説明

酸素吸収多層体

【課題】樹脂加工性と酸素吸収性能に優れた酸素吸収多層体を提供する。
【解決手段】A)ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層、B)ポリオレフィン樹脂、遷移金属触媒及びポリアミド樹脂を含有する酸素吸収樹脂組成物からなる酸素吸収層、C)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物層並びに、D)外層の少なくとも4層がこの順に積層されてなる酸素吸収多層体であって、該ポリアミド樹脂が芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られる末端アミノ基濃度が30μeq/g以下のポリアミド樹脂であり、該酸素吸収層中の該遷移金属触媒と該ポリアミド樹脂の合計含有量が酸素吸収層の総量に対して15〜60重量%であり、かつ該エポキシ樹脂硬化物層が(1)式に示される骨格構造をエポキシ樹脂硬化物層の総量に対して40重量%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた酸素吸収性能を示し、且つ、樹脂の酸化劣化による強度低下、臭気発生のない酸素吸収多層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包装容器としては、金属缶、ガラス瓶、各種プラスチック包装等の容器が知られていたが、包装容器内の酸素による品質劣化が問題となっていた。このため、近年、脱酸素包装技術の一つとして、熱可塑性樹脂に鉄系脱酸素剤等を配合した酸素吸収樹脂組成物からなる酸素吸収層を配した多層材料で容器を構成し、容器のガスバリア性の向上を図ると共に、容器自体に酸素吸収機能を付与した包装容器の開発が行われている。例えば、酸素吸収性多層フィルムは、ヒートシール層及びガスバリア層が積層してなる従来のガスバリア性多層フィルムの間に、場合により熱可塑性樹脂からなる中間層を介して酸素吸収剤を分散した熱可塑性樹脂層である酸素吸収層を加え、外部からの酸素透過を防ぐ機能に容器内の酸素を吸収する機能を付与したものとして利用され、押し出しラミネートや共押し出しラミネート、ドライラミネート等の従来公知の製造方法を利用して製造されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、鉄粉等の酸素吸収剤を用いるものは、食品等の異物検知に使用される金属探知機に検知される、不透明性の問題により内部視認性が不足する、さらに、鉄粉の混入により風味が損なわれるアルコール等の飲料への使用ができない、といった課題を有していた。また、鉄粉の酸化反応を利用しているため、被保存物が高水分系であるものでしか、酸素吸収の効果を発現することができなかった。
【0004】
一方、ポリマーからなり、酸素捕捉特性を有する組成物では、酸化可能有機成分としてポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドと遷移金属からなる樹脂組成物が知られており、酸素捕捉機能を有する樹脂組成物やその樹脂組成物を成形して得られる酸素吸収剤、包装材料、包装用多層積層フィルムの例示もある(特許文献2〜6参照)。
【0005】
しかしながら、遷移金属触媒を含有させ、ポリアミド樹脂等を酸化させ酸素吸収機能を発現させる樹脂組成物は、キシリレン基含有ポリアミド樹脂が酸化するため、樹脂の酸化劣化による強度低下が発生し、包装容器そのものの強度が低下するという問題を有している。
【0006】
さらに、ポリアミド樹脂と遷移金属触媒にて酸化反応を示すものとして、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合によって得られるポリアミドであるMXD6の例示があるが、MXD6に遷移金属を混合した系では、酸素吸収樹脂組成物として使用し、被保存物を良好に保存するには、酸素吸収能力が低い場合があった。また、MXD6に遷移金属を混合した系は、通常、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと表記する)等のポリエステル樹脂やナイロン6等の比較的高融点の樹脂とのブレンドが使用されていた。
【0007】
また、また、近年、ガスバリア性ラミネートフィルムにおいて、ガスバリア機能を有するラミネート用接着剤としてエポキシ樹脂硬化剤が提案されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−234832号公報
【特許文献2】特開平5−140555号公報
【特許文献3】特開2001−252560号公報
【特許文献4】特開2003−341747号公報
【特許文献5】特開2005−119693号公報
【特許文献6】特開2001−179090号公報
【特許文献7】特開2002−256208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決した、酸素吸収性能、樹脂強度、樹脂加工性に優れた酸素吸収多層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定のポリアミド、遷移金属及びポリオレフィン樹脂を、特定の割合でブレンドすることにより、酸素吸収性能に優れ、保存後の樹脂強度を保持し、さらに、加工性に優れた酸素吸収多層体を得ることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明はA)ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層、B)ポリオレフィン樹脂、遷移金属触媒及びポリアミド樹脂を含有する酸素吸収樹脂組成物からなる酸素吸収層、C)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物層並びに、D)外層の少なくとも4層がこの順に積層されてなる酸素吸収多層体であって、該ポリアミド樹脂が芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られる末端アミノ基濃度が30μeq/g以下のポリアミド樹脂であり、該酸素吸収層中の該遷移金属触媒と該ポリアミド樹脂の合計含有量が酸素吸収層の総量に対して15〜60重量%であり、かつ該エポキシ樹脂硬化物層が(1)式に示される骨格構造をエポキシ樹脂硬化物層の総量に対して40重量%以上含有することを特徴とする酸素吸収多層体である。
【0012】
【化1】

【発明の効果】
【0013】
本発明により、高い酸素吸収性能を有し、ポリアミド樹脂の酸化による強度劣化もほとんどみられない酸素吸収多層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の酸素吸収層に用いる酸素吸収樹脂組成物は、芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られる末端アミノ基濃度が30μeq/g以下であるポリアミド樹脂(以下、当該ポリアミド樹脂を特に「ポリアミド樹脂A」と称する)、遷移金属触媒及びポリオレフィン樹脂を含有する。以下これら各成分について、詳細を説明する。
【0015】
酸素吸収樹脂組成物の酸素吸収性能は、酸素吸収能を有するポリアミド樹脂が多い方が良好と考えられるが、驚くべきことに、ポリアミド樹脂A、遷移金属及びポリオレフィン樹脂を混合し、一定の比率でブレンドした際に高い酸素吸収能力を示すことを見出した。
【0016】
本発明におけるポリアミド樹脂Aは、芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合で得られる。芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合は、芳香族ジアミンとジカルボン酸を溶融させる溶融重合や、ポリアミド樹脂のペレットなどを減圧下、加熱する固相重合などにより進行させることができる。
【0017】
ポリアミド樹脂Aを得る際の芳香族ジアミンとしては、オルソキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミンが挙げられるが、酸素吸収性能の観点からパラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン又はこれらの混合物が好ましく用いられ、メタキシリレンジアミンが特に好ましく用いられる。また、性能に影響しない範囲で、各種脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを共重合成分として組み込んでもよい。
【0018】
