説明

酸素濃縮装置

【課題】使用者がカニューラを用いて酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた場合に、酸素を遮断して安全性を確保することができる酸素濃縮装置を提供する。
【解決手段】原料空気を圧縮して圧縮空気を発生するコンプレッサ10と、圧縮空気から得られる酸素を出すための酸素出口部100と、カニューラ70のチューブ72に取り付けられて、酸素出口部100に対してチューブ72を着脱可能に接続し、温度センサ400を有するカプラ17と、温度センサ400により検知された温度が、予め定めた温度以上に達すると、コンプレッサ10の動作を停止して酸素の供給を遮断する制御部200とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮装置に関し、特に火災等の異常な高温環境下にさらされた時に、酸素濃縮装置への延焼やこの装置自体の火災等を防止する酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力スイング吸着法を利用した酸素濃縮装置は、原料空気中の酸素を透過させて窒素を選択的に吸着するゼオライトを吸着剤として用いることで濃縮酸素を得る構成になっている。
この方式の酸素濃縮装置によれば、取り込んだ原料空気をコンプレッサで圧縮して圧縮空気を発生して、吸着剤を内蔵した吸着筒に対してこの圧縮空気を供給することで該吸着剤に窒素を吸着させ酸素を生成する。そして、生成された濃縮酸素はタンクに貯めておき、減圧弁や流量設定器を介してタンクから所定流量の酸素を供給可能な状態にすることで、患者は鼻カニューラ等の器具を用いて酸素吸入ができる。
【0003】
この酸素濃縮装置はAC電源(商用交流電源)のが利用できる場所に設置しておけば、例えば肺機能が低下した在宅酸素療法患者が、就寝中でも安全に酸素を吸うことができるようになり安眠できる。
【0004】
また、慢性気管支炎等の呼吸器疾患の患者の治療法として有効となる長期酸素吸入療法に使用される酸素濃縮装置は、一般的には可搬型ではなく、患者が外出先に持ち出せるようには構成されていない。
他方、患者が外出等で移動したり、家屋や医療施設内で部屋間の移動に便利なように、あるいは在宅配置における限られた配置スペースに適するように、小型で可搬に適するように構成した酸素濃縮装置も知られている(特許文献1を参照)。また、鼻カニューラに感温センサを設けて、50℃になれば濃縮酸素の発生を停止する酸素濃縮装置も提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111016号公報
【特許文献2】特開2009−183544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の酸素濃縮装置では、使用者は鼻カニューラをチューブとカプラを介して酸素濃縮装置の酸素出口部に対して接続して、酸素出口部から出る濃縮酸素を吸入する。しかし、使用者が鼻カニューラを用いて濃縮酸素を吸入している際に、酸素が助燃性ガスであるために、酸素濃縮装置の近くで喫煙する行為や火気を使用する行為は厳禁である。にもかかわらず、例えば使用者が喫煙をすることにより、鼻カニューラ等のチューブに直接引火して事故が発生する恐れがあり、場合によっては酸素濃縮装置自体に引火して火災が拡大してしまう懸念がある。
特許文献2の装置は、鼻カニューラの途中に温度感知センサーを配置して、その検出信号により酸素の供給を止めるというだけの構成であるが、該文献に記載の摂氏50度付近で酸素供給を停止するというきわめて単純な仕組みでは、例えば装置を使用している室内に暖房機があり、その輻射熱が当たっただけで酸素供給を遮断してしまったり、夏季の密室等において、装置が置かれた環境温度が上昇すると、それだけで装置が動作しない恐れがあり、使い勝手に乏しく、実現性が低い。
そこで、本発明は、使用者がカニューラを用いて酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた場合に、確実に高温環境を検知し、安全性を確保することができる酸素濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の酸素濃縮装置は、原料空気から濃縮酸素を発生させる濃縮酸素生成手段と、該濃縮酸素生成手段で生成された該濃縮酸素を供給するための酸素出口部と、カニューラのチューブに取り付けられて、前記酸素出口部に対して前記チューブを着脱可能に接続し、温度センサを有するカプラと、前記温度センサにより検知された温度が、予め定めた温度以上に達すると、前記濃縮酸素生成手段の動作を停止して前記酸素の供給を遮断する制御部と、を有していることを特徴とする。
上記構成によれば、使用者がカニューラを用いて酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた場合に、酸素を遮断して安全性を確保することができる。
【0008】
本発明の酸素濃縮装置では、前記制御部は、前記温度センサにより検知された温度が前記予め定めた温度以上に達し、しかも単位時間当たりの温度の上昇値である温度上昇率が予め定めた値以上に達している継続時間が、予め定めた継続時間以上続いた場合に、前記濃縮酸素生成手段であるコンプレッサの動作を停止して前記酸素の供給を遮断することを特徴とする。
上記構成によれば、酸素出口部の温度が上がっていることを検知して、酸素の供給を確実に遮断することができる。
【0009】
本発明の酸素濃縮装置では、前記制御部は、前記温度センサにより検知された温度が前記予め定めた温度以上に達し、しかも前記温度上昇率が前記予め定めた値未満である場合に、前記温度センサにより検知された温度がさらに前記予め定めた温度を超える別の設定温度以上に達すると、前記コンプレッサの動作を停止して前記酸素の供給を遮断することを特徴とする。
上記構成によれば、酸素出口部の温度が上がっていることを検知して、酸素の供給を確実に遮断でき、酸素濃縮装置本体に延焼してしまうことを防げる。
【0010】
本発明の酸素濃縮装置では、前記温度センサは、サーミスタであり、前記温度センサは前記酸素出口部に内蔵されていることを特徴とする。
