説明

重合性液晶化合物、重合性液晶組成物、液晶性高分子および光学異方体

【課題】液晶相を示す温度範囲がより広く、化学的に安定であり、安価に製造でき、しかも、選択反射波長帯域Δλが広い重合性液晶化合物、この化合物を含有する重合性液晶組成物、これらを重合して得られる液晶性高分子、並びに、この液晶性高分子を構成材料とする光学異方体を提供する。
【解決手段】下記式(I)で示される重合性液晶化合物;該重合性液晶化合物及びこれと重合可能な重合性キラル化合物を含有する重合性液晶組成物;前記重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子;該液晶性高分子を構成材料とする光学異方体。


(Z及びZは炭素数2〜10のアルケニル基等をそれぞれ表す。aは0又は1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶化合物、この重合性液晶化合物および重合可能なキラル化合物を含有する重合性液晶組成物、これらを重合して得られる液晶性高分子、並びに、この液晶性高分子を構成材料とする光学異方体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに使用される光学補償板等の光学フィルムとして、液晶ポリマーあるいは重合性官能基を有する液晶化合物を配向処理した液晶配向フィルムが開発されている。このフィルムは、高分子フィルムの延伸技術を利用した複屈折フィルムでは不可能な、より高度な配向状態、すなわち傾斜配向、ねじれ配向等の配向を実現できるものとして注目されている。
【0003】
また、液晶ポリマーまたは液晶性(メタ)アクリレート化合物等の重合性液晶化合物とキラル化合物を組み合わせた組成物を、コレステリック配向させて得られる液晶配向フィルム(選択反射フィルム)の選択反射特性を利用したコレステリック偏光子も実用化されている。
【0004】
前記選択反射特性の選択反射中心波長λは、λ=n×P(nは平均屈折率、Pはコレステリックピッチを表す。)で示される。また、選択反射波長帯域Δλは、Δλ=Δn×P〔式中、Δnは(ne−no)であり、neは異常光屈折率、noは常光屈折率をそれぞれ表す。〕で表される。したがって、選択反射波長帯域Δλを広げるには、Δn、すなわち、光学異方性の大きな材料が求められる。
【0005】
また、選択反射フィルムをコレステリック偏光子として液晶ディスプレイに使用するには、可視光領域で選択反射が生じるものである必要がある。通常、選択反射フィルムの1層での選択反射波長帯域Δλは可視光領域より狭いので、選択反射波長帯域Δλを広帯域化するために選択反射フィルムは複数積層されている。そのため、選択反射波長帯域Δλの狭い材料を用いた選択反射フィルムでは積層数が多くなり、生産性が低いという問題があった。したがって、この点からも選択反射波長帯域Δλの広い材料、すなわちΔnの大きな材料(重合性液晶化合物等)が求められている。
【0006】
しかしながら、従来知られている重合性化合物等でΔnの大きなものは、いずれも、溶解性や塗工性、配向性に乏しく、均一に製膜できない場合や使用に供しうる配向性を有する選択反射フィルムを得ることが困難となる場合があった。
【0007】
一方、液晶性化合物として、下記式(A)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Raはアルキル基を表し、Rbはアルキル基、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基などを表す。)で表されるアジン類が知られている。
この化合物は液晶相を示す温度範囲が広く、化学的に比較的安定で安価に製造できる等の特性を有する優れた液晶材料である。
【0010】
しかしながら、これらのアジン類は現在汎用の液晶化合物との相溶性においては必ずしも満足できるものではなかった。また、上記式(A)において、側鎖アルキル基の炭素原子数を大きくすると相溶性は幾分改善できるが、液晶相を示す温度範囲が狭くなってしまうという問題も存在していた。
【0011】
このような問題を解決すべく、特許文献1には、下記式(B)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Rがアルキル基の場合、二重結合はトランス配置である。pは1〜10の整数を表し、qは0または1を表し、W、XおよびYは、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基または水素原子を表し、Zはフッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素原子数1〜12のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数3〜12のアルケニル基またはアルケニルオキシ基を表すが、これらの基中に含まれる水素原子の1個またはそれ以上がフッ素原子に置換されていてもよい。)で表される液晶化合物が提案されている。
【0014】
この化合物は、熱、光等に対し化学的に安定であり、液晶性に優れ、しかも工業的にも容易に製造することができるものである。また、従来の液晶化合物あるいは液晶組成物との相溶性に優れるので、このものを用いることにより、得られる液晶の応答時間を大幅に改善することができる。従って、温度範囲が広く高速応答が可能な液晶表示素子用の液晶材料の構成成分として実用的であるとされる。
しかしながら、近年における液晶表示装置はますます高性能化が図られ、より液晶相を示す温度範囲が広く、化学的に安定で安価に製造でき、Δnの大きい液晶材料の開発が求められているのが現状である。
【0015】
【特許文献1】特開平10−147562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、液晶相を示す温度範囲がより広く、化学的に安定であり、安価に製造でき、しかも、選択反射波長帯域Δλが広い、すなわちΔnの大きな重合性液晶化合物、この化合物を含有する重合性液晶組成物、これらを重合して得られる液晶性高分子、並びに、この液晶性高分子を構成材料とする光学異方体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、一般に鎖状構造を有する重合性液晶化合物の鎖の中心に存在する、液晶配向性を付与するメソゲン基と呼ばれる共役性の直線状原子団としてアジン骨格を有する所定の化合物が、熱や光等に対し化学的に安定であり、液晶性に優れ、工業的にも容易に製造することができ、しかも、選択反射波長帯域Δλが広く、すなわちΔnが大きく、特にコレステリック液晶層の形成材料として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(6)の重合性液晶化合物が提供される。
(1)下記式(I)
【0019】
【化3】

