説明

酵素阻害化合物

本発明は、酵素を阻害するように特に構造化された化合物を対象とする。詳細な実施形態では、酵素阻害化合物は、抗葉酸活性を示す。特に、本発明の化合物は、TS、DHFR、GARFT、およびAICAR Tfaseのうち1つ以上を阻害する活性を有する抗葉酸残基で構成される。酵素阻害化合物は、異常細胞増殖の治療および炎症の治療を含む様々な治療方法において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素阻害活性を有する化合物に関する。詳細には、本発明は、葉酸代謝に関連した少なくとも1種の酵素を阻害する、したがって抗葉酸活性を示す化合物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
酵素は、化学反応を触媒する生体分子(通常はタンパク質)である。実際に、酵素は、文字通り何千もの生化学反応において役割を果たすことが示されている。酵素は一般に、特定の基質に対する作用によって機能して、特定の産物を生成するものであり、必要な酵素が存在しないまたは阻害される場合、根底にある反応は、劇的に妨げられ、または完全に不可能となる。
【0003】
酵素阻害剤は、酵素の正常な活性を阻害するような何らかの形で酵素と相互に作用する化合物または分子である。たとえば、阻害剤が結合することで、基質が酵素の活性部位に入り込むのを妨げ、かつ/または酵素がその特異的な反応を触媒するのを妨げることができる。阻害のレベルは、酵素の有効性の穏やかな低下から、酵素機能の完全な停止まで様々となり得る。生物体における種々の酵素の広範な活性を考えると、医薬品用途向けに多くの酵素阻害剤が開発されていることは、意外ではない。医薬酵素阻害剤は、多くの場合、特異性(すなわち、他のタンパク質への結合がないこと)および効力(すなわち、指定の酵素を阻害するのに必要な濃度を示す解離定数)を基準として審査される。特異性および効力が高いことは、薬物の副作用を限定し、確実に毒性を低くするのに望ましい。
【0004】
非常な有用性を示している一群の酵素阻害剤が、いわゆる「葉酸代謝拮抗薬」である。葉酸は、系統名N−[4(2−アミノ−4−ヒドロキシ−プテリジン−6−イルメチルアミノ)−ベンゾイル]−L(+)−グルタミン酸で知られており、以下で式(1)に示す構造を有する、水溶性Bビタミンである。
【化1】

式(1)に見られるように、葉酸構造は、一般に、プテリジン環、para−アミノ安息香酸部分、およびグルタミン酸部分から構成されると述べることができる。葉酸およびその誘導体は、代謝および成長に必要であり、特に、体内のチミジレート、アミノ酸、およびプリンの合成に関与している。自然起源の葉酸塩など、葉酸の誘導体は、葉酸に匹敵する生化学的効果を有することが示されている。葉酸それ自体は、1,4−ジアジン環などでの水素添加によって、または一般にN位またはN10位において置換されるメチル化、ホルムアルデヒド化(formaldehydylate)、もしくは架橋化によって、誘導体化される。葉酸塩は、先天性欠損、心疾患、発作、記憶喪失、および加齢性認知症の重症度または発生率の低減を含む種々の使用において、有効度が研究されている。
【0005】
抗葉酸化合物は、構造上は葉酸と類似しており、葉酸代謝を混乱させるように機能する。葉酸代謝拮抗薬についての総説は、参照により本明細書に援用されるTakamoto(1996)、The Oncologist、1:68〜81に掲載されている。ある特定の群の葉酸代謝拮抗薬、いわゆる「古典的葉酸代謝拮抗薬」は、葉酸p−アミノベンゾイルグルタミン酸側鎖またはこの側鎖の誘導体の存在を特徴とする。別の群の葉酸代謝拮抗薬、いわゆる「非古典的葉酸代謝拮抗薬」は、p−アミノベンゾイルグルタミン基の特異的な不在を特徴とする。葉酸代謝拮抗薬は、葉酸の効果と対立する生理学的効果を有するので、葉酸代謝拮抗薬は、アポトーシスを引き起こすことによるがん細胞破壊能などの有用な生理学的機能を示すことが示されている。
【0006】
完全な状態の葉酸酵素経路は、DNAの構成単位ならびに多くの重要なアミノ酸の新規合成の維持にとって重要である。抗葉酸代謝ターゲットとしては、(i)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、(ii)チミジル酸合成酵素(TS)、(iii)ホリルポリグルタミル合成酵素、(iv)グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)、および(v)アミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICAR Tfase)を含めて、葉酸代謝に関与する種々の酵素が挙げられる。
【0007】
膜貫通型糖タンパク質である還元型葉酸キャリアー(RFC)は、葉酸経路において、還元型葉酸を(受容体媒介型機序とは対照的に)キャリアー媒介型機序によって哺乳動物細胞に輸送する活発な役割を果たす。RFCは、メトトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬も輸送することができる。したがって、RFCが機能する能力を媒介することにより、細胞が還元型葉酸を取り込む能力に影響を及ぼすことができる。
【0008】
より少ない用量、およびより少ない患者への投与頻度が可能になる、代謝安定性が増大した葉酸代謝拮抗薬の探索において、さらなる葉酸誘導体がまた研究されている。たとえば、ジデアザ(すなわち、キナゾリン系)誘導体は、プテリジン環系上での生理的なヒドロキシル化が起こるのを防止することが示されている。さらに、第二級アミン窒素原子を、任意選択で置換されている炭素原子で置き換えると、隣接する結合が生理的な切断から保護されることが示されている。
【0009】
体内の葉酸代謝に関与する酵素は多数あることは、葉酸代謝拮抗薬の阻害ターゲットの選択肢を与える。言い換えれば、葉酸代謝拮抗薬は、どの(1つまたは複数の)酵素を阻害するのかにより変えることが可能である。たとえば、ある葉酸代謝拮抗薬は、主としてDHFRを阻害し、他の葉酸代謝拮抗薬は、主としてTS、GARFT、FPGS、またはAICAR Tfaseを阻害し、さらに別の葉酸代謝拮抗薬は、これら酵素の組合せを阻害する。
【0010】
種々の状態および疾患の治療における酵素阻害化合物の有用性を考えると、そのような酵素阻害を示す新しい化合物を得ることは有益となる。本発明は、このニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特に葉酸代謝拮抗薬に通常は関連する酵素活性を阻害し得る(たとえば、TS、DHFR、GAR、FPGS、およびAICAR Tfaseのうち1種以上を阻害する)酵素阻害化合物を提供する。特に、優れた抗炎症特性を示し得るこれらの化合物およびその医薬製剤、ならびに別の用途を本明細書に記載する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、一態様では、本発明は、酵素阻害化合物を提供する。特定の実施形態では、本発明による化合物は、セグメント付与抗葉酸活性を含む。
【0013】
一部の実施形態では、本発明は、式(13)
【化2】

[式中、
Hetは、6員の縮合二環、または5員環と縮合した6員環で構成された、場合により芳香族である縮合環構造であり、縮合環の一方または両方が、O、SおよびNからなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含み、各環構造は、任意の環炭素原子または環ヘテロ原子に結合した、1個または複数の、以下に記載する置換基RおよびYを含んでもよく、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から選択され、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から選択され、
およびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含んでおり、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
Lは、任意選択であり、脂肪族基、または5〜20個の環原子を含む芳香族もしくは非芳香族環構造であり、
Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択され、
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は、H、ヒドロキシル、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ハロ、場合により置換されているアシル、および−C(O)−アルキルからなる群から独立に選択され、
番号が振られた原子1から6は、環化して、1個または複数のO環原子を場合により含む6員環を形成していてもよい]
の構造に従う酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、式(14)
【化3】

[式中、置換基は、式(13)の構造に関して規定したとおりである。]
の構造に従う酵素阻害化合物を提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、環Hetが、式(15)から式(18)
【化4】

[式中、
式(15)の6員の縮合二環系は、場合により芳香族であり、
およびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から独立に選択され、
、R、YおよびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
各Vは、独立に、C、N、OまたはSであり、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
波線の結合は、構造の残りの部分への結合点を示す]
に示す構造のいずれか1つである式(13)および式(14)の構造に従う酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体を提供する。
【0016】
より詳細な実施形態では、本発明は、以下の構造
【化5】

[式(19)から式(22)それぞれにおいて、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子(たとえば、NまたはO)を場合により含み、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
環構造「L」は、場合により芳香族であり、1個または複数の環炭素は、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で場合により置き換えられており、
各Zは、H、ハロ(すなわち、クロロ、ブロモ、ヨード、またはフルオロ)、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から独立に選択される]
のいずれかに従う酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、本発明は、以下の特定の構造
【化6】