上記構成によれば、温度センサとしては安価なサーミスタを用いてコストダウンが図れ、しかも温度センサが酸素出口部に内蔵されているので、温度センサにスケール等の付着物が付着して正確に温度検知ができなくなるのを防ぎ、しかも加湿器を用いても温度センサに水分が付着して正確に温度検知ができなくなるのを防ぐことができる。
【0011】
本発明の酸素濃縮装置では、前記カプラは、難燃性樹脂材料により作られていることを特徴とする。
上記構成によれば、カプラは、酸素出口部からの酸素の供給が停止すると、火炎がなくなる。
本発明の酸素濃縮装置では、前記酸素出口部は、熱導電性を有する金属により作られていることを特徴とする。
上記構成によれば、カプラが燃焼した熱は、酸素出口部を通じて温度センサに対して早く伝えることができ、温度検知時間が短くなる。
本発明の酸素濃縮装置では、前記制御部の指令により前記酸素出口部からの前記酸素を遮断したことを報知する警報手段と、
前記制御部の指令により前記酸素出口部からの前記酸素を遮断したことを音声で報知するスピーカと、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、使用者に対して酸素供給が停止されたことを確実に知らせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、使用者がカニューラを用いて酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた場合に、酸素を遮断して安全性を確保することができる酸素濃縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の酸素濃縮装置の実施形態の外観を示す前側から見た斜視図である。
【図2】図1の酸素濃縮装置の外観の背面図である。
【図3】図1と図2に示す酸素濃縮装置の内部構造例を示す斜め後ろ側から見た斜視図である。
【図4】コンプレッサとコンプレッサに接続された第1接続配管と第2接続配管と吸気フィルタ兼消音バッファを示す図である。
【図5】鼻カニューラが酸素濃縮装置の酸素出口部に接続された状態を示す斜視図である。
【図6】鼻カニューラの構成例を示す分解斜視図である。
【図7】鼻カニューラのカプラソケットと酸素出口部を示す斜視図である。
【図8】鼻カニューラのチューブの接続部とカプラソケットと酸素出口部を示す分解斜視図である。
【図9】酸素出口部とカプラソケットの付近を示す断面図である。
【図10】酸素濃縮装置のシステム構成例を示す図である。
【図11】鼻カニューラに着火した時から濃縮酸素が停止して鎮火されるまでの酸素出口部における温度変化の例を示す図である。
【図12】本発明の酸素濃縮装置における温度検知の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明のコンプレッサを備える酸素濃縮装置の実施形態の外観を示す前側から見た斜視図である。図2は、図1の酸素濃縮装置の外観の背面図である。
図1と図2に示す酸素濃縮装置1は、好ましくは携帯型(可搬型や移動型ともいう)の酸素濃縮装置である。図1に示す酸素濃縮装置1は、例えば、酸素生成原理として圧縮空気による圧縮空気力変動吸着法(PSA)を用いている。
圧縮空気のみによる正圧変動吸着法は、圧縮空気のみを吸着筒体内に送って窒素を吸着させる。正圧変動吸着法は、圧縮空気と減圧空気による正負圧変動吸着法(VPSA)に比べて、コンプレッサの小型化と軽量化が図れるメリットがある。
【0015】
図1と図2に示す酸素濃縮装置50は、一例として90%以上に濃縮された酸素の供給流量が最大5Lクラス(5L/分)の酸素濃縮装置(高さ62.5cm,幅35cm,奥行き29.5cm,重量23kg)であり、酸素流量の設定単位は、例えば0.25L〜5.00Lまで設定できる(0.25L〜2.00Lまでは、0.25Lごと、2.00L〜5.00Lまでは、0.50Lごと)。酸素濃縮装置1は、ほぼ直方体状の主筐体2と、流量設定が可能な表示部128と、加湿器Gと、カニューラ掛け2Kと、4隅のキャスタ2Tを有している。
主筐体2は、フロントパネル2Fと、左右のサイドパネル2Sと、リアパネル2Rと、上面部2Dと、底部2Bを有している。図1に示すように、上面部2Dに、前方に向かって斜め上方に約5〜10度に傾斜して設けられた表示部128と、上面部2Dにおいて表示部128の後方の凹部2Hに設けられた酸素出口部100と、電源スイッチ101と、酸素流量設定ボタン102が配置されている。フロントパネル2Fの上部には、幅方向のほぼ中央に加湿器Gの配置部2Gが開口して設けられている。キャスタ2Tは底部2Bの四隅部分に配置され、酸素濃縮装置1はこれらのキャスタ2を用いて移動可能になっている。
【0016】
図2を参照すると、リアパネル2Rは、上部の中央位置に主筐体2内に外気を取り入れるための空気取り入れ口5が形成され、下部の右側に主筐体2内の温まった空気を外部に排出するための排気口6が形成されている。空気取り入れ口5の内面側には、空気取り入れ口フィルタ7が着脱可能に装着されている。その他に、左右のサイドパネル2Sは取手8を有し、底部2Bは巻き取り式の電源コード9を有している。
【0017】
図3は、図1と図2に示す酸素濃縮装置1の内部構造例を示す斜め後ろ側から見た斜視図である。図4は、原料空気から濃縮酸素を発生させる濃縮酸素生成手段を構成するコンプレッサ10とこのコンプレッサ10に接続された第1接続配管40と第2接続配管41と吸気フィルタ兼消音バッファ38を示す図である。
図3に示すように、底部2Bの上にはコンプレッサ10が設定され、このコンプレッサ10は、直方体状の防音用のコンプレッサケース4内に配置されている。コンプレッサケース4の背面部には、濃縮酸素生成手段を構成する第1吸着筒体31と第2吸着筒体32がX方向(水平方向)に沿って間隔をおいて、しかもZ方向(垂直方向)に沿って平行に立てて固定されている。
【0018】
図3に示すように、コンプレッサ10のスリーブ12は、配管15に接続されており、この配管15の途中には、冷却用のラジエータ13と3方向切換弁14B、14Cが接続されている。第1吸着筒体31の内側には、第1ファン34が取り付けられ、第2吸着筒体32の内側には、第2ファン36が取り付けられている。
【0019】
