説明

酸素飽和度測定装置

【課題】表示される血中酸素飽和度(SpO値)を目視し続けることなしに、安定度の度合いについて認識できる酸素飽和度測定装置を提供する。
【解決手段】酸素飽和度測定装置100は、生体に赤外光および赤色光を照射し、生体を経由した光を受光することで生体情報信号を得る測定部2と、生体情報信号を解析処理して血中酸素飽和度を算出する解析処理部42と、解析処理部42において解析処理を行うことにより得られた値をもとに、血中酸素飽和度の安定度および安定度の度合いを判定する安定度判定部43と、解析処理部42により算出した血中酸素飽和度を表示する表示部6とを備え、表示部6は、安定度判定部43において血中酸素飽和度が安定していると判定された場合に、血中酸素飽和度を固定表示とし、かつ安定度判定部43において血中酸素飽和度が安定していると判定された場合の安定度の度合いを表示する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈血の酸素飽和度を測定する酸素飽和度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスオキシメータは、患者(被験者)の健康状態を知る上で、重要な測定装置である。具体的には、パルスオキシメータは、患者の所定の生体部位に装着され、生体部位に向けて光を出力し、生体部位を透過又は反射した光の光量変化を信号として測定し、SpO値等を求める。例えば病院の外来の受付時等に、体温測定等と同様に、パルスオキシメータ(酸素飽和度測定装置)による血中酸素飽和度(以下、SpO値)の測定が行われることがある。また、特に循環器科の病棟では毎日の健康チェックとして、入院患者にパルスオキシメータを装着し、患者のSpO値を測定している場合もある。
【0003】
例えば、呼吸不全の患者は、歩行するだけでも一時的にSpO値が急激に低下する。このような状態ではSpO値は安定していず、正しい値を測定することはできない。そこで、患者にパルスオキシメータを装着後、SpO値が安定するまで、表示されているSpO値を目視にて確認しておく必要がある。そして、SpO値が安定した状態で、読み取ったSpO値が正しい値である。この作業は、通常、看護師等(操作者)が行うが、目視にて確認しているため、この間は他の作業ができない。
【0004】
例えば、特許文献1には、随時表示されるSpO値から、SpO値の安定度を求め、SpO値が安定したと判定した場合には、それ以降の測定を行わず、そのときに表示されているSpO値をそのまま表示し続ける(固定表示)オキシメータが記載されている。ここで、このオキシメータの安定度の判定には、以下に示す式1を用いる。なお、式1において、DSは判定値であり、W(I)は重み係数である。また、S(0)は現在表示されているSpO値を表し、S(−1)は1つ前に表示されていたSpO値を表し、S(−2)は2つ前に表示されていたSpO値を表す。また、W(I)はIによって決まる値である。
【0005】
【数1】

【0006】
式1により求められた判定値DSは、値が小さいほど表示されるSpO値の変動が少なく、安定度が高いことを示す。このように、特許文献1に記載のオキシメータは、判定値DSが所定の閾値以下であればSpO値は安定していると判定し、そのとき表示されているSpO値を固定表示とする。これにより、操作者は、オキシメータに表示されるSpO値を目視し続けなくても、固定表示された場合の値を読み取るだけで、安定した値である正しいSpO値を認識することができる。
【特許文献1】特公平7−32767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、安定したSpO値だけでなく、安定するまでのSpO値からわかる安定度の度合いは、患者の健康状態を理解する上で役に立つ情報である。しかし、特許文献1に記載のオキシメータでは、上述のように、安定後のSpO値については認識できるが、安定するまでのSpO値を認識するためには、表示されるSpO値を目視により監視し続けなければならない。それにより、オキシメータによる測定をしている間は、操作者は他の作業ができないという問題があった。また、オキシメータによる測定の際に、他の作業も平行して行わなければならない場合は、安定度の度合いを認識することはできない。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、表示されるSpO値を目視し続けることなしに、安定度の度合いについて認識できる酸素飽和度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明に係る一態様に係る酸素飽和度測定装置は、生体に赤外光および赤色光を照射し、前記生体を経由した光を受光することで生体情報信号を得る測定部と、前記生体情報信号を解析処理して血中酸素飽和度を算出する解析処理部と、前記解析処理部において解析処理を行うことにより得られた値をもとに、血中酸素飽和度の安定度および安定度の度合いを判定する安定度判定部と、前記解析処理部により算出した血中酸素飽和度を表示する表示部とを備え、前記表示部は、前記安定度判定部において血中酸素飽和度が安定していると判定された場合に、血中酸素飽和度を固定表示とし、かつ前記安定度判定部において血中酸素飽和度が安定していると判定された場合の安定度の度合いを表示する。なお、固定表示とは現在の測定値とは関係なく、現在表示している値をそのまま継続して表示し続けることをいう。