に従う酵素阻害化合物を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明はまた、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明による医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、本明細書に記載の1種以上の酵素阻害化合物とを含んでもよい。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、様々な治療方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、本明細書に記載の1種以上の酵素阻害化合物を患者に投与するステップを含んでもよい。特定の実施形態では、方法は、以下の方法の1つまたは組合せを含んでもよい。
1)TS活性を阻害する方法、
2)DHFR活性を阻害する方法、
3)FPGS活性を阻害する方法、
4)GAR活性を阻害する方法、
5)AICAR Tfase活性を阻害する方法、
6)葉酸代謝を混乱させる方法、
7)異常細胞増殖の治療方法、
8)がんの治療方法、
9)炎症の治療方法、
10)炎症性腸疾患の治療方法、
11)クローン病の治療方法、
12)潰瘍性大腸炎の治療方法、
13)関節炎の治療方法、
14)関節リウマチの治療方法、
15)骨関節炎の治療方法、
16)自己免疫性炎症性疾患の治療方法、
17)全身性エリテマトーデス(SLE)の治療方法、
18)乾癬の治療方法、
19)乾癬性関節炎の治療方法、
20)ブドウ膜炎の治療方法、
21)喘息の治療方法、
22)心血管疾患の治療方法、または
23)アテローム性動脈硬化症の治療方法。
【0020】
ここまで本発明について一般用語で記載してきたが、ここで添付の図面に言及し、これら図面は必ずしも一定の縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に従って調製した酵素阻害化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態に従って調製した酵素阻害化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【図3】ヒトDHFRアッセイにおいて比較化合物(式(6)の化合物)のIC50を算出するのに使用した平均酵素活性対試験濃度を示す用量反応曲線のグラフである。
【図4】ヒトDHFRアッセイにおいて発明化合物1(式(23)の化合物)のIC50を算出するのに使用した平均酵素活性対試験濃度を示す用量反応曲線のグラフである。
【図5】ヒトDHFRアッセイにおいて発明化合物2(式(24)の化合物)のIC50を算出するのに使用した平均酵素活性対試験濃度を示す用量反応曲線のグラフである。
【図6】ヒトDHFRアッセイにおいて対照化合物(メトトレキセート)のIC50を算出するのに使用した平均酵素活性対試験濃度を示す用量反応曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本発明について、種々の実施形態に即して以下でより十分に記載する。それら実施形態は、この開示が詳細かつ完全となるように、またこの開示により当業者に本発明の範囲が十分に伝達されるように提供する。実際に、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきでなく、それら実施形態は、この開示が適切な法律上の要件を満たすように提供される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈から明らかにそうでないと規定されない限り、複数の指示対象を包含する。
【0023】
I.定義
用語「代謝的に不活性な葉酸代謝拮抗薬」または「葉酸代謝拮抗薬」とは、本明細書では、葉酸代謝を混乱させることのできる葉酸類似体であり、場合により、ポリグルタミル化されない、化合物を意味する。特定の実施形態では、この用語は、ヒドロキシル化もされない化合物を意味する場合がある。
【0024】
用語「アルカリ金属」とは、本明細書では、IA族元素を意味し、詳細にはナトリウム、リチウム、およびカリウムを包含し、用語「アルカリ金属塩」とは、本明細書では、化合物のカチオン部分が、アルカリ金属、詳細にはナトリウム、リチウム、またはカリウムを含むイオン化合物を意味する。
【0025】
用語「アルキル」とは、本明細書では、直線状、分枝状、または環状の飽和炭化水素基を意味する。特定の実施形態では、アルキルは、1〜10個の炭素原子を含む基(「C1〜10アルキル」)を指す。別の実施形態では、アルキルは、1〜8個の炭素原子(「C1〜8アルキル」)、1〜6個の炭素原子(「C1〜6アルキル」)、または1〜4個の炭素原子(「C1〜4アルキル」)を含む基を指す。詳細な実施形態では、アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブチルを指す。置換アルキルとは、ハロ(たとえば、Cl、F、Br、I)、ハロゲン化アルキル(たとえば、CF、2−Br−エチル、CHF、CHCl、CHCF)、またはCFCF、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシレート、カルボキサミド、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、アジド、シアノ、チオ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、およびホスホネートからなる群から選択される1個または複数の部分で置換されているアルキルを指す。
【0026】
用語「アルケニル」とは、本明細書では、少なくとも1個の飽和C−C結合が二重結合で置き換えられているアルキル部分を意味する。特定の実施形態では、アルケニルは、2〜10個の炭素原子(「C2〜10アルケニル」)を含む基を指す。別の実施形態では、アルキルは、2〜8個の炭素原子(「C2〜8アルケニル」)、2〜6個の炭素原子(「C2〜6アルケニル」)、または2〜4個の炭素原子(「C2〜4アルケニル」)を含む基を指す。詳細な実施形態では、アルケニルは、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルでよい。
【0027】
用語「アルキニル」とは、本明細書では、少なくとも1個の飽和C−C結合が三重結合で置き換えられているアルキル部分を意味する。特定の実施形態では、アルキニルは、2〜10個の炭素原子を含む基(「C2〜10アルキニル」)を指す。別の実施形態では、アルキルは、2〜8個の炭素原子(「C2〜8アルキニル」)、2〜6個の炭素原子(「C2〜6アルキニル」)、または2〜4個の炭素原子(「C2〜4アルキニル」)を含む基を指す。詳細な実施形態では、アルキニルは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、または5−ヘキシニルでよい。
【0028】
用語「アルコキシ」とは、本明細書では、酸素原子を介して連結された直鎖または分枝鎖アルキル基(すなわち、−O−アルキル)を意味し、アルキルは、上述のとおりである。特定の実施形態では、アルコキシは、1〜10個の炭素原子を含む、酸素を介して連結された基(「C1〜10アルコキシ」)を指す。別の実施形態では、アルコキシは、1〜8個の炭素原子(「C1〜8アルコキシ」)、1〜6個の炭素原子(「C1〜6アルコキシ」)、または1〜4個の炭素原子(「C1〜4アルコキシ」)を含む、酸素を介して連結された基を指す。
【0029】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、本明細書では、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0030】
用語「アリール」とは、本明細書では、少なくとも1個の環が、ヒュッケルの4n+2則によって規定されるような芳香族である、各環中8員までの安定な単環式、二環式、または三環式炭素環を意味する。例となる本発明に従うアリール基として、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびビフェニルが挙げられる。
【0031】
用語「アラルキル」および「アリールアルキル」とは、本明細書では、上で定義したようなアリール基が、上で定義したようなアルキル基を介して分子に連結しているものを意味する。
【0032】
用語「アルカリール」および「アルキルアリール」とは、本明細書では、上で定義したようなアルキル基が、上で定義したようなアリール基を介して分子に連結しているものを意味する。
【0033】
用語「アシル」とは、本明細書では、エステル基の非カルボニル部分が、直線状、分枝状、または環状のアルキルまたは低級アルキル;メトキシメチルを含むアルコキシアルキル;ベンジルを含むアラルキル;フェノキシメチルなどのアリールオキシアルキル;ハロゲン、C〜Cアルキル、またはC〜Cアルコキシで場合により置換されているフェニルを含むアリール;メタンスルホニルを含む、アルキルまたはアラルキルスルホニルなどのスルホン酸エステル;一、二、または三リン酸エステル;トリチルまたはモノメトキシトリチル;置換ベンジル;ジメチル−t−ブチルシリルやジフェニルメチルシリルなどのトリアルキルシリルから選択される、カルボン酸エステルを意味する。エステル中のアリール基は、フェニル基を含むことが最適である。
【0034】
用語「アミノ」とは、本明細書では、構造NRによって表される部分を意味し、第一級アミンならびにアルキルで置換されている第二級および第三級アミン(すなわち、アルキルアミノ)を包含する。したがって、Rは、2個の水素原子、2個のアルキル部分、または1個の水素原子と1個のアルキル部分をとなる場合がある。
【0035】
用語「アルキルアミノ」および「アリールアミノ」とは、本明細書では、それぞれ、1個または2個のアルキルまたはアリール置換基を有するアミノ基を意味する。
【0036】
用語「ニトロ」とは、本明細書では、構造NOを有する基を意味する。
【0037】
用語「アルキレン」とは、本明細書では、2個の自由原子価(すなわち、二価のアルキルラジカル)を有するアルキル基を意味する。
【0038】
用語「アミド」とは、本明細書では、一般式R(CO)NRを有し、R、RおよびRはいずれも、水素または炭化水素でよい化合物を意味する。
【0039】
用語「抗葉酸残基」とは、本明細書では、元の化合物から分離されたとき、元の化合物の抗葉酸活性の少なくとも一部を保持している、抗葉酸活性を示す化合物の構成要素を意味する。
【0040】
用語「抗葉酸セグメント」とは、本明細書では、全体としての化合物に抗葉酸活性を付与する、個々の化合物の特定のセグメントを指す。
【0041】
用語「類似体」とは、本明細書では、1個または複数の個々の原子または官能基が、一般に同様の特性を有する化合物を生じさせる異なる原子または異なる官能基で置き換えられている化合物を意味する。
【0042】
用語「誘導体」とは、本明細書では、同様の起源化合物から、起源化合物に別の分子または原子を結合させることにより生成される化合物を意味する。さらに、本発明による誘導体は、前駆体化合物から1個または複数の原子もしくは分子の付加によって、または2種以上の前駆体化合物を化合させることにより生成される、1種または複数の化合物を包含する。
【0043】
用語「場合により置換されている」とは、置換基に関して、1個または複数の部分、たとえば、C1〜10アルキル(たとえば、C1〜6アルキル)、C1〜10アルコキシ(たとえば、C1〜6アルコキシ)、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、C〜C12アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、複素環、ハロ(たとえば、Cl、F、BrおよびI)、ヒドロキシル、ハロゲン化アルキル(たとえば、CF、2−Br−エチル、CHF、CHCF、およびCFCF)、アミノ(たとえば、NH、NR12H、およびNR1213)、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシル、アミド、CN、NO、N、CHOH、CONH、CONR1213、CO12、CHOR12、NHCOR12、NHCO12、C1〜3アルキルチオ、スルフェート、スルホン酸;メタンスルホニルを含む、アルキルまたはアラルキルスルホニルなどのスルホン酸エステル;ホスホン酸;ホスフェート;ホスホネート;一、二、または三リン酸エステル;トリチルまたはモノメトキシトリチル;R12SO、R12SO、CFS、CFSO;およびジメチル−t−ブチルシリルやジフェニルメチルシリルなどのトリアルキルシリルからなる群から選択され、R12およびR13は、Hまたは場合により置換されているC1〜10アルキルからそれぞれ独立に選択される部分で、場合により置換されている置換基を指す。
【0044】
用語「類似体」とは、本明細書では、1個または複数の個々の原子または官能基が、一般に同様の特性を有する化合物を生じさせる異なる原子または異なる官能基で置き換えられている化合物を意味する。
【0045】
用語「誘導体」とは、本明細書では、同様の起源化合物から、起源化合物に別の分子または原子を結合させることにより生成される化合物を意味する。さらに、本発明による誘導体は、前駆体化合物から1個または複数の原子もしくは分子の付加によって、または2種以上の前駆体化合物を化合させることにより生成される、1種または複数の化合物を包含する。
【0046】
用語「プロドラッグ」とは、本明細書では、哺乳動物に投与したとき、全部または一部が本発明の化合物に変換される任意の化合物を意味する。
【0047】
用語「活性代謝産物」とは、本明細書では、本発明による化合物または化合物のプロドラッグが哺乳動物に投与されたとき、そのような化合物またはプロドラッグが代謝された結果として生じる、生理活性のある化合物を意味する。
【0048】
用語「治療有効量」または「治療有効用量」は、本明細書では、交換可能な用語であり、本明細書に記載の治療方法による所望の治療効果を引き出すのに十分な、本発明による化合物または生物活性のあるその変異形の濃度を意味する。
【0049】
用語「薬学的に許容される担体」とは、本明細書では、生物活性のある薬剤の貯蔵、投与、および/または治癒作用を円滑にするのに当業界で好都合に使用される担体を意味する。
【0050】
用語「断続投与」とは、本明細書では、治療有効用量の本発明による組成物を投与した後、停止期間を置き、次いで治療有効用量の別の投与を続けることなどを意味する。
【0051】
用語「増殖抑制薬」とは、本明細書では、細胞の過剰増殖を低減する化合物を意味する。
【0052】
用語「異常細胞増殖」とは、本明細書では、1種または複数の細胞型の成長または増殖が、その疾患または状態に罹患していない個体におけるその(1種または複数の)細胞型の成長に比べて不適切であることを特徴とする疾患または状態を意味する。
【0053】
用語「がん」とは、本明細書では、局所的に、または血流およびリンパ系を通して身体の他の部分に広がり得る、制御されない異常な細胞の成長を特徴とする疾患または状態を意味する。この用語は、腫瘍形成性または非腫瘍形成性のがんを包含し、原発性腫瘍や腫瘍転移などの様々なタイプのがんを含む。
【0054】
用語「腫瘍」とは、本明細書では、制御されず進行性である過剰な細胞分裂の結果として生じる、新生物とも呼ばれる、多細胞生物内の異常な細胞の塊を意味する。腫瘍は、良性または悪性どちらの場合もある。
【0055】
用語「線維性障害」とは、本明細書では、全部または一部が線維芽細胞の増殖の結果として生じる、線維症および線維症の他の医学的合併症を意味する。
【0056】
用語「関節炎」とは、本明細書では、原因は感染でも、自己免疫でも、外傷でもよい、関節を冒す炎症性の障害を意味する。
【0057】
II.化合物
本発明は、酵素阻害活性を示す新規化合物に関する。本発明は、ある特定の抗葉酸化合物の酵素阻害活性は、これら化合物の特定のセグメントを保存することにより保持できるという発見によって可能になる。詳細な実施形態では、本発明による化合物は、セグメント付与酵素阻害活性、好ましくは抗葉酸活性を備える。
【0058】
抗葉酸活性を示す分子は、広範な種類の化合物から導くことができる。構造を式(2)に示すメトトレキセートは、がん治療、特に急性白血病、非ホジキンリンパ腫、乳がん、頭頸部がん、絨毛がん、骨原性肉腫、および膀胱がんの治療における使用が知られている一葉酸代謝拮抗薬である。
【化7】

【0059】
参照により本明細書に援用されるNairら(J.Med.Chem.(1991)34:222〜227)は、古典的葉酸代謝拮抗薬のポリグルタミル化が抗腫瘍活性に必須でなかったこと、およびポリグルタミル化は、薬物の薬理活性および標的特異性を損なう場合があるという点で望ましくないことさえあることを示している。この後、ポリグルタミル化されない古典的葉酸代謝拮抗薬が数多く発見された。参照により本明細書に援用されるNairら(1998)、Proc.Amer.Assoc.Cancer Research 39:431を参照されたい。ポリグルタミル化されない葉酸代謝拮抗薬の特定の一群は、グルタミン酸部分の4位にあるメチリデン基(すなわち、=CH置換基)を特徴とする。この化学基の存在は、抗葉酸化合物の生物活性に影響を及ぼすことが示されている。参照により本明細書に援用されるNairら(1996)、Cellular Pharmacology 3:29を参照されたい。
【0060】
第二級アミン窒素の炭素置換を有する葉酸代謝拮抗薬の一例は、構造を式(3)に示す4−アミノ−4−デオキシ−10−デアザプテロイル−γ−メチレングルタミン酸(より一般にはMDAMと呼ばれる)である。
【化8】

MDAMのL−鏡像異性体は、生理活性の増大を示すことが示されている。参照により本明細書に援用される米国特許第5,550,128号を参照されたい。代謝安定性を考えて設計された古典的葉酸代謝拮抗薬の別の例は、式(4)に示すZD1694である。
【化9】

【0061】
式(5)に示す構造に従う一群の抗葉酸化合物は、上述の分子の特徴のいくつかを併せ持っている。
【化10】

式(5)に示すように、Xは、CH、CHCH、CH(CHCH)、NH、またはNCHでよい。参照により本明細書に援用される米国特許第5,912,251号で開示されているように、X=CHである化合物M−Trexは、異常細胞増殖、炎症性障害、および自己免疫疾患の治療に関して活性を示している。式(6)に示すこの化合物は、2−{4−[2−(2,4−ジアミノ−キナゾリン−6−イル)−エチル]−ベンゾイルアミノ}−4−メチリデン−ペンタン二酸、ガンマメチレングルタメート5,8,10−トリデアザアミノプテリン、および5,8−ジデアザMDAMを含む様々な名称で知られている。
【0062】
式(6)の化合物は、ポリグルタミル化されず、ヒドロキシル化されず、葉酸代謝を混乱させることができる。この化合物はまた、治療上妥当な濃度で培養物中の多数のヒト白血病細胞およびヒト固形腫瘍細胞を死滅させることにおいて有効性を示しており、さらに、喘息の動物モデルにおいて抗炎症薬としての活性も示している。
【化11】

【0063】
本明細書に記載のいずれの葉酸代謝拮抗薬も、誘導体化して、本発明により提供される酵素阻害剤において有効な抗葉酸セグメントにすることができる。さらに、本発明による使用向けに誘導体化することのできるそれ以外の抗葉酸化合物の非限定的な例として、式(7)から式(10)にそれぞれ図示される、トリメトレキセート、ピリトレキシム、Tomudex、およびロモトレキソール(lomotrexol)が挙げられる。
【化12】

【0064】
前述のものに加えて、抗葉酸活性を示す分子へと誘導体化することのできる追加の化合物の例が、開示の全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0214585号に掲載されている。その中で示されている抗葉酸化合物の例を、以下で式(11)に示す。
【化13】

[式中、
Xは、CHRまたはNRであり、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、またはハロであり、
、R、R、R、RおよびRは、独立に、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、または−C(O)−アルキニルである]ならびに
薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【0065】
抗葉酸活性を示す分子へと誘導体化することのできる追加の化合物の具体的な一例は、以下で式(12)に示す化合物CHL−003である。
【化14】

【0066】
本発明は、化合物を誘導体化し、抗葉酸化合物に抗葉酸活性の少なくとも一部を付与する少なくとも1つの残基を残しておくことにより、(その限りでないが、上で示した抗葉酸化合物を含めた)抗葉酸化合物の活性を保存する技量を実現した。詳細な実施形態では、抗葉酸残基は、少なくとも1つの縮合環構造(たとえば、置換プテリジン基または置換ピロロピリミジン基)を含む。抗葉酸化合物のこの部分を保存した状態で、異なる置換基を付加するなどして、化合物の残存する化学的性質を変更することができる。
【0067】
当然、当業者であれば、(抗葉酸化合物メトトレキセート中に存在する)単純なプテリジン基は、元の化合物の大部分が除去されてしまっているので、それだけでメトトレキセートと全く同じに機能するとは必ずしも予想されないことが理解されるであろう。同様に、(抗葉酸化合物CHL−003中に存在するような)単純なピロロピリミジン基も、それだけでCHL−003と全く同じに機能するとは必ずしも予想されないことになる。しかし、本発明は、保存された抗葉酸残基を利用して、酵素阻害剤化合物として機能する新しい化合物を生成する方法を発見した。
【0068】
種々の実施形態において、本発明により提供される酵素阻害化合物は、式(13)の構造に従うものでよい。
【化15】