【0020】
〔式中、Y〜Yはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、または−NR−O−を表す。ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。該脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびZはそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
およびAはそれぞれ独立して、炭素数1〜30の2価の有機基Aを表す。
〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。ここで、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表し、アルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
aは、0または1である。〕
で示される重合性液晶化合物。
【0021】
(2)AおよびAが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニレン基、または置換基を有していてもよいナフチレン基である(1)記載の重合性液晶化合物。
(3)ZおよびZが、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=C(Cl)−、CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、CH=C(CH)−CHCH−、(CHC=CH−CH−、CH−CH=CH−、またはCH−CH=CH−CH−である(1)または(2)に記載の重合性液晶化合物。
【0022】
(4)Y〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−(これらの基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい。)であり、
およびZがそれぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、またはCH=C(Cl)−であり、
およびAがそれぞれ独立して、式
【0023】
【化4】

【0024】
で表されるいずれかの基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、または−OR〔Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)。〕である(1)に記載の重合性液晶化合物。
【0025】
(5)Y〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−であり、
およびZがそれぞれ独立して、CH=CH−またはCH=C(CH)−であり、
およびAが、式
【0026】
【化5】

【0027】
で表される基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、または−OR〔Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)。〕である(1)に記載の重合性液晶化合物。
【0028】
(6)Y〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−であり、
およびZがCH=CH−であり、
およびAが、式
【0029】
【化6】

