(b)および/または(c)において前述したように必須のカルボキシル基(COOH)または任意の他のカルボキシル基であり、(B)はヒドロキシメチル基である;これらは前記のような基または場合により基CH−O−COとして存在し、それらを含む環の炭素原子とともに五員環ラクトンを形成する。
【0020】
(b)および(c)に従ってカルボキシル基(COOH)および/またはヒドロキシメチル基であることができる2つの置換基(A)および(B)は、1つの環内で互いに隣接していることもできる。即ち、互いにオルト位にあり、同時にヒドロキシル基およびカルボキシメチル基の形態で存在する。この場合、これらの2つの基は一緒にラクトンを形成し、阻害されるプロテアーゼにラクトンの形態で結合することがあり得る。また、ラクトン形態の先の変化をすることなく結合が起こり得る。本発明の実施に対して、合成でラクトンの形態を特定し、各薬剤の安定化剤としてすでに形成されたラクトンを加えることも可能である。最も適当な形態は、阻害されるプロテアーゼと意図された安定化剤に基づいて実験的に決定されることであり、それは当業者に少しも基本的困難をもたらすべきでない。
【0021】
特徴(b)および(c)ならびに1分子当たりのカルボキシル基の数に基づく好ましい実施態様によると、カルボキシル基を数える際に、このラクトンカルボキシル基は特徴(b)および/または(c)のカルボキシル基としても数えられるが、他のカルボキシル基に加えて存在していてもよい。
【0022】
本発明の他の好ましい実施態様において、2つのベンゼン環の1つの代わりに、チオフェン環が存在してもよい。その中の置換可能な基1'、2'、3'の配置は、上記特徴(b)、(c)および(d)についてされる言及との類推が可能である。
【0023】
この実施態様は、阻害されるプロテアーゼとの類似非共有結合性相互作用を可能にし、または個々の場合には芳香族チオフェン環を介したより良好な非共有結合性相互作用さえ可能にする。さらに、そこに含まれる硫黄原子は、特に遊離電子対を介してさらなる相互作用を可能とし、それは個々の場合に有利になり得る。これらの特に好適な化合物は、阻害される特異的プロテアーゼに基づく動的パラメーターが研究され、最適な選択および置換基の配置を介して最適化されたものである。ここで、ベンゼン環を有する化合物に基づいて得られた技術に頼ることは可能である。
【0024】
本発明は、全プロトン化および/または脱プロトン化体の前述した化合物を含んでなる。特にカルボキシル基(COOH)および場合によりアミノ基(NH)は、周囲媒質のpHによって、カルボキシレート基(COO)および/またはアンモニウム基(NH)として存在する。必要に応じて、逆帯電したカチオン(H、Na、Kなど)および/またはアニオン(Cl、Br、ギ酸塩、酢酸塩など)も存在し得る。本発明は、これら全ての形態を具現化し得る。本発明によると決定的要因は、本発明に関する化合物と、阻害される/安定化されるプロテアーゼとのそれぞれの相互作用である。
【0025】
この理論に制限されることなく、本発明によれば、本発明に関する化合物は、本発明の阻害される/安定化されるプロテアーゼと複合体を形成すると思われる。この複合体は、非共有状態で結合するプロテアーゼのくぼみに結合している基質に、本発明に関する化合物が組み込まれているようである。このように、プロテアーゼの活性中心は、この酵素によって加水分解できない化合物によりブロックされており、存在する他のタンパク質の加水分解に利用することはできない。これは、可逆的結合、即ち会合と解離の間の平衡を含む。この反応の平衡係数は、阻害定数またはKで示される。
【0026】
先行技術と比較した本発明に関する化合物の第一の有利点は、ポリオールと比較してより低量でよいことに加えて、洗浄剤および清浄剤において使用され得るプロテアーゼに対して好ましい阻害定数を有しているという事実からなる。これは、例えばセリンプロテアーゼについても、また金属プロテアーゼについてもいえる。このように、該阻害剤は可逆的に結合する。即ち、それらは固定され過ぎることなくまた緩過ぎることのない酵素との一時的な相互関係を生じない。従って、貯蔵中、本発明に関するほとんどのプロテアーゼは、プロテアーゼ阻害複合体の形態で存在する。それらに含まれるプロテアーゼおよび任意の他のタンパク質、特に他の酵素は、このようにして(タンパク質分解に対する安定化)この酵素によりタンパク質分解から保護される。一方、清浄過程で水性洗浄液または清浄液を調製するために水により本発明の薬剤を希釈する時、結合平衡は解離の方向に移るので、複合体は分解し、本発明に関するほとんどのプロテアーゼはタンパク質分解活性を有することになる。従って、本発明に関する化合物は、処方された目的に従って機能するプロテアーゼ阻害剤であり、洗浄剤および清浄剤のための酵素安定化剤である。
【0027】
先行技術と比較した本発明に関する化合物の第二の有利点は、要素として、それらがC、H、NおよびOならびに場合によりハロゲンおよび/または硫黄のみを有し、特にホウ素を含まないという事実からなる。従って、それらは、ホウ素に起因し得る他の洗浄剤または清浄剤成分による望ましくない副産物を形成しない。
【0028】
さらに、特に各芳香族環に存在するカルボキシル基により、それらは容易に水に溶解するため、対応する薬剤中に容易に組み込むことができ、貯蔵中の沈殿を防止することができる。
【0029】