ポリアミド樹脂Aを得る際のジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸等が挙げられる。これらの中でも、酸素吸収性能の観点から、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸又はこれらの混合物が好ましく、アジピン酸とセバシン酸の混合物又はアジピン酸とイソフタル酸の混合物が特に好ましい。アジピン酸とセバシン酸の混合物を用いる場合のモル比は、セバシン酸:アジピン酸=0.3〜0.7:0.7〜0.3が好ましく、0.4〜0.6:0.6〜0.4が特に好ましい。また、アジピン酸とイソフタル酸の混合物を用いる場合のアジピン酸:イソフタル酸=0.7〜0.97:0.3〜0.03が好ましく、0.8〜0.95:0.2〜0.05が特に好ましい。なお、性能に影響しない程度で、各種脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸を共重合成分として組み込んでもよい。
【0019】
本発明におけるポリアミド樹脂Aとは、少なくとも芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られる末端アミノ基濃度が30μeq/g以下のポリアミド樹脂であるが、末端アミノ基濃度が25μeq/g以下であると酸素吸収性能が向上するため好ましく、20μeq/g以下であると酸素吸収性能がさらに向上するため、より好ましい。このように酸素吸収性能は、末端アミノ基濃度の低下に伴って向上する傾向があり、出来るだけ当該濃度を低下させることが好ましいが、経済合理性を考慮するとその下限値は5μeq/g以上とすることが好ましい。なお、末端アミノ基濃度が30μeq/gより高いと、良好な酸素吸収性能を得ることができない。
【0020】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度を30μeq/g以下にするためには、
1)芳香族ジアミンとジカルボン酸のモル比を調整して重縮合を実施する方法
2)ポリアミド樹脂をカルボン酸と反応させて末端アミノ基を封止する方法
3)ポリアミド樹脂を固相重合する方法
等の方法を実施することが好ましく、これらの方法は、単独で若しくは組み合わせて実施することができる。特に、1)と3)、2)と3)の方法を組み合わせて実施すると、酸素吸収性能やフィルム作製時の成形性がより優れたポリアミド樹脂が得られるため、好ましい。以下、これらの方法について説明する。
【0021】
1)芳香族ジアミンとジカルボン酸のモル比を調整して重縮合を実施する方法においては、ジカルボン酸を芳香族ジアミンに対して過剰に用いることとし、具体的には、芳香族ジアミンとジカルボン酸のモル比(芳香族ジアミン/ジカルボン酸)を0.985〜0.997とすることが好ましく、特に0.988〜0.995とすることが好ましい。該モル比が0.985を下回ると、ポリアミド樹脂の重合度が上昇しづらくなるため、好ましくない。
【0022】
2)ポリアミド樹脂をカルボン酸と反応させて末端アミノ基を封止する方法においては、ポリアミド樹脂の末端アミノ基とカルボン酸を反応させて、末端アミノ基濃度を調整する。用いるカルボン酸には特に制限がないが、カルボン酸無水物が好ましく、具体的には無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水酢酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、などが例示できる。また、ポリアミド樹脂とカルボン酸は、例えば、溶融重合時に添加する方法や、溶融重合によって得られたポリアミド樹脂に対してカルボン酸を添加後、溶融混練する方法によって反応させることが出来、ポリアミド樹脂の重合度を上げるためには溶融混練が好ましい。
【0023】
3)ポリアミド樹脂を固相重合する方法においては、溶融重合によって得られたポリアミド樹脂をさらに固相重合反応に供することによって、末端アミノ基濃度を調整する。固相重合はポリアミド樹脂のペレットを減圧下、加熱することによって進行する。固相重合時の圧力は、100torr以下とすることが好ましく、30torr以下とすることがより好ましい。また、固相重合時の温度は、130℃以上必要で、150℃以上がより好ましく、且つポリアミド樹脂の融点より10℃以上低くすることが好ましく、15℃以上低くすることがより好ましい。固相重合時間は、3時間以上とすることが好ましい。固相重合を実施することによって、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が低下する他、分子量が上昇し、また、粘度を調整することができる。
【0024】
本発明のポリアミド樹脂Aには、結晶性の低いものが好ましく用いられる。具体的には、半結晶化時間が150秒以上の結晶性の低いものや、DSCでの融点測定時に融点ピークが見られないものが好ましい。ポリアミド樹脂Aの半結晶化時間が150秒以上であると、より高い酸素吸収性能が得られる。
【0025】
また、ポリアミド樹脂Aは、ポリオレフィン樹脂との加工性や酸素吸収性能を考慮すると、融点やガラス転移温度(以下、Tgと表記する)が低いものが好ましく用いられる。ポリアミド樹脂Aの融点は、200℃以下が好ましく、さらに190℃以下または融点を持たないものが特に好ましい。Tgは、90℃以下が好ましく、80℃以下が特に好ましい。
【0026】
ポリアミド樹脂Aの酸素透過係数は、0.2〜1.5cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)が好ましく、0.3〜1.0cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)がより好ましい。酸素透過係数が0.2〜1.5cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であると、ポリアミド樹脂Aとポリオレフィン樹脂をブレンドした際により高い酸素吸収性能が得られる。
【0027】
ポリアミド樹脂Aとポリオレフィン樹脂を混合した際、加工性を考慮すると、ポリアミド樹脂Aのメルトフローレート(以下、MFRと表記する)は、200℃で、3〜20g/10分、240℃で、4〜25g/10分のものが好ましく用いられる。この場合、ポリオレフィン樹脂のMFRとポリアミド樹脂AのMFRの差が±20g/10分、好ましくは±10g/10分を示す温度にて、樹脂加工すると、混練状態が良好となり、フィルム、シートとした場合、外観に問題のない加工品を得ることができる。ポリアミド樹脂AのMFRは、例えば分子量を調節して調整できる。分子量を調節する方法としては、重合進行剤としてリン系化合物を添加する方法や、ポリアミド樹脂Aを溶融重合後、固相重合する方法が、好適な方法として例示できる。なお、本明細書でいうMFRは、特に断りがない限り、JIS K7210に準拠した装置を用いて、特定の温度において、荷重2160gの条件下で測定した当該樹脂のMFRであり、「g/10分」の単位で測定温度と共に表記される。
【0028】
芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合で得られたポリアミド樹脂Aは、溶融重合の後、固相重合の2段階を経る方法で合成することが好ましい。ポリアミド樹脂Aの数平均分子量は18000〜27000が好ましく、20000〜26000が特に好ましい。
【0029】
本発明のポリオレフィン樹脂とは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類を、単独で、または組み合わせて使用することができる。これら、ポリオレフィン樹脂の中でも、酸素吸収性能の観点では、酸素透過係数が80〜200cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)が好ましく、この範囲の酸素透過係数を有するポリオレフィン樹脂を使用すると、良好な酸素吸収性能が得られる。酸素吸収性能やフィルム加工性から、ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類やプロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等の各種ポリプロピレン類が特に好ましく用いられる。これらポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、熱可塑性エラストマーを添加してもよい。
【0030】
また、ポリアミド樹脂Aとの混合性を考慮すると、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を添加することが特に好ましい。無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂の添加量は、ポリオレフィン樹脂に対し、1〜30wt%が好ましく、3〜15wt%が特に好ましい。
【0031】
また、本発明のポリオレフィン樹脂には、酸化チタン等の着色顔料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等を添加しても良い。特に、製造中に発生した端材をリサイクルし、再加工するためには、酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0032】
