説明

酸性CIP用洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法

【課題】
有機質および無機質汚れの洗浄性、低泡性、ゴム腐食防止性、低温および高温における貯蔵安定性に優れ、特に−5℃以下の低温から40℃以上の高温においても貯蔵安定性に優れた酸性CIP洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】
(a)硝酸5〜50質量%、(b)非イオン性界面活性剤0.5〜5質量%、(c)尿素0.05〜1質量%、(d)ジ短鎖アルキル尿素0.01〜6質量%、(e)水を残質量%、さらに(f)リン酸1〜30質量%を含有することを特徴とする酸性CIP用洗浄剤組成物およびそれを用いたCIP洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品・レトルト食品、調味料やマヨネーズ等の各種飲食品製造工場における、タンク、配管等の洗浄に用いられる酸性CIP用洗浄剤組成物に関する。
【0002】
さらに詳しくは各種設備、充填機、殺菌機、熱処理機等の各種設備機器およびこれらの配管、コンテナ、クレイト、樽等の各種容器の機械式自動洗浄、とりわけCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)に用いる酸性CIP用洗浄剤組成物および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、CIP洗浄には、アルカリ洗浄剤、酸性洗浄剤、殺菌剤等が用いられ、食品製造工程の洗浄は、一般的には、1)製品の排出(水洗浄)、2)薬剤洗浄(酸またはアルカリ洗浄)、3)水洗浄(中間すすぎ)、4)薬剤洗浄(アルカリまたは酸洗浄)、5)水洗浄(中間すすぎ)、6)薬剤洗浄(殺菌剤:次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、ヨウ素等、界面活性剤、酵素等)、7)水洗浄(最終すすぎ)の順に行なわれる。汚れの種類や状態によってはこれらの洗浄工程の一部が省略される場合も、また同じ工程が繰り返される場合もある。
【0004】
酸性洗浄剤は、主にスケール等の無機質汚れを除去する目的で使用されている。その主成分はスケール溶解性およびステンレス材質に対する影響性から、硝酸及び/又はリン酸が主に用いられており、特に硝酸がスケール溶解性の点から好ましい。しかし、硝酸は強酸であり、また酸化力を有する強酸であるため、ゴムに対してヒビ割れや硬化等の影響を及ぼす。例えば、食品製造工場の配管や熱交換器、さらには充填機をCIP洗浄する場合、使用されているゴム製のガスケットを腐食する。
【0005】
また、硝酸は油脂やタンパク質等の有機質汚れの除去性に劣るため、有機質が混在する無機質汚れに対しては除去性が低下してしまう。そのため界面活性剤が添加され、特にCIP洗浄においては低泡性の界面活性剤が添加される。しかしながら、高濃度の硝酸中に有機物を添加すると有害な窒素酸化物ガスが発生するため、尿素等の還元剤による抑制が提案されているが不十分であり、さらに尿素を添加したものは低温安定性に劣るという問題が生じる。
【0006】
特開2004−203947号公報には、硝酸を主成分として、これに尿素を特定量含有せしめることにより、繰り返し使用してもゴム防食能が低下せず、かつ硝酸濃度も低下しない、安定化された硬表面用硝酸洗浄剤組成物が開示されている。(特許文献1を参照)。
【0007】
特公平2−28639号公報には、硝酸溶液中に1,3−ジメチルカルバミドを必須成分として含有せしめることにより、長期間安定したゴム防食能を有する硝酸洗剤組成物が開示されている。(特許文献2を参照)。
【0008】
しかしながら、これらの組成物は、それぞれが特定の性能を満たすに過ぎず、有機質および無機質汚れの洗浄性、低泡性、ゴム腐食防止性、低温および高温での貯蔵安定性が総合的に満足のいくものではないといった問題を抱えている。
【特許文献1】特開2004−203947号公報
【特許文献2】特公平2−28639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、特に有機質および無機質汚れの洗浄性、低泡性、ゴム腐食防止性、低温および高温での貯蔵安定性に優れ、なかでも−5℃以下の低温においても貯蔵安定性に優れるとともに、40℃以上の高温においても貯蔵安定性に優れた酸性CIP洗浄剤およびそれを用いた洗浄方法の提供を目的とする。
【0010】
本発明の酸性CIP洗浄剤組成物は、このような事情に鑑みなされたもので、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品・レトルト食品、調味料やマヨネーズ等の各種食品製造工場における、タンク、配管等の洗浄、さらに詳しくは各種設備、充填機、殺菌機、熱処理機等の各種設備機器およびこれらの配管、コンテナ、クレイト、樽等の各種容器の機械式自動洗浄、とりわけCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)に用いるのに適している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は(a)硝酸5〜50質量%、(b)非イオン性界面活性剤0.5〜5質量%、(c)尿素0.01〜2質量%、(d)ジ短鎖アルキル尿素0.01〜6質量%、(e)水を残質量%含有する酸性CIP用洗浄剤組成物を第1の要旨とし、さらに(f)リン酸1〜30質量%を含有する酸性CIP用洗浄剤組成物を第2の要旨とする。