【0030】
で表される基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、−C(=O)−ORまたは−OR(Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。)である(1)に記載の重合性液晶化合物。
【0031】
本発明の第2によれば、下記(7)の重合性液晶組成物が提供される。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の重合性液晶化合物、および前記重合性液晶化合物と重合可能な重合性キラル化合物を含有する重合性液晶組成物。
本発明の第3によれば、下記(8)の液晶性高分子が提供される。
(8)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の重合性液晶化合物、または、前記(7)に記載の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子。
本発明の第4によれば、下記(9)の光学異方体が提供される。
(9)前記(8)に記載の液晶性高分子を構成材料とする光学異方体。
【発明の効果】
【0032】
本発明の重合性液晶化合物は、液晶相を示す温度範囲が広く、化学的に安定であり、安価に製造でき、しかも、選択反射波長帯域Δλが広い、すなわちΔnの大きな液晶材料である。
本発明の重合性液晶組成物によれば、液晶相を示す温度範囲が広く、選択反射波長帯域Δλが広い、すなわちΔnの大きな液晶層を形成することができる。
本発明の液晶性高分子は、配向性に優れ、光学異方性(Δn)が高いことから、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体の製造原料として有用である。 また、本発明の光学異方体は、本発明の重合性液晶化合物を用いて製造されたものであるので、均一で高品質な液晶配向性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を、1)重合性液晶化合物、2)重合性液晶組成物、3)液晶性高分子、および、4)光学異方体に項分けして詳細に説明する。
【0034】
1)重合性液晶化合物
本発明の重合性液晶化物は、前記式(I)で示される化合物である。
【0035】
前記式(I)中、式中、Y〜Yはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、または−NR−O−を表す。
【0036】
ここで、Rは、水素原子;または、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基;を表す。これらの中でも、Rとしては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0037】
Yの組み合わせとして特に好ましいのは、合成しやすさ、および、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、YとYが−C(=O)−O−であり、YとYが−O−C(=O)−であり、Yが−O−である組み合わせである。
【0038】
は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基であり、好ましくは炭素数1〜12の2価の脂肪族基である。
の炭素数1〜20の2価の脂肪族基としては、鎖状の脂肪族基、脂環式構造を有する脂肪族基等が挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましい。
【0039】
の脂肪族基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0040】
また、前記Gの脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合は除かれる。
【0041】
ここで、Rは、前記Rと同様の、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rとしては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0042】
およびZはそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
【0043】
前記ZおよびZのアルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。また、ZおよびZのアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0044】
およびZの、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数2〜10のアルケニル基の好ましい具体例としては、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=C(Cl)−、CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、CH=C(CH)−CH−CH−、(CHC=CH−CH−、CH−CH=CH−、およびCH−CH=CH−CH−などが挙げられる。
【0045】
〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。
【0046】
ここで、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rの置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などが挙げられる。
【0047】
の置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;等が挙げられる。
【0048】
また、Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい。
ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合は除かれる。
ここで、RおよびRは、前記Rと同様の、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0049】
本発明の重合性液晶化合物においては、原料の入手しやすさの観点から、(a)X〜Xがいずれも水素原子であるか、(b)X〜XおよびXがいずれも水素原子であり、かつXおよびXが−OCH、−OCHCH、若しくは−CHであるか、(c)X〜X、XおよびXがいずれも水素原子であり、かつXが−C(=O)−OR、−OCH、−OCHCH、−CH、−CHCH、−CHCHCH若しくはフッ素原子であるか、または(d)X〜XおよびX〜Xがいずれも水素原子であり、かつXが−C(=O)−OR、−OCH、−OCHCH、−CH、−CHCH、−CHCHCH若しくはフッ素原子であることが好ましい。
【0050】
aは(G−Y)単位の繰り返し数である。aは0または1であり、合成しやすさ、および本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、1であることが好ましい。
【0051】
前記式(I)において、AおよびAにそれぞれ結合する、式:−Y−(G−Y−Zで表される基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
先ず、a=1の凡例、即ち、下記式(α)で表される構造について言及する。
【0052】
【化7】

(α)
【0053】
式(α)においては、Yは−C(=O)−O−、Gはヘキサメチレン基(−(CH−)、Yは−O−C(=O)−、Zはビニル基に相当する。
上記式(α)で表される構造と同様の構造の具体例を以下に示す。
【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
【化16】

【0063】
【化17】

【0064】
【化18】

【0065】
次に、a=0の凡例、即ち下記式(β)で表される構造について言及する。
【0066】
【化19】

(β)
【0067】
上記式(β)においては、Yは−C(=O)−O−、Zはビニル基に相当する。
上記式(β)で表される構造と同様の構造の具体例を以下に示す。
【0068】
【化20】

【0069】
およびAはそれぞれ独立して、炭素数1〜30の2価の有機基Aを表す。有機基Aの炭素数としては6〜20が好ましい。AおよびAの有機基Aとしては、特に制限されないが、芳香族環を有するものが好ましい。
およびAの具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0070】
【化21】

【0071】
【化22】

【0072】
上記AおよびAの具体例として挙げた有機基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(C=O)−OR基;等が挙げられる。ここでRは、炭素数1〜6のアルキル基である。これらの中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0073】
前記AおよびAとしては、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、下記式(A11)、(A21)および(A31)で表される基のいずれかが好ましく、下記式(A11)で表される基がより好ましい。また、下記式(A11)、(A21)および(A31)で表される基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。
【0074】
【化23】

【0075】
これらの中でも、本発明の重合性液晶化物としては、前記式(I)中、Y〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−(これらの基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい。)であり、
およびZがそれぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、またはCH=C(Cl)−であり、
およびAがそれぞれ独立して、式
【0076】
【化24】

【0077】
で表されるいずれかの基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、または−OR〔Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)。〕である化合物であることが好ましく、
【0078】
〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−であり、
およびZがそれぞれ独立して、CH=CH−またはCH=C(CH)−であり、
およびAが、式
【0079】
【化25】