本発明において使用される遷移金属触媒としては、第一遷移元素、例えばFe、Mn、Co、Cu、の化合物が挙げられる。また、遷移金属の有機酸塩、塩化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩などの単独、または、それらの混合物等も遷移金属触媒の一例として挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸などC2〜C22の脂肪族アルキル酸の塩、あるいは、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘキサハイドロフタル酸、など2塩基酸の塩、ブタンテトラカルボン酸の塩、安息香酸、トルイック酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸など芳香族カルボン酸塩の単独、または、混合物が挙げられる。遷移金属触媒の中でも、Coの有機酸塩が酸素吸収性の観点から、好ましく、安全性や加工性からステアリン酸Coが特に好ましい。
【0033】
遷移金属触媒はポリアミド樹脂Aに添加し、その後、ポリオレフィン樹脂と混合することが好ましい。また、遷移金属触媒は、ポリアミド樹脂Aに対する該触媒中の全遷移金属の濃度が、10ppm〜5000ppm、好ましくは50ppm〜3000ppmとなるように添加することが好ましい。この場合、添加量が上記の範囲を外れる場合と比較して、ポリアミド樹脂Aの酸素吸収性能を高めることができるとともに、粘度の低下による樹脂加工性の悪化を防止することが出来る。
【0034】
本発明の酸素吸収樹脂組成物を製造する別の方法としては、ポリオレフィン樹脂及び遷移金属触媒を含むマスターバッチと、ポリアミド樹脂とを溶融混練する酸素吸収樹脂組成物の製造方法が好ましく挙げられる。
遷移金属触媒はポリオレフィン樹脂に混練し、マスターバッチを製造し、その後、ポリアミド樹脂Aと溶融混合し、酸素吸収樹脂組成物とする。遷移金属触媒は、ポリオレフィン樹脂に対する該触媒中の全遷移金属の濃度が、好ましくは200ppm〜5000ppm、より好ましくは300ppm〜3000ppmとなるように添加する。この場合、添加量が上記の範囲を外れる場合と比較して、ポリアミド樹脂Aの酸素吸収性能を高めることができる。また、5000ppmを超える場合、マスターバッチを製造することが困難となる場合があり、均一な性状を有するものを製造できなくなる場合がある。もし、遷移金属触媒をポリアミド樹脂Aに添加した場合には、ポリアミド樹脂Aの粘度低下による樹脂加工性の悪化が生じる。
【0035】
酸素吸収樹脂組成物中の遷移金属触媒とポリアミド樹脂Aの合計含有量は、15〜60重量%であり、17〜60重量%が好ましく、20〜60重量%が更に好ましく、25〜50重量%が特に好ましい。酸素吸収樹脂組成物中の遷移金属触媒を含んだポリアミド樹脂Aの含有量が、15重量%より下回ったり、60重量%を超えた場合は、酸素吸収能力が低くなる。また、60重量%を超えると、ポリアミド樹脂Aの酸化による樹脂劣化が生じ、強度低下等の問題が発生する。
本発明のマスターバッチとポリアミド樹脂Aを溶融混練する際に、ポリオレフィン樹脂を同時に加えることで、ポリアミド樹脂Aの含有量及び遷移金属濃度を調整することもできる。
【0036】
本発明で得られたポリアミド樹脂Aに安定化剤等を適宜添加してもよい。特に、リン化合物は、安定化剤として好ましく用いられ、具体的には、ジ亜リン酸塩が好ましい。リン化合物は、ポリアミド樹脂Aが安定し、酸素吸収性能に影響するため、200ppm以下が好ましく、特に、100ppm以下が好ましい。
【0037】
また、本発明の酸素吸収樹脂組成物は、フィルム状、またはシート状として、(1)ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層、(2)酸素吸収層、(3)エポキシ樹脂硬化物層並びに(4)外層の少なくとも4層を積層してなる酸素吸収多層体として用いることが好ましい。
【0038】
この場合、シーラント層に用いるポリオレフィン樹脂には、相溶性を考慮して、酸素吸収樹脂組成物に用いたポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることが好ましい。
【0039】
酸素吸収層の厚みは、特に制限はないが、5〜100μmが好ましく、10〜50μmが特に好ましい。この場合、厚みが上記範囲を外れる場合に比べて、酸素吸収樹脂組成物が酸素を吸収する性能をより高めることができるとともに加工性や経済性が損なわれることを防止することができる。また、シーラント層の厚みは、シーラント層が酸素吸収層との隔離層となるため、少ない方が好ましいが、特に、2〜50μmが好ましく、5〜30μmが特に好ましい。この場合、厚みが上記範囲を外れる場合に比べて、酸素吸収樹脂組成物の酸素を吸収する速度をより高めることができるとともに加工性が損なわれることを防止することができる。フィルム、シートに加工する際、加工性を考慮すると、シーラント層と酸素吸収層の厚み比が、1:0.5〜1:3にあることが好ましく、1:1〜1:2.5が特に好ましい。
【0040】
本発明の酸素吸収多層体において、エポキシ樹脂硬化物層はエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物からなるものであり、該エポキシ樹脂硬化物中に上記(1)式の骨格構造が40重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有されることを特徴としている。エポキシ樹脂硬化物中に上記(1)式の骨格構造が高いレベルで含有されることにより、高いガスバリア性が発現する。本発明によれば、酸素透過係数1.0mL・mm/(m・day・MPa)(23℃・60%RH)以下の酸素バリア性を有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。以下に、エポキシ樹脂組成物について説明する。
【0041】
本発明におけるエポキシ樹脂は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物または複素環式化合物のいずれであってもよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂がより好ましい。具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基および/またはグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0042】
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を使用することが特に好ましい。
【0043】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0044】
前記エポキシ樹脂は、アルコール類、フェノール類またはアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−およびテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0045】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましい。
【0046】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、または複素環式化合物のいずれであってもよく、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物、またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、ラミネートフィルムの使用用途およびその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
具体的には、ポリアミン類としてはエチレジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、これらを原料とするエポキシ樹脂、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロルヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、および一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0047】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多価フェノール、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
また、酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらのカルボン酸などが使用できる。
【0048】
高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。
