説明

重合体の製造方法、リソグラフィー用重合体、レジスト組成物、および基板の製造方法

【課題】溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】反応器内に単量体および重合開始剤を供給しながら、該反応器内で重合体を生成する工程を有する重合体の製造方法であって、単量体の全供給量のうちの12.5質量%が、前記反応器内に供給された時点で、重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、該反応器内に供給されていることを特徴とする重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体の製造方法、該製造方法により得られるリソグラフィー用重合体、該リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶素子等の製造工程においては、近年、リソグラフィーによるパターン形成の微細化が急速に進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術及びEUVエキシマレーザー(波長:13nm)リソグラフィー技術が研究されている。
また、例えば、照射光の短波長化およびパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、酸の作用により酸脱離性基が脱離してアルカリ可溶性となる重合体と、光酸発生剤とを含有する、いわゆる化学増幅型レジスト組成物が提唱され、その開発および改良が進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体としては、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。
例えば下記特許文献1には、単量体として、(A)ラクトン環を有する脂環式炭化水素基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、(B)酸の作用により脱離可能な基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、および(C)極性の置換基を有する炭化水素基または酸素原子含有複素環基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステルを用いてなるリソグラフィー用の共重合体が記載されている。
【0004】
レジストパターンの微細化に伴って、リソグラフィー用重合体の品質への要求も厳しくなっている。例えば重合過程で生成する微量の高分子量成分(ハイポリマー)は、リソグラフィー用重合体のレジスト用溶媒への溶解性やアルカリ現像液への溶解性の低下の原因となり、その結果レジスト組成物の感度が低下する。
下記特許文献2では、かかるハイポリマーの生成を抑える方法として、重合性モノマーを含有する溶液と、重合開始剤を含有する溶液とを、各々独立した貯槽に保持し、重合系内に連続的または断続的に供給してラジカル共重合させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−145955号公報
【特許文献2】特開2004−269855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載されている方法では、リソグラフィー用重合体の溶解性、またはレジスト組成物の感度が充分に改善されない場合がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる重合体の製造方法、該製造方法により得られるリソグラフィー用重合体、該リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、反応器内に単量体および重合開始剤を供給しながら、該反応器内で重合体を生成する工程を有する重合体の製造方法であって、単量体の全供給量のうちの12.5質量%が、前記反応器内に供給された時点で、重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、該反応器内に供給されていることを特徴とする重合体の製造方法である。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記反応器内への前記単量体への供給速度が一定であり、該反応器内に単量体が供給される全供給期間の12.5%が経過した時点で、重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、該反応器内に供給されていることを特徴とする前記第1の態様の重合体の製造方法である。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記第1または第2の態様のいずれかの製造方法により得られるリソグラフィー用重合体である。
本発明の第4の態様は、前記第3の態様のリソグラフィー用重合体、および活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するレジスト組成物である。
本発明の第5の態様は、前記第4の態様のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体の製造方法によれば、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる、重合体が得られる。
本発明のリソグラフィー用重合体は、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる。
本発明のレジスト組成物は、化学増幅型であり、レジスト溶媒への溶解性が優れ、感度に優れる。
本発明の基板の製造方法によれば、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
本発明における重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた値である。
【0012】
<重合体>
本発明の方法で製造する重合体は、重合開始剤を用いたラジカル重合によって生成する重合体である。単独重合体であってもよく共重合体であってもよい。重合体の用途は特に限定されない。例えば、リソグラフィー工程に用いられるリソグラフィー用重合体が好ましい。リソグラフィー用重合体としては、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用重合体が挙げられる。
【0013】
重合体の構成単位は、特に限定されないが、該重合体がレジスト用重合体である場合には、酸脱離性基を有する構成単位を有することが好ましく、この他に、必要に応じてラクトン骨格を有する構成単位、親水性基を有する構成単位等の公知の構成単位を有していてもよい。
レジスト用重合体の重量平均分子量(Mw)は1,000〜100,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.0が好ましく、1.1〜2.5がより好ましい。
【0014】
