説明

重合性化合物及び当該化合物の製造中間体

【課題】重合性の液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、前記重合性の液晶組成物を硬化させた場合に優れた耐熱性及び機械強度を示す重合性化合物であり、これら重合性化合物の効率的な製造を可能とする中間体を提供する。
【解決手段】一般式


で表わされる重合性化合物であり、当該化合物を構成部材とする液晶組成物、更に、当該液晶組成物を用いた光学異方体、又は液晶デバイス。重合性化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。また、これらを製造する際の重要中間体である一般式。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性化合物、及び当該化合物を含有する液晶組成物、更に当該液晶組成物の硬化物である光学異方体又は液晶デバイスに関するものであり、当該重合性化合物の製造中間体である水酸基を有する芳香族化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い液晶ディスプレイに必須な偏向板、位相差板などに用いられる光学補償フィルムの重要性は益々高まっており、高耐久性化、高機能化が求められている。この光学補償フィルムには重合性の液晶組成物の重合体を使用する例が報告されている。光学補償フィルム等に用いる光学異方体は光学特性だけでなく化合物の重合速度、溶解性、融点、ガラス転移点、重合物の透明性、機械的強度、表面硬度及び耐熱性なども重要な因子となる。更に液晶媒体に重合性化合物を添加して表示特性を向上させる例が報告されている。
【0003】
重合性の液晶組成物を構成する化合物として従来は、1,4−フェニレン基をエステル結合によって連結した構造を有する化合物(特許文献1参照)や、フルオレン基を有する化合物(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、当該引用文献記載の重合性化合物は溶解性が低い等の問題があった。一方、溶解性を向上させるために構造を非対称とした重合性化合物が開示されているが(特許文献3参照)、従来の重合性化合物と比較して溶解性の点で改善がなされているものの十分でなく、また耐熱性や機械強度が低い等の問題があった。このため更なる性能の改善が求められている。
【0004】
また、これらの要求を改善するため重合性化合物の構造は複雑化し、その製造は困難なものとなってきた。このため、これら重合性化合物を効率的に製造するための有用な中間体の開発についても切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平10−513457号公報
【特許文献2】特開2005−60373公報
【特許文献3】特表平2001−527570公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、重合性の液晶組成物を構成した場合に他の重合性化合物及び液晶化合物と優れた溶解性を有し、前記重合性の液晶組成物を硬化させた場合に優れた耐熱性及び機械強度を示す重合性化合物を提供することであり、併せてこれら重合性化合物の効率的な製造を可能とする中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは重合性化合物における種々の置換基の検討を行った結果、特定の構造を有する重合性化合物が前述の課題を解決できることを見出し本願発明を完成するに至った。
【0008】
一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
(ただし、Rは以下の式(R−1)から式(R−15)
【0011】
【化2】

【0012】
の何れかを表し、Sは、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子、−COO−、−OCO−又は−OCOO−に置き換えられても良い炭素数1〜12のアルキレン基、又は単結合を表し、Zは、OH、Cl、OC2a+1(aは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは−O−、−COO−、単結合、又はOC2b(bは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは―CH=CH−CO−又は―CHCH−CO−を表し、Mは、1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基又は4,4‘−ビフェニル基を表し、M、及びMは、お互い独立して1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、及びテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、M、M及びMは、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、mは0、1及び2を表すが、mが2を表す場合、複数存在するMは同一であっても異なっていても良く、ただしMが1,4−フェニレン基の場合は、mは1又は2を表す。)で表わされる重合性化合物を提供し、更に一般式(I)で表される化合物を製造する際の重要中間体として、一般式(II)
【0013】
【化3】

