説明

酸素センサのヒータ制御装置

【課題】酸素センサのヒータ制御装置において、酸素センサを所定温度に精度良く調整することにより、酸素センサの検出精度を上げることにある。
【解決手段】酸素濃度を検出する素子とこの素子を加熱するヒータとを有する酸素センサを設け、素子が所定温度になるようにヒータに供給する電力を制御するヒータ制御手段が備えられた制御手段を設け、ヒータ制御手段は、ヒータ抵抗値に基づいてヒータに供給する電力を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸素センサのヒータ制御装置に係り、特に排気系に設けた酸素センサの温度を調整する酸素センサのヒータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された内燃機関には、排気系に、酸素濃度を検出する素子とこの素子を加熱するヒータとを有する酸素センサを設けている。
そして、酸素センサを正常に働かせるためには、素子の温度を目標とする所定温度(例えば550℃)に調整する必要がある。
また、酸素センサを採用する場合に、多くは、素子の温度の監視をすることはなく、内蔵したヒータの通電電圧を制御し、目標とする素子の温度に到達していると仮定して、燃料量の補正等に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−235048号公報
【0004】
特許文献1に係る酸素センサの抵抗発熱式電気ヒータの通電制御方法は、検出されたヒータ通電電流が所定値以下に制限されるように、電気ヒータに供給する電力を制御するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、酸素センサに内蔵するヒータは、その内部抵抗値にバラツキがあることから、酸素センサの保護を優先し、ヒータ抵抗値が最も低いセンサ(即ち、温度が最も上昇するセンサ)を考慮して、機関回転速度と機関負荷を軸とした電圧制御マップ(デューティ制御含む)を設定し、そのマップ検索値を利用してヒータへの電力を制御している。
この場合、ヒータ抵抗値が最も高いセンサ(即ち、最も温度が低くなるセンサ)が装着された車両では、素子の温度が目標よりも低くなってしまうことがあり、酸素センサが出力する値の信頼性が損なわれるおそれがあった。
また、排出ガス規制が厳しくなり、かつ自己診断の正確さが問われる昨今、酸素センサからの出力値については、精度を求める必要があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、酸素センサを所定温度に精度良く調整することにより、酸素センサの検出精度を向上する酸素センサのヒータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、酸素濃度を検出する素子とこの素子を加熱するヒータとを有する酸素センサを設け、前記素子が所定温度になるように前記ヒータに供給する電力を制御するヒータ制御手段が備えられた制御手段を設けた酸素センサのヒータ制御装置において、前記ヒータ制御手段はヒータ抵抗値に基づいて前記ヒータに供給する電力を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の酸素センサのヒータ制御装置は、酸素センサを所定温度に精度良く調整することにより、酸素センサの検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は酸素センサのヒータ制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2は酸素センサのヒータ温度と素子温度との関係を示す図である。(実施例)
【図3】図3は酸素センサのヒータ抵抗値と印加電圧の調整との関係を示す図である。(実施例)
【図4】図4は酸素センサの構成図である。(実施例)
【図5】図5はヒータ制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、酸素センサを所定温度に精度良く調整することにより、酸素センサの検出精度を上げる目的を、ヒータの抵抗値に基づいてヒータに供給する電力を補正して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
図5において、1は車両に搭載される内燃機関である。この内燃機関1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4とが一体的になって構成されている。
シリンダヘッド3には、吸気側において、吸気ポート5が形成され、また、吸気カム軸6が設置され、さらに、この吸気カム軸6で駆動されて吸気ポート5を開閉する吸気弁7が設けられている。
また、シリンダヘッド3には、排気側において、排気ポート8が形成され、また、排気カム軸9が設置され、さらに、この排気カム軸9で駆動されて排気ポート8を開閉する排気弁10が設けられている。
【0012】
内燃機関1は、吸気装置11を備えている。この吸気装置11においては、エアクリーナ12と、このエアクリーナ12から内燃機関1側に吸入空気を導く吸気通路13を形成するように、吸気管14と、スロットル弁15を備えたスロットルボディ16と、サージタンク17が一体でシリンダヘッド3に取り付けられる吸気マニホルド18とが、順次に接続している。
【0013】
内燃機関1は、排気装置19を備えている。この排気装置19においては、内燃機関1からの排気を導く排気通路20を形成するように、シリンダヘッド3に取り付けられた排気マニホルド21と、この排気マニホルド21に接続された排気管22とが、順次に設けられている。この排気管22の途中には、触媒コンバータ23が設けられている。
【0014】