反射防止膜用重合体の例としては、吸光性基を有する構成単位と、レジスト膜と混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して、高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。
これらのうち、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有するものが、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。
上記吸光性基を有する構成単位・単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
ギャップフィル膜用重合体の例としては、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含む共重合体、具体的にはヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用重合体の例としては、カルボキシル基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0016】
<単量体>
本発明で用いられる単量体は、得ようとする重合体の各構成単位にそれぞれ対応する単量体である。単量体はビニル基を有する化合物が好ましく、ラジカル重合しやすいものが好ましい。
【0017】
以下、レジスト用重合体において、好適に用いられる構成単位およびそれに対応する単量体について説明する。
特にレジスト用重合体に用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルが、波長250nm以下の露光光に対する透明性が高い点でより好ましい。
[酸脱離性基を有する構成単位・単量体]
「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部がレジスト用重合体の主鎖から脱離する基である。
酸脱離性基を有する構成単位を含むレジスト用重合体は、レジスト組成物として用いた場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターンの形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の含有量は、感度および解像度の点から、レジスト用重合体を構成する全構成単位のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0018】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基、および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
【0019】
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0020】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、イソプロピルアダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(実施例のm2)、1−エチルシクロヘキシルメタクリレート(実施例のm4)、1−エチルシクロペンチルメタクリレート(実施例のm7)、イソプロピルアダマンチルメタクリレート(実施例のm10)がより好ましい。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
[極性基を有する構成単位・単量体]
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0022】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
共重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0023】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0024】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
これらの中でも、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(実施例のm1)、α−アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(実施例のm8)、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(実施例のm5)、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン(実施例のm6)がより好ましい。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、親水性基としてヒドロキシ基、シアノ基を有することが好ましい。
共重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0026】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。
【0027】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
これらの中でも、メタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル(実施例のm3)、2−シアノメチル−2−アダマンチルメタクリレート(実施例のm9)がより好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。例えば、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。アゾ化合物がより好ましい。
重合開始剤の使用量(全供給量)は、重合開始剤の種類に応じて、また得ようとする重合体の目標分子量に応じて設定される。重合開始剤の使用量が多いと、得られる重合体の分子量が小さくなり、重合開始剤の使用量が少ないと、得られる重合体の分子量が大きくなる傾向がある。
重合開始剤の使用量(全供給量)の範囲は、特に限定されないが、単量体の合計(全供給量)の100質量部に対して、0.1〜40.0質量部の範囲が好ましく、0.3〜30.0質量部の範囲がより好ましい。
【0029】
<溶媒>
本発明の重合体の製造方法においては重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(例えばジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
重合溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<重合体の製造方法>
本発明の重合体はラジカル重合法によって製造される。重合方法は特に限定されないが、溶液重合法が好ましい。
