説明

酸素を含まないプロセスガスを用いて製品を容器内に充填する方法

【課題】プロセスガスとしての不活性ガスが少なからずコストアップにつながってしまい、その結果、従来の装置においては、不活性ガスの使用が特定の重要な箇所に限られてしまうという問題を解消すること。
【解決手段】酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まないプロセスガスを用いて、所定の第1の装置内で製品を処理、すなわち特に容器内に充填する方法において、前記装置内における少なくとも1つの気体フィルタにおいて外気を分留することで前記プロセスガスを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に基づく方法、請求項9の前提部分に基づく装置並びに請求項15の前提部分に対応する、酸素と反応しやすい製品の処理及び/又は充填を行う装置における得に膜状フィルタである気体フィルタの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料を含む多くの製品においては、空気あるいは空気に含まれる酸素(O,O2,O3)によって、その品質、品質保持期限及び風味の少なくともいずれかに大きな悪影響が及ぶという問題がある。このような酸素の流入は、例えば容器に製品を充填する際や、充填後、及び容器の密封前及び/又は密封中に生じてしまう。
【0003】
そこで、このような問題を解消するため、酸素と反応しやすい製品を、通常CO2であるプロセスガスを用いて処理することが知られている。ここで、このプロセスガスは不活性ガス雰囲気を生成するために使用され、この雰囲気中で例えば各容器への製品の充填及び該容器のキャッピング(密封)である処理がなされる。
【0004】
さらに、容器を、充填前に、プロセスガスとして使用されるCO2ガスによって洗浄する(すすぐ)ことも知られている。このような洗浄により、製品がまだ充填されていない容器内部に存在する空気及びこの空気に含まれる酸素を、完全に又はほぼ完全に容器から排除することができるとともに、酸素を含まないプロセスガスと置換することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プロセスガスとしての不活性ガスが少なからずコストアップにつながってしまい、その結果、従来の装置においては、不活性ガスの使用が特定の重要な箇所に限られてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、上記欠点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1記載の方法によって達成される。この方法を実施するための装置は請求項9に記載されており、気体分留フィルタ又は特に膜状フィルタとしての気体フィルタの使用は請求項15に記載されている。
【0008】
ところで、本発明における「酸素と反応しやすい製品」とは、酸素の含有又は流入によってその品質、品質保持期限、風味などのうち少なくともいずれかに影響が及ぶものに限らず、その有用性あるいは効果に影響が及ぶような様々な製品を意味する。
【0009】
また、本発明における「容器」とは、特にボトル、チューブ、缶、ビン、バケツ又はバケツ状のもののみに限らず、例えば軟質の容器、袋体などの折畳み可能な多層状の平坦な部材から成る容器を含むものである。
【0010】
また、本発明における「酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まないプロセスガス」とは、外気(空気)を分留して得られた少なくとも1つの気体成分であって、酸素(O,O2,O3)を含まないか、又は製品に対して目立った悪影響を与えない程度のわずかな酸素を含んだものを意味している。なお、この「酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まないプロセスガス」は、主に窒素であり、場合によってはアルゴン、二酸化炭素及び蒸気を含んでいる。
【0011】
また、本発明における「外気(空気)を分留する」とは、少なくとも1つの気体フィルタ(特に膜状フィルタ)を用いて外気(空気)を各気体成分及び蒸気成分に分離することを意味している。
【0012】
さらに、本発明における「外気(空気)」とは、上記外気(空気)以外に、循環回路で複数回にわたって使用されるとともに、各再使用前に交換され、場合によっては生じる酸素混入物質から取り除かれた酸素を含まないか、又はこのような酸素を基本的に含まないプロセスガスも含んだものである。
【0013】
本発明の実施形態、利点及び利用可能性は、以下の実施形態及び図面の記載により説明する。ここで、各請求項又は引用する請求項における本発明の概要にかかわらず、本発明の基本的な特徴そのもの又はその適当な組合せについて説明している。なお、各請求項の内容は、明細書の一構成を表している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プロセスガスとしての不活性ガスが少なからずコストアップにつながってしまい、その結果、従来の装置においては、不活性ガスの使用が特定の重要な箇所に限られてしまうという問題を解消することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】容器処理装置に用いる気体フィルタの機能の概要を示すブロック図である。
【図2】容器処理装置をキャッピング装置として概略的に示す断面図である。
【図3】フィルタ装置の他の実施形態を示す図1と同様な図である。
【図4】気体フィルタ又は膜状フィルタの特別な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1において符号1で示すフィルタ装置は様々な気体成分の混合気体から成る空気を各気体成分及び/又は蒸気成分に分留するものであり、これら各気体成分及び/又は蒸気成分は、フィルタ装置1の流出口G1〜Gxから個々に取り出される。このためにフィルタ装置1は気体フィルタ2を備えており、該気体フィルタ2においては、適当なフィルタ手段によって分留が行われる。
