酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びに電池
【課題】 低コストで製造することが可能でありながら、高い酸素還元活性を示す酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びに電池の提供。
【解決手段】 酸素還元電極触媒は、遷移金属酸化物のナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在してなる複合材料よりなることを特徴とする。この酸素還元電極触媒においては、前記遷移金属酸化物を構成する遷移金属が、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、この酸素還元電極触媒においては、前記複合材料が、前記ナノシートがランダムに積層された構造を有するもの、または前記ナノシートが断面が渦巻き状になるよう丸められた構造を有するものであることが好ましい。
【解決手段】 酸素還元電極触媒は、遷移金属酸化物のナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在してなる複合材料よりなることを特徴とする。この酸素還元電極触媒においては、前記遷移金属酸化物を構成する遷移金属が、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、この酸素還元電極触媒においては、前記複合材料が、前記ナノシートがランダムに積層された構造を有するもの、または前記ナノシートが断面が渦巻き状になるよう丸められた構造を有するものであることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソードなどに保持されて使用される酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びに電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーや環境問題に関連して、300℃以下の低温域で作動する燃料電池や酸素センサーなど電気化学デバイスの研究が盛んに行われている。
固体高分子形燃料電池(PEFC)や直接メタノール形燃料電池(DMFC)、あるいは酸素センサーなどの酸化還元電極を使用する電気化学デバイスでは、従来、カソード触媒として、白金およびその合金が用いられてきた(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
しかしながら、白金は高価であり、またその資源量が少ないという問題がある。
このために、非白金系のカソード触媒の開発が進められている(例えば特許文献3〜6参照。)。
【0004】
しかしながら、このような非白金系のカソード触媒を燃料電池に適用すると、酸性の電解質中で1V以上の電極電位が高い状態に晒されるために溶解してしまい、安定性が低く、さらに酸素還元活性が低いという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2006−216385号公報
【特許文献2】特開2006−278312号公報
【特許文献3】特開2005−161203号公報
【特許文献4】特開2005−220001号公報
【特許文献5】特開2004−315347号公報
【特許文献6】特開2005−138204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、低コストで製造することが可能でありながら、高い酸素還元活性を示す酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びに電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の酸素還元電極触媒は、遷移金属酸化物のナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在してなる複合材料よりなることを特徴とする。
【0008】
本発明の酸素還元電極触媒においては、前記遷移金属酸化物を構成する遷移金属が、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の酸素還元電極触媒においては、前記複合材料が、前記ナノシートがランダムに積層された構造を有するもの、または前記ナノシートが断面が渦巻き状になるよう丸められた構造を有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の酸素還元電極触媒においては、前記陽イオンが、プロトンである構成とすることができる。
【0011】
本発明の酸素還元電極は、上記の酸素還元電極触媒を保持してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の電池は、電解質と、上記の酸素還元電極とを有することを特徴とする。
本発明の電池において、電解質は、酸性およびアルカリ性のいずれのものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸素還元電極触媒によれば、遷移金属酸化物の負電荷を有するナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在し、かつ、ランダムに積層された構造や断面が渦巻き状になるよう丸められた構造などの特異的なナノ構造を有することから、その表面および層間において高いプロトン伝導性または親水性が発揮されると推測され、その結果、カソードにおける電極反応サイトへプロトン(または水)が速やかに供給され、従って当該カソードの反応サイトにそれぞれが原子・分子レベルで接近された状態において酸素分子、プロトン(または水)および電子が十分に供給されるため、十分にカソードの電極反応を進行させることができ、その結果、従来の非白金系のカソード触媒に比較して高い酸素還元活性を得ることができる。
また、遷移金属化合物が酸化チタンである酸素還元電極触媒によれば、酸化チタンの特性により高い耐酸性を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びにこの酸素還元電極を用いた電池は、酸素還元電極触媒の原料を酸化チタンとした場合は、その資源量が豊富で安価であるため、低コストで製造することが可能である。よって、燃料電池などの製造コストを低減させることができ、この燃料電池などのデバイスの実用化および普及のために極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
<第1の実施の形態:積層型>
図1は、本発明の酸素還元電極触媒の構成の一例を模式的に示す説明図である。
この例の酸素還元電極触媒は、遷移金属酸化物のナノシート(以下、「酸化物ナノシート」という。)12の積重構造体におけるシート積重領域のシートとシートとの間に陽イオン15が介在してなる複合材料よりなるものであって、具体的には、酸化物ナノシート12がそのシート間に陽イオン15を介在させた状態で複数、規則的に積層された複合材料(以下、「積層型複合材料」という。)10Aよりなるものである。
この酸素還元電極触媒を構成する積層型複合材料10Aは、通常の乾燥状態において粒径3〜5μmの2次粒子を形成している粉末状のものである。
【0017】
酸化物ナノシート12の遷移金属酸化物を構成する遷移金属は、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択されるものとすることができ、これらのうちの1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。遷移金属としては、特に、耐酸性に優れることや、高資源量であり安価であること、さらに無害で取り扱いが容易であることなどから、Tiを用いることが好ましい。
【0018】
酸化物ナノシート12間に介在される陽イオン15としては、H+ ,H3 O+ などのプロトンやNa+ などが挙げられ、特にプロトンであることが好ましい。
【0019】
この積層型複合材料10Aにおいては、隣接して積層される酸化物ナノシート12間に介在されるべき陽イオン15が上下の酸化物ナノシート12,12に共に十分に密着された状態とされており、そのシート間距離は、陽イオン15および酸化物ナノシート12を構成する遷移金属酸化物の種類によって異なるが、例えば陽イオン15がH3 O+ 、遷移金属酸化物が酸化チタンである場合、そのシート間距離は0.900〜1.000nmとされる。ここに、「シート間距離」とは、一つの酸化物ナノシート12の厚さ方向の中心から隣接する酸化物ナノシート12の厚さ方向の中心までの距離をいう。
【0020】
〔積層型複合材料10Aの製造方法〕
以上のような積層型複合材料10Aは、以下の工程を経ることによって製造することができる。
(1) 酸化物ナノシート12を構成すべき遷移金属酸化物、および被交換用陽イオンの供給原料の混合物を焼成処理して酸化物ナノシート12が複数、規則的に積層された積重構造体におけるシート積重領域の各シート間に被交換用陽イオンが介在された積層型複合材料(以下、これを「原料積層型複合材料」という。)を得る固相反応工程。
(2) 上記(1)で得られた原料積層型複合材料に、陽イオン15を供給すべき陽イオン供給原料を加え、被交換用陽イオンを目的とする陽イオン15にイオン交換させるイオン交換処理を行って積層型複合材料10Aを得るイオン交換工程。
【0021】
〔(1)固相反応工程〕
この固相反応工程において用いられる被交換用陽イオンとしては、Na+ 、Cs+ 、K+ などのアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオン、並びにNH4+などを挙げることができ、これらのうち、イオン交換されやすいことからNa+ 、K+ 、Cs+ を用いることが好ましい。
被交換用陽イオンの供給原料としては、例えば陽イオンがCs+ である場合はCs2 CO3 を例示することができる。
【0022】
また、焼成処理は、例えば、電気炉などによって温度800〜850℃の条件で24時間行うものとされる。また、固相反応工程において、この焼成処理は、数回繰り返し行ってもよい。
【0023】
この固相反応工程において酸化物ナノシート12が規則的に積層されて原料積層型複合材料が形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0024】
〔(2)イオン交換工程〕
このイオン交換工程において用いられる陽イオン供給原料としては、例えば陽イオン15がプロトンである場合は塩酸を例示することができる。
【0025】
また、イオン交換処理は、イオン交換率を高めるために、数回繰り返すことができる。
また、イオン交換工程において、積層型複合材料10Aは、静置後の濾過および/または遠心分離によって収集された沈殿物を洗浄・乾燥させることにより、得られる。
【0026】
このイオン交換工程において酸化物ナノシート12が規則的に積層された積層型複合材料10Aが形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0027】
このような積層型複合材料10Aは、図4に示されるように、例えば燃料電池のカソード25において、例えば高表面積カーボン23に高い分散性で担持または混合された状態の積層型複合材料10Aが当該カソード25に保持されて酸素還元電極として用いられて酸素還元反応の電極触媒として作用するものである。
この積層型複合材料10Aが担持された酸素還元電極を用いた燃料電池について説明すると、アノード21とカソード25とによって高分子電解質膜27が挟持された構造とされており、この高分子電解質膜27が酸性のものである場合、以下のような電気化学的反応が進行する。
まず、アノード21に供給された水素ガスは、適宜に酸化されてプロトンと電子とに分解される。
次に、生成したプロトンが、高分子電解質膜27を通ってカソード25に保持された積層型複合材料10Aに達する。
一方、アノード21において生成された電子は、アノード21とカソード25とを電気的に接続する結線29を通してカソード25に保持された複合粒子の積層型複合材料10Aに達する。
そして、積層型複合材料10Aに達したプロトンおよび電子はカソード25に供給される酸素ガスと反応して水を生成する。
この燃料電池においては、結線29内を電子が移動することによって電気が外部に取り出される。
ここに、酸性環境下において用いられる積層型複合材料10Aは、電子導電性を有するのみならず、プロトン伝導性を有するものと考えられる。
【0028】
一方、高分子電解質膜27がアルカリ性のものである場合、以下のような電気化学的反応が進行する。
まず、カソード25に供給された酸素ガスが、高分子電解質膜27および積層型複合材料10Aを介して供給される水、並びに結線29および積層型複合材料10Aを介して供給される電子によって還元されてOH- が生成する。
次に、生成したOH- が、高分子電解質膜27を通ってアノード21に達する。
そして、このアノード21において、当該アノード21に供給される水素ガスと反応して水と電子を生成する。
この燃料電池においても、結線29内を電子が移動することによって電気が外部に取り出される。
ここに、アルカリ性環境下において用いられる積層型複合材料10Aは、電子導電性を有するのみならず、高い親水性を有するものと考えられる。