特に加水分解される酸アミド結合に関して、プロテアーゼの基質と構造的に一致しているため、基本的に上記化合物は、おそらく可逆的阻害剤として働く。反対に、基本的に全てのプロテアーゼは、本発明に関する化合物により本来阻害され得るため、これらは本発明のプロテアーゼ阻害剤として適当である。セリンプロテアーゼ、特にスブチラーゼ、さらに特に、Bacillus lentus DSM 5483からのスブチリシンの異形に基づくスブチリシンに基づき記載された実験化合物の有利な効果を含む本特許出願の実施例に基づき示されるように、このことは特にセリンプロテアーゼについてもいえる。
【0030】
本発明の付加的な課題は、以下に関連する。
− 洗剤または清浄剤処方の範囲内におけるプロテアーゼの可逆的阻害剤および/または安定化剤としての前記化合物の使用;
− 活性化した前記化合物によりプロテアーゼを阻害および/または安定化する洗浄または清浄方法;
− 繊維製品および/または硬表面の洗浄および/または清浄のための本発明の洗剤あるいは清浄剤の使用;ならびに
− 洗剤または清浄剤の調製のためのプロテアーゼおよび前記化合物の使用。
【0031】
全ての本発明の態様において、下記の安定化剤の1つから選択された安定化化合物が、特に好ましい。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】
本発明によると、0.01〜10mMの、好ましくは0.1〜5の、特に好ましくは0.5〜2の阻害定数(K)を有する安定化化合物である洗浄剤または清浄剤が好ましい。
【0036】
阻害定数Kは、下記の方法により測定し得る。
【0037】
酵素活性の可逆的阻害剤の特徴化のために、阻害定数Kは特徴的で重要な特性である。Kは、可逆的な結合に対する、酵素、阻害剤および酵素−阻害剤複合体間の平衡を表す。酵素−阻害剤複合体は触媒的活性ではなく、遊離酵素濃度の還元による反応を阻害し、それは基質の結合のためにさらに利用できる。Kは、下記により定義付けられる。
=[I]×[E]/[EI]
式中、[E]、[I]および[EI]は、それぞれ、酵素(E)、阻害剤(I)および酵素−阻害剤複合体(EI)のモル平衡濃度である。この定義によると、各試験条件下、低Kを有する基質は良好な阻害剤である。
【0038】
は、対応する阻害剤の存在下におけるプロテアーゼの活性試験に基づいて測定される。酵素的パラメーターKおよびkcatは、当業者によく知られ、先行技術において確立されたミカエリス−メンテン速度論(Leonor Michaelis, Maud Menten(1913):The Kinetics of the Invertine Effect, Biochem.Z.49:333−369)に基づき、様々な濃度の阻害剤の存在下にて測定される。簡単に表すと、下記の式はミカエリス−メンテン速度論に当てはまる。

式中、E:酵素
S:基質
ES:酵素−基質複合体
P:生成物
、k−1、k:速度定数
【0039】
この式において、kは基質飽和(Vmax)での最大反応速度の尺度であり、代謝回転数または分子活性あるいはkcat(kcat=Vmax/[E]、式中、[E]は酵素の出発濃度である)としても既知である。従って、ミカエリス定数(即ち、転換速度、即ちv=Vmax/2である半飽和での一般的な基質濃度)は、以下のようにして得られる:
=k−1/k(ミカエリス−メンテンの場合、k≪kの時に適用)またはより一般的に、K=(k−1+k)/k(ブリッグ−ハルデインの場合、kがkに対してごくわずかでない場合に適用)。
【0040】
「ミカエリス−メンテン酵素」の飽和関数は、パラメーターKおよびVmaxを使用して、以下のように得られる:

式中、v:Pの形成速度(v=「速度」)(mol・L−1・s−1
max:最大速度(mol・L−1・s−1
:ミカエリス−メンテン定数(mol・L−1
[S]:基質濃度(mol・L−1
【0041】
阻害定数Kは、様々な基質濃度[S]で、実験データを下記式1に当てはめることにより、初期触媒速度(vanf)(プロテアーゼに対する初期加水分解速度)を測定することで得られる:
式1: vanf=kcat×[S]×E/(K×(1+[I]/K)+S)
式中、[I]は、この場合も阻害剤濃度を表す。
【0042】
また、Kは、IC50に基づくチェン−プルソフ式(式2、Y. Cheng, W. H. Prusoof (1973), Biochem. Pharmacol. 22, 3099-3108)を用いて測定してもよい。IC50値は、様々な濃度の阻害剤の存在下において基質の触媒活性を測定し、勾配変化のある(疑似丘勾配)S字状線量効果式に実験データを調整することにより決定される。これは、50%の阻害を達成するために必要とされる阻害剤濃度である。
【0043】
従って、Kは下記式2より得られる。
式2: K=IC50/(1+[S]/K
式中、[S]は試験における基質濃度を表し、Kは、阻害剤のIC50濃度で一致するとして、基質に対してKと同一視し得る基質の解離定数を表す。
【0044】
このようにして決定されるK値は、使用される酵素に関わる化合物を特徴づける。実施例1において、プロテアーゼの残存活性、即ちBacillus lentusアルカリ性プロテアーゼF49(WO95/23221A1による)は、阻害剤の存在下で測定される。これは、典型的なスブチリシンプロテアーゼであるため、この酵素により得られる値は、他のセリンプロテアーゼ、特に他のスブチリシンプロテアーゼに特有の値でもある。疑わしい場合には、関心のあるプロテアーゼに対する正確な値は、それぞれ特異的な酵素に基づき測定されなければならない。
