説明

酸素濃縮装置およびこの使用方法

【課題】 製品タンクに貯められた濃縮酸素からの酸素を患者に対して衛生的に供給することができ、かつまた適度に加温することで患者への負担を低減することのできる酸素濃縮装置およびこの使用方法の提供。
【解決手段】 原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段(105a)と、圧縮空気中の酸素以外の元素を触媒で吸着し濃縮酸素を発生する吸着手段(108a、108b)と、触媒を浄化する減圧空気を送る減圧手段(105b)と、接続状態を切り換える切換手段(107a、107b)と、濃縮酸素を一時的に貯める製品タンク(111)と、製品タンクの濃縮酸素による酸素を患者に供給するカニューレ(14)を含む酸素供給具と、圧縮手段の運転時に発生する排熱で酸素を加温する加温手段(2、3)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の酸素濃縮装置に係り、在宅酸素療法患者にとって使い易く、特に患者への負担を低減した酸素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の酸素を透過させ、窒素を選択的に吸着するゼオライトを触媒の吸着剤として用いることで酸素を生成する吸着法による酸素濃縮装置が医療用として各種の機種が実用化されている。
【0003】
この酸素濃縮装置によれば、空気取入口から取り込んだ原料空気を圧縮手段であるコンプレッサにより圧縮して圧縮空気を発生し、この圧縮時に温度上昇した圧縮空気を熱交換器で冷やし、この熱交換器を上記の圧縮手段とともに外気空気を吹付ける冷却手段で冷却し、触媒を内蔵した一対の吸着筒に対して圧縮空気を交互に供給することで酸素を生成し、吸着筒内で生成された酸素を製品タンクに貯めておき、減圧弁や流量設定器により製品タンクから所定流量の濃縮酸素を供給可能にして、鼻カニューラを含む酸素供給具を介して患者に酸素を供給するように構成されている。
【0004】
このように構成される酸素濃縮装置を、例えばAC電源(商用電源)の備わっている場所にしておけば、例えば肺機能が低下した在宅酸素療法患者は、就寝中でも安全に酸素を吸うことができる結果、安眠できることとなる。
【0005】
また、就寝中も使用する場合には、騒音発生が極めて少ない酸素濃縮装置が好ましく、可能であれば室内の空調設備から発生する騒音レベル以下となる酸素濃縮装置が望ましいことになる。また、患者が外出先に持ち出せるようにして、慢性気管支炎等の呼吸器疾患の患者の治療法として有効となる酸素吸入法に使用される酸素濃縮装置は、一般的には可搬型ではない。そこで、患者がやむなく外出する場合には、酸素ボンベを搭載したカートを押しながら、その酸素ボンベから濃縮酸素を吸うようにしている。
【0006】
この酸素ボンベに対する酸素供給は病院など医療機関で行なわなければらなず、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を少なからず損なうものであった。
【0007】
そこで、バッテリ駆動されるコンプレッサを使用した移動型の酸素濃縮装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−79165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記提案による移動型の酸素濃縮装置によれば、取っ手を持ち車輪を転がせて患者がこれを移動することは、電車、バス等の公共輸送手段での乗り降りのときにかなりの負担となり、未だ実用化の域に達していないものであった。
【0009】
また、上記のように触媒を用いて原料空気から濃縮酸素を生成し、これを鼻カニューラを含む酸素供給具を介して供給する場合に、製品タンクに貯めた液化酸素が気化後に供給されることから、気化熱が奪われてかなりの低温になることがある。このように低温になった酸素を吸入することは特に幼児または老齢者にとってかなりの負担となる。
【0010】
一方、酸素は湿度がゼロであり、非常に乾燥している。このため乾燥した酸素を直に吸入することは特に幼児または老齢者にとって同様にかなりの負担となることから、加湿器を備えた酸素濃縮装置も実用化されている。さらに、蒸留水を貯めた加湿器をヒータで加温することで適度に温度上昇された湿潤酸素の供給を可能にした機種についても提案されている。
【0011】
しかしながら、加湿器を電熱ヒータで加温するためにはその分の電力が必要となる。このため、例えばバッテリー駆動式の酸素濃縮装置では電熱ヒータに多くの電力を消費する関係上から短時間運転となってしまうことから採用することはできない。さらに、蒸留水を貯めた加湿器をヒータで加温するように長時間に渡り放置すると水中のバクテリア類、菌類が増殖することも知られている。このため不衛生な状態になることから、日々の蒸留水交換作業が必要となるが、この作業は重篤患者にはかなりの負担となる。
【0012】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであり、製品タンクに貯められた濃縮酸素からの酸素を患者に対して衛生的に供給することができ、かつまた適度に加温することで患者への負担を低減することのできる酸素濃縮装置およびこの使用方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段と、前記圧縮手段から送られる前記圧縮空気中の酸素以外の元素を触媒で吸着することで濃縮酸素を発生する吸着手段と、前記触媒を浄化する減圧空気を前記吸着手段に対して送る減圧手段と、前記圧縮手段と前記吸着手段との間または前記触媒が飽和状態になるタイミングで前記減圧手段と前記吸着手段との間の接続状態に切り換える切換手段と、前記吸着手段に接続されることで前記濃縮酸素を一時的に貯める製品タンクと、前記製品タンクからの前記濃縮酸素を患者に供給するためのカニューレを含む酸素供給具と、を備えた酸素濃縮装置であって、前記酸素供給具に供給される前記濃縮酸素からの酸素を前記圧縮手段の運転時に発生する排熱により加温するための加温手段を備えることを特徴としている。
【0014】