【0080】
で表される基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、または−OR〔Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)。〕である化合物であることがより好ましく、
【0081】
〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−であり、
およびZがCH=CH−であり、
およびAが、式
【0082】
【化26】

【0083】
で表される基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、−C(=O)−ORまたは−OR(Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。)である化合物であることがさらに好ましい。
【0084】
前記式(I)で表される本発明の重合性液晶化合物の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明の重合性液晶化合物は下記の化合物に限定されるものではない。
【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
本発明の重合性液晶化合物はいずれも、−O−、−S−、−NH−C(=O)−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)NH−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−等の種々の化学結合を形成する公知の方法(例えば、サンドラー・カロ官能基別有機化合物合成法[I]、[II] 廣川書店、1976年発行参照)を組み合わせて製造することができる。
【0088】
本発明の重合性液晶化合物は、典型的には、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)NH−)、および酸クロライド(−COCl)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合・修飾することにより製造することができる。
【0089】
エーテル結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
1)式:Q1−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と、式:Q2−OM(M:アルカリ金属(主にナトリウム))で表される化合物とを混合して縮合させる。なお、式中、Q1およびQ2は任意の有機基Bを表す(以下、同様である。)。この反応は一般的にウイリアムソン合成と呼ばれる。
2)式:Q1−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と、式:Q2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
3)式:Q1−E(Eはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:Q2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
4)式:Q1−OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:Q2−OM(M:アルカリ金属(主にナトリウム))を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
5)式:Q1−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と、式:Q2−OM(M:アルカリ金属(主にナトリウム))で表される化合物とを銅あるいは塩化第一銅存在下、混合して縮合させる。この反応は一般的にウルマン縮合と呼ばれる。
【0090】
エステル結合およびアミド結合の形成は、例えば、以下のようにして行うことができる。
6)式:Q1−COOHで表される化合物と、式:Q2−OHまたはQ2−NHで表される化合物とを、脱水縮合剤(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等)の存在下に脱水縮合させる。
7)式:Q1−COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:Q1−COX(Xはハロゲン原子を表す。)を得、このものと式:Q2−OHまたはQ2−NHで表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
8)式:Q1−COOHで表される化合物に、酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得た後、このものに、式:Q2−OHまたはQ2−NHで表される化合物を反応させる。
9)式:Q1−COOHで表される化合物と、式:Q2−OHまたはQ2−NHで表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0091】
酸クロライドは、公知の方法により製造することができる。例えば、
(α)式:Q1-COOHで表されるカルボン酸に、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、塩化オキサリルなどのハロゲン化剤を作用させる方法;(β)式:Q1-COOAgで表されるカルボン酸の銀塩に、塩素または臭素を作用させる方法;(γ)式:Q1-COOHで表される化合物に赤色酸化第二水銀の四塩化炭素溶液を作用させる方法;等が挙げられる。
【0092】
本発明の重合性液晶化合物の合成では、中間体に存在する水酸基を保護することで収率を向上させることができる。水酸基を保護する方法としては、公知の方法(例えば、Greene’s Protective Groups in Organic SyntHesis 第3版 出版:Wiley−Interscience、1999年発行参照)を利用して製造することができる。
