酸感受性ポリアセタールおよび製造方法
式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含み、核酸デリバリー用途に有用なポリマーである。
【化1】
Aは、少なくとも1つのアセタール基を含み、Bは、-CH-,-CH(CH3)-,-CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択され、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、Vは、リンカー基であり、Uは、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(リジン)、PAMAMデンドリマー、オクタアミン・デンドリマー、ヘキサデカアミン・デンドリマー、エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択されるリンケージであり、Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール、及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択され、nは、1から約250の範囲である。好ましい態様では、式(I)又は(II)の繰り返し単位を含むポリアセタールとポリヌクレオチドとの間に形成された複合体は、トランスフェクション試薬として有用である。
【化1】
Aは、少なくとも1つのアセタール基を含み、Bは、-CH-,-CH(CH3)-,-CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択され、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、Vは、リンカー基であり、Uは、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(リジン)、PAMAMデンドリマー、オクタアミン・デンドリマー、ヘキサデカアミン・デンドリマー、エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択されるリンケージであり、Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール、及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択され、nは、1から約250の範囲である。好ましい態様では、式(I)又は(II)の繰り返し単位を含むポリアセタールとポリヌクレオチドとの間に形成された複合体は、トランスフェクション試薬として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アセタール繰り返し単位を含む生分解性ポリマーに関する。特に、本発明は、酸感受性の生分解性ポリアセタール、それらの製造方法、及びそれらをポリヌクレオチド・デリバリー用途に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大きなスケールで製造が可能であり、免疫性が低いといったような好ましい特性を有する非ウィルス性ドラッグデリバリーシステムが要求されている。それは、ある領域の生物学的な特性を提供するために容易に修正可能である。Mulligan,R.C,“遺伝子治療の基礎科学” サイエンス 260, 926-932 (1993);及びLuo,D.&Saltzman, W. M. “合成DNAデリバリーシステム” Nat. Biotechnol. 18, 33-37 (2000)を参照。しかし、ポリ(リジン)及びポリエチレンイミン(PEI)のような非分解性カチオンポリマーは、かなりの細胞毒性を有する。Choksakulnimitr, S., マスダ, S., トクダ, H., タカクラ, Y. & ハシダ, M., “異なる細胞培養株システムにおける高分子のインビトロ細胞毒性(In vitro cytotoxicity of macromolecules in different cell culture systems),” J. Control Release 34, 233-241 (1995); Brazeau, G. A., Attia, S., Poxon, S. & Hughes, J. A., “非ウィルス性遺伝子治療で使用される選択カチオン高分子のインビトロ筋毒性(In Vitro Myotoxicity of Selected cationic macrolecules used in non-viral gene therapy),” Pharm. Res. 15, 680-684 (1998); 及びAhn, C.-H., Chae, S. Y., Bae, Y. H. & Kim, S. W. “プラスミドDNAデリバリー要請分解性ポリ(エチレンイミン)” J. Control. Release 80, 273-282 (2002)を参照。
【0003】
細胞毒性を下げるため、分解性カチオンポリマーを開発する努力がなされている。Ahn, C.-H., Chae, S. Y., Bae, Y. H. & Kim, S. W., “プラスミドDNAデリバリー要請分解性ポリ(エチレンイミン)” J. Control. Release 80, 273-282 (2002); Lynn, D. M. A., D. G.; Putman, D.; Langer, R., “合成トランスフェクション・ベクターの加速された発見:分解性ポリマーライブラリーの平行合成及び選別(Parallel Synthesis and Screening of a Degradable Polymer Library),” J. Am. Chem. Soc. 123 (2001); Lim, Y. et al., “非毒性遺伝子キャリアーとしての生分解性ポリエステル、ポリ[α-(4-アミノブチル)-1-グリコール酸]” Pharmaceutical Research 17, 811-816 (2000); Lim, Y., Kim, S., Suh, H. & Park, J.-S., “高効率かつ非毒性の遺伝子デリバリーキャリアーとしての生分解性でエンドソーム分裂性のカチオンネットワーク型ポリマー” Bioconjugate Chem. 13, 952-957 (2002); Lim, Y. K., S.; Lee, Y.; Lee, W.; Yang, T.; Lee, M.; Suh, H.; Park, J., “カチオン性超分岐型ポリ(アミノエステル):カチオン性表面、生分解性3次元構造、及びその内部に三級アミン基を有するDNA濃縮分子の新規クラス(A Novel Class of DNA Condensing Molecule with Cationic Surface, Biodegradable Three-Dimensional Structure, and Tertiary Amine Groups in the Interior)” J. Am. Chem. Soc. 123, 2460-2461 (2001); 及びTuominen, J. et al., “制御されたコンポスト化条件及び生態毒物学的な影響の評価のもと、乳酸系ポリマーの生分解(Biodegradation of Lactic Acid Based Polymers under Controlled Composting Conditions and Evaluation of the Ecotoxicological Impact)” Biomacromolecules 3, 445-455 (2002)を参照。しかし、生理的な条件のもと、これらのカチオン性ポリマーは、塩基性触媒による加水分解による分解に影響されやすい。
【0004】
アセタール結合を含む酸感受性ポリマーが報告されている。Tomlinson, R. et al., “pH 依存性分解を示すペンダント鎖で機能化されたポリアセタール:新規ポリマー治療の開発用プラットフォ−ム” Macromolecules 35, 473-480 (2002); and Murthy, N., Thng, Y. X., Schuck, S., Xu, M. C. & Frechet, J. M. J., “蛋白のカプセル化及び放出のための新規な戦略(A Novel Strategy for Encapsulation and Release of Proteins):酸に不安定なアセタール・クロスリンカー付きヒドロゲル及びミクロゲル(Hydrogels and Microgels with Acid-Labile Acetal Cross-Linkers)” J. Am. Chem. Soc. 124, 12398-12399 (2002)を参照。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
好ましい態様では、式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーを提供する。
【0006】
【化9】
【0007】
Aは、少なくとも1つのアセタール基を含み、
Bは、-CH-,-CH(CH3)-,-CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、
Vは、リンカー基であり、
Uは、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(リジン)、PAMAMデンドリマー、オクタアミン・デンドリマー、ヘキサデカアミン・デンドリマー、エンハンサー、及びターゲッティング受容体からなる群より選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択されるリンケージであり、
Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール、及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択され、nは、1から約250の範囲である。
【0008】
別の好ましい態様では、式(III)及び(IV)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(V)によって表される式をもつコモノマーとを反応させることを有する、上記ポリマーの製造方法を提供する。
【0009】
【化10】
【0010】
A、B、Z及びGは、上記で規定したのと同様の意味を有し、
Eは、-OH, -NH2及び-NH(CH3)からなる群より選択され、
Cは、イソシアネート、NHS-エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、及びカルボン酸無水物からなる群より選択される。
【0011】
別の好ましい態様では、式H2NUによって表される化合物と、式(VII)及び(VIII)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、上記ポリマーの製造方法を提供する。
【0012】
【化11】
【0013】
U、A、B、D及びGは、上記で規定されるのと同様の意味をもち、
R3,R4,R5は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。
【0014】
別の好ましい態様では、上記のポリマー及びポリヌクレオチドを含む複合体を提供する。別の好ましい態様では、上記のポリマー及びポリヌクレオチドを混合することを含む、そのような複合体の製造方法を提供する。別の好ましい態様では、細胞とそのような複合体とを接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法を提供する。
【0015】
別の好ましい態様では、前記繰り返し単位が、式(IX)及び式(X)からなる群より選択される式によって表される上記のポリマーを提供する。
【0016】
【化12】
【0017】
Zは、上記で規定されたのと同様の意味であり、R6,R7,R8は、それぞれ独立に、H及び-CH3からなる群より選択され、Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択される。
【0018】
別の好ましい態様では、式(XI)及び(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(XIII)によって表されるコモノマーとを反応させることを有する、上記のポリマーの製造方法を提供する。
【0019】
【化13】
【0020】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択される。
【0021】
別の好ましい態様では、ポリ(エチレンイミン)と、式(XIV)及び式(XV)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、上記のポリマーの製造方法を提供する。
【0022】
【化14】
【0023】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択される。
【0024】
別の好ましい態様では、式(XI)及び式(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーを提供する。
【0025】
【化15】
【0026】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択される。
【0027】
別の好ましい態様では、非アルコール性有機溶媒中の酸の存在下、式(XVI)によって表されるジビニルエーテルと、式(XVII)によって表される化合物の約2当量とを反応させることを含む、そのようなモノマーの製造方法を提供する。
【0028】
【化16】
【0029】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Mは、9-フルオレニルメチル カルバミン酸塩、活性アミド、及び環状イミドからなる群より選択される保護基であり、Rは、メチル又は水素であり、nは、1又は2である。