また、前記圧縮手段は前記減圧手段とともにコンプレッサとして一体構成され、前記コンプレッサを防音状態で内蔵する防音室と、温度上昇する前記圧縮空気を冷却するために前記防音室の外壁部に敷設される冷却配管と、前記圧縮手段および前記冷却配管を前記防音室に穿設された第1開口部への送風により冷却する冷却手段をさらに備え、また前記加温手段は、前記防音室に穿設された第2開口部から送られる前記排熱を、前記酸素供給具の下流まで案内した後に外部に排出する導管と、前記導管中に配置されるとともに前記酸素供給具に接続されるコイル状または蛇行した配管と、から構成されることを特徴としている。
【0015】
また、前記導管は、消音および断熱機能を備えることを特徴としている。
【0016】
また、前記配管の上流において、加湿器を接続したことを特徴としている。
【0017】
また、前記圧縮手段、前記減圧手段、前記切換手段と前記冷却手段は商用電源以外に着脱可能な充電式バッテリーを含む外部電源装置による駆動が可能であることを特徴としている。
【0018】
また、前記導管はその途中部位に接続される2方向切換弁を備え、前記2方向切換弁の切り換えにより前記排熱を、前記酸素供給具の下流まで案内し外部に導く第1状態と、前記途中部位から外部に導く第2状態に任意に設定可能にしたことを特徴としている。
【0019】
また、原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段と、前記圧縮手段から送られる前記圧縮空気中の酸素以外の元素を触媒で吸着することで濃縮酸素を発生する吸着手段と、前記触媒を浄化する減圧空気を前記吸着手段に対して送る減圧手段と、前記圧縮手段と前記吸着手段との間または前記触媒が飽和状態になるタイミングで前記減圧手段と前記吸着手段との間の接続状態に切り換える切換手段と、前記吸着手段に接続されることで前記濃縮酸素を一時的に貯める製品タンクと、前記製品タンクの前記濃縮酸素からの酸素を患者に供給するカニューレを含む酸素供給具とを備えた酸素濃縮装置の使用方法であって、加温手段により前記圧縮手段の運転時に発生する排熱で前記酸素供給具に供給される前記濃縮酸素からの酸素を加温し、適温の酸素を患者に供給可能にして患者の負担を低減することを特徴としている。
【0020】
そして、さらに、前記酸素供給具の配管の上流に加湿器を接続することで湿潤酸素を患者に供給可能にして患者の負担をより低減することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段と、圧縮手段から送られる圧縮空気中の酸素以外の元素を触媒で吸着することで濃縮酸素を発生する吸着手段と、触媒を浄化する減圧空気を吸着手段に対して送る減圧手段と、圧縮手段と吸着手段との間または触媒が飽和状態になるタイミングで減圧手段と吸着手段との間の接続状態に切り換える切換手段と、吸着手段に接続されることで濃縮酸素を一時的に貯める製品タンクと、製品タンクからの濃縮酸素を患者に供給するカニューレを含む酸素供給具とを備えた酸素濃縮装置において、圧縮手段の運転時に発生する排熱を有効利用することで適温の濃縮酸素を患者に供給して患者の負担を低減するのできる酸素濃縮装置およびこの使用方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の好適な一実施形態について添付の図面を参照して述べる。ここで、本発明は様々な修正と変更が可能であり、その内の特定の事例が図面に図示されており、以下に詳細に記述されることになるが、これらに限定されず請求の範囲に規定された範囲で種々の構成が可能であり、特にAC電源のみとする室内設置式の酸素濃縮装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【0023】
先ず、図1は、一実施形態に係る酸素濃縮装置1を前方左斜め上から見た外観斜視図である。本図から分かるように、この酸素濃縮装置1(これ以降、装置1とも呼ぶ)は、設置場所を最少にするために上下方向に細長いスマートな一見して小型旅行カバン風の外観形状を備えている。このため一瞥しただけでは他人に酸素濃縮装置1であることが知られないように配慮している。また、最大の特長点としては従来の装置の約三分の一の重さになる軽量化および電力の省エネ化を追求したことで電気代は一日当たり約34円(電気代を1kwH当たり15.58円として)としている。また、付属される充電式バッテリと家庭用電源のいずれでも使用できることなどが挙げられる。
【0024】
この充電式バッテリは停電時におけるバックアップ電源としても使用できるので患者は安心して使える。さらに、充電式バッテリ使用モードにおいて酸素流量が毎分1.25L以上に設定された場合には、バッテリ節約のために吸気に同調して酸素を送り出す「同調モード」に自動的に切り替わる機能も備えている。
【0025】
また、図示の表面カバーと裏面カバーを業界では初の射出成形樹脂部品とし、さらに吸着筒を含む他の構成部品についても極力軽量化を図ることで総重量が約10kgの軽量化(AC電源使用でキャリアを設けない場合)とした結果、大人が片手で持ち運べる、所謂可搬型にするために、十分に耐え得る強度を備えるハンドル84を上方に設けており、デザイン的な特徴をも演出している。
【0026】
また、この装置1の外形寸法は、全体的に丸みを帯びている。具体的には幅Wが350mm×奥行きDが250mm×高さHが550mmである。このため、床面上の占有面積を極力小できることから上記の軽量化とともに小型化を実現している。また、装置1のデザイン上の特徴点としては、設置床面から装置1の前面を3次元的に覆うようにした前面カバーを、図示のようにハンドル84の底面に連続するアクセントラインから左右に上下方向に凹状に一体形成し、さらにこれらのアクセントラインで挟まれる部分を淡い暖色系とし、この上方に同色系の操作パネル85を配置する一方で、裏面カバーを含む残りの部分をベージュ乃至クリーム系の色としている。
【0027】
以上のようなデザインおよび配色を施した所謂ツートンカラーの近代的なデザインとすることで、室内に装置1を設置したときに家具などの他の調度品との調和を図れるように配慮している。また、表面カバーと裏面カバーは、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂である例えばABS樹脂製とすることでデザイン的な自由度を確保している。
【0028】