【0093】
水酸基の保護は、より具体的には、以下のようにして行うことができる。
a)式:Q1Q2Q3−Si-X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と式:Q4−OHで表される化合物とを、イミダゾール、ピリジン等の塩基存在下に反応させる。なお、式中、Q1からQ4は任意の有機基Bを表す(以下、同様である。)。
b)3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのビニルエーテルとQ2−OHで表される化合物を、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、塩化水素等の酸存在下に反応させる。
c)式:Q1−C(=O)−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と式:Q4−OHで表される化合物とを、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下に反応させる。
d)式:Q1−C(=O)−O−C(=O)−Q2で表される酸無水化合物と式:Q3−OHで表される化合物とを反応させる。この場合、所望により、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基を存在させてもよい。
e)Q1−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と式:Q2−OHで表される化合物とを、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下に反応させる。
f)式:Q1−O−CH−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と式:Q2−OHで表される化合物とを、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下に反応させる。
g)Q1−O−CH−C(=O)−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と式:Q4−OHで表される化合物とを、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基存在下に反応させる。
H)式:Q1−O−C(=O)−X(Xはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と式:Q2−OHで表される化合物とを、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基存在下に反応させる。
【0094】
水酸基の保護基の脱保護は、保護基の構造、種類に応じて、公知の方法を利用することで脱保護することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。
(i)テトラブチルアンモニウムフルオライドなどのフッ素化物を用いて脱保護する方法
(ii)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、塩化水素、酢酸等の酸を用いて脱保護する方法
(iii)水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基を用いて脱保護する方法
(iv)Pd−Cなどの触媒存在下、水素添加することにより脱保護する方法
【0095】
いずれの反応においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、蒸留法等の公知の分離・精製手段を施すことにより、目的物を単離することができる。
目的物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0096】
2)重合性液晶組成物
本発明の第2は、本発明の重合性液晶化合物、および前記重合性液晶化合物と重合可能な重合性キラル化合物を含有する重合性液晶組成物である。
【0097】
本発明の組成物は、上述した本発明の重合性液晶化合物の一種、または二種以上を必須成分とする。本発明の組成物は、本発明の重合性液晶化合物に加えて、特開平11−130729号公報、特開平8−104870号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開昭62−070406号公報、特開平11−100575号公報等に記載されるごとき、公知のその他の重合性液晶化合物の一種または二種以上を用いることもできる。
【0098】
公知のその他の重合性液晶化合物の含有量は、特に限定されないが、本発明に用いる重合性液晶化合物全量中、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0099】
本発明の組成物に用いる重合性キラル化合物は、分子内にキラルな炭素原子を有し、本発明の重合性液晶化合物と重合可能な化合物であって、かつ本発明の重合性液晶化合物の配向を乱さないものであれば、特に制限されない。
ここで、「重合」とは、通常の重合反応のほか、架橋反応を含む広い意味での化学反応を意味するものとする。
【0100】
本発明の重合性液晶組成物を構成する本発明の重合性液晶化合物は、重合性キラル化合物と混合することでコレステリック相を発現し得る。
【0101】
本発明の組成物においては、重合性キラル化合物を一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
用いる重合性キラル化合物としては、例えば、特開平11−193287号公報に記載されているごとき、公知のものが挙げられる。
【0102】
本発明に用いる重合性キラル化合物の具体例としては、以下の3つの一般式で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
【化29】