【0014】
(ただし式中Zは、OH、Cl又はOC2c+1(cは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Sは、単結合、又はC2d(dは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは−O−、−COO−、単結合、又はOC2e(eは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは、―CH=CH−CO−又は―CHCH−CO−を表し、M及びMは、お互い独立して1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、又はテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、M及びMは、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、nは0、1及び2を表すが、nが2を表す場合、複数存在するMは同一であっても異なっていても良く、ただしMが1,4−フェニレン基の場合は、nは1又は2を表す。)で表される水酸基を有する芳香族化合物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の水酸基を有する芳香族化合物から誘導される重合性化合物は、液晶相温度範囲が広く、他の液晶化合物との優れた溶解性を有する重合性化合物の中間体として有用である。又、本願発明の水酸基を有する芳香族化合物から誘導される重合性化合物を用いた重合性成物からなる光学異方体は、耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の用途や、高分子安定化液晶デバイスに有用である。またこれら重合性化合物は一般式(I)で表される化合物から容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般式(I)において、Rは重合性基を表すが、重合性基の具体的な例としては、下記に示す構造が挙げられる。
【0017】
【化4】

【0018】
これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)、式(R−2)がより好ましい。
【0019】
はスペーサー基又は単結合を表すが、スペーサー基としては、炭素数1〜8のアルキレン基又は単結合が好ましく、該アルキレン基は酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良い。優れた重合性を要求される場合には単結合が好ましく、柔軟な分子構造が要求される場合には炭素数2〜6のアルキレン基が特に好ましい。
【0020】
は−O−、−COO−、単結合又はOC2b(bは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは、−CH=CH−CO−、又は−CCO−を表すが、優れた重合性を要求される場合には−CH=CH−COO−が好ましく、優れた相溶性を要求される場合には−C−COO−が好ましい。Zは、OH、Cl又はOC2a+1(aは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良い。)を表すが、OH、Cl、OC2a+1(aは1から8の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良い。)、O−t−C及びO−s−Cが好ましく、OH、OC2a+1(aは1から6の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状である。)、O−t−C及びO−s−Cが更に好ましい。
は、無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、4,4‘−ビフェニル基を表し、M、M、M及びMは、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、及びテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、M及びMは無置換であるか又はハロゲノ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。
【0021】
mは0、1及び2を表すが、0及び1が好ましい。
【0022】
一般式(II)において、Zは、OH、Cl又はOC2c+1(cは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表すが、OH、Cl、OC2c+1(cは1から8の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)、O−t−C及びO−s−Cが好ましく、OH、OC2c+1(cは1から6の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状である。)、O−t−C及びO−s−Cが更に好ましい。Sは、単結合、又はC2d(dは1から6の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)が好ましく、Lは−O−、−COO−、単結合又はOC2e(eは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは、−CH=CH−CO−又は−CHCH−CO−を表し、優れた重合性を要求される場合には−CH=CH−CO−が好ましく、相溶性を改善するには−CHCH−CO−が好ましい。M及びMは、お互い独立して1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、及びテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、M及びMは、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良いが、お互い独立して無置換であるか又はハロゲノ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましく、無置換であるか又はハロゲノ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基及びナフタレン−2,6−ジイル基が更に好ましく、nは0、1及び2を表すが、0及び1が好ましい。
【0023】
一般式(I)で表される重合性化合物は、具体的には、下記の一般式(I−1)〜一般式(I−23)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
(式中、pは、0〜12の整数を表すが、pが0であっても酸素原子同士が直接結合してしまうことはなく、この場合一方の酸素原子を除去する。)
一般式(II)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(II−1)〜一般式(II−27)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
(式中、pは、0〜12の整数を表す。)
本発明の化合物は以下に記載する合成方法で合成することができる。
(製法1) 一般式(I−1)及び(II−1)で表される化合物の製造
4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニルとアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、本発明の水酸基を有するビフェニル誘導体(I−1)を得ることができる。更に塩化メタアクリロイルとのエステル化反応により、本発明の重合性化合物(II−1)を得ることができる。
【0033】
【化12】

【0034】
(製法2) 一般式(I−6)及び(II−5)で表される化合物の製造
2−ブロモ−6−ヒドロキシナフタレンとアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、本発明の水酸基を有するビフェニル誘導体(II−5)を得ることができる。更に得られたビフェニル誘導体(II−5)と6−クロロヘキシルアクリレートを炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させて、本発明の重合性化合物(I−6)を得ることができる。
【0035】
【化13】