【0045】
好ましい実施態様において主に固形状で存在し、第2の実施態様において主に液状、ペースト状またはゲル状で存在する本発明の洗浄剤または清浄剤において、プロテアーゼは薬剤1gあたり2μg〜20mg、好ましくは薬剤1gあたり5μg〜17.5mg、特に好ましくは薬剤1gあたり20μg〜15mg、最も特に好ましくは薬剤1gあたり50μg〜10μgの量で含有される。
【0046】
安定化剤は、本発明の薬剤に特に、薬剤1gあたり50mgまでの量で、好ましくは10mgまでの量で、特に好ましくは7mgまでの量で、最も特に好ましくは薬剤1gあたり5mgまでの量で存在する。さらに、0.01〜100×Kの量(存在するプロテアーゼに基づく)、好ましくは0.1〜10×K、特に好ましくは1〜5×Kの量で存在することが安定化剤にとって好ましい。
【0047】
安定化剤とプロテアーゼのモル比は、好ましくは1:1〜1000:1、特に1:1〜500:1、特に好ましくは1:1〜100:1、最も特に好ましくは1:1〜20:1である。
【0048】
上記一般構造式による安定化剤に加えて、本発明の薬剤は少なくとも1つのさらなる安定化剤を含有してよい。従って、本発明の他の実施態様において、該洗剤または清浄剤は少なくとも1つのさらなる安定化剤を含有することを特徴とする。従って、上記薬剤には少なくとも2つの化合物が含まれており、薬剤に含まれる酵素、特にプロテアーゼの安定化をもたらす。これらの化合物は、好ましくは相乗的に働く。即ち、2つの化合物により達成される安定効果は、2つの個々の安定効果の和を超える。好ましい実施態様において、該安定化剤は、1つまたはそれ以上のポリオール、特にグリセロールまたは1,2−エチレングリコール、抗酸化剤、乳酸塩あるいは1つまたはそれ以上の乳酸塩誘導体若しくはそれらの組み合わせである。国際特許出願WO07/113241A1またはWO02/008398に開示される1つまたはそれ以上の酵素安定化化合物および/または阻害化合物も好ましい。
【0049】
本発明により安定化されるおよび/または可逆的に阻害されるプロテアーゼは、セリンプロテアーゼが好ましく、特にスブチラーゼ、特に好ましくはスブチリシンである。
【0050】
このようなプロテアーゼの例には、スブチリシンBPN’およびカールスバーグ、プロテアーゼPB92、スブチリシン147および309、Bacillus lentusからのアルカリ性プロテアーゼ、スブチリシンDYおよびスブチラーゼ、狭義にはスブチリシンとして分類されないが、酵素テルミターゼ(thermitase)、プロテイナーゼKまたはプロテイナーゼTW3およびTW7が含まれる。スブチリシンカールスバーグは、Novozymes A/S社(Bagsvaerd, デンマーク)から商品名Alcalase(登録商標)として、さらに発展した形態で入手可能である。スブチリシン147および309は、商品名Esperase(登録商標)および/またはSavinase(登録商標)の下、Novozymes社から市販されている。称号BLAP(登録商標)で扱われるプロテアーゼ変異体は、Bacillus lentus DSM 5483から得られるプロテアーゼに由来している。
【0051】
さらなるプロテアーゼには、例えば、Durazym(登録商標)、Relase(登録商標)、Everlase(登録商標)、Nafizym、Natalase(登録商標)、Kannase(登録商標)およびOvozymes(登録商標)の商品名の下、Novozymes社から入手可能な酵素、Purafect(登録商標)、Purafect(登録商標)OxPおよびProperase(登録商標)の商品名の下Genencor社から入手可能な酵素、Protosol(登録商標)の商品名の下、Advanced Biochemicals Ltd.(Thane, インド)から入手可能な酵素、Wuxi(登録商標)の商品名の下、Wuxi Snyder Bioproducts Ltd.(中国)から入手可能な酵素、Proleather(登録商標)およびProtease P(登録商標)の商品名の下、天野製薬株式会社(名古屋、日本)から入手可能な酵素ならびにProteinase K-16の商品名の下、花王株式会社(東京、日本)から入手可能な酵素が含まれる。
【0052】
驚くべきことに、このようなプロテアーゼが、ここに説明される化合物により特に良好に安定化および/または可逆的に阻害されることがわかった。さらに、プロテアーゼの特定の変異体(即ち、上記変異体を含む)でさえ、これらの化合物により特に有利な方法で安定化される。そのようなプロテアーゼ変異体は、以下に記載する本発明の課題の一部である。
【0053】