図3に示すように、同形状の第1ファン34と第2ファン36は、例えばシロッコファンが用いられ、対面して位置されているが、第1ファン34と第2ファン36の取り付け向きが、互いに上下逆になるように、しかも互いに対面するようにして固定されている。
【0020】
図3に示すように、冷却用のラジエータ13は、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32の間であって、第1ファン34と第2ファン36の下部に配置されている。また、電源制御回路39が底部2Bに配置されている。
【0021】
図4は、コンプレッサ10の構造例を示す図であり、コンプレッサ10は、第1ポンプ部51と第2ポンプ部52を有している。第1ポンプ部51は、円筒状のスリーブ11と、このスリーブ11内に配置されたピストン11P、ヘッドカバー11Hと、コンロッド11Cと、ケース部11Fを有している。同様にして、第2ポンプ部52は、円筒状のスリーブ12と、このスリーブ12内に配置されたピストン12P、ヘッドカバー12Hと、コンロッド12C、ケース部12Fを有している。
【0022】
図4に示すように、スリーブ11,12はピストンシリンダともいう。駆動用モータ53は例えば同期モータであり、出力軸54を有している。出力軸54の両端部には、コンロッド11C、12Cが回転可能に支持されている。
図4に示すように、配管37と、第1接続配管40と第2接続配管41との間には、吸気フィルタ兼消音バッファ(サイレンサ、消音器)38が配置されている。配管37の端部37Bが、吸気フィルタ兼消音バッファ38の吸入側端部38Aに接続され、第1接続配管40の第1端部40Aと第2接続配管41の第1端部41Aが、吸気フィルタ兼消音バッファ38の排出側端部38Bに接続されている。そして、第1接続配管40の第2端部40Bが、ケース部11Fの吸入口(吸入ポート)11Pに接続され、第2接続配管41の第2端部41Bが、ケース部12Fの吸入口(吸入ポート)12Pに接続されている。
吸気フィルタ兼消音バッファ38とコンプレッサ10の間における原料空気の導入経路を複数に分けて、吸気フィルタ兼消音バッファ38とコンプレッサ10の間では、第1接続配管40と第2接続配管41が並列に接続されている。言いかえれば、第1接続配管40と第2接続配管41は、吸気フィルタ兼消音バッファ38とコンプレッサ10の吸入口11P、12Pを直接接続している。
これにより、配管37から吸気フィルタ兼消音バッファ38に導入された原料空気は、吸気フィルタ兼消音バッファ38を通過して、吸気フィルタにより塵埃等が除去されるとともに騒音が低減された後に、第1接続配管40と第2接続配管41に分かれて、ケース部11Fの吸入口11Pを通じてケース部11F内に導入できるとともに、ケース部12Fの吸入口12Pを通じてケース部12F内に導入できるようになっている。
ヘッドカバー11H、12Hは、共通して配管15に接続され、発生した圧縮空気はこの配管15を通じて送られる。この配管15の途中には放熱用のラジエータ13が配置されている。
【0023】
次に、図5〜図8を参照して、鼻カニューラ70について説明する。
図5は、鼻カニューラ70が酸素濃縮装置1の酸素出口部100に、カプラの一例であるカプラソケット71を用いて接続された状態を示す斜視図である。図6は、鼻カニューラ70の構成例を示す分解斜視図である。図7は、鼻カニューラ70のカプラソケット71と酸素出口部100を示す斜視図である。図8は、鼻カニューラ70のチューブの接続部とカプラソケット71と酸素出口部100を示す分解斜視図である。図9は、酸素出口部100とカプラソケット71の付近を示す断面図である。
図5と図6に示すように、鼻カニューラ70は、使用者Mが耳と鼻を利用して装着するカニューラの一例であり、装着部77と、チューブ72と、カプラの一例であるカプラソケット71を有する。チューブ72の一端部には接続部77Pを介して装着部77が接続され、チューブ72の他端部には接続部77Sを介してカプラソケット71が接続されている。
図7と図8に示すように、カプラソケット71は押圧ボタン71Nを有している。図7に示すように、使用者Mがこの押圧ボタン71NをE方向に押しながら、カプラソケット71をF方向(上方向)に引くことで、カプラソケット71は酸素出口部100からワンタッチで外すことができる。また、使用者Mがこの押圧ボタン71NをE方向に押しながら、カプラソケット71をF方向と逆方向に押すことで、図9に示すようにカプラソケット71は酸素出口部100へワンタッチで装着して接続することができる。
図9に示すチューブ72は、通常の接続チューブやこの接続チューブを延長するための延長チューブを指す。
【0024】
カプラソケット71は、屈曲可能な難燃性樹脂、例えば米国のUL−94規格のV−0ランク品、または酸素指数が26以上の性能を有する難燃性樹脂を使用している。このカプラソケット71は、自己消火性を有する難燃性樹脂により形成されているが、自己消火性を有する難燃性樹脂とは、耐燃性を有する樹脂であり、接炎するときに着火するが、火炎が伝搬せずに火炎を取り去った後、一定時間内に自己消火する性質をいう。
図8に示すように、酸素出口部100は、リング状のフランジ部100Fと円筒部100G、100Hを有している。フランジ部100fは、円筒部100Gと円筒部100Hの間に形成されている。
この酸素出口部100は、熱伝導率の高いさびにくい金属材料、例えば銅合金やアルミニウム合金等により作られている。このように酸素出口部100を金属材料により作ることで、酸素出口部100は、カプラソケット71からの熱を素早く温度センサ400に伝導できるので、温度センサ400による温度検知速度を早くすることができる。
【0025】
図9に示すように、この酸素出口部100は、例えばフランジ部100Fの穴部100L内に、温度センサ400が外部に露出しないように内蔵されている。温度センサ400としては、好ましくは安価で比較的感度の高いサーミスタを採用できるが、熱電対を採用しても良い。この温度センサ400が、好ましくはフランジ部100F内に内蔵されて外部に露出していないのは、この温度センサ400にスケール等の付着物が付着して正確に温度検知ができなくなるのを防ぎ、しかも図1に示す加湿器Gを用いても温度センサ400に水分が付着して正確に温度検知ができなくなるのを防ぐことができるためである。また、冬季,寒冷地等で暖房器具による直接の熱輻射による温度上昇に伴う誤検出を防止できることができるためである。温度センサ400は、例えばフランジ部100Fの穴部100L内に接着剤を用いて固定できるが、ねじ止めにより固定しても良い。