具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との反応生成物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応生成物、エピクロロヒドリンとの反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
【0049】
高いガスバリア性および良好な接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(X)および(Y)の反応生成物、または(X)、(Y)および(Z)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
(X)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(Y)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(Z)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0050】
前記(Y)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0051】
また、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などの炭素数1〜8の一価のカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などを上記多官能性化合物と併用して開始ポリアミンと反応させてもよい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性および良好な接着強度が得られる。
【0052】
前記(X)および(Y)、または(X)、(Y)および(Z)の反応モル比は、(X)に含有されるアミノ基の数に対する(Y)に含有される反応性官能基の数の比、または(X)に含有されるアミノ基の数に対する(Y)および(Z)に含有される反応性官能基の合計数の比として、0.3〜0.97の範囲が好ましい。0.3より少ない比率では、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成せず、高いレベルのガスバリア性および接着性が発現しない。また、エポキシ樹脂硬化剤中に残存する揮発性分子の割合が高くなり、得られる硬化物からの臭気発生の原因となる。また、エポキシ基とアミノ基の反応により生成する水酸基の硬化反応物中における割合が高くなるため、高湿度環境下での酸素バリア性が著しく低下する要因となる。一方、0.97より高い範囲ではエポキシ樹脂と反応するアミノ基の量が少なくなり優れた耐衝撃性や耐熱性などが発現せず、また各種有機溶剤あるいは水に対する溶解性も低下する。得られる硬化物の高いガスバリア性、高い接着性、臭気発生の抑制および高湿度環境下での高い酸素バリア性を特に考慮する場合には、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.6〜0.97の範囲がより好ましい。より高いレベルの接着性の発現を考慮した場合には、本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤中に、該硬化剤の全重量を基準として、少なくとも6重量%のアミド基が含有されることが好ましい。
【0053】
基材に対する高い密着性の発現を考慮した場合には、例えばエポキシ樹脂硬化剤であるメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンと、該ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物の反応比を、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比で0.6〜0.97、好ましくは0.8〜0.97、特に好ましくは0.85〜0.97の範囲とし、反応生成物であるオリゴマーの平均分子量を高くしたエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。
より好ましいエポキシ樹脂硬化剤は、メタキシリレンジアミンと、アクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体との反応生成物である。ここで、メタキシリレンジアミンに対するアクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体の反応モル比は0.8〜0.97の範囲が好ましい。
【0054】
本発明におけるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.5〜5.0の範囲である。0.5より少ない範囲では残存する未反応のエポキシ基が、得られる硬化物のガスバリア性を低下させる原因となり、また5.0より多い範囲では残存する未反応のアミノ基が、得られる硬化物の耐湿熱性を低下させる原因となる。得られる硬化物のガスバリア性および耐湿熱性を特に考慮する場合には、0.8〜3.0の範囲がより好ましく、0.8〜2.0の範囲が特に好ましい。
また、得られる硬化物の高湿度環境下での高い酸素バリア性の発現を考慮した場合には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素数の比が0.8〜1.4の範囲が好ましい。
一方、熱成形容器のように熱成形する場合には、1.6〜5.0の範囲が好ましく、2.0〜4.5の範囲がより好ましい。
【0055】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリアクリル系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を混合してもよい。
【0056】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物には各種材料に塗布時の表面の湿潤を助けるために、必要に応じてシリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK347、BYK348、BYK354、BYK380、BYK381などがある。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0057】
また、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物層のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を添加しても良い。
フィルムの透明性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0058】
さらに、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物層の基材に対する接着性を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。カップリング剤としては、一般に市販されているものが使用できるが、中でもチッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手しうるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[[3−トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等の本発明のガスバリア性樹脂組成物と反応しうる有機官能基を有するものが望ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。なお、基材がシリカ、アルミナなどの各種無機化合物を蒸着させたフィルムの場合は、シランカップリング剤がより好ましい。
【0059】
本発明における外層としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N−MXD6)などのポリアミド系フィルム;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;カートンなどの紙類;アルミや銅などの金属箔が挙げられる。また、これらの基材として用いられる各種材料にポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂やポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物系樹脂、アクリル系樹脂などの各種ポリマーによるコーティングを施したフィルム;シリカ、アルミナ、アルミなどの各種無機化合物あるいは金属を蒸着させたフィルム;無機フィラーなどを分散させたフィルム;酸素捕捉機能を付与したフィルムなどが使用できる。