【0029】
以上の酸素還元電極触媒によれば、負電荷を有する酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間にプロトンなどの陽イオンが介在し、かつ、規則的に積層された特異的なナノ構造を有することから、その表面およびシート間において高いプロトン伝導性または親水性が発揮されると推測され、その結果、カソードにおける電極反応サイトへプロトン(または水)が速やかに供給され、従って当該カソードの反応サイトにそれぞれが原子・分子レベルで接近された状態において酸素分子、プロトン(または水)および電子が十分に供給されるため、十分にカソードの電極反応を進行させることができ、その結果、従来の非白金系のカソード触媒に比較して高い酸素還元活性を得ることができる。
また、遷移金属化合物が酸化チタンである酸素還元電極触媒によれば、酸化チタンの特性により高い耐酸性を得ることができる。
さらに、本発明の酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びにこの酸素還元電極を用いた電池は、酸素還元電極触媒の原料を酸化チタンとした場合は、その資源量が豊富で安価であるため、低コストで製造することが可能である。よって、燃料電池などの製造コストを低減させることができ、この燃料電池などのデバイスの実用化および普及のために極めて有用である。
【0030】
<第2の実施の形態:ランダム積層型>
図2は、本発明の酸素還元電極触媒の構成の別の一例を模式的に示す説明図である。
この例の酸素還元電極触媒は、酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間に陽イオン15が介在してなる複合材料よりなるものであって、具体的には、酸化物ナノシート12がそのシート間に陽イオン15を介在させた状態で複数、ランダムに積層された複合材料(以下、「ランダム積層型複合材料」という。)10Bよりなるものである。
この酸素還元電極触媒を構成するランダム積層型複合材料10Bは、通常の乾燥状態において粒径1〜2μmの2次粒子を形成している粉末状のものである。
【0031】
酸化物ナノシート12の遷移金属酸化物を構成する遷移金属、および酸化物ナノシート12間に介在される陽イオン15としては、第1の実施の形態におけるものと同様のものを挙げることができる。
【0032】
このランダム積層型複合材料10Bにおいては、隣接して積層される酸化物ナノシート12間に介在されるべき陽イオンが上下の酸化物ナノシート12,12に共に密着された状態とされているが、用いられる遷移金属酸化物および陽イオンの種類が同じである場合の上記の積層型複合材料10Aよりもそのシート間距離の平均値が大きくなる。
【0033】
〔ランダム積層型複合材料10Bの製造方法〕
以上のようなランダム積層型複合材料10Bは、上記の積層型複合材料10Aを原料としてさらに以下の工程を経ることによって製造することができる。
(3) 原料である積層型複合材料10Aの陽イオン15を剥離用陽イオンにイオン交換することにより、酸化物ナノシート12を互いに分離させてコロイド溶液とするシート分離工程。
(4) 上記(3)で得られたコロイド溶液に酸化物ナノシート12の再積層用陽イオンのアルカリ溶液などを添加して長時間にわたって静置し、酸化物ナノシート12を再積層化させてランダム積層物を得る再積層化工程。
(5) 上記(4)で得られたランダム積層物に、陽イオン15を供給すべき陽イオン供給原料を加え、再積層用陽イオンを目的とする陽イオン15にイオン交換させるイオン交換処理を行ってランダム積層型複合材料10Bを得る再イオン交換工程。
【0034】
〔(3)シート分離工程〕
このシート分離工程において用いられる剥離用陽イオンとしては、上記(2)イオン交換工程で得られた積層型複合材料10Aを構成する陽イオン15よりもイオン半径の大きなものを選択する必要があり、原料として用いる積層型複合材料10Aを構成する陽イオン15の種類によっても異なるが、例えば、[(n−C4 H9 )4 N]+ などを挙げることができる。
剥離用陽イオンとして原料の積層型複合材料10Aを構成する陽イオン15よりもイオン半径の大きなものを用いることにより、その酸化物ナノシート12同士を分離させることができる。
剥離用陽イオンの供給原料としては、例えば剥離用陽イオンが[(n−C4 H9 )4 N]+ である場合は[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を例示することができる。
【0035】
このシート分離工程において得られるコロイド溶液は、負電荷を帯びた酸化物ナノシート12と、酸化物ナノシート12間に介在していた陽イオン15とが互いに分離している状態のものである。
【0036】
〔(4)再積層化工程〕
この再積層化工程において用いられる再積層用陽イオンとしては、Na+ 、Cs+ 、K+ などのアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオン、並びにNH4+などを挙げることができる。
再積層用陽イオンの供給原料としては、例えば陽イオンがNa+ である場合はNaOH水溶液を例示することができる。
この再積層化工程においては、静置時間は例えば1週間とされる。
また、この再積層化工程において酸化物ナノシート12がランダムに積層されてランダム積層物が形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0037】
〔(5)再イオン交換工程〕
この再イオン交換工程において用いられる陽イオン供給原料としては、例えば陽イオンがプロトンである場合は塩酸を例示することができる。
【0038】
また、再イオン交換処理は、イオン交換率を高めるために、数回繰り返すことができる。
また、再イオン交換工程において、ランダム積層型複合材料10Bは、静置後の濾過および/または遠心分離によって収集された沈殿物を洗浄・乾燥させることにより、得られる。
【0039】
この再イオン交換工程において酸化物ナノシート12がランダムに積層されてランダム積層型複合材料10Bが形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0040】
このようなランダム積層型複合材料10Bは、第1の実施の形態と同様にして、例えば燃料電池のカソードにおいて酸素還元電極触媒として用いられて動作する。
【0041】
以上の第2の実施の形態に係る酸素還元電極触媒によれば、第1の実施の形態における酸素還元電極触媒と同様の効果を得ることができる。なお、この例の酸素還元電極触媒を構成する複合材料10Bがランダムに積層されたナノ構造を有するものであることにより、規則的に積層された複合材料10Aに比較してシート間距離や比表面積が大きいことによってプロトン伝導性(または親水性)がより高く、従って、より高い酸素還元活性を得ることができる。
【0042】
<第3の実施の形態:ナノチューブ型>
図3は、本発明の酸素還元電極触媒の構成のさらに別の一例を模式的に示す説明図である。
この例の酸素還元電極触媒は、酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間に陽イオン15が介在してなる複合材料よりなるものであって、具体的には、1枚、または複数枚の酸化物ナノシート12が断面が渦巻き状になるよう丸められることによって同一のシートの積重部分、あるいは異なるシート間にシート積重領域が形成され、このシート積重領域に陽イオン15が介在された状態の複合材料(以下、「ナノチューブ型複合材料」という。)10Cよりなるものである。
この酸素還元電極触媒を構成するナノチューブ型複合材料10Cは、その渦巻き状の断面の最小直径が約10〜20nmである粉末状のものである。
【0043】
酸化物ナノシート12の遷移金属酸化物を構成する遷移金属、および酸化物ナノシート12間に介在される陽イオン15としては、第1の実施の形態におけるものと同様のものを挙げることができる。
【0044】
〔ナノチューブ型複合材料10Cの製造方法〕
以上のようなナノチューブ型複合材料10Cは、以下の工程を経ることによって製造することができる。
(I) 酸化物ナノシート12を構成すべき遷移金属酸化物、および被交換用陽イオンの供給原料の混合物を水熱加熱処理する水熱加熱処理工程。
(II) 上記(I)において水熱加熱処理した被処理物に塩酸を加え、ナノチューブ型複合材料10Cを得るイオン交換工程。
【0045】
〔(I)水熱加熱処理工程〕
この水熱加熱処理工程においては、酸化物ナノシート12が断面が渦巻状であるチューブ状に丸められ、その酸化物ナノシート12によるシート積重領域に被交換用陽イオンが保持された状態の原料ナノチューブ型複合材料と、酸化物ナノシート12がそのシート間に被交換用陽イオンを介在させた状態で複数、規則的に積層された原料積層型複合材料と、独立した酸化物ナノシート12との混在物が得られる。
【0046】
この水熱加熱処理工程において用いられる被交換用陽イオンとしては、Na+ 、Cs+ 、K+ などのアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオン、並びにNH4+などを挙げることができ、これらのうち、イオン交換されやすいことからNa+ 、Cs+ を用いることが好ましい。
被交換用陽イオンの供給原料としては、例えば陽イオンがNa+ である場合は水酸化ナトリウム水溶液を例示することができる。
【0047】
また、水熱加熱処理は、例えばオートクレーブによって圧力約5気圧、温度150℃の条件で24時間行うものとされる。
【0048】
〔(II)イオン交換工程〕
このイオン交換工程において被処理物に塩酸を加えることによって、当該被処理物中の原料ナノチューブ型複合材料については、陽イオン15としてプロトンが供給されて被交換用陽イオンがプロトンにイオン交換されてナノチューブ型複合材料10Cが形成される。
また、当該被処理物中の原料積層型複合材料および独立して存在する酸化物ナノシート12については、塩酸の作用によって酸化物ナノシート12が断面が渦巻状に丸められると同時に、陽イオン15としてプロトンが供給されて被交換用陽イオンをプロトンにイオン交換されてナノチューブ型複合材料10Cが形成される。
【0049】
このイオン交換工程において用いられる陽イオン供給原料としては、例えば陽イオン15がプロトンである場合は塩酸を例示することができる。
【0050】
また、イオン交換処理は、室温で24時間行うことが好ましい。
また、イオン交換処理は、イオン交換率を高めるために、数回繰り返すことができる。
また、イオン交換工程において、ナノチューブ型複合材料10Cは、静置後の濾過および/または遠心分離によって収集された沈殿物を洗浄・乾燥させることにより、得られる。
【0051】
このイオン交換工程において酸化物ナノシート12がチューブ状に丸められた形状に形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0052】
このようなナノチューブ型複合材料10Cは、第1の実施の形態と同様にして、例えば燃料電池のカソードにおいて酸素還元電極触媒として用いられて動作する。
【0053】
以上の第3の実施の形態に係る酸素還元電極触媒によれば、負電荷を有する酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間にプロトンなどの陽イオンが介在し、かつ、断面が渦巻き状になるよう丸められた特異的なナノ構造を有することから、その表面および層間において高いプロトン伝導性または親水性が発揮されると推測され、その結果、第1の実施の形態における酸素還元電極触媒と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上の第1〜第3の実施の形態における酸素還元電極触媒としては、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1:酸化チタン系積層型複合材料>
出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2 )約1.1gおよび炭酸セシウム(Cs2 CO3 )約0.9gを乳鉢にて少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で850℃24時間焼成し、これを電気炉から取り出し、乳鉢にて再度少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で850℃24時間焼成して焼成物を得た。
この焼成物のXRD分析を行ったところ、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートが周期的に積層しているCs0.7 Ti1.825 O4 であることが確認された。
このCs0.7 Ti1.825 O4 に、室温にて0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて24時間撹拌するイオン交換操作を5回繰り返し、次いで、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入った積層型複合材料である(H3 O)0.7 Ti1.825 O4 であることが確認された。また、シート間距離は0.940nmであった。以下、この生成物を「酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕」とする。XRD分析の結果を図5に、SEM観察によるSEM写真を図6に示す。