【0026】
図9に示すように、酸素濃縮装置1の上面部2Dにおいて表示部128の後方の凹部2Hに設けられた酸素出口部100の円筒部100Hには、継手79が接続されている。この継手79は、濃縮された酸素を、酸素出口部100を介してチューブ72側に供給するために接続されている。温度センサ400は、中央制御部200に電気的に接続されており、温度センサ400は中央制御部200に対して、温度センサ400が検知した酸素出口部100の温度情報TSを供給する。中央制御部200は、濃縮酸素を生成するためのさまざまな動作の制御を行う。温度センサ400は、酸素濃縮装置1の後部の凹部2Hにあるため、冬季,寒冷地等で暖房器具による直接の熱輻射による温度上昇に伴う誤検出を防止できる。
図5と図9に示すように、酸素出口部100には、鼻カニューラ70のカプラソケット71が着脱可能に接続される。カプラソケット71は、チューブ72を介して鼻カニューラ70に接続されている。使用者は、鼻カニューラ70とチューブ72と酸素出口部100を経て、例えば最大流量5L/分の流量で、約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
【0027】
次に、図10を参照して、上述した酸素濃縮装置1のシステム構成例を説明する。
図10は、酸素濃縮装置1のシステム構成例を示す図である。
図10に示す二重線は、原料空気、酸素、窒素ガスの流路となる配管を示している。また、細い実線は電源供給または電気信号の配線を示している。図10に示す酸素濃縮装置1の主筐体2は破線で示しており、この主筐体2は内部に配置された要素を密閉している密閉容器である。
【0028】
図10に示すように、主筐体2は、外気である原料空気を導入するための空気取り入れ口5と空気取り入れ口フィルタ7および排気するための排気口6を有している。空気取り入れ口5には、空気中の塵埃等の不純物を除去するための空気取り入れ口フィルタ7が交換可能に配置されている。原料空気は、コンプレッサ10が作動すると、空気取り入れ口フィルタ7を介して、内部の配管37と吸気フィルタ兼消音バッファ38と、この吸気フィルタ兼消音バッファ38に対して並列接続されている第1接続配管40と第2接続配管41を通じて、コンプレッサ10側に導入されるようになっている。
【0029】
このように原料空気は、コンプレッサ10に導入されて圧縮空気になるが、原料空気を圧縮する際に熱が発生する。このため、コンプレッサ10、特にスリーブ11,12は、冷却用の第1ファン34と第2ファン36からの送風により冷却する。そして、コンプレッサ10から配管15を通じて送られる圧縮空気は、ラジエータ13により冷却される。
このように圧縮空気を冷却することで、高温では機能低下してしまう吸着剤であるゼオライトの昇温を抑制できる。これにより、窒素の吸着により酸素を生成するための吸着剤として十分に機能できるようになり、酸素を90%程度以上にまで濃縮できる。
【0030】
第1吸着筒体31と第2吸着筒体32は、並べて配置された吸着部材の一例であり、縦方向に並列に配置されている。これら第1吸着筒体31と第2吸着筒体32には、それぞれ三方向切換弁14B,14Cが接続されている。一方の3方向切換弁14Bの一端部が配管15に接続されている。一方の3方向切換弁14Bと他方の3方向切換弁14Cとが互いに接続され、さらに、他方の3方向切換弁14Cの一端部が配管15Rに接続されている。配管15Rの端部は、排気口6に達している。
3方向切換弁14B、14Cは、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32にそれぞれ対応して接続されている。コンプレッサ10から発生する圧縮空気は、配管15と3方向切換弁14B、14Cを介して、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32に対して交互に供給される。
【0031】
触媒吸着剤であるゼオライトは、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内にそれぞれ貯蔵されている。このゼオライトは、例えばSi/Al比が2.0〜3.0であるX型ゼオライトであり、かつこのAlの四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと結合させたものを用いることで、単位重量当たりの窒素の吸着量を増やせるようにしている。このゼオライトは、特に1mm未満の顆粒測定値を有するとともに、四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと融合させたものが好ましい。ゼオライトを使用することで、他の吸着剤を使う場合に比べて酸素を生成するために必要となる原料空気の使用量を削減できるようになる。この結果、圧縮空気を発生するためのコンプレッサ10をより小型化が図れ、コンプレッサ10の低騒音化を図ることができる。
【0032】
図10に示すように、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32の出口側には、逆止弁と絞り弁と開閉弁とからなる均等圧弁107が接続されている。均等圧弁107の下流側には、合流する配管60が接続されており、この配管60にはバッファ61が接続されている。このバッファ61は、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32において分離生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵するための酸素貯蔵容器である。
【0033】
図10に示すように、バッファ61の下流側には、圧力調整器62が接続されており、圧力調整器62はバッファ61の出口側の酸素の圧力を一定に自動調整するレギュレータである。圧力調整器62の下流側には、フィルタ63を介してジルコニア式あるいは超音波式の酸素濃度センサ64が接続されており、酸素濃度センサ64は、酸素濃度の検出を間欠的に(10〜30分毎に)または連続的に行うようになっている。