【0060】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化物は好適な基材への密着性能に加え、高いガスバリア性を有する事を特徴としており、低湿度条件から高湿度条件に至る広い範囲において高いガスバリア性を示す。このことから、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物を使用したガスバリアフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。また、無機蒸着フィルムを外層とした際、エポキシ樹脂硬化物を使用することで、不意の折り曲げによるガスバリア性の著しい劣化を抑制し高いレベルのガスバリア性を維持することもできる。
【0061】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリビニルアルコールコートフィルム、無機フィラーを分散させたポリビニルアルコールコートフィルム、メタキシレンアジパミド(N−MXD6)フィルムなどのガスバリア性フィルムは、高湿度条件下では、そのガスバリア性が低下するという欠点があるが、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物を使用し、これらのガスバリア性フィルムを外層として作製することにより、この欠点を解消することができる。
【0062】
さらに、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物は、靭性、耐湿熱性に優れることから、耐衝撃性、耐煮沸処理性、耐レトルト処理性などに優れたガスバリアフィルムが得られる。
【0063】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の塗布液を調製する際に塗布液の泡立ちを抑えるために、塗布液の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった消泡剤を添加しても良い。適切な消泡剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK019、BYK052、BYK065、BYK066N、BYK067N、BYK070、BYK080、などがあげられるが、特にBYK065が好ましい。また、これら消泡剤を添加する場合には、塗布液中のエポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜3.0重量%の範囲が好ましく、0.02重量%〜2.0重量%がより好ましい。
【0064】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物を各種材料等に塗布、乾燥した後のエポキシ樹脂硬化物層の厚さは0.1〜30μm、好ましくは0.2〜10μmが実用的である。0.1μm未満では十分なガスバリア性および接着性が発揮し難く、一方50μmを超えると乾燥性が不良となるばかりでなく、均一な厚みのエポキシ樹脂硬化物層を形成することが困難になる。
【0065】
酸素吸収多層体とする際、加工性を考慮すると、エポキシ樹脂硬化物層と酸素吸収樹脂組成物を含有する酸素吸収層間にポリオレフィン樹脂を含有する中間層を介在することが好ましい。この中間層の厚みは、加工性から、シーラント層厚みとほぼ同一とすることが好ましい。この場合、加工によるバラツキを考慮すると、厚み比が±10%以内であれば、同一とする。
【0066】
得られた酸素吸収多層体は、紙基材を外層の外側に積層して、酸素吸収紙容器として用いることができる。紙基材と積層して紙容器の加工性は、ガスバリア層の内側部が60μm以下とすることが好ましく、50μm以下が特に好ましい。ガスバリア層より内部の厚みが大きくなると、紙基材を積層し、容器形状に成形する際、容器への加工性に問題が生じる。
【0067】
得られた酸素吸収多層体は、フィルムとして作製し、袋状、蓋材に加工して用いることができる。また、得られた酸素吸収多層体は、シートとして作製し、トレイ、カップに成形することができる。また、得られた袋状容器やカップ状容器は、80〜100℃のボイル殺菌処理、100〜135℃のセミレトルト殺菌処理、レトルト殺菌処理、ハイレトルト殺菌処理を行うことができる。また、袋状容器に食品等の内容物を充填し、開封口を設け、電子レンジ加熱調理時にその開封口から蒸気を放出する、電子レンジ調理対応の易通蒸口付パウチに好ましく用いることができる。
【0068】
本酸素吸収樹脂組成物は、被保存物の水分の有無によらず、酸素吸収することができるため、粉末調味料、粉末コーヒー、コーヒー豆、米、茶、豆、おかき、せんべい等の乾燥食品や医薬品、ビタミン剤等の健康食品に好適に使用することができる。その他、本発明にて得られた、酸素吸収樹脂組成物は従来の鉄粉を使用した酸素吸収樹脂組成物と異なり、鉄の存在のため保存できないアルコール飲料や炭酸飲料に好適に用いることができる。
【0069】
その他、被保存物として、ジュース、コーヒー等の液体飲料、粥、精米、米飯、赤飯、もち等の米加工類、スープ、シチュー、カレー等の調理食品、フルーツ、羊羹、プリン、小豆、餡、ゼリー、ケーキ、饅頭等の菓子類、ツナ、魚貝等の水産製品、チーズ、バター等の乳加工品、肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品、にんじん、じゃがいも、アスパラ、しいたけ、大根等の野菜類、卵を挙げることができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、本実施例及び比較例において、各種物性値は以下の測定方法及び測定装置により測定した。
【0071】
(Tgの測定方法)
Tgは、JIS K7122に準拠して測定した。測定装置は(株)島津製作所製「DSC−60」を使用した。
【0072】
(融点の測定方法)
融点は、ISO11357に準拠して、DSC融解ピーク温度を測定した。測定装置は(株)島津製作所製「DSC−60」を使用した。
【0073】
(数平均分子量の測定方法)
数平均分子量は、GPC−LALLSにて測定した。測定装置は昭和電工(株)製「Shodex GPC−2001」を使用した。
【0074】
(MFRの測定方法)
各樹脂のMFRは、JIS K7210に準拠した装置((株)東洋精機製作所製「メルトインデックサ」)を用いて、特定の温度において、荷重2160gの条件下で測定し、温度と共にその値を記載した(単位:「g/10分」)。なお、JIS K7210に準拠してMFRを測定した場合はその旨、特に記載した。
【0075】
(酸素透過係数の測定方法)
酸素透過係数は、MOCON社製「OX−TRAN−2/21」を使用し、23℃・60%RH、セル面積50cmの条件下で測定した。
【0076】
(末端アミノ基濃度の測定方法)
試料0.5gを30mLのフェノール/エタノール=4/1(体積比)に溶解させ、メタノール5mL加え、滴定液として0.01規定の塩酸にて自動滴定装置(平沼製作所製「COM−2000」)にて滴定した。試料を加えず滴定した同様の操作をブランクとし、下記式より末端アミノ基濃度を算出した。
末端アミノ基濃度(μeq/g)=(A−B)×f×10/C
(A;滴定量(mL)、B;ブランク滴定量(mL)、f;規定液のファクター、C;試料量(g))。
【0077】
(末端カルボキシル基濃度の測定方法)
試料0.5gを30mLのベンジルアルコールに溶解させ、メタノール10mL加え、滴定液として0.01規定の水酸化ナトリウム溶液にて自動滴定装置(平沼製作所製「COM−2000」)にて滴定した。試料を加えず滴定した同様の操作をブランクとし、下記式より末端カルボキシル基濃度を算出した。
末端カルボキシル基濃度(μeq/g)=(A−B)×f×10/C
(A;滴定量(mL)、B;ブランク滴定量(mL)、f;規定液のファクター、C;試料量(g))。
【0078】
(半結晶化時間の測定方法)
各温度にて、ペレットを溶融させ、各温度にて樹脂を結晶化させた場合、すべてが結晶化する時間を結晶化時間といい、結晶化50%到達時間を半結晶化時間という。半結晶化時間の測定は、脱偏光強度法により行った。即ち、溶融したサンプルペレットに光を照射し、サンプルペレットの結晶化とともに、光の透過量が減少して安定した時点を結晶化とし、その時間を結晶化時間とし、光の透過量が50%に到達した時間を半結晶化時間とした。なお、結晶化時間及び半結晶化時間は、測定温度で異なるが、以下の記載においては、各温度の半結晶化時間の内、最も半結晶化時間の短いものを「半結晶化時間」として記載した。また、結晶化時間及び半結晶化時間の測定にはコタキ製「ポリマー結晶化速度測定装置MK−701型」を使用した。
【0079】
(ポリアミド樹脂の溶融重合による合成条件)
反応缶内でジカルボン酸を170℃にて加熱し、溶融した後、内容物を攪拌しながら、芳香族ジアミンをジカルボン酸とのモル比が約1:1となるように徐々に連続的に滴下し、かつ温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃に昇温し、反応を継続した。反応終了後、反応缶内を窒素にて微加圧し、穴を有するダイヘッドからストランドを押出し、ペレタイザーでペレット化した。
【0080】
(ポリアミド樹脂の固相重合による合成条件)