【0012】
また、上記(d)成分がジメチル尿素および/またはジエチル尿素である酸性CIP洗浄剤組成物を第3の要旨とし、上記(c)成分と(d)成分との配合比率が2:1〜1:10である酸性CIP用洗浄剤組成物を第4の要旨とする。
【0013】
そして、上記(b)成分がポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、末端が炭素数3以上のオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、末端がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックポリマー、末端がポリオキシプロピレン基であるエチレンジアミン型ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックポリマーから選ばれる1種以上の非イオン性界面活性剤である酸性CIP用洗浄剤組成物を第5の要旨とする。
【0014】
さらに、上記酸性CIP洗浄剤組成物を水または湯にて0.2〜30質量%の濃度となるように希釈して用いることを特徴とするCIP洗浄方法を第6の要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸性CIP洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」ということもある。)は、特に、有機質および無機質汚れの洗浄性、低泡性、ゴム腐食防止性、低温および高温での貯蔵安定性に優れ、なかでも−5℃以下の低温においても貯蔵安定性に優れるとともに、40℃以上の高温においても優れた貯蔵安定性を有する。
また、本発明の洗浄剤組成物を用いた洗浄方法により、ビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品・レトルト食品、調味料やマヨネーズ等の各種食品製造工場における、タンク、配管等の洗浄、更に詳しくは、各種設備、充填機、殺菌機、熱処理機などの各種設備機器およびこれらの配管、コンテナ、クレイト、樽等の各種容器の機械式自動洗浄、とりわけCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)を効果的に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の洗浄剤組成物における(a)成分である硝酸の含有量は、5〜50質量%である。5質量%未満では、所望とする無機質汚れの洗浄性が得られない。また、50質量%を超えると、ゴム腐食防止性および高温での貯蔵安定性が低下するため好ましくない。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(b)成分である非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、末端が炭素数3以上のオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、末端がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、末端がポリオキシプロピレン基であるエチレンジアミン型ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーが挙げられ、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合割合は、0.5〜5質量%に設定される。すなわち、0.5質量%未満では、所望の有機質汚れに対する洗浄性が得られず、また、5質量%を超えると、高温での貯蔵安定性が低下し、さらに有機質汚れに対する洗浄性が飽和となり、経済的にも好ましくない。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(c)成分である尿素の含有量は、0.01〜2質量%である。0.01質量%未満では、所望な高温における貯蔵安定性が得られない。また、2質量%を超えて配合しても、低温における貯蔵安定性が低下し、さらに、高温における貯蔵安定性も飽和となり、経済的にも好ましくない。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(d)成分であるジ短鎖アルキル尿素としては、ジメチル尿素、ジエチル尿素等が挙げられ、これらの含有量は0.01〜6質量%である。0.01質量%未満では、所望のゴム腐食防止性および低温での貯蔵安定性が得られない。また、6質量%を超えて配合しても、ゴム腐食防止性が飽和となり、経済的にも好ましくない。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(e)成分である水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性および貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。なお、「水」は、本発明の洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、その他の外から加えられる水との総和であり、組成物全体が100%となるよう配合される。