【0010】
このように、値が安定した場合に固定表示にするだけでなく、その安定度の度合いを表示することから、操作者は表示値が安定するまで目視を続けることにより、安定度の度合いを監視しておく必要がない。したがって、測定中においては、操作者は他の作業を行うことができる。そして、固定表示とされた場合に、表示部から血中酸素飽和度の値および安定度の度合いを読み取り、それにより被験者の健康状態を認識することができる。
【0011】
また、上述の酸素飽和度測定装置において、前記安定度の度合いは、判定対象期間内における血中酸素飽和度の最大値、最小値および平均値の少なくとも1つを含むことが好ましい。なお、安定度の判定においては、最新の測定により得られた現時点の値と、過去の測定により得られた値を用いるが、これら判定に用いる値が測定された期間を判定対象期間という。
【0012】
これにより、安定度の度合いとして、血中酸素飽和度の最大値、最小値または平均値を用いることから、安定度の度合いを認識しやすい。
【0013】
また、上述の酸素飽和度測定装置において、前記表示部が血中酸素飽和度を前記固定表示とした後に、前記安定度判定部において血中酸素飽和度が安定でないと判断された場合は、前記表示部が前記固定表示を解除することが好ましい。
【0014】
これにより、固定表示後に血中酸素飽和度が急変した場合には、現時点での測定による血中酸素飽和度を表示する。したがって、固定表示後に血中酸素飽和度が急変した場合でも、操作者はその変化を認識することができる。
【0015】
また、上述の酸素飽和度測定装置において、前記固定表示の継続時間が所定時間以上となると、電源を切断する電源部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
これにより、省エネルギー効果を有する。
【0017】
また、上述の酸素飽和度測定装置において、前記固定表示の継続時間が所定時間以上となると、前記表示部は表示を停止することが好ましい。
【0018】
これにより、省エネルギー効果を有する。
【0019】
また、上述の酸素飽和度測定装置において、前記固定表示の継続時間が所定時間以上となると、前記測定部は測定を停止することが好ましい。
【0020】
これにより、省エネルギー効果を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表示されるSpO値を目視し続けることなしに、安定度の度合いについて認識できる酸素飽和度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0023】
本発明の実施の形態に係る酸素飽和度測定装置であるパルスオキシメータについて説明する。まず、実施の形態に係るパルスオキシメータの構成について説明する。図1は実施の形態に係るパルスオキシメータの外観構成を示す図である。図2は実施の形態に係るパルスオキシメータの構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、パルスオキシメータ100は、装置本体1と、ケーブル16を介して装置本体1と電気的に接続された測定部2とを備えて構成されている。パルスオキシメータ100は被験者(患者)の手300に装着されて使用される。装置本体1は装着ベルト17を有しており、例えば被験者の手首に装着ベルト17が巻回されることで、装置本体1は被験者の手首に固定される。装置本体1はさらに表示部6および操作部8を有している。表示部6は測定結果すなわち血中酸素飽和度(SpO値)等の生体情報を表示するためのものである。また、操作部8は、例えば、スイッチ回路等であり測定開始または終了の指示等を行うためのものである。
【0025】
測定部2は、例えば被験者の指先に装着される。具体的には、指サックのような形状を有しており、被験者の指先に嵌めることで装着される。図1には図示されていないが、測定部2の内側に設置された発光部21および受光部22により測定を行う(図2参照)。
【0026】