【0057】
<実施例2:酸化チタン系ランダム積層型複合材料>
出発原料として実施例1と同様にして酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕を合成し、この酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕に対して3モル倍の10mass%[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を加えてイオン交換し、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートを互いに分離させてTi0.91O2 ナノシートコロイド溶液を得た。
次いで、このナノシートコロイド溶液に0.1mol/LのNaOH水溶液を100mL加えて1週間室温で静置し、再積層化を穏やかに進行させ、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
さらに、室温で0.01mol/Lの塩酸100mLを加えて24時間撹拌し、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入ったランダム積層型複合材料であることが確認された。また、シート間距離は、その平均値が0.944nmであった。以下、この生成物を「酸化チタン系ランダム積層型複合材料〔RL−Ti〕」とする。XRD分析の結果を図7に、SEM観察によるSEM写真を図8に示す。また、ナノシートコロイド溶液中の酸化物ナノシートを採取して透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、このTEM観察によるTEM写真を図9に示した。
【0058】
<実施例3:酸化チタン系ナノチューブ型複合材料>
出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型酸化チタン(TiO2 )2gに、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100mL加え、オートクレーブで圧力約5気圧、温度150℃で24時間水熱加熱し、次いで、上澄み液を捨てた後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
次いで、この粉末状の生成物に0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて室温で24時間撹拌し、次いで、上澄み液を捨てた後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、約80%がプロトンが入ったナノチューブ型複合材料であることが確認された。以下、この生成物を「酸化チタン系ナノチューブ型複合材料〔NT−Ti〕」とする。XRD分析の結果を図10に、TEM観察によるTEM写真を図11に示す。
【0059】
<試料電極の作製例〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕および〔NT−Ti〕>
それぞれ、酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕,酸化チタン系ランダム積層型複合材料〔RL−Ti〕および酸化チタン系ナノチューブ型複合材料〔NT−Ti〕7.7mgと、高表面積カーボン「Vulcan XC−72R」(Cabot社製)2.3mgおよび0.2wt%Nafion(登録商標)2mLとを混合してスラリーを調製した。これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、それぞれ試料電極〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕および〔NT−Ti〕を作製した。
また、比較例1に係る試料電極として、アナターゼ型の酸化チタン(IV)(Wako社製)7.7mgを0.2wt%Nafion(登録商標)2mLと混合してスラリーを調製し、これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、試料電極〔TiO2 〕を作製した。
また、参照例に係る試料電極として、炭素担持白金試料「20% HP Pt on Vulcan XC−72R」(E−TEK社製)10mgを0.2wt%Nafion(登録商標)2mLと混合してスラリーを調製し、これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、試料電極〔Pt〕を作製した。
【0060】
<SSV測定>
これらの試料電極〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕,〔NT−Ti〕,〔TiO2 〕および〔Pt〕を用いて、回転リング・ディスク電極装置(RRDE)を構築し、これを以下の測定条件において酸性電解質およびアルカリ性電解質中においてsemi−steady state voltammetry(SSV)測定を行ってディスク電極電流iD を検出すると共に酸素還元活性の指標となる四電子還元選択率E4 を算出した。
なお、四電子還元選択率E4 は、下記数式(1)によって算出することができる。ただし、数式(1)において、iR はリング電極電流であり、Nは、電解質が酸性である場合はリング電極におけるH2 O2 の捕捉率、電解質がアルカリ性である場合はリング電極におけるHO2-の捕捉率である。
数式(1):E4 ={(iD −iR /N)/(iD +iR /N)}×100
【0061】
ここに、電解質が酸性である場合は、SSV測定における電気化学反応は、図12に示されるように、ディスク電極表面に拡散してきた酸素分子が、以下の2つのパターンのいずれかで還元される反応である。すなわち、下記(a),(b)+(c)のいずれかのパターンで酸素が還元される。
(a):酸素分子が一度に4電子を受け取る、つまり一度に4電子還元が起こって水(H2 O)が生成する最も効率の高い酸素還元反応(O2 +4H+ +4e- →2H2 O)
(b):酸素分子が2電子を受け取って2電子還元が起こって中間体であるH2 O2 を生成した(O2 +2H+ +2e- →H2 O2 )後に、(c)もう2電子を受け取って2電子還元が起こって水(H2 O)が生成する(H2 O2 +2H+ +2e- →2H2 O)反応
そして、電解質が酸性である場合は、リング電極においては(b)で生成されるH2 O2 の量が(d)(H2 O2 →O2 +2H+ +2e- )により検知され、リング電極電流iR はその量を示す。
【0062】
一方、電解質がアルカリ性である場合は、SSV測定における電気化学反応は、図13に示されるように、ディスク電極表面に拡散してきた酸素分子が、以下の2つのパターンのいずれかで還元される反応である。すなわち、下記(e),(f)+(g)のいずれかのパターンで酸素が還元される。
(e):酸素分子が一度に4電子を受け取る、つまり一度に4電子還元が起こってOH- が生成する最も効率の高い酸素還元反応(O2 +2H2 O+4e- →4OH- )
(f):2電子を受け取って2電子還元が起こって中間体であるHO2-を生成した(O2 +H2 O+2e- →HO2-+OH- )後に、(g)もう2電子を受け取って2電子還元が起こってOH- が生成する(HO2-+H2 O+2e- →3OH- )反応
そして、電解質がアルカリ性である場合は、リング電極においては(f)で生成されるHO2-の量が(h)(HO2-+OH- →O2 +H2 O+2e- )により検知され、リング電極電流iR はその量を示す。
【0063】
−酸性電解質を用いる場合の測定条件−
電解質:0.05mol/L H2 SO4
測定範囲:1.00〜−0.20V
リング電極電位:1.0V
電位刻み:0.02V
測定雰囲気:酸素雰囲気
リング・ディスク電極の回転速度:300rpm
測定温度:70℃
参照電極:飽和カロメル電極
【0064】
−アルカリ性電解質を用いる場合の測定条件−
電解質:0.1mol/L KOH
測定範囲:0.265〜−0.936V
リング電極電位:0.265V
電位刻み:0.02V
測定雰囲気:酸素雰囲気
リング・ディスク電極の回転速度:300rpm
測定温度:70℃
参照電極:飽和カロメル電極
【0065】
酸性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図14に示し、酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図15に示す。また、アルカリ性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図16に示し、アルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図17に示す。いずれの図も、横軸は可逆水素電極(RHE)の電位を基準とした電位に換算しなおしている。
なお、図14〜図17において、「△」は試料電極〔OL−Ti〕についてのプロット(実施例1)、「○」は試料電極〔RL−Ti〕についてのプロット(実施例2)、「□」は試料電極〔NT−Ti〕についてのプロット(実施例3)、「×」は試料電極〔TiO2 〕についてのプロット(比較例1)、「◇」は試料電極〔Pt〕についてのプロット(参照例)である。
【0066】
以上より、本発明に係る複合材料による試料電極〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕および〔NT−Ti〕によれば、酸性の電解質を使用した場合、およびアルカリ性の電解質を使用した場合のいずれの場合においても、参照例に係る試料電極〔Pt〕には及ばないものの、比較例1に係る試料電極〔TiO2 〕に比較していずれも高い四電子還元選択率を示す、すなわち高い酸素還元活性を有することが確認された。特に、試料電極〔RL−Ti〕が高い四電子還元選択率を示すことが確認された。
【0067】
<実施例4:酸化マンガン系積層型複合材料>
出発原料である粒径150nmの粉末状の酸化マンガン(Mn2 O3 )約0.1435gおよび炭酸カリウム(K2 CO3 )約0.0565gを乳鉢にて少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で800℃60時間酸素雰囲気下にて焼成して焼成物を得た。
この焼成物のXRD分析を行ったところ、MnO6 八面体よりなる酸化物ナノシートが周期的に積層しているK0.45MnO2 であることが確認された。
このK0.45MnO2 に、室温にて0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて24時間撹拌するイオン交換操作を5回繰り返し、次いで、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で室温で24時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入った酸化マンガン系積層型複合材料である(H3 O)0.13MnO2 であることが確認された。また、シート間距離は0.729nmであった。以下、この生成物を「酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕」とする。XRD分析の結果を図18に、SEM観察によるSEM写真を図19に示す。
【0068】
<実施例5:酸化マンガン系ランダム積層型複合材料>
出発原料として実施例4と同様にして酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕を合成し、この酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕に対して5モル倍の10mass%[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を加えてイオン交換し、MnO6 八面体よりなる酸化物ナノシートを互いに分離させてMnO2 ナノシートコロイド溶液を得た。
次いで、このナノシートコロイド溶液に1mol/LのNaOH水溶液を100mL加えて1週間室温で静置し、再積層化を穏やかに進行させ、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で室温で24時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
さらに、室温で0.1mol/Lの塩酸100mLを加えて24時間撹拌し、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で室温で24時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入ったランダム積層型複合材料であることが確認された。また、シート間距離は、その平均値が0.731nmであった。以下、この生成物を「酸化マンガン系ランダム積層型複合材料〔RL−Mn〕」とする。XRD分析の結果を図20に、SEM観察によるSEM写真を図21に示す。
【0069】