本発明の安定化および/または可逆的阻害プロテアーゼは、野生型酵素またはプロテアーゼ変異体であってよい。用語「野生型酵素」は、自然発生有機体および/または自然生息環境に存在しそれらから分離し得る酵素を意味すると理解される。しかしながら、酵素は可変であり、特に意図される用途にそれらの特性を適合させるか、それらの触媒活性に影響を及ぼすためにある程度目標とされた方法で変えられる。これらの変化は、しばしば、酵素のアミノ酸配列における変化に起因して生じる。このような変化は目標とされる方法において、方向的にまたは例えばランダム突然変異過程によりランダムに生じ得る。酵素変異体は、出発系統、例えば野生型酵素から、例えばアミノ酸配列における変化により作り出された酵素をいうと理解される。アミノ酸配列における変化は、好ましくは、アミノ酸置換、欠失、挿入またはそれらの組み合わせが行われ得ることによる変異を介して起こる。タンパク質へのこのような変異の導入は、最先端技術であり、酵素技術の分野の当業者に十分に既知である。基本的に全ての酵素を、この方法により変化させ得る。本発明によると、プロテアーゼ変異体が好ましい。これらは、アミノ酸配列の変化により出発プロテアーゼ、例えば野生型プロテアーゼから、好ましくはアミノ酸置換、欠失、挿入またはそれらの組み合わせが行われることにより作り出される。しかしながら、出発プロテアーゼは、天然発生の野生型プロテアーゼである必要があるわけではない。すでに変化がなされた先行技術から既知のプロテアーゼをさらに開発してもよく、従って、さらなるプロテアーゼ変異体を作り出すための出発プロテアーゼとして再び機能してよい。
【0054】
従って、例えば、上述した全てのプロテアーゼを変化なしに本発明の薬剤において使用することができ、ここに記載する化合物により安定化されてよい。しかしながら、それらはまた、本発明の薬剤に含有され、ここに記載する化合物により安定化される変異体に対する出発酵素も意味し得る。
【0055】
さらに、野生型酵素および/または下記変異体の出発酵素は、ここに記載される全てのプロテアーゼおよび/または変異体に好ましい:
−Bacillus amyloliquefaciensからのアルカリ性プロテアーゼ(BPN')、
−Bacillus licheniformisからのアルカリ性プロテアーゼ(スブチリシンカールスバーグ)
−アルカリ性プロテアーゼPB92、
−スブチリシン147および/またはスブチリシン309(savinase)、
−Bacillus lentus好ましくはBacillus lentus DSM 5483からのアルカリ性プロテアーゼ、
−Bacillus alcalophilusからのアルカリ性プロテアーゼ(DSM 11233)、
−Bacillus gibsoniiからのアルカリ性プロテアーゼ(DSM 14391)または前者と少なくとも70%が同一のアルカリ性プロテアーゼ、
−Bacillus sp.からのアルカリ性プロテアーゼ(DSM 14390)または前者と少なくとも98.5%が同一のアルカリ性プロテアーゼ、
−Bacillus sp.からのアルカリ性プロテアーゼ(DSM 14392)または前者と少なくとも98.1%が同一のアルカリ性プロテアーゼ、
−Bacillus gibsoniiからのアルカリ性プロテアーゼ(DSM 14393)または前者と少なくとも70%が同一のアルカリ性プロテアーゼ。
【0056】
従って、本発明の別の実施態様において、洗剤または清浄剤は、アミノ酸の置換、挿入または欠失のようなアミノ酸における少なくとも1つの変化により出発プロテアーゼから得られ、アミノ酸レベルで少なくとも90%、好ましくは少なくとも92.5%、特に好ましくは少なくとも95%、最も特に好ましくは少なくとも97.5%が出発プロテアーゼと同一であるプロテアーゼに特徴付けられる。
【0057】
当業者は、酵素技術の分野から配列比較、いわゆるアラインメントを実行し、作り出す方法をよく知っている。例えば、比較配列に対する同一値(identity values)または相同値(homology values)は、このような配列比較によって決定される。このような比較は、問題となるタンパク質のヌクレオチドまたはアミノ酸配列中の類似配列を互いに割り当てることにより行われる。これは、相同関係表示(homologization)として既知である。各位置の一覧にされた配列は、アラインメントとして既知である。ヌクレオチド配列の分析においては、両方の相補鎖と3つの可能なリーディングフレームの全てを考慮しなければならない。同様に、遺伝情報の縮重性および生物特異的なコドンの使用(コドン使用頻度)が考慮される。一方で、アラインメントは、例えばFASTAまたはBLASTアルゴリズムを用いてコンピュータープログラムにより作製される。この手法は、例えばD. J. LipmanおよびW. R. PearsonによりScience、227巻、1435〜1441頁(1985年)に記載されている。
【0058】
このように比較される配列中の一致する全ての配置をまとめたものは、コンセンサス配列として既知である。
【0059】
このような比較により、互いに比較される配列の類似性または相同性についての言及が可能になる。これは、一致率、即ち、同位置および/またはアラインメントの対応位置にある同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合で示される。より広く解釈される相同性という用語では、保存されたアミノ酸置換をこの値に含む。その場合、我々は類似率という。そのような言及は、タンパク質または遺伝子全体あるいは単に個々の領域だけについて行い得る。
【0060】
異なるタンパク質の相同領域は、アミノ酸配列の一致により決定される。これらは、また同一機能により特徴付けられる。これは極めて小さい領域、いわゆるボックス(これはほんのわずか数個のアミノ酸からなり、通常全体的な活性に不可欠な機能を発揮する)における、完全な一致までの範囲にわたる。相同領域の機能は、完全なタンパク質により発揮される機能の極めて小さい従属機能(例えば基質複合体または遷移複合体を生成するための個々の水素ブリッジ結合の形成など)であると理解される。