[式中、
Hetは、縮合環の一方または両方が、O、SおよびNからなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含む、6員の縮合二環、または5員環と縮合した6員環で構成された、場合により芳香族である縮合環構造であり、各環構造は、任意の環炭素原子またはヘテロ原子に結合した、1個または複数の、以下に記載する置換基RおよびY(たとえば、0、1、2、3または4個の合計RおよびY基)を含む場合もあり、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から選択され、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から選択され、
およびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子(たとえば、NまたはO)を場合により含んでおり、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
Lは、任意選択であり、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する脂肪族基、または5〜20個の環原子を含む芳香族もしくは非芳香族環構造、詳細には、場合により置換されているアリール(たとえば、C〜C12アリール)から選択され、
Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ(すなわち、クロロ、ブロモ、ヨード、またはフルオロ)、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択され、
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は、H、ヒドロキシル、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ハロ、場合により置換されているアシル、および−C(O)−アルキルからなる群から独立に選択され、
番号が振られた原子1から6は、場合により環化して、1個または複数のO環原子を場合により含む6員環を形成していてもよい]ならびに
薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【0069】
一部の実施形態では、2個のZ基が合体して、縮合環中に1個または複数のヘテロ原子を場合により含むLとの5員または6員縮合環を形成していてもよく、縮合環は、上述のように1個または複数の置換基を場合により含んでいる。Z基が置換された基(たとえば、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アリール、置換ヘテロアリール、または置換複素環)であるとき、Z基上の置換基については、Zそれ自体の定義に含まれるいかなる基でもよいと理解される。同様に、2個以上のZ基が、置換されている縮合環を形成するときも、縮合環上の任意の置換基は、Zそれ自体の定義に含まれるいかなる基でもよいことになる。
【0070】
特定の別の実施形態では、Lは、1個または複数のZ置換基で場合により置換されていてもよい、以下の環構造、すなわち、フェニル、ナフチル、インジル、アズリル、ペンタリル、ヘプタリル、ビフェニレニル、インダセニル、アセナフチル、フェナリル、イミダゾリジニル、インドリニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、ベンゾフラニル、カルバゾリル、ベンゾピラニル、フラニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリンジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピロリジニル、キナゾリニル、キノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、チアゾリル、およびチオフェニルから選択されることが好ましい。特に好ましいL基として、置換または非置換のピロリル、フェニル、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、およびナフチリジニルが挙げられる。一実施形態では、各L基は、場合により置換されているフェニル、場合により置換されているナフチル、場合により置換されているナフチリジニル、場合により置換されているキノリニル、または1〜3個の窒素原子を含む場合により置換されている6員ヘテロアリール環である。
【0071】
構造式(13)に従う化合物は、2箇所の不斉炭素中心(番号を振った炭素原子1および3)を有する。この対称によって、考えられる4種の異性体、すなわち、R−シス、S−シス、R−トランス、およびS−トランスが生じる。好ましい実施形態では、不斉炭素中心の一方または両方がトランス型である。特に好ましい実施形態では、不斉炭素中心の一方または両方がR−トランス型である。
【0072】
他の詳細な実施形態では、本発明により提供される酵素阻害化合物は、式(14)の構造に従うものでよい。
【化16】

[式中、
Het、L、Y、R、R、R、X、R、Z、R12、R14、R15、R16、R18およびR19は、上述のとおりである]ならびに
薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【0073】
詳細な実施形態では、上記式(13)および式(14)に記載のHetは、以下の式(15)から式(18)に示す構造のいずれかでよい。
【化17】

[式中、
6員環2個の縮合系は、場合により芳香族であり、
およびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から独立に選択され、
、R、YおよびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
各Vは、独立に、C、N、OまたはSであり、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子(たとえば、NまたはO)を場合により含み、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、波線の結合は、構造の残りの部分への結合点を示す。]
【0074】
詳細な実施形態では、本発明により提供される酵素阻害化合物は、式(19)から式(22)の構造に従うものでよい。
【化18】

[式(19)から式(22)それぞれにおいて、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子(たとえば、NまたはO)を場合により含み、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
環構造「L」は、場合により芳香族であり、1個または複数の環炭素が、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で場合により置き換えられており、
各Zは、H、ハロ(すなわち、クロロ、ブロモ、ヨード、またはフルオロ)、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から独立に選択される]ならびに
薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【0075】
式(19)から式(22)に関して、Xの例は、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHR−、−CHCHR−、−CHRCH−、−CHRCHCH−、−CHCHRCH−、−NR−、−CHNR−、−NRCH−、−CHCHNR−、−CHNRCH−、−NRCHCH−、−CHRNH−、−CHRNHCH−、−NRCH−、−C(O)NH−、−C(O)CHNH−、および−C(O)NHCH−、好ましくはCHCH、CHNH、およびC(O)NHCHであり、R11の好ましい例は、C1〜6アルキルおよびC(O)−C1〜6アルキルであり、YおよびYの好ましい例は、カルボニル、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、およびNRであり、R、R、R、R、Y、YおよびYの好ましい例は、H、C1〜6アルキル、およびC(O)C1〜6アルキルであり、各C1〜6アルキルは、1個または複数のハロ、ハロゲン化アルキル(たとえば、CF、2−Br−エチル、CHF、CHCl、CHCF、またはCFCF)、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシレート、カルボキサミド、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、アジド、シアノ、チオ、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、およびホスホネートで場合により置換されていてよく、Zの好ましい例としては、H、C1〜6アルキル、C1〜6アルキオキシ、フェニル、ハロ置換フェニル、およびカルボキシアニリンが挙げられ、アルキレンの好ましい例としては、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、およびC〜Cが挙げられ、R12、R13、R14、R15およびR16の好ましい例としては、H、ヒドロキシル、C1〜6アルキルが挙げられる。
【0076】
特定の一実施形態では、本発明は、本明細書ではCHL−015と呼ぶ場合もある、式(23)に示す構造を有する新規酵素阻害化合物を提供する。
【化19】

【0077】
別の特定の実施形態では、本発明は、本明細書ではCHL−016と呼ぶ場合もある、式(24)に示す構造を有する新規酵素阻害化合物を提供する。
【化20】