試料電極の作製例〔OL−Ti〕において、積層型複合材料〔OL−Ti〕の代わりに、それぞれ酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕および酸化マンガン系ランダム積層型複合材料〔RL−Mn〕を用いたことの他は同様にして、試料電極〔OL−Mn〕および〔RL−Mn〕を作製し、これらの試料電極〔OL−Mn〕および〔RL−Mn〕を用いて、上記と同様にしてRRDEによるSSV測定を行った。
また、比較例2に係る試料電極として、酸化マンガン(Mn2 O3 )7.7mgを0.2wt%Nafion(登録商標)2mLと混合してスラリーを調製し、これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、試料電極〔MnO2 〕を作製した。
【0070】
酸性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図22に示し、酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図23に示す。また、アルカリ性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図24に示し、アルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図25に示す。いずれの図も、横軸は可逆水素電極(RHE)の電位を基準とした電位に換算しなおしている。
なお、図22〜図25において、「△」は試料電極〔OL−Mn〕についてのプロット(実施例4)、「○」は試料電極〔RL−Mn〕についてのプロット(実施例5)、「×」は試料電極〔Mn2 O3 〕についてのプロット(比較例2)、「◇」は試料電極〔Pt〕についてのプロット(参照例)である。
【0071】
以上より、本発明に係る複合材料による試料電極〔OL−Mn〕および〔RL−Mn〕によれば、酸性の電解質を使用した場合、およびアルカリ性の電解質を使用した場合のいずれの場合においても、参照例に係る試料電極〔Pt〕には及ばないものの、比較例2に係る試料電極〔Mn2 O3 〕に比較していずれも高い四電子還元選択率を示す、すなわち高い酸素還元活性を有することが確認された。特に、酸性の電解質では試料電極〔OL−Mn〕が、アルカリ性の電解質では試料電極〔RL−Mn〕が高い四電子還元選択率を示すことが確認された。
【0072】
<実施例6:酸化チタン系ランダム積層型複合材料の金属イオン部分置換体>
実施例2の酸化チタン系ランダム積層型複合材料の合成において、出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2 )約0.9426g、炭酸セシウム(Cs2 CO3 )約0.8282g、および酸化マンガン(Mn2 O3 )0.2293g、または、出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2 )約1.0034g、炭酸セシウム(Cs2 CO3 )約0.8814g、および酸化ニッケル(NiO)約0.1155gに、それぞれ少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で850℃1時間焼成し、これを電気炉から取り出し、乳鉢にて再度少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で1000℃24時間焼成して焼成物を得た。
この焼成物のXRD分析を行ったところ、それぞれ、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートが周期的に積層しているCs0.7 Ti1.625 Mn0.2 O4 およびCs0.7 Ti1.625 Ni0.2 O4 であることが確認された。
【0073】
このCs0.7 Ti1.625 Mn0.2 O4 およびCs0.7 Ti1.625 Ni0.2 O4 に、室温にて0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて24時間撹拌するイオン交換操作を5回繰り返し、次いで、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得、これらに対して3モル倍の10mass%[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を加えてイオン交換し、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートを互いに分離させてナノシートコロイド溶液を得た。
次いで、これらのナノシートコロイド溶液に0.1mol/LのNaOH水溶液を100mL加えて1週間室温で静置し、再積層化を穏やかに進行させ、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
さらに、室温で0.01mol/Lの塩酸100mLを加えて24時間撹拌し、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。以下、これらの生成物を「酸化チタン系ランダム積層型複合材料〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕とする。
【0074】
試料電極の作製例〔OL−Ti〕において、酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕の代わりに、それぞれ酸化チタン系積層型複合材料の金属イオン置換体〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕を用いたことの他は同様にして、試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕を作製し、これらの試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕を用いて、上記と同様にしてRRDEによるSSV測定を行った。
【0075】
酸性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図26に示し、酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図27に示す。また、アルカリ性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図28に示し、アルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図29に示す。いずれの図も、横軸は可逆水素電極(RHE)の電位を基準とした電位に換算しなおしている。
なお、図26〜図29において、「○」は試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕についてのプロット(実施例6−1)、「△」は試料電極〔RL−Ti(Ni0.2)〕についてのプロット(実施例6−2)、「×」は金属の置換を行っていない試料電極〔RL−Ti〕についてのプロット(実施例2)である。
【0076】
以上より、本発明に係る複合材料による試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕によれば、酸性の電解質を使用した場合、金属の置換を行っていない実施例2に係る試料電極〔RL−Ti〕に比較して〔RL−Ti(Ni0.2)〕においてより大きな酸素還元電流が、アルカリ性の電解質を使用した場合、〔RL−Ti(Mn0.2)〕においてより貴な電位から酸素還元電流を示す、すなわちより高い酸素還元活性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
固体高分子形燃料電池(PEFC)や直接メタノール形燃料電池(DMFC)などの燃料電池、酸素センサーなどの分野において、酸性またはアルカリ性の電解質を用いた電気化学デバイスのカソードの酸素還元電極触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の酸素還元電極触媒の構成の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の酸素還元電極触媒の構成の別の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の酸素還元電極触媒の構成のさらに別の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の酸素還元電極触媒を酸性の電解質において使用して燃料電池を駆動する場合の電極反応を示す概略説明図であって、(a)は両電極における電気化学反応、(b)はカソードの酸素還元電極触媒付近における電気化学反応を示す。
【図5】実施例1に係る複合材料〔OL−Ti〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図6】実施例1に係る複合材料〔OL−Ti〕についてのSEM写真である。
【図7】実施例2に係る複合材料〔RL−Ti〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図8】実施例2に係る複合材料〔RL−Ti〕についてのSEM写真である。
【図9】実施例2に係るナノシートについてのTEM写真である。
【図10】実施例3に係る複合材料〔NT−Ti〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図11】実施例3に係る複合材料〔NT−Ti〕についてのTEM写真である。
【図12】電解質が酸性である場合のSSV測定における電気化学反応を示す説明図である。
【図13】電解質がアルカリ性である場合のSSV測定における電気化学反応を示す説明図である。
【図14】実施例1〜3に係る酸性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図15】実施例1〜3に係る酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図16】実施例1〜3に係るアルカリ性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図17】実施例1〜3に係るアルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図18】実施例4に係る複合材料〔OL−Mn〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図19】実施例4に係る複合材料〔OL−Mn〕についてのSEM写真である。
【図20】実施例5に係る複合材料〔RL−Mn〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図21】実施例5に係る複合材料〔RL−Mn〕についてのSEM写真である。
【図22】実施例4〜5に係る酸性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図23】実施例4〜5に係る酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図24】実施例4〜5に係るアルカリ性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図25】実施例4〜5に係るアルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図26】実施例6に係る酸性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図27】実施例6に係る酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図28】実施例6に係るアルカリ性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図29】実施例6に係るアルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
10A,10B,10C 複合材料
12 酸化物ナノシート
15 陽イオン
21 アノード
23 高表面積カーボン
25 カソード
27 高分子電解質膜
29 結線
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソードなどに保持されて使用される酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びに電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーや環境問題に関連して、300℃以下の低温域で作動する燃料電池や酸素センサーなど電気化学デバイスの研究が盛んに行われている。
固体高分子形燃料電池(PEFC)や直接メタノール形燃料電池(DMFC)、あるいは酸素センサーなどの酸化還元電極を使用する電気化学デバイスでは、従来、カソード触媒として、白金およびその合金が用いられてきた(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