【0030】
これらの及びその他の態様を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
好ましい態様は、ポリアセタール、ポリアセタールの製造方法、ポリアセタールを製造するのに役に立つモノマー、ポリアセタール及びポリヌクレオチドを含む複合体、そのような複合体の製造方法、及びそのような複合体を使用して細胞をトラスフェクトする方法に関する。
【0032】
ポリアセタールは、アセタール(-O-CHR-O-)繰り返し単位を含むポリマーである。好ましくは、Rはメチルである。好ましいポリアセタールは、式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含む。
【0033】
【化17】
【0034】
式(I)及び(II)において、Aは、少なくとも1つのアセタール基を含むリンカーを表す。Bは、-CH-,-CH(CH3)-,CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択される。Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択される。Vはリンカー基である。Uは、ポリ(エチレンイミン),ポリ(プロピレンイミン),ポリ(リジン),PAMAMデンドリマー,オクタアミン・デンドリマー,ヘキサデカアミン・デンドリマー,エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択される。R,R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択される連結基である。Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択される。ここで、nは、1から約250の範囲である。本明細書では、「リンカー基」とは、ある化学基を別の化学基に結合する二官能性化学基である。リンカー基は、アミドのような1つの二官能性化学基を含むことができ、アミド−アミド、アミド−アルキル、アルキル−アミド、アミン−アミド、又はチオエーテル−アミドのような2つの化学基を含んでいてもよい。好ましいリンカー基の例として、-C(O)NH-,-C(O)NH-R9-C(O)NH-,-C(O)NH-R9-,-R9-C(O)NH-,-NH-R9-C(O)NH-,-S-R9-C(O)NHなどが含まれ、R9は、水素、炭素数1から10のアルキル及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。少なくとも1つのアセタール基を含むリンカー基の例として、-OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)O-CH2CH2-OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)O-CH2CH2CH2CH2-OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)O-CH2CH2OCH2CH2-OCH(CH3)O-及び-OCH(CH3)O-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-OCH(CH3)O-が含まれる。
【0035】
式(I)及び(II)では、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、Vはリンカー基であり、Uは、ポリ(エチレンイミン) (PEI),ポリ(プロピレンイミン) (PPI),ポリ(リジン),PAMAMデンドリマー,オクタアミン・デンドリマー,ヘキサデカアミン・デンドリマー,エンハンサー,及びターゲッティング受容体からなる群より選択される。PEI及びPPIが使用される場合、約200から約10万ダルトンの分子量を有することが好ましい。ポリ(リジン)が使用される場合、約200から約5万ダルトンの分子量を有することが好ましい。ここで言うポリマーの分子量は、高性能排除クロマトグラフィー(光散乱検出器)によって測定された重量平均分子量である。
【0036】
本明細書では、「エンハンサー」は、真核細胞への遺伝子トランスフェクションの効率を高めることができる機能性基であり、「ターゲッティグ受容体」は、細胞表面上に特定の受容体を認識することができる機能性基である。上記の定義は、相互に排他的ではなく、従って、Uは、エンハンサー及びターゲッティング受容体の両方であってもよい。好ましくは、Uは、脂質、コレステロール、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース、マンノース、リポ蛋白、リソソーム栄養剤及び膜融合剤からなる群より選択される。エンハンサー及びターゲッティング受容体は、様々な手段でポリアセタールに付加されてもよい。例えば、リンカー基Vを介してポリアセタールに共有結合させる、あるいはZにエンハンサー及び/又はターゲッティング受容体を共役させる、あるいはその両方を使用してもよい。こうして、2以上のエンハンサー及び/又はターゲッティング受容体がポリアセタールに付加されてもよい。
【0037】
ポリアセタールはコポリマーであってもよく、式(I)及び/又は(II)によって表される2以上の異なる繰り返し単位、及び/又はその他の繰り返し単位を含んでもよい。「式(I)のポリアセタール」、「式(II)のポリアセタール」、「式(I)のポリマー」、及び「式(II)のポリマー」のような用語は、本質的に式(I)又は(II)の繰り返し単位からなるホモポリマーと同様にコポリマーも含む。
【0038】
様々な方法によってポリアセタールを製造してもよい。好ましい方法は、式(III)及び式(IV)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(V)によって表される式を有するコモノマーとを反応させることを含む。
【0039】
【化18】
【0040】
式(III),(IV)及び(V)では、A,B,Z及びGは、上記で規定したのと同様の意味を有し、Eは好ましくは、-OH,-NH2及び-NH(CH3)からなる群より選択される反応性末端基であり、Cは好ましくは、イソシアネート、NHS-エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物及びカルボン酸無水物からなる群より選択される反応性末端基である。図11は、式(V)におけるCによって表される様々な反応性末端基のための化学構造を表す。その重合反応条件は、反応性末端基EおよびCの特性に依存して、該分野の当業者に一般的に知られる方法で調整される。G. Odian, 重合の原理第3版(1991)を参照。加えて、重合は、互換性のよい反応性末端基を有する1以上の付加的なコモノマーの存在下で行ってもよい。好ましくは、その混合物中にコモノマー(V)に対するモノマー(III)及び/又は(IV)のモル比がおよそ1:1である。しかし、正確な割合は、得られるポリマーの分子量を調整するために、及び/又は追加したコモノマーの存在を補償するために変更してもよい。より高い分子量は、一般にその割合を1:1に近づけると達成される。より低い分子量は、モノマー(III)/(IV) 又はコモノマー(V)のいずれか小過剰を使用することによって、及び/又は単官能反応物の少量を含むことによって達成されてもよい。好ましくは、得られるポリアセタール(例えば、式(I)及び/又は(II)によって表される繰り返し単位を含むポリマー又はコポリマー)の分子量は、約1000ダルトン以上であり、より好ましくは、約1000から約25万ダルトンの範囲である。
【0041】
式(I)及び(II)によって表される繰り返し単位は2つの部類を包含する。1つは、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、もう1つは、ZはVUである。ZがC(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択されるポリアセタールは、ZがVUであるポリアセタールを調製するのに役に立つ。例えば、式(I)の繰り返し単位を含み、ZがVUで、Vが-C(O)NH-であるポリアセタールは、好ましくは、式H2NUによって表される化合物と、式(VII)及び(VIII)で示されるように、ZがC(O)OR1である式(I)の繰り返し単位を含むポリアセタールとを反応させることによって作られる。
【0042】
【化19】
【0043】
式(VII)及び(VIII)において、U,A,B,D及びGは、上記で規定されたのと同様の意味を有し、R3,R4及びR5は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。式H2NUによって表される化合物に関し、Uは、上記で規定されたのと同様の意味を有する。式H2NUによって表される化合物と式(VII)又は(VIII)のポリアセタールとの反応は、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒の中で好ましく行われる。式(VII)及び(VIII)のポリアセタールは、上記で記載したように、式(III),(IV)及び(V)の相当するモノマーを反応させることによって調製されてもよい。「式(VII)のポリアセタール」、「式(VIII)のポリアセタール」、「式(VII)のポリマー」、又は「式(VIII)のポリマー」なる用語は、本質的に式(VII)又は(VIII)の繰り返し単位からなるホモポリマー同様、式(VII)及び/又は(VIII)の繰り返し単位を含むコポリマーも含む。
【0044】
ZがVUである式(I)及び(II)のポリアセタールは、DNA(例えば、プラスミドDNA,アンチセンスDNA及びDNAオリゴマー)及びRNA(例えば、siRNA)のようなポリヌクレオチドと複合体を形成することがわかった。従って、別の態様では、式(I)又は(II)のポリアセタールとポリヌクレオチドを含む複合体を提供する。ここで、式(I)又は(II)のポリアセタールのZはVUであり、Z,V及びUは、上記で規定したのと同様の意味を有する。好ましくは、Vは-C(O)NH-である。そのような複合体は、好ましくは、式(I)又は(II)のポリアセタール(ZはVUである)とポリヌクレオチドを混合することによって形成される。好ましくは、そのような混合は、ポリアセタールを含む溶液を、ポリヌクレオチドを含む第2の溶液に添加することによって行われる。複合体形成は、図1で表されるように、アガロースゲル電気泳動でポリヌクレオチド−ポリアセタールの抑制を調べることによって確認してもよい。
【0045】
式(I)又は(II)(ZはVUである)のポリアセタール及びポリヌクレオチドを含む複合体は、細胞をトランスフェクションするのに役に立つということがわかった。トランスフェクションは、好ましくは細胞とその複合体とを接触させることによって行われる。以下の実施例は、図2及び3で表されるように、人間の胎児の腎臓細胞(293細胞)のトランスフェクション用ポリアセタール−DNAの使用を表している。式(I)及び(II)(ZはVUである)のポリマー及びポリヌクレオチドを含む好ましい複合体は、比較的毒性がないということがわかった。以下の実施例は、3-[4,5ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)法を使用して評価した哺乳動物細胞上のポリアセタール−DNA複合体の細胞毒性を表している(図5参照)。
【0046】
こうして、好ましい態様では、細胞を、式(I)又は(II)(ZはVUである)のポリアセタール及びポリヌクレオチドと接触させることを含む、細胞をトランスフェクションする方法を提供する。好ましくは、Vは-C(O)NH-、また好ましくは、Uはポリ(エチレンイミン)である。好ましいポリアセタールの例には、式(IX)及び式(X)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むものが含まれる。
【0047】
【化20】
【0048】
式(IX)及び(X)において、Zは上記で規定されたのと同様の意味を有し、R6,R7及びR8は、それぞれ独立に、H及び-CH3からなる群より選択され、Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20 及びC12H24からなる群より選択される。Zは好ましくはVUであり、Vは好ましくはC(O)NH-であり、Uは、好ましくはポリ(エチレンイミン),ポリ(リジン),エンハンサー又はターゲッティング受容体である。そのポリ(エチレンイミン)は、好ましくは約200から約10万ダルトンの範囲の分子量を有し、そのポリ(リジン)は、好ましくは約200から約5万ダルトンの範囲の分子量を有する。好ましいエンハンサーの非限定的な例として、脂質、コレステロール、リポ蛋白質、脂肪酸、リソソーム栄養剤、及び膜融合剤からなる群より選択されるものが含まれる。好ましいターゲッティング受容体の非限定的な例として、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース、及びマンノースからなる群より選択されるものが含まれる。
【0049】
式(IX)及び(X)の繰り返し単位を含むポリアセタールは、上記で記載された式(I)及び(II)の繰り返し単位を含むポリアセタールの調製のために上記で記載されたのと同様の方法で調製してもよい。例えば、好ましい態様では、式(XI)及び式(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(XIII)によって表されるコモノマーとを反応させることを含む方法を提供する。ここで、X, Y 及びZは、上記で記載された式(IX)及び(X)の繰り返し単位のためのものと同様の意味を有する。
【0050】
【化21】
【0051】