【0104】
【化30】

【0105】
【化31】

【0106】
上記式中、RおよびRとしては、例えば、水素原子、メチル基、メトキシ基等が挙げられる。YおよびY10としては、例えば、−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−等が挙げられる。また、m、mはそれぞれ独立して、2、4または6である。これらの一般式で表される化合物としては、より具体的には、下記に示される化合物が挙げられる。
【0107】
【化32】

【0108】
【化33】

【0109】
本発明の重合性液晶組成物において、重合性キラル化合物の配合割合は、重合性液晶化合物100重量部に対し、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0110】
本発明の重合性液晶組成物には、重合反応をより効率的に行う観点から、通常、重合開始剤、特に光重合開始剤を配合するのが好ましい。重合開始剤としては、後述の「3)液晶性高分子」の項で記載する重合開始剤が挙げられる。
【0111】
本発明の重合性液晶組成物において、重合開始剤の配合割合は、重合性液晶化合物100重量部に対し、通常、重合開始剤0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0112】
本発明の重合性液晶組成物には、表面張力を調整するために、界面活性剤を配合するのが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いればよく、例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤、例えば、セイミケミカル(株)製KH−40等が挙げられる。本発明の重合性液晶組成物において、界面活性剤の配合割合は、重合性液晶化合物100重量部に対し、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0113】
本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、または印刷インキおよび塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて、上記成分の他、後述の他の共重合可能な単量体、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物などのその他の添加剤を配合してもよい。本発明の重合性液晶組成物において、その他の添加剤の配合割合は、重合性液晶化合物100重量部に対し、通常、各々0.1〜20重量部である。
【0114】
本発明の重合性液晶組成物は、通常、本発明の重合性液晶化合物、重合性キラル化合物、光重合開始剤、ノニオン系界面活性剤、および所望によりその他の添加剤の所定量を適当な有機溶媒に溶解させることにより調製することができる。
【0115】
用いる有機溶媒としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;等が挙げられる。
【0116】
以上のようにして得られる重合性液晶組成物は、後述するようにコレステリック液晶層やコレステリック液晶性高分子の製造原料として有用である。
【0117】
3)液晶性高分子
本発明の第3は、本発明の重合性液晶化合物、または本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子である。
ここで、「重合」とは、通常の重合反応のほか、架橋反応を含む広い意味での化学反応を意味するものとする。
【0118】
本発明の液晶性高分子は、具体的には、(1)本発明の重合性液晶化合物を重合して得られる液晶性高分子、または、(2)本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子である。
【0119】
(1)本発明の重合性液晶化合物を重合して得られる液晶性高分子
本発明の重合性液晶化合物を重合して得られる液晶性高分子としては、本発明の重合性液晶化合物の単独重合体、本発明の重合性液晶化合物の2種以上からなる共重合体、本発明の重合性液晶化合物と公知のその他の重合性液晶化合物との共重合体、または、本発明の重合性液晶化合物と他の共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0120】
前記公知のその他の重合性液晶化合物としては、特開平11−130729号公報、特開平8−104870号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開昭62−070406号公報、特開平11−100575号公報等に記載されるような重合性液晶化合物が挙げられる。
【0121】
前記他の共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−メトキシフェニル、4−(6−メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸ビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−3’,4’−ジフルオロフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸ナフチル、4−アクリロイルオキシ−4’−デシルビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−シアノビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−メトキシビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−(4”−フルオロベンジルオキシ)−ビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−プロピルシクロヘキシルフェニル、4−メタクリロイル−4’−ブチルビシクロヘキシル、4−アクリロイル−4’−アミルトラン、4−アクリロイル−4’−(3,4−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−アミルフェニル)、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−(4’−プロピルシクロヘキシル)フェニル)等が挙げられる。
【0122】
本発明の液晶性高分子が、本発明の重合性液晶化合物と、その他の重合性液晶化合物との共重合体である場合、本発明の重合性液晶化合物単位の含有量は、特に限定されるものではないが、全構成単位に対して50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。かかる範囲にあれば、液晶性高分子のガラス転移温度(Tg)が高く、高い膜硬度が得られるため好ましい。
【0123】
本発明の重合性液晶化合物、および必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等の(共)重合は、適当な重合開始剤の存在下に行うことができる。重合開始剤の使用割合としては、前記重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物に対する配合割合と同様でよい。
【0124】
用いる重合開始剤としては、用いる重合性液晶化合物に存在する重合性基の種類に応じて適宜なものを選択して使用すればよい。例えば、重合性基が、ラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用すればよい。ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤と光ラジカル発生剤のいずれも使用可能であるが、光ラジカル発生剤を使用するのが好適である。
【0125】
前記光ラジカル発生剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンおよびN,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンおよび2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタールおよびベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトンおよび4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0126】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製の、商品名Irgacure907、商品名Irgacure184、商品名Irgacure369、および商品名Irgacure651等が挙げられる。