【0036】
(製法3) 一般式(II−7)で表される化合物の製造
6−メトキシ−2−ブロモナフタレンから調製したグリニア試薬とブロモヨウドベンゼンをパラジウム触媒存在下に反応させてフェニルナフタレン誘導体を得た後、酸により加水分解して、ナフトール誘導体を得ることができる。得られた化合物を製法2の2−ブロモ−6−ヒドロキシナフタレンに代えて使用することにより、一般式(II−7)で表される化合物を得ることができる。
【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
(製法4) 一般式(II−10)で表される化合物の製造
製法3で得られた一般式(II−7)で表される化合物をトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させて一般式(II−10)で表される化合物を得ることができる。
(製法5) 一般式(II−15)で表される化合物の製造
上記の一般式(II−1)で表される化合物をPd/C存在下に水素ガスと反応させることにより還元して一般式(II−15)で表される化合物を得ることができる。
(製法6) 一般式(II−17)で表される化合物の製造
製法5で得られた一般式(II−15)で表される化合物をトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させて一般式(II−17)で表される化合物を得ることができる。
(製法7) 一般式(I−15)で表される化合物の製造
製法1で得られた一般式(II−1)で表される化合物を安息香酸誘導体と脱水縮合することにより一般式(I−15)で表される化合物を得ることができる。
【0040】
【化16】

【0041】
本発明の水酸基を有する芳香族化合物、及びこれらの芳香族化合物を中間体とした重合性化合物は、従来の重合性基を有する安息香酸から製造方法により、大幅に製造コストを低下させることが可能である。更に重合性基を最終工程で結合させるため副生成物を抑制でき、高純度で製造することが可能となった。また、本発明のヒドロキシ安息香酸誘導体は芳香環に別々の置換基を導入することが可能であるため、多種多様の重合性化合物を容易に製造することができるため、大変有用である。
【0042】
本願発明の化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、キラルネマチック、キラルスメクチック、及びコレステリック液晶組成物に使用できる重合性化合物及びその中間体である。本願発明の重合性化合物は、重合性官能基としてアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基を有するものが特に好ましい。また、本願発明の重合性化合物または中間体から合成した重合性化合物の液晶組成物がコレステリック液晶の場合は、キラル化合物の添加が好ましい。更に重合性基を有しない液晶組成物に添加しても構わなく、特に高分子安定化液晶デバイスに有用な材料である。
【0043】
本発明の中間体または重合性化合物より合成できる重合性化合物の具体例を一般式(IV−1)〜一般式(IV−10)に示す。
【0044】
【化17】

【0045】
(式中、q及びrは、0〜12の整数を表すが、0の場合、酸素原子が直結するものを表す場合には一つ除去する。)
本発明の重合性化合物に必要に応じた重合開始剤や安定剤を含有する液晶組成物を重合させることによって製造される光学異方体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明及び誘導される化合物を含有する重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された光学異方体は、物理的性質に光学異方性を有しており、有用である。このような光学異方体は、例えば、重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiOを斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、液晶組成物を重合させることによって製造することができる。
【0046】
また、上記重合性液晶組成物を非重合性の液晶素子物に添加してもよい。液晶デバイスに関しては液晶媒体に重合性化合物を添加して表示特性を向上させる例が報告されており、液晶セル内の液晶分子の配向を制御するために本願化合物を使用することもできる。具体的な組成物としては通常の液晶デバイス、例えばSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶や、TN(ツイステッド・ネマチック)液晶、TFT(薄膜トランジスター)液晶等に使用されるネマチック液晶組成物、強誘電液晶組成物等が挙げられる。
【0047】
また、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
(実施例1)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル 10g(40.1ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 6.2g(48.2ミリモル)、トリエチルアミン 4.8g(48ミリモル)、酢酸パラジウム 530mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(1)に示す化合物11gを得た。
【0049】
【化18】