式(IX)及び(X)の繰り返し単位を含むポリアセタールは、式H2NUの化合物と式(XIV)及び式(XV)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることによって調製されてもよい。ここで、X及びYは、上記で記載された式(IX)及び(X)の繰り返し単位のためのものと同様の意味を有する。
【0052】
【化22】
【0053】
別の好ましい態様では、式(XI)によって表されるモノマーを提供する。そのようなモノマーを調製する好ましい方法は、非アルコール性有機溶媒中の酸の存在下、式(XVI)によって表されるジビニルエーテルと、式(XVII)によって表される化合物の約2等量とを反応させることを含む。
【0054】
【化23】
【0055】
式(XVI)及び(XVII)において、Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択され、Mは、9-フルオレニルメチル・カルバミン酸塩、活性アミド、及び環状イミドからなる群より選択される保護基であり、Rはメチル又は水素であり、nは1又は2である。
【実施例】
【0056】
以下の実施例で使用される細胞系統及び細胞培養を、以下のように調製した。人間の胎児の腎臓細胞(「293細胞」)を、10%(v/v)の熱不活性化された胎児の牛血清、100U/mlのペニシリン、及び100μmg/mlのストレプトマイシンを含むダルベッコ修正されたイーグル培地(DMEM)の中で育成し、7.5%二酸化炭素を含む100%湿度雰囲気で、37℃で培養した。
【0057】
以下の実施例で使用されたGFPプラスミドは以下のように調製した。プラスミドpCMV-GFPをクロンテック(Clontech)(ポールアルト, カリフォルニア)から購入した。緑蛍光蛋白(GFP)cDNAの発現は、人間サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターで管理し、その転写産物を遺伝子発現エンハンサーであるチキンb-グロブリンイントロンで安定させた。ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子を哺乳類発現ベクターの同じバックボーンとともに、pCMV-0の中でクローン化することによって、そのプラスミドベクターpCMV-lucを構築した。そのプラスミドをDH5a E. coliの中で拡大させ、製造元の指示に従ってプラスミド・マキシキット(Plasmid Maxi Kit) (Qiagenから商業的に取得,バレンシア,カリフォルニア)を用いて精製した。精製したプラスミドDNAの量と質を、0.8%アガロースゲル中の電気泳動だけでなく、260nmと280nmで分光光度的分析によって評価した。精製したプラスミドDNAを、殺菌蒸留して脱イオン化した水で再懸濁し、凍結させた。
【0058】
ポリアセタールを調製するための全ての化学薬品及び試薬は、アルドリッチ化学会社(Aldrich Chemical Company)から購入した。セリン・メチルエステル塩酸塩及びセリン・エチルエステル塩酸塩をそれぞれ、文献(Carpino, L.A.; Han, G. Y.; J. Org. Chem. 1972, 37, 3404-3409を参照)で記載された9-フルオレニルメチル・クロロ炭酸塩(Fmoc-Cl)と反応させることによって、開始材料1及び2(図7)を調製した。スレオニン及びホモセリンのそれぞれを、前記文献に記載のFmoc-Clと反応させ、その後、メタノール中のチオニル塩化物、エタノール、及びメタノールの中でそれぞれ撹拌することによって、開始材料3,4及び5を調製した。
【0059】
実施例1−8
保護されたモノマー6-13を図7に示された反応スキームに従って調製した。保護されたモノマー7の合成方法を以下に記す。ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(1.62g,10.3mmol)及び保護されたセリンメチルエステル1(7.00g,20.5mmol)を20分間室温でモレキュラーシーブ(5.00g)の存在下、テトラヒドロフラン(THF)の中で撹拌した。トルエンスルホン酸(TSA,0.20g,1.0mmol)の触媒量を、その混合物の中に添加し、1日撹拌を続けた。その反応混合物を、水(30mL)中の飽和炭酸ナトリウムで急冷した。その有機相をエチルアセテート(2x50mL)で抽出した。その抽出物を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を高真空下に置き、油状物として保護されたモノマー7(8.0g,9.51mmol,97%)を得た。
【0060】
実施例9−16
モノマー14-21を、図8に示される反応スキームに従って、それぞれ保護されたモノマー6-13の脱保護によって調製した。以下に、モノマー16の合成方法を記す。THF中の20%ピペリジンの溶液(5mL)を保護されたモノマー8(1.0g,1.2mmol)の中に添加した。その混合物を2時間撹拌した。その反応混合物をヘキサン(15mL)に添加し、油状沈殿を形成した。その油状残渣がその溶液を別の容器に移すことによって得られ、ジクロロメタン(DCM,5 mL)で再溶解し、5時間撹拌した。水(5mL)をその混合物の中に添加し、その有機相をDCM(2x10mL)で抽出した。その抽出物を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を高真空下に置き、オイルとしてモノマー16(0.30g,0.75mmol,63%)を得た。
【0061】
実施例17−32
ポリアセタール22-37を図9に示される反応スキームに従って、モノマー14-21と様々なジイソシアネート・コモノマーとを共重合させることによって調製した。以下に、ポリアセタール26の調製方法を示す。THF(2mL)(0.049g,0.40mmol)中のOCN-C6H12-NCOの溶液をモノマー16(0.12g,0.29mmol)に添加した。その混合物を15分間撹拌し、その反応混合物を凝固させた。THF(3mL)をその反応混合物の中に添加し、5分間超音波(sonificated)した。その残渣をろ過し、THF及びジエチルエーテルで洗浄した。その残渣を高真空下に置き、白い固体としてポリアセタール26(0.10g,0.19mmol,67%)を得た。
【0062】
実施例33−50
ポリアセタール38-55を図10に示される反応スキームに従って、ポリアセタール22-37とポリ(エチレンイミン) (PEI)とを反応させることによって調製した。以下に、ポリアセタール47の調製方法を記す。DMF(1.7g)中のPEI1800(1.3g)の溶液をポリアセタール26(0.025g)の中に添加し、室温で3日間撹拌した。THF(25mL)を反応混合物の中に添加し、14時間撹拌を続け、油状沈殿を形成した。その溶液を別の容器に移すことによって残渣が得られ、更にTHF及びジエチルエーテルで洗浄した。その残渣を高真空下に置き、オイルとしてポリアセタール47(0.20g)を得た。
【0063】
実施例51
ポリヌクレオチド−ポリマー複合体の抑制:10ml DMEM(血清及び抗生物質なしで)中の様々な量のポリアセタール46-51(ポリアセタールのポリヌクレオチドに対する重量比が32:1,16:1,8:1,4:1)を、うず状にかき混ぜながら10ml DMEM(血清及び抗生物質なしで)中の0.2mg GFPプラスミドに滴下しながら加えた。その結果得られた複合体を電気泳動前に15分間室温に置いた。充填染料の5mlをそれぞれのサンプルに添加し、それぞれのサンプルの15 mlを0.3%アガロースゲルの中の穴ごとに充填した。その複合体をpH7.4で、1mM EDTAを含む0.04Mトリス-酢酸塩緩衝剤を使用して、30分間100Vで電気泳動により分析した。その複合体は、UV照明によって目に見えた。分解性ポリマーにキレート化したポリヌクレオチド(プラスミドDNA)は、アガロースゲル中で抑制され、大きな抑制によって、図1に示されるように、制御C(ポリアセタールなし)と比較して、そのポリマーとポリヌクレオチドとの間に大きな結合を示した。
【0064】
実施例52
ポリアセタール46-51を使用して、インビトロ・トランスフェクションを以下のように行った:耐久性の293人間の胎児の腎臓細胞(接着性共通細胞)及びK562人間の造血性細胞(懸濁分化細胞)を24-ウェル組織培養プレート(2x105細胞/ウェル)の中で平板培養し、10%胎児のウシ血清(FBS)とともにDMEMの中で1晩培養した。それぞれのウェルに対して、30μlのポリアセタール溶液(それぞれ異なる量のポリアセタールを含む、即ち、ポリアセタールのポリヌクレオチドに対する重量比が32:1,16:1,8:1,4:1)を、プラスミドDNA、例えばpCMV-GFPプラスミドDNA又はpCMV-lucの0.6 μgを含む30-μl DNA溶液に、うず状にかき混ぜながら滴下して加えた。うず状にかき混ぜながら滴下する添加は、大変好ましいことがわかった。なぜなら、トランスフェクションの結果は、混合条件に依存することがわかったからである。混合したDNA及びポリアセタール溶液を、室温で15分間培養し、DNA-ポリアセタール複合体を形成した。それから、DNA-ポリアセタール複合体の60 uLを、それぞれのウェルの中に加え、その細胞を24時間(37℃,7.5%二酸化炭素)培養した。その培養後、ショウジョウバエのルシフェラーゼ活性及びGFPシグナルを以下に記載されるように検出した。商業利用可能なトランスフェクション試薬リポフェクタミン2000(L2000)を製造元によって提供される規約に従ってポジティブ制御として使用し、商業利用可能なトランスフェクション試薬ポリエチレンイミン-1800ダルトン(PEI1800)をネガティブ制御として使用した。
【0065】
実施例53
ポリアセタール46-51を使用して作製したDNA-ポリアセタール複合体によるトランスフェクションの結果:ルシフェラーゼ活性を、製造元(ルシフェラーゼ分析システム;プロメガ,マジソン,WI,USA)に従って、化学発光分析を使用して測定した。上記実施例52に記載されたトランスフェクションから約24時間後、その細胞をPBSによって2回リンスし、その後、溶解緩衝剤(1%トリトンX-100, 100mM K3PO4,2 mMジチオトレイトール,10% グリセロール及び2mM EDTA pH7.8)を使用して室温で15分間溶解した。10-μlの細胞溶解物を照度計の中で室温で注射器を使用して50-μlのルシフェラーゼ分析試薬と混合した。光発光を10秒ごとに測定し、RLUs(相対光単位)として表した。相対光単位(RLU)を、BSA蛋白分析(ピアース、ロックフォード、イリノイ)によって決定されたそれぞれのサンプルの蛋白含有量に規準化した。全ての実験は、3回行った。分解性ポリマー及びL2000(ポジティブ制御)を使用したpCMV-luc付き293細胞のトランスフェクションために得られた結果を図2に示す。これらの結果は、ポリマーのトランスフェクション効率が、現在最も商業利用可能な試薬であるリポフェクタミン2000の同レベルであるということを示している。
【0066】
実施例54
蛍光顕微鏡下でのGFP観察:細胞の緑蛍光シグナルを蛍光顕微鏡(オリンパス,フィルター520nm)によって観察した。細胞を、10倍対物レンズを用いて写真に撮った。トランスフェクションされた培地中のGFPシグナルをもつ細胞のパーセントを、最適のカチオンポリマー量のための3つの領域の総数から決定した。分解性ポリアセタール及びPEI-1800(ネガティブ制御)を使用したpCMV-GFP付き293細胞のトランスフェクションの結果を図3に示す。その結果は、ポリマーのトランスフェクション効率が、商業利用可能な試薬であるポリ(エチレンイミン)-1800ダルトンと比較して大変優れていることを示す。
【0067】
実施例55
哺乳類細胞上でのポリアセタール46-51の細胞毒性を、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)方法を使用して評価した。この方法では、96-ウェル・プレートを293細胞(4x104細胞/ウェル)に接種し、その細胞を24時間培養した。実施例52で記載されたように調製したポリアセタール-DNA複合体の様々な量をその細胞に加え、その細胞を48時間、二酸化炭素培養器の中で培養した。MTT溶液(5.0mg/ml)の10μlをそれぞれのウェルに加え、3時間培養した。その媒体を取り除き、200-μl DMSOを加えてそのホルマザン結晶を溶解した。その溶液の吸収を570nmで測定した。細胞生存率を以下の式を使用して計算した:生存率(%)={Abs570 (sample)/Abs570 (control)}x100. 全ての実験は3回行った。図5に示される結果は、そのポリアセタールがリポフェクタミン2000より細胞に対する毒性が低いことを示す。
【0068】
実施例56
アンチセンスオリゴ・インビトロ・デリバリー:ルシフェラーゼ705遺伝子システムは、ノースキャロライナ大学でDr.Koleによって開発された。このシステムでは、705で突然変異を持つ人間b-グロビン遺伝子のイントロンをルシフェラーゼcDNA間の配列中に挿入した。このプラスミドを、安定した遺伝子発現用のHeLa細胞中に導入し、その細胞系はHeLa luc705と名付けられた。通常、その細胞は低いルシフェラーゼ活性を示す。なぜなら、それらは誤ったルシフェラーゼ蛋白を表すからである。しかしながら、その705配列に結合するアンチセンスオリゴは、705配列中の誤ったスプライシング部位をブロックし、生物学的活性を有するルシフェラーゼ蛋白を製造する。こうしてルシフェラーゼ705は、高効率なアンチセンスデリバリーを示す高いルシフェラーゼ活性とともに、アンチセンスオリゴデリバリーの中で機能的なモデルを提供する。
【0069】