しかしながら、白金は高価であり、またその資源量が少ないという問題がある。
このために、非白金系のカソード触媒の開発が進められている(例えば特許文献3〜6参照。)。
【0004】
しかしながら、このような非白金系のカソード触媒を燃料電池に適用すると、酸性の電解質中で1V以上の電極電位が高い状態に晒されるために溶解してしまい、安定性が低く、さらに酸素還元活性が低いという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2006−216385号公報
【特許文献2】特開2006−278312号公報
【特許文献3】特開2005−161203号公報
【特許文献4】特開2005−220001号公報
【特許文献5】特開2004−315347号公報
【特許文献6】特開2005−138204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、低コストで製造することが可能でありながら、高い酸素還元活性を示す酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びに電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の酸素還元電極触媒は、遷移金属酸化物のナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在してなる複合材料よりなることを特徴とする。
【0008】
本発明の酸素還元電極触媒においては、前記遷移金属酸化物を構成する遷移金属が、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の酸素還元電極触媒においては、前記複合材料が、前記ナノシートがランダムに積層された構造を有するもの、または前記ナノシートが断面が渦巻き状になるよう丸められた構造を有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の酸素還元電極触媒においては、前記陽イオンが、プロトンである構成とすることができる。
【0011】
本発明の酸素還元電極は、上記の酸素還元電極触媒を保持してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の電池は、電解質と、上記の酸素還元電極とを有することを特徴とする。
本発明の電池において、電解質は、酸性およびアルカリ性のいずれのものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸素還元電極触媒によれば、遷移金属酸化物の負電荷を有するナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在し、かつ、ランダムに積層された構造や断面が渦巻き状になるよう丸められた構造などの特異的なナノ構造を有することから、その表面および層間において高いプロトン伝導性または親水性が発揮されると推測され、その結果、カソードにおける電極反応サイトへプロトン(または水)が速やかに供給され、従って当該カソードの反応サイトにそれぞれが原子・分子レベルで接近された状態において酸素分子、プロトン(または水)および電子が十分に供給されるため、十分にカソードの電極反応を進行させることができ、その結果、従来の非白金系のカソード触媒に比較して高い酸素還元活性を得ることができる。
また、遷移金属化合物が酸化チタンである酸素還元電極触媒によれば、酸化チタンの特性により高い耐酸性を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びにこの酸素還元電極を用いた電池は、酸素還元電極触媒の原料を酸化チタンとした場合は、その資源量が豊富で安価であるため、低コストで製造することが可能である。よって、燃料電池などの製造コストを低減させることができ、この燃料電池などのデバイスの実用化および普及のために極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
<第1の実施の形態:積層型>
図1は、本発明の酸素還元電極触媒の構成の一例を模式的に示す説明図である。
この例の酸素還元電極触媒は、遷移金属酸化物のナノシート(以下、「酸化物ナノシート」という。)12の積重構造体におけるシート積重領域のシートとシートとの間に陽イオン15が介在してなる複合材料よりなるものであって、具体的には、酸化物ナノシート12がそのシート間に陽イオン15を介在させた状態で複数、規則的に積層された複合材料(以下、「積層型複合材料」という。)10Aよりなるものである。
この酸素還元電極触媒を構成する積層型複合材料10Aは、通常の乾燥状態において粒径3〜5μmの2次粒子を形成している粉末状のものである。
【0017】
酸化物ナノシート12の遷移金属酸化物を構成する遷移金属は、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択されるものとすることができ、これらのうちの1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。遷移金属としては、特に、耐酸性に優れることや、高資源量であり安価であること、さらに無害で取り扱いが容易であることなどから、Tiを用いることが好ましい。
【0018】
酸化物ナノシート12間に介在される陽イオン15としては、H+ ,H3 O+ などのプロトンやNa+ などが挙げられ、特にプロトンであることが好ましい。
【0019】
この積層型複合材料10Aにおいては、隣接して積層される酸化物ナノシート12間に介在されるべき陽イオン15が上下の酸化物ナノシート12,12に共に十分に密着された状態とされており、そのシート間距離は、陽イオン15および酸化物ナノシート12を構成する遷移金属酸化物の種類によって異なるが、例えば陽イオン15がH3 O+ 、遷移金属酸化物が酸化チタンである場合、そのシート間距離は0.900〜1.000nmとされる。ここに、「シート間距離」とは、一つの酸化物ナノシート12の厚さ方向の中心から隣接する酸化物ナノシート12の厚さ方向の中心までの距離をいう。
【0020】
〔積層型複合材料10Aの製造方法〕
以上のような積層型複合材料10Aは、以下の工程を経ることによって製造することができる。
(1) 酸化物ナノシート12を構成すべき遷移金属酸化物、および被交換用陽イオンの供給原料の混合物を焼成処理して酸化物ナノシート12が複数、規則的に積層された積重構造体におけるシート積重領域の各シート間に被交換用陽イオンが介在された積層型複合材料(以下、これを「原料積層型複合材料」という。)を得る固相反応工程。
(2) 上記(1)で得られた原料積層型複合材料に、陽イオン15を供給すべき陽イオン供給原料を加え、被交換用陽イオンを目的とする陽イオン15にイオン交換させるイオン交換処理を行って積層型複合材料10Aを得るイオン交換工程。
【0021】
〔(1)固相反応工程〕
この固相反応工程において用いられる被交換用陽イオンとしては、Na+ 、Cs+ 、K+ などのアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオン、並びにNH4+などを挙げることができ、これらのうち、イオン交換されやすいことからNa+ 、K+ 、Cs+ を用いることが好ましい。
被交換用陽イオンの供給原料としては、例えば陽イオンがCs+ である場合はCs2 CO3 を例示することができる。
【0022】
また、焼成処理は、例えば、電気炉などによって温度800〜850℃の条件で24時間行うものとされる。また、固相反応工程において、この焼成処理は、数回繰り返し行ってもよい。
【0023】
この固相反応工程において酸化物ナノシート12が規則的に積層されて原料積層型複合材料が形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0024】
〔(2)イオン交換工程〕
このイオン交換工程において用いられる陽イオン供給原料としては、例えば陽イオン15がプロトンである場合は塩酸を例示することができる。
【0025】
また、イオン交換処理は、イオン交換率を高めるために、数回繰り返すことができる。
また、イオン交換工程において、積層型複合材料10Aは、静置後の濾過および/または遠心分離によって収集された沈殿物を洗浄・乾燥させることにより、得られる。
【0026】
このイオン交換工程において酸化物ナノシート12が規則的に積層された積層型複合材料10Aが形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0027】
このような積層型複合材料10Aは、図4に示されるように、例えば燃料電池のカソード25において、例えば高表面積カーボン23に高い分散性で担持または混合された状態の積層型複合材料10Aが当該カソード25に保持されて酸素還元電極として用いられて酸素還元反応の電極触媒として作用するものである。
この積層型複合材料10Aが担持された酸素還元電極を用いた燃料電池について説明すると、アノード21とカソード25とによって高分子電解質膜27が挟持された構造とされており、この高分子電解質膜27が酸性のものである場合、以下のような電気化学的反応が進行する。
まず、アノード21に供給された水素ガスは、適宜に酸化されてプロトンと電子とに分解される。
次に、生成したプロトンが、高分子電解質膜27を通ってカソード25に保持された積層型複合材料10Aに達する。
一方、アノード21において生成された電子は、アノード21とカソード25とを電気的に接続する結線29を通してカソード25に保持された複合粒子の積層型複合材料10Aに達する。
そして、積層型複合材料10Aに達したプロトンおよび電子はカソード25に供給される酸素ガスと反応して水を生成する。
この燃料電池においては、結線29内を電子が移動することによって電気が外部に取り出される。
ここに、酸性環境下において用いられる積層型複合材料10Aは、電子導電性を有するのみならず、プロトン伝導性を有するものと考えられる。
【0028】
一方、高分子電解質膜27がアルカリ性のものである場合、以下のような電気化学的反応が進行する。
まず、カソード25に供給された酸素ガスが、高分子電解質膜27および積層型複合材料10Aを介して供給される水、並びに結線29および積層型複合材料10Aを介して供給される電子によって還元されてOH- が生成する。
次に、生成したOH- が、高分子電解質膜27を通ってアノード21に達する。
そして、このアノード21において、当該アノード21に供給される水素ガスと反応して水と電子を生成する。
この燃料電池においても、結線29内を電子が移動することによって電気が外部に取り出される。
ここに、アルカリ性環境下において用いられる積層型複合材料10Aは、電子導電性を有するのみならず、高い親水性を有するものと考えられる。
【0029】
以上の酸素還元電極触媒によれば、負電荷を有する酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間にプロトンなどの陽イオンが介在し、かつ、規則的に積層された特異的なナノ構造を有することから、その表面およびシート間において高いプロトン伝導性または親水性が発揮されると推測され、その結果、カソードにおける電極反応サイトへプロトン(または水)が速やかに供給され、従って当該カソードの反応サイトにそれぞれが原子・分子レベルで接近された状態において酸素分子、プロトン(または水)および電子が十分に供給されるため、十分にカソードの電極反応を進行させることができ、その結果、従来の非白金系のカソード触媒に比較して高い酸素還元活性を得ることができる。
また、遷移金属化合物が酸化チタンである酸素還元電極触媒によれば、酸化チタンの特性により高い耐酸性を得ることができる。
さらに、本発明の酸素還元電極触媒およびこれを用いた酸素還元電極、並びにこの酸素還元電極を用いた電池は、酸素還元電極触媒の原料を酸化チタンとした場合は、その資源量が豊富で安価であるため、低コストで製造することが可能である。よって、燃料電池などの製造コストを低減させることができ、この燃料電池などのデバイスの実用化および普及のために極めて有用である。
【0030】
<第2の実施の形態:ランダム積層型>
図2は、本発明の酸素還元電極触媒の構成の別の一例を模式的に示す説明図である。
この例の酸素還元電極触媒は、酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間に陽イオン15が介在してなる複合材料よりなるものであって、具体的には、酸化物ナノシート12がそのシート間に陽イオン15を介在させた状態で複数、ランダムに積層された複合材料(以下、「ランダム積層型複合材料」という。)10Bよりなるものである。
この酸素還元電極触媒を構成するランダム積層型複合材料10Bは、通常の乾燥状態において粒径1〜2μmの2次粒子を形成している粉末状のものである。
【0031】
酸化物ナノシート12の遷移金属酸化物を構成する遷移金属、および酸化物ナノシート12間に介在される陽イオン15としては、第1の実施の形態におけるものと同様のものを挙げることができる。
【0032】
このランダム積層型複合材料10Bにおいては、隣接して積層される酸化物ナノシート12間に介在されるべき陽イオンが上下の酸化物ナノシート12,12に共に密着された状態とされているが、用いられる遷移金属酸化物および陽イオンの種類が同じである場合の上記の積層型複合材料10Aよりもそのシート間距離の平均値が大きくなる。