【0018】
ここで、気体フィルタ2におけるフィルタ手段は、例えば、気体フィルタ2の少なくとも1つの流通管路内に、各流出口からそれぞれ1つのみの気体成分が取り出されるように配置されている。この気体フィルタ2は特に膜状フィルタとして形成されており、この膜状フィルタにおいて、例えばフィルタ膜として形成された各フィルタ手段は、各流出口G1〜Gxに割り当てられた気体成分のみを透過させるようになっている。
【0019】
また、気体フィルタ2の前側(上流側)には例えば殺菌フィルタ3が接続されており、該殺菌フィルタ3を通して外気(空気)が供給されるとともに、該殺菌フィルタ3において、外気中に含まれるほこり、すすなどの粒子に加えて例えばカビ、バクテリア、ウイルスなどの各種微生物及び病原菌が取り除かれる。そのため、気体フィルタ2には清浄かつ無菌の空気のみが供給されるとともに、各流出口G1〜Gxからも清浄かつ無菌の気体成分が取り出されることになる。
【0020】
ところで、フィルタ装置1は、例えば特に酸素と反応しやすい製品の充填などの処理を行う容器処理装置において使用されるよう設定されている。そして、このフィルタ装置1によって、それぞれ処理される製品に悪影響を及ぼすことなく、流出口G1〜Gxから取り出されるプロセスガスとしての気体成分すなわち酸素成分(O,O2,O3)を除くすべての気体成分を当該製品を処理する製品処理装置4に対して使用することが可能となる。ここで、各流出口G1〜Gxにそれぞれ対応する気体成分は、例えば共に製品処理装置4へ供給される。
【0021】
なお、1つ又は複数の流出口で発生する酸素成分は、例えば外部へ捨てられるか、又は例えば酸素処理装置5へ供給され、オゾン若しくはオゾンを含む気体若しくは混合気として洗浄あるいは殺菌に使用される。
【0022】
しかして、気体フィルタ2から供給された酸素を含まないプロセスガスは、製品処理装置4において、酸素と反応しやすい製品のボトルへの充填時及びキャッピング時に、例えば不活性ガスとして使用される。このような例として、図2には、酸素と反応しやすい製品が充填されたボトル7をキャッピングする回転式のキャッピング装置6が示されている。
【0023】
このボトル7は、そのキャッピングのために、軸中心線VA回りに回転するロータ8に設けられたキャッピング工具10の下方においてボトル載置皿9上で直立するように、ロータ8に設けられている。ここで、キャッピング工具10は、王冠キャップ(王冠コルク)などのキャップによってボトル7に栓をするものである。
【0024】
また、各ボトル7のその少なくとも開口部を有するボトルネック部には、ハウジング11で画成されつつ外部から分離された空間部12内で、接続部13を介して供給される気体フィルタ2からのプロセスガスが上方から下方へ供給される。なお、プロセスガスは、空間部12の下部から外部へ放出される。したがって、プロセスガスは、空間部12全体を満たすとともに、該空間部12を貫流する。また、プロセスガスは、ボトル7の開口部の周囲を集中的に流通する。
【0025】
これと似たように、ボトル7に酸素と反応しやすい製品を充填する際、すなわちキャッピング装置6内及び充填装置とキャッピング装置6の間の搬送路上において、ボトル7は常に気体フィルタ2から取り出されたプロセスガスである不活性ガス雰囲気中に置かれる。
【0026】
また、ボトル7への製品の充填前にボトル7内の空気あるいは酸素を排出するために当該ボトル7を洗浄する場合は、この洗浄を気体フィルタ2からの酸素成分を含まないプロセスガスによって行うことが考えられる。さらに、気体であらかじめ圧力をかけられたボトル7に炭酸を含まない製品を充填する場合にも、気体フィルタ2からの酸素成分を含まないプロセスガスによってあらかじめ圧力をかけることが考えられる。
【0027】
図3には図1に示すものと類似したフィルタ装置1aが示されており、このフィルタ装置1aは、殺菌フィルタ3が気体フィルタ2の後方(下流側)に接続されている点でのみ図1に示すフィルタ装置1と相違している。すなわち、プロセスガスとして製品処理装置4内で使用される分留された気体成分のみが殺菌フィルタ3で処理される。これにより、殺菌フィルタで処理すべき気体の体積を大幅に削減することが可能である。
【0028】
図4には気体フィルタ2aの構造が非常に簡易に示されており、この気体フィルタ2aの空間部14には、流入部15を介して例えば殺菌フィルタ3を通った外気が例えば送風機によって供給される。この空間部14には空気の流通方向に連続して複数の膜状フィルタ16が配置されており、各膜状フィルタ16は、そのフィルタ作用に関して、それぞれ所定の気体成分のみを除去し、それ以外の気体成分を透過させるように形成されている。そして、この除去された気体成分は、各膜状フィルタ16に対応する流出口G1〜Gxから供給される。
【0029】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、様々な変更及びバリエーションが考えられる。
【0030】
また、上記実施形態では空気を分留した各成分がそれぞれ流出口G1〜Gxから取り出されるが、各気体フィルタを、酸素を含まない少なくとも2種類の気体成分を1つの共通の流出口から取り出すことも可能である。しかし、いずれの場合でも、気体フィルタは、該気体フィルタから供給されつつ例えば酸素と反応しやすい製品の充填などの処理に使用されるプロセスガスが酸素を含まないよう設定されている。
【0031】
さらに、本発明の範囲は飲料を充填する装置も含んでおり、この装置においては、キャッピング装置、充填装置及びこれら2つの装置の間の容器搬送路のうち少なくともいずれかが少なくとも部分的に外気から隔離されているとともに少なくとも部分的に酸素を含まないか酸素を基本的に含まない気体成分の雰囲気中に置かれている。
【0032】