さらに、図2を参照して、実施の形態に係るパルスオキシメータ100の電気的な構成について説明する。パルスオキシメータ100は、装置本体1および測定部2を備えて構成されている。測定部2は、発光部21および受光部22を備えていて、測定部位(例えば指先)が測定部2に嵌まり込んだ状態、すなわち測定状態において、発光部21および受光部22がそれらの間に指先を介して対向するような配置とされる。これにより、測定部位の透過光に基づいて、生体情報を測定することができる。なお、測定部位の反射光に基づいて、生体情報を測定することもでき、その場合は発光部21と受光部22とは隣接配置とされる。
【0027】
発光部21は、例えば、赤色領域の波長を有する赤色光を発光する発光ダイオードと、赤外線領域の波長を有する赤外光を発光する発光ダイオードとを備えた光源である。なお、測定部位である指先の太さや受光部22の受光感度が異なっていても、適正なレベルの出力が得られるようにするために、測定時において照射光量を一定の範囲内で調整可能とすることが好ましい。
【0028】
受光部22は、受光した光の強度に応じた大きさの電流を生成する、例えばシリコンフォトダイオード等の光電変換素子を備えて構成されている。受光部22は、測定部位である被験者の指先を透過した発光部21からの光を受光する。したがって、この光電変換素子は、発光部21が発光する赤色光および赤外光に対して感度を有する。受光部22では、具体的には、赤色光および赤外光の光信号を生体情報信号である電気信号へと変換して出力する。
【0029】
装置本体1は、制御部4と、記憶部5と、表示部6と、電源部7と、操作部8と、報知部9と、I/V変換部31と、A/D変換部32とを備えている。
【0030】
記憶部5は、パルスオキシメータ100の制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)や、演算処理や制御処理などのデータを一時的に格納するEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備えている。記憶部5には、測定部2により得られた生体情報信号を解析処理部42において解析処理して求めた、受光部22において受光された各光の光量や脈波振幅、赤外光と赤色光との振幅比率、瞬時SpO値および表示SpO値等が、CPUに備えられているタイマー機能等が出力した測定時刻等の計時情報に関連付けられて格納されている。SpO値の安定度の判定には、現時点での測定結果だけでなく、一定期間過去にさかのぼった測定結果によるデータを用いるが、このように計時情報に関連付けて格納されることで、過去データの読み出しを容易に行うことができる。なお、計時情報としては、測定開始からの時間としてもよいし、時刻としてもよい。
【0031】
表示部6は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)表示装置とすればよい。他に、例えば7セグメントLED(Light Emitting Diode)表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置やCRT(Cathode-Ray Tube)表示装置等の表示装置とすればよい。表示部6は、例えば測定された生体情報であるSpO値等および測定中あるいは固定表示であることを示す情報、安定度の度合い等を表示する。例えば、表示部6は、点灯、点滅、文字、数字、記号、絵記号およびキャラクタ等の表示を行えばよい。
【0032】
電源部7は、パルスオキシメータ100、すなわち測定部2および装置本体1に電力を供給する。パルスオキシメータ100装着時の煩わしさを考慮すると、電源供給用のケーブルを不要とすることが望ましい。したがって、電源部7はボタン電池や2次電池等を備えることとすればよい。なお、電源部7は、一定時間固定表示が継続すると、自動的に電源供給を停止する、パワーオフ機能を有する電源回路を備えている。
【0033】
操作部8は、パルスオキシメータ100を操作するためのスイッチやボタンが設置されて構成されている。具体的には、電源をON/OFFするためのスイッチや、測定開始や、その他の各種操作を指示するスイッチ等を備える。
【0034】
報知部9は、SpO値が安定したために測定値の表示を固定表示としたこと、および測定を始めてから所定時間を経過したことを、例えばアラーム音により操作者に知らせる。なお、報知部9はアラーム音等の音声により、操作者に上記状態を知らせるものには限られない。例えば、振動装置であって、アラーム音の代わりに振動により操作者に上記状態を知らせてもよいし、例えばLED等を備え、LEDの点灯や点滅により操作者に上記状態を知らせるものでもよい。
【0035】
I/V変換部31は、所定の周期で受光部22から出力される電流信号を電圧信号に変換し、この電圧信号を光電脈波信号としてA/D変換部32に出力するものである。