【0061】
そのような配列比較および/またはアラインメントは、特に異なる分子中の対応位置を見つけ出すためにも役立つ。例えば、異なる酵素のアラインメントにおいて、各配列が、例えば異なる全長または異なる領域および/または部分配列を有している場合でさえも、あるいは配列中に付加的なアミノ酸および/またはヌクレオチドが存在する場合でさえも、互いに一致する各アミノ酸配列または核酸配列における位置を確定することができる。従って、2次配列中で一致する位置を、一次配列における特定の位置に具体的に割り当てることができ、一致する位置が分子中の異なる領域に位置することは十分に可能である。さらに、異なるアミノ酸残基が一致する位置に存在してもよい。従って、そのような配置比較および/または位置の決定に対して、どの位置が関連し、またどの酵素が出発物質として使用されるか、即ち、どの計測方法が位置の決定のための基礎として使用されるかが具体的に言及される。
【0062】
下記の発明課題に対して、未審査の国際特許WO91/02792A1に開示され、269個のアミノ酸残基を有するBacillus lentus DSM 5483からのアルカリ性プロテアーゼ(本特許出願において、Bacillus lentusからのアルカリ性プロテアーゼという)の成熟タンパク質のアミノ酸配列を位置測定に使用する。
【0063】
本発明の他の実施態様において、プロテアーゼがアミノ酸の少なくとも1つの変化により出発プロテアーゼから得られるという点で、洗剤または清浄剤は特徴付けられる。該変化はアラインメントにおいて、Bacillus lentusからのアルカリ性プロテアーゼの95〜103位に配列されたアミノ酸配列領域のアミノ酸の置換または挿入である。
【0064】
そのようなプロテアーゼ変異体は、特に好ましくは95、96,97、98、99、100、101、102および/または103位の、最も特に好ましくは97位と98位および/または99位と100位の間の1つまたはそれ以上の単一アミノ酸の挿入による変異体である。
【0065】
本発明の他の実施態様において、プロテアーゼがアラインメントにおいて、Bacillus lentusからのアルカリ性プロテアーゼの3、4、36、42、43、47、56、61、69、87、96、99、101、102、104、114、118、120、130、139、141、142、154、157、188、193、199、205、211、224、229、236、237、242、243、250、253、255および268位に配列されたアミノ酸の置換、挿入または欠損による少なくとも1つの変化により出発プロテアーゼから得られるという点で、洗剤または清浄剤は特徴付けられる。
【0066】
出発分子と比較して以下の位置の1つまたはそれ以上のアミノ酸変化が、特に好ましい:3、4、43、61、188、193、199、211、224、250および253(Bacillus lentusからのアルカリ性プロテアーゼに従いカウント)、特に好ましくはX3T、X41、X43V、X61A、X188P、X193M、X1991、X211L、X211D、X211E、X211G、X211NまたはX211Q、X224V、X250Gおよび/またはX253Nの1つまたはそれ以上のアミノ酸置換である。このプロテアーゼは、特に211位における点突然変異による変異体であり、好ましくはこの位置における単一アミノ酸の置換による変異体であり、特に好ましくはX211Lのアミノ酸置換による変異体である。上記位置情報は、この場合もアラインメントにおいて、Bacillus lentusからのアルカリ性プロテアーゼの前記位置に配置されたアミノ酸残基をいう。
【0067】
プロテアーゼに加えて、本発明の薬剤は、特に下記の群からの1つまたはそれ以上の他の酵素を含有してもよい:1つまたはそれ以上のさらなるプロテアーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、リパーゼおよびオキシドレダクターゼ。アミラーゼは、好ましくはα−アミラーゼである。ヘミセルラーゼは、好ましくはβ−グルカナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼおよび/またはマンナナーゼである。セルラーゼは好ましくは単一成分セルラーゼのセルラーゼ混合物、好ましくはおよび/または主にエンドグルカナーゼおよび/またはセロビオヒドロラーゼである。オキシドレダクターゼは、好ましくはオキシダーゼ、特にコリンオキシダーゼまたはペルヒドロラーゼである。
【0068】
本発明の薬剤は、好ましくは少なくとも1つの錯化剤および/またはビルダー物質を含有する。ビルダーは、特にゼオライトビルダーおよび/または非イオン性界面活性剤であり、非界面活性剤は好ましくはヒドロキシ混合エーテルおよび/または光学的光沢剤であり、光学的光沢剤はジフェニル化合物、特にジスチリル−ビフェニル誘導体および/またはスチルベン−トリアジン誘導体を含有する。
【実施例】
【0069】
実施例1:阻害剤の存在下における残存プロテアーゼ活性試験
下記に記載された化合物がプロテアーゼ活性阻害効果を有することを確認するため、Bacillus lentusアルカリ性プロテアーゼF49(WO95/23221A1による)をこれらの化合物の存在下で測定した。