本発明によれば、多くの分野で使用される酸素を含まないか、あるいは酸素を基本的に含まない気体成分の製造コスト(原価)を大幅に低減することができることにより、包装又は充填された製品内の酸素含有量を従来に比して更に低減することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1,1a フィルタ装置
2,2a 気体フィルタ
3 殺菌フィルタ
4 製品処理装置
5 酸素処理装置
6 キャッピング装置
7 ボトル
8 ロータ
9 ボトル載置皿
10 キャッピング工具
11 ハウジング
12,14 空間部
13 接続部
15 流入部
16 膜状フィルタ
G1〜Gx 流出口
VA 軸中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まないプロセスガスを用いて、所定の第1の装置(4)内で製品を処理、すなわち特に容器内に充填する方法において、
前記装置(4)内における少なくとも1つの気体フィルタ(2,2a)において外気を分留することで前記プロセスガスを得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記気体フィルタ(2,2a)を膜状フィルタとすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
外気の分留前に、少なくとも1つの殺菌フィルタ(3)によって、前記気体フィルタ(2,2a)に供給されてくる外気から有害物質又は粒子及び病原菌又は微生物を排除することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
分留された外気のうちプロセスガスとして使用される少なくとも1つの成分を、前記殺菌フィルタ(3)において処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
外気の分留時に取り出される酸素成分を大気中へ放出し、及び/又は該酸素成分を収集及び/又は処理し、例えばオゾン又はオゾンガスを生成する所定の第2の装置(5)に供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセスガスを不活性ガス雰囲気(12)の形成のために使用するとともに、前記容器(7)における少なくとも開口部を有する部分を、前記不活性ガス雰囲気内に、製品の充填中及び/又は充填後前記容器の密封まで収容することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記容器(7)への製品の充填前の該容器の洗浄に前記プロセスガスを使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセスガスを、前記容器(7)の予圧に用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まないプロセスガスを用いて、所定の第1の装置(4)内で製品を処理、すなわち特に容器内に充填する装置において、
前記装置(4)内における少なくとも1つの気体フィルタ(2,2a)において外気を分留することで前記プロセスガスを得るよう構成したことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記気体フィルタ(2,2a)を膜状フィルタとしたことを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
外気から有害物質又は粒子及び病原菌又は微生物を排除する殺菌フィルタ(3)を前記気体フィルタの上流側に設けたことを特徴とする請求項9又は10記載の装置。
【請求項12】
外気を分留して得られたプロセスガスの少なくとも1つの成分を供給する前記気体フィルタ(2a)における少なくとも1つの流出口(G1〜Gx)の下流側に、少なくとも1つの殺菌フィルタ(3)を設けたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
外気を分留して得られた酸素成分を供給する前記気体フィルタ(2,2a)における流出口を大気中に開放させ、及び/又は前記酸素成分を収集及び/又は処理し、例えばオゾン又はオゾンガスを生成する所定の第2の装置(5)に接続したことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
飲料を充填する装置を含んで構成するとともに、該装置において、キャッピング装置、充填装置及びこれら2つの装置の間の容器搬送路のうち少なくともいずれかを、少なくとも部分的に外気から隔離するとともに少なくとも部分的に酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まない気体成分の雰囲気中に配置したことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
特に膜状フィルタである気体フィルタにおいて、
酸素を含まないか、又は酸素を基本的に含まないプロセスガスを生成するために、当該気体フィルタを酸素と反応しやすい製品の処理及び/又は充填のための前記第1の装置(4)において使用するよう構成したことを特徴とする気体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−524795(P2010−524795A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504528(P2010−504528)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003248
【国際公開番号】WO2008/131892
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(598125028)カーハーエス・アクチエンゲゼルシヤフト (125)
【Fターム(参考)】