【0034】
図10に示すように、バッファ61には、比例開度弁65が接続されている。この比例開度弁65は、中央制御部200の指令により流量制御部202からの信号により、酸素流量設定ボタン102の設定ボタン操作に連動して開閉する。比例開度弁65には酸素流量センサ66が接続されている。この酸素流量センサ66には、加湿器Gと酸素流量センサ67が接続されている。この酸素流量センサ67の後段には、酸素出口部100が接続されている。
図10に示す酸素出口部100には、鼻カニューラ70のカプラソケット71が着脱可能に接続される。カプラソケット71は、チューブ72を介して鼻カニューラ70に接続されている。患者は、鼻カニューラ70を経て、例えば最大流量5L/分の流量で、約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
酸素出口部100に内蔵された温度センサ400は、中央制御部200に電気的に接続されており、温度センサ400が検知した酸素出口部100の温度情報TSは、中央制御部200に与えられる。
【0035】
次に、図10を参照して電源系統を説明する。
図10に示すAC(商用交流)電源のコネクタ203は、電源制御回路39に電気的に接続され、電源制御回路39は商用交流電源の交流電圧を所定の直流電圧に整流する。内蔵電池204は、主筐体2に内蔵されている。内蔵電池204は、繰り返し充電可能な2次電池であり、内蔵電池204は電源制御回路39からの電力供給を受けて充電できる。
【0036】
これにより、図1の中央制御部200が電源制御回路39を制御することで、電源制御回路39は、例えばACアダプタ203からの電力供給を受けて作動する第1電力供給状態と、内蔵電池204からの電力供給を受けて作動する第2電力供給状態の内の1つの供給状態に自動切換して使用できる。内蔵電池204は充電時のメモリ効果が少なく再充電時にも満杯充電できるリチウムイオン、リチウム水素イオン2次電池が良いが、従来からのニッカド電池やニッケル水素電池でも良い。
【0037】
図10の中央制御部200は、モータドライバ210とファンモータドライバ211に電気的に接続されている。中央制御部200は生成する酸素量に応じた最適な動作モードに切り替えるプログラムが記憶されている。モータドライバ210とファンモータドライバ211は、中央制御部200の指令により、多くの酸素生成をする場合は自動的にコンプレッサ10と第1ファン34と第2ファン36を高速駆動し、少ない酸素生成時の場合にはコンプレッサ10と第1ファン34と第2ファン36を低速に回転駆動する制御を行う。
【0038】
この中央制御部200には、所定動作プログラムを記憶したROM(読み出し専用メモ)が内蔵されるとともに、中央制御部200には、外部記憶装置と揮発メモリと一時記憶装置とリアルタイムクロックからなる回路が電気的に接続されている。中央制御部200は、通信コネクタ205を介して外部の通信回線等と接続することでアクセスが可能となる。
図10に示す3方向切換弁14B、14Cと均等圧弁107とをオンオフ制御することで、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内の不要ガスを脱離させるように制御する制御回路(図示せず)と、圧力調整器62と、流量制御部202と、酸素濃度センサ64が、中央制御部200に電気的に接続されている。流量制御部202は、比例開度弁65を制御し、酸素流量センサ66と酸素流量センサ67の酸素流量値は、中央制御部200に送られる。図10に示す中央制御部200には、酸素流量設定ボタン102と、表示部128と、電源スイッチ101と、表示スイッチ128Sが電気的に接続されている。
中央制御部200は、ブザーやランプ等の警報手段SPに電気的に接続されている。警報手段SPは、酸素の供給が遮断された時に、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを音や光で警報を発することができる。また、スピーカ290が、中央制御部200に電気的に接続され、このスピーカ290は、酸素の供給が遮断された時に、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを音声でガイドする。また、表示部128には、酸素の供給が遮断された時に、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを文字や絵で表示する。
【0039】
酸素流量設定ボタン102は、例えば90%程度以上に濃縮された酸素を毎分当たり0.25L(リットル)から最大で5Lまで0.25L段階で操作するごとに、酸素流量を設定できる。表示部128は、例えば、7セグメント表示の液晶ディスプレイなどの表示装置が利用されている。表示部128には、例えば酸素流量、酸素ランプ、警報アイコン(チューブ折れ、加湿器外れ、酸素濃度低下、電源供給停止、バッテリ残量、バッテリ運転中、充電ランプ)、積算時間等の表示項目を表示することができる。
【0040】
図10に示すコンプレッサ10は、すでに説明したように圧縮空気のみを発生させることで正圧変動吸着法(PSA)により、圧縮空気を第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内に送り、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内の吸着剤により圧縮空気中の窒素を吸着させる。コンプレッサ10の駆動用モータ53は、同期モータであっても、その他に例えば単相交流誘導モータであっても良いし、単相4極交流同期モータであっても良いし、特に種類は限定されない。
【0041】
次に、上述した酸素濃縮装置1の動作例を、図10〜図12を参照して説明する。
図5と図9に示すように、使用者Mが酸素濃縮装置1に対してカニューラ70を用いて濃縮酸素を吸入する場合には、使用者Mはチューブ72の先端のカプラソケット71を酸素出口部100に対して押しこんで接続する。