【0070】
基質スクシニル−アラニン−アラニン−プロリン−フェニルアラニン−パラニトロアニリド(AAPFpNA;Bachem L-1400)および5×10−9および/または1×10−8Mのプロテアーゼを、100mMのトリスバッファーに加えた。その後、表1に記載する試験化合物を最終濃度10mMとなるよう添加した。それぞれ、無水DMSOに溶解し、各化合物を含まない同量のDMSOによる対応する対照を用いて、酵素活性におけるDMSOの影響を補正した。該バッチを5分間、pH8.6、25℃で培養した。1Uは1分間あたりに分解される1μmolの基質に相当する。
【0071】
下記の化合物は、このような方法で試験された。
V1:2−[[(3−カルボキシフェニル)アミノ]カルボニル]安息香酸
V2:2−[[(2−カルボキシベンゾイル)アミノ]安息香酸
V3:2−[[(4−カルボキシフェニル)アミノ]カルボニル]安息香酸
V4:2−(4−カルボキシベンゾイル)安息香酸
V5:4−(2−カルボキシベンゾイル)−1,2−ベンゼンジカルボン酸
【0072】
これらの全てにおいて50%以下の残存プロテアーゼ活性となった。V1がこれらの中で最大であり、最も適当なプロテアーゼ阻害剤および/または安定化剤である。その後V2、V3、V4(V3とほとんど同じくらい)そしてV5の順に続いた。
【0073】
これらの結果に基づき、これらの化合物は、プロテアーゼを含有する洗浄剤および清浄剤における酵素活性を安定化させるのにも適当である。
【0074】
実施例2:プロテアーゼ阻害剤の存在下での貯蔵におけるプロテアーゼ含有洗浄剤および清浄剤の安定性試験
下記化合物を含む液体洗剤を、基本処方(全ての量は重量%で示す)として調製した:0.3〜0.5%のキサンタンガム、0.2〜0.4%の消泡剤、6〜7%のグリセロール、0.3〜0.5%のエタノール、4〜7%のFAEOS、24〜28%の非イオン性界面活性剤、1%のホウ酸、1〜2%のクエン酸ナトリウム(二水和物)から、2〜4%のソーダ、14〜16%のヤシ脂肪酸、0.5%のHEDP、0〜0.4%のPVP、0〜0.05%の光学的光沢剤、0〜0.001%の着色剤、残りは脱塩水。
【0075】
この処方を試験する阻害剤および1,275,000HPU/L B. lentusアルカリ性プロテアーゼF49と混合した。HPU(ヘンケルプロテアーゼ単位)で示されるプロテアーゼ活性は、van Raay、SaranおよびVerbeekによる論文:Tenside [Surfactants](1970年)、第7巻、125〜132頁「For determination of the proteolytic activity in enzyme concentrates and enzyme-containing washing, cleaning agents and dishwashing agents」の記載に従って、測定した。
【0076】
30℃の気密性密閉容器内で、様々な期間貯蔵した。
【0077】
分析のため、各薬剤のタンパク質分解活性の初期値を貯蔵後の測定値と比較した。貯蔵後に残っている活性が高いほど、貯蔵中そこに含まれるプロテアーゼの不活化は良好であって、本発明の安定化剤としてより適当な各化合物である。
【0078】
試験した全ての化合物が、明らかに安定効果を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼおよび下記一般構造式の化合物を含有する洗剤または清浄剤。
【化1】

[式中、
(a)Xはカルボニル基(C=O)または酸アミド基(NHCO)を表し、
(b)R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、
(c)R6、R7、R8、R9およびR10(環2における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、かつ、
(d)場合により、R1〜R10の2つの基(A)および(B)は互いにオルト位にあってよく、ここで(A)は、(b)および/または(c)に記載の必須のカルボキシル基(COOH)または場合により付加的なカルボキシル基であり、かつ(B)はヒドロキシメチル基であり、それらは上記の基としてまたは場合によりCH−O−CO−基として存在し、それらを含む環の炭素原子とともに五員環ラクトンを表す。]
【請求項2】
安定化化合物が、2つの芳香環のそれぞれに、(d)によるラクトンに結合したカルボキシル基も数えて1〜3個のカルボキシル基を、好ましくは1個または2個のカルボキシル基を、最も特に好ましくは2個または3個のカルボキシル基を両方の環に同時に有する、請求項1に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項3】
安定化化合物が、含有するプロテアーゼに対して0.01〜10mMの、好ましくは0.1〜5の、特に好ましくは0.5〜2の阻害定数(K)を有する、請求項1または2に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項4】
安定化化合物が下記の安定化剤の1つから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤:





