説明

酸窒化物系蛍光体及びその製造法

【課題】青色発光ダイオードや紫色発光ダイオードと組み合わせて白色光とすることができる蛍光体を提供すること。
【解決手段】一般式2MO・Si3N4で示されるのMの一部をEuで置換したものからなる酸窒化物系蛍光体(ただし、Mは、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれた一種または2種以上の金属である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類元素で光学的に活性化させた酸窒化物系蛍光体に関する。さらに詳しくは、青色発光ダイオード(青色LED)または紫外発光ダイオード(紫外LED)を光源とする白色発光ダイオード(白色LED)の高輝度化を可能とする酸窒化物系蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、p型半導体とn型半導体とを接合した半導体固体発光素子である。LEDは、長寿命、優れた耐衝撃性、低消費電力、高信頼性等の長所を有し、しかも小型化、薄型化及び軽量化が可能であることから、各種機器の光源として用いられている。特に、白色LEDは、信頼性が要求される防災照明、小型化・軽量化が好まれる車載照明や液晶バックライト、視認性を必要とする駅の行き先案内板等に使用されており、また、一般家庭の室内照明への応用も期待されている。
直接遷移型半導体からなるp−n接合の順方向に電流を流すと、電子と正孔が再結合し、半導体の禁制帯幅に対応するピーク波長を有する光が放出される。LEDの発光スペクトルは、一般にピーク波長の半値幅が狭いので、白色LEDの発光色は、専ら光の混色に関する原理によって得られている。
【0003】
白色を得る方法としては、具体的には、
(1)光の三原色である赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)をそれぞれ放出する三種類のLED を組み合わせ、これらのLED光を混ぜる方法、
(2)紫外線を放出する紫外LEDと、その紫外線によって励起され、それぞれ赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の蛍光を放出する三種類の蛍光体とを組み合わせ、蛍光体から放出される三色の蛍光を混ぜる方法、
(3)青色光を放出する青色LEDと、その青色光によって励起され、青色光と補色の関係にある黄色の蛍光を放出する蛍光体とを組み合わせ、青色のLED光と、蛍光体から放出される黄色光とを混ぜる方法、
等が知られている。
【0004】
複数個のLEDを用いて所定の発光色を得る方法は、各色のバランスをとるために、各LEDの電流を調節するための特別の回路が必要となる。これに対し、LEDと蛍光体とを組み合わせて所定の発光色を得る方法は、このような回路が不要であり、LEDを低コスト化できるという利点がある。そのため、LEDを光源とするこの種の蛍光体について、従来から種々の提案がなされている。
例えば、(Y 、Gd)3(Al、Ga)512の組成式で表されるYAG系酸化物母体結晶中にCeをドープしたYAG蛍光体が開示されている(非特許文献1参照)。同文献には、InGaN系青色LEDチップの表面にYAG蛍光体を薄くコーティングすることによって、青色LEDから放出される青色光と、この青色光によって励起されたYAG蛍光体から放出されるピーク波長550nmの蛍光とが混ざり、白色光が得られる点が記載されている。
【0005】
また、紫外線を発光することができる窒化物系化合物半導体などの発光素子と、紫外線励起され発光する蛍光体を組み合わせた白色LEDが開示されている。ここで用いられる蛍光体としては、発光色が青色の(Sr,Ca,Ba)10(PO46Cl2:Eu、緑色の3(Ba,Mg,Mn)O・8Al2O3:Eu、赤色のYOS:Euが開示されている(特許文献1参照)。
【非特許文献1】向井孝志他、応用物理、第68巻、第2号(1999)pp.152−155
【特許文献1】特開2002−203991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の蛍光体は、一般に、励起波長が近紫外域を越えると、スペクトル強度が著しく減少するという欠点を有している。
また、InGaN系の青色LEDのチップ表面にYAG系酸化物からなる蛍光体をコーティングして得られる白色LEDは、蛍光体であるYAG系酸化物の励起エネルギーと、光源の青色LEDの励起エネルギーとが一致せず、励起エネルギーが効率よく変換されないため、高輝度の白色LEDを作成することは難しいとされていた。
更に、紫外線を発光することができる窒化物系化合物半導体などの発光素子と、紫外線励起され発光する蛍光体を組み合わせて白色LEDとした場合、赤色成分の蛍光体の発光効率が他の蛍光体よりもかなり低いために混合割合が多くなるといった問題があり、高輝度の白色が得ることは難しいとされていた。
本発明は、青色発光ダイオード(青色LED)または紫外発光ダイオード(紫外LED)を光源とする白色発光ダイオード(白色LED)の高輝度化を可能とする酸窒化物系蛍光体およびそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的達成のために鋭意検討した結果、一般式2MO・Si3N4で示されるMの一部をEuで置換したものからなる酸窒化物系蛍光体(ただし、Mは、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれた一種または二種以上の元素である)が、紫外〜近紫外〜可視光にわたる広範囲の強い吸収帯を有することを見出し、また、本発明の蛍光体を用いた白色LEDは優れた発光特性を有することを新たに見出し本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の各項の発明からなる。