【0033】
〔ランダム積層型複合材料10Bの製造方法〕
以上のようなランダム積層型複合材料10Bは、上記の積層型複合材料10Aを原料としてさらに以下の工程を経ることによって製造することができる。
(3) 原料である積層型複合材料10Aの陽イオン15を剥離用陽イオンにイオン交換することにより、酸化物ナノシート12を互いに分離させてコロイド溶液とするシート分離工程。
(4) 上記(3)で得られたコロイド溶液に酸化物ナノシート12の再積層用陽イオンのアルカリ溶液などを添加して長時間にわたって静置し、酸化物ナノシート12を再積層化させてランダム積層物を得る再積層化工程。
(5) 上記(4)で得られたランダム積層物に、陽イオン15を供給すべき陽イオン供給原料を加え、再積層用陽イオンを目的とする陽イオン15にイオン交換させるイオン交換処理を行ってランダム積層型複合材料10Bを得る再イオン交換工程。
【0034】
〔(3)シート分離工程〕
このシート分離工程において用いられる剥離用陽イオンとしては、上記(2)イオン交換工程で得られた積層型複合材料10Aを構成する陽イオン15よりもイオン半径の大きなものを選択する必要があり、原料として用いる積層型複合材料10Aを構成する陽イオン15の種類によっても異なるが、例えば、[(n−C4 H9 )4 N]+ などを挙げることができる。
剥離用陽イオンとして原料の積層型複合材料10Aを構成する陽イオン15よりもイオン半径の大きなものを用いることにより、その酸化物ナノシート12同士を分離させることができる。
剥離用陽イオンの供給原料としては、例えば剥離用陽イオンが[(n−C4 H9 )4 N]+ である場合は[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を例示することができる。
【0035】
このシート分離工程において得られるコロイド溶液は、負電荷を帯びた酸化物ナノシート12と、酸化物ナノシート12間に介在していた陽イオン15とが互いに分離している状態のものである。
【0036】
〔(4)再積層化工程〕
この再積層化工程において用いられる再積層用陽イオンとしては、Na+ 、Cs+ 、K+ などのアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオン、並びにNH4+などを挙げることができる。
再積層用陽イオンの供給原料としては、例えば陽イオンがNa+ である場合はNaOH水溶液を例示することができる。
この再積層化工程においては、静置時間は例えば1週間とされる。
また、この再積層化工程において酸化物ナノシート12がランダムに積層されてランダム積層物が形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0037】
〔(5)再イオン交換工程〕
この再イオン交換工程において用いられる陽イオン供給原料としては、例えば陽イオンがプロトンである場合は塩酸を例示することができる。
【0038】
また、再イオン交換処理は、イオン交換率を高めるために、数回繰り返すことができる。
また、再イオン交換工程において、ランダム積層型複合材料10Bは、静置後の濾過および/または遠心分離によって収集された沈殿物を洗浄・乾燥させることにより、得られる。
【0039】
この再イオン交換工程において酸化物ナノシート12がランダムに積層されてランダム積層型複合材料10Bが形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0040】
このようなランダム積層型複合材料10Bは、第1の実施の形態と同様にして、例えば燃料電池のカソードにおいて酸素還元電極触媒として用いられて動作する。
【0041】
以上の第2の実施の形態に係る酸素還元電極触媒によれば、第1の実施の形態における酸素還元電極触媒と同様の効果を得ることができる。なお、この例の酸素還元電極触媒を構成する複合材料10Bがランダムに積層されたナノ構造を有するものであることにより、規則的に積層された複合材料10Aに比較してシート間距離や比表面積が大きいことによってプロトン伝導性(または親水性)がより高く、従って、より高い酸素還元活性を得ることができる。
【0042】
<第3の実施の形態:ナノチューブ型>
図3は、本発明の酸素還元電極触媒の構成のさらに別の一例を模式的に示す説明図である。
この例の酸素還元電極触媒は、酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間に陽イオン15が介在してなる複合材料よりなるものであって、具体的には、1枚、または複数枚の酸化物ナノシート12が断面が渦巻き状になるよう丸められることによって同一のシートの積重部分、あるいは異なるシート間にシート積重領域が形成され、このシート積重領域に陽イオン15が介在された状態の複合材料(以下、「ナノチューブ型複合材料」という。)10Cよりなるものである。
この酸素還元電極触媒を構成するナノチューブ型複合材料10Cは、その渦巻き状の断面の最小直径が約10〜20nmである粉末状のものである。
【0043】
酸化物ナノシート12の遷移金属酸化物を構成する遷移金属、および酸化物ナノシート12間に介在される陽イオン15としては、第1の実施の形態におけるものと同様のものを挙げることができる。
【0044】
〔ナノチューブ型複合材料10Cの製造方法〕
以上のようなナノチューブ型複合材料10Cは、以下の工程を経ることによって製造することができる。
(I) 酸化物ナノシート12を構成すべき遷移金属酸化物、および被交換用陽イオンの供給原料の混合物を水熱加熱処理する水熱加熱処理工程。
(II) 上記(I)において水熱加熱処理した被処理物に塩酸を加え、ナノチューブ型複合材料10Cを得るイオン交換工程。
【0045】
〔(I)水熱加熱処理工程〕
この水熱加熱処理工程においては、酸化物ナノシート12が断面が渦巻状であるチューブ状に丸められ、その酸化物ナノシート12によるシート積重領域に被交換用陽イオンが保持された状態の原料ナノチューブ型複合材料と、酸化物ナノシート12がそのシート間に被交換用陽イオンを介在させた状態で複数、規則的に積層された原料積層型複合材料と、独立した酸化物ナノシート12との混在物が得られる。
【0046】
この水熱加熱処理工程において用いられる被交換用陽イオンとしては、Na+ 、Cs+ 、K+ などのアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオン、並びにNH4+などを挙げることができ、これらのうち、イオン交換されやすいことからNa+ 、Cs+ を用いることが好ましい。
被交換用陽イオンの供給原料としては、例えば陽イオンがNa+ である場合は水酸化ナトリウム水溶液を例示することができる。
【0047】
また、水熱加熱処理は、例えばオートクレーブによって圧力約5気圧、温度150℃の条件で24時間行うものとされる。
【0048】
〔(II)イオン交換工程〕
このイオン交換工程において被処理物に塩酸を加えることによって、当該被処理物中の原料ナノチューブ型複合材料については、陽イオン15としてプロトンが供給されて被交換用陽イオンがプロトンにイオン交換されてナノチューブ型複合材料10Cが形成される。
また、当該被処理物中の原料積層型複合材料および独立して存在する酸化物ナノシート12については、塩酸の作用によって酸化物ナノシート12が断面が渦巻状に丸められると同時に、陽イオン15としてプロトンが供給されて被交換用陽イオンをプロトンにイオン交換されてナノチューブ型複合材料10Cが形成される。
【0049】
このイオン交換工程において用いられる陽イオン供給原料としては、例えば陽イオン15がプロトンである場合は塩酸を例示することができる。
【0050】
また、イオン交換処理は、室温で24時間行うことが好ましい。
また、イオン交換処理は、イオン交換率を高めるために、数回繰り返すことができる。
また、イオン交換工程において、ナノチューブ型複合材料10Cは、静置後の濾過および/または遠心分離によって収集された沈殿物を洗浄・乾燥させることにより、得られる。
【0051】
このイオン交換工程において酸化物ナノシート12がチューブ状に丸められた形状に形成されたことは、X線回折(XRD)分析、走査型電子顕微鏡(SEM)観察または透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって確認することができる。
【0052】
このようなナノチューブ型複合材料10Cは、第1の実施の形態と同様にして、例えば燃料電池のカソードにおいて酸素還元電極触媒として用いられて動作する。
【0053】
以上の第3の実施の形態に係る酸素還元電極触媒によれば、負電荷を有する酸化物ナノシート12よりなるシート積重領域のシート間にプロトンなどの陽イオンが介在し、かつ、断面が渦巻き状になるよう丸められた特異的なナノ構造を有することから、その表面および層間において高いプロトン伝導性または親水性が発揮されると推測され、その結果、第1の実施の形態における酸素還元電極触媒と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上の第1〜第3の実施の形態における酸素還元電極触媒としては、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1:酸化チタン系積層型複合材料>
出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2 )約1.1gおよび炭酸セシウム(Cs2 CO3 )約0.9gを乳鉢にて少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で850℃24時間焼成し、これを電気炉から取り出し、乳鉢にて再度少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で850℃24時間焼成して焼成物を得た。
この焼成物のXRD分析を行ったところ、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートが周期的に積層しているCs0.7 Ti1.825 O4 であることが確認された。
このCs0.7 Ti1.825 O4 に、室温にて0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて24時間撹拌するイオン交換操作を5回繰り返し、次いで、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入った積層型複合材料である(H3 O)0.7 Ti1.825 O4 であることが確認された。また、シート間距離は0.940nmであった。以下、この生成物を「酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕」とする。XRD分析の結果を図5に、SEM観察によるSEM写真を図6に示す。
【0057】
<実施例2:酸化チタン系ランダム積層型複合材料>
出発原料として実施例1と同様にして酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕を合成し、この酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕に対して3モル倍の10mass%[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を加えてイオン交換し、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートを互いに分離させてTi0.91O2 ナノシートコロイド溶液を得た。
次いで、このナノシートコロイド溶液に0.1mol/LのNaOH水溶液を100mL加えて1週間室温で静置し、再積層化を穏やかに進行させ、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
さらに、室温で0.01mol/Lの塩酸100mLを加えて24時間撹拌し、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入ったランダム積層型複合材料であることが確認された。また、シート間距離は、その平均値が0.944nmであった。以下、この生成物を「酸化チタン系ランダム積層型複合材料〔RL−Ti〕」とする。XRD分析の結果を図7に、SEM観察によるSEM写真を図8に示す。また、ナノシートコロイド溶液中の酸化物ナノシートを採取して透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、このTEM観察によるTEM写真を図9に示した。
【0058】
<実施例3:酸化チタン系ナノチューブ型複合材料>
出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型酸化チタン(TiO2 )2gに、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100mL加え、オートクレーブで圧力約5気圧、温度150℃で24時間水熱加熱し、次いで、上澄み液を捨てた後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