本発明の重合体の製造方法は、反応器内に単量体および重合開始剤を供給しながら、反応器内で重合体を生成する工程を有する。単量体および重合開始剤のいずれも液状で供給することが好ましい。単量体および重合開始剤の供給方法は、反応器内に徐々に供給できる方法であればよく、好ましくは滴下により供給される。供給は連続的でもよく、断続的でもよい。供給速度は一定でもよく、経時的に変化してもよい。
【0031】
好ましくは、反応器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を液状で反応器内に供給する。単量体は、単量体のみからなる液の状態で供給してもよく、又は単量体を溶媒に溶解させた単量体溶液を供給してもよい。単量体溶液は、使用する単量体の全部を含む一液を用いてもよく、使用する単量体の一部をそれぞれ含む二液以上を用いてもよい。
【0032】
重合開始剤は、単量体からなる液に溶解させた液状で供給してもよく、単量体溶液に溶解させた液状で供給してもよく、又は溶媒のみに溶解させた液状で供給してもよい。使用する重合開始剤の全部を一液に含有させてもよく、二液以上に分けて供給してもよい。
単量体と重合開始剤を同じ液に溶解させて供給する場合、同じ貯槽内で両者を混合した後、反応器中に供給してもよく、各々独立した貯槽からから反応器に供給する直前で混合してもよい。
【0033】
反応器には予め溶媒を仕込んでもよく、仕込まなくてもよい。反応器に予め溶媒を仕込まない場合、単量体または重合開始剤は、溶媒がない状態で反応器中に供給される。好ましくは反応器内に予め溶媒を仕込んでおく。
【0034】
本発明では、単量体の全供給量のうちの12.5質量%が、反応器内に供給された時点で、重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、該反応器内に供給されているように、供給を制御する。
すなわち、仮に単量体と重合開始剤を同時に供給開始して、供給速度を一定とし、同時に供給終了した場合、単量体および重合開始剤のそれぞれの全供給量に対する供給割合は、どの時点でも互いに同じになる。例えば単量体の全供給量のうちの12.5質量%が反応器内に供給された時点で、重合開始剤も全供給量のうちの12.5質量%が反応器内に供給されている。これに対して本発明では、単量体が供給される期間の初期における重合開始剤の供給量を多くする。すなわち単量体の全供給量のうちの12.5質量%が反応器内に供給された時点までに、該反応器内に供給される重合開始剤の量は、重合開始剤の全供給量に対して少なくとも25質量%であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。100質量%でもよい。
【0035】
単量体と重合開始剤は、一方を先に供給開始した後、遅れて他方を供給開始してもよく、両方を同時に供給開始してもよいが、両方を同時に供給開始するか、または重合開始剤を先に供給開始することが好ましい。両方を同時に供給開始するのがより好ましい。
また、単量体と重合開始剤の供給速度をそれぞれ別個に制御できることが好ましい。したがって、単量体の一部または全部を含む液と、重合開始剤の一部又は全部を含む液の、少なくとも二液を用いることが好ましい。
重合体の生成を安定して行ううえで、単量体の供給は連続的で、供給速度は一定であることが好ましい。一方、重合開始剤の供給は連続的で、段階的に供給速度が変化することが好ましい。すなわち、重合開始剤の供給開始直後は供給速度が大きく、かつ一定速度であり、所定量供給した後、供給速度を小さくして、一定速度で供給することが好ましい。重合開始剤の供給開始直後の供給速度が大きい期間は、単量体が重合開始剤と同時に供給開始されてから、または単量体が重合開始剤より遅れて供給開始されてから1〜30分後までに終了することが好ましい。
【0036】
本発明において、反応器内への単量体への供給速度が一定である場合は、反応器内に単量体が供給される全期間の12.5%の時間が経過した時点で、上記と同様に、重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、反応器内に供給されていればよい。この場合も、重合開始剤の供給速度は一定でもよく、経時的に変化してもよい。
【0037】
本発明によれば、後述の実施例・比較例に示されるように、単量体の全供給量のうちの12.5質量%が反応器内に供給された時点までに、重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上を反応器内に供給することにより、単量体と重合開始剤の供給開始および供給終了が互いに同時で、かつ供給速度がいずれも一定である比較例(以下、「供給割合が等しい比較例」という。)に比べて、得られる重合体の溶解性が向上し、レジスト組成物としたときの感度が向上する。
すなわち、単量体の組成と使用量および重合開始剤の使用量が互いに同じであるとき、本発明の製造方法で得られる重合体の方が、供給割合が等しい比較例に比べてMwは小さくなり、溶解性が向上する。
また、重合開始剤の使用量を変えることによって、供給割合が等しい比較例のMwと、本発明の製造方法で得られる重合体のMwとをほぼ同等としたとき、本発明の製造方法で得られる重合体の方が、溶解性が高くなる。
したがって、本発明によれば、従来品と単量体組成およびMwが同じでありながら、溶解性が向上した重合体を製造できる。さらに、重合開始剤の使用量を調整すれば、単量体組成を変化させずにMwを調整できるため、所望の単量体組成で、所望のMwを有し、かつ溶解性に優れた重合体を製造できる。
本発明においてかかる効果が得られる理由は、単量体が供給される期間の初期における重合開始剤の供給量を多くしたことにより、ハイポリマーの生成が抑えられるためと考えられる。
【0038】
<レジスト組成物>
本発明のレジスト組成物は、本発明のリソグラフィー用重合体をレジスト溶媒に溶解して調製される。レジスト溶媒としては、重合体の製造に用いた上記重合溶媒と同様のものが挙げられる。
本発明のレジスト組成物が化学増幅型レジスト組成物である場合は、さらに活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤という。)を含有させる。
【0039】
(光酸発生剤)
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物において公知の光酸発生剤の中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
レジスト組成物における光酸発生剤の含有量は、重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0040】
(含窒素化合物)
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。すなわち、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなる。また半導体素子の量産ライン等では、レジスト膜に光を照射し、次いでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることがあるが、そのような放置(経時)によるレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0041】