図12のステップS1において、使用者Mが図10に示す電源スイッチ101をオンして、濃縮酸素の吸入を開始すると、ステップS2では、温度センサ400からの温度情報TS(出力信号)を受けて、酸素出口部100における温度の監視を開始する。
図10に示す中央制御部200がモータドライバ210に指令して、モータドライバ210がコンプレッサ10の駆動用モータ53を始動して、図4に示す駆動用モータ53の出力軸54が連続回転をする。これにより、図4に示す第1ヘッド部51のピストン11Pと第2ヘッド部52のピストン12Pは往復移動する。
【0042】
コンプレッサ10が動作すると、原料空気は、図10に示す空気取り入れ口5から取り入れられてフィルタ7により塵埃等の不純物を取り除き、内部の配管37と吸気フィルタ兼消音バッファ38と、並列接続された第1接続配管40と第2接続配管41を通じて、図4のコンプレッサ10の吸入口11P、12Pを経てスリーブ11,12内に導入される。このように、図4に示す配管37から吸気フィルタ兼消音バッファ38に導入された原料空気は、吸気フィルタ兼消音バッファ38を通過して塵埃等が除去されるとともに騒音が低減された後に、並列接続された第1接続配管40と第2接続配管41に分かれて、ケース部11Fの吸入口11Pを通じてケース部11F内に導入できるとともに、ケース部12Fの吸入口12Pを通じてケース部12F内に導入できる。そして、図4のピストン11Pとピストン12Pが上死点に位置すると、スリーブ11とスリーブ12内の原料空気が圧縮される。逆に、ピストン11Pとピストン12Pが下死点に位置すると、スリーブ11とスリーブ12内に原料空気が吸入される状態になる。
第1接続配管40と第2接続配管41は、吸気フィルタ兼消音バッファ38とコンプレッサ10の間における原料空気の導入経路を並列になるように複数系統に分けて、吸気フィルタ兼消音バッファ38とコンプレッサ10の吸入口11P、12Pを直接接続している。このことから、第1接続配管40と第2接続配管41の1本当たりの送るべき原料空気量を減らすことができる。言いかえれば、第1配管40と第2配管41の直径を小さく設定しても圧力損失が増加せずに済む。また、原料空気をコンプレッサ10に送る際の第1接続配管40と第2接続配管41の1本当たりの騒音も各段に小さくなるので、第1接続配管40と第2接続配管41を用いても、従来の1本の配管の途中を分岐して分岐配管を形成するのに比べて、騒音を低減できる。
そして、図10に示すコンプレッサ10が発生する圧縮空気は、配管15を介して、第1吸着筒体13と第2吸着筒体32側に供給できる。
【0043】
一方、図10に示す中央制御部200は、モータドライバ211に指令を与えて第1ファン34と第2ファン36を回転させる。コンプレッサ10が原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する際に、コンプレッサ10のスリーブ11,12はそれぞれ第1ファン34と第2ファン36の送風により冷却され、しかも配管15を通る圧縮空気は、ラジエータ13を通過することで冷却される。そして、圧縮空気は、配管15と3方向切換弁14B、14Cを経て第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内の吸着剤を通過して窒素を吸着することにより、酸素が分離して生成される。バッファ61は、分離して生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵することができる。
【0044】
図10の酸素濃度センサ66は、バッファ61からの酸素の濃度の検出を行う。比例開度弁65は、酸素流量設定ボタン102に連動して開閉する。そして、酸素は、酸素出口部100を経て、鼻カニューラ70に供給される。これにより、患者は、鼻カニューラ70を経て例えば最大流量5L/分の流量で、約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
【0045】
ところで、上述したように、使用者が鼻ューラ70を用いて濃縮酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた時に、鼻ニューラ70のチューブ72が直接着火したり、酸素濃縮装置1の表面が高温状態になるおそれがある。
そこで、例えばたばこの火が鼻カニューラ70のチューブ72に直接着火してしまった場合に、安全性を確保するために、濃縮酸素の供給を遮断する動作について説明する。そして、この直接着火とは別に、酸素濃縮装置1の表面が高温状態になった場合に、安全性を確保するために、濃縮酸素の供給を遮断する動作について説明する。
【0046】
まず、図5に示す使用者Mが、例えば喫煙していて、たばこの火が鼻カニューラ70のチューブ72に万一引火した場合には、火炎はチューブ72を経てカプラソケット71に向かって進み、そして炎達して、カプラソケット71が引火して空気中の酸素により燃焼または過熱する。このようにカプラソケット71が燃焼または過熱すると、カプラソケット71から酸素出口部100に熱が伝わるので、酸素出口部100が温度上昇する。
そこで、図12のステップS3では、温度センサ400が酸素出口部100の温度を測定して図10に示す中央制御部200に温度情報TSを送る。酸素出口部100の測定温度が、所定の使用環境温度以上の予め定めた温度、中央制御部200が例えば予め定めた温度である40℃以上になっているかどうかを判断する。
【0047】
ステップS3において酸素出口部100の測定温度が、予め定めた温度である40℃以上である場合には、さらにステップS4において、例えば予め定めた単位時間当たりの温度の上昇値である温度上昇率2℃/1秒(1秒間で2℃上昇)以上となる現象が、ステップS5において予め定めた継続時間以上、例えば3秒間以上継続したことを、中央制御部200が判断すると、ステップS7において、図10の中央制御部200は、モータドライバ210に指令を与えて、ポンプ10による圧縮空気の生成動作を停止させる。
これにより、カニューラ70やチューブ72が直接着火して火炎がカプラソケット71に炎達して酸素出口部100の温度が上昇した場合であっても、安全性を確保するために、酸素出口部100と鼻カニューラ70への濃縮酸素の供給を遮断することができる。
【0048】