【0021】
さらに、本発明の洗浄剤組成物に用いられる(f)成分であるリン酸の含有量は、1〜30質量%である。すなわち、1%未満では、有機質および無機質汚れに対する洗浄性向上効果が得られず、また、30質量%を超えて配合しても、有機質汚れおよび無機質汚れに対する洗浄性が飽和となり、経済的にも好ましくない。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物で用いられる(c)成分と(d)成分との配合比率(質量比)は、貯蔵安定性の点から、2:1〜1:10の範囲で設定することが望ましい。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物には、任意成分として、硝酸およびリン酸の他にグリコール酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フェノール、ピロリン酸、炭酸、硫酸、および塩酸からなる群より選ばれた1種または2種以上を混合して用いることが出来る。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、上記各種設備やその汚れに応じて、通常、水または湯で希釈した洗浄剤水溶液として洗浄に用いられる。上述のビール工場、醸造工場、ジュースや清涼飲料等の飲料工場、牛乳工場、冷凍食品・レトルト食品、調味料やマヨネーズ等の各種食品製造工場における、タンク、配管等の洗浄、さらに詳しくは、充填機、殺菌機、熱処理機等の各種設備機械器具およびこれらの配管、コンテナ、クレイト、樽等の各種容器の機械式自動洗浄、とりわけCIP洗浄方法においては、特に、0.2〜30質量%濃度の範囲となるよう希釈した洗浄剤水溶液を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物を用いたCIP洗浄方法としては、例えば、A1)製品の排出(水洗浄)、A2)アルカリ洗浄、A3)水洗浄(中間すすぎ)、A4)酸洗浄、A5)水洗浄(中間すすぎ)、A6)殺菌洗浄(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、ヨウ素、熱水等)、A7)水洗浄(最終すすぎ)の順序、または、B1)製品の排出(水洗浄)、B2)酸洗浄、B3)水洗浄(中間すすぎ)、B4)アルカリ洗浄、B5)水洗浄(中間すすぎ)、B6)殺菌洗浄(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、ヨウ素、熱水等)、B7)水洗浄、C3)水洗浄、(中間すすぎ)、C4)殺菌洗浄(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、ヨウ素、熱水等)、C5)水洗浄(最終すすぎ)の順序でおこなうのが好ましい。
上記アルカリ洗浄工程、酸洗浄工程および殺菌洗浄工程は、汚れの質や量、各種設備の規模に応じ、10〜60分間、一般に20〜40分間行なわれる。
【0026】
また、本発明の洗浄剤組成物は、CIP洗浄のみならず、例えば、飲料工場および食品製造工場における充填機、殺菌機、熱処理機等の各種設備機械器具を分解した各種部品等に対して、本発明の洗浄剤組成物を水または湯で0.2〜30質量%に希釈調整した水溶液にて浸漬洗浄を行ってもよい。
【0027】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
後記の表1〜表4に示した実施例1〜16および比較例1〜4の組成(各表の数値の単位は質量%であり、以下、「%」と略すことがある。)の供試洗浄剤組成物を調整し、その有機質汚れおよび無機質汚れに対する洗浄性、低泡性、ゴム腐食防止性、低温および高温での貯蔵安定性について評価した。その結果を後記の表1〜4に併せて示す。なお、各種試験方法および評価基準は、以下に示すとおりである。
【0028】
また、表中の「水」は、洗浄剤組成物を構成する各種成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と外から加えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100%となるようバランスとして示される。
【0029】