次いで、この粉末状の生成物に0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて室温で24時間撹拌し、次いで、上澄み液を捨てた後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、約80%がプロトンが入ったナノチューブ型複合材料であることが確認された。以下、この生成物を「酸化チタン系ナノチューブ型複合材料〔NT−Ti〕」とする。XRD分析の結果を図10に、TEM観察によるTEM写真を図11に示す。
【0059】
<試料電極の作製例〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕および〔NT−Ti〕>
それぞれ、酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕,酸化チタン系ランダム積層型複合材料〔RL−Ti〕および酸化チタン系ナノチューブ型複合材料〔NT−Ti〕7.7mgと、高表面積カーボン「Vulcan XC−72R」(Cabot社製)2.3mgおよび0.2wt%Nafion(登録商標)2mLとを混合してスラリーを調製した。これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、それぞれ試料電極〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕および〔NT−Ti〕を作製した。
また、比較例1に係る試料電極として、アナターゼ型の酸化チタン(IV)(Wako社製)7.7mgを0.2wt%Nafion(登録商標)2mLと混合してスラリーを調製し、これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、試料電極〔TiO2 〕を作製した。
また、参照例に係る試料電極として、炭素担持白金試料「20% HP Pt on Vulcan XC−72R」(E−TEK社製)10mgを0.2wt%Nafion(登録商標)2mLと混合してスラリーを調製し、これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、試料電極〔Pt〕を作製した。
【0060】
<SSV測定>
これらの試料電極〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕,〔NT−Ti〕,〔TiO2 〕および〔Pt〕を用いて、回転リング・ディスク電極装置(RRDE)を構築し、これを以下の測定条件において酸性電解質およびアルカリ性電解質中においてsemi−steady state voltammetry(SSV)測定を行ってディスク電極電流iD を検出すると共に酸素還元活性の指標となる四電子還元選択率E4 を算出した。
なお、四電子還元選択率E4 は、下記数式(1)によって算出することができる。ただし、数式(1)において、iR はリング電極電流であり、Nは、電解質が酸性である場合はリング電極におけるH2 O2 の捕捉率、電解質がアルカリ性である場合はリング電極におけるHO2-の捕捉率である。
数式(1):E4 ={(iD −iR /N)/(iD +iR /N)}×100
【0061】
ここに、電解質が酸性である場合は、SSV測定における電気化学反応は、図12に示されるように、ディスク電極表面に拡散してきた酸素分子が、以下の2つのパターンのいずれかで還元される反応である。すなわち、下記(a),(b)+(c)のいずれかのパターンで酸素が還元される。
(a):酸素分子が一度に4電子を受け取る、つまり一度に4電子還元が起こって水(H2 O)が生成する最も効率の高い酸素還元反応(O2 +4H+ +4e- →2H2 O)
(b):酸素分子が2電子を受け取って2電子還元が起こって中間体であるH2 O2 を生成した(O2 +2H+ +2e- →H2 O2 )後に、(c)もう2電子を受け取って2電子還元が起こって水(H2 O)が生成する(H2 O2 +2H+ +2e- →2H2 O)反応
そして、電解質が酸性である場合は、リング電極においては(b)で生成されるH2 O2 の量が(d)(H2 O2 →O2 +2H+ +2e- )により検知され、リング電極電流iR はその量を示す。
【0062】
一方、電解質がアルカリ性である場合は、SSV測定における電気化学反応は、図13に示されるように、ディスク電極表面に拡散してきた酸素分子が、以下の2つのパターンのいずれかで還元される反応である。すなわち、下記(e),(f)+(g)のいずれかのパターンで酸素が還元される。
(e):酸素分子が一度に4電子を受け取る、つまり一度に4電子還元が起こってOH- が生成する最も効率の高い酸素還元反応(O2 +2H2 O+4e- →4OH- )
(f):2電子を受け取って2電子還元が起こって中間体であるHO2-を生成した(O2 +H2 O+2e- →HO2-+OH- )後に、(g)もう2電子を受け取って2電子還元が起こってOH- が生成する(HO2-+H2 O+2e- →3OH- )反応
そして、電解質がアルカリ性である場合は、リング電極においては(f)で生成されるHO2-の量が(h)(HO2-+OH- →O2 +H2 O+2e- )により検知され、リング電極電流iR はその量を示す。
【0063】
−酸性電解質を用いる場合の測定条件−
電解質:0.05mol/L H2 SO4
測定範囲:1.00〜−0.20V
リング電極電位:1.0V
電位刻み:0.02V
測定雰囲気:酸素雰囲気
リング・ディスク電極の回転速度:300rpm
測定温度:70℃
参照電極:飽和カロメル電極
【0064】
−アルカリ性電解質を用いる場合の測定条件−
電解質:0.1mol/L KOH
測定範囲:0.265〜−0.936V
リング電極電位:0.265V
電位刻み:0.02V
測定雰囲気:酸素雰囲気
リング・ディスク電極の回転速度:300rpm
測定温度:70℃
参照電極:飽和カロメル電極
【0065】
酸性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図14に示し、酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図15に示す。また、アルカリ性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図16に示し、アルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図17に示す。いずれの図も、横軸は可逆水素電極(RHE)の電位を基準とした電位に換算しなおしている。
なお、図14〜図17において、「△」は試料電極〔OL−Ti〕についてのプロット(実施例1)、「○」は試料電極〔RL−Ti〕についてのプロット(実施例2)、「□」は試料電極〔NT−Ti〕についてのプロット(実施例3)、「×」は試料電極〔TiO2 〕についてのプロット(比較例1)、「◇」は試料電極〔Pt〕についてのプロット(参照例)である。
【0066】
以上より、本発明に係る複合材料による試料電極〔OL−Ti〕,〔RL−Ti〕および〔NT−Ti〕によれば、酸性の電解質を使用した場合、およびアルカリ性の電解質を使用した場合のいずれの場合においても、参照例に係る試料電極〔Pt〕には及ばないものの、比較例1に係る試料電極〔TiO2 〕に比較していずれも高い四電子還元選択率を示す、すなわち高い酸素還元活性を有することが確認された。特に、試料電極〔RL−Ti〕が高い四電子還元選択率を示すことが確認された。
【0067】
<実施例4:酸化マンガン系積層型複合材料>
出発原料である粒径150nmの粉末状の酸化マンガン(Mn2 O3 )約0.1435gおよび炭酸カリウム(K2 CO3 )約0.0565gを乳鉢にて少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で800℃60時間酸素雰囲気下にて焼成して焼成物を得た。
この焼成物のXRD分析を行ったところ、MnO6 八面体よりなる酸化物ナノシートが周期的に積層しているK0.45MnO2 であることが確認された。
このK0.45MnO2 に、室温にて0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて24時間撹拌するイオン交換操作を5回繰り返し、次いで、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で室温で24時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入った酸化マンガン系積層型複合材料である(H3 O)0.13MnO2 であることが確認された。また、シート間距離は0.729nmであった。以下、この生成物を「酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕」とする。XRD分析の結果を図18に、SEM観察によるSEM写真を図19に示す。
【0068】
<実施例5:酸化マンガン系ランダム積層型複合材料>
出発原料として実施例4と同様にして酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕を合成し、この酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕に対して5モル倍の10mass%[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を加えてイオン交換し、MnO6 八面体よりなる酸化物ナノシートを互いに分離させてMnO2 ナノシートコロイド溶液を得た。
次いで、このナノシートコロイド溶液に1mol/LのNaOH水溶液を100mL加えて1週間室温で静置し、再積層化を穏やかに進行させ、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で室温で24時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
さらに、室温で0.1mol/Lの塩酸100mLを加えて24時間撹拌し、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で室温で24時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
この粉末状の生成物のX線回折(XRD)分析および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、プロトンが入ったランダム積層型複合材料であることが確認された。また、シート間距離は、その平均値が0.731nmであった。以下、この生成物を「酸化マンガン系ランダム積層型複合材料〔RL−Mn〕」とする。XRD分析の結果を図20に、SEM観察によるSEM写真を図21に示す。
【0069】
試料電極の作製例〔OL−Ti〕において、積層型複合材料〔OL−Ti〕の代わりに、それぞれ酸化マンガン系積層型複合材料〔OL−Mn〕および酸化マンガン系ランダム積層型複合材料〔RL−Mn〕を用いたことの他は同様にして、試料電極〔OL−Mn〕および〔RL−Mn〕を作製し、これらの試料電極〔OL−Mn〕および〔RL−Mn〕を用いて、上記と同様にしてRRDEによるSSV測定を行った。
また、比較例2に係る試料電極として、酸化マンガン(Mn2 O3 )7.7mgを0.2wt%Nafion(登録商標)2mLと混合してスラリーを調製し、これを回転リング・ディスク電極のグラッシーカーボンディスク電極上にキャストして乾燥させ、試料電極〔MnO2 〕を作製した。
【0070】
酸性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図22に示し、酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図23に示す。また、アルカリ性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図24に示し、アルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図25に示す。いずれの図も、横軸は可逆水素電極(RHE)の電位を基準とした電位に換算しなおしている。
なお、図22〜図25において、「△」は試料電極〔OL−Mn〕についてのプロット(実施例4)、「○」は試料電極〔RL−Mn〕についてのプロット(実施例5)、「×」は試料電極〔Mn2 O3 〕についてのプロット(比較例2)、「◇」は試料電極〔Pt〕についてのプロット(参照例)である。
【0071】
以上より、本発明に係る複合材料による試料電極〔OL−Mn〕および〔RL−Mn〕によれば、酸性の電解質を使用した場合、およびアルカリ性の電解質を使用した場合のいずれの場合においても、参照例に係る試料電極〔Pt〕には及ばないものの、比較例2に係る試料電極〔Mn2 O3 〕に比較していずれも高い四電子還元選択率を示す、すなわち高い酸素還元活性を有することが確認された。特に、酸性の電解質では試料電極〔OL−Mn〕が、アルカリ性の電解質では試料電極〔RL−Mn〕が高い四電子還元選択率を示すことが確認された。
【0072】
<実施例6:酸化チタン系ランダム積層型複合材料の金属イオン部分置換体>