上記の方法で溶融重合して得られたペレットを加熱装置付き回転式タンブラーに仕込み、回転させながらタンブラー内を1torr以下まで減圧した後、窒素で常圧にする操作を3回行った。その後、タンブラーを回転させながら装置内を30torr以下としながら加熱し、装置内が150℃以上になるよう調整し、その温度で所定時間、反応させた。その後、60℃まで冷却し、ポリアミド樹脂を得た。
【0081】
(エポキシ樹脂硬化剤)
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が70重量%になるように所定量のメタノールを加え、エポキシ樹脂硬化剤aを得た。エポキシ樹脂硬化剤中のアミド基の含有率は21重量%であった。
【0082】
(シール強度測定法)
JIS Z1526に準拠して、引張試験機にて測定した。
【0083】
(実施例1)
メタキシリレンジアミン:セバシン酸:アジピン酸を0.992:0.4:0.6の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド1と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は160℃、重合時間は4時間とした。ポリアミド1は、Tg73℃、融点184℃、半結晶化時間は2000秒以上、末端アミノ基濃度17.5μeq/g、末端カルボキシル基濃度91.6μeq/g、数平均分子量は23500、240℃のMFRは11.0g/10分であった。また、得られたポリアミド1単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ、0.34cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0084】
ポリアミド1に遷移金属触媒として、ステアリン酸コバルトをコバルト濃度400ppmとなるよう二軸押出機にて、溶融したポリアミド1にサイドフィードにて添加した。さらに、得られたポリアミドとステアリン酸コバルトの混合物(以下、ステアリン酸コバルト含有ポリアミド1と表記する)に、ポリオレフィン樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(製品名;日本ポリエチレン(株)製「カーネルKF380」、MFR4.0g/10分(JIS K7210に準拠して測定)、240℃のMFR8.7g/10分、250℃のMFR10.0g/10分、以下LLDPEと表記する)を、ステアリン酸コバルト含有ポリアミド1:LLDPE=35:65の重量比で、240℃にて溶融混練し酸素吸収樹脂組成物を得た。次いで、該酸素吸収樹脂組成物を用いて、スキン層をLLDPEとした、2種3層フィルム1(厚み;10μm/20μm/10μm)を、幅800mmで、120m/分で、片面をコロナ放電処理して、作製した。得られたフィルムの外観は良好で、HAZEは14%であった。
【0085】
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(製品名;三菱ガス化学(株)製「TETRAD−X」)57重量部、エポキシ樹脂硬化剤a182重量部、メタノール253.6重量部及び酢酸エチル34.2重量部を混合し、固形分濃度35重量%の溶液を作製した。そこにアクリル系湿潤剤(製品名;ビック・ケミー社製「BYK381」)を0.4重量部、シリコン系消泡剤(製品名;ビック・ケミー社製「BYK065」)を0.1重量部加えよく攪拌し、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素の当量比(活性水素/エポキシ基)として1.2の塗布液(エポキシ樹脂組成物)を得た。外層として厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(製品名;東洋紡績(株)製「N1201」)を用い、外層のコロナ処理面に塗布液を塗布し、90℃で5秒乾燥させた後、フィルム1を積層し、LLDPE/酸素吸収層/LLDPE/エポキシ樹脂硬化物層/外層からなる酸素吸収多層体1を得た。エポキシ樹脂硬化物層中の(1)式に示される骨格構造の含有率は62.0重量%であった。
【0086】
得られた酸素吸収多層体1を13cm×18cmの3方袋を作成し、パイナップル60gとシラップ液120gをヘッドスペース空気量20ccとなるように充填、密封し、85℃、90分の加熱殺菌処理を行い、加熱処理直後のヘッドスペース酸素濃度を測定した。その後、40℃、2ヶ月間保存した時のパイナップルの色調と3方袋の1辺のシール強度を測定した。結果を表2に示す。
【0087】
(実施例2)
溶融混練時の重量比を、ステアリン酸コバルト含有ポリアミド1:LLDPE=55:45とした以外は実施例1と同様に酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0088】
(実施例3)
溶融混練時の重量比を、ステアリン酸コバルト含有ポリアミド1:LLDPE=25:75とした以外は実施例1と同様に酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0089】
(実施例4)
溶融混練時の重量比を、ステアリン酸コバルト含有ポリアミド1:LLDPE=17:83とした以外は実施例1と同様に酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0090】
(実施例5)
メタキシリレンジアミンとアジピン酸を0.991:1の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド2と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は205℃、重合時間は4時間とした。このポリアミド2は、Tg84℃、融点237℃、半結晶化時間は25秒、末端アミノ基濃度19.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度68.6μeq/g、数平均分子量は23000であった。また、240℃では、融点付近であるため、MFRが測定できず、250℃のMFRを測定し、250℃におけるMFRは、14.4g/10分であった。得られたポリアミド2単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、0.09cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0091】
以後、溶融混練時の温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド2へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0092】
(実施例6)
メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを7:3で混合し、これらのジアミンとアジピン酸を1:1の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合のみを行ってポリアミド樹脂を合成した後、無水フタル酸0.2wt%添加し、二軸押出機にて285℃で溶融混練し、末端アミノ基を封止した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド3と表記する)。ただし、滴下時間は2時間、溶融重合においてメタキシリレンジアミン滴下終了後の重合温度は277℃とし、反応時間は30分とした。このポリアミド3は、Tg87℃、融点259℃、半結晶化時間は18秒、末端アミノ基濃度25.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度65.6μeq/g、数平均分子量は18500であった。また、260℃では、融点付近であるため、MFRが測定できず、260℃のMFRを測定し、270℃におけるMFRは、29.8g/10分であった。得られたポリアミド3単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、0.13cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0093】
以後、溶融混練時の温度を270℃とした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド3へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0094】
(実施例7)