(1) 一般式2MO・Si3N4で示されるMの一部をEuで置換したものからなる酸窒化物系蛍光体(ただし、Mは、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれた一種または二種以上の元素である)。
(2) Eu/Mの元素比が0.01〜50at%である上記(1)に記載の酸窒化物系蛍光体。
(3) 平均粒子径が50μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体。
【0009】
(4) 2価のユーロピウムの割合が、50%以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体。
(5) 2価のユーロピウムの割合が、80%以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体。
(6) Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物とを混合し、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
【0010】
(7) Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と、窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物とを混合し、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
(8) Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物と、予め合成した酸窒化物系蛍光体の種子を混合し、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
【0011】
(9) Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と、窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物と、予め合成した酸窒化物系蛍光体の種子を混合し、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
(10) 上記(1)〜(5)の何れかに記載の酸窒化物系蛍光体と発光素子を組み合わせた発光装置。
(11) 発光素子が窒化物系半導体発光素子であり、発光素子の発光波長が250nm〜500nmの範囲内であることを特徴とする上記(10)に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蛍光体は、紫外〜近紫外〜可視光にわたる広範囲の吸収帯を有することから、紫外LEDや青色LEDを用いた白色LED用途に有効に適用することができる。また、吸収帯が強いことから、白色LEDの輝度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の酸窒化物蛍光体は、前述の通り一般式2MO・Si3N4で示される母体結晶を構成するMの一部をEuで置換したものからなる酸窒化物系蛍光体(ただし、Mは、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれた一種または2種以上の金属)であって、母体結晶として、2BeO・Si3N4、2MgO・Si3N4、2CaO・Si3N4、2SrO・Si3N4、2BaO・Si3N4、2(Bea,Mgb,Cac,Srd,Bae) O・Si3N4 (a+b+c+d+e=1,0≦a<1, 0≦b<1, 0≦c<1, 0≦d<1, 0≦e<1)などが例示可能であるが、好ましくは2MgO・Si3N4、2CaO・Si3N4、2SrO・Si3N4、2BaO・Si3N4、2(Mga,Cab,Src,Bad) O・Si3N4(a+b+c+d=1, 0≦a<1, 0≦b<1, 0 ≦c<1, 0≦d<1)である。
Euの置換量は、金属Mに対し、0.01〜50at%(原子%)が好ましい。また、平均粒径は、50μm以下が好ましい。
【0014】
本発明の酸窒化物蛍光体は次のようにして得ることができる。
酸窒化物系蛍光体の原料化合物としては、例えば、Be,Mg,Ca,Sr,Baからなる群より選ばれる一種以上の酸化物あるいは、Be,Mg,Ca,Sr,Baからなる群より選ばれる一種以上の化合物であって加熱により酸化物を形成するものを使用することができる。具体的には、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、蓚酸ベリリウム、蓚酸マグネシウム、蓚酸カルシウム、蓚酸ストロンチウム、蓚酸バリウム、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硝酸ベリリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ジメトキシベリリウム、ジメトキシマグネシウム、ジメトキシカルシウム、ジメトキシストロンチウム、ジメトキシバリウム、ジエトキシベリリウム、ジエトキシマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジエトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジプロポキシベリリウム、ジプロポキシマグネシウム、ジプロポキシカルシウム、ジプロポキシストロンチウム、ジプロポキシバリウム、ジブトキシベリリウム、ジブトキシマグネシウム、ジブトキシカルシウム、ジブトキシストロンチウム、ジブトキシバリウム、ビス(ジピバロイルメタナト)ベリリウム、ビス(ジピバロイルメタナト)マグネシウム、ビス(ジピバロイルメタナト)カルシウム、ビス(ジピバロイルメタナト)ストロンチウム、ビス(ジピバロイルメタナト)バリウム、などから1種以上を選択して使用することが可能であり、2種以上の混合物、複合酸化物、固溶体、混晶なども使用できる。