なお、後記の表1〜表4において、用いた各種成分とその有効成分量(質量%、以下、「%」と略す。)の詳細は、下記の通りであり、表中の数値は、有り姿で示したものである。
【0030】
〔(a)成分〕
硝酸
商品名:「硝酸」、旭化成社製(有効成分67.5%)
【0031】
〔(b)成分〕
・非イオン性界面活性剤1
ポリオキシアルキレングリコールエーテル
商品名:「アデカカーポールMH−20」、ADEKA社製(有効成分100%)
・非イオン性界面活性剤2
ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル
商品名:「プルラファックLF431」、BASF社製(有効成分100%)
・非イオン性界面活性剤3
末端が炭素数3以上のオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレンアルキルエーテ ル
商品名:「ニューポール50HB−100」、三洋化成工業社製(有効成分100%)
・非イオン性界面活性剤4
末端がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロ ックポリマー
商品名:「アデカプルロニック25R−1」、ADEKA社製(有効成分100%)
・非イオン性界面活性剤5
末端がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロ ックポリマー
商品名:「アデカプルロニック25R−2」、ADEKA社製(有効成分100%)
・非イオン性界面活性剤6
末端がポリオキシプロピレン基であるエチレンジアミン型ポリオキシエチレン−ポリオ キシプロピレンブロックポリマー
商品名:「アデカプルロニックTR−913R」、ADEKA社製(有効成分100% )
【0032】
〔(c)成分〕
尿素
商品名:「尿素」、小宗化学薬品社製(有効成分100%)
【0033】
〔(d)成分〕(ジ短鎖アルキル尿素)
・ジメチル尿素
商品名:「ジメチル尿素」、東京化成工業社製(有効成分100%)
・ジエチル尿素
商品名:「ジエチル尿素」、和光純薬工業社製(有効成分100%)
【0034】
〔(f)成分〕
リン酸
商品名:「リン酸」、東ソー社製(有効成分75%)
【0035】
有機質汚れの洗浄性試験方法
〔試験方法〕
有機質汚れの代表として、クリーム(商品名:十勝フレッシュ、明治乳業社製)を用いて試験を行った。ステンレス片(5cm×8cm)にクリーム0.1gを付着し、25℃で1恒温乾燥機(型式:MOV−212、三洋電機社製)で8時間乾燥させて、テストピースとした。
300ml容量のビーカーに供試洗浄剤組成物の1質量%水溶液300ml(65℃)を調整し、上記テストピースを5分間浸漬した後、流水ですすぎ、自然乾燥させる。その後、洗浄前と洗浄後における重量変化に基づき、次式から洗浄効率(%)を算出し、以下の評価基準により判定した。
洗浄効率(%)=(A−B)/(A−C)×100
A:洗浄前のテストピースの重量(g)
B:洗浄後のテストピースの重量(g)
C:清浄なステンレス片の重量(g)
〔評価基準〕
◎:90%以上の洗浄効率である
○:60%以上、90%未満の洗浄効率である
△:30%以上、60%未満の洗浄効率である
×:30%未満の洗浄効率である
とし、評価基準が、◎、○および△を実用性のあるものと判定した。
【0036】
無機質汚れの洗浄性試験方法
〔試験方法〕
無機質汚れとして、リン酸カルシウムを用いて洗浄性試験を行った。100ml容量のビカーに供試洗浄剤組成物の1質量%水溶液100ml(65℃)を調整し、そこにリン酸カルシウム1gを溶解し、10分間攪拌させた。その後、ICP発光分析法により、該供試洗浄剤組成物の1質量%水溶液中に溶解したカルシウムイオンの濃度を測定し、無機質汚れの洗浄性を以下の評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:60%以上溶解した
○:40%以上、60%未満溶解した
△:20%以上、40%未満溶解した
×:20%未満溶解した
とし、評価基準が、◎、○および△を実用性のあるものと判定した。
【0037】
低泡性試験
〔試験方法〕
供試洗浄剤組成物の1質量%水溶液50mlを100ml容積のネスラー管に採取し、65℃の温浴中に10分間配置し、取り出して上下に10回振とうさせた後、30秒間静置後の発泡量(ml)を測定し、以下の評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:発泡量が3ml未満
○:発泡量が3ml以上、10ml未満
×:発泡量が10ml以上
とし、評価基準が◎および○を実用性のあるものと判定した。
【0038】
〔ゴム腐食防止性試験〕
〔試験方法〕
供試洗浄剤組成物の3質量%水溶液にニトリルブタジエンゴム(NBR)を80℃にて2時間浸漬し、次いで乾燥後に目視にてゴムの腐食状態を観察し、以下の評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:まったく変化せず
○:わずかに変化
△:ゴムが若干硬化
×:ひび割れが発生
とし、◎、○および△を実用性のあるものと判定した。