メタキシリレンジアミンとアジピン酸とイソフタル酸とを、0.991:0.8:0.2の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド4と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は215℃、重合時間は4時間とした。このポリアミド4は、Tg92℃、融点230℃、半結晶化時間は250秒、末端アミノ基濃度14.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度67.2μeq/g、数平均分子量は23000であった。240℃では、融点付近であるため、MFRが測定できず、250℃のMFRを測定し、250℃におけるMFRは、17.4g/10分であった。得られたポリアミド4単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、0.07cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0095】
以後、溶融混練時の温度を250℃とした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド4へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0096】
(実施例8)
メタキシリレンジアミンとセバシン酸を0.994:1の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合のみを行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド5と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間とした。このポリアミド5は、Tg61℃、融点190℃、半結晶化時間は150秒、末端アミノ基濃度24.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度57.2μeq/g、数平均分子量は17200、240℃のMFRは65.4g/10分であった。得られたポリアミド5単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、1.58cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0097】
以後、実施例1と同様にして、ポリアミド5へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0098】
(実施例9)
メタキシリレンジアミンとアジピン酸とイソフタル酸とを、0.998:0.95:0.05の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド6と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は215℃、重合時間は20時間とした。このポリアミド6は、Tg92℃、融点230℃、半結晶化時間は250秒、末端アミノ基濃度28.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度61.8μeq/g、数平均分子量は24200、240℃のMFRは10.1g/10分であった。得られたポリアミド5単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、0.08cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0099】
以後、実施例1と同様にして、ポリアミド6へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0100】
(実施例10)
メタキシリレンジアミン:セバシン酸:アジピン酸を0.998:0.6:0.4の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は150℃、重合時間は8時間とした。その後、無水フタル酸0.2wt%添加し、二軸押出機にて250℃で溶融混練し、末端アミノ基を封止した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド7と表記する)。このポリアミド7は、Tg70℃、融点157℃、半結晶化時間は18秒、末端アミノ基濃度15.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度51.6μeq/g、数平均分子量は23000、240℃のMFRは11.4g/10分であった。得られたポリアミド5単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、0.74cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0101】
以後、実施例1と同様にして、ポリアミド7へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0102】
(実施例11)
メタキシリレンジアミン:セバシン酸:アジピン酸を0.992:0.3:0.7の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド8と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は160℃、重合時間は4時間とした。ポリアミド8は、Tg78℃、融点194℃、半結晶化時間は2000秒以上、末端アミノ基濃度19.5μeq/g、末端カルボキシル基濃度81.2μeq/g、数平均分子量は24500、240℃のMFRは10.5g/10分であった。また、得られたポリアミド8単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ、0.21cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0103】
以後、実施例1と同様にして、ポリアミド8へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0104】
(実施例12)
メタキシリレンジアミン:セバシン酸:アジピン酸を0.992:0.7:0.3の割合のモル比で使用し、前記合成条件にて溶融重合及び固相重合を行ってポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド9と表記する)。なお、滴下時間は2時間、溶融重合の反応時間は1時間、固相重合時の装置内圧力は1torr以下、重合温度は160℃、重合時間は4時間とした。ポリアミド9は、Tg65℃、融点170℃、半結晶化時間は2000秒以上、末端アミノ基濃度19.2μeq/g、末端カルボキシル基濃度80.0μeq/g、数平均分子量は25200、240℃のMFRは10.1g/10分であった。また、得られたポリアミド9単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ、0.68cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0105】
以後、実施例1と同様にして、ポリアミド9へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0106】
(実施例13)
LLDPEにステアリン酸コバルトをコバルト濃度600ppmとなるよう二軸押出機にて、溶融したLLDPEにサイドフィードにて添加した。さらに得られたLLDPEとステアリン酸コバルトの混合物に、ポリアミド1を、ポリアミド1:ステアリン酸コバルト含有LLDPE=35:65の重量比で、240℃にて溶融混練し、酸素吸収樹脂ペレットを得た。
【0107】
以後、実施例1と同様にして、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0108】
(比較例1)
溶融混練時の重量比をステアリン酸コバルト含有ポリアミド1:LLDPE=80:20とした以外は実施例1と同様にフィルムを製造して、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0109】
(比較例2)
溶融混練時の重量比をステアリン酸コバルト含有ポリアミド1:LLDPE=10:90とした以外は、実施例1と同様にフィルムを製造して、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0110】
(比較例3)
メタキシリレンジアミンとアジピン酸を0.998:1の割合のモル比で使用し、固相重合を行わなかった点以外は実施例5と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド10と表記する)。このポリアミド10は、Tg78℃、融点237℃、半結晶化時間は27秒、末端アミノ基濃度39.1μeq/g、末端カルボキシル基濃度70.2μeq/g、数平均分子量は17800であった。また、240℃では、融点付近であるため、MFRが測定できず、250℃のMFRを測定し、250℃におけるMFRは51.0g/10分であった。また、得られたポリアミド10単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ、0.09cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0111】