内燃機関1は、過給機(ターボチャージャ)24を備えている。この過給機24は、吸気マニホルド18の上流側に配設され、エアクリーナ12側からの吸入空気を過給し、この過給された空気を内燃機関1側に供給するものである。
過給機24は、過給機ケース25内で、吸気管14の途中に配設されたコンプレッサ26と、排気マニホルド21と排気管22の間に配設されて排気流で駆動するタービン27と、コンプレッサ26とタービン27とを連結する回転軸28とを備えている。
過給機ケース25には、ウェストゲート装置29を構成するように、タービン27の上流側と下流側との吸気通路13に連通するウェストゲート通路30と、このウェストゲート通路30を開閉するウェストゲートバルブ31を設けている。
このウェストゲートバルブ31は、作動ロッド32を介してウェストゲートアクチュエータ33で開閉動作される。このウェストゲートアクチュエータ33は、ウェストゲート制御弁(VSV)34によって作動される。このウェストゲート制御弁34は、一端がコンプレッサ26の上流側の吸気通路13に連通するとともに他端がコンプレッサ26の下流側の吸気通路13に連通するウェストゲート制御用圧力管35の途中に設けられている。
また、吸気管14には、一端がコンプレッサ26の上流側の吸気通路13に連通するとともに他端がコンプレッサ26の下流側の吸気通路13に連通するバイパス管36が設けられている。このバイパス管36の途中には、圧力調整弁(ABV)37が設けられている。この圧力調整弁(ABV)37は、コンプレッサ26の下流側の吸気通路13に連通した圧力調整用管38に連絡している。この圧力調整用管38の途中には、圧力調整用制御弁39が設けられている。
更に、コンプレッサ26とスロットル弁15との間の吸気管14の途中には、過給機24で過給された空気を冷却するインタクーラ40が設けられている。
【0015】
内燃機関1は、燃料供給装置41を備えている。この燃料供給装置41においては、燃料タンク42内で電磁式の燃料ポンプ43が設けられ、また、この燃料ポンプ43に燃料供給管44の一端が接続している。燃料供給管44の他端は、燃料デリバリパイプ45を介して燃料噴射弁46に接続している。
燃料供給管44の途中には、燃料圧力レギュレータ47が設けられている。この燃料圧力レギュレータ47には、燃料タンク42内に開口する燃料リターン管48が接続している。
燃料噴射弁46は、シリンダヘッド3に取り付けられて燃料を吸気ポート5へ噴射する。
【0016】
内燃機関1は、蒸発燃料制御装置49を備えている。この蒸発燃料制御装置49においては、燃料タンク42の上部に二ウェイチェック弁50が設けられ、この二ウェイチェック弁50にはエバポ管51の一端が接続し、このエバポ管51の他端にキャニスタ52が設けられている。
このキャニスタ52には、パージ管53の一端が接続している。このパージ管53の他端は、スロットル弁15の上流側でスロットルボディ16の内部に開口している。パージ管53の途中には、パージ弁(VSV)54が設けられている。
【0017】
また、内燃機関1は、アイドル空気量制御装置(ISC装置)55を備えている。このアイドル空気量制御装置55においては、スロットル弁15を迂回するように、一端がスロットル弁15の上流側でスロットルボディ16の内部に連通するとともに他端がスロットル弁15の下流側でスロットルボディ16の内部に連通するアイドルエア管56が設けられている。また、このアイドルエア管56の途中には、内燃機関1のアイドル運転時の吸入空気量を調整するISC弁57が設けられている。
【0018】
シリンダヘッドカバー4には、イグニションコイル58とPCV弁59とが取り付けられている。このPCV弁59には、サージタンク17内に連通するタンク側ブローバイガス管60が接続している。
また、シリンダヘッドカバー4には、エアクリーナ12内に連通するエアクリーナ側ブローバイガス管61が接続している。
【0019】
シリンダブロック2には、吸気マニホルド18の一部に形成した冷却水通路62内の冷却水温度を検出する水温センサ63と、ノッキングを検出するノッキングセンサ64とが取り付けられている。
スロットルボディ16には、スロットル弁15のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ65が設けられ、また、スロットル弁15よりも下流側で、圧力導入管66の一端が接続している。この圧力導入管66に他端には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ67が設けられている。
サージタンク17には、空気の温度を検出する吸気温センサ68が取り付けられている。
触媒コンバータ23の上流側の排気管22には、排気中の空燃比を検出するヒータ付きの排気センサ69が取り付けられている。
触媒コンバータ23の下流側の排気管22には、排気中の酸素濃度を検出するヒータ付きの酸素センサ(O2センサ)70が取り付けられている。
この酸素センサ70は、図4に示すように、センサケース71内で、酸素濃度を検出する素子72と、この素子72を加熱するヒータ73とを有する。このヒータ73は、後述する制御手段74から供給される電力によって素子72の温度を調整する。
【0020】
ウェストゲート制御弁34と、圧力調整制御弁39と、燃料ポンプ43と、燃料噴射弁46と、パージ弁54と、ISC弁57と、イグニションコイル58と、水温センサ63と、ノッキングセンサ64と、スロットル開度センサ65と、吸気管圧力センサ67と、吸気温センサ68と、排気センサ69と、酸素センサ70及び酸素センサ70のヒータ73とは、ヒータ制御装置を構成する制御手段(ECM:エンジンコントロールモジュール)74に連絡している。
また、この制御手段74には、クランク角を検出するクランク角センサ75と、メインスイッチ76及びフューズ77を介したバッテリ78と、イグニションスイッチ79とが連絡している。