18 nt 2-O-メチル-ホスホロチオネート・オリゴヌクレオチドをMidland Companyから商業的に取得した。デリバリーの約24時間前、1×104 HeLa luc705 細胞/ウェルを96-ウェルプレートの中に接種した。そのアンチセンスオリゴを10ml opti MEM(10mmol/L)の中で希釈し、10ml opti MEM(640,320, 160mg/ml)中で希釈されたポリアセタール46-51の異なる量を渦状にかき混ぜながらそのオリゴ溶液の中に滴下して加えた。その混合物を15分間室温で培養し、オリゴ-ポリアセタール複合体を形成した。その後、その複合体を細胞の中に加えた。その細胞を24時間37℃で培養し、ルシフェラーゼ活性を照度計によって決定した。そのバックグラウンド・ルシフェラーゼ活性は、HeLa luc 705中で約1×106 RLU/mgだった。ポリアセタール46-51及びL2000(ポジティブ制御)を使用したアンチセンスオリゴ付きLuc 705細胞のトランスフェクションの結果を図6に示す。これらの結果は、ポリアセタール46-51のトランスフェクション効率が現在最も商業利用可能な試薬であるリポフェクタミン2000より優れていることを示す。
【0070】
様々な省略、追加、及び修正を、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で記載された化合物及び方法に対して行ってもよいことは、当該分野の当業者であれば理解するであろう。すべてのそのような修正及び変更は、添付の請求項によって定義されるような本発明の範囲内に含まれることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】分解性ポリマー及び制御(C)を使用するヌクレオチド抑制アッセイの写真の複写である。そのアッセイは、制御(C)(ポリマーなし)と比較して、ポリマーのポリヌクレオチドに対する様々な割合で(重量比で32:1,16:1,8:1,4:1)、ポリアセタール46-51がポリヌクレオチドと複合体を形成したことを示している。
【図2】分解性ポリマー46-51及び商業利用可能なトランスフェクション試薬L2000(リポフェクタミン2000,ポジティブ制御)を使用した、プラスミドDNAと人間の胎児の腎臓細胞293(293 human kidney embryonic cells)のトランスフェクション用蛋白の1mgに対する相対光単位(RLU)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、そのポリアセタールのトラスフェクションが、最近知られている最も商業利用可能なトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000に匹敵するということを示している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は32:1,水平線は16:1,斜線は8:1,及び網目線は4:1である。
【図3】ポリアセタール46-51及び商業試薬であるポリ(エチレンイミン)-1800(PEI-1800,ネガティブ制御)を使用した、プラスミドDNAと人間の胎児の腎臓細胞293のGFPトランスフェクション・シグナル(%)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、ポリマー46-51がポリ(エチレンイミン)-1800より高いトランスフェクション効率を有していることを示している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は32:1,水平線は16:1,及び斜線は8:1である。
【図4】ポリアセタール46-51、リポフェクタミン2000(L2000,ポジティブ制御)、及びポリ(エチレンイミン)-1800(PEI-1800,ネガティブ制御)を使用した、緑蛍光蛋白(GFP)の写真の複写である。その結果は、ポリアセタールがPEI-1800より高いトランスフェクション効率を有していることを示している。
【図5】細胞毒性アッセイの中でポリアセタール46-51及びリポフェクタミン2000(L2000)用293細胞の細胞生存率(1=100%)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、ポリアセタールがこのアッセイの中で細胞毒性を示さないことを表している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は32:1,水平線は16:1及び斜線は8:1である。
【図6】ポリアセタール46-51、商業利用可能なトランスフェクション試薬L2000 (リポフェクタミン2000, ポジティブ制御)、及びブランク(ネガティブ制御)を使用した、アンチセンスDNAオリゴとLuc705細胞のトランスフェクション用蛋白の1mgに対する相対光単位(RLU)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、ポリアセタールのトランスフェクションが、最近知られている最も商業利用可能なトラスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000より優れているということを示している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は640:1,水平線は32:1及び斜線は16:1である。
【図7】保護されたモノマー6-13の合成のための好ましい反応スキームを示している。
【図8】モノマー14-21の調製のための好ましい反応スキームを表している。
【図9】ポリアセタール22-37の調製のための好ましい反応スキームを表している。
【図10】ポリアセタール38-55の調製のための好ましい反応スキームを表している。
【図11】式(V)のCによって表される様々な反応末端基のための化学構造を表している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アセタール繰り返し単位を含む生分解性ポリマーに関する。特に、本発明は、酸感受性の生分解性ポリアセタール、それらの製造方法、及びそれらをポリヌクレオチド・デリバリー用途に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大きなスケールで製造が可能であり、免疫性が低いといったような好ましい特性を有する非ウィルス性ドラッグデリバリーシステムが要求されている。それは、ある領域の生物学的な特性を提供するために容易に修正可能である。Mulligan,R.C,“遺伝子治療の基礎科学” サイエンス 260, 926-932 (1993);及びLuo,D.&Saltzman, W. M. “合成DNAデリバリーシステム” Nat. Biotechnol. 18, 33-37 (2000)を参照。しかし、ポリ(リジン)及びポリエチレンイミン(PEI)のような非分解性カチオンポリマーは、かなりの細胞毒性を有する。Choksakulnimitr, S., マスダ, S., トクダ, H., タカクラ, Y. & ハシダ, M., “異なる細胞培養株システムにおける高分子のインビトロ細胞毒性(In vitro cytotoxicity of macromolecules in different cell culture systems),” J. Control Release 34, 233-241 (1995); Brazeau, G. A., Attia, S., Poxon, S. & Hughes, J. A., “非ウィルス性遺伝子治療で使用される選択カチオン高分子のインビトロ筋毒性(In Vitro Myotoxicity of Selected cationic macrolecules used in non-viral gene therapy),” Pharm. Res. 15, 680-684 (1998); 及びAhn, C.-H., Chae, S. Y., Bae, Y. H. & Kim, S. W. “プラスミドDNAデリバリー要請分解性ポリ(エチレンイミン)” J. Control. Release 80, 273-282 (2002)を参照。
【0003】
細胞毒性を下げるため、分解性カチオンポリマーを開発する努力がなされている。Ahn, C.-H., Chae, S. Y., Bae, Y. H. & Kim, S. W., “プラスミドDNAデリバリー要請分解性ポリ(エチレンイミン)” J. Control. Release 80, 273-282 (2002); Lynn, D. M. A., D. G.; Putman, D.; Langer, R., “合成トランスフェクション・ベクターの加速された発見:分解性ポリマーライブラリーの平行合成及び選別(Parallel Synthesis and Screening of a Degradable Polymer Library),” J. Am. Chem. Soc. 123 (2001); Lim, Y. et al., “非毒性遺伝子キャリアーとしての生分解性ポリエステル、ポリ[α-(4-アミノブチル)-1-グリコール酸]” Pharmaceutical Research 17, 811-816 (2000); Lim, Y., Kim, S., Suh, H. & Park, J.-S., “高効率かつ非毒性の遺伝子デリバリーキャリアーとしての生分解性でエンドソーム分裂性のカチオンネットワーク型ポリマー” Bioconjugate Chem. 13, 952-957 (2002); Lim, Y. K., S.; Lee, Y.; Lee, W.; Yang, T.; Lee, M.; Suh, H.; Park, J., “カチオン性超分岐型ポリ(アミノエステル):カチオン性表面、生分解性3次元構造、及びその内部に三級アミン基を有するDNA濃縮分子の新規クラス(A Novel Class of DNA Condensing Molecule with Cationic Surface, Biodegradable Three-Dimensional Structure, and Tertiary Amine Groups in the Interior)” J. Am. Chem. Soc. 123, 2460-2461 (2001); 及びTuominen, J. et al., “制御されたコンポスト化条件及び生態毒物学的な影響の評価のもと、乳酸系ポリマーの生分解(Biodegradation of Lactic Acid Based Polymers under Controlled Composting Conditions and Evaluation of the Ecotoxicological Impact)” Biomacromolecules 3, 445-455 (2002)を参照。しかし、生理的な条件のもと、これらのカチオン性ポリマーは、塩基性触媒による加水分解による分解に影響されやすい。
【0004】
アセタール結合を含む酸感受性ポリマーが報告されている。Tomlinson, R. et al., “pH 依存性分解を示すペンダント鎖で機能化されたポリアセタール:新規ポリマー治療の開発用プラットフォ−ム” Macromolecules 35, 473-480 (2002); and Murthy, N., Thng, Y. X., Schuck, S., Xu, M. C. & Frechet, J. M. J., “蛋白のカプセル化及び放出のための新規な戦略(A Novel Strategy for Encapsulation and Release of Proteins):酸に不安定なアセタール・クロスリンカー付きヒドロゲル及びミクロゲル(Hydrogels and Microgels with Acid-Labile Acetal Cross-Linkers)” J. Am. Chem. Soc. 124, 12398-12399 (2002)を参照。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
好ましい態様では、式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーを提供する。
【0006】
【化9】
【0007】
Aは、少なくとも1つのアセタール基を含み、
Bは、-CH-,-CH(CH3)-,-CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、
Vは、リンカー基であり、
Uは、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(リジン)、PAMAMデンドリマー、オクタアミン・デンドリマー、ヘキサデカアミン・デンドリマー、エンハンサー、及びターゲッティング受容体からなる群より選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択されるリンケージであり、
Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール、及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択され、nは、1から約250の範囲である。
【0008】
別の好ましい態様では、式(III)及び(IV)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(V)によって表される式をもつコモノマーとを反応させることを有する、上記ポリマーの製造方法を提供する。
【0009】
【化10】
【0010】
A、B、Z及びGは、上記で規定したのと同様の意味を有し、
Eは、-OH, -NH2及び-NH(CH3)からなる群より選択され、
Cは、イソシアネート、NHS-エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、及びカルボン酸無水物からなる群より選択される。
【0011】
別の好ましい態様では、式H2NUによって表される化合物と、式(VII)及び(VIII)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、上記ポリマーの製造方法を提供する。
【0012】
【化11】
【0013】
U、A、B、D及びGは、上記で規定されるのと同様の意味をもち、
R3,R4,R5は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。