【0015】
これらの化合物で好ましいものは、炭酸塩若しくは水酸化物である。特に好ましいものは、炭酸塩である。
また、Euの原料化合物としては、酸化物或いは加熱により酸化物を形成する化合物が使用可能である。例えば、酸化ユーロピウム、炭酸ユーロピウム、水酸化ユーロピウム、蓚酸ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウム、トリメトキシユーロピウム、トリエトキシユーロピウム、トリプロポキシユーロピウム、トリブトキシユーロピウム、などから1種以上を選択して使用することが可能であり、2種以上の混合物、複合酸化物、固溶体、混晶なども使用できる。
【0016】
また、窒化珪素の原料化合物としては、窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物が使用可能である。例えば、シリコンジイミド、ポリシラザンなどから1種以上を選択して使用することが可能である。更に、珪素、二酸化珪素、一酸化珪素、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、から選ばれる一種以上の化合物に、必要により炭素若しくは加熱により炭素を形成する化合物とを混合し、窒素若しくは窒素含有非酸化性雰囲気中で加熱しても、同様の結果を得ることが出来る。これらの原料のうち、固体であるものは、粉末状態であることが好ましい。粒度は特に限定されないが、微細原料の方が反応性に優れるため、好ましい。純度は、90%以上であることが好ましい。
【0017】
酸窒化物蛍光体の製造方法は、特に限定されず、固相法、液相法、気相法のいずれも採用可能であるが、固相法の場合には、以下のような方法が例示できる。
まず、原料化合物を、焼成後の生成物が2MO・Si3N4の組成になるように秤取して混合する。混合は、ボールミル、を用いることが出来る。ボールミル混合を行う場合は、乾式でも混合可能だが、エタノール、アセトン、水等を用いた湿式混合を行うことも出来る。原料粉末の反応性を高めるためには、湿式混合が望ましい。湿式混合を行う場合は、得られた混合スラリーを乾燥した後、必要に応じて解砕する。
ここで、必要に応じて該原料化合物にフラックスを加えて混合しても良い。フラックスとしては、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属のハロゲン化物などが使用可能であるが、例えば、蛍光体原料100重量部に対し、0.01〜1重量部の範囲で添加する。
また、必要に応じて予め合成した本発明の酸窒化物系蛍光体粉末を、種子として添加し、原料化合物と共に混合しても良い。種子の添加量は、蛍光体原料100重量部に対し、1〜50重量部の範囲である。
【0018】
この原料混合物を、アルミナ、カルシア、マグネシア、黒鉛或いは窒化硼素製ルツボ等に充填し、真空若しくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で数時間焼成する。必要に応じて、非酸化性雰囲気加圧を行っても良い。ここで非酸化性雰囲気とは、窒素、窒素―水素、アンモニア、アルゴン等である。
本発明の蛍光体中において、ユーロピウムはプラス2価の場合に良好な発光を示す。原料として用いる酸化ユーロピウムは3価であるため、焼成過程で還元する必要がある。2価と3価の割合は、2価が多いほど良く、全ユーロピウムに占める2価の割合は、50%以上であることが好ましい。更に好ましくは、80%以上である。本発明の蛍光体において、ユーロピウムは2価のアルカリ土類金属のサイトを置き換えて添加されるため、3価のユーロピウムが残留すると電荷のバランスが崩れ、発光強度の低下をもたらす。尚、ユーロピウムの2価と3価の割合は、メスバウアー分光法により分析することができる。
【0019】
また、原料混合物の焼成時には、炭素若しくは炭素含有化合物を共存させると、酸化ユーロピウムの還元が速やかに進む。ここで用いられる炭素若しくは炭素含有化合物は、無定形炭素、黒鉛、炭化珪素等であればよく、特に限定されないが、好ましくは無定形炭素、黒鉛等である。カーボンブラック、黒鉛粉末、活性炭、炭化珪素粉末等及びこれらの成型加工品、焼結体等が例示可能だが、何れも同様の効果を得ることが出来る。共存の態様としては、炭素若しくは炭素含有化合物からなるルツボとして用いる場合、炭素或いは炭素含有化合物以外の材質からなるルツボの内部あるいは外部に配置する場合、炭素若しくは炭素含有化合物からなる発熱体や断熱体として用いる場合等があるが、何れの配置方法を採用しても同様の効果を得ることが出来る。共存させる炭素若しくは炭素含有化合物は、例えば粉末状炭素を原料混合物中に含有させ、窒素雰囲気中で焼成する場合、原料混合物中の酸化ユーロピウムと等モル程度が適当である。
冷却後、必要に応じてボールミル等で分散・粉砕処理を行い、更に必要に応じて水洗処理等を施し、固液分離、乾燥・解砕・分級等の工程を経て本発明の蛍光体を得ることができる。