また、操作パネル85は、ハンドル84の下方の開口部において裏面カバーとの接合面まで、例えば約10度の角度で斜め上に延設されており、その上に左から順に、樹脂製の大型ダイヤル式の電源スイッチ86と、樹脂製部品である酸素出口87と、樹脂製の大型ダイヤル式の酸素流用設定ダイヤル88が配置されている。この酸素出口87の上方には、酸素出口87に形成された段差部に対して気密状態に係合されるとともに、着脱自在に設けられる樹脂製のカプラ13が図示されている。このカプラ13には図示の鼻カニューレ14または不図示の酸素マスクを含む酸素供給具に接続されたチューブ15の開口部が連通するようにセットされることで接続部7を構成している。
【0029】
この操作パネル85は、標準身長(160〜170cm)の患者が起立状態で両手を下げた腰部分に略該当する高さ付近に設けられているので、立ったままの姿勢で装置1の運転操作を行なうことができる。このため従来の装置のようにいちいち座ったり覗き込む必要がなくなる。
【0030】
したがって、特に患者の腹部への負担は大きく軽減される。さらには、左利きの人であっても酸素出口87を中央にして左右対称位置に各ダイヤルが配置されているので、何ら違和感なく操作できることになる。
【0031】
なお、鼻カニューラ14に接続されたチューブ15を引っかけるための不図示のフックを設けてもよい。鼻カニューラ14に接続されたチューブ15は、患者が生活する同じ部屋内で移動する範囲に略相当する全長を有しており、未使用時は、チューブ15を数回巻き付けた後に、鼻カニューラ14のチューブ15をフックに引っかけると良い。
【0032】
また、図中の二点鎖線で示した底面カバー89も耐衝撃性の熱可塑性樹脂である例えばABS樹脂製であり、軽量化を図っている。この底面カバー89に対して外出の移動時に使用する着脱が容易なキャリア90を固定ネジ92で固定する。このキャリア90は、図示のように四隅に樹脂製の車輪91を設けたタイプが使用されるとともに、このキャリア90のベースは軽金属の強化アルミ板製であり軽量化するとともに、4辺の縁部を全て曲げ加工して強度を確保している。
【0033】
さらに、電源スイッチ86の上には酸素の加温状態を任意にセットする加温スイッチ79が配置される場合がある。この加温スイッチ79の操作で後述するように酸素を加温できるようになる。
【0034】
また、鼻カニューラ14のチューブ15にはカプラ13を介して不図示の延長チューブを接続するために樹脂製の中継カプラが接続可能になっている。このように延長チューブを接続することで最長で約15mの長さまで延長できる結果、患者にとってより使い易くなり、患者の移動範囲が大きくできるので、さらなるQOLの改善ができることとなる。 ここで、例えば患者がつまづくなどして操作パネル85に対して激しくぶつかった場合でも、怪我などをしないように安全上の配慮がされている。この電源スイッチ86のオン位置に相当する位置には緑と赤に点灯する例えば発光LEDを内蔵した運転状態ランプが設けられている。また、この運転状態ランプの上にはバッテリ残量モニタが設けられている。
【0035】
また、中央の酸素出口87についても図示のように殆どの囲い部分が操作パネル85の操作面から奥側(図面の裏面側)に引っ込むように設けられている。この酸素出口87の上には「点検」の文字を印刷した警報表示部が設けられている。この警報表示部の下方には緑と赤に点灯する例えば発光LEDを内蔵した酸素濃度ランプが設けられている。
【0036】
そして、酸素流量設定ダイヤル88についても図示のように殆どの部分が操作パネル85の操作面から奥側(図面の裏面側)に、すり鉢形状の凹部内に引っ込むように設けられている。この酸素流用設定ダイヤル88は、毎分当たり0.5L(リットル)から2Lまで0.25L段階で示した文字位置に回転することで酸素流量の設定が行われる。
【0037】
以上のように操作パネル85に配置された各操作部は使用上の安全性および高齢者の使用を前提として必要最小限度の操作を行うようにしている。
【0038】
バッテリ残量表示部は、電源オンで約2秒間全点灯する。その後に、充電式バッテリの残量が100%であると、左側に設けられた発光LEDを内蔵したランプが緑色に点灯(連続して光る)するとともに、5段階の液晶表示部の全てが点灯表示される。また、バッテリ残量が20%減るごとに、右側から消灯して点灯数がすくなくなり、残り1つになると内蔵のブザーで警告する。
【0039】
そして、充電式バッテリの残量が10%以下になると左側に設けられた発光LEDを内蔵したランプが赤色に点滅(間欠的に光る)するとともに、5分おきに内蔵のブザーで警告する。このようにして、特に外出時におけるバッテリ駆動モードでの使用上の安全性を確保している。警報表示部は「点検」の文字が印刷されており、酸素濃度が低下したときに内蔵のランプが点灯して知らせるようにしている。また装置側の異常発生時にはブザーが鳴り知らせるようにしている。また、停電で装置が停止したときには、点滅して知らせる一方で、ブザーを鳴らすことで特に視覚障害者に知らせるようにしている。
【0040】
そして、酸素濃度ランプは、酸素が正常に流れているときには内蔵のLEDが緑色に点灯する。また、酸素が出ていないときあるいは酸素濃度が低下したときには消灯する。そして、バッテリ駆動モードで、酸素流量が1.25L以上のときに一定時間、呼吸状態を検出できなかったときに赤色に点灯し、ブザーを鳴らすようにしている。
【0041】
なお、電源スイッチ86をオンすると、ブザーが鳴り、全てのランプが2秒間緑色に点灯する。そして、バッテリ駆動モードで使用するときには、その後に5段階の液晶表示部において残量に応じて点灯表示される。患者は医師の処方にしたがって酸素流量設定ダイヤル88を所定流量に設定すると酸素供給が開始される。
【0042】
停止時には、電源スイッチ86をオフすると、酸素ランプが消灯し、しばらくの間、運転ランプが点滅した後に自動的に終了する。
【0043】
患者が毎日行う作業として、裏面カバーに設けられた外気導入フィルタに付着したゴミ、埃を掃除機で取り除くことがある。この作業を簡単にできるようにするために外気導入フィルタを容易に着脱できるように構成されている。
【0044】