クランク角センサ75は、クランク角を検出してこの検出信号を制御手段74に出力するとともに、エンジン回転数を検出する機能を有している。
【0021】
また、制御手段74は、酸素センサ70の素子72が所定温度になるようにヒータ73に供給する電力を制御するヒータ制御手段74Aと、酸素センサ70のヒータ電流値をモニタできるヒータ電流モニタ回路74Bとを備えている。また、ヒータ制御手段74Aは、ヒータ抵抗値に基づいてヒータ73に供給する電力を補正する。
【0022】
また、制御手段74は、ヒータ73に流れる電流値を検出するヒータ電流検出手段74Cを備え、ヒータ73に電圧を印加してこのヒータ73に印加した電圧とヒータ電流検出手段74Cにより検出された電流値とからヒータ抵抗値を算出する。
【0023】
即ち、この実施例では、図2に示すように、酸素センサ70のヒータ温度と素子温度とは、同様の傾向をもって上昇並びに下降することに着目している。
そこで、酸素センサ70のヒータ73に流すヒータ電流値を常時ヒータ電流モニタ回路74Bでモニタしておき、目標とするヒータ電流値を設定して、そのヒータ電流値に収束するよう電圧(デューティ制御含む)制御を行う。
そのため、図3に示すように、第1に、予め、ヒ一タ抵抗中央センサ(規格品)Mの酸素センサにて素子の目標温度を達成できる電圧値を設定する。つまり、機関回転数と機関負荷(吸気管圧力や吸入空気量等)を軸とした電圧制御マップでベース値を設定しておく。
第2に、イグニションスイッチのオンの状態にて、若干の電圧を印加し、ヒータに流れるヒータ電流値からヒータ抵抗値を読み取る。
第3に、ヒ一タ抵抗中央センサ(規格品)Mの酸素センサとの抵抗値と上記の読み取ったヒータ抵抗値とを比較し、補正値を算出する(図3参照)。
そして、第4に、ヒータヘの通電が許可された状況において、通常マップ検索電圧をその補正値で補正して、この補正した電圧値をヒータに印加して、燃料供給量の補正や自己診断のために、酸素センサが出力する電流値を利用する。
【0024】
次に、この実施例に係るヒータ制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段74のプログラムがスタートし(ステップA01)、イグニションスイッチ79がオンとなり(ステップA02)、酸素センサ70のヒータ抵抗値の認識のために電圧を印加し(ステップA03)、そして、ヒータ抵抗値を認識し(ステップA04)、酸素センサ70のヒータ73への印加電圧の補正値を検索し(抵抗値を軸とした補正値テーブルを設定)(ステップA05)、内燃機関1を運転する(ステップA06)。
そして、酸素センサ70のヒータ73の制御可能運転領域になったか否かを判断する(ステップA07)。このステップA07がNOの場合には、前記ステップA06に戻す。
一方、このステップA07がYESの場合には、内燃機関1の運転状態を認識し、酸素センサ70のヒータ電圧マップを検索する(ステップA08)。
その後、酸素センサ70のヒータ電圧マップでの値にヒータ抵抗値による補正電圧値を加えて、この補正した電圧値をヒータ73に印加する(ステップA09)。
そして、酸素センサ70のヒータ73の制御可能運転領域になったか否かを判断する(ステップA10)。このステップA10がYESの場合には、前記ステップA06に戻す。
このステップA10がNOの場合には、プログラムをエンドとする(ステップA11)。
【0025】
この結果、酸素センサ70の素子72が所定温度になるようにヒータ73に供給する電力を制御するとともに、ヒータ抵抗値に基づいてヒータ73に供給する電力を補正することから、酸素センサ70を所定温度に精度良く調整することができ、酸素センサ70の検出精度を上げることができる。
【0026】
また、ヒータ73に電圧を印加してこのヒータ73に印加した電圧とヒータ電流検出手段74Cにより検出された電流値とからヒータ抵抗値を算出することから、経時変化により酸素センサ70の抵抗値が変化しても、酸素センサ70の抵抗値を算出し直すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係る酸素センサのヒータ制御装置を、各種内燃機関に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 内燃機関
70 酸素センサ
71 センサケース
72 素子
73 ヒータ
74 制御手段
74A ヒータ制御手段
74B ヒータ電流モニタ回路
74C ヒータ電流検出手段
79 イグニションスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃度を検出する素子とこの素子を加熱するヒータとを有する酸素センサを設け、前記素子が所定温度になるように前記ヒータに供給する電力を制御するヒータ制御手段が備えられた制御手段を設けた酸素センサのヒータ制御装置において、前記ヒータ制御手段はヒータ抵抗値に基づいて前記ヒータに供給する電力を補正することを特徴とする酸素センサのヒータ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ヒータに流れる電流値を検出するヒータ電流検出手段を備え、前記ヒータに電圧を印加してこのヒータに印加した電圧と前記ヒータ電流検出手段により検出された電流値とからヒータ抵抗値を算出することを特徴とする請求項1に記載の酸素センサのヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127309(P2012−127309A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281175(P2010−281175)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】