本発明の蛍光体は250nmから500nmの紫外線又は可視光で効率よく励起されるため、紫外LEDや青色LEDを用いた白色LED用途に有効に適用することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施態様である蛍光体と250nmから500nmの波長域に発光する半導体発光素子を組み合わせて発光装置を構成することも可能である。この場合の発光素子としてはZnSeやGaNなど種々の半導体が挙げられる。発光素子は、発光スペクトルが250nmから500nmに発光可能なものであれば際限なく使用可能であるが、効率の点からは窒化ガリウム系化合物半導体が好ましく用いられる。発光素子はMOCVD法やHVPE法等により基板上に窒化物系化合物半導体を形成させて得られ、好ましくはInαAlβGa1-α-βN(但し、0≦α、0≦β、α+β≦1)を発光層として形成させる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構造のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0021】
発光素子上に設ける上記蛍光体層は、少なくとも1種以上の蛍光体を単層又は複数層として層状に積層配置しても良いし、複数の蛍光体を単−の層内に混合して配置しても良い。上記発光素子上に蛍光体層を設ける形態としては、発光素子の表面を被覆するコーティング部材に蛍光体を混合する形態、モールド部材に蛍光体を混合する形態、或いはモールド部材に被せる被覆体に蛍光体を混合する形態、更にはLEDランプの投光側前方に蛍光体を混合した透光可能なプレートを配置する形態等が挙げられる。
又、上記蛍光体は発光素子上のモールド部材に少なくとも1種以上の蛍光体を添加しても良い。更に、上記蛍光体の1種以上の蛍光体層を、発光ダイオードの外側に設けても良い。発光ダイオードの外側に設ける形態としては、発光ダイオードのモールド部材の外側表面に蛍光体を層状に塗布する形態、或いは蛍光体をゴム,樹脂,エラストマー、低融点ガラス等に分散させた成形体(例えばキャップ状)を作製し、これをLEDに被覆する形態、又は前記成形体を平板状に加工し、これをLEDの前方に配置する形態等が挙げられる。
また、モールド部材等に、酸化チタン、窒化チタン、窒化タンタル、酸化アルミニウム、酸化珪素、チタン酸バリウム、酸化ゲルマニウム、雲母、六方晶窒化ホウ素或いは酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、チタン酸バリウム、酸化ゲルマニウム、六方晶窒化ホウ素等の白色粉末で被覆した雲母、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、チタン酸バリウム、酸化ゲルマニウム等の白色粉末で被覆した六方晶窒化ホウ素等の拡散剤を含有させることもできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は具体的実施例のみに限定されるものではない。尚、以下の実施例では発光スペクトルは、日本分光株式会社製FP−6500を用いて測定した。
[実施例1]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とした。次に、得られた原料混合体を、黒鉛製坩堝に入れアルミナ製炉心管中に配置し、窒素気流中1550℃の温度で6時間焼成した。得られた焼成物をボールミルにより細かく粉砕・分級し、平均粒径4.5μmの蛍光体とした。この蛍光体をX線回折装置と電子線マイクロアナライザーで調べたところ、Sr1.9Eu0.1O2・Si3N4であることが確認された。同蛍光体を380nm励起下で発光させたところ、緑黄色に相当する発光が認められた。
【0023】
[実施例2]実施例1で得られた蛍光体を450nm励起下で発光させたところ、緑黄色に相当する発光が認められた。
【0024】
[実施例3]実施例1で得られた蛍光体をシリコーンゴムに20質量%混合し、これを加熱プレス機を用いてキャップ状に成型した。これを、発光波長が380nmの近紫外線LEDの外側に被覆し、発光させたところ、緑黄色に相当する発光が認められた。また、温度60℃、90%RH(Relative Humidity)下で500時間点灯後においても蛍光体に起因する変化は認められなかった。
【0025】
[実施例4]実施例1で得られた蛍光体と、青色発光蛍光体としてSr5(PO43Cl:Euとをシリコーンゴムに前記順に5.8質量%、8.7質量%混合し、380nm近紫外線発光素子上にマウントして作製した白色LEDと、赤色発光蛍光体としてY2O2S:Eu、青色発光蛍光体としてSr5(PO43Cl:Eu]と、緑色発光蛍光体としてBaMg2Al16O27:Eu,Mnとをシリコーンゴムに前記順に45.8質量%、3.8質量%、3.4質量%混合し、380nm近紫外線発光素子上にマウントして作製した白色LEDとを比較したところ、実施例1で得られた蛍光体と、青色発光蛍光体としてSr5(PO43Cl:Euと用いた場合の方が2.1倍の輝度を持つ白色光が得られた。
【0026】
[実施例5]実施例1で得られた蛍光体をエポキシ樹脂に8.9質量%混合し、450nm青色発光素子上にマウントして白色LEDを作製したところ、得られた白色光の発光効率は39(lm/W)だった。
【0027】
[実施例6]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を3.30gと、窒化珪素粉末を26.33gと、炭酸バリウム粉末を70.37gとを正確に秤量し、実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を380nm励起下で発光させたところ青緑色に相当する発光を示した。