実施例2の酸化チタン系ランダム積層型複合材料の合成において、出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2 )約0.9426g、炭酸セシウム(Cs2 CO3 )約0.8282g、および酸化マンガン(Mn2 O3 )0.2293g、または、出発原料である粒径20〜30nmの粉末状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2 )約1.0034g、炭酸セシウム(Cs2 CO3 )約0.8814g、および酸化ニッケル(NiO)約0.1155gに、それぞれ少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で850℃1時間焼成し、これを電気炉から取り出し、乳鉢にて再度少量のメタノールを加えて湿式混合した後、電気炉で1000℃24時間焼成して焼成物を得た。
この焼成物のXRD分析を行ったところ、それぞれ、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートが周期的に積層しているCs0.7 Ti1.625 Mn0.2 O4 およびCs0.7 Ti1.625 Ni0.2 O4 であることが確認された。
【0073】
このCs0.7 Ti1.625 Mn0.2 O4 およびCs0.7 Ti1.625 Ni0.2 O4 に、室温にて0.1mol/Lの塩酸を100mL加えて24時間撹拌するイオン交換操作を5回繰り返し、次いで、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得、これらに対して3モル倍の10mass%[(n−C4 H9 )4 N]OH(TBAOH)水溶液を加えてイオン交換し、TiO6 八面体よりなる酸化物ナノシートを互いに分離させてナノシートコロイド溶液を得た。
次いで、これらのナノシートコロイド溶液に0.1mol/LのNaOH水溶液を100mL加えて1週間室温で静置し、再積層化を穏やかに進行させ、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。
さらに、室温で0.01mol/Lの塩酸100mLを加えて24時間撹拌し、その後、純水を加えて遠心分離によって生成物を沈殿させる洗浄操作を、pH試験紙による測定結果が中性になるまで行い、その後、乾燥器によって空気雰囲気で80℃で12時間乾燥させることにより、粉末状の生成物を得た。以下、これらの生成物を「酸化チタン系ランダム積層型複合材料〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕とする。
【0074】
試料電極の作製例〔OL−Ti〕において、酸化チタン系積層型複合材料〔OL−Ti〕の代わりに、それぞれ酸化チタン系積層型複合材料の金属イオン置換体〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕を用いたことの他は同様にして、試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕を作製し、これらの試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕を用いて、上記と同様にしてRRDEによるSSV測定を行った。
【0075】
酸性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図26に示し、酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図27に示す。また、アルカリ性の電解質中におけるディスク電極電流についての結果を図28に示し、アルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を図29に示す。いずれの図も、横軸は可逆水素電極(RHE)の電位を基準とした電位に換算しなおしている。
なお、図26〜図29において、「○」は試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕についてのプロット(実施例6−1)、「△」は試料電極〔RL−Ti(Ni0.2)〕についてのプロット(実施例6−2)、「×」は金属の置換を行っていない試料電極〔RL−Ti〕についてのプロット(実施例2)である。
【0076】
以上より、本発明に係る複合材料による試料電極〔RL−Ti(Mn0.2)〕および〔RL−Ti(Ni0.2)〕によれば、酸性の電解質を使用した場合、金属の置換を行っていない実施例2に係る試料電極〔RL−Ti〕に比較して〔RL−Ti(Ni0.2)〕においてより大きな酸素還元電流が、アルカリ性の電解質を使用した場合、〔RL−Ti(Mn0.2)〕においてより貴な電位から酸素還元電流を示す、すなわちより高い酸素還元活性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
固体高分子形燃料電池(PEFC)や直接メタノール形燃料電池(DMFC)などの燃料電池、酸素センサーなどの分野において、酸性またはアルカリ性の電解質を用いた電気化学デバイスのカソードの酸素還元電極触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の酸素還元電極触媒の構成の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の酸素還元電極触媒の構成の別の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の酸素還元電極触媒の構成のさらに別の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の酸素還元電極触媒を酸性の電解質において使用して燃料電池を駆動する場合の電極反応を示す概略説明図であって、(a)は両電極における電気化学反応、(b)はカソードの酸素還元電極触媒付近における電気化学反応を示す。
【図5】実施例1に係る複合材料〔OL−Ti〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図6】実施例1に係る複合材料〔OL−Ti〕についてのSEM写真である。
【図7】実施例2に係る複合材料〔RL−Ti〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図8】実施例2に係る複合材料〔RL−Ti〕についてのSEM写真である。
【図9】実施例2に係るナノシートについてのTEM写真である。
【図10】実施例3に係る複合材料〔NT−Ti〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図11】実施例3に係る複合材料〔NT−Ti〕についてのTEM写真である。
【図12】電解質が酸性である場合のSSV測定における電気化学反応を示す説明図である。
【図13】電解質がアルカリ性である場合のSSV測定における電気化学反応を示す説明図である。
【図14】実施例1〜3に係る酸性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図15】実施例1〜3に係る酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図16】実施例1〜3に係るアルカリ性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図17】実施例1〜3に係るアルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図18】実施例4に係る複合材料〔OL−Mn〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図19】実施例4に係る複合材料〔OL−Mn〕についてのSEM写真である。
【図20】実施例5に係る複合材料〔RL−Mn〕についてのXRD分析の結果を示すグラフである。
【図21】実施例5に係る複合材料〔RL−Mn〕についてのSEM写真である。
【図22】実施例4〜5に係る酸性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図23】実施例4〜5に係る酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図24】実施例4〜5に係るアルカリ性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図25】実施例4〜5に係るアルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図26】実施例6に係る酸性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図27】実施例6に係る酸性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【図28】実施例6に係るアルカリ性の電解質中におけるディスク電流についての結果を示すグラフである。
【図29】実施例6に係るアルカリ性の電解質中における四電子還元選択率についての結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
10A,10B,10C 複合材料
12 酸化物ナノシート
15 陽イオン
21 アノード
23 高表面積カーボン
25 カソード
27 高分子電解質膜
29 結線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属酸化物のナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在してなる複合材料よりなることを特徴とする酸素還元電極触媒。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物を構成する遷移金属が、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の酸素還元電極触媒。
【請求項3】
前記複合材料が、前記ナノシートがランダムに積層された構造を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素還元電極触媒。
【請求項4】
前記複合材料が、前記ナノシートが断面が渦巻き状になるよう丸められた構造を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素還元電極触媒。
【請求項5】
前記陽イオンが、プロトンであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の酸素還元電極触媒。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の酸素還元電極触媒を保持してなることを特徴とする酸素還元電極。
【請求項7】
電解質と、請求項6に記載の酸素還元電極とを有することを特徴とする電池。
【請求項8】
電解質が酸性またはアルカリ性のものであることを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項1】
遷移金属酸化物のナノシートよりなるシート積重領域のシート間に陽イオンが介在してなる複合材料よりなることを特徴とする酸素還元電極触媒。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物を構成する遷移金属が、Ti,Ta,Nb,Ru,Mn,V,W,Mo,Coからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の酸素還元電極触媒。
【請求項3】
前記複合材料が、前記ナノシートがランダムに積層された構造を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素還元電極触媒。
【請求項4】
前記複合材料が、前記ナノシートが断面が渦巻き状になるよう丸められた構造を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素還元電極触媒。
【請求項5】
前記陽イオンが、プロトンであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の酸素還元電極触媒。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の酸素還元電極触媒を保持してなることを特徴とする酸素還元電極。
【請求項7】
電解質と、請求項6に記載の酸素還元電極とを有することを特徴とする電池。
【請求項8】
電解質が酸性またはアルカリ性のものであることを特徴とする請求項7に記載の電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2008−311223(P2008−311223A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127825(P2008−127825)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
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