しかも、この濃縮酸素の遮断とともに、図12のステップS7に示すように、図10の中央制御部200は、警報手段SPにより使用者に対して警報を音や光あるいはその両方により知らせ、スピーカ290が、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを音声でガイドする。また、表示部128には、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを文字や絵で表示する。これにより、使用者は濃縮酸素の供給が遮断されたことを、耳と目で確実に認知することができる。
カプラソケット71は、すでに説明したように自己消火性を有する難燃性樹脂で作られているで、酸素出口部100からの濃縮酸素の供給が停止すると、カプラソケット71の燃焼は続かずに自己消火する。
なお、鼻カニューラ70をフッ素樹脂で作れば、鼻カニューラ70が着火しても自己消火できるが、フッ素樹脂は硬い材質なので柔軟性に乏しく、使用者はこの鼻カニューラ70を装着してフィットさせることが難しい。
【0049】
また、図12のステップS4において、予め定めた温度上昇率未満であるか、ステップS5において予め定めた温度上昇率以上の状態が予め定めた継続時間以上継続していない場合には、図1に示す酸素濃縮装置1自体が、火災や異常な高温環境にさらされて、酸素濃縮装置1の表面が高温状態になっているので、ステップS6に移る。
ステップS6では、酸素出口部100の温度が別の予め定めた温度、例えば70℃以上に達したことを、酸素出口部100の温度センサ400が検知すると、図10の中央制御部200は、モータドライバ21に指令を与えてコンプレッサ10のモータ53の動作を停止させることで濃縮酸素の供給を遮断させる。ステップ6により、冬季,寒冷地等で暖房器具による直接の熱輻射による温度上昇に伴う誤検出を防止できる。
【0050】
これにより、シンプルな構造を採用しながらも、酸素濃縮装置1の主筐体2に対して延焼することを防ぐことができる。この濃縮酸素の遮断とともに、図12のステップS7に示すように、図10の中央制御部200は、警報手段SPにより使用者に対して警報を音や光あるいはその両方により知らせ、スピーカ290が、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを音声でガイドする。また、表示部128には、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを文字や絵で表示する。これにより、使用者は濃縮酸素の供給が遮断されたことを、耳と目で確実に認知することができる。
なお、酸素供給を停止した時に、燃焼しているカプラソケット71は鎮火して酸素濃縮装置1への延焼を防止でき、カプラソケット71へ引火してから鎮火するまでの時間は、おおよそ15〜30秒である。
【0051】
ここで、図11を参照して、鼻カニューラ70のチューブ72に着火した時から濃縮酸素が停止して鎮火されるまでの酸素出口部100における温度変化の例を簡単に説明する。
図11は、鼻カニューラ70のチューブ72に着火した時から濃縮酸素が停止して鎮火されるまでの酸素出口部100における温度変化の例を示している。この酸素出口部100における温度変化は、図10に示す温度センサ400から温度情報TSとして中央制御部200に送られる。
図11(A)は、鼻カニューラ70のチューブ72が着火して、チューブ72内の火炎FRがDL方向に伝わっている様子を示しており、この時の酸素出口部100の温度は室温の22℃である。図11(B)は、チューブ72内を伝わった火炎FRがカプラソケット71に炎達する直前の様子を示す。この場合の酸素出口部100の温度はまだ室温である。
【0052】
図11(C)では、この火炎FRがカプラソケット71に炎達してカプラソケット71が燃焼し、カプラソケット71の燃焼により発生する熱が熱伝導性の優れた酸素出口部100を経て酸素出口部100に伝わることで、図10に示す温度センサ400が酸素出口部100の温度上昇を測定している様子を示す。このように火炎FRがカプラソケット71に近づくと、時点T4において酸素出口部100の温度が22℃から徐々に上昇し始めている。
図11(D)では、酸素出口部100の温度が、例えば図11(B)の時点T1から20秒経過した時点T3において50℃に達した時点を示している。時点T2から時点T3までで10秒間経過すると、酸素出口部100の温度は20℃上昇している。
時点T5から時点T3の間では、酸素出口部100の測定温度が40℃以上となっており、しかも時点T5から時点T3の5秒間の間に、予め定めた温度上昇率である2℃/1秒で温度上昇しており、この温度上昇が3秒間以上である5秒間継続している。
【0053】
このため、図11の中央制御部200は、モータドライバ21に指令を与えてコンプレッサ10のモータ53の動作を停止させることで濃縮酸素の供給を停止させる。これにより、酸素出口部100からは濃縮酸素が出ないので、カプラソケット71の火炎は収まって鎮火する。
このように、シンプルな構造を採用しながらも、酸素濃縮装置1の主筐体2に対して延焼することを防ぐことができる。濃縮酸素の遮断とともに、図10の中央制御部200は、警報手段SPにより使用者に対して警報を音や光あるいはその両方により知らせ、スピーカ290が、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを音声でガイドする。また、表示部128には、使用者に対して酸素の供給が遮断されたことを文字や絵で表示する。これにより、使用者は濃縮酸素の供給が遮断されたことを、耳と目で確実に認知することができる。
【0054】
本発明の実施形態の酸素濃縮装置では、使用者がカニューラを用いて酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた場合に、酸素を遮断して安全性を確保することができる。火災等の異常な高温環境下にさらされた時に、酸素濃縮装置への延焼やこの装置自体の火災等を防止することができる。
制御部は、温度センサにより検知された温度が予め定めた温度以上に達し、しかも単位時間当たりの温度の上昇値である温度上昇率が予め定めた値以上に達している継続時間が、予め定めた継続時間以上続いた場合に、コンプレッサの動作を停止して酸素の供給を遮断する。これにより、酸素出口部の温度が上がっていることを検知して、酸素の供給を確実に遮断することができる。