含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
レジスト組成物における含窒素化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0042】
(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
【0043】
有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
レジスト組成物における酸化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0044】
(添加剤)
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これら添加剤の量は、特に限定されず、適宜決めればよい。
【0045】
<パターンが形成された基板の製造方法>
本発明の、パターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の基板の被加工面上に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、該レジスト組成物が塗布された基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
【0046】
ついで、レジスト膜に対して、フォトマスクを介して露光を行い潜像を形成する。露光光としては、250nm以下の波長の光が好ましい。例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV光が好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0047】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものが挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして基板上にレジストパターンが形成される。
【0048】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0049】
本発明の製造方法により得られるリソグラフィー用重合体は、溶媒への溶解性に優れる。したがって、レジスト組成物を調製する際のレジスト溶媒への重合体の溶解を容易にかつ良好に行うことができる。またレジスト組成物はアルカリ現像液に対する優れた溶解性が得られ、高い感度が得られる。
したがって本発明の基板の製造方法によれば、本発明のレジスト組成物を用いることによって、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成できる。また、高感度のレジスト組成物の使用が要求される、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーまたは電子線リソグラフィー、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を使用するリソグラフィーによる、パターン形成にも好適に用いることができる。
なお、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーに用いられるレジスト組成物を製造する場合には、重合体が該露光光の波長において透明であるように、単量体を適宜選択して用いることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。
重合体の平均分子量の測定方法、重合体の溶解性の評価方法、及びレジスト組成物の感度の評価方法は以下の通りである。
【0051】
[重量平均分子量測定]
重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の条件(GPC条件)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
<GPC条件>
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0052】
検量線:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0053】
[重合体の溶解性の評価]
重合体の20部とPGMEAの80部とを混合し、25℃に保ちながら撹拌を行い、完全溶解するまでの時間を計測した。完全溶解は目視で判断した。
【0054】
[レジスト組成物の感度評価]
<レジスト組成物の調製>
以下の組成となるようにレジスト組成物を調製した。
重合体 :100質量部(固形分換算)、
光酸発生剤:トリフェニルスルホニウムトリフレート2質量部、
溶媒: PGMEA (重合体の濃度が12.5質量%となる量)。
【0055】
<感度測定>
上記で調製したレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PAB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製、VUVES−4500(製品名))を用い、露光量を変えて10mm×10mmの面積の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間ポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製、RDA−800(製品名))を用い、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間現像し、各露光量のレジスト膜それぞれについて、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0056】
<解析>
得られたレジスト膜厚の経時変化のデータを基に、露光量(単位:mJ/cm)の対数と、初期膜厚に対する、60秒間現像した時点での残存膜厚の割合率(単位:%、以下残膜率という。)との関係をプロットして、露光量−残膜率曲線作成した。この曲線に基づいて、残膜率0%とするための必要露光量(Eth)の値を求めた。すなわち、露光量−残膜率曲線が、残膜率0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)をEthとして求めた。このEthの値は感度を表し、この値が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0057】
〔実施例1〜8および比較例1〜8〕
[重合体の製造]
表1,2に示す配合および滴下条件で重合体を製造した。表1,2示す配合量の単位は「質量部」である。
第1の混合物における単量体およびその仕込み割合(モル%)は以下の通りである。重合開始剤としては、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名))を用いた。
【0058】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
【化1】