[実施例7]実施例6で得られた蛍光体を450nm励起下で発光させたところ、実施例6と同様に青緑色に相当する発光を示した。
【0028】
[実施例8]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を3.62gと、窒化珪素粉末を28.89gと、炭酸ストロンチウム粉末を28.88gと、炭酸バリウム粉末を38.61gとを正確に秤量し、実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ黄緑色に相当する発光を示した。
[実施例9]実施例8で得られた蛍光体を380nm励起下で発光させたところ、実施例8と同様に黄緑色に相当する発光を示した。
【0029】
[実施例10]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.23gと、窒化珪素粉末を33.74gと、炭酸カルシウム粉末を11.43gと、炭酸ストロンチウム粉末を50.60gとを正確に秤量し、実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ黄色に相当する発光を示した。
[実施例11]実施例10で得られた蛍光体を380nm励起下で発光させたところ、実施例10と同様に黄色に相当する発光を示した。
【0030】
[実施例12]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.47gと、窒化珪素粉末を35.67gと、炭酸カルシウム粉末を24.18gと、炭酸ストロンチウム粉末を35.67gとを正確に秤量し、実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ橙色に相当する発光を示した。
[実施例13]実施例12で得られた蛍光体を380nm励起下で発光させたところ、実施例12と同様に橙色に相当する発光を示した。
【0031】
[実施例14]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を5.06gと、窒化珪素粉末を40.31gと、炭酸カルシウム粉末を54.64gとを正確に秤量し、実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ赤橙色に相当する発光を示した。
[実施例15]実施例14で得られた蛍光体を380nm励起下で発光させたところ、実施例12と同様に赤橙色に相当する発光を示した。
【0032】
[実施例16]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、メノウ乳鉢を用いた乾式法により均一に混合し、原料混合体とし、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ黄橙色に相当する発光を示した。
【0033】
[比較例1]蛍光体構成原料として、窒化ユーロピウム粉末を4.68gと、酸化珪素粉末を16.95gと、窒化珪素粉末を26.39gと、窒化ストロンチウム粉末を51.98gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とし、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ発光を示さなかった。
【0034】
[比較例2]蛍光体構成原料として、窒化ユーロピウム粉末を4.68gと、酸化珪素粉末を16.95gと、窒化珪素粉末を26.39gと、窒化ストロンチウム粉末を51.98gとを正確に秤量し、メノウ乳鉢を用いた乾式法により均一に混合し、原料混合体とし、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ黄橙色に相当する発光を示したが、発光の強さは実施例16の蛍光体に対し36%だった。
【0035】
[比較例3]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とした。次に、得られた原料混合体を、アルミナ製坩堝に入れアルミナ製炉心管中に配置し、窒素気流中1550℃の温度で6時間焼成し、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ緑黄色に相当する発光を示したが、発光の強さは実施例1の蛍光体に対し47%だった。
【0036】
[比較例4]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とした。次に、得られた原料混合体を、窒化硼素製坩堝に入れアルミナ製炉心管中に配置し、窒素気流中1550℃の温度で6時間焼成し、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ緑黄色に相当する発光を示したが、発光の強さは実施例1の蛍光体に対し52%だった。
【0037】
[実施例17]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とした。次に、得られた原料混合体を、アルミナ製坩堝に入れアルミナ製炉心管中に黒鉛片と共に配置し、窒素気流中1550℃の温度で6時間焼成し、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ緑黄色に相当する発光を示し、発光の強さは実施例1の蛍光体と同等だった。
【0038】