【0050】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(1)に示す化合物3g(10.1ミリモル)、アクリル酸クロリド 1g(11ミリモル)、塩化メチレン50mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 1.2g(12ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、塩化メチレンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(2)に示す化合物 3.6gを得た。
【0051】
【化19】

【0052】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(2)に示す化合物3.6gを塩化メチレン10mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸10mlを滴下し、室温で30分攪拌した。その後、酢酸エチル200mlを加えて純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去し式(3)に示す目的の化合物 2.4gを得た。
【0053】
【化20】

【0054】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド):δ:6.16(dd,1H), 6.40−6.47(m,1H),6.54−6.60(m,2H),7.28(d,2H),7.62(d,1H),7.71−7.80(m,6H),12.42(s,1H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:119.1,122.2,126.9,127.5,127.7,128.8,130.9,132.1,142.1,150.6,164.3,167.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):1760,1652−1622,809cm−1
融点:243℃
(実施例2)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に塩化アルミニウム(III)を12.8g(96ミリモル)、ジクロロメタン100mlを加え攪拌した。次いで塩化アセチル 8.4g(110ミリモル)を90分かけてゆっくり滴下し、更に4−ブロモ−2−フルオロビフェニル 20g(80ミリモル)のジクロロメタン溶液80mlを2時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、更に2時間攪拌した。反応液を500mlの氷水にゆっくり注ぎ反応を終了させた後、ジクロロメタンで抽出し、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、乾燥を行いアセチル基を導入した化合物を23g得た。次いで、撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器にアセチル基を導入した化合物23g、ギ酸300mlを仕込み、34.5%の過酸化水素水20mlを加え、加熱還流を6時間行った。反応終了後、10%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液450ml行い、過酸化物を分解した。析出した固体をろ過し酢酸エチルで溶解させ水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(4)に示す化合物18gを得た。
【0055】
【化21】

【0056】
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に4−ブロモ−3−フルオロビフェニル 10g(37.4ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 5.7g(44.8ミリモル)、トリエチルアミン 5.6g(56ミリモル)、酢酸パラジウム 410mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(5)に示す目的の化合物10.5gを得た。
【0057】
【化22】

【0058】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(5)に示す化合物10.5g(33.4ミリモル)、アクリル酸クロリド 3.6g(40ミリモル)、塩化メチレン100mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 4g(40ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、塩化メチレンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行いアクリル基を有する化合物 10.5gを得た。
【0059】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、アクリル基を有する化合物 10.5gを塩化メチレン20mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸30mlを滴下し、室温で30分攪拌した。その後、酢酸エチル200mlを加えて純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去し式(6)に示す化合物 8.9gを得た。
【0060】
【化23】

【0061】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド):δ:6.17(dd,1H), 6.41−6.45(m,1H),6.55−6.69(m,2H),7.38(d,2H),7.58−7.69(m,5H),7.74(d,2H),12.42(s,1H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:115.1,115.4,120.8,122.0,124.9,127.5,129.9,130.9,132.1,133.7,142.1,150.6,164.3,167.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):1760,1652−1622,809cm−1
融点:218℃
(実施例3)
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、実施例1記載の式(1)に示す化合物 20g(67.4ミリモル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10.5g(81ミリモル)、トリフェニルホスフィン 26.5g(100ミリモル)、ジクロロメタン 400mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応容器を10℃以下に冷却し、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート 16.3g(81ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し、3時間反応させた。反応終了後、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(7)に示す目的の化合物20gを得た。
【0062】
【化24】