【0078】
式(23)および式(24)の化合物をナトリウム塩として示しているが、本発明は、薬学的に許容される他の塩形態(たとえば、カリウム塩)、ならびに酸形態の化合物も包含する。
【0079】
酵素阻害活性を示す本発明の化合物の調製には、様々な方法を使用することができる。式(23)の化合物を調製する合成方法の詳細な例は、本明細書に書き添える実験の部において示す。
【0080】
たとえば、特定の実施形態では、本発明による酵素阻害化合物の調製方法は、以下のステップを含んでもよい。
i)抗葉酸残基に反応性基(たとえば、酸基)を提供するステップ、
ii)抗葉酸残基の反応性基に相補的な反応性基、好ましくは保護された基を有する(すなわち、中間体反応から保護されている反応性酸素基をその上に有する)反応物を提供するステップ、
iii)場合によりカップリング剤の存在下、抗葉酸残基を反応物と反応させるステップ、および
iv)保護された基を脱保護するステップ。
詳細な例では、抗葉酸残基は、安息香酸基を含み、酸官能基が反応性脱離基となり、残りのフェニル環が連結基の少なくとも一部を含み得る。当然、これ以外の反応ステップが提供されることもある。
【0081】
III.生物活性のある変異形
上述の酵素阻害化合物の生物活性のある変異形も、詳細には本発明に含まれる。そのような変異形は、元の化合物の全般的な生物活性を保持すべきであるが、しかし、追加の活性が存在しても、本発明におけるその使用は必ずしも限定されない。そうした活性は、その活性の確認に一般に有用であると当業者が認めることのできる標準の試験方法およびバイオアッセイを使用して評価することができる。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、生物活性のある適切な変異形は、上述の化合物の1種または複数の類似体または誘導体を包含する。実際に、上述のものなどの化合物は、同様の活性、したがって本発明による有用性を有する類似体または誘導体の完全なファミリーのもとになり得る。同様に、上述のものなどの単一化合物は、本発明で有用なより大きな部類の化合物の単一のファミリー構成員となり得る。したがって、本発明は、上述の化合物のみならず、そうした化合物の類似体および誘導体、特に、当業界で一般に知られており、当業者が認めることのできる方法によって確認できる類似体および誘導体を完全に包含する。
【0083】
本明細書で開示する化合物は、(R)または(S)立体配置のいずれかとなり得るキラル中心を含んでいる場合があり、またはその混合物を含む場合もある。したがって、本発明はまた、当てはまる場合、本明細書に記載の化合物の立体異性体を、個々に、または任意の割合の混合物として包含する。立体異性体には、その限りでないが、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、ラセミ混合物、およびこれらの組合せを含めることができる。このような立体異性体は、鏡像異性体の出発材料を反応させる、または本発明の化合物の異性体を分離することによる、従来の技術を使用して調製および分離することができる。異性体には、幾何異性体を含めることもできる。幾何異性体の例としては、その限りでないが、シス異性体またはトランス異性体が挙げられる。他の異性体は、本発明の化合物の中に含めて企図する。異性体は、純粋な形で使用しても、または本明細書に記載の化合物の他の異性体と混ざった状態で使用してもよい。
【0084】
光学活性のある形態を調製し、活性を明らかにする種々の方法が、当業界で知られている。そうした方法として、本明細書に記載の標準の試験、および当業界でよく知られている他の同様の試験が挙げられる。本発明による化合物の光学異性体を得るのに使用できる方法の例として、以下のものが挙げられる。
i)個々の鏡像異性体の巨視的結晶を手作業で分離する、結晶の物理的な分離。この技術は、別々の鏡像異性体の結晶が存在し(すなわち、材料が集成体であり)、結晶が視覚的に別個であるとき、特に使用することができる。
ii)ラセミ体が固体状態で集成体である場合に限り可能な、ラセミ体の溶液から個々の鏡像異性体を別々に結晶化する、同時結晶化。
iii)鏡像異性体の酵素との反応速度が異なることを利用し、ラセミ体が部分的または完全に分離される、酵素的分割。
iv)所望の鏡像異性体の、鏡像異性体に関して純粋または鏡像異性体富化された合成前駆体を得るのに、合成の少なくとも1ステップで酵素的反応が使用される合成技術である、酵素的不斉合成。
v)キラル触媒やキラル助剤を使用して実現することのできる、生成物に非対称(すなわち、キラリティー)を生じさせる条件下で、キラル前駆体から所望の鏡像異性体を合成する、化学的不斉合成。
vi)ラセミ化合物を、個々の鏡像異性体をジアステレオ異性体に変換する、鏡像異性体に関して純粋な試薬(キラル助剤)と反応させる、ジアステレオ異性体分離。次いで、得られるジアステレオ異性体を、その時点で構造上の差異がより明確になったことを利用して、クロマトグラフィーまたは結晶化によって分離し、後にキラル助剤を除去して、所望の鏡像異性体を得る。
vii)ラセミ体からのジアステレオ異性体が平衡に達して、所望の鏡像異性体からのジアステレオ異性体が溶液中で優勢となることによる、または所望の鏡像異性体からのジアステレオ異性体の優先結晶化によって平衡が乱されて、最終的に原則として材料すべてが、所望の鏡像異性体からの結晶質のジアステレオ異性体に変換される、一次および二次不斉変換。次いで、ジアステレオ異性体から所望の鏡像異性体を離す。
viii)鏡像異性体のキラルな非ラセミ試薬または触媒との反応速度が等しくないことを利用した、動力学的条件下でのラセミ体の部分的または完全な分割(または部分的に分割された化合物のさらなる分割)を含む、動力学的分割。
ix)非キラル出発材料から所望の鏡像異性体を得るものであり、合成の過程で立体化学的完全性が損なわれない、または最小限にしか損なわれない、非ラセミ前駆体からのエナンチオ特異的合成。
x)ラセミ体の鏡像異性体を、固定相との相互作用が異なることを利用して液体移動相中で分離する、キラル液体クロマトグラフィー。異なる相互作用を誘発するために、固定相をキラル材料製のものにしてもよいし、または移動相が追加のキラル材料を含んでもよい。
xi)ラセミ体を揮発させ、非ラセミ固定キラル吸着相を含有するカラムを用い、気体移動相中での相互作用が異なることを利用して鏡像異性体を分離する、キラルガスクロマトグラフィー。
xii)一方の鏡像異性体が特定のキラル溶媒に優先的に溶解することを利用して鏡像異性体を分離する、キラル溶媒での抽出。
xiii)ラセミ体を薄い膜隔壁と接触させて配置する、キラル膜を介した輸送。隔壁は通常、一方がラセミ体を含有する2種の混和性流体を隔て、濃度や圧力の差などの推進力により、膜隔壁を介した優先的な輸送がなされる。分離は、膜のラセミでないキラルな性質のためにラセミ体の一方の鏡像異性体だけが通過できるようになる結果として生じる。
【0085】
本発明の酵素阻害化合物は、一方の鏡像異性体が(モル分率または重量分率として示して)過剰に存在する鏡像異性体の混合物などの、鏡像異性体富化された形態で提供することができる。鏡像体過剰率は、化学物質が同じ化合物の2種の鏡像異性体を含み、一方の鏡像異性体が他方の鏡像異性体より多量に存在する場合に存在すると理解される。ラセミ混合物とは異なり、こうした混合物は、正味の旋光を示す。混合物の比旋光度および純粋な鏡像異性体の比旋光度の情報を用い、既知の方法によって、鏡像体過剰率(略語「ee」)を求めることができる。NMR分光法およびキラルカラムクロマトグラフィーを用いることで、混合物中に存在する各鏡像異性体の量を直接決定することが可能である。
【0086】
詳細な実施形態では、本発明の化合物は、単一の鏡像異性体についての鏡像異性体純度が少なくとも約75%である酵素阻害化合物を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の酵素阻害化合物は、鏡像異性体純度が、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%である。一実施形態では、本発明の化合物は、(S)異性体についてこのような鏡像異性体純度である酵素阻害化合物を含む。別の実施形態では、本発明の化合物は、(R)異性体についてこのような鏡像異性体純度である酵素阻害化合物を含む。
【0087】
本明細書に記載の化合物は、本発明による薬理活性を維持するという前提で、エステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、または代謝産物の形にしてもよい。本発明の化合物のエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および他の誘導体は、たとえば、参照により本明細書に援用されるJ.March、Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure、第4版(New York:Wiley−Interscience、1992)に記載の方法などの、当業界で一般に知られている方法に従って調製することができる。
【0088】
本発明で有用な化合物の薬学的に許容される塩の例には、酸付加塩が含まれる。しかし、薬学的に許容されない酸の塩も、たとえば、化合物の調製および精製において有用な場合がある。本発明による適切な酸付加塩には、有機酸および無機酸が含まれる。好ましい塩としては、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびイセチオン酸から生成される塩が挙げられる。他の有用な酸付加塩として、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩の詳細な例としては、その限りでないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、およびマンデル酸塩が挙げられる。
【0089】
酸付加塩は、適切な塩基で処理することにより、遊離塩基に変換することができる。本発明で有用な化合物上に存在し得る酸部分の塩基性塩の調製は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミンなど、薬学的に許容される塩基を使用して、同様にして行うことができる。
【0090】
本発明による化合物のエステルは、化合物の分子構造内に存在し得るヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を官能基化して調製することができる。アミドおよびプロドラッグも、当業者に知られている技術を使用して調製することができる。たとえば、アミドは、適切なアミン反応物を使用して、エステルから調製することもでき、または無水物または酸塩化物から、アンモニアまたは低級アルキルアミンとの反応によって調製することもできる。さらに、本発明の化合物のエステルおよびアミドは、適切な有機溶媒(たとえば、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド)中にて、温度0℃〜60℃で、カルボニル化剤(たとえば、ギ酸エチル、無水酢酸、塩化メトキシアセチル、塩化ベンゾイル、イソシアン酸メチル、クロロギ酸エチル、塩化メタンスルホニル)および適切な塩基(たとえば、4−ジメチルアミノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸カリウム)と反応させて生成することもできる。プロドラッグは通常、ある部分を共有結合させ、その結果として、個体の代謝系により変更されるまで治療活性をもたない化合物を得ることにより調製される。薬学的に許容される溶媒和物の例としては、その限りでないが、本発明による化合物を、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、またはエタノールアミンと組み合わせたものが挙げられる。
【0091】
固体組成物の場合では、本発明の組成物中に使用される化合物が、異なる形態で存在する場合もあると理解される。たとえば、化合物は、安定および準安定な結晶質形態ならびに等方性および非晶質の形態で存在する場合があり、それらすべてが、本発明の範囲内にあるものとする。
【0092】
本発明で有用な化合物が塩基である場合、所望の塩は、遊離塩基を、無機酸、たとえば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、または有機酸、たとえば、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸やガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸や酒石酸などのα−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸やケイ皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸やエタンスルホン酸などのスルホン酸などで処理することを含む、当業界に知られている適切な任意の方法によって調製することができる。
【0093】
本発明の化合物が酸である場合、所望の塩は、遊離酸を、無機塩基または有機塩基、たとえば、アミン(第一級、第二級、または第三級)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物などで処理することを含む、当業界に知られている適切な任意の方法によって調製することができる。適切な塩の実例として、グリシンやアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級、および第三級アミン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンなどの環状アミンから導かれる有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、およびリチウムから導かれる無機塩が挙げられる。
【0094】
特定の一実施形態では、本発明による酵素阻害化合物は、塩の形態である。たとえば、式(23)の化合物は、ナトリウム塩の形で提供される。当然、適切な他の塩形成カチオンであっても、同様に使用することができる。たとえば、任意のアルカリ金属、たとえば、ナトリウム、カリウム、またはカルシウムが使用できるはずである。
【0095】
本発明はさらに、本発明の化合物のプロドラッグおよび活性代謝産物を包含する。本明細書に記載の化合物はいずれも、化合物の活性、生物学的利用能、もしくは安定性を増大させるため、または化合物の特性を別な形で変更するために、プロドラッグとして投与することができる。プロドラッグの典型的な例として、活性化合物の官能性部分上に生物学的に不安定な保護基を有する化合物が挙げられる。プロドラッグは、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、および/または脱リン酸化を受けて活性化合物を生じる化合物を包含する。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、異常増殖する細胞に対する増殖抑制活性を保持しており、または代謝されてそのような活性を示す化合物になる。好ましい他の実施形態では、本発明の化合物は、酵素のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の活性を阻害する活性を保持しており、または代謝されてそのような活性を示す化合物になる。
【0096】
いくつかのプロドラッグリガンドが知られている。一般に、遊離アミンまたはカルボン酸残基など、化合物の1個または複数のヘテロ原子がアルキル化、アシル化、または他の親油性修飾を受けると、極性が低減され、細胞中への移動が可能になる。遊離アミンおよび/またはカルボン酸部分上の1個または複数の水素原子と入れ替わることのできる置換基の例としては、その限りでないが、以下のもの、すなわち、アリール、ステロイド、炭水化物(糖を含める)、1,2−ジアシルグリセロール、アルコール、アシル(低級アシルを含める)、アルキル(低級アルキルを含める)、スルホン酸エステル(アルキルまたはアリールアルキルスルホニル、たとえば、メタンスルホニル、およびフェニル基が、本明細書で示すアリールの規定で定めるように1個または複数の置換基で場合により置換されているベンジルを含める);場合により置換されているアリールスルホニル;脂質(リン脂質を含める);ホスファチジルコリン;ホスホコリン;アミノ酸残基もしくは誘導体;アミノ酸アシル残基もしくは誘導体;ペプチド;コレステロール;またはin vivoで投与されたときに遊離アミンおよび/またはカルボン酸部分を与える、薬学的に許容される他の脱離基が挙げられる。これらのいずれでも、開示する化合物と組み合わせて使用して、所望の効果を実現することができる。
【0097】
IV.医薬組成物
本発明による個々の化合物を未加工の化学的形態で投与することは可能ではあるが、化合物は、医薬組成物として送達することが好ましい。したがって、本発明により、本明細書に記載の1種または複数の化合物を含む医薬組成物が提供される。そのため、本発明の組成物は、上述のような薬学的に活性のある化合物、または薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、類似体、誘導体、もしくはプロドラッグを含む。さらに、発明組成物は、様々な組合せで調製し、送達することができる。たとえば、組成物は、活性成分すべてを含有する単一組成物からなるものでよい。あるいは、組成物は、別個の活性成分を含むが、同時に、連続して、または別な形で時間を近づけて投与することを目的とした、複数の組成物からなるものでもよい。
【0098】
本発明の化合物は、したがって、1種または複数の薬学的に許容される担体、および場合により他の治療成分と共に調製し、送達することができる。担体は、組成物の他のいずれの成分とも適合し、そのレシピエントに有害でないという点で、許容されるべきである。担体は、薬剤の望ましくない副作用を軽減する場合もある。このような担体は、当業界で知られている。参照によりその全体が本明細書に援用されるWangら(1980)、J.Parent.Drug Assn.34(6):452〜462を参照されたい。
【0099】
本発明の組成物には、組成物によって本明細書に記載の化合物の投与が実現されるという前提で、短期、急速発現、急速消失、制御放出、持続放出、遅延放出、およびパルス放出組成物を含めることができる。参照によりその全体が本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Company、Eaton、Pennsylvania、1990)を参照されたい。
【0100】
本発明による医薬組成物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、動脈内、心臓内、皮下、眼窩内、嚢内、脊髄内、胸骨内(intrastemal)、および経皮を含める)、局所(皮膚、頬側、および舌下を含める)、膣内、尿道、および直腸投与を含む、種々の送達方式に適する。投与は、点鼻薬、外科的植込錠、内用の外科用塗料、注入ポンプによって、またはカテーテル、ステント、バルーン、もしくは他の送達デバイスから行うこともできる。最も有用かつ/または有益な投与方式は、特にレシピエントの状態および治療する障害に応じて様々となり得る。
【0101】
医薬組成物は、単位剤形で利用できるようにすると好都合な場合があり、そのような組成物は、製薬業界で一般に知られている方法のいずれかによって調製することができる。一般的に述べれば、そうした調製方法は、本発明の活性化合物を、1種または複数の原材料からなるものでもよい適切な担体または他の佐剤と(種々の方法によって)一緒にすることを含む。活性成分を1種または複数の佐剤と組み合わせたものを、次いで物理的に処理して、送達に適する形態の組成物に仕上げる(たとえば、錠剤に成形するまたは水性懸濁液にする)。
【0102】
経口の投薬に適する本発明による医薬組成物は、予め決められた量の活性剤をそれぞれが含有する、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、ウェーハ(急速溶解性または発泡性を含める)などの様々な形態をとり得る。組成物は、粉末または顆粒、水性または非水性液体の溶液または懸濁液、および液体エマルション(水中油型および油中水型)の形にすることもできる。活性剤は、ボーラス、舐剤、または泥膏として送達することもできる。上記剤形の調製方法は、当業界で一般に知られており、そうしたいかなる方法も、本発明による組成物の送達において使用するそれぞれの剤形の調製に適するものと一般に理解される。
【0103】
一実施形態では、化合物は、不活性希釈剤や可食担体などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて経口投与することができる。経口組成物は、硬または軟ゼラチンカプセルに封入してもよいし、錠剤に圧縮してもよいし、または患者の食事の食品と直接混ぜてもよい。組成物および製剤のパーセンテージは、様々となり得るが、しかし、そうした治療上有用な組成物中の物質の量を、有効な投薬レベルが実現されるようにすることが好ましい。
【0104】
化合物を含有する硬カプセルは、ゼラチンなどの生理分解性の組成物を使用して製造されたものでよい。そうした硬カプセルが、化合物を含み、たとえば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンなどの不活性固体希釈剤を含む追加の成分をさらに含んでもよい。化合物を含有する軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンなどの生理分解性の組成物を使用して製造されたものでよい。そうした軟カプセルが化合物を含み、化合物は、水、またはラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油などの油媒質と混合されていてもよい。
【0105】
舌下錠は、非常に急速に溶解するように設計されている。そうした組成物の例として、酒石酸エルゴタミン、硝酸イソソルビド、およびイソプロテレノールHCLが挙げられる。これら錠剤の組成物は、薬物に加えて、ラクトース、粉末スクロース、デキストロース、マンニトールなどの種々の可溶性医薬添加剤も含有する。本発明の固体剤形は、場合によりコーティングされていてもよく、適切なコーティング材料の例としては、その限りでないが、セルロースポリマー(酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、メタクリル樹脂(商品名EUDRAGIT(登録商標)で市販されているものなど)、ゼイン、セラック、ならびに多糖が挙げられる。
【0106】
本発明の医薬製剤の粉末および顆粒組成物は、既知の方法を使用して調製することができる。このような組成物は、患者に直接投与することもでき、または錠剤の形成、カプセルの充填、水性もしくは油性賦形剤をそれに加えることによる水性もしくは油性懸濁液もしくは溶液の調製など、別の剤形の調製に使用することもできる。これら組成物はそれぞれ、分散または湿潤剤、懸濁化剤、保存剤などの1種または複数の添加剤をさらに含んでもよい。追加の医薬添加剤(たとえば、充填剤、甘味剤、着香剤、着色剤)をこれら組成物に含めることもできる。
【0107】
経口投与に適する本発明の医薬組成物の液体組成物は、液体形態、または水もしくは別の適切な賦形剤で使用前に液体に戻すことを目的とした乾燥製品の形のいずれかで、調製、包装、および販売することができる。
【0108】
本発明による1種または複数の化合物を含有する錠剤は、たとえば、場合により1種または複数の佐剤または補助的原材料と共に圧縮または成形するなど、当業者に容易に理解される標準のいかなる方法によって製造してもよい。錠剤は、場合により、コーティングされていても、切り込みが入れられていてもよく、活性剤の緩徐放出または制御放出がなされるように製剤してもよい。
【0109】
本発明の組成物中に使用する佐剤または補助的原材料は、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、着香剤、着色剤など、当業界で許容されると一般にみなされる任意の医薬品原材料を包含し得る。結合剤は一般に、錠剤の凝集性を助長し、圧縮後に錠剤を確実に不活性なままにするのに使用される。適切な結合剤としては、その限りでないが、デンプン、多糖、ゼラチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、蝋、ならびに天然および合成のゴムが挙げられる。許容される充填剤としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロース、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、ソルビトールなどの可溶性材料が挙げられる。滑沢剤は、錠剤の製造を円滑にするのに有用であり、植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸がこれに含まれる。錠剤の崩壊を促進するのに有用である崩壊剤には、一般に、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム、および架橋ポリマーが含まれる。錠剤のかさを増すのに一般に含められる希釈剤としては、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉末の糖を挙げることができる。本発明による組成物中に使用するのに適する界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、または非イオン性の界面活性剤でよい。安定剤は、活性剤の分解につながる、酸化反応などの反応を阻止または減らすために組成物中に含めることができる。
【0110】
固体剤形は、コーティングを施すなどして、活性剤の遅延放出がなされるように製剤することができる。遅延放出コーティングは、当業界で知られており、それを含む剤形は、既知の適切ないかなる方法によって調製してもよい。そうした方法は一般に、固体剤形(たとえば、錠剤またはカプレット剤)を調製した後、遅延放出コーティング組成物を適用することを含む。適用は、無気吹付、流動床コーティング、コーティングパンの使用などの方法によるものでよい。遅延放出コーティングとして使用する材料は、セルロース系材料(たとえば、酪酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース)、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、およびそのエステルのポリマーおよびコポリマーなど、高分子の性質のものでよい。
【0111】
本発明による固体剤形は、持続放出の(すなわち、活性剤を長時間にわたって放出する)ものでもよく、その上に遅延放出でも、遅延放出でなくてもよい。持続放出組成物は、当業界で知られており、不溶性プラスチック、親水性ポリマー、脂肪族化合物などの徐々に分解または加水分解し得る材料からなる基材内に薬物を分散させることにより一般に調製される。あるいは、固体剤形をそうした材料でコーティングしてもよい。
【0112】
非経口投与用の組成物は、水性および非水性の滅菌注射溶液を含み、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および組成物を目的のレシピエントの血液と等張性にする溶質などの追加の物質をさらに含有してもよい。組成物は、懸濁化剤および増粘剤を含有する水性および非水性の滅菌懸濁液を含む場合もある。このような非経口投与用の組成物は、たとえば、密封アンプルやバイアルなどの単位用量または多用量容器に入れた体裁にすることができ、使用直前に滅菌液体担体、たとえば、(注射用の)水を加えるだけで済む、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即時調合注射溶液および懸濁液は、滅菌した、以前に記載した種類の粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0113】
本発明による組成物は、経皮的に投与することもでき、活性剤は、長時間レシピエントの表皮と密着したままになるように適合された積層構造(一般に「パッチ」と呼ばれる)に組み込まれる。通常、そうしたパッチは、単層「接着剤中薬物型」パッチ、または活性剤が接着剤層とは別の層に含まれる多層パッチとして入手可能である。両方のタイプのパッチが、一般に、裏地層、およびレシピエントの皮膚に貼付する前に除去されるライナーも含んでいる。経皮的薬物送達パッチはまた、半透膜および接着層によってレシピエントの皮膚と隔てられた、裏地層の下に横たわる貯蔵部からなるものでもよい。経皮的薬物送達は、受動拡散によってなされる場合もあり、またはエレクトロトランスポートまたはイオン導入法を使用して促進することもできる。
【0114】
本発明の組成物の直腸送達用の組成物としては、直腸坐剤、クリーム、軟膏、および液剤が挙げられる。坐剤は、ポリエチレングリコールなどの当業界で一般に知られている担体と組み合わせた活性剤としての体裁にすることができる。このような剤形は、急速に、または長時間にわたって崩壊するように設計することができ、崩壊が完了する時間は、約10分などの短時間から、約6時間などの長時間までの範囲となり得る。
【0115】
局所用組成物は、活性剤を、皮膚、頬側、および舌下を含めた身体表面に送達するのに適し、それが当分野で容易に理解されるいかなる形態にしてもよい。局所用組成物の典型例として、軟膏、クリーム、ゲル、泥膏、および溶液が挙げられる。口における局所投与用の組成物として、ロゼンジも挙げられる。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書で開示する化合物および組成物は、医療デバイスによって送達することができる。そのような送達は、一般に、その限りでないが、ステント、カテーテル、バルーンカテーテル、シャント、またはコイルを含めて、挿入可能または植込可能な任意の医療デバイスによるものでもよい。一実施形態では、本発明は、その表面が本明細書に記載の化合物または組成物でコーティングされている、ステントなどの医療デバイスを提供する。本発明の医療デバイスは、たとえば、本明細書で開示するものなどの疾患または状態の経過を治療し、予防し、または別な形でそれに影響を及ぼすいかなる用途において使用してもよい。
【0117】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の1種または複数の化合物を含む医薬組成物は、断続的に投与される。治療有効用量の投与は、たとえば、持続放出組成物でのように、継続的な方法で実現することができ、または、たとえば、1日1回、2回、3回、もしくはそれ以上の投与でのように、所望の日常投薬計画に従って実現することができる。「停止期間」とは、組成物の継続的な持続放出投与または日常投与を停止するものである。停止期間は、継続的な持続放出投与または日常投与の期間より長くても短くてもよい。停止期間の間、該当組織中の組成物の成分レベルは、治療の間に実現される最大レベルを実質的に下回る。停止期間の好ましい長さは、有効用量の濃度および使用する組成物の形態に応じて決まる。停止期間は、少なくとも2日、少なくとも4日、または少なくとも1週間にすることができる。他の実施形態では、停止期間は、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、またはそれ以上である。持続放出組成物を使用するとき、身体における組成物の滞留時間がより長いことを見込んで、停止期間を延長しなければならない。あるいは、持続放出組成物の有効用量の投与頻度をそれに応じて減らすことができる。本発明の組成物を投与する断続的なスケジュールは、所望の治療効果、最終的には疾患または障害の治療が実現されるまで続けることができる。
【0118】
本発明による組成物の投与は、本明細書に記載の薬学的に活性のある単一の化合物を投与すること、本明細書に記載の薬学的に活性のある化合物を、本明細書に記載の薬学的に活性のある別の1種または複数の化合物と共に投与すること、または本明細書に記載の薬学的に活性のある1種または複数の化合物を、薬学的に活性のある別の1種または複数の化合物と組み合わせて投与すること(すなわち、共投与)を含む。したがって、本発明の組成物中の薬学的に活性のある化合物は、固定した組合せ(すなわち、両方の活性材料を含有する単一医薬組成物)にして投与できると認識される。あるいは、薬学的に活性のある化合物は、同時に投与することもできる(すなわち、別個の組成物が同時に投与される)。別の実施形態では、薬学的に活性のある化合物は、逐次投与される(すなわち、薬学的に活性のある1種または複数の化合物が投与された後、薬学的に活性のある1種または複数の化合物が別途投与される)。当業者には、最も好ましい投与方法により所望の治療効果が得られることが理解されよう。
【0119】
本発明による組成物の治療有効量の送達は、治療有効用量の組成物の投与によって実現することができる。それに応じて、一実施形態では、治療有効量は、異常細胞増殖の治療に有効な量である。別の実施形態では、治療有効量は、炎症の治療に有効な量である。さらに別の実施形態では、治療有効量は、関節炎の治療に有効な量である。さらに別の実施形態では、治療有効量は、喘息の治療に有効な量である。
【0120】
活性化合物は、治療量の本発明の化合物を重篤な毒作用なしに患者にin vivo送達するのに十分な量で、医薬組成物中に含められる。薬物組成物中の活性化合物の濃度は、薬物の吸収、不活性化、および分泌速度、ならびに当業者に知られている他の要素に応じて決まる。投与量の値は、緩和しようとする状態の重症度によっても変わることに留意すべきである。任意の特定の対象のために、詳細な投薬計画は、個々のニーズ、および組成物の投与の管理者または監督者による専門職としての判断に従って徐々に調整すべきであること、ならびに本明細書に記載の投与量範囲は、例示的なものにすぎず、特許請求対象の組成物の範囲または実用を限定するものではないこともさらに理解すべきである。活性成分は、1回で投与してもよいし、またはいくつかのより少ない用量に分けて、様々な時間間隔で投与してもよい。
【0121】
本発明による治療有効量は、レシピエントの体重ベースで決定することができる。たとえば、一実施形態では、本発明の1種または複数の化合物の治療有効量は、1日約0.1μg/体重kg〜約5mg/体重kgの範囲にある。あるいは、治療有効量は、固定用量に関して記載することもできる。したがって、別の実施形態では、本発明の1種または複数の化合物の治療有効量は、1日約0.01mg〜約500mgの範囲にある。当然、そのような量は、日中を通して投与されるいくつかのより少ない投与量に分けることもできると理解される。薬学的に許容される塩およびプロドラッグの有効投与量範囲は、送達しようとする親ヌクレオシドの重量を基準として算出することができる。塩またはプロドラッグがそれ自体で活性を示す場合、有効投与量は、塩もしくはプロドラッグの重量を使用して上記のように、または当業者に知られている他の方法によって推定することができる。
【0122】
本明細書に記載の1種または複数の化合物を含む本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトに治療有効量で投与されることを企図している。本明細書に記載の状態または疾患のいずれかを治療するための化合物または組成物の有効用量は、従来の技術を使用し、また類似状況下で得られた結果を観察することにより、容易に決定することができる。組成物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および既往歴に応じて変わることが予想されるであろう。当然、その限りでないが、併発した特定の疾患、疾患の併発または重症度の程度、個々の患者の反応、投与する特定の化合物、投与方式、投与する製剤の生物学的利用能特性、選択した用量計画、および付随する薬物療法の使用を含めて、他の要素も、送達しようとする組成物の有効量に影響を及ぼす場合があろう。化合物は、治療される状態に随伴する望ましくない症状および臨床徴候を緩和するのに十分な期間投与することが優先される。有効性および投与量を決定する方法は、当業者に知られている。たとえば、参照により本明細書に援用されるIsselbacherら(1996)、Harrison’s Principles of Internal Medicine 第13版、1814〜1882を参照されたい。
【0123】
V.活性剤の組合せ
本発明に従って種々の疾患または状態を治療する際、本明細書で開示する化合物は、様々な組合せで投与することができる。たとえば、一実施形態では、本発明による組成物は、本明細書に記載の単一化合物を含んでもよい。別の実施形態では、本発明による組成物は、2種以上の本発明による化合物を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明による組成物は、本明細書に記載の1種または複数の化合物を、治療特性を有することが示されている別の1種または複数の化合物と共に含んでもよい。たとえば、本明細書に記載の化合物は、毒性を軽減する1種または複数の化合物(たとえば、葉酸またはロイコボリン)と共に投与することができる。別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、抗炎症薬、抗関節炎薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗高コレステロール血症薬、降圧薬、または抗凝固薬であることが示されている1種または複数の化合物と共に投与することができる。そうした別の化合物は、本発明の化合物と組み合わせて、または交互に提供することができる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、以下に記載する群から選択される1種または複数の化合物と組み合わせて提供することができる。
【0124】
以下の記述では、本発明の化合物との組合せにおいて有用ないくらかの化合物を、指摘の化合物を使用して一般に治療される詳細な疾患または状態に関して記載する場合がある。そうした疾患または状態の開示は、本発明の範囲を限定するものではなく、特に、本明細書で開示する組合せを使用して治療することのできる疾患または状態を限定することはない。むしろ、そうした例示的な疾患または状態は、追加の化合物を使用して通常は治療される疾患および状態のタイプを例示するために示すにすぎない。
【0125】
本発明の化合物は、ある実施形態では、増殖抑制薬と組み合わせて、または交互に使用することができる。増殖性障害は、現在、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然産物、酵素、生体応答修飾物質、多岐にわたる薬剤、放射性医薬品(たとえば、ホルモンまたは抗体にタグ付けされたY−90)、ホルモン、および拮抗薬を含む様々な部類の化合物によって治療される。以下に列挙する増殖抑制薬のいずれか、またはたとえば、DeVita,V.T.,Jr.、Hellmann,S.、Rosenberg,S.A.、Cancer:Principles&Practice of Oncology、第5版、Lippincott−Raven Publishers(1997)に記載されているような他の任意のそうした治療薬および原理は、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。
【0126】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適する血管新生抑制剤の非限定的な典型例としては、その限りでないが、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)タンパク質、ENDOSTATIN(商標)タンパク質、スラミン、スクアラミン、組織メタロプロテアーゼ阻害物質I、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板因子4、プロタミン硫酸塩(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの殻から調製される)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、たとえばプロリン類似体(I−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シス−ヒドロキシプロリン)を含むマトリックス代謝の調節因子、d,1−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン、α,α−ジピリジル、β−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3h)−オキサゾロン、メトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン血清、chimp−3、キモスタチン、β−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン(eponemycin)、フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、β−1−アンチコラゲナーゼ血清、α−2−アンチプラスミン、ビサントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n−(2−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニル酸二ナトリウムまたは「CCA」、サリドマイド、血管新生抑制ステロイド(angostatic steroid)、カルグボキシナミノールミダゾール(cargboxynaminolmidazole)、BB94などのメタロプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。他の血管新生抑制剤として、血管新生成長因子、すなわち、bFGF、aFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SF、およびAng−1/Ang−2に対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。Ferrara N.およびAlitalo,K.「Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors」(1999)Nature Medicine 5:1359〜1364。