【0036】
A/D変換部32 は、I/V変換部31から出力されたアナログの生体情報信号である光電脈波信号をデジタルの光電脈波信号に変換し、制御部4に出力するものである。
【0037】
制御部4は、各種電子部品や集積回路部品、CPU(Central Processing Unit)等からなり、パルスオキシメータ100の各部の動作制御を行うもので、機能的に測定制御部41、解析処理部42、安定度判定部43および表示制御部44を備えて構成されている。
【0038】
測定制御部41は、所定の測定プログラムにより測定部2による生体情報の測定動作を制御する。具体的には、サンプリング周期毎に発光部21から、赤色光と赤外光とを交互に射出させると共に、その発光タイミングに同期させて受光部22から光電変換信号を取得する。
【0039】
表示制御部44は、表示部6の表示動作を制御する。具体的には、測定中の状態を表す表示または測定により得られた生体情報信号を解析処理部42にて解析して算出されたSpO値等を、所定の表示形態で表示部6へ表示させる表示動作等を制御する。また、安定度判定部43においてSpO値の安定度が高いと判定された場合は、現在表示されているSpO値を固定表示とするよう表示部6を制御する。なお、固定表示の解除についても表示部6を制御する。さらに、表示部6がSpO値を固定表示とする場合には、固定表示である旨の表示や、その際の安定度の度合いの表示を行うよう表示部6を制御する。また、安定度の度合いとしては、判定対象期間中の最大値、最小値および平均値等も含み、表示制御部44は、これらを表示するよう表示部6を制御する。なお、最大値、最小値、平均値の少なくとも1つを表示すればよい。
【0040】
解析処理部42は、測定部2にて得られた生体情報信号に基づき所定のデータ解析を行い、受光部22において受光された各光の光量や脈波振幅、赤外光と赤色光との振幅比率および瞬時SpO値等を求める。なお、サンプリング周期ごとにおけるSpO値である瞬時SpO値だけでなく、1秒間ごとにおけるSpO値である1秒SpO値を求めてもよい。また、瞬時SpO値の所定期間における平均値あるいは移動平均値等を算出し、表示部6に表示するための値である表示SpO値を求める。
【0041】
酸素は、血液中のヘモグロビンの酸化、還元によって運搬されている。このヘモグロビンは、酸化されると赤色光の吸収が減少して赤外光の吸収が増加し、逆に還元されると赤色光の吸収が増加して赤外光の吸収が減少するという光学的特性を有している。解析処理部42は、この特性を利用してSpO値を算出する。具体的には、まず、受光部22で受光された赤色光および赤外光の透過光量の変動を計測し、さらに赤色光および赤外光の振幅比率によりサンプリング周期ごとにおける瞬時SpO値を算出する。また、算出した瞬時SpO値の、例えば所定範囲における平均値あるいは移動平均値を求め、これを表示SpO値とする。表示SpO値は、表示制御部44により表示部6に表示される。なお、表示SpO値は、サンプリング周期ごとに算出してもよいし、例えば1秒ごと等、所定の期間ごとに算出してもよい。
【0042】
安定度判定部43は、SpO値の安定度および安定である場合の安定度の度合いを算出する。例えば上述の式1を用いて安定度判定を行えばよい。具体的には、安定度判定部43は、解析処理部42により算出された表示SpO値を式1に代入することでDSを求め、安定度を判定すればよい。ここで、式1におけるW(I)は重み係数であり、任意に決定することができる係数である。W(I)は、例えば0よりも大きく1以下の値とすればよい。式1では、現時点での安定度を判定することから、より過去に算出された表示SpO値を用いる場合、すなわちIの値が小さい場合ほどW(I)の値を小さくする等すればよい。なお、場合によっては、W(I)を固定値としてもよい。また、S(0)は現在表示部6に表示されている表示SpO値を示す。つまり、解析処理部42で算出された値のうち、最新の表示SpO値である。また、S(−1)は、1つ前に表示されていたSpO値を表す。つまり、1つ前に解析処理部42で算出された表示SpO値である。さらに、S(−2)は2つ前に表示されていた表示SpO値を表す。つまり、2つ前に解析処理部42で算出された表示SpO値である。
【0043】
DSは、算出された表示SpO値と、その1つ前に算出された表示SpO値との差にW(I)を乗じたものを、最新の算出値(現在の表示SpO値)から5点以前に算出された表示SpO値まで求めたものの総和である。つまり、DSを求めるためには、6点分の表示SpO値が必要である。したがって、DSは、表示SpO値の直近のバラツキの目安となる。なお、最新の表示SpO値だけでなく、過去の測定における表示SpO値については、計時情報に関連付けて記憶部5に保存されているので、安定度判定部43は容易に読み出すことができる。