【0014】
別の好ましい態様では、上記のポリマー及びポリヌクレオチドを含む複合体を提供する。別の好ましい態様では、上記のポリマー及びポリヌクレオチドを混合することを含む、そのような複合体の製造方法を提供する。別の好ましい態様では、細胞とそのような複合体とを接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法を提供する。
【0015】
別の好ましい態様では、前記繰り返し単位が、式(IX)及び式(X)からなる群より選択される式によって表される上記のポリマーを提供する。
【0016】
【化12】
【0017】
Zは、上記で規定されたのと同様の意味であり、R6,R7,R8は、それぞれ独立に、H及び-CH3からなる群より選択され、Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択される。
【0018】
別の好ましい態様では、式(XI)及び(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(XIII)によって表されるコモノマーとを反応させることを有する、上記のポリマーの製造方法を提供する。
【0019】
【化13】
【0020】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択される。
【0021】
別の好ましい態様では、ポリ(エチレンイミン)と、式(XIV)及び式(XV)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、上記のポリマーの製造方法を提供する。
【0022】
【化14】
【0023】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択される。
【0024】
別の好ましい態様では、式(XI)及び式(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーを提供する。
【0025】
【化15】
【0026】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択される。
【0027】
別の好ましい態様では、非アルコール性有機溶媒中の酸の存在下、式(XVI)によって表されるジビニルエーテルと、式(XVII)によって表される化合物の約2当量とを反応させることを含む、そのようなモノマーの製造方法を提供する。
【0028】
【化16】
【0029】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Mは、9-フルオレニルメチル カルバミン酸塩、活性アミド、及び環状イミドからなる群より選択される保護基であり、Rは、メチル又は水素であり、nは、1又は2である。
【0030】
これらの及びその他の態様を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
好ましい態様は、ポリアセタール、ポリアセタールの製造方法、ポリアセタールを製造するのに役に立つモノマー、ポリアセタール及びポリヌクレオチドを含む複合体、そのような複合体の製造方法、及びそのような複合体を使用して細胞をトラスフェクトする方法に関する。
【0032】
ポリアセタールは、アセタール(-O-CHR-O-)繰り返し単位を含むポリマーである。好ましくは、Rはメチルである。好ましいポリアセタールは、式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含む。
【0033】
【化17】
【0034】
式(I)及び(II)において、Aは、少なくとも1つのアセタール基を含むリンカーを表す。Bは、-CH-,-CH(CH3)-,CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択される。Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択される。Vはリンカー基である。Uは、ポリ(エチレンイミン),ポリ(プロピレンイミン),ポリ(リジン),PAMAMデンドリマー,オクタアミン・デンドリマー,ヘキサデカアミン・デンドリマー,エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択される。R,R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択される連結基である。Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択される。ここで、nは、1から約250の範囲である。本明細書では、「リンカー基」とは、ある化学基を別の化学基に結合する二官能性化学基である。リンカー基は、アミドのような1つの二官能性化学基を含むことができ、アミド−アミド、アミド−アルキル、アルキル−アミド、アミン−アミド、又はチオエーテル−アミドのような2つの化学基を含んでいてもよい。好ましいリンカー基の例として、-C(O)NH-,-C(O)NH-R9-C(O)NH-,-C(O)NH-R9-,-R9-C(O)NH-,-NH-R9-C(O)NH-,-S-R9-C(O)NHなどが含まれ、R9は、水素、炭素数1から10のアルキル及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。少なくとも1つのアセタール基を含むリンカー基の例として、-OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)O-CH2CH2-OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)O-CH2CH2CH2CH2-OCH(CH3)O-,-OCH(CH3)O-CH2CH2OCH2CH2-OCH(CH3)O-及び-OCH(CH3)O-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-OCH(CH3)O-が含まれる。
【0035】
式(I)及び(II)では、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、Vはリンカー基であり、Uは、ポリ(エチレンイミン) (PEI),ポリ(プロピレンイミン) (PPI),ポリ(リジン),PAMAMデンドリマー,オクタアミン・デンドリマー,ヘキサデカアミン・デンドリマー,エンハンサー,及びターゲッティング受容体からなる群より選択される。PEI及びPPIが使用される場合、約200から約10万ダルトンの分子量を有することが好ましい。ポリ(リジン)が使用される場合、約200から約5万ダルトンの分子量を有することが好ましい。ここで言うポリマーの分子量は、高性能排除クロマトグラフィー(光散乱検出器)によって測定された重量平均分子量である。
【0036】
本明細書では、「エンハンサー」は、真核細胞への遺伝子トランスフェクションの効率を高めることができる機能性基であり、「ターゲッティグ受容体」は、細胞表面上に特定の受容体を認識することができる機能性基である。上記の定義は、相互に排他的ではなく、従って、Uは、エンハンサー及びターゲッティング受容体の両方であってもよい。好ましくは、Uは、脂質、コレステロール、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース、マンノース、リポ蛋白、リソソーム栄養剤及び膜融合剤からなる群より選択される。エンハンサー及びターゲッティング受容体は、様々な手段でポリアセタールに付加されてもよい。例えば、リンカー基Vを介してポリアセタールに共有結合させる、あるいはZにエンハンサー及び/又はターゲッティング受容体を共役させる、あるいはその両方を使用してもよい。こうして、2以上のエンハンサー及び/又はターゲッティング受容体がポリアセタールに付加されてもよい。
【0037】
ポリアセタールはコポリマーであってもよく、式(I)及び/又は(II)によって表される2以上の異なる繰り返し単位、及び/又はその他の繰り返し単位を含んでもよい。「式(I)のポリアセタール」、「式(II)のポリアセタール」、「式(I)のポリマー」、及び「式(II)のポリマー」のような用語は、本質的に式(I)又は(II)の繰り返し単位からなるホモポリマーと同様にコポリマーも含む。
【0038】
様々な方法によってポリアセタールを製造してもよい。好ましい方法は、式(III)及び式(IV)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(V)によって表される式を有するコモノマーとを反応させることを含む。
【0039】
【化18】
【0040】
式(III),(IV)及び(V)では、A,B,Z及びGは、上記で規定したのと同様の意味を有し、Eは好ましくは、-OH,-NH2及び-NH(CH3)からなる群より選択される反応性末端基であり、Cは好ましくは、イソシアネート、NHS-エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物及びカルボン酸無水物からなる群より選択される反応性末端基である。図11は、式(V)におけるCによって表される様々な反応性末端基のための化学構造を表す。その重合反応条件は、反応性末端基EおよびCの特性に依存して、該分野の当業者に一般的に知られる方法で調整される。G. Odian, 重合の原理第3版(1991)を参照。加えて、重合は、互換性のよい反応性末端基を有する1以上の付加的なコモノマーの存在下で行ってもよい。好ましくは、その混合物中にコモノマー(V)に対するモノマー(III)及び/又は(IV)のモル比がおよそ1:1である。しかし、正確な割合は、得られるポリマーの分子量を調整するために、及び/又は追加したコモノマーの存在を補償するために変更してもよい。より高い分子量は、一般にその割合を1:1に近づけると達成される。より低い分子量は、モノマー(III)/(IV) 又はコモノマー(V)のいずれか小過剰を使用することによって、及び/又は単官能反応物の少量を含むことによって達成されてもよい。好ましくは、得られるポリアセタール(例えば、式(I)及び/又は(II)によって表される繰り返し単位を含むポリマー又はコポリマー)の分子量は、約1000ダルトン以上であり、より好ましくは、約1000から約25万ダルトンの範囲である。
【0041】
式(I)及び(II)によって表される繰り返し単位は2つの部類を包含する。1つは、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、もう1つは、ZはVUである。ZがC(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択されるポリアセタールは、ZがVUであるポリアセタールを調製するのに役に立つ。例えば、式(I)の繰り返し単位を含み、ZがVUで、Vが-C(O)NH-であるポリアセタールは、好ましくは、式H2NUによって表される化合物と、式(VII)及び(VIII)で示されるように、ZがC(O)OR1である式(I)の繰り返し単位を含むポリアセタールとを反応させることによって作られる。
【0042】
【化19】
【0043】
式(VII)及び(VIII)において、U,A,B,D及びGは、上記で規定されたのと同様の意味を有し、R3,R4及びR5は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。式H2NUによって表される化合物に関し、Uは、上記で規定されたのと同様の意味を有する。式H2NUによって表される化合物と式(VII)又は(VIII)のポリアセタールとの反応は、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒の中で好ましく行われる。式(VII)及び(VIII)のポリアセタールは、上記で記載したように、式(III),(IV)及び(V)の相当するモノマーを反応させることによって調製されてもよい。「式(VII)のポリアセタール」、「式(VIII)のポリアセタール」、「式(VII)のポリマー」、又は「式(VIII)のポリマー」なる用語は、本質的に式(VII)又は(VIII)の繰り返し単位からなるホモポリマー同様、式(VII)及び/又は(VIII)の繰り返し単位を含むコポリマーも含む。
【0044】
ZがVUである式(I)及び(II)のポリアセタールは、DNA(例えば、プラスミドDNA,アンチセンスDNA及びDNAオリゴマー)及びRNA(例えば、siRNA)のようなポリヌクレオチドと複合体を形成することがわかった。従って、別の態様では、式(I)又は(II)のポリアセタールとポリヌクレオチドを含む複合体を提供する。ここで、式(I)又は(II)のポリアセタールのZはVUであり、Z,V及びUは、上記で規定したのと同様の意味を有する。好ましくは、Vは-C(O)NH-である。そのような複合体は、好ましくは、式(I)又は(II)のポリアセタール(ZはVUである)とポリヌクレオチドを混合することによって形成される。好ましくは、そのような混合は、ポリアセタールを含む溶液を、ポリヌクレオチドを含む第2の溶液に添加することによって行われる。複合体形成は、図1で表されるように、アガロースゲル電気泳動でポリヌクレオチド−ポリアセタールの抑制を調べることによって確認してもよい。
【0045】
式(I)又は(II)(ZはVUである)のポリアセタール及びポリヌクレオチドを含む複合体は、細胞をトランスフェクションするのに役に立つということがわかった。トランスフェクションは、好ましくは細胞とその複合体とを接触させることによって行われる。以下の実施例は、図2及び3で表されるように、人間の胎児の腎臓細胞(293細胞)のトランスフェクション用ポリアセタール−DNAの使用を表している。式(I)及び(II)(ZはVUである)のポリマー及びポリヌクレオチドを含む好ましい複合体は、比較的毒性がないということがわかった。以下の実施例は、3-[4,5ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)法を使用して評価した哺乳動物細胞上のポリアセタール−DNA複合体の細胞毒性を表している(図5参照)。