酸素濃縮装置1の裏面カバーから外気導入フィルタを着脱自在にするために裏面カバーには外気導入用の縦方向の開口を穿設した開口部が設けられており、この開口部に対して交換用蓋が着脱可能に設けられている。また、この開口部は交換用蓋の全体を埋没する容積を有しており、上方において指先が入る凹部を形成している。交換用蓋は横方向の開口部と4隅の起立部が設けられており、起立部で囲まれる部分の中に連続気泡のスポンジ製の外気導入フィルタを、それ自体の有する弾性力により不動状態で収める。この起立部は、開口部への取付壁部を兼ねている。このため、外気導入フィルタを取り出し、水洗により洗浄するか、新品に交換することで、交換用蓋にセットするようにして元の状態に戻せるように構成されている。
【0045】
また交換用蓋が開口部にセットされると、本体の遮蔽板の端面が外気導入用の縦方向の開口の殆どの部分を覆い隠し、わずかに上方部分を残す状態になる結果、外気は後述する方向に流れることになるが、このように遮蔽板で内部から覆うことで後述する騒音が外部に漏れることを効果的に防止している。すなわち、装置1の外部に対する開口部分としては、この開口と排熱の排気口のみとするとともに、開口面積は後述する原料空気の流量を確保するために必要となる最少限度として、内部から発生する音が外部に漏洩しないようにして38デシベルの低騒音化を可能にしている。また出口部分を極力少なくして防音に加えて防水対策も図っている。
【0046】
また、装置1は通常部屋の壁面から狭い間隙分を離間して設置されるので、外気導入と排気を裏面カバー側から行うことで、外気導入と排気音が最も低くなる個所からの排気を可能にしている。またブレーカーを内蔵しており、万が一の過剰電流発生時における対処を可能にしている。
【0047】
次に、図2は、装置1のブロック図を兼ねた配管図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛するとともに、二重線は空気、酸素、窒素ガスの流路を示しており概ね配管33として示されている。また、細い実線は電源供給または電気信号の配線を示している。
【0048】
ここで、以下の説明ではコンプレッサとして圧縮手段と減圧手段を一体化構成したものを用いる場合について述べるが、これに限定されず圧縮手段と減圧手段を個別に構成した場合も可能であることは言うまでもない。
【0049】
図2において、上記のフィルター交換用蓋体に内蔵された外気導入用フィルタ20を通過して装置1の内部に矢印F1方向に空気が導入される。この空気は、冷却手段である一対のブロア104による送風が矢印方向に行われることで、原料空気と冷却空気に分かれる。各ブロア104、104は、温度が上昇する圧縮空気を冷却するために熱伝導率が高く、軽重量の金属材である例えばアルミなどの管材を蛇行させて配置した冷却配管37を覆うようにした冷却室36の上に固定される。この冷却室36には送風用の第2開口部が穿設されており、ブロア104、104からの送風を冷却室36内に導入する。この冷却室36は軽量化と高熱伝達のために強化アルミ板製と、アルミ合金、チタン合金などの、他の材料も可能である。
【0050】
この冷却室36は、送風のための第1開口部をその外壁部に穿設し、かつ外壁部に沿うように冷却配管37を配設した防音室35の天井部分に図示のように固定される。この防音室35についても、軽量化と高熱伝達のために強化アルミ板製がよく、アルミ合金、チタン合金などの他の材料の使用も可能となる。
【0051】
この防音室35の内部には原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段105aと、減圧手段105bとを一体構成したコンプレッサ105が内蔵される。この防音室35には、冷却室36の第2開口部に対向した位置において第1開口部が夫々穿設されており、ブロア104、104からの送風を内部に導入してコンプレッサ105の冷却を行うように構成されている。
【0052】
また、冷却後に温度上昇した排熱は下方の第2開口部35dから矢印方向に外部に送りだされて第2開口部36dに接続された導管2中に向かう。この導管2にはその途中で迷路状の消音室2aを形成しており、排熱の通過時における消音を行うようにしている。
【0053】
この導管2から送られる排熱は、二重矢印で図示したようにカニューレ14の下流まで案内されてから排気口4を介して外部に排出される。また、この導管22中にはコイル状または蛇行されることで流路長を十分に長くすることで十分に加温されるように形成された配管3が内蔵されており、酸素の加温を可能にしている。
【0054】
この導管2は、上記の消音機能に加えて断熱機能を備えている。さらに、導管2の途中には上記の加温スイッチ79でオンオフされる2方向切換弁10が設けられており、この2方向切換弁10の切り換えにより排熱を上記のようにカニューレ14の下流まで案内して外部に導く第1状態と、この途中部位から外部に導き排気口5から外部に排出する第2状態に任意に設定できるようにしている。
【0055】
さらに、導管2中に温度センサ11を設けておき、自動的に2方向切換弁10の切り換えを行うことで適温に保つように構成しても良い。また、上記の2方向切換弁10を設けず、導管2のみを設けても良い。
【0056】
一方、冷却室36からは生成酸素の原料空気を送るために、細菌死滅などを行う二次濾過を行う吸気フィルタ101に向かう配管33が接続されている。この吸気フィルタ101の下流側には大容量の吸気用バッファタンク102が配管されており、この吸気用バッファタンク102から上記の圧縮手段105aへの配管がされている。この吸気用バッファタンク102は、冷却室36から取り入れられた原料酸素を一時的に貯蔵し、圧縮手段105aから発生する作動音の消音を行う。このため、共振点となる吸気用バッファタンク102の側面から圧縮手段105aへの配管をするとさらに効果的な消音ができる。この吸気フィルタ102の内部は約200cc程度の体積で重量は120g程度である。
【0057】