【0127】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適するアルキル化剤の非限定的な典型例としては、その限りでないが、メクロレタミンなどのナイトロジェンマスタード(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、シクロホスファミド、イホスファミド(急性および慢性リンパ球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳、卵巣、肺、ウィルムス腫瘍、子宮頚、精巣、軟部組織肉腫)、メルファラン(L−サルコリシン)(多発性骨髄腫、乳、卵巣)、クロラムブシル(慢性リンパ球性白血病、原発性マクログロブリン血症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、エチレンイミンおよびメチルメラミン、たとえばヘキサメチルメラミン(卵巣)、チオテパ(膀胱、乳、卵巣)、アルキルスルホネート、たとえばブスルファン(慢性顆粒球性白血病)、ニトロソ尿素、たとえばカルムスチン(BCNU)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、原発性脳腫瘍、多発性骨髄腫、悪性黒色腫)、ロムスチン(CCNU)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、原発性脳腫瘍、小細胞肺)、セムスチン(メチル−CCNU)(原発性脳腫瘍、胃、結腸)、ストレプトゾシン(STR)(悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド)、トリアゼン、たとえばダカルバジン(DTIC(ジメチルトリアゼノイミダゾール−カルボキサミド))(悪性黒色腫、ホジキン病、軟部組織肉腫)が挙げられる。
【0128】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適する代謝拮抗薬の非限定的な典型例としては、その限りでないが、葉酸類似体、たとえばメトトレキセート(アメトプテリン)(急性リンパ球性白血病、絨毛がん、菌状息肉腫、乳、頭頸部、肺、骨原性肉腫)、ピリミジン類似体、たとえばフルオロウラシル(5−フルオロウラシル(5−FU))、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン(FUdR))(乳、結腸、胃、膵臓、卵巣、頭頸部、膀胱、前悪性皮膚病変)(局所)、シタラビン(シトシンアラビノシド)(急性顆粒球性および急性リンパ球性白血病)、プリン類似体および関連阻害剤、たとえばメルカプトプリン(6−メルカプトプリン(6−MP))(急性リンパ球性、急性顆粒球性、および慢性顆粒球性白血病)、チオグアニン(6−チオグアニン(TG))(急性顆粒球性、急性リンパ球性、および慢性顆粒球性白血病)、ペントスタチン(2’−デオキシシオホルマイシン)(ヘアリーセル白血病、菌状息肉腫、慢性リンパ球性白血病)、ビンカアルカロイド、たとえばビンブラスチン(VLB)(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、乳、精巣)、ビンクリスチン(急性リンパ球性白血病、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、小細胞肺)、エピポドフィロトキシン、たとえばエトポシド(精巣、小細胞肺および他の肺、乳、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球性白血病、カポジ肉腫)、テニポシド(精巣、小細胞肺および他の肺、乳、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性顆粒球性白血病、カポジ肉腫)が挙げられる。
【0129】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適する細胞障害性薬剤の非限定的な典型例としては、その限りでないが、ドキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、リン酸エストラムチンナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、組換え型インターフェロンα2a、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシが挙げられる。
【0130】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適する天然産物の非限定的な典型例としては、その限りでないが、抗生物質、たとえばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)(絨毛がん、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、精巣、カポジ肉腫)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)(急性顆粒球性および急性リンパ球性白血病)、ドキソルビシン(軟部組織、骨原性、および他の肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性白血病、乳、尿生殖器 甲状腺、肺、胃、神経芽細胞腫)、ブレオマイシン(精巣、頭頸部、皮膚および食道 肺、および尿生殖路、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、プリカマイシン(ミトラマイシン)(精巣、悪性高カルシウム血症)、マイトマイシン(マイトマイシンC)(胃、子宮頚、結腸、乳、膵臓、膀胱、頭頸部)、酵素、たとえばL−アスパラギナーゼ(急性リンパ球性白血病)、生体応答修飾物質、たとえばインターフェロンα(ヘアリーセル白血病、カポジ肉腫、黒色腫、カルチノイド、腎細胞、卵巣、膀胱、非ホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、多発性骨髄腫、慢性顆粒球性白血病)が挙げられる。
【0131】
本明細書で開示する化合物および組成物と組み合わせて、または交互に使用することのできる追加の薬剤としては、その限りでないが、白金配位錯体、たとえばシスプラチン(cis−DDP)、カルボプラチン(精巣、卵巣、膀胱、頭頸部、肺、甲状腺、子宮頚、子宮内膜、神経芽細胞腫、骨原性肉腫);アントラセンジオン、たとえばミクストキサントロン(急性顆粒球性白血病、乳);置換尿素、たとえばヒドロキシ尿素(慢性顆粒球性白血病、真性多血症、本態性血小板増加症、悪性黒色腫);メチルヒドラジン誘導体、たとえばプロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)(ホジキン病);副腎皮質抑制薬、たとえばミトタン(o,p’−DDD)(副腎皮質)、アミノグルテチミド(乳);副腎皮質ステロイド、たとえばプレドニゾン(急性および慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、乳);プロゲスチン、たとえばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール(子宮内膜、乳);ステロイド、たとえばリン酸ベタメタゾンナトリウム、および酢酸ベタメタゾンが挙げられる。
【0132】
本発明の化合物と組み合わせて使用するのに適するホルモンおよび拮抗薬の非限定的な典型例としては、その限りでないが、エストロゲン:ジエチルスチベステロール、エチニルエストラジオール(乳、前立腺);抗エストロゲン:タモキシフェン(乳);アンドロゲン:プロピオン酸テストステロン、フルキソミエステロン(Fluxomyesterone)(乳);抗アンドロゲン:フルタミド(前立腺);ゴナドトロピン放出ホルモン類似体:リュープロリド(前立腺)が挙げられる。他のホルモンとして、酢酸メドロキシプロゲステロン、エストラジオール、酢酸メゲストロール、酢酸オクトレオチド、二リン酸ジエチルスチルベストロール、テストラクトン、および酢酸ゴセレリンが挙げられる。
【0133】
本発明の化合物は、関節炎の治療に使用される治療薬と組み合わせて、または交互に使用することができる。そのような治療薬の例として、その限りでないが、以下のものが挙げられる。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、たとえば、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害剤、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびナプロキセン(たとえば、ナトリウムナプロキセン)、
鎮痛薬、たとえば、アセトアミノフェン、オピオイド鎮痛薬、経皮フェンタニル、
生体応答修飾物質、たとえば、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、アナキンラ、アバタセプト、チルキシマブ(tiruximab)、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、およびトシリズマブ、
副腎皮質ホルモン剤またはステロイド、たとえば、糖質コルチコイド(GC)、フルチカゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アドレナリン、アルドステロン、酢酸コルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、プロシノニド、リメキソロン、および副腎皮質、
疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、たとえば、ヒドロキシクロロキン、シクロスホスファミド(cyclosphosphamide)、レフルノミド、クロラムブシル、金化合物オーラノフィン、スルファサラジン、ミノサイクリン、シクロスポリン、トール様受容体作動薬および拮抗薬、キナーゼ阻害剤(たとえば、p38MAPK)、免疫抑制薬、および腫瘍壊死因子(TNF)ブロッカー(たとえば、エタネルセプト、インフリキシマブ、およびアダリムマブ)、
線維筋痛症薬物療法、たとえば、アミトリプチリン、フルオキセチン、デュロキセチン、ミルナシプラン、シロベンザプリン(cylobenzaprine)、トラマドール、ギャバペンチン、プレガバリン、および二重再取込み阻害剤、
骨粗鬆症薬物療法、たとえば、エストロゲン、副甲状腺ホルモン、ビスホスホネート、選択的受容体分子、および骨形成薬、
痛風薬物療法、たとえば、アロプリノール、プロベネシド、ロサルタン、およびフェノフィブラート、
乾癬薬物療法、たとえば、アシトレチン、ならびに
局所治療薬、たとえば、局所用NSAID、およびカプサイシン。
【0134】
本発明の化合物は、喘息の治療に使用される治療薬と組み合わせて、または交互に使用することもできる。そのような治療薬の例として、その限りでないが、以下のものが挙げられる。
抗アレルギー薬、たとえば、クロモリンナトリウム、およびフマル酸ケトチフェン、
抗炎症薬、たとえば、NSAIDおよびステロイド性抗炎症薬(たとえば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、およびトリアムシノロンアセトニド)、
抗コリン薬、たとえば、臭化イプラトロピウム、ベラドンナアルカロイド、アトロピン、臭化オキシトロピウム、
抗ヒスタミン薬、たとえば、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート、セチリジン、ヒドロキシジン、メクリジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、およびエナジン(enadine)、
β−アドレナリン作動薬(β作動薬)、たとえば、アルブタモール、テルブタリン、エピネフリン、メタプロテレノール、臭化イプラトロピウム、マオウ(アルカロイドの供給源)、エフェドリン、およびプソイドエフェドリン、
ロイコトリエン受容体拮抗薬、たとえば、ザフィルルカスト、およびジロートン、モンテルカスト、
キサンチン(気管支拡張薬)、たとえば、テオフィリン、ジフィリン、およびオクストリフィリン(oxtriphylline)、
多岐にわたる抗喘息薬、たとえば、キサンチン、メチルキサンチン、オクストリフィリン、アミノフィリン、ホスホジエステラーゼ阻害剤、たとえばザルダベリン(zardaverine)、カルシウム拮抗薬、たとえばニフェジピン、およびカリウム活性化剤、たとえばクロマカリム、ならびに
(1種または複数の)予防薬、たとえば、クロモグリク酸ナトリウム、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、およびケトチフェン。
【0135】
さらに、本発明の化合物と組み合わせて、または交互に使用することのできる活性剤の非限定的な例として、抗乾癬薬、抗炎症性腸疾患(抗IBD)薬、抗慢性閉塞性肺疾患(抗COPD)薬、抗多発性硬化症薬、および抗狼瘡薬が挙げられる。具体的な実施形態では、本発明は、特に、本明細書に記載の発明化合物のいずれかとメトトレキセートの組合せを含んでもよい。このような組合せは、同じ製剤にして提供することができる。あるいは、メトトレキセートと発明化合物を、化合物が異なる投与計画に従って投与される(たとえば、メトトレキセートが週1回または2回、発明化合物が1日1回、2回、または3回)ように組み合わせることもできる。
【0136】
VI.製品
本発明はまた、本明細書に記載の1種または複数の化合物を含む組成物を提供する製品を包含する。製品は、本明細書に記載の化合物の1種または複数を、別の1種または複数の治療薬と組み合わせて含んでもよい。製品は、本発明による使用に適する組成物を、乾燥品または液体形態の任意の担体と共に含有する、バイアルまたは他の容器を含んでもよい。詳細には、製品は、本発明による組成物を含有する容器を含むキットを含んでもよい。このようなキットでは、組成物を様々な組合せで送達することができる。たとえば、組成物は、活性成分のすべてを含む単一投与量を含んでもよい。あるいは、2種以上の活性成分が提供される場合、組成物は、組み合わせて、連続して、またはその他極めて近い時間内に投与することが企図されている、それぞれが1種または複数の活性成分を含む複数の投与量を含むものでもよい。たとえば、投与量は、それぞれが単一の活性成分を含むが、組み合わせの投与ではブリスターパック、袋などに入れて提供される、固体形態(たとえば、錠剤、カプレット剤、カプセル剤など)または液体形態(たとえば、バイアル)でよいであろう。
【0137】
製品は、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含む。そのような説明書は、容器上のラベル、容器が包装される箱に収められた挿入物、コンピューターで読み取り可能な様々なフォーマットなどの色々な形態にすることができる。説明書は、バイアルが包装される箱に印刷したものでもよい。説明書には、対象または現場にいる従業者が医薬組成物を投与できるように、十分な投与量や投与情報などの情報が収められる。現場の従業者には、任意の医師、看護師、専門技術者、配偶者、または組成物を投与する可能性のある他の介護者が含まれることが予想される。医薬組成物は、対象によって自己投与されるものでもよい。
【0138】
VII.治療方法
葉酸代謝拮抗薬は、それにより阻害される葉酸依存的な代謝過程に関して一様でない場合があり、多くの葉酸代謝拮抗薬は、様々な酵素に作用する。詳細には、葉酸代謝拮抗薬は、酵素のTS、DHFR、FPGS、AICAR Tfase、およびGARFTの1種または複数を阻害することにより作用し得る。
【0139】
チミジル酸合成酵素(TS)は、ピリミジンデオキシヌクレオチド新規生合成における律速酵素であり、したがってしばしば化学療法戦略のターゲットとなる。DNA合成において、TSは、デオキシウリジン5’−一リン酸(dUMP)をデオキシチミジン5’−一リン酸(dTMP)にする還元的メチル化において中心的役割を果たす。すなわち、TSが阻害されると、dTMPが直ちに枯渇し、引き続いてDNAの不可欠な前駆体である2’−デオキシチミジン5’−三リン酸(dTTP)が枯渇する。この結果として、間接的に2’−デオキシウリジン5’−三リン酸(dUTP)が蓄積され、したがって、DNAにdUTPが誤って取り込まれることによる、いわゆる「チミン欠乏死」、引き続いてウラシル−DNAグリコシラーゼを触媒とする切除に至り、これによりDNA損傷が引き起こされる。このDNA損傷および指摘したdTTP/dUTPのアンバランスは両者とも、下流の諸事象を誘発し、アポトーシス(細胞死)をもたらし得る。
【0140】
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)は、7,8−ジヒドロ葉酸(DHFまたはH2F)の5,6,7,8−テトラヒドロ葉酸(THFまたはH4F)へのNADPH依存的な還元を触媒する。したがって、DHFRは、プリン、チミジル酸、およびいくつかのアミノ酸の合成経路における不可欠な補因子であるTHFの細胞内レベルを維持するのに必要である。
【0141】
グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GAR)および5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICAR Tfase)は、細胞分裂および増殖に肝要なプリン新規生合成経路における葉酸依存的酵素である。GARFTは、10−ホルミルテトラヒドロ葉酸(10−FTHF)がTHFとなる反応からのプリンの生成を触媒し、AICAR Tfaseは、補因子10−FTHFから5−ホルミル−AICARへのホルミル転移を触媒する。GARFTおよびAICAR Tfaseが阻害されると、細胞内プリンレベルが減少し、これにより今度はDNAおよびRNA合成が阻害される。最終的に、GARFTおよびAICAR Tfase阻害によりDNAおよびRNA合成が混乱した結果、細胞死が起こる。GARFTおよびAICAR Tfase阻害に関連する増殖抑制効果により、これら酵素は、抗腫瘍薬の特に望ましいターゲットとなる。
【0142】
ホリルポリグルタミル合成酵素(FPGS)は、細胞質ゾルおよびミトコンドリア両方のホリルグルタミン酸濃縮の確立および維持において中心的役割を担う酵素であり、したがって、葉酸恒常性および増殖細胞の生存に不可欠である。この酵素は、葉酸および葉酸誘導体へのグルタミン酸部分のATP依存的な付加を触媒する。
【0143】
本発明の酵素阻害化合物は、保存された抗葉酸残基を含むので、発明化合物は、抗葉酸化合物の投与を含むことになるいかなる治療方法においても有用である。本発明の化合物は、その状態の症状またはその状態を治療するのに葉酸代謝の妨害が一般に有益である種々の状態の治療において特に有用である。
【0144】
ある実施形態では、本発明は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジル酸合成酵素(TS)、ホリルポリグルタミル合成酵素(FPGS)、グリシンアミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(GAR)、およびアミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICAR Tfase)の1種または複数の阻害に感受性のある状態の治療方法を含んでもよい。別の実施形態では、本発明は、抗葉酸活性に感受性のある状態の治療方法を含んでもよい。
【0145】
詳細な実施形態では、本発明の酵素阻害化合物は、以下のいずれかにおいて有用である。
1)TS活性を阻害する方法、
2)DHFR活性を阻害する方法、
3)GAR活性を阻害する方法、
4)FPGS活性を阻害する方法、
5)AICAR Tfase活性を阻害する方法、
6)葉酸代謝を混乱させる方法、
7)異常細胞増殖の治療方法、または
8)がんの治療方法。
【0146】
保存された抗葉酸残基によって付与される特定の活性に加えて、本発明の酵素阻害化合物は、それ以外の様々な状態の治療においても有用である。たとえば、本発明の化合物は、以下のいずれかにおいて有用となり得る。
9)炎症の治療方法、
10)炎症性腸疾患の治療方法、
11)クローン病の治療方法、
12)潰瘍性大腸炎の治療方法、
13)関節炎の治療方法、
14)関節リウマチの治療方法、
15)骨関節炎の治療方法、
16)自己免疫性炎症性疾患の治療方法、
17)全身性エリテマトーデス(SLE)の治療方法、
18)乾癬の治療方法、
19)乾癬性関節炎の治療方法、
20)ブドウ膜炎の治療方法、
21)喘息の治療方法、
22)心血管疾患の治療方法、または
23)アテローム性動脈硬化症の治療方法。
当然、本発明は、上で挙げた治療方法のいずれかの組合せも包含する。
【0147】
本発明の種々の方法は、本明細書に記載の1種または複数の酵素阻害化合物を患者に投与するステップを含んでもよい。ある実施形態では、本明細書に記載の治療方法のいずれかが、式(13)、式(14)、および(19)〜(24)により記載される酵素阻害化合物のいずれか1種または組合せを患者に投与するステップを含んでもよい。詳細な実施形態では、本発明は、式(23)および式(24)により記載される化合物の1種または組合せを患者に投与することによる、上述の状態のいずれかの治療方法を対象とする。
【0148】
A.異常細胞増殖
異常な細胞増殖は、深刻な健康脅威となるがんおよび非がん障害を含む多くの疾患および状態の原因となることが示されている。一般に、腫瘍においてなどの異常細胞の成長は、正常細胞の成長の限度を超えており、またそれと調和していない。さらに、腫瘍細胞の異常な成長は、一般に、細胞の成長の異常性をもともと引き起こした刺激が中断した後も、異常(すなわち過剰)なまま持続する。良性腫瘍は、その分化した特徴を保持し、完全に制御されない形では分裂しない細胞を特徴とする。良性腫瘍は、局在化し、転移性でないのが普通である。悪性腫瘍(すなわちがん)は、未分化であり、身体の成長制御シグナルに反応せず、制御されずに増加する細胞を特徴とする。悪性腫瘍は、浸潤性であり、転移し得る。
【0149】
異常細胞増殖の疾患または状態の治療は、異常増殖細胞(腫瘍もしくは癌性増殖を含める)の塊もしくは集団のサイズの成長もしくは増大を停止し、抑制し、もしくは緩慢にする、異常増殖細胞の集団における細胞数を減少させる、または異常増殖細胞が他の解剖学的部位に広がるのを予防する、ならびに異常増殖細胞の成長のサイズを縮小する方法を含む。用語「治療」は、異常細胞増殖の障害の治癒または完全な消失を必ずしも意味しない。異常細胞増殖の予防は、そのような障害の発生または発症を、治療なしで起こる場合と比べて、緩慢にし、遅らせ、制御し、またはその見込みを減らす方法を含む。
【0150】
異常な細胞の増殖、特に過剰増殖は、遺伝子突然変異、感染、毒への暴露、自己免疫障害、および良性または悪性の腫瘍誘発を含む変化に富む要因の結果として起こり得る。過剰増殖性の細胞障害としては、その限りでないが、皮膚障害、血管障害、心血管障害、線維性障害、糸球体間質障害、自己免疫障害、移植片対宿主拒絶反応、腫瘍、およびがんが挙げられる。
【0151】
本発明を使用して治療することのできる非新生物性異常細胞増殖障害の非限定的な典型的タイプとしては、乾癬、湿疹、角化症、基底細胞がん、扁平上皮がんなどの皮膚障害;高血圧や血管閉塞性疾患(たとえば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄)などの心血管系の障害;血管の異常な増加をもたらす血管形成(生成)および血管新生(伸展)障害などの血管増殖性障害、たとえば血管新生;ならびに肥満および糖尿病(1型および2型)を含めたインスリン抵抗性状態などの、内分泌系に関連する障害が挙げられる。
【0152】
本発明は、非新生物性異常細胞増殖に関連する炎症性疾患の治療においても有用である。それらの疾患として、その限りでないが、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、増殖性糸球体腎炎、エリテマトーデス、強皮症、側頭動脈炎、閉塞性血栓血管炎、皮膚粘膜リンパ節症候群、喘息、宿主対移植片、甲状腺炎、グレーブス病、抗原誘発による気道機能亢進、肺好酸球増多症、ギラン−バレー症候群、アレルギー性鼻炎、重症筋無力症、ヒトTリンパ好性ウイルス1型に関連する脊髄症、単純ヘルペス脳炎、炎症性筋疾患、アテローム性動脈硬化症、およびグッドパスチャー症候群が挙げられる。
【0153】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、乾癬の治療において有用である。乾癬は、皮膚において抗原提示細胞(APC)による長期のT細胞刺激が起こることを特徴とする、免疫媒介による皮膚障害である。乾癬の種々のタイプとして、たとえば、プラーク乾癬(すなわち、尋常性乾癬)、膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎、頭皮乾癬、および爪乾癬が挙げられる。乾癬の一般的な全身治療としては、メトトレキセート、シクロスポリン、および経口レチノイドが挙げられるが、毒性によりその使用は制限される。40%に上る乾癬患者は、乾癬性関節炎も発症する(Kormeili Tら、Br J Dermatol.(2004)151(l):3〜15)。
【0154】
別の実施形態では、本発明の化合物は、血管の異常な増加をもたらす血管形成(生成)および血管新生(伸展)障害を含む血管増殖性障害の治療において有用である。他の血管増殖性障害として、関節炎、および糖尿病性網膜症などの眼疾患が挙げられる。異常な新血管新生は、固形腫瘍とも関連する。特定の実施形態では、本発明の化合物は、制御されない血管新生に関連する疾患の治療において有用である。異常な血管新生の非限定的な典型的疾患として、関節リウマチ、虚血性再潅流に関連した脳浮腫および脳損傷、皮質性虚血、卵巣過形成および血管過多、(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、ならびに未熟児網膜症(後水晶体線維形成性)、黄斑変性、角膜移植片拒絶反応、神経血管性緑内障、およびOster Webber症候群などの他の眼血管新生疾患が挙げられる。異常な血液細胞増殖に関連するがんとして、血管内皮腫、血管腫、およびカポジ肉腫が挙げられる。
【0155】
別の実施形態では、本発明の化合物は、異常細胞増殖が関与する心血管系の障害の治療において有用である。そのような障害としては、たとえば、高血圧、血管閉塞性疾患(たとえば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、および血管形成術後の再狭窄)、急性冠動脈症候群(不安定狭心症、心筋梗塞、虚血性および非虚血性心筋症、MI後心筋症、心筋線維症など)、および物質誘発による心筋症が挙げられる。
【0156】
血管損傷は、内皮細胞および血管平滑筋細胞の増殖にもつながり得る。血管損傷は、外傷事象または介入(たとえば、血管形成術、血管移植、吻合術、臓器移植)によって引き起こされる場合がある(Clowes Aら、A.J.Vasc.Surg(1991)13:885)。再狭窄(たとえば、冠動脈、頸動脈、および大脳の病変)は、冠動脈のバルーン血管形成術成功例の主な合併症である。再狭窄は、冠動脈の内側を覆う内皮細胞に対する機械的損傷の結果として成長因子が放出されることにより引き起こされると考えられている。
【0157】
本発明によって治療または予防することのできる他のアテローム硬化性状態としては、糖尿病の合併症、糖尿病性糸球体硬化症、および糖尿病性網膜症を含む、内皮細胞および/または血管平滑筋細胞の増殖を伴う動脈壁の疾患が挙げられる。
【0158】
別の実施形態では、本発明の化合物は、内分泌系に関連する異常細胞増殖障害の治療において有用である。例となる障害は、肥満、糖尿病(1型および2型)、糖尿病性網膜症、糖尿病に伴う黄斑変性、妊娠糖尿病、耐糖能障害、多嚢胞性卵巣症候群、骨粗鬆症、骨減少症、ならびにウェルナー症候群を含む組織および臓器の加速した老化を含めた、インスリン抵抗性状態である。
【0159】
別の実施形態では、本発明の化合物は、泌尿生殖器系の異常細胞増殖障害の治療において有用である。それら障害には、たとえば、子宮内膜症、良性前立腺肥大症、平滑筋腫、多嚢胞性腎疾患、および糖尿病性腎症が含まれる。
【0160】
別の実施形態では、本発明の化合物は、線維性障害の治療において有用である。線維症を伴う医学的状態としては、手術または損傷の結果として生じる望ましくない組織接着が挙げられる。線維性障害の非限定的な例として、肝硬変およびメサンギウム増殖性細胞障害が挙げられる。
【0161】
さらに別の実施形態では、本発明に従って、組織および関節の異常細胞増殖障害を治療することができる。そのような障害として、たとえば、レイノー現象/疾患、シェーグレン症候群 全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、血管炎、強直性脊椎炎、骨関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、および線維筋痛症が挙げられる。
【0162】
特定の実施形態では、本発明に従って肺循環系の異常細胞増殖障害も治療することができる。それら障害として、たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、反応性気道疾患、肺線維症、および肺高血圧が挙げられる。
【0163】
本発明に従って治療することのできる、異常細胞増殖性の構成要素を含む別の障害として、ベーチェット症候群、線維嚢胞性乳腺疾患、線維腺腫、慢性疲労症候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血性心疾患、透析後症候群、白血病、後天性免疫不全症候群、血管炎、脂質性組織球症、敗血症性ショック、およびガードナー症候群などの家族性腸ポリープ症が挙げられる。同様に本発明の組成物および方法によって治療することのできる障害の範囲に含まれるのは、たとえば、ヒトパピローマウイルスにより誘発される疾患(たとえば、ヒトパピローマウイルス感染により引き起こされる病変)、エプスタイン−バーウイルスにより誘発される疾患、瘢痕形成、性器疣贅、皮膚疣贅などを含めた、ウイルス誘発による過剰増殖性疾患である。
【0164】
本発明の化合物はさらに、原発腫瘍や腫瘍転移などの種々のタイプのがんを含めた異常細胞増殖の状態および疾患の治療において有用である。本発明に従って治療することのできる良性腫瘍の非限定的な具体的なタイプとしては、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腫(bile duct cystanoma)、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ、および化膿性肉芽腫が挙げられる。
【0165】
本発明による化合物の投与によって治療可能である非限定的な典型的ながんとして、乳がん、皮膚がん、骨がん、前立腺がん、肝臓がん、肺がん、脳がん、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓のがん、基底細胞癌、潰瘍型および乳頭型両方の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性リンパ球性および顆粒球性腫瘍、ヘアリーセル腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、クロム親和性細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節神経腫、過形成性角膜神経腫瘍、マルファン症候群様腫瘍体質(marfanoid habitus tumor)、ウィルムス腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋腫(leiomyomater tumor)、子宮頚部異形成および上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟部組織肉腫、悪性カルチノイド、局所皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性および他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性多血症、腺癌、多形神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、ならびに他の癌腫および肉腫が挙げられる。
【0166】
本発明の化合物は、拒絶反応または他の合併症の一因となる、臓器移植に伴う増殖性反応の予防または治療においても有用である。たとえば、増殖性反応は、心臓、肺、肝臓、腎臓、および他の身体臓器または臓器系の移植の際に生じることがある。
【0167】
B.炎症
本発明の化合物は、炎症を特徴とする疾患の治療においても有用である。有意な炎症性の構成要素を有する疾患および状態は、いたるところに存在し、たとえば、皮膚障害、腸障害、ある種の変性神経障害、関節炎、自己免疫疾患、および様々な他の疾病が挙げられる。これら疾患の一部は、上述のように、炎症性および増殖性の両方の構成要素を有する。特定の実施形態では、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、または乾癬の治療に本化合物を使用する。開示する化合物は、他の炎症性疾患、たとえば、アレルギー性障害、皮膚障害、移植拒絶反応、連鎖球菌感染後および自己免疫性腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、毒物注入、全身性エリテマトーデス(SLE)、橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、インスリン依存型糖尿病、およびリウマチ熱、骨盤炎症性疾患(PID)、結膜炎、皮膚炎、ブドウ膜炎、および気管支炎の治療においても有用である。
【0168】
炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含む、いくつかの慢性の炎症性状態を包含する。CDおよびUCはどちらも、その病因が不明であるので、「特発性」とみなされる。クローン病と潰瘍性大腸炎は、多くの症状(たとえば、下痢、腹痛、発熱、疲労)が共通しているが、潰瘍性大腸炎が結腸に限定されるのに対し、クローン病には、消化管のどの区域も関わり得る。両方の疾患が、関節炎、眼疾患(たとえば、上強膜炎や虹彩炎)、皮膚疾患(たとえば、結節性紅斑や壊疽性膿皮症)、泌尿器合併症、胆石、および貧血を含めた腸管外の症状発現を伴う場合がある。多くの患者が凝固性亢進状態にあるので、卒中、網膜血栓、および肺塞栓は、よくあることである。
【0169】
一実施形態では、薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、およびエステルを含めた本発明の化合物は、炎症性腸疾患の治療において有用である。炎症性腸疾患は、詳細にはクローン病でよい。
【0170】
慢性閉塞性肺疾患またはCOPDは、進行性で、肺の異常な炎症反応を伴う、十分に可逆性でない気流制限を特徴とする。この疾患は、成人の最も一般的な呼吸器状態の1つであり、長期罹患および死亡の主要な原因でもあり、世界的に相当な経済的および社会的負担となっている(Pauwels R A.Lancet.(2004)364(9434):613〜20)。この障害の他の名称には、たとえば、慢性閉塞性気道疾患(COAD)、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Lung Disease)(COLD)、慢性気流制限(CALまたはCAFL)、慢性気流閉塞(COA)が挙げられる。
【0171】
COPDは、気道、実質、および肺血管系全域にわたる慢性の炎症を特徴とする。炎症には、多数の細胞、メディエーター、および炎症効果が関与する。メディエーターとしては、たとえば、プロテアーゼ、オキシダント、および毒性ペプチドが挙げられる。時間の経過と共に、炎症が肺を損傷し、COPDに特有な病的変化を来す。疾患の徴候には、慢性気管支炎および肺気腫の両方が含まれる。慢性気管支炎は、多量の粘液を生じ、喘鳴および感染を引き起こす、長期にわたる気道の炎症である。対象が、咳および粘液を少なくとも1年に3か月間かつ連続して2年間定期的に患っていれば、慢性であるとみなされる。肺気腫は、肺胞および/または気管支が破壊され、空気嚢が拡張され、したがって呼吸困難になる疾患である。COPD患者において最も一般的なのは、小葉中心型の肺気腫である。特定の実施形態では、本発明の化合物は、慢性閉塞性肺疾患の治療において有用である。
【0172】
サルコイドーシスは、異常細胞増殖を伴うもう一つの慢性炎症性疾患である。この疾患は、絶えず炎症細胞を供給する血管新生性毛細血管芽によって肉芽腫が生成される、多系統肉芽腫性障害である。
【0173】
上で指摘したように、炎症は、再狭窄、プラーク破綻の結果として生じるアテローム硬化性合併症、重度の組織虚血、および心不全を含む、心血管疾患の病因においても重要な役割を果たす。たとえば、動脈壁の炎症性変化は、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症の発症において主要な役割を果たすと考えられる(Ross R.N Engl J Med.(1999)340:115〜126)。プラーク形成の際に起こる局所の炎症も、進行したプラークの線維状キャップが脆弱化する一因となり、最終的にはプラーク破綻および急性冠動脈症候群を来す(Lind L.Atherosclerosis.(2003)169(2):203〜14)。
【0174】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系を侵す、慢性の、多くの場合衰弱性である自己免疫疾患である。MSは、脳および脊髄で神経を絶縁する脂肪質材料である髄鞘中のタンパク質に、身体により抗体および白血球が振り向けられたとき、その結果として生じる炎症を特徴とする。この結果、いくつもの領域が瘢痕化(硬化)することがあり、それにより筋肉の協調、視覚の知覚、および他の神経シグナルが緩慢化し、または遮断される。特定の実施形態では、本発明の化合物は、多発性硬化症の治療において有用である。
【0175】
炎症性は、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含む神経障害の病因と関連があることが示されている(Mirza B.ら、Neuroscience(2000)95(2):425〜32;Gupta A.Int J Clin Pract.(2003)57(1):36〜9;Ghatan E.ら、Neurosci Biobehav Rev.(1999)23(5):615〜33)。
【0176】
本発明は、たとえば、アレルギー性障害、アレルギー性鼻炎、皮膚障害、移植拒絶反応、球菌感染後および自己免疫性腎不全、敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、毒物注入、エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、インスリン依存型糖尿病、糸球体腎炎、およびリウマチ熱、骨盤炎症性疾患(PID)、結膜炎、皮膚炎、気管支炎、および鼻炎の治療においても有用である。
【0177】
高レベルのC反応性タンパク質(CRP)は、心血管疾患の一因となる有意な危険因子であることが明らかになっている(Int.J.Cardiol.2008、May 21.)。葉酸代謝拮抗薬の研究(Arthritis Res.Ther.2006、8(3)、R82およびArthritis Res.2002、4(6)、R12)では、葉酸代謝拮抗薬が、CRPの全身レベルを低下させ、そのために心血管疾患の主要な危険因子を予防または治療するのに有効であることが示されている。
【0178】
慢性の全身性炎症は、関節リウマチ(RA)患者においてアテローム性動脈硬化の加速および動脈硬直の増加の一因となる場合がある。アテローム性動脈硬化の進行を減速することは、RAおよび全身性エリテマトーデス(SLE)にアテローム硬化性病変の早期の急速な進行が存在することを考えると、非常に有用である。
【0179】
C.喘息
本明細書で開示する化合物は、喘息の治療において使用することができる。近年、喘息の根源的な第一の病理は、気道組織炎症であることが明らかになってきている(Lemanke(2002)Pediatrics 109(2):368〜372;Nagayamaら(1995)Pediatr Allergy Immunol.6:204〜208)。喘息は、喘鳴、咳、胸部絞扼感、息切れ、および喀痰を含む広い範囲の症状および徴候を伴う。気道炎症は、喘息の病因およびその臨床徴候の重要な特徴である。肥満細胞、好酸球、およびリンパ球を含めて、炎症細胞は、軽い喘息を患う若年患者の気道にさえも存在する。
【0180】
炎症は、喘息を伴うまたは伴わない喘鳴障害においても役割を果たす。喘息は、時に、職業喘息、運動誘発性喘息、夜間性喘息、ステロイド抵抗性喘息など、エピソード(もしくは喘息発作)を引き起こし得る誘因または特定の個体において喘息を悪化させる事物によって分類される。本発明の化合物は、一般に、喘鳴障害の治療においても使用することができる。
【0181】
D.関節炎および骨関節炎
4000万人以上のアメリカ人が関節炎に罹患しており、関節炎には、100種類を超えるリウマチ性疾患(すなわち、関節、筋肉、ならびに腱、軟骨、血管および内臓を含む身体の種々の構造を構成または支持する結合組織を侵す疾患)が含まれる。典型的なタイプの関節炎として、リウマチ様疾患(軟部組織リウマチや非関節性リウマチなど)、線維筋痛症、結合組織炎、筋肉リウマチ、筋筋膜疼痛、上腕骨上顆炎、凍結肩、ティーツェ症候群、筋膜炎、腱炎、腱鞘炎、滑液包炎)、若年性慢性脊椎関節症(強直性脊椎炎)、骨関節炎、高尿酸血症、ならびに急性痛風、慢性痛風、および全身性エリテマトーデスに伴う関節炎が挙げられる。
【0182】
肥大性関節炎または骨関節炎は、最も一般的な形の関節炎であり、関節の軟骨の破損を特徴とする。骨関節炎は、65歳を超える人によく生じるが、より早く出現することもある。軟骨の破損により、骨が互いにすり合わさるようになり、痛みが生じ、運動が損なわれる。最近では、炎症が骨関節炎において重要な役割を果たすという証拠が増えてきている。骨関節炎(OA)のために関節置換術を受けようとする患者のほぼ3分の1は、関節を取り囲み保護する滑液中に重度の炎症を抱えている。したがって、本発明の化合物は、骨関節炎の治療において有用である。
【0183】
2番目に多い形の関節炎は、関節リウマチである。この関節炎は、全身を侵すことのある自己免疫疾患であり、衰弱、疲労、食欲減退、および筋肉痛を引き起こす。通常、発症年齢は、骨関節炎よりはるかに早く、20歳〜50歳の間である。炎症は、滑膜内層で始まり、関節全体に広がることがある。別の実施形態では、本発明の化合物は、関節リウマチの治療において有用である。
【0184】
実験
ここで本発明について、特に種々の実施例に関して記載する。以下の実施例は、本発明を限定するものではなく、例示的な実施形態として提供する。
【実施例1】
【0185】
CHL−015(式(23))の調製
酵素阻害化合物CHL−015(本明細書では式(23)により描かれる)の調製は、反応スキームIに従って実施した。
【化21】