【0127】
用いるアニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩またはモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0128】
また、用いるカチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩または芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
これらの重合開始剤は一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
また、前記重合性液晶化合物、および必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等との(共)重合を行うに際しては、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤等の機能性化合物を存在させてもよい。
【0130】
本発明の液晶性高分子は、より具体的には、(A)適当な重合開始剤の存在下、前記重合性液晶化合物、および必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等との(共)重合を適当な有機溶媒中で行う方法や、(B)前記重合性液晶化合物、および必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等を重合開始剤と共に有機溶媒に溶解した溶液を、公知の塗工法により支持体上に塗布した後、単量体を配向させた状態で脱溶媒し、次いで加熱または活性エネルギー線を照射する方法により製造することができる。
【0131】
前記(A)の方法に用いる有機溶媒としては、不活性なものであれば、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性に優れる観点から、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜150℃のものがより好ましい。
【0132】
(A)の方法による場合には、例えば、後述するような重合反応条件に従って反応を行った後の重合反応液より目的とする液晶性高分子を単離し、得られる液晶性高分子を適当な有機溶媒に溶解して溶液を調製し、この溶液を適当な支持体上に塗工して得られた塗膜を乾燥後、液晶性を示す温度以上となるまで加熱して、徐冷して液晶状態を固定化することができる。
【0133】
液晶性高分子を溶解するための有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤;等が挙げられる。
【0134】
前記支持体としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質の基板を使用することができる。当該基板の材質としては、例えば、ポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、およびアペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。基板の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基板は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
【0135】
液晶性高分子の溶液を支持体に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が挙げられる。
【0136】
前記(B)の方法で用いる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶剤;等が挙げられる。
【0137】
用いる支持体としては、特に限定されないが、例えば、上述した液晶性高分子の溶液を塗工するのに用いることができるものとして列記したものと同様のものが挙げられる。
【0138】
また、前記(B)の方法において重合反応用の溶液を支持体に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上述した液晶性高分子の溶液を支持体上に塗工する方法として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0139】
(B)の方法においては、支持体上に塗工した重合性液晶化合物を配向させることが好ましい。前記重合性液晶化合物を配向させる方法としては、例えば上述の支持体に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。支持体に配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等からなる液晶配向層を支持体の上に設け、ラビング等の処理を行う方法、支持体にSiOを斜方蒸着して配向膜を形成する方法、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜に、偏光または非偏光を照射する方法等の公知の方法が挙げられる。重合性液晶化合物の重合は後述するような重合反応条件に従って行えばよい。
【0140】
(2)本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子
本発明の重合性液晶組成物を重合開始剤の存在下に重合することにより、本発明の液晶性高分子を容易に得ることができる。得られる液晶性高分子はコレステリック液晶性高分子である。本発明においては、重合反応をより効率的に行う観点から、前記したような重合開始剤、特に光重合開始剤、および重合性キラル化合物を含む重合性液晶組成物を用いるのが好ましい。以下、かかる重合性液晶組成物を用いる態様について説明する。
【0141】
具体的には、本発明の重合性液晶組成物を、例えば、前記配向処理を施す方法に従って得られた、配向機能を有する支持体上に塗布し、本発明の重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物を、コレステリック相を保持した状態で均一に配向させ、重合させることによって、本発明の液晶性高分子を得ることができる。支持体としては、前記したようなものを使用することができる。
【0142】
上記方法において、一様な配向状態を形成するためには、通常のツイステッド・ネマチック(TN)素子またはスーパー・ツイステッド・ネマチック(STN)素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を使用すると、重合性液晶化合物の配向状態の制御を容易にすることができる。
【0143】
一般に、配向機能を有する支持体に液晶組成物を接触させた場合、液晶化合物は支持体表面で支持体を配向処理した方向に沿って配向する。液晶化合物が支持体表面と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、支持体表面への配向処理方法による影響が大きい。
例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を支持体上に設ければ、ほとんど水平に配向した重合性液晶層が得られる。
【0144】
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を支持体上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
【0145】
また、本発明の重合性液晶組成物を、プレチルト角を有する水平配向機能を有する支持体に接触させたときは、支持体表面から空気界面付近まで一様または連続的に角度が変化して傾斜配向した光学異方体を得ることができる。
【0146】
また、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜(以下「光配向膜」と略す。)に、偏光または非偏光を照射する方法等(光配向法)を用いれば、パターン状に配向方向が異なる領域が分布した基板をも作製することができる。
【0147】
初めに、光配向膜を設置した支持体上に光配向膜の吸収帯にある波長の光を照射し、一様な配向が得られる支持体を準備する。その後、当該支持体にマスクを被せ、マスクの上から光配向膜の吸収波長にある第1の照射と異なる状態の光、例えば偏光状態が異なる光あるいは照射角度および方向が異なる光を照射して、照射部分だけに第1の照射で得られた部分と異なる配向機能を持たせる。