【0044】
安定度判定部43では、式1により求めたDSにおいて、所定の閾値を設定しておき、DSがその閾値以下である場合には、安定であると判定する。なお、DSが小さければ小さいほど、表示SpO値の直近のバラツキが少ないといえるため安定度は高い。そこで、DSの値によって、安定度の度合いを判定することができる。具体的には、DSの値は0が最小値であることから、0から前記閾値までをさらに10等分して、各値により安定度の度合いを10段階で判定すればよい。例えば、前記所定の閾値をThとした場合に各段階の閾値をB(i)で表す。なお、iは0以上9以下の整数であり、iが大きいほどB(i)は大きい。例えば、B(0)=Th/10、B(1)=(Th/10)×2=Th/5、B(2)=(Th/10)×3、B(3)=(Th/10)×4=Th×2/5、B(4)=(Th/10)×5=Th/2、B(5)=(Th/10)×6-=Th×3/5、B(6)=(Th/10)×7、B(7)=(Th/10)×8=Th×4/5、B(8)=(Th/10)×9、B(9)=(Th/10)×10=Thとする。そして、DSが0以上B(0)以下ならば安定度は10、DSがB(0)よりも大きくB(1)以下ならば安定度は9、DSがB(1)よりも大きくB(2)以下ならば安定度は8、DSがB(2)よりも大きくB(3)以下ならば安定度は7、DSがB(3)よりも大きくB(4)以下ならば安定度は6、DSがB(4)よりも大きくB(5)以下ならば安定度は5、DSがB(5)よりも大きくB(6)以下ならば安定度は4、DSがB(6)よりも大きくB(7)以下ならば安定度は3、DSがB(7)よりも大きくB(8)以下ならば安定度は2、DSがB(8)よりも大きくB(9)以下ならば安定度は1として安定度の度合いを判定すればよい。なお、安定度の度合いは10段階に限られるわけではなく、設定される段階は適宜増減すればよい。また、上記説明では、B(i)で表される各段階における閾値の間隔を等間隔としているが、等間隔とせず段階に応じて変化させてもよい。例えば、iが増加するにしたがって閾値間隔を大きくすることで、安定度が高くなるほど安定度の度合いがより厳しく判定されることになる。
【0045】
なお、安定しているか否かの判定および安定度の度合いの判定は上述のように、式1による方法に限られるわけでなく、他の方法を用いてもよい。例えば、表示SpO値を用いての判定以外にも、受光部22において受光された各光の光量や脈波振幅、赤外光と赤色光との振幅比率、1秒SpO値および瞬時SpO値等のいずれか、または表示SpO値も含めてこれらデータのうちすべてあるいは全部を組み合わせて安定度を判定してもよい。なお、これらの過去データについても、記憶部5に保存されている。例えば、これらのデータのバラツキまたは平均値等から、SpO値の安定度の判定を行えばよく、その安定度をもとに、安定度の度合いを判定すればよい。具体的には、安定度判定部43は、判定対象期間における各データのうち最小値および最大値を算出し、最小値と最大値との差が所定値以下であれば、安定していると判定してもよく、この差の大きさに応じて安定度の度合いを決定してもよい。なお、安定度の判定においては、最新の測定により得られた現時点の値と、過去の測定により得られた値を用いるが、これら判定に用いる値が測定された期間を判定対象期間期間という。
【0046】
また、安定度判定部43は、判定対象期間をずらしながら求めた、それぞれの判定対象期間ごとの平均値を比較し、平均値のバラツキが所定値以下であれば、安定していると判定してもよい。さらに、このバラツキの大きさに応じて安定度の度合いを決定してもよい。また、各光の光量や脈波振幅においては、その信号レベルが高いほうがSN比(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)が良好であることから、信号レベルが高い場合を安定度が高いと判定し、安定度の度合いを決定してもよい。
【0047】
次に、図3および図4を用いてパルスオキシメータの動作について説明する。図3は実施の形態に係るパルスオキシメータの動作を示すフローチャートである。また、図4は安定度判定および安定度の度合い判定の手順について説明するためのフローチャートである。
【0048】
まず、被験者の手300にパルスオキシメータ100を装着し、操作部8を操作して測定を開始する(S1)。測定開始の指示が操作部8から制御部4になされると、測定制御部41が、発光部21、受光部22、I/V変換部31およびA/D変換部32を制御してSpO値等の生体情報の測定が行われる。測定制御部41は発光部21を発光させて、その発光タイミングに同期させて受光部22に、生体情報信号である光電変換信号を取得させる。さらに、受光部22で取得された光電変換信号は電流信号であって、I/V変換部31により電圧信号に変換され、光電脈波信号としてA/D変換部32に出力される。測定制御部41はA/D変換部32に、この光電脈波信号をアナログからデジタルに変換させる。