【請求項5】
主に固形状である請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項6】
主に液状、ペースト状またはジェル状の、請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項7】
プロテアーゼが剤1g当たり2μg〜20mg、好ましくは剤1g当たり5μg〜17.5mg、特に好ましくは剤1g当たり20μg〜15mg、最も特に好ましくは剤1g当たり50μg〜10μgの量で含まれている、請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項8】
安定化剤が剤1g当たり50mgまで、好ましくは10mgまで、特に好ましくは7mgまで、最も特に好ましくは剤1g当たり5mgまでの量で含まれている、請求項1〜7のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項9】
安定化剤とプロテアーゼのモル比が1:1〜1000:1、特に1:1〜500:1、特に好ましくは1:1〜100:1、最も特に好ましくは1:1〜20:1の範囲である、請求項1〜8のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項10】
安定化剤が0.01〜100×K(含有されるプロテアーゼに基づく)、好ましくは0.1〜10×K、特に好ましくは1〜5×Kの量で含まれている、請求項1〜9のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項11】
プロテアーゼがセリンプロテアーゼ、好ましくはスブチラーゼ、特に好ましくはスブチリシンである、請求項1〜10のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項12】
プロテアーゼが、アミノ酸の置換、挿入または欠失のような少なくとも1つの変化により出発プロテアーゼから得られ、アミノ酸レベルで出発プロテアーゼと少なくとも90%一致する、好ましくは少なくとも92.5%一致する、特に好ましくは少なくとも95%一致する、最も好ましくは少なくとも97.5%一致する、請求項1〜11のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項13】
プロテアーゼがアミノ酸の少なくとも1つの変化により得られ、該変化がアラインメントにおいて、Bacillus lentus由来のアルカリプロテアーゼの95〜103位に配置されるアミノ酸配列の領域におけるアミノ酸の置換または挿入である、請求項1〜12のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項14】
プロテアーゼが、アラインメントにおいてBacillus lentus由来のアルカリプロテアーゼの3、4、36、42、43、47、56、61、69、87、96、99、101、102、104、114、118、120、130、139、141、142、154、157、188、193、199、205、211、224、229、236、237、242、243、250、253、255および268位に配置されるアミノ酸の置換、挿入または欠失のような少なくとも1つの変化により出発プロテアーゼから得られる、請求項1〜13のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項15】
少なくとも1つの付加的な安定化剤を含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項16】
安定化剤が1つまたはそれ以上のポリオール、特にグリセロールまたは1,2−エチレングリコール、抗酸化剤、乳酸塩あるいは1つまたはそれ以上の乳酸誘導体若しくはそれらの組合わせである、請求項15に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項17】
特に下記の群:1つまたはそれ以上の付加的なプロテアーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、リパーゼおよびオキシドレダクターゼ、からの1つまたはそれ以上の付加的な酵素を含有する、請求項1〜16のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項18】
アミラーゼがα−アミラーゼである請求項17に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項19】
ヘミセルラーゼが、β−グルカナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼおよび/またはマンナーゼである、請求項17または18に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項20】
セルラーゼが、セルラーゼ混合物または単一成分セルラーゼ、好ましくはおよび/または主にエンドグルカナーゼおよび/またはセロビオヒドロラーゼである、請求項17〜19のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項21】