次に、濾過された原料空気は、水平対向ピストンを設けたコンプレッサ105の圧縮手段105aで加圧されて圧縮空気となるが、このとき温度上昇するので、下流側に配管された熱交換器となる上記の冷却配管37に向けて送り出される。この冷却配管37は上記のように放熱効果に優れた軽量の金属パイプ(例えば、外径6mm内径4mmのアルミ管)を螺旋状、渦巻き型のコイル状にすることで表面積を増やしている。また、パイプは丸パイプに限らす矩形パイプでもよい。この冷却配管37はアルミ製の防音室35の外壁部に密着されて固定されており、一対のブロア104、104からの直の送風と外壁部が送風で冷却されることで熱伝導で効果的に冷やされる。このように圧縮空気を冷却することで高温では機能低下する吸着剤であるゼオライトが窒素の吸着により酸素を生成するための触媒担体として十分に濃縮できる。
【0058】
この冷却配管37により十分に冷やされた後の圧縮空気は、配管33を介して第1吸着筒108aと第2吸着筒108bに対して交互に供給される。このために圧縮空気を供給する3方向切換弁107a、107bに送られる。これらの3方向切換弁107a、107bには、さらに第1吸着筒108aと第2吸着筒108bのパージ(浄化)を行うために減圧手段105bに対する配管33と開放弁118への配管が図示のように行われており、吸着剤(触媒)を減圧状態にすることでパージを行うとともに吸着剤から放出される窒素と水分を排気するようにしている。また、減圧手段105aには排気用の消音器120が配管されている。
【0059】
第1吸着筒108aと第2吸着筒108b内に貯蔵されているゼオライトは、触媒担体として、SiO2/Al2O3比が2.0〜3.0であるX型ゼオライトであり、かつこのAl2O3の四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと結合させたものを用いることにより、単位重量当たりの窒素の吸着量を増やしている。特に、1mm未満の顆粒測定値を有し、四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと融合させたものが好ましい。
【0060】
このようなゼオライトを使用することで、同じ酸素を生成するために必要となる原料空気の使用量を削減できるようになる結果、圧縮空気を発生するためのコンプレッサ105を小型のタイプとすることができ、低騒音化を一層図ることができる。ここで、従前から使用されている通常のゼオライトを使用しても良く、この場合でも後述する消音機能により十分な低騒音化を図ることができる。
【0061】
一方、第1吸着筒108aと第2吸着筒108bの図示の上方の出口側には逆止弁130が夫々図示のように接続されている。また、各逆止弁130、130の下流側は合流するように配管33が成されており、生成した酸素を貯蔵するための製品タンク111が図示のように配管されている。さらに、第1吸着筒108aと第2吸着筒108bの各出口側との間には均等圧弁119が配管されており、各吸着筒の二次浄化を行うようにしている。
【0062】
製品タンク111の下流側には、出口側の酸素の圧力を一定に自動調整する圧力調整器112が配管されている。この圧力調整器112の下流側には、酸素濃度センサ114が接続されており、酸素濃度の検出を行うようにしいる。この下流側には上記の酸素流量設定ダイヤル8に連動する流量調整器115が接続されており、その下流側の呼吸同調器となるデマンド弁116を経て、装置1の酸素出口7に配管されている。
【0063】
以上の構成により鼻カニューレ(不図示)を経て患者に最大流量2L/分で約88〜94%程度に濃縮された酸素が供給されることとなる。
【0064】
また、AC電源に接続するAC電源コネクタ130と、ブレーカー18とスイッチング電源部125と介して商用電源により制御手段の制御基板124への通電が行われる。また外出時等においては、バッテリ(充電式バッテリ)127によって行われるためにコネクタ131を介して制御基板124への通電が行われる。
【0065】
一方、酸素濃度センサ114と流量調整器115と、3方向切換弁107a、107bと均等圧弁119と開放弁118とは制御基板124に接続されている。
【0066】
また、コンプレッサ105は、総重量が約1kgであり、制御基板124に接続されるモータ制御部123と、これに接続される可変速度制御器123aによりモータの駆動制御が行われる。このコンプレッサ105は、各速度で運転可能であり、必要な真空/圧力レベルと流量を提供することができ、僅かな騒音と振動しか出さず、僅かな熱しか発生せず、小型軽量であり、そして僅かな電力を消費するものであることが好ましい。
【0067】
また、充電式バッテリ127や他の商用電源等の電源に対してコンプレッサ105に必要とされる消費電力を軽減するために、可変速度制御手段である可変速度制御器123aが接続されている。モータ制御回路123に接続される可変速度制御器123aを備えることにより、患者の活動レベル、環境条件に基づいてコンプレッサ105の速度を自在に変化させることができる。例えば、可変速度制御器123aは、患者が座ったり、寝たり、低い場所にいる時等、患者の酸素要求が比較的低いことが判断されると、コンプレッサ105の駆動回転速度を落とし、患者が立ったり、活動的であったり、高地にいるときなど、患者の酸素要求が比較的高く、高まったと判断される時には速度を上げることができる。
【0068】
これによって装置1全体の消費電力が低減され、充電式バッテリ127での駆動時の充電式バッテリ127の寿命を延ばし、充電式バッテリ127の重量と大きさを軽減し、コンプレッサ105の摩耗度を低めて寿命を延ばし信頼性が向上するようにできる。
【0069】
さらに、装置1は、AC駆動モードとバッテリ駆動モードとを備えており、AC駆動モード時における酸素生成量をバッテリ駆動モード時における酸素生成量の約2倍の2Lになるように自動的に切替えるとともに、ブロアをAC駆動モード時において高速に、またバッテリ駆動モード時において低速に回転駆動する制御を行うようにしている。
【0070】
このコンプレッサ105は、上記のように圧縮と減圧の両方の機能を備えるものであり、取り出される酸素流量に応じて回転数が自動制御されるが、具体的には、回転速度が500rpmから3000rpmの間で制御され、通常の至適速度である1700rpm程度で回転するときの操作寿命を15000時間と長くできるようにしている。また、このコンプレッサ105は、空気を100kPa、好ましくは75kPa程度に圧縮する。
【0071】
このコンプレッサ105を取り巻く操作温度は、好ましくは0℃〜40℃であり、コンプレッサ105用の駆動電圧は、好ましくは直流12Vまたは24Vであり(自動車などのアダプタから得られる電源)、電力使用量は、約45〜80W程度である。