【0186】
上記反応スキームIにおいて、安息香酸部分を含んでいる抗葉酸残基(反応スキームIの化合物(A))を使用し、酸官能基を脱離基として使用した。トリエチルアミン(EtN)の存在下、抗葉酸残基をカップリング剤(クロロギ酸イソブチル、すなわちiBuOCOCl)と反応させて、中間体無水物を生成し、これをジメチルホルムアミド(DMF)に可溶化させた。
【0187】
DMFに可溶化した無水物中間体を、追加のトリエチルアミン中で、含アミン反応物(反応スキームIの化合物(B))と反応させた。反応混合物を濾過し、DMF濾液を蒸発させると油状物が残り、これを水酸化ナトリウム水溶液で処理した。固体を生成させ、これを濾過し、水で洗浄し、乾燥させた。
【0188】
生成した固体中間体(反応スキームIの化合物(C))は、完全な状態の抗葉酸残基を含む完全に保護されたカップリング生成物であった。この中間体を、溶離液としてジクロロメタン(DCM)とメタノールの(9:1〜4:1の比の)混合物を用い、シリカで精製した。これにより、2.68g(理論収率50%)が純度99%で得られた。化合物(C)のNMRスペクトルを図1に示す。
【0189】
中間体化合物(C)の脱保護は、ジクロロメタン(DCM)とトリフルオロ酢酸(TFA)(1:1)の混合物を使用して行った。保護基を速やかに除去し(すなわち、tBuエステルの切断、2個のヒドロキシル基の遊離化)、ラクトンが生成したことを示す(液体クロマトグラフィーによって示される)完全な変換がなされるまで、混合物を室温で撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残りの材料をNaOH水溶液で処理して、ラクトン環を開いた。酸を単離するために、塩基性混合物を酢酸で酸性化し、固体を濾過し、生成物を乾燥させた。酸は、収量1.67g(理論収率77%)、純度97%(主な不純物は残存するラクトンである)で黄色の粉末として得られた。
【0190】
ナトリウム塩(反応スキームIの化合物(D))を調製するために、酸を水溶液としての1当量の水酸化ナトリウムで処理し、水を蒸発させた。五酸化リンで乾燥させた後の収量は1.86gであった。化合物(D)のNMRスペクトルを図1に示す。化合物(D)は、上述の式(23)の化合物である。
【実施例2】
【0191】
CHL−016(式(24))の調製
酵素阻害化合物CHL−016(本明細書では式(24)により描かれる)の調製は、以下の反応スキームに従って実施した。
【化22】