【0049】
解析処理部42は、A/D変換部32から出力されたデジタルの光電脈波信号に基づき所定の解析を行い、受光部22において受光された各光の光量や脈波振幅、赤外光と赤色光との振幅比率、瞬時SpO値、1秒SpO値および表示SpO値等を算出する。表示制御部44は、解析処理部42により算出された表示SpO値等を順次、表示部6に表示させる。また、解析処理部42は、算出した前記各種データを計時情報と共に記憶部5に順次保存する。なお、記憶部5に保存しておくデータは、安定度判定および安定度の度合いの判定に用いるもののみでよい。
【0050】
安定度判定部43は、解析処理部42が算出した最新の測定値および安定度判定に用いる過去の測定におけるデータを記憶部5から読み出し、上述した方法により安定度の判定および安定度の度合いの判定を行う。まず、安定度の判定により、測定値が安定しているか否かを判定する(S2)。測定値が安定していると判断された場合は、表示制御部44は表示部6に最新の表示SpO値を固定表示する(S3)。すなわち、新たに表示SpO値が算出されても、表示部6は現在表示されている表示SpO値を表示し続ける。なお、固定表示した後も、測定部2は測定を続けており、その測定によるデータは解析処理部42で解析処理され、算出されたデータは記憶部5に計時情報と関連付けて記憶されている。ステップS3で表示SpO値が固定表示された後または同時に、表示制御部44は、安定度判定部43において判定された安定度の度合いを表示部6に表示させる(S4)。表示部6が表示SpO値の固定表示および安定度の度合いの表示を行うと、制御部4は、固定表示がなされたことを操作者に知らせるためのアラーム音を報知部9に鳴らさせる(S5)。
【0051】
ここで、安定度判定部43における安定度および安定度の度合いの判定手順について図4を用いて説明する。まず安定度判定部43は、現時点から過去に算出された表示SpO値をもとに、式1よりDSを算出し、所定の閾値Thと比較する(S21)。DSが所定の閾値Thよりも大きいのであれば、測定値は安定していないので、安定するまでステップS21を繰り返す。ステップS21において、DSが所定の閾値Th以下であると判定されれば、測定値は安定していると判定される。そして、安定度の度合いの判定に進む。まず、i=0とし(S22)、DSと各段階の閾値であるB(i)とを比較する(S23)。DSがB(i)よりも大きいと判定されればiに1を加えて(S24)、再びステップS23へと進む。また、ステップS23にて、DSがB(i)以下であると判定されれば、その際のiにより求めた安定度の度合いを表示部6が表示するように、表示制御部44は表示部6を制御する。具体的には、「安定度(10−i)」との表示を表示部6が行う(S25)。なお、安定度の度合いは大きいほど安定度が高い。したがって、DSがB(0)以下の場合は最も安定度の度合いが高い安定度10が表示されることとなる。なお、安定度および安定度の度合いの判定については、上述したように、上記式1を用いる方法以外を用いてもよい。
【0052】
ここで、図5〜図7を用いて、表示部6の表示について説明する。図5は実施の形態に係る表示部の表示を説明するための第1画像図であり、図6は実施の形態に係る表示部の表示を説明するための第2画像図であり、図7は実施の形態に係る表示部の表示を説明するための第3画像図である。
【0053】
図5は、ステップS3において、表示SpO値が固定表示され、ステップS4において、安定度の度合いが表示された状態の表示部6を示している。表示部6において、表示6bは固定表示された表示SpO値である。ここで、固定表示とは現在の測定値とは関係なく、同一の表示SpO値をそのまま継続して表示し続けることをいう。より具体的には、安定度判定部43においてSpO値が安定したと判定した場合に、表示部6に表示されている、現時点での最新の表示SpO値を継続して表示し続ける(固定表示)よう、表示制御部44は表示部6を制御する。表示6cはこの表示SpO値が固定表示されているものであることを示す表示であり、固定表示が開始されると表示される。なお、表示6cとしては、このように文字としてもよいし、その他、絵記号等による表示としてもよい。また、表示部6において、表示6aは安定度の度合いを示す表示である。安定度の度合いは、上述したように、安定度判定部43において、安定であると判定された場合の安定度に基づいて算出され、表示制御部44により表示部6に表示される。また、表示6dは脈波振幅のレベルメータである。これは、測定部2で得られた生体情報に基づき解析処理部42で算出された脈波振幅のレベルを示す表示であり、表示制御部44により表示部6に表示されている。具体的には、脈波振幅のレベルに対応して、上下に振れるようになっている。脈波振幅のレベルは随時変化していることから、測定がなされている間は、上下に触れている。なお、表示6dは具体的な値を示すためのものではなく、測定がなされているか否かを示す表示である。