【0072】
ここで、開放弁118の役割は、コンプレッサ105の圧縮手段側の真空度を調整するものである。すなわち、装置1に採用されるコンプレッサ105は圧縮手段と減圧手段の両機能を備えているので、小型軽量化できるという利点がある。しかしながら、このように一体化されたコンプレッサは、圧縮手段の加圧専用コンプレッサや減圧手段の真空専用コンプレッサに対して振動が大きいという問題がある。特に、圧縮工程において均圧工程移行時に特に振動が激しくなる。この原因は、均圧工程時には3方向切換弁107a、107bの流路は圧縮手段側と一方の吸着筒側が連通され、減圧手段側は遮断された状態となるために、3方向切換弁と減圧手段の間は極端な高真空状態となることによる。この高真空状態を解消するために、外気と連通する開放弁118を設けておき均圧工程と同期して、制御基板124からの指示で開放弁118を開状態に動作させることで、流路内に外気が入り込むようにして、流路内を大気圧により近い状態とする。この作用によりコンプレッサ105は無負荷状態に近い状態となるため、振動の発生を防止できまた、騒音の低減や低電力化にも寄与するようにできる。
【0073】
一方、このコンプレッサ105の冷却と、装置1内部の冷却を行う上記のブロア104、104は、消費電力約2.7W程度である。このブロアに代えて軸流ファンでもよい。ここで、装置1の最大騒音圧力レベルは、最大の回転数のときに35dBA以下であり、濃縮酸素流量1L/分以下の場合には33dBAである。
【0074】
3方向切換弁107a、107bには、一般的に直動式と呼ばれる弁の動作を通電時の磁力で行う電磁弁が使用可能である。この種の電磁弁は電気の力だけで主弁を動作させるため消費電力が高いという問題点があった。この装置1では3方向切換弁107a、107bにパイロット式3方向切換弁を使用することもできる。この弁によれば、僅かな消費電力とコンプレッサからの空気圧を有効利用して動作させることが出来るために従来の8Wから0.5Wまで低減される結果、大幅に電力が低減されることになる。
【0075】
以上の構成により装置1の電源スイッチ86がオンされる事で、所定電圧の供給が開始され、制御基板124でセルフチェックが行われる。これに続きコンプレッサ105と、ブロア104、104と、3方向切換弁107への通電が行われることで、外部空気の導入が行われて、それに伴う空気導入音が連続的に発生する。同時にコンプレッサ105の振動やその振動に伴う騒音、吸着筒に及ぶ配管からの透過音が連続して発生する。
【0076】
これに続き、導入された空気は一方の3方向切換弁107aを経て第1吸着筒108aに導入され、生成酸素は逆止弁130を通り、製品タンク111に流れ、徐々に圧力が上昇する。所定の圧力になると均等圧弁119が所定時間 「開状態」となる。以上で第1吸着筒108aで濃縮された一部の酸素を使用して、第2吸着筒108bの、洗浄及び次の加圧に備えての準備が行われる。又、均等圧弁119の作動時には作動音を伴うので、防音スポンジで取り囲まれている。
【0077】
次に、第1吸着筒108aの脱着工程(窒素や水分の排出)と第2吸着筒108bへの圧縮空気の取入れを行うべく3方切換弁107bが作動する。これに前後して開放弁118が動作され第1吸着筒108a内に残る窒素ガスの放出が行われる。この排気音は一時的ではあるが最も大きい。第2吸着筒108bに流れ込んだ圧縮空気で生成された生成酸素は逆止弁130を介して、製品タンク111に流れる。その後所定の圧力となると均等圧弁119が所定時間「 開」となる。この後に、第2吸着筒108aの、洗浄及び次の加圧に備えての準備が行われる。
【0078】
以上のように均等圧弁119が開かれることで、第2の吸着筒体108bで生成された酸素が第1の吸着筒体108aの出口部に送り込まれるので、内蔵のゼオライトの洗浄化が行なわれることになる。以上の切換動作を所定タイミングで繰り返し行うことで、連続した酸素の安定供給を可能としている。
【0079】
尚、流量検出手段は、上記のように使用する酸素流量を決定するための流量設定器の設定値を制御基板が読み取るものであるが、さらに、チューブ折れ等の外乱要因により流量低下した場合に備えて、実流量を測定しても良い。以上説明したように、任意に設定される酸素流量の大小の如何に拘わらず、酸素濃度を安定的に保持できる。
【0080】
また、圧縮空気の供給音と、外部空気の導入音と、原料空気を作るための濾過空気の導入音と、3方向切換弁の作動音と排気音が周期的に発生するが、このように発生する騒音低減のために、従来装置では外部空気導入通路を長く設定し、かつ多くの屈折回数を与え、さらに吸音材を設けた遮音箱内に収容していた。このために静かな酸素濃縮装置は大型化するとされていた。また、ゼオライトを充填した吸着筒は、温度上昇すると窒素吸着量が減少するために温度の影響を受け難い場所において離間して配置されるのが一般的であった。
【0081】
このため、配管経路が長くなることによる圧力損失も無視できない場合があったがこれらの問題は、図2に示した構成と後述する機械的構成により全て解決された。
【0082】
さらに、充電式バッテリ127は例えばリチウムイオン電池などの繰り返し充電可能な二次電池であり、上記のバッテリコネクタ131にセットされるコネクタを介して電力供給する。また、その表面には押圧されることでバッテリ残量を表示する残量確認ボタンと、残量確認のためにこの残量確認ボタンが押圧されると残量100%で5個の表示部が点灯し、残量20%で1個の表示部が点灯する5段階の表示部を備えており、例えば液晶表示するための残量確認モニタを備えている。このように構成された充電式バッテリ127を使用前に充電残量を必ず確認することで、外出先でバッテリ切れが起こる最悪の事態にならないようにできる。この充電式バッテリの専用充電器には、AC電源に接続されるACケーブルとコネクタに接続されるコネクタとが接続されており、充電器本体に内蔵された電源装置により充電を行うようにしている。
【0083】