【0039】
低温における貯蔵安定性試験方法
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物を250ml容量のポリエチレン製容器に200ml入れて、−10、−5℃、および20℃に設定されたそれぞれのインキュベーターに1週間配置した後の供試洗浄剤組成物の沈殿、分離、および凍結の有無について、以下の評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:−10℃、−5℃および20℃にて、沈殿、分離および凍結なし
○:−5℃および20℃にて、沈殿、分離および凍結なし
×:−5℃にて沈殿、分離もしくは凍結の少なくとも一つが確認された
とし、評価基準が◎および○を実用性のあるものと判定した。
【0040】
高温における貯蔵安定性試験方法
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物を250ml容量のポリエチレン製容器に200ml入れて、50℃、40℃、および30℃に設定されたそれぞれのインキュベーターに1週間配置した後の各供試洗浄剤組成物の窒素酸化物ガス発生、沈殿、および分離の有無について、以下の評価基準により判定した。
〔評価基準〕
◎:50℃、40℃および30℃にて、窒素酸化物ガス発生、沈殿、および分離なし
○:40℃および30℃にて、窒素酸化物ガス発生、沈殿、および分離なし
×:40℃にて、窒素酸化物ガスの発生または沈殿、分離が認められた
とし、評価基準が◎および○を実用性のあるものと判定した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
表1〜4の実施例において、本発明の酸性CIP洗浄剤組成物の実施例1〜16は、いずれもが、有機質汚れおよび無機質汚れの洗浄性、低泡性、ゴム腐食防止性、低温および高温における貯蔵安定性の全ての項目において、優れた性能を有していることがわかる。
【0046】
また、表4の比較例において、比較例1および2は、(a)、(b)のいずれかの一つの成分が欠ける例であり、所望の洗浄性が得られないことがわかる。そして、(c)成分を含有しない例である比較例3においては、高温での貯蔵安定性に劣り、また、(d)成分を含有しない例である比較例4においては、低温での貯蔵安定性とゴム腐食防止性に劣っていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硝酸5〜50質量%、(b)非イオン性界面活性剤0.5〜5質量%、(c)尿素0.01〜2質量%、(d)ジ短鎖アルキル尿素0.01〜6質量%、(e)水を残質量%含有することを特徴とする酸性CIP用洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに(f)リン酸1〜30質量%を含有することを特徴とする請求項1記載の酸性CIP用洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(d)成分がジメチル尿素および/またはジエチル尿素であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸性CIP洗浄剤組成物
【請求項4】
上記(c)成分と(d)成分との配合比率が2:1〜1:10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸性CIP用洗浄剤組成物。
【請求項5】
上記(b)成分がポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、末端が炭素数3以上のオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、末端がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックポリマー、末端がポリオキシプロピレン基であるエチレンジアミン型ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックポリマーから選ばれる1種以上の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸性CIP用洗浄剤組成物。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれかに記載の酸性CIP用洗浄剤組成物を水または湯にて0.2〜30質量%の濃度となるように希釈して用いることを特徴とするCIP洗浄方法。


【公開番号】特開2008−74966(P2008−74966A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255899(P2006−255899)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000205683)大三工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】