【0054】
本実施の形態に係るパルスオキシメータ100の表示部6の表示は、以上のとおりであることから、操作者は表示6cにより操作者は固定表示がなされているかを一目で認識できる。また、固定表示されているのであれば、表示されている表示SpO値が安定した値であり、正しい測定値である。したがって、操作者は、表示6bを読み取ることで正しい測定値を知ることができる。また、表示6aにより安定度を読み取ることで、表示SpO値の信頼度も認識できる。したがって、操作者は、測定開始から表示値を目視し続けることなく、正しいSpO値およびその信頼度を認識できる。つまり、測定を開始した後は、アラーム音がなるまで放置しておいてよく、その間は他の作業を行うことができる。また、正しく測定動作に入っているか否かについても、表示6dにより確認できる。
【0055】
なお、図6に示すように、安定度の代わりに、判定対象期間内における表示SpO値の最大値および最小値を表示6eおよび表示6fとして表示してもよい。安定度判定部43は、記憶部5から読み出した過去データ等から、判定対象期間内における表示SpO値の最大値および最小値を求める。そして、表示制御部44は最大値および最小値を表示部6に表示6eおよび表示6fとして表示させる。なお、前記安定度も、最大値および最小値と共に表示してもよい。また、最大値および最小値の代わりまたは共に判定対象期間内における表示SpO値の平均値を表示することとしてもよい。つまり、安定度の代わりまたは共に最大値、最小値、平均値の少なくとも1つを表示することとすればよい。それにより、安定度以外に安定度の度合いを示す表示がなされることになり、操作者は被験者の健康状態をより確実に知ることができるという効果を奏する。なお、表示SpO値の平均値は、安定度判定部43が求めればよい。
【0056】
また、図7に示す表示部6においては、表示6gは、最大値および最小値を表す文字である「max」および「min」のいずれか一方のみを表示する。そして、表示している一方についての値を表示6hで表示することとすればよい。表示6gは交互に切り替わり、それに応じて表示6hの値も切り替わる。このようにすることで、表示に必要な面積を縮小化することができる。したがって、表示部6を小型化することが可能である。
【0057】
パルスオキシメータ100の測定部2は、固定表示となされた後であっても測定を続けている。また、解析処理部42は表示SpO値を算出し続けている。解析処理部42は、表示SpO値の算出ごとに、固定表示されている表示SpO値と算出された最新の表示SpO値との差をとっていて、これらの差の絶対値と所定の値Aと比較している(S6)。つまり、いったん安定であると判定され、固定表示されたとしても、例えば、被験者の状態が急変した場合等、再び測定値が大きく変動することがあり得る。そのような場合は、固定表示を解除して(S7)、再びステップS2に進み、SpO値の安定度を判定することが好ましい。ここで、所定の値AはSpO値が安定した場合における測定のバラツキとしては大きすぎる値とすればよい。このように、表示SpO値と算出された最新の表示SpO値との差の絶対値が所定の値Aよりも大きい場合は、測定値が安定していないと判定されて、再びステップS2に戻り、測定値の安定の判定を行う。一方、表示SpO値と算出された最新の表示SpO値との差の絶対値が所定の値A以下である場合は、固定表示の継続時間と、所定の時間Tとを比較する(S8)。Tは、例えば5分としておけばよい。固定表示の継続時間がT以下である場合は、再びステップS6に進む。また、固定表示の継続時間がTよりも大きい場合は、電源部7は自動的に電源供給を停止する。つまり、パルスオキシメータ100の電源は自動的にオフされる(S9)。このように、固定表示となってから一定時間(T)経過した場合には、パルスオキシメータ100の電源は自動的にオフされるので、省エネルギー効果を有する。なお、自動的に電源がオフされた後に再びパルスオキシメータ100が使用される場合には、表示部6は自動的にオフした際に固定表示していた表示SpO値を表示するように、表示制御部44が表示部6を制御することとすればよい。なお、固定表示となった後、所定時間が経過すると、表示制御部44は表示部6の表示動作を停止させることとしてもよい。また、固定表示となった後、所定時間が経過すると、測定制御部41は測定部2の測定動作を停止させることとしてもよい。これらにより、省エネルギー効果を有する。