オキシドレダクターゼが、オキシダーゼ、特にコリンオキシダーゼまたはペルヒドロラーゼである、請求項17〜20のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項22】
少なくとも1つの錯化剤および/またはビルダー物質を含有する、請求項1〜21のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項23】
ビルダーがゼオライトビルダーである、請求項22に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項24】
非イオン性界面活性剤を含有する、請求項1〜23のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項25】
非イオン性界面活性剤がヒドロキシ混合エーテルである、請求項24に記載の剤。
【請求項26】
光学的光沢剤を含有する、請求項1〜25のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項27】
光学的光沢剤が、ジフェニル化合物、特にジスチリル−ジフェニル誘導体および/またはスチルベン−トリアジン誘導体である、請求項26に記載の洗浄剤または清浄剤。
【請求項28】
洗浄剤または清浄剤処方の範囲内におけるプロテアーゼの可逆的阻害剤としての、下記一般構造式の化合物の使用。
【化2】

[式中、
(a)Xはカルボニル基(C=O)または酸アミド基(NHCO)を表し、
(b)R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、
(c)R6、R7、R8、R9およびR10(環2における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、かつ、
(d)場合により、R1〜R10の2つの基(A)および(B)は互いにオルト位にあってよく、ここで(A)は、(b)および/または(c)に記載の必須のカルボキシル基(COOH)または場合により付加的なカルボキシル基であり、かつ(B)はヒドロキシメチル基であり、それらは上記の基としてまたは場合によりCH−O−CO−基として存在し、それらを含む環の炭素原子とともに五員環ラクトンを表す。]
【請求項29】
プロテアーゼを活性化する洗浄または清浄方法であって、該プロテアーゼが下記一般構造式の化合物により阻害および/または安定化される方法。
【化3】

[式中、
(a)Xはカルボニル基(C=O)または酸アミド基(NHCO)を表し、
(b)R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、
(c)R6、R7、R8、R9およびR10(環2における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、かつ、
(d)場合により、R1〜R10の2つの基(A)および(B)は互いにオルト位にあってよく、ここで(A)は、(b)および/または(c)に記載の必須のカルボキシル基(COOH)または場合により付加的なカルボキシル基であり、かつ(B)はヒドロキシメチル基であり、それらは上記の基としてまたは場合によりCH−O−CO−基として存在し、それらを含む環の炭素原子とともに五員環ラクトンを表す。]
【請求項30】
請求項1〜27のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤を使用する、請求項29に記載の洗浄または清浄方法。
【請求項31】
繊維製品および/または硬表面を洗浄および/または清浄するための、請求項1〜27のいずれかに記載の洗浄剤または清浄剤の使用。
【請求項32】
洗浄剤または清浄剤の製造のための、プロテアーゼおよび下記一般構造式の化合物の使用。
【化4】

[式中、
(a)Xはカルボニル基(C=O)または酸アミド基(NHCO)を表し、
(b)R1、R2、R3、R4およびR5(環1における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、
(c)R6、R7、R8、R9およびR10(環2における)は、少なくとも1つのカルボキシル基(COOH)が該環中に存在するように、水素(H)、カルボキシル基(COOH)、メチル基(CH)、エチル基(C)、ヒドロキシル基(OH)、ヒドロキシメチル基(CHOH)、アミノ基(NH)および/またはハロゲンを表し、かつ、
(d)場合により、R1〜R10の2つの基(A)および(B)は互いにオルト位にあってよく、ここで(A)は、(b)および/または(c)に記載の必須のカルボキシル基(COOH)または場合により付加的なカルボキシル基であり、かつ(B)はヒドロキシメチル基であり、それらは上記の基としてまたは場合によりCH−O−CO−基として存在し、それらを含む環の炭素原子とともに五員環ラクトンを表す。]

【公表番号】特表2010−520336(P2010−520336A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552078(P2009−552078)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063260
【国際公開番号】WO2008/107030
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】