【0063】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.54(s,9H),1.95(s,2H)4.25(t,2H), 4.53(t,2H),5.59(dd,1H),6.15(s,1H),6.37(d,1H),6.98−7.02(m,2H),7.52−7.59(m,6H),7.62−7.63(m,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:18.2,28.1,63.0,66.0,80.4,115.0,119.7,126.0,126.9,128.1,128.4,133.0,133.1,135.9,142.1,143.0,158.5,166.3,167.3
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:133℃
(実施例4)
撹拌装置備えたオートクレーブ容器に、式(1)に示される実施例1で合成した中間体3.6g(12ミリモル)、5%パラジウムカーボン 180mg、テトラヒドロフラン50ml、エタノール5mlを仕込み、0.3MPaの水素にて還元反応(室温、8時間)を行った。反応液をろ過した後、溶媒を留去して水素添加された化合物3.6gを得た。
【0064】
次いで撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の水素添加された化合物3.6g(12ミリモル)、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸 3.5g(12ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 150mg、ジイソプロピルカルボジイミド 1.8g(14ミリモル) 塩化メチレン150mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で6時間反応させた。反応終了後、塩化メチレン 100mlを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(8)に示す目的の化合物4.8gを得た。この化合物は、97℃〜100℃の温度でネマチック液晶相を示した。
【0065】
【化25】

【0066】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.43(s,9H),1.47−1.51(m,4H),1.71−1.75(m,2H),1.83−1.85(m,2H),2.56(t,2H),2.93−2.97(m,2H),4.05(t,2H),4.17(t,2H),5.81(dd,1H),6.09−6.16(m,1H),6.38(dd,1H),6.95(d,2H),7.24−7.35(m,4H),7.50(d,2H),7.60(d,2H),8.15(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.6,25.7,28.0,28.5,28.9,30.7,36.9,64.4,68.0,80.4,114.2,121.5,122.0,127.0,127.9,128.5,128.7,130.5,132.3,138.3,138.6,139.9,150.3,163.4,164.9,172.3
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:97℃
(実施例5)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル 10g(40.1ミリモル)、n−ブチルアクリレート 7.7g(60ミリモル)、トリエチルアミン 6g(60ミリモル)、酢酸パラジウム 530mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(9)に示す化合物9gを得た。
【0067】
【化26】

【0068】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(9)に示す化合物 9g(30ミリモル)、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸 8.7g(30ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 450mg、ジイソプロピルカルボジイミド 4.5g(36ミリモル) 塩化メチレン150mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で6時間反応させた。反応終了後、応終了後、塩化メチレン 100mlを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(10)に示す目的の化合物12gを得た。この化合物は、90℃〜190℃まで幅広い温度でスメクチック液晶相を示した。
【0069】
【化27】

【0070】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:0.95−0.99(m,3H),1.44−1.48(m,6H),1.63−1.73(m,4H),1.83−1.90(m,2H),4.05(t,2H),4.17−4.24(m,4H),5.81(dd,1H),6.09−6.16(m,1H),6.38−6.50(m,2H),6.96(d,2H),7.26−7.31(m,2H),7.61(s,4H),7.62−7.68(m,2H),7.70−7.74(d,1H),8.14−8.18(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:13.7,19.1,25.6,28.5,28.9,30.7,64.4,68.0,114.2,118.1,121.4,122.2,127.4,127.4,128.0,128.5,130.5,132.4,137.7,142.1,143.9,150.9,163.4,164.8,166.2,167.0
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:90℃
(実施例6)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に6−ブロモ−2−ナフトール 20g(90ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 17.2g(134ミリモル)、トリエチルアミン 14g(134ミリモル)、酢酸パラジウム 1g、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(11)に示す化合物13gを得た。
【0071】
【化28】

【0072】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(11)に示す化合物 7g(26ミリモル)、3−クロロプロピルアクリレート 4.6g(31ミリモル)、炭酸カリウム 4.3g(31ミリモル)、ジメチルホルムアミド 100mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、応終了後、酢酸エチルを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行いアクリル基を有する化合物 8gを得た。
【0073】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、アクリル基を有する化合物 10.5gを塩化メチレン20mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸20mlを滴下し、室温で30分攪拌した。その後、酢酸エチル300mlを加えて純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。その後溶媒を留去して式(12)に示す目的の化合物 6gを得た。この化合物は、153℃〜180℃まで幅広い温度でネマチック液晶相を示した。
【0074】
【化29】