【0058】
また、ステップS2において、安定判定部43が、測定値は安定していないと判定した場合は、所定の時間Tとパルスオキシメータ100の測定時間とを比較し(S10)、測定時間がT以下であるときは再びステップS2に進む。また、測定時間がTよりも大きい場合は、制御部4は報知部9に、所定時間(T)が経過しても、測定値が安定しない旨を操作者に知らせるためにアラーム音を鳴らさせ(S11)、再びステップS2に進む。このように、本実施の形態に係るパルスオキシメータ100は、測定開始から所定時間経過しても、測定値が安定しない場合はアラーム音を鳴らすので、例えばパルスオキシメータ100の装着状態が不良であった場合でも、操作者はそのことに早い段階で気づくことができる。なお、固定表示の継続時間および測定時間の算出にはCPUに備えられているタイマー機能等を用いればよい。
【0059】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係るパルスオキシメータの外観構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係るパルスオキシメータの構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係るパルスオキシメータの動作を示すフローチャートである。
【図4】安定度判定および安定度の度合い判定の手順について説明するためのフローチャートである。
【図5】実施の形態に係る表示部の表示を説明するための第1画像図である。
【図6】実施の形態に係る表示部の表示を説明するための第2画像図である。
【図7】実施の形態に係る表示部の表示を説明するための第3画像図である。
【符号の説明】
【0061】
1 装置本体
2 測定部
4 制御部
5 記憶部
6 表示部
6a〜6h 表示
7 電源部
8 操作部
9 報知部
16 ケーブル
17 装着ベルト
21 発光部
22 受光部
31 I/V変換部
32 A/D変換部
41 測定制御部
42 解析処理部
43 安定度判定部
44 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に赤外光および赤色光を照射し、前記生体を経由した光を受光することで生体情報信号を得る測定部と、
前記生体情報信号を解析処理して血中酸素飽和度を算出する解析処理部と、
前記解析処理部において解析処理を行うことにより得られた値をもとに、血中酸素飽和度の安定度および安定度の度合いを判定する安定度判定部と、
前記解析処理部により算出した血中酸素飽和度を表示する表示部とを備え、
前記表示部は、前記安定度判定部において血中酸素飽和度が安定していると判定された場合に、血中酸素飽和度を固定表示とし、かつ前記安定度判定部において血中酸素飽和度が安定していると判定された場合の安定度の度合いを表示する酸素飽和度測定装置。
【請求項2】
前記安定度の度合いは、判定対象期間内における血中酸素飽和度の最大値、最小値および平均値の少なくとも1つを含む請求項1に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項3】
前記表示部が血中酸素飽和度を前記固定表示とした後に、前記安定度判定部において血中酸素飽和度が安定でないと判断された場合は、前記表示部が前記固定表示を解除する請求項1または請求項2に記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項4】
前記固定表示の継続時間が所定時間以上となると、電源を切断する電源部をさらに備えた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項5】
前記固定表示の継続時間が所定時間以上となると、前記表示部は表示を停止する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸素飽和度測定装置。
【請求項6】
前記固定表示の継続時間が所定時間以上となると、前記測定部は測定を停止する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸素飽和度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−261463(P2009−261463A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111621(P2008−111621)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】