【0055】
制御部は、温度センサにより検知された温度が予め定めた温度以上に達し、しかも温度上昇率が予め定めた値未満である場合に、温度センサにより検知された温度がさらに予め定めた温度を超える別の設定温度以上に達すると、コンプレッサの動作を停止して酸素の供給を遮断する。これにより、酸素出口部の温度が上がっていることを検知して、酸素の供給を確実に遮断でき、酸素濃縮装置本体に延焼してしまうことを防げる。
温度センサは、サーミスタであり、温度センサは酸素出口部に内蔵されている。これにより、温度センサとしては安価なサーミスタを用いてコストダウンが図れ、しかも温度センサが酸素出口部に内蔵されているので、温度センサにスケール等の付着物が付着して正確に温度検知ができなくなるのを防ぎ、しかも加湿器を用いても温度センサに水分が付着して正確に温度検知ができなくなるのを防ぐことができる。
【0056】
カプラは、難燃性樹脂材料により作られているので、酸素出口部からの酸素の供給が停止すると、カプラの火炎がなくなる。
酸素出口部は、熱導電性を有する金属により作られているので、カプラが燃焼した熱は、酸素出口部を通じて温度センサに対して早く伝えることができ、温度検知時間が短くなる。
酸素濃縮装置は、制御部の指令により酸素出口部からの酸素を遮断したことを報知する警報手段と、制御部の指令により酸素出口部からの酸素を遮断したことを音声で報知するスピーカと、を有するので、使用者に対して酸素供給が停止されたことを確実に知らせることができる。
また、圧縮空気のみによる正圧変動吸着法(PSA)は、圧縮空気のみを吸着筒体内に送り窒素を吸着させるので、圧縮空気と減圧空気による正負圧変動吸着法(VPSA)に比べて、コンプレッサの小型化と構造の簡単化が図れるメリットがある。
【0057】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
酸素出口部100の測定温度は40℃以上であるが、45℃以上等他の値を採用することもできる。予め定めた酸素出口部100における温度上昇率は、2℃/1秒であるが、例えば1℃/1秒であって良い。この温度上昇率が3秒間以上継続することにしているが、例えば5秒以上であっても良く、任意に設定できる。
温度センサは、酸素出口部に内蔵する以外に、酸素出口部の外側に配置しても良い。酸素出口部は、熱伝導性の優れた金属材料により作ることができるが、これに代えて、熱伝導率は金属に比べて低下するが、例えばセラミックスのような難燃性材料により作ることも可能である。
図に示すコンプレッサ10の駆動用モータは、例えば5Lクラスのモータであるが、これに限らず例えば3Lクラス等に適するモータを用いても良い。コンプレッサの形式は時に限定されず、任意の形式が採用できる。
酸素濃縮装置は、圧力スイング吸着法を利用したものに限られず、膜型のものでもよい。
【符号の説明】
【0058】
1・・・酸素濃縮装置、2・・・主筐体、10・・・コンプレッサ、70・・・鼻カニューラ(カニューラの一例)、71・・・カプラソケット(カプラの一例)、72・・・チューブ、100・・・酸素出口部、290・・・スピーカ、400・・・温度センサ、SP・・・警報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気から濃縮酸素を発生させる濃縮酸素生成手段と、該濃縮酸素生成手段で生成された該濃縮酸素を供給するための酸素出口部と、
カニューラのチューブに取り付けられて、前記酸素出口部に対して前記チューブを着脱可能に接続し、温度センサを有するカプラと、
前記温度センサにより検知された温度が、予め定めた温度以上に達すると、前記濃縮酸素生成手段の動作を停止して前記酸素の供給を遮断する制御部と、
を有していることを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度センサにより検知された温度が前記予め定めた温度以上に達し、しかも単位時間当たりの温度の上昇値である温度上昇率が予め定めた値以上に達している継続時間が、予め定めた継続時間以上続いた場合に、前記該濃縮酸素生成手段であるコンプレッサの動作を停止して前記酸素の供給を遮断することを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度センサにより検知された温度が前記予め定めた温度以上に達し、しかも前記温度上昇率が前記予め定めた値未満である場合に、前記温度センサにより検知された温度がさらに前記予め定めた温度を超える別の設定温度以上に達すると、前記コンプレッサの動作を停止して前記酸素の供給を遮断することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記温度センサは、サーミスタであり、前記温度センサは前記酸素出口部に内蔵されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
前記カプラは、難燃性樹脂材料により作られていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
前記酸素出口部は、熱導電性を有する金属により作られていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項7】
前記制御部の指令により前記酸素出口部からの前記酸素を遮断したことを報知する警報手段と、前記制御部の指令により前記酸素出口部からの前記酸素を遮断したことを音声で報知するスピーカとを有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の酸素濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−143107(P2011−143107A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7199(P2010−7199)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(396007694)株式会社医器研 (57)
【Fターム(参考)】