【0046】
こうして、好ましい態様では、細胞を、式(I)又は(II)(ZはVUである)のポリアセタール及びポリヌクレオチドと接触させることを含む、細胞をトランスフェクションする方法を提供する。好ましくは、Vは-C(O)NH-、また好ましくは、Uはポリ(エチレンイミン)である。好ましいポリアセタールの例には、式(IX)及び式(X)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むものが含まれる。
【0047】
【化20】
【0048】
式(IX)及び(X)において、Zは上記で規定されたのと同様の意味を有し、R6,R7及びR8は、それぞれ独立に、H及び-CH3からなる群より選択され、Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20 及びC12H24からなる群より選択される。Zは好ましくはVUであり、Vは好ましくはC(O)NH-であり、Uは、好ましくはポリ(エチレンイミン),ポリ(リジン),エンハンサー又はターゲッティング受容体である。そのポリ(エチレンイミン)は、好ましくは約200から約10万ダルトンの範囲の分子量を有し、そのポリ(リジン)は、好ましくは約200から約5万ダルトンの範囲の分子量を有する。好ましいエンハンサーの非限定的な例として、脂質、コレステロール、リポ蛋白質、脂肪酸、リソソーム栄養剤、及び膜融合剤からなる群より選択されるものが含まれる。好ましいターゲッティング受容体の非限定的な例として、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース、及びマンノースからなる群より選択されるものが含まれる。
【0049】
式(IX)及び(X)の繰り返し単位を含むポリアセタールは、上記で記載された式(I)及び(II)の繰り返し単位を含むポリアセタールの調製のために上記で記載されたのと同様の方法で調製してもよい。例えば、好ましい態様では、式(XI)及び式(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(XIII)によって表されるコモノマーとを反応させることを含む方法を提供する。ここで、X, Y 及びZは、上記で記載された式(IX)及び(X)の繰り返し単位のためのものと同様の意味を有する。
【0050】
【化21】
【0051】
式(IX)及び(X)の繰り返し単位を含むポリアセタールは、式H2NUの化合物と式(XIV)及び式(XV)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることによって調製されてもよい。ここで、X及びYは、上記で記載された式(IX)及び(X)の繰り返し単位のためのものと同様の意味を有する。
【0052】
【化22】
【0053】
別の好ましい態様では、式(XI)によって表されるモノマーを提供する。そのようなモノマーを調製する好ましい方法は、非アルコール性有機溶媒中の酸の存在下、式(XVI)によって表されるジビニルエーテルと、式(XVII)によって表される化合物の約2等量とを反応させることを含む。
【0054】
【化23】
【0055】
式(XVI)及び(XVII)において、Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択され、Mは、9-フルオレニルメチル・カルバミン酸塩、活性アミド、及び環状イミドからなる群より選択される保護基であり、Rはメチル又は水素であり、nは1又は2である。
【実施例】
【0056】
以下の実施例で使用される細胞系統及び細胞培養を、以下のように調製した。人間の胎児の腎臓細胞(「293細胞」)を、10%(v/v)の熱不活性化された胎児の牛血清、100U/mlのペニシリン、及び100μmg/mlのストレプトマイシンを含むダルベッコ修正されたイーグル培地(DMEM)の中で育成し、7.5%二酸化炭素を含む100%湿度雰囲気で、37℃で培養した。
【0057】
以下の実施例で使用されたGFPプラスミドは以下のように調製した。プラスミドpCMV-GFPをクロンテック(Clontech)(ポールアルト, カリフォルニア)から購入した。緑蛍光蛋白(GFP)cDNAの発現は、人間サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターで管理し、その転写産物を遺伝子発現エンハンサーであるチキンb-グロブリンイントロンで安定させた。ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子を哺乳類発現ベクターの同じバックボーンとともに、pCMV-0の中でクローン化することによって、そのプラスミドベクターpCMV-lucを構築した。そのプラスミドをDH5a E. coliの中で拡大させ、製造元の指示に従ってプラスミド・マキシキット(Plasmid Maxi Kit) (Qiagenから商業的に取得,バレンシア,カリフォルニア)を用いて精製した。精製したプラスミドDNAの量と質を、0.8%アガロースゲル中の電気泳動だけでなく、260nmと280nmで分光光度的分析によって評価した。精製したプラスミドDNAを、殺菌蒸留して脱イオン化した水で再懸濁し、凍結させた。
【0058】
ポリアセタールを調製するための全ての化学薬品及び試薬は、アルドリッチ化学会社(Aldrich Chemical Company)から購入した。セリン・メチルエステル塩酸塩及びセリン・エチルエステル塩酸塩をそれぞれ、文献(Carpino, L.A.; Han, G. Y.; J. Org. Chem. 1972, 37, 3404-3409を参照)で記載された9-フルオレニルメチル・クロロ炭酸塩(Fmoc-Cl)と反応させることによって、開始材料1及び2(図7)を調製した。スレオニン及びホモセリンのそれぞれを、前記文献に記載のFmoc-Clと反応させ、その後、メタノール中のチオニル塩化物、エタノール、及びメタノールの中でそれぞれ撹拌することによって、開始材料3,4及び5を調製した。
【0059】
実施例1−8
保護されたモノマー6-13を図7に示された反応スキームに従って調製した。保護されたモノマー7の合成方法を以下に記す。ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(1.62g,10.3mmol)及び保護されたセリンメチルエステル1(7.00g,20.5mmol)を20分間室温でモレキュラーシーブ(5.00g)の存在下、テトラヒドロフラン(THF)の中で撹拌した。トルエンスルホン酸(TSA,0.20g,1.0mmol)の触媒量を、その混合物の中に添加し、1日撹拌を続けた。その反応混合物を、水(30mL)中の飽和炭酸ナトリウムで急冷した。その有機相をエチルアセテート(2x50mL)で抽出した。その抽出物を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を高真空下に置き、油状物として保護されたモノマー7(8.0g,9.51mmol,97%)を得た。
【0060】
実施例9−16
モノマー14-21を、図8に示される反応スキームに従って、それぞれ保護されたモノマー6-13の脱保護によって調製した。以下に、モノマー16の合成方法を記す。THF中の20%ピペリジンの溶液(5mL)を保護されたモノマー8(1.0g,1.2mmol)の中に添加した。その混合物を2時間撹拌した。その反応混合物をヘキサン(15mL)に添加し、油状沈殿を形成した。その油状残渣がその溶液を別の容器に移すことによって得られ、ジクロロメタン(DCM,5 mL)で再溶解し、5時間撹拌した。水(5mL)をその混合物の中に添加し、その有機相をDCM(2x10mL)で抽出した。その抽出物を集め、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を高真空下に置き、オイルとしてモノマー16(0.30g,0.75mmol,63%)を得た。
【0061】
実施例17−32
ポリアセタール22-37を図9に示される反応スキームに従って、モノマー14-21と様々なジイソシアネート・コモノマーとを共重合させることによって調製した。以下に、ポリアセタール26の調製方法を示す。THF(2mL)(0.049g,0.40mmol)中のOCN-C6H12-NCOの溶液をモノマー16(0.12g,0.29mmol)に添加した。その混合物を15分間撹拌し、その反応混合物を凝固させた。THF(3mL)をその反応混合物の中に添加し、5分間超音波(sonificated)した。その残渣をろ過し、THF及びジエチルエーテルで洗浄した。その残渣を高真空下に置き、白い固体としてポリアセタール26(0.10g,0.19mmol,67%)を得た。
【0062】
実施例33−50
ポリアセタール38-55を図10に示される反応スキームに従って、ポリアセタール22-37とポリ(エチレンイミン) (PEI)とを反応させることによって調製した。以下に、ポリアセタール47の調製方法を記す。DMF(1.7g)中のPEI1800(1.3g)の溶液をポリアセタール26(0.025g)の中に添加し、室温で3日間撹拌した。THF(25mL)を反応混合物の中に添加し、14時間撹拌を続け、油状沈殿を形成した。その溶液を別の容器に移すことによって残渣が得られ、更にTHF及びジエチルエーテルで洗浄した。その残渣を高真空下に置き、オイルとしてポリアセタール47(0.20g)を得た。
【0063】
実施例51
ポリヌクレオチド−ポリマー複合体の抑制:10ml DMEM(血清及び抗生物質なしで)中の様々な量のポリアセタール46-51(ポリアセタールのポリヌクレオチドに対する重量比が32:1,16:1,8:1,4:1)を、うず状にかき混ぜながら10ml DMEM(血清及び抗生物質なしで)中の0.2mg GFPプラスミドに滴下しながら加えた。その結果得られた複合体を電気泳動前に15分間室温に置いた。充填染料の5mlをそれぞれのサンプルに添加し、それぞれのサンプルの15 mlを0.3%アガロースゲルの中の穴ごとに充填した。その複合体をpH7.4で、1mM EDTAを含む0.04Mトリス-酢酸塩緩衝剤を使用して、30分間100Vで電気泳動により分析した。その複合体は、UV照明によって目に見えた。分解性ポリマーにキレート化したポリヌクレオチド(プラスミドDNA)は、アガロースゲル中で抑制され、大きな抑制によって、図1に示されるように、制御C(ポリアセタールなし)と比較して、そのポリマーとポリヌクレオチドとの間に大きな結合を示した。
【0064】
実施例52
ポリアセタール46-51を使用して、インビトロ・トランスフェクションを以下のように行った:耐久性の293人間の胎児の腎臓細胞(接着性共通細胞)及びK562人間の造血性細胞(懸濁分化細胞)を24-ウェル組織培養プレート(2x105細胞/ウェル)の中で平板培養し、10%胎児のウシ血清(FBS)とともにDMEMの中で1晩培養した。それぞれのウェルに対して、30μlのポリアセタール溶液(それぞれ異なる量のポリアセタールを含む、即ち、ポリアセタールのポリヌクレオチドに対する重量比が32:1,16:1,8:1,4:1)を、プラスミドDNA、例えばpCMV-GFPプラスミドDNA又はpCMV-lucの0.6 μgを含む30-μl DNA溶液に、うず状にかき混ぜながら滴下して加えた。うず状にかき混ぜながら滴下する添加は、大変好ましいことがわかった。なぜなら、トランスフェクションの結果は、混合条件に依存することがわかったからである。混合したDNA及びポリアセタール溶液を、室温で15分間培養し、DNA-ポリアセタール複合体を形成した。それから、DNA-ポリアセタール複合体の60 uLを、それぞれのウェルの中に加え、その細胞を24時間(37℃,7.5%二酸化炭素)培養した。その培養後、ショウジョウバエのルシフェラーゼ活性及びGFPシグナルを以下に記載されるように検出した。商業利用可能なトランスフェクション試薬リポフェクタミン2000(L2000)を製造元によって提供される規約に従ってポジティブ制御として使用し、商業利用可能なトランスフェクション試薬ポリエチレンイミン-1800ダルトン(PEI1800)をネガティブ制御として使用した。
【0065】
実施例53
ポリアセタール46-51を使用して作製したDNA-ポリアセタール複合体によるトランスフェクションの結果:ルシフェラーゼ活性を、製造元(ルシフェラーゼ分析システム;プロメガ,マジソン,WI,USA)に従って、化学発光分析を使用して測定した。上記実施例52に記載されたトランスフェクションから約24時間後、その細胞をPBSによって2回リンスし、その後、溶解緩衝剤(1%トリトンX-100, 100mM K3PO4,2 mMジチオトレイトール,10% グリセロール及び2mM EDTA pH7.8)を使用して室温で15分間溶解した。10-μlの細胞溶解物を照度計の中で室温で注射器を使用して50-μlのルシフェラーゼ分析試薬と混合した。光発光を10秒ごとに測定し、RLUs(相対光単位)として表した。相対光単位(RLU)を、BSA蛋白分析(ピアース、ロックフォード、イリノイ)によって決定されたそれぞれのサンプルの蛋白含有量に規準化した。全ての実験は、3回行った。分解性ポリマー及びL2000(ポジティブ制御)を使用したpCMV-luc付き293細胞のトランスフェクションために得られた結果を図2に示す。これらの結果は、ポリマーのトランスフェクション効率が、現在最も商業利用可能な試薬であるリポフェクタミン2000の同レベルであるということを示している。
【0066】
実施例54
蛍光顕微鏡下でのGFP観察:細胞の緑蛍光シグナルを蛍光顕微鏡(オリンパス,フィルター520nm)によって観察した。細胞を、10倍対物レンズを用いて写真に撮った。トランスフェクションされた培地中のGFPシグナルをもつ細胞のパーセントを、最適のカチオンポリマー量のための3つの領域の総数から決定した。分解性ポリアセタール及びPEI-1800(ネガティブ制御)を使用したpCMV-GFP付き293細胞のトランスフェクションの結果を図3に示す。その結果は、ポリマーのトランスフェクション効率が、商業利用可能な試薬であるポリ(エチレンイミン)-1800ダルトンと比較して大変優れていることを示す。