次に、防音室35は、コンプレッサ105を防音状態で収容する密閉箱であり、手前側の防音室蓋を複数の固定ネジで固定するようにしている。このために防音室35は曲げ加工されるとともにインサートナットを植設した取付部が一体的に設けられている。この防音室内部には防音材が敷設される。また外周面には制振部材であって、合成ゴムと特殊樹脂材料を混合した素材をシート状のものが敷設されており、アルミの薄板製である防音室35自体が共鳴などで振動することを防止している。また防音室35の下面には第2開口部35dが穿設される一方で、防音室35の上面には上記の冷却室36の第2開口部に対向した位置に第1開口部が穿設されている。さらにこの防音室35には他の孔部が穿設されており、冷却配管37を図示のように位置させ、かつ配管33を外部に出せるようにしている。
【0084】
また、消音器120は、軽金属であるアルミ製丸パイプ(外径Φ6mm、内径Φ4mm)で構成され、コンプレッサ105と接続されない側の端部は閉塞され、パイプ側面には長手方向にΦ0.3〜1.0mm程度の小孔が複数分、例えば2〜6個穿設されている。これ以上増やすと騒音の増加になり小さくするとコンプレッサの排気効率が下がり好ましくない。
【0085】
図3は、外気導入空気と、原料空気および排気空気の流れる様子を示した外観斜視図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、外気導入フィルタ20で一次濾過された空気は矢印F1方向に内部に導入される。導入された空気は、矢印F2、F3方向に分岐するようにブロア104により吸い込まれ、冷却室36の開口部と防音室35の第1開口部を介して矢印F4、F5方向に流入する。これによりコンプレッサ105を冷やす。コンプレッサ105は発熱が大きく冷却しないと最高で約75度まで温度上昇するので効率的に冷却する必要がある。このため防音室の内部に収容し、圧縮後の高熱酸素を冷却する蛇行配管を密着させ、さらに冷却室を設けこの上にブロアを設けて、2個のブロアからの送風で蛇行配管とコンプレッサ105の双方を冷やすことで冷却効率をアップしている。
【0086】
また、冷却室36に導入された空気の一部は原料空気として配管33を矢印F6方向に流れ二次濾過を行うフィルタ101とバッファタンク102を矢印F7方向に通過して配管33内を矢印F8方向に通過して圧縮手段105aに向かう。このとき、吸気音は完全に遮断されることになる。また、排熱は第2開口部35dを矢印F9方向に出てから導管2中を流れ消音室で充分に消音された後に配管3を十分に加熱させる。その後、排気口4から矢印F10方向に排出される。このため排気口4は装置1の裏面に設けられる。
【0087】
以上のように実質的に酸素を生成する上で必要となる主構成部品を全て防音する事で、連続する騒音源となるコンプレッサ105の音は、開口部となる空気の排気口4から外部に出されるが、このとき上記の消音室2aを通過する際に、音エネルギーは、反射、吸音を繰り返して減衰される結果、耳障りな音は低減されることとなる。また、導管2には不図示の断熱材が敷設されており排熱温度を保持した状態で配管3まで案内する途中での温度低下を最小にできるように構成されている。
【0088】
また、上記の2方向切換弁10に接続される導管2は装置1の裏面の排気口5に連通しており、同じく矢印F11方向に排気されるように構成されている。
【0089】
一方、防音室の内部は、内面に吸音材を貼ることにより、騒音源は最小限に抑えられ、更には、従来のような排出通路と酸素の生成に必要な部品とが区分けされている装置に比べて、効率良くスペース使うことが出来るため、装置の小型化とメンテナンス性を大幅に向上できることになる。
【0090】
尚、以上は本発明の医療用の装置1を図1〜図3に図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、空気中から窒素を吸着して、酸素を生成するための触媒担体として、SiO2/Al2O3比が2.0〜3.0であるX型ゼオライトであり、かつ前記Al2O3の四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと結合させることにより、吸着筒は1本にすることもできる。さらに、カバーのデザインは上記構成に限定にされないことは言うまでもない。
【0091】
次に、図4は第2実施形態の要部を図示したブロック図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、呼吸同調器となるデマンド弁116の下流には蓋体8と容器9とから構成される加湿器が接続されており、蓋体8の下流側に上記の配管3が接続されている。
【0092】
加湿器は、透明な容器9内に蒸留水を貯めておき、この蒸留水内を酸素を通過させることで湿潤酸素を得てから外部に送り出すように構成されているので、この加湿器の通過後に適度に湿った酸素を供給できる。
【0093】
また、蒸留水は所定時間後に消費されるのでその分が見えるとともに、バクテリア等の繁殖を防止するために毎日交換することを義務付けている。従来、この効果を忘れると加湿器がヒータで加温されていたために、バクテリア増殖原因となっていた。
【0094】
そこで、加湿器の下流側において加温することで従来の問題を解消するとともに、患者にとってより快適な酸素供給を実現可能にできるようになった。
【0095】
さらに、充電済みの追加のバッテリ・パックを持つことで、より長時間の外出等が可能となり、そのQOLが大幅に向上することになった。また、装置1を車輪を有するカート(二輪または四輪カート)とし、ストッパ、収縮/延伸自在な取手等を設けた手押し車式としてもよい。またシステムは、就寝時の防音のために、装置1をさらに覆う防音ボックスを備えていてもよい。
【0096】
また、呼吸同調制御は、充電式バッテリ127により、酸素濃縮装置1全体が駆動されている場合に、濃縮された酸素をより効率的に患者が使用するために、呼吸に同調した制御を行うためのものであるが、通常の呼吸の間は、患者は、吸息/呼息サイクル時間の約1/3を吸息に、残りの2/3を呼息に当てている。
【0097】
呼息の間に生成される濃縮酸素は患者にとっては不要のもので、その結果この余剰の濃縮酸素の流れを効率的に提供する追加のバッテリ電力は無駄にされる。そこで、呼息の間に生成された濃縮酸素を吸息時に供給することにより、仮に、吸息/呼息サイクルが1(吸息):2(呼息)であるならば、吸息時に3倍の流量まで供給することが可能となる。
【0098】