以後、実施例5と同様にして、ポリアミド10へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0112】
(比較例4)
メタキシリレンジアミンとアジピン酸を0.999:1の割合のモル比で使用し、固相重合の重合時間を2時間とした以外は実施例5と同様にして、ポリアミド樹脂を合成した(以下、当該ポリアミド樹脂をポリアミド11と表記する)。このポリアミド11は、Tg78℃、融点237℃、半結晶化時間は25秒、末端アミノ基濃度34.8μeq/g、末端カルボキシル基濃度58.6μeq/g、数平均分子量は21800であった。また、240℃では、融点付近であるため、MFRが測定できず、250℃のMFRを測定し、250℃におけるMFRは、18.9g/10分であった。得られたポリアミド11単体で未延伸フィルムを作製し、その酸素透過係数を求めたところ酸素透過係数は、0.09cc・mm/(m・日・atm)(23℃・60%RH)であった。これらの結果を表1に示した。
【0113】
以後、実施例5と同様にして、ポリアミド11へのステアリン酸コバルトの添加、LLDPEとの溶融混練等を行い、酸素吸収多層体を製造して、パイナップルの充填、及び加熱処理し、加熱処理直後の酸素濃度、1ヶ月後の風味及び袋のシール強度を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
実施例1〜13から明らかなように、本発明の酸素吸収多層体は、良好な酸素吸収性能を示し、かつ食品の風味を良好に保持し、酸素吸収後のフィルムのシール強度を保持した酸素吸収多層体であった。
【0117】
これに対し、酸素吸収樹脂組成物中のポリアミド樹脂Aの含有量が60重量%を超過した比較例1においては、フィルムのシール強度が顕著に悪化した。ポリアミド樹脂Aの含有量が15重量%未満であった比較例2においては、酸素吸収性能が不充分であった。特に、比較例1〜2と実施例1〜4との比較からも明らかなように、酸素吸収樹脂組成物中のポリアミド樹脂Aの含有量が多ければ、必ずしも良好な酸素吸収性能が得られるわけではなかった。
【0118】
一方、実施例5と比較して、アジピン酸に対するメタキシリレンジアミンのモル比を大きくするとともに、固相重合を行わなかった比較例3や、アジピン酸に対するメタキシリレンジアミンのモル比を大きくするとともに、固相重合時間を短縮した比較例4においては、得られたポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が30μeq/gを超過し、良好な酸素吸収性能を得られなかった。また、比較例3においてはフィルムの外観も悪化した。
【0119】
(実施例14)
実施例1の塗布液(エポキシ樹脂組成物)にシランカップリング剤(製品名;チッソ(株)製「サイラエースS330(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)」)を4.75重量部加えよく攪拌、塗布液(エポキシ樹脂組成物)とし、厚み12μmのシリカ蒸着PETフィルム(製品名;三菱樹脂(株)製「テックバリアL」)に塗布液2μmをアンカーコートし、85℃、1秒の乾燥後、実施例1で得た2種3層フィルム1を用いて低密度ポリエチレン(製品名;三井化学(株)製「ミラソン18SP」)による押し出しラミネートにて、2種3層フィルム1を積層し、シリカ蒸着PETフィルム/エポキシ樹脂硬化物/低密度ポリエチレン(20)/LLDPE(10)/酸素吸収樹脂組成物(20)/LLDPE(10)の酸素吸収多層体を得た。この酸素吸収多層体に、大根の漬物を充填し、80℃の加熱処理の後、23℃下に保存し、3ヶ月後の風味を調査した。大根の風味が良好に保持していることを確認した。
【0120】
(実施例15)
LLDPEに代えてエチレン−プロピレンブロック共重合体(製品名;日本ポリプロ(株)製「ノバテック FG3DC」、230℃のMFR9.5g/10分、240℃のMFR10.6g/10分、以下PPと表記する)を使用した以外は実施例1と同様にして酸素吸収樹脂組成物を得た。次いで、該酸素吸収樹脂組成物をコア層とし、スキン層をLLDPEに代えてPPとした以外は実施例1と同様にして、2種3層フィルム2(厚み;15μm/30μm/15μm)を作製した。得られたフィルムのHAZEは24%であった。
【0121】
次に、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(製品名;三菱ガス化学(株)製「TETRAD−X」)22重量部、エポキシ樹脂硬化剤a236重量部、メタノール242.1重量部及び酢酸エチル34.8重量部を混合し、固形分濃度35重量%の溶液を作製した。そこにアクリル系湿潤剤(製品名;ビック・ケミー社製「BYK381」)を0.4重量部、シリコン系消泡剤(製品名;ビック・ケミー社製「BYK065」)を0.1重量部加えよく攪拌し、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素の当量比(活性水素/エポキシ基)として4.0の塗布液(エポキシ樹脂組成物)を得た。エポキシ樹脂硬化物中の(1)式に示される骨格構造の含有量は63.5重量%であった。
【0122】
コロナ処理を施した無延伸ポリプロピレンシート800μmのコロナ処理面に、エポキシ樹脂組成物を8μm塗布し、90℃、10秒乾燥した後、2種3層フィルム2を積層し、酸素吸収多層体を得た。得た多層体を70ccカップ(絞り比2.7)に熱成形し、カップに抹茶プリンを充填し、アルミナ蒸着PETフィルム(製品名;凸版印刷(株)製「GL−AEH」、12)/接着剤(3)/ナイロン(製品名;東洋紡績(株)製「N1202」、15)/接着剤(3)/PP(40)のフィルムを蓋材としてヒートシールし、充填密封した。密封容器を115℃、40分の加熱処理を行い、23℃、3ヶ月保存した時の、抹茶プリンの色調を観察した。抹茶プリンの色調は、良好に保持されていた。
【0123】
本発明は、酸素吸収層に特定のポリアミド樹脂、遷移金属触媒及びポリオレフィン樹脂を、特定の割合でブレンドし、外層との積層に特定のエポキシ樹脂硬化物を使用することにより、酸素吸収性能に優れ、保存後の樹脂強度を保持し、さらに、加工性に優れ、様々な容器や用途に適用できる酸素吸収多層体であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリオレフィン樹脂を含有するシーラント層、B)ポリオレフィン樹脂、遷移金属触媒及びポリアミド樹脂を含有する酸素吸収樹脂組成物からなる酸素吸収層、C)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物層並びに、D)外層の少なくとも4層がこの順に積層されてなる酸素吸収多層体であって、該ポリアミド樹脂が芳香族ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られる末端アミノ基濃度が30μeq/g以下のポリアミド樹脂であり、該酸素吸収層中の該遷移金属触媒と該ポリアミド樹脂の合計含有量が酸素吸収層の総量に対して15〜60重量%であり、かつ該エポキシ樹脂硬化物層が(1)式に示される骨格構造をエポキシ樹脂硬化物層の総量に対して40重量%以上含有することを特徴とする酸素吸収多層体。
【化1】

【請求項2】
上記ジカルボン酸に、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸又はこれらの混合物を用いることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収多層体。
【請求項3】
上記芳香族ジアミンに、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン又はこれらの混合物を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の酸素吸収多層体。
【請求項4】
上記遷移金属触媒がステアリン酸コバルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸素吸収多層体。
【請求項5】
上記ポリアミド樹脂を得る際のジカルボン酸のモル比を、セバシン酸:アジピン酸=0.3〜0.7:0.7〜0.3とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の酸素吸収多層体。
【請求項6】
上記ポリアミド樹脂を得る際のジカルボン酸のモル比を、アジピン酸:イソフタル酸=0.7〜0.97:0.3〜0.03とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の酸素吸収多層体。

【公開番号】特開2011−131583(P2011−131583A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253701(P2010−253701)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】