【0192】
上記反応スキームIIにおいて、ベンズアルデヒド部分を含んでいる抗葉酸残基を使用し、アルデヒド官能基を反応性基として使用した。抗葉酸残基を、アシルオキシボロヒドリド、すなわちNaBH(OAc)存在下での還元的アミノ化によって、含アミン反応物と反応させた。得られる化合物(CHL−016−01)をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0193】
中間体化合物(CHL−016−01)の脱保護は、ジクロロメタン(DCM)とトリフルオロ酢酸(TFA)(1:1)の混合物を使用して行った。保護基を速やかに除去し(すなわち、tBuエステルの切断、2個のヒドロキシル基の遊離化)、ラクトンが生成したことを示す(液体クロマトグラフィーによって示される)完全な変換がなされるまで、混合物を室温で撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残りの材料をNaOH水溶液で処理して、ラクトン環を開いた。酸を単離するために、塩基性混合物を50%酢酸溶液で酸性化し、固体を濾過し、生成物を乾燥させた。水/MeCNでの分取HPLC精製によって材料の純度を向上させた。
【0194】
ナトリウム塩(反応スキームIIの化合物(CHL−016))を調製するために、酸を水溶液としての1当量の水酸化ナトリウムで処理し、水を蒸発させた。五酸化リンで乾燥させた後の収量は0.7gであった。CHL−016のNMRスペクトルを図2に示す。
【実施例3】
【0195】
DHFRの阻害
複数の化合物についてヒトジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)阻害剤としての活性を評価した。乾燥試験化合物を100%DMSOに濃度10mMで溶解させた。試験アッセイに向けて、化合物を100%DMSOに段階希釈し、分析物に、分析物中のDMSO最終濃度が1%となるよう加えた。全化合物が完全に可溶化した。
【0196】
ヒトDHFRアッセイの最終アッセイ条件は、50mNのKPO(pH7.3)、250mMのKCl、0.1mMのジヒドロ葉酸、0.1mMのNADPH、1%のDMSO、および0.2μg/mLの組換え型ヒトDHFRとした。分析物の最終体積は、セミマイクロキュベット中に800μLとした。
【0197】
Cary分光光度計において、340nmでの吸光度の減少を37℃で3分間モニターした。各化合物に使用した濃度は、予想活性レベルに応じて、10,000〜0.08nMの範囲全域にわたる。アッセイは、各化合物について3通りに実施した。メトトレキセートを陽性対照化合物として試験した。最低でも7段階の濃度を使用して曲線を作成し、Sigma Plot Enzyme Kineticsソフトウェアの検量線分析を使用してIC50値を算出した。試験結果を以下で表1に示す。作成した各化合物の試験曲線のプロットを図3から図6に示す。表1において、比較化合物は式(6)の化合物、すなわちM−Trexであり、発明化合物1は式(23)の化合物であり、発明化合物2は式(24)の化合物であり、対照化合物はメトトレキセート(陽性対照として使用)である。
【表1】