【0075】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:2.17−2.28(m,2H),4.19(t,2H),4.40−4.43(m,2H),5.83(dd,1H),6.11−6.19(m,1H),6.38−6.46(m,1H),7.13−7.22(m,2H),7.64−7.81(m,3H),7.89−7.94(m,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:28.5,61.3,63.2,106.7,115.9,119.7,124.2,127.5,128.3,130.3,130.9,131.0,137.7,147.9,157.0,163.4,165.0
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:153℃
(参考例)重合性化合物の合成方法
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に実施例3で合成した式(7)の化合物
10g(24.4ミリモル)、トリフルオロ酢酸 20ml、ジクロロメタン 20mlを加え、室温で1時間攪拌した後、酢酸エチル100ml、テトラヒドロフラン 150mmlを加えて純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去し淡黄色の固体を8g得る。次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に上記の化合物 8.5g、アクリル酸=2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル 4.6g(24ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 300mg、塩化メチレン 100mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 3.5g(28ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(13)に示す目的の化合物10.3gを得た。この化合物は、123℃から180℃以上まで幅広い温度で液晶相を示した。
【0076】
実施例3の中間体を用いることにより、出発原料の4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニルから4工程で合成することが可能であり、総収率は58%であった。
【0077】
【化30】

【0078】
(比較例)重合性化合物の合成方法
撹拌装置、冷却器、ディーンスターク及び温度計を備えた反応容器にp−ヒドロキシ桂皮酸 16g(100ミリモル)、硫酸 5ml、メタノール 100mlを加え、6時間還流し、p−ヒドロキシ桂皮酸メチルエステル 17gを得る。次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に上記で合成したp−ヒドロキシ桂皮酸メチルエステル17g、トリエチルアミン 15g(150ミリモル)、塩化メチレン 150mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でトリフルオロメタンスルホン酸無水物 30g (106ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、式(14)に示す化合物 28gを得た。
【0079】
【化31】

【0080】
撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に式(14)の化合物28g(90ミリモル)、水酸化ナトリウム 3.6g(90ミリモル)、メタノール 200ml、純水 20mlを仕込み、室温で4時間反応させた。反応終了後、反応容器に純水を加え固体を析出させた。析出物にジクロロメタン200ml、10%塩酸 100ml加え、有機層を更に純水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を留去し、式(15)に示す化合物 19gを得た。
【0081】
【化32】

【0082】
撹拌装置、冷却器、ディーンスターク及び温度計を備えた反応容器にp−ヒドロキシフェニルエタノール 13.8g(100ミリモル)、p−トルエンスルホン酸−水和物 1.9g、3−クロロプロピオン酸 14g(130ミリモル)、トルエン150mlを加え、6時間還流する。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム、純水で洗浄後、溶媒を留去して式(16)に示す化合物 21gを得た。
【0083】
【化33】

【0084】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に上記の式(15)の化合物 19g(64ミリモル)、式(16)に示す3−クロロプロピオン酸=2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル 17.5g(76ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 1g、塩化メチレン 200mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 9.5g(76ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、式(17)に示す目的の化合物22.7gを得た。
【0085】
【化34】

【0086】
次いで撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に式(17)の化合物22.7g(45ミリモル)、p−ヒドロキシフェニルほう酸 8g(57ミリモル)、炭酸カリウム 10g(70ミリモル)、トリフェニルホスフィン 23.5g(90ミリモル)、酢酸パラジウム500mg、テトラヒドロフラン200ml、純水40mlを仕込み、6時間還流させた。反応終了後、反応液をろ過し、ろ液に酢酸エチル300mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラム、再結晶により精製を行い、式(18)に示す化合物 20.3gを得た。
【0087】
【化35】

【0088】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(18)に示す化合物20.3g(45ミリモル)、3−クロロプロピルアクリレート 8.7g(54ミリモル)、炭酸カリウム 9.3g(67ミリモル)、ジメチルホルムアミド 150mlを仕込み、ガス雰囲気下で反応器を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応終了後、応終了後、酢酸エチルを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行いメタアクリル基を有する式(19)に示す化合物 17gを得た。