【0059】
(実施例4および比較例4)
【化2】

【0060】
(実施例5および比較例5)
【化3】

【0061】
(実施例6および比較例6)
【化4】

【0062】
(実施例7および比較例7)
【化5】

【0063】
(実施例8および比較例8)
【化6】

【0064】
まず窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、及び温度計を備えたフラスコを反応器として用いた。予めフラスコ(反応器)内に、窒素雰囲気下で溶媒を仕込んだ。
次いでフラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、フラスコ内の温度を80℃に保ちながら、第1の混合物を、一方の滴下漏斗(表には「漏斗1」と記載する。)より4時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下速度は一定とした。
実施例1〜8では、第1の混合物の滴下開始と同時に、第2の混合物を、他方の滴下漏斗(表には「漏斗2」と記載する。)よりフラスコ内に滴下した。滴下速度は一定とした。漏斗2からの滴下時間は、表に示す通りで、実施例1〜6は0.1時間、実施例7は0.3時間、実施例8は0.2時間とした。
比較例3では、先に、漏斗2から第2の混合物の滴下を開始し、その30分経過後に漏斗1からの滴下を開始した。
比較例1、4〜8では、第2の混合物および漏斗2は用いなかった。
いずれの例においても、第1の混合物(漏斗1)の滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に3時間保持して、目的の重合体を含む反応溶液を得た。
漏斗1からの単量体の全供給期間(4時間)の12.5%(30分)が経過した時点で、既にフラスコ内に供給されている単量体および重合開始剤それぞれの、全供給量に対する割合(単位:質量%)を表1,2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
[重合体の精製]
次いで、得られた反応溶液を、約10倍量のメタノール及び水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色の析出物(重合体)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノール及び水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、重合体湿粉(160g)を得た、重合体湿粉のうち10gを減圧下40℃で約40時間乾燥した。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を表3に示す。また得られた重合体の溶解性を上記の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0068】
[レジスト組成物の製造]
前記重合体湿粉の残りをPGMEAの920gへ投入し、完全に溶解させた後、孔径0.04μmのナイロン製フィルター(日本ポール社製、P−NYLON N66FILTER0.04M(商品名))へ通液して濾過した。
重合体溶液を減圧下で加熱してメタノール及び水を留去し、さらにPGMEAを留去し、重合体の濃度が25質量%の重合体溶液を得た。この際、最高到達真空度は0.7kPa、最高溶液温度は65℃、留去時間は8時間であった。
【0069】
こうして得られた重合体溶液の400部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートの2部と、溶媒であるPGMEAとを、重合体濃度が12.5質量%になるように混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物を得た。得られたレジスト組成物について、上記の方法で感度を評価した。評価結果を表3に示す。
表3には、漏斗1の滴下開始から30分間(単量体供給初期12.5%の期間)に反応器内に供給された重合開始剤の割合(質量%)も合わせて示す。
【0070】
【表3】

【0071】
(評価結果)
反応器内に供給される単量体の全供給期間のうち、初期12.5%の期間に重合開始剤の全使用量のうち25%以上を反応器内に供給して得られた重合体(実施例1〜8)は、レジスト溶媒への溶解性に優れ、高感度なレジスト組成物が得られた。
一方、上記実施例1〜8と、各々同じ組成の単量体を用いて重合体を製造しても、反応器内に供給される単量体の全供給期間のうち、初期12.5%の期間に重合開始剤の全使用量のうちの25%未満しか反応器内に供給されなかった重合体(比較例1〜8)は、レジスト溶媒へ完全に溶解するまでの時間がかかり、レジスト溶媒への溶解性が低かった。また比較例1〜8の重合体を含有するレジスト組成物の感度は実施例よりも低かった。
例えば、実施例2,3および比較例1〜3を比べると、単量体組成は互いに同じであり、得られた重合体のMwもほぼ同等であるのに、実施例2,3は、比較例1〜3に比べて溶解性および感度が格段に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内に単量体および重合開始剤を供給しながら、該反応器内で重合体を生成する工程を有する重合体の製造方法であって、
単量体の全供給量のうちの12.5質量%が、前記反応器内に供給された時点で、
重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、該反応器内に供給されていることを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項2】
前記反応器内への前記単量体の供給速度が一定であり、該反応器内に単量体が供給される全供給期間の12.5%が経過した時点で、
重合開始剤の全供給量のうちの25質量%以上が、該反応器内に供給されていることを特徴とする請求項1記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の製造方法により得られるリソグラフィー用重合体。
【請求項4】
請求項3に記載のリソグラフィー用重合体、および活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するレジスト組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。

【公開番号】特開2011−57857(P2011−57857A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209166(P2009−209166)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】