【0198】
本明細書に記載の本発明の多くの変更形態および他の実施形態が、前述の記載事項で示した教示の恩恵を受ける、それら本発明が属する分野の技術者に発想されよう。したがって、本発明は、開示する特定の実施形態に限定されないこと、ならびに変形形態および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものであることを理解されたい。本明細書では特殊な用語を用いているが、それらは包括的かつ説明的な意味で使用しているにすぎず、限定する意図はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(13)
【化1】

[式中、
Hetは、6員の縮合二環、または5員環と縮合した6員環で構成された、場合により芳香族である縮合環構造であり、前記縮合環の一方または両方が、O、SおよびNからなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含み、各環構造は、任意の環炭素原子または環ヘテロ原子に結合した、1個または複数の、以下に記載する置換基RおよびYを含んでもよく、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から選択され、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から選択され、
およびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含んでおり、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
Lは、任意選択であり、脂肪族基、または5〜20個の環原子を含む芳香族もしくは非芳香族環構造であり、
Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択され、
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は、H、ヒドロキシル、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ハロ、場合により置換されているアシル、および−C(O)−アルキルからなる群から独立に選択され、
番号が振られた原子1から6は、環化して、1個または複数のO環原子を場合により含む6員環を形成していてもよい]
の構造に従う酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項2】
環Hetが、式(15)から式(18)
【化2】

[式中、
式(15)の6員の縮合二環系は、場合により芳香族であり、
およびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から独立に選択され、
、R、YおよびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
各Vは、独立に、C、N、OまたはSであり、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
波線の結合は、構造の残りの部分への結合点を示す]
に示す構造のいずれか1つである、請求項1に記載の酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項3】
式(14)
【化3】

[式中、
Hetは、6員の縮合二環、または5員環と縮合した6員環で構成された、場合により芳香族である縮合環構造であり、縮合環の一方または両方が、O、SおよびNからなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含み、各環構造は、任意の環炭素原子または環ヘテロ原子に結合した、1個または複数の、以下に記載する置換基RおよびYを含んでもよく、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から選択され、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から選択され、
およびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含んでおり、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
Lは、任意選択であり、脂肪族基、または5〜20個の環原子を含む芳香族もしくは非芳香族環構造であり、
Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択され、
12、R14、R15、R16、R18およびR19は、H、ヒドロキシル、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルコキシ、ハロ、場合により置換されているアシル、および−C(O)−アルキルからなる群から独立に選択され、
番号が振られた原子1から6は、環化して、1個または複数のO環原子を場合により含む6員環を形成していてもよい]
の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項4】
環Hetが、式(15)から式(18)
【化4】

[式中、
式(15)の6員の縮合二環系は、場合により芳香族であり、
およびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、カルボニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、ハロ、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、およびNRからなる群から独立に選択され、
、R、YおよびYは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
各Vは、独立に、C、N、OまたはSであり、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、Xの任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
波線の結合は、構造の残りの部分への結合点を示す]
に示す構造のいずれか1つである、請求項3に記載の酵素阻害化合物、ならびに薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項5】
式(19)
【化5】

[式中、
、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
環構造「L」は、場合により芳香族であり、1個または複数の環炭素は、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で場合により置き換えられており、
各Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される]
の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物、薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項6】
式(20)
【化6】

[式中、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
環構造「L」は、場合により芳香族であり、1個または複数の環炭素は、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で場合により置き換えられており、
各Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される]
の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物、薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項7】
式(21)
【化7】

[式中、
、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
環構造「L」は、場合により芳香族であり、1個または複数の環炭素は、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で場合により置き換えられており、
各Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される]
の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物、薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項8】
式(22)
【化8】

[式中、
、R、R、RおよびRは、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、および−C(O)−アルキニルからなる群から独立に選択され、
Xは、アミノ、アミド、酸素、またはアルキレンから選択される基であり、前記アルキレンは、1個または複数のヘテロ原子を場合により含み、任意の炭素または窒素原子の1個または複数は、1個または複数の置換基Rで場合により置換されており、
は、H、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、O、場合により置換されているアシル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アルケニル、−C(O)−アルキニル、場合により置換されているアルコキシ、ヒドロキシル、およびハロからなる群から選択され、
環構造「L」は、場合により芳香族であり、1個または複数の環炭素は、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で場合により置き換えられており、
各Zは、1個または複数の置換基であり、H、ハロ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されている、ヒドロキシル、カルボニル、CF、場合により置換されているアルケニル、場合により置換されているアルキニル、場合により置換されているアリール、アルカリール、アリールアルキル、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されている複素環、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、ニトロ、シアノ、アミド、イミド、アジド、アルキルカルボニル、場合により置換されているアシル、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルフェニル、アルキルスルフェニル、およびトリアルキルアンモニウムからなる群から選択される]
の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物、薬学的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および鏡像異性体。
【請求項9】
式(23)
【化9】

の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物。
【請求項10】
式(24)
【化10】

の構造を有する、請求項1に記載の酵素阻害化合物。
【請求項11】
薬学的に許容される担体と、請求項1から10のいずれか一項に記載の酵素阻害化合物とを含む医薬組成物。
【請求項12】
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジル酸合成酵素(TS)、ホリルポリグルタミル合成酵素(FPGS)、グリシンアミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(GAR)、およびアミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICAR Tfase)のうち1つ以上の阻害に反応する状態の治療方法であって、その状態の治療を必要とする患者に、請求項1から10のいずれか一項に記載の酵素阻害化合物を有効量投与するステップを含む方法。
【請求項13】
状態が、異常細胞増殖、がん、炎症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、自己免疫性炎症性疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、乾癬性関節炎、ブドウ膜炎、喘息、心血管疾患、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510163(P2013−510163A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537987(P2012−537987)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/055428
【国際公開番号】WO2011/056957
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(507075587)チェルシー・セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】