[実施例18]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とした。次に、得られた原料混合体を、アルミナ製坩堝に黒鉛片と共に入れアルミナ製炉心管中配置し、窒素気流中1550℃の温度で6時間焼成し、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ緑黄色に相当する発光を示し、発光の強さは実施例1の蛍光体と同等だった。
【0039】
[実施例19]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gとを正確に秤量し、これをボールミルを使用しエタノールを用いた湿式法により均一に混合し、得られたスラリーを乾燥、解砕して原料混合体とした。次に、得られた原料混合体を、アルミナ製坩堝に入れ黒鉛ヒーターを使用する内熱式焼成炉中に配置し、窒素気流中1550℃の温度で6時間焼成し、他は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ緑黄色に相当する発光を示し、発光の強さは実施例1の蛍光体と同等だった。
【0040】
[実施例20]蛍光体構成原料として、酸化ユーロピウム粉末を4.01gと、窒化珪素粉末を32.00gと、炭酸ストロンチウム粉末を63.99gと、種子として予め合成した目的とする酸窒化物系蛍光体粉末10.00gとを正確に秤量し、焼成温度を1450℃とした以外は実施例1と同様に蛍光体粉末を得た。この蛍光体を450nm励起下で発光させたところ緑黄色に相当する発光を示し、発光の強さは実施例1の蛍光体と同等だった。
【0041】
[実施例21]実施例1で得られた蛍光体と、実施例6で得られた蛍光体と、実施例8で得られた蛍光体と、実施例10で得られた蛍光体と、実施例12で得られた蛍光体と、実施例12で得られた蛍光体とをシリコーンゴムに前記順に4.1質量%、3.3質量%、3.8質量%、4.9質量%、9.0質量%、11.9質量%、16.8質量%混合し、380nm近紫外線発光素子上にマウントして作製した白色LEDとを比較したところ、平均演色評価数は93だった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の蛍光体を青色発光ダイオード等と組み合わせて、白色光とすることができ、照明用光源や表示用光源として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式2MO・Si3N4で示されるMの一部をEuで置換したものからなる酸窒化物系蛍光体(ただし、Mは、Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれた一種または二種以上の元素である)。
【請求項2】
Eu/Mの元素比が0.01〜50at%である請求項1に記載の酸窒化物系蛍光体。
【請求項3】
平均粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体。
【請求項4】
2価のユーロピウムの割合が、50%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体。
【請求項5】
2価のユーロピウムの割合が、80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体。
【請求項6】
Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物とを混合し、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
【請求項7】
Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と、窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物とを混合し、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
【請求項8】
Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物と、予め合成した酸窒化物系蛍光体の種子を混合し、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
【請求項9】
Be,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの酸化物或いは加熱により酸化物を形成するBe,Mg,Ca,Sr,Ba及びEuの化合物と、窒化珪素或いは加熱により窒化珪素を形成する化合物と、予め合成した酸窒化物系蛍光体の種子を混合し、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下、真空もしくは非酸化性雰囲気中1200〜1900℃で焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸窒化物系蛍光体の製造法。
【請求項10】
請求項1〜5の何れかに記載の酸窒化物系蛍光体と発光素子を組み合わせた発光装置。
【請求項11】
発光素子が窒化物系半導体発光素子であり、発光素子の発光波長が250nm〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項10に記載の発光装置。

【公開番号】特開2006−124673(P2006−124673A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281917(P2005−281917)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】