【0089】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(19)に示す化合物17g(30ミリモル)、トリエチルアミン 6g(60ミリモル)、ジクロロメタン100mlを加え、還流で5時間反応させた。反応終了後、溶媒を留去し2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(13)に示す目的の化合物13.5gを得た。
【0090】
【化36】

【0091】
比較例1に示した合成方法では、目的物である重合性化合物を得るために8工程必要であり、且つ収率(総収率25%)も悪かった。
(実施例7)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物1)を調製した。
【0092】
【化37】

【0093】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物2)を調製した。この組成物2のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射した後、180℃で30分加熱した。得られた光学異方体は、均一な配向状態を保っていた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)はHであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は89%であり、位相差減少率は11%だった。本発明のターシャリーブチル基を有する化合物は、高温で加熱することによりタシャリーブチル基が脱離し、カルボン酸を生成することができる。その結果、生成したカルボン酸による水素結合により位相差の減少を抑制することができた。
(比較例2)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物3)を調製した。

【0094】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物4)を調製した。この組成物4のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射した後、180℃で30分加熱した。得られた光学異方体は、均一な配向状態を保っていた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)はBであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は71%であり、位相差減少率は29%だった。水素結合による配向規制力がないため、位相差の減少が大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(ただし、Rは以下の式(R−1)から式(R−15)
【化2】

の何れかを表し、Sは、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子、−COO−、−OCO−又は−OCOO−に置き換えられても良い炭素数1〜12のアルキレン基、又は単結合を表し、Zは、OH、Cl、OC2a+1(aは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは−O−、−COO−、単結合、又はOC2b(bは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは―CH=CH−CO−又は―CHCH−CO−を表し、Mは、1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基又は4,4‘−ビフェニル基を表し、M、及びMは、お互い独立して1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、及びテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、M、M及びMは、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、mは0、1及び2を表すが、mが2を表す場合、複数存在するMは同一であっても異なっていても良く、ただしMが1,4−フェニレン基の場合は、mは1又は2を表す。)で表わされる重合性化合物。
【請求項2】
一般式(II)
【化3】

(ただし式中Zは、OH、Cl又はOC2c+1(cは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Sは、単結合、又はC2d(dは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは−O−、−COO−、単結合、又はOC2e(eは1から12の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状であっても分岐していても良く、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子に置き換えられても良い。)を表し、Lは、―CH=CH−CO−又は―CHCH−CO−を表し、M及びMは、お互い独立して1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、又はテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、M及びMは、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、nは0、1及び2を表すが、nが2を表す場合、複数存在するMは同一であっても異なっていても良く、ただしMが1,4−フェニレン基の場合は、nは1又は2を表す。)で表される水酸基を有する芳香族化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、M、M及びMが、お互い独立して無置換であるか又はハロゲノ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表す請求項1記載の重合性化合物。
【請求項4】
一般式(II)において、M及びMが、お互い独立して無置換であるか又はハロゲノ基に置換されていても良い1,4−フェニレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表す請求項1記載の水酸基を有する芳香族化合物。
【請求項5】
一般式(I)において、Zが、OH、Cl、OC2a+1(aは1から6の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状である。)、O−t−C又はO−s−Cを表す請求項1又は3記載の重合性化合物。
【請求項6】
一般式(II)において、Zが、OH、Cl、OC2c+1(cは1から6の自然数を表し、炭素鎖は直鎖状である。)、O−t−C又はO−s−Cを表す請求項2又は4記載の水酸基を有する芳香族化合物。
【請求項7】
一般式(I)において、Rが式(R−1)又は式(R−2)を表す請求項1、3又は5のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項8】
請求項1、3、5又は7に記載される重合性化合物を含有する液晶組成物
【請求項9】
請求項8記載の重合性化合物を含有する液晶組成物の重合体により構成される光学異方体
【請求項10】
請求項9記載の光学異方体を用いることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−20981(P2011−20981A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169978(P2009−169978)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】