【0067】
実施例55
哺乳類細胞上でのポリアセタール46-51の細胞毒性を、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)方法を使用して評価した。この方法では、96-ウェル・プレートを293細胞(4x104細胞/ウェル)に接種し、その細胞を24時間培養した。実施例52で記載されたように調製したポリアセタール-DNA複合体の様々な量をその細胞に加え、その細胞を48時間、二酸化炭素培養器の中で培養した。MTT溶液(5.0mg/ml)の10μlをそれぞれのウェルに加え、3時間培養した。その媒体を取り除き、200-μl DMSOを加えてそのホルマザン結晶を溶解した。その溶液の吸収を570nmで測定した。細胞生存率を以下の式を使用して計算した:生存率(%)={Abs570 (sample)/Abs570 (control)}x100. 全ての実験は3回行った。図5に示される結果は、そのポリアセタールがリポフェクタミン2000より細胞に対する毒性が低いことを示す。
【0068】
実施例56
アンチセンスオリゴ・インビトロ・デリバリー:ルシフェラーゼ705遺伝子システムは、ノースキャロライナ大学でDr.Koleによって開発された。このシステムでは、705で突然変異を持つ人間b-グロビン遺伝子のイントロンをルシフェラーゼcDNA間の配列中に挿入した。このプラスミドを、安定した遺伝子発現用のHeLa細胞中に導入し、その細胞系はHeLa luc705と名付けられた。通常、その細胞は低いルシフェラーゼ活性を示す。なぜなら、それらは誤ったルシフェラーゼ蛋白を表すからである。しかしながら、その705配列に結合するアンチセンスオリゴは、705配列中の誤ったスプライシング部位をブロックし、生物学的活性を有するルシフェラーゼ蛋白を製造する。こうしてルシフェラーゼ705は、高効率なアンチセンスデリバリーを示す高いルシフェラーゼ活性とともに、アンチセンスオリゴデリバリーの中で機能的なモデルを提供する。
【0069】
18 nt 2-O-メチル-ホスホロチオネート・オリゴヌクレオチドをMidland Companyから商業的に取得した。デリバリーの約24時間前、1×104 HeLa luc705 細胞/ウェルを96-ウェルプレートの中に接種した。そのアンチセンスオリゴを10ml opti MEM(10mmol/L)の中で希釈し、10ml opti MEM(640,320, 160mg/ml)中で希釈されたポリアセタール46-51の異なる量を渦状にかき混ぜながらそのオリゴ溶液の中に滴下して加えた。その混合物を15分間室温で培養し、オリゴ-ポリアセタール複合体を形成した。その後、その複合体を細胞の中に加えた。その細胞を24時間37℃で培養し、ルシフェラーゼ活性を照度計によって決定した。そのバックグラウンド・ルシフェラーゼ活性は、HeLa luc 705中で約1×106 RLU/mgだった。ポリアセタール46-51及びL2000(ポジティブ制御)を使用したアンチセンスオリゴ付きLuc 705細胞のトランスフェクションの結果を図6に示す。これらの結果は、ポリアセタール46-51のトランスフェクション効率が現在最も商業利用可能な試薬であるリポフェクタミン2000より優れていることを示す。
【0070】
様々な省略、追加、及び修正を、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で記載された化合物及び方法に対して行ってもよいことは、当該分野の当業者であれば理解するであろう。すべてのそのような修正及び変更は、添付の請求項によって定義されるような本発明の範囲内に含まれることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】分解性ポリマー及び制御(C)を使用するヌクレオチド抑制アッセイの写真の複写である。そのアッセイは、制御(C)(ポリマーなし)と比較して、ポリマーのポリヌクレオチドに対する様々な割合で(重量比で32:1,16:1,8:1,4:1)、ポリアセタール46-51がポリヌクレオチドと複合体を形成したことを示している。
【図2】分解性ポリマー46-51及び商業利用可能なトランスフェクション試薬L2000(リポフェクタミン2000,ポジティブ制御)を使用した、プラスミドDNAと人間の胎児の腎臓細胞293(293 human kidney embryonic cells)のトランスフェクション用蛋白の1mgに対する相対光単位(RLU)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、そのポリアセタールのトラスフェクションが、最近知られている最も商業利用可能なトランスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000に匹敵するということを示している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は32:1,水平線は16:1,斜線は8:1,及び網目線は4:1である。
【図3】ポリアセタール46-51及び商業試薬であるポリ(エチレンイミン)-1800(PEI-1800,ネガティブ制御)を使用した、プラスミドDNAと人間の胎児の腎臓細胞293のGFPトランスフェクション・シグナル(%)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、ポリマー46-51がポリ(エチレンイミン)-1800より高いトランスフェクション効率を有していることを示している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は32:1,水平線は16:1,及び斜線は8:1である。
【図4】ポリアセタール46-51、リポフェクタミン2000(L2000,ポジティブ制御)、及びポリ(エチレンイミン)-1800(PEI-1800,ネガティブ制御)を使用した、緑蛍光蛋白(GFP)の写真の複写である。その結果は、ポリアセタールがPEI-1800より高いトランスフェクション効率を有していることを示している。
【図5】細胞毒性アッセイの中でポリアセタール46-51及びリポフェクタミン2000(L2000)用293細胞の細胞生存率(1=100%)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、ポリアセタールがこのアッセイの中で細胞毒性を示さないことを表している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は32:1,水平線は16:1及び斜線は8:1である。
【図6】ポリアセタール46-51、商業利用可能なトランスフェクション試薬L2000 (リポフェクタミン2000, ポジティブ制御)、及びブランク(ネガティブ制御)を使用した、アンチセンスDNAオリゴとLuc705細胞のトランスフェクション用蛋白の1mgに対する相対光単位(RLU)をプロットする棒グラフを示している。その結果は、ポリアセタールのトランスフェクションが、最近知られている最も商業利用可能なトラスフェクション試薬であるリポフェクタミン2000より優れているということを示している。ラベル表示:垂直線のポリマー対DNAの割合(重量比)は640:1,水平線は32:1及び斜線は16:1である。
【図7】保護されたモノマー6-13の合成のための好ましい反応スキームを示している。
【図8】モノマー14-21の調製のための好ましい反応スキームを表している。
【図9】ポリアセタール22-37の調製のための好ましい反応スキームを表している。
【図10】ポリアセタール38-55の調製のための好ましい反応スキームを表している。
【図11】式(V)のCによって表される様々な反応末端基のための化学構造を表している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマー。
【化1】
Aは、少なくとも1つのアセタール基を含み、
Bは、-CH-,-CH(CH3)-,-CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、
Vは、リンカー基であり、
Uは、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(リジン)、PAMAMデンドリマー、オクタアミン・デンドリマー、ヘキサデカアミン・デンドリマー、エンハンサー、及びターゲッティング受容体からなる群より選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択されるリンケージであり、
Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択され、nは1から約250の範囲である。
【請求項2】
Uが、ポリ(エチレンイミン)である請求項1のポリマー。
【請求項3】
前記ポリ(エチレンイミン)が、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項2のポリマー。
【請求項4】
Uが、ポリ(リジン)である請求項1のポリマー。
【請求項5】
前記ポリ(リジン)が、約200から約5万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項4のポリマー。
【請求項6】
Zが、VUである請求項1のポリマー。
【請求項7】
Vが、-C(O)NH-である請求項2のポリマー。
【請求項8】
Uが、ポリ(エチレンイミン)、エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択される請求項1のポリマー。
【請求項9】
Uが、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつポリ(エチレンイミン)である請求項8のポリマー。
【請求項10】
Uが、脂質、コレステロール、リポ蛋白質、脂肪酸、リソソーム栄養剤及び膜融合剤からなる群より選択されるエンハンサーである請求項8のポリマー。
【請求項11】
Uが、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース及びマンノースからなる群より選択されるターゲッティング受容体である請求項8のポリマー。
【請求項12】
式(III)及び(IV)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(V)によって表される式をもつコモノマーとを反応させることを有する、請求項1のポリマーの製造方法。
【化2】
A、B、Z及びGは、請求項1で規定したのと同様の意味を有し、
Eは、-OH,-NH2及び-NH(CH3)からなる群より選択され、
Cは、イソシアネート、NHS-エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物及びカルボン酸無水物からなる群より選択される。
【請求項13】
式H2NUによって表される化合物と、式(VII)及び(VIII)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、請求項7のポリマーの製造方法。
【化3】
U、A、B、D及びGは、請求項1で規定されるのと同様の意味をもち、
R3,R4,R5は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。
【請求項14】
請求項6のポリマー及びポリヌクレオチドを含む複合体。
【請求項15】
請求項6のポリマーとポリヌクレオチドとを混合することを含む、請求項14の複合体の製造方法。
【請求項16】
前記混合を、請求項6のポリマーを含有する溶液を、ポリヌクレオチドを含有する第2の溶液に加えることによって行う請求項15の方法。
【請求項17】
請求項6のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項16の方法。
【請求項18】
細胞と請求項14の複合体とを接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法。
【請求項19】
請求項6のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項18の方法。
【請求項20】
請求項6のポリマーにおけるUが、ポリ(エチレンイミン)である請求項19の方法。
【請求項21】
前記繰り返し単位が、式(IX)及び式(X)からなる群より選択される式によって表される請求項1のポリマー。
【化4】
Zは、請求項1で規定されたのと同様の意味であり、
R6,R7,R8は、それぞれ独立に、H及び-CH3からなる群より選択され、
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択される。
【請求項22】
Uが、ポリ(エチレンイミン)である請求項21のポリマー。
【請求項23】
前記ポリ(エチレンイミン)が、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項22のポリマー。
【請求項24】
Uが、ポリ(リジン)である請求項21のポリマー。
【請求項25】
前記ポリ(リジン)が、約200から約5万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項24のポリマー。
【請求項26】
Zが、VUである請求項21のポリマー。
【請求項27】
Vが、-C(O)NH-である請求項26のポリマー。
【請求項28】
Uが、ポリ(エチレンイミン)、エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択される請求項21のポリマー。
【請求項29】
Uが、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつポリ(エチレンイミン)である請求項28のポリマー。