このように、呼吸同調制御を行うことにより、装置の小型化、低消費電力化が可能となる。呼吸同調器116の開閉制御は全期間に亘って行われる(コンプレッサ105も全期間に亘って動作する)。
【0099】
尚、図2を参照して酸素濃縮装置1は、酸素センサ114を標準装備しているが、加速度センサ135、GPS(全地球位置センサ)134、ショックセンサ132等の各種センサ、脈拍センサ、血圧センサ、血中酸素飽和度センサ等をオプションとして付属することも可能である。 酸素センサにはガルバニ電池式、超音波式、ジルコニア式等のセンサが使用可能だが、大きさの点や測定精度の点からもジルコニア式酸素センサが好ましい。また、酸素使用量、動作時間、トラブル積算などを日時ともに時系列的に記憶したヒストリ記憶部を設け、外部機器によりメンテナンスできるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】は、本発明の一実施形態である酸素濃縮装置1を前方左斜め上から見た外観斜視図である。
【図2】は、図1に示した酸素濃縮装置1のブロック図である。
【図3】は、外気導入空気と、原料空気および排気空気の流れる様子を示した外観斜視図である。
【図4】は、酸素濃縮装置1の第2実施形態の要部を図示したブロック図である。
【符号の説明】
【0101】
1 酸素濃縮装置、
2 導管
3 配管
4、5 排気口
14 カニューレ(酸素供給具)
15 チューブ
20 外気導入フィルタ
33 配管(樹脂製)
35 コンプレッサ室(アルミ製)
36 冷却室(アルミ製)
37 冷却配管(アルミ製)
101 吸気フィルタ
102 吸気用バッファタンク
104 冷却ファン(冷却手段)
105 コンプレッサ(圧縮手段、減圧手段)
107 電磁弁(金属製)
108a、108b 吸着筒(アルミ製)
111 製品タンク
112 圧力調整器
116 呼吸同調器
114 酸素センサ
127 充電式バッテリ
F1〜F11 外気導入空気、原料空気、排気の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段と、前記圧縮手段から送られる前記圧縮空気中の酸素以外の元素を触媒で吸着することで濃縮酸素を発生する吸着手段と、前記触媒を浄化する減圧空気を前記吸着手段に対して送る減圧手段と、前記圧縮手段と前記吸着手段との間または前記触媒が飽和状態になるタイミングで前記減圧手段と前記吸着手段との間の接続状態に切り換える切換手段と、前記吸着手段に接続されることで前記濃縮酸素を一時的に貯める製品タンクと、前記製品タンクからの前記濃縮酸素を患者に供給するためのカニューレを含む酸素供給具と、を備えた酸素濃縮装置であって、
前記酸素供給具に供給される前記濃縮酸素からの酸素を前記圧縮手段の運転時に発生する排熱により加温するための加温手段を備えることを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記圧縮手段は前記減圧手段とともにコンプレッサとして一体構成され、
前記コンプレッサを防音状態で内蔵する防音室と、温度上昇する前記圧縮空気を冷却するために前記防音室の外壁部に敷設される冷却配管と、前記圧縮手段および前記冷却配管を前記防音室に穿設された第1開口部への送風により冷却する冷却手段をさらに備え、
前記加温手段は、
前記防音室に穿設された第2開口部から送られる前記排熱を、前記酸素供給具の下流まで案内した後に外部に排出する導管と、
前記導管中に配置されるとともに前記酸素供給具に接続されるコイル状または蛇行した配管と、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
前記導管は、消音および断熱機能を備えることを特徴とする請求項2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記配管の上流において、加湿器を接続したことを特徴とする請求項2または3に記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
前記圧縮手段、前記減圧手段、前記切換手段と前記冷却手段は商用電源以外に着脱可能な充電式バッテリーを含む外部電源装置による駆動が可能であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
前記導管はその途中部位に接続される2方向切換弁を備え、前記2方向切換弁の切り換えにより前記排熱を、前記酸素供給具の下流まで案内し外部に導く第1状態と、前記途中部位から外部に導く第2状態に任意に設定可能にしたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項7】
原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段と、前記圧縮手段から送られる前記圧縮空気中の酸素以外の元素を触媒で吸着することで濃縮酸素を発生する吸着手段と、前記触媒を浄化する減圧空気を前記吸着手段に対して送る減圧手段と、前記圧縮手段と前記吸着手段との間または前記触媒が飽和状態になるタイミングで前記減圧手段と前記吸着手段との間の接続状態に切り換える切換手段と、前記吸着手段に接続されることで前記濃縮酸素を一時的に貯める製品タンクと、前記製品タンクの前記濃縮酸素からの酸素を患者に供給するカニューレを含む酸素供給具と、を備えた酸素濃縮装置の使用方法であって、
加温手段により前記圧縮手段の運転時に発生する排熱で前記酸素供給具に供給される前記濃縮酸素からの酸素を加温し、適温の酸素を患者に供給可能にして患者の負担を低減することを特徴とする酸素濃縮装置の使用方法。
【請求項8】
さらに、前記酸素供給具の配管の上流に加湿器を接続することで湿潤酸素を患者に給可能にして患者の負担をより低減することを特徴とする請求項7に記載の酸素濃縮装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−195820(P2007−195820A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19708(P2006−19708)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】