【請求項30】
Uが、脂質、コレステロール、リポ蛋白質、脂肪酸、リソソーム栄養剤及び膜融合剤からなる群より選択されるエンハンサーである請求項28のポリマー。
【請求項31】
Uが、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース及びマンノースからなる群より選択されるターゲッティング受容体である請求項28のポリマー。
【請求項32】
式(XI)及び(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(XIII)によって表されるコモノマーとを反応させることを有する、請求項21のポリマーの製造方法。
【化5】
X、Y及びZは、請求項21で規定されたのと同様の意味をもつ。
【請求項33】
ポリ(エチレンイミン)と、式(XIV)及び式(XV)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、請求項27のポリマーの製造方法。
【化6】
X及びYは、請求項27で規定されたのと同様の意味をもつ。
【請求項34】
請求項26のポリマー及びポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドが、プラスミドDNA、アンチセンスDNA、DNAオリゴマー、及びsiRNAからなる群より選択される複合体。
【請求項35】
請求項26のポリマー及びポリヌクレオチドを混合することを含む、請求項34の複合体の製造方法。
【請求項36】
前記混合を、請求項26のポリマーを含有する溶液を、ポリヌクレオチドを含有する第2の溶液に添加することによって行う請求項35の方法。
【請求項37】
請求項26のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項36の方法。
【請求項38】
細胞と請求項34の複合体とを接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法。
【請求項39】
請求項26のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項38の方法。
【請求項40】
請求項26のポリマーにおけるZが、ポリ(エチレンイミン)である請求項39の方法。
【請求項41】
式(XI)及び式(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマー。
【化7】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択される。
【請求項42】
非アルコール性有機溶媒中の酸の存在下、式(XVI)によって表されるジビニルエーテルと、式(XVII)によって表される化合物の約2当量とを反応させることを含む、請求項41のモノマーの製造方法。
【化8】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Mは、9-フルオレニルメチル カルバミン酸塩、活性アミド、及び環状イミドからなる群より選択される保護基であり、
Rは、メチル又は水素であり、nは、1又は2である。
【請求項1】
式(I)及び(II)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマー。
【化1】
Aは、少なくとも1つのアセタール基を含み、
Bは、-CH-,-CH(CH3)-,-CH2CH-,-CH2C(CH3)-,-CH(CH3)CH-及び-CHCH(CH3)CH(CH3)-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1,C(O)NR1R2及びVUからなる群より選択され、
Vは、リンカー基であり、
Uは、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)、ポリ(リジン)、PAMAMデンドリマー、オクタアミン・デンドリマー、ヘキサデカアミン・デンドリマー、エンハンサー、及びターゲッティング受容体からなる群より選択され、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Dは、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、尿素、及びウレタンからなる群より選択されるリンケージであり、
Gは、炭素数4から20のアルキル、炭素数6から10のアリール及び-(OCH2CH2)n-からなる群より選択され、nは1から約250の範囲である。
【請求項2】
Uが、ポリ(エチレンイミン)である請求項1のポリマー。
【請求項3】
前記ポリ(エチレンイミン)が、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項2のポリマー。
【請求項4】
Uが、ポリ(リジン)である請求項1のポリマー。
【請求項5】
前記ポリ(リジン)が、約200から約5万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項4のポリマー。
【請求項6】
Zが、VUである請求項1のポリマー。
【請求項7】
Vが、-C(O)NH-である請求項2のポリマー。
【請求項8】
Uが、ポリ(エチレンイミン)、エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択される請求項1のポリマー。
【請求項9】
Uが、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつポリ(エチレンイミン)である請求項8のポリマー。
【請求項10】
Uが、脂質、コレステロール、リポ蛋白質、脂肪酸、リソソーム栄養剤及び膜融合剤からなる群より選択されるエンハンサーである請求項8のポリマー。
【請求項11】
Uが、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース及びマンノースからなる群より選択されるターゲッティング受容体である請求項8のポリマー。
【請求項12】
式(III)及び(IV)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(V)によって表される式をもつコモノマーとを反応させることを有する、請求項1のポリマーの製造方法。
【化2】
A、B、Z及びGは、請求項1で規定したのと同様の意味を有し、
Eは、-OH,-NH2及び-NH(CH3)からなる群より選択され、
Cは、イソシアネート、NHS-エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物及びカルボン酸無水物からなる群より選択される。
【請求項13】
式H2NUによって表される化合物と、式(VII)及び(VIII)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、請求項7のポリマーの製造方法。
【化3】
U、A、B、D及びGは、請求項1で規定されるのと同様の意味をもち、
R3,R4,R5は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から10のアルキル、及び炭素数6から10のアリールからなる群より選択される。
【請求項14】
請求項6のポリマー及びポリヌクレオチドを含む複合体。
【請求項15】
請求項6のポリマーとポリヌクレオチドとを混合することを含む、請求項14の複合体の製造方法。
【請求項16】
前記混合を、請求項6のポリマーを含有する溶液を、ポリヌクレオチドを含有する第2の溶液に加えることによって行う請求項15の方法。
【請求項17】
請求項6のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項16の方法。
【請求項18】
細胞と請求項14の複合体とを接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法。
【請求項19】
請求項6のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項18の方法。
【請求項20】
請求項6のポリマーにおけるUが、ポリ(エチレンイミン)である請求項19の方法。
【請求項21】
前記繰り返し単位が、式(IX)及び式(X)からなる群より選択される式によって表される請求項1のポリマー。
【化4】
Zは、請求項1で規定されたのと同様の意味であり、
R6,R7,R8は、それぞれ独立に、H及び-CH3からなる群より選択され、
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Yは、直鎖状又は分岐状のC4H8,C5H10,C6H12,C7H14,C8H16,C10H20及びC12H24からなる群より選択される。
【請求項22】
Uが、ポリ(エチレンイミン)である請求項21のポリマー。
【請求項23】
前記ポリ(エチレンイミン)が、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項22のポリマー。
【請求項24】
Uが、ポリ(リジン)である請求項21のポリマー。
【請求項25】
前記ポリ(リジン)が、約200から約5万ダルトンの範囲の分子量をもつ請求項24のポリマー。
【請求項26】
Zが、VUである請求項21のポリマー。
【請求項27】
Vが、-C(O)NH-である請求項26のポリマー。
【請求項28】
Uが、ポリ(エチレンイミン)、エンハンサー及びターゲッティング受容体からなる群より選択される請求項21のポリマー。
【請求項29】
Uが、約200から約10万ダルトンの範囲の分子量をもつポリ(エチレンイミン)である請求項28のポリマー。
【請求項30】
Uが、脂質、コレステロール、リポ蛋白質、脂肪酸、リソソーム栄養剤及び膜融合剤からなる群より選択されるエンハンサーである請求項28のポリマー。
【請求項31】
Uが、トランスフェリン、抗体、抗体フラグメント、ガラクトース及びマンノースからなる群より選択されるターゲッティング受容体である請求項28のポリマー。
【請求項32】
式(XI)及び(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマーと、式(XIII)によって表されるコモノマーとを反応させることを有する、請求項21のポリマーの製造方法。
【化5】
X、Y及びZは、請求項21で規定されたのと同様の意味をもつ。
【請求項33】
ポリ(エチレンイミン)と、式(XIV)及び式(XV)からなる群より選択される式によって表される繰り返し単位を含むポリマーとを反応させることを含む、請求項27のポリマーの製造方法。
【化6】
X及びYは、請求項27で規定されたのと同様の意味をもつ。
【請求項34】
請求項26のポリマー及びポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドが、プラスミドDNA、アンチセンスDNA、DNAオリゴマー、及びsiRNAからなる群より選択される複合体。
【請求項35】
請求項26のポリマー及びポリヌクレオチドを混合することを含む、請求項34の複合体の製造方法。
【請求項36】
前記混合を、請求項26のポリマーを含有する溶液を、ポリヌクレオチドを含有する第2の溶液に添加することによって行う請求項35の方法。
【請求項37】
請求項26のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項36の方法。
【請求項38】
細胞と請求項34の複合体とを接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法。
【請求項39】
請求項26のポリマーにおけるVが、-C(O)NH-である請求項38の方法。
【請求項40】
請求項26のポリマーにおけるZが、ポリ(エチレンイミン)である請求項39の方法。
【請求項41】
式(XI)及び式(XII)からなる群より選択される式によって表されるモノマー。
【化7】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択される。
【請求項42】
非アルコール性有機溶媒中の酸の存在下、式(XVI)によって表されるジビニルエーテルと、式(XVII)によって表される化合物の約2当量とを反応させることを含む、請求項41のモノマーの製造方法。
【化8】
Xは、-CH2CH2-,-CH2CH2CH2CH2-,-CH2CH2OCH2CH2-及び-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-からなる群より選択され、
Zは、C(O)OR1,C(O)SR1及びC(O)NR1R2からなる群より選択され、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1から20のアルキル、及び炭素数6から10のアリールから選択され、
Mは、9-フルオレニルメチル カルバミン酸塩、活性アミド、及び環状イミドからなる群より選択される保護基であり、
Rは、メチル又は水素であり、nは、1又は2である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−504298(P2007−504298A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524662(P2006−524662)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024284
【国際公開番号】WO2005/023899
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024284
【国際公開番号】WO2005/023899
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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