【0148】
以上のようにして得られたパターン状に配向機能の異なる領域が分布した支持体に重合性液晶組成物を接触させれば、支持体の配向機能に応じてパターン状に配向方向の異なる領域が分布する。この状態で光照射による重合を行えば、配向パターンを有する液晶性高分子膜を得ることができる。
【0149】
特に、前記支持体として、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する支持体を使用すれば、位相差膜として特に有用な液晶性高分子膜を得ることができる。
【0150】
そのほか、配向パターンを得る方法として、AFM(原子間力顕微鏡)の触針で配向膜をラビングする方法、光学異方体をエッヂングする方法等の光配向膜を用いない方法も採用可能であるが、光配向膜を利用する方法が簡便であり好ましい。
【0151】
本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布する方法としては、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用のコーティング法が挙げられる。このとき、塗工性を高めるために、本発明の重合性液晶組成物に公知慣用の有機溶媒を添加してもよい。この場合は、本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去する必要のが好ましい。
【0152】
塗布後、本発明の重合性液晶組成物中の液晶化合物をコレステリック相を保持した状態で均一に配向させることが好ましい。具体的には、液晶の配向を促すような熱処理を行うことにより、配向をより促進することができる。
【0153】
熱処理法としては、例えば、本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布後、該液晶組成物のC(固相)−N(ネマチック相)転移温度(以下、「C−N転移温度」と略す。)以上に加熱して、該重合性液晶組成物を液晶相または等方相液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してコレステリック相を発現する。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを充分に成長させてモノドメインとすることが望ましい。
【0154】
また、本発明の重合性液晶組成物を支持体上に塗布後、本発明の重合性液晶組成物のコレステリック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保つような加熱処理を施しても良い。
【0155】
加熱温度が高過ぎると重合性液晶化合物が好ましくない重合反応を起こして劣化するおそれがある。また、冷却しすぎると、重合性液晶組成物が相分離を起こし、結晶の析出、スメクチック相のような高次液晶相を発現し、配向処理が不可能になることがある。
このような熱処理をすることで、単に塗布するだけの塗工方法と比べて、配向欠陥の少ない均質な液晶性高分子膜を作製することができる。
【0156】
また、このようにして均質な配向処理を行った後、液晶相が相分離を起こさない最低の温度、即ち過冷却状態となるまで冷却し、該温度において液晶相を配向させた状態で重合させることにより、配向秩序が高く、透明性に優れる液晶性高分子膜を得ることができる。
【0157】
本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。
【0158】
照射時の温度は、本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶化合物または重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、重合性液晶化合物または重合性液晶組成物は、通常、昇温過程において、C−N転移温度から、N(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度(以下、「N−I転移温度」と略す。)範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態をとるため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある重合性液晶化合物または重合性液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。紫外線照射強度は、通常、1W/m〜10kW/mの範囲、好ましくは5W/m〜2kW/mの範囲である。
【0159】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場または温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する液晶性高分子膜を得ることができる。
【0160】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物に電場、磁場または温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する液晶性高分子膜を得ることができる。
【0161】
本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を重合させて得られる液晶性高分子は、支持体から剥離して単体で使用することも、支持体から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。
【0162】
特に、本発明の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子膜は、コレステリック液晶膜であり、極めて高い反射率を有するため、液晶表示素子における偏光子として好適である。
【0163】
これに加えて積層法によりこのような液晶性高分子膜を複数積層させ、かつ選択される液晶性高分子膜の選択波長を適切に選択することにより、可視スペクトルの全ての光をカバーする多層偏光子を得ることもできる(EP0720041号公報参照。)。
【0164】
また、このような多層の偏光子の代わりに、適切な化合物および加工条件と組合せていわゆる広域バンド偏光子(broad−band polarizer)として使用することもできる。このための実施方法としては、例えば、WO98/08135号パンフレット、EP0606940号公報、GB2312529号公報、WO96/02016号パンフレット等に記載された方法が挙げられる。
【0165】
さらに、本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を用いてカラーフィルターを製造することもできる。このために、当業者に慣用の塗布方法によって、必要とされる波長を適切に施与することができる。
【0166】
さらにまた、コレステリック液晶の熱変色性を利用することもできる。温度の調整により、コレステリックな層の色彩が赤色から緑色を経由して青色へと推移する。マスクを用いて特定の帯域を定義された温度で重合することができる。
【0167】
以上のようにして得られる本発明の液晶性高分子の数平均分子量は、好ましくは500〜500,000、更に好ましくは5,000〜300,000である。該数平均分子量がかかる範囲にあれば、高い膜硬度が得られ、取り扱い性にも優れるため望ましい。液晶性高分子の数平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0168】
本発明の液晶性高分子は、架橋点が分子内で均一に存在すると推定される。本発明の重合性液晶化合物を重合して得られるものであるから、架橋効率が高く、硬度に優れている。
【0169】
本発明の液晶性高分子は、その配向性、および屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用して、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体の構成材料として用いることができる。
【0170】
4)光学異方体
本発明の第4は、本発明の液晶性高分子を構成材料とする光学異方体である。
本発明の光学異方体としては、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等が挙げられる。
【0171】
本発明の光学異方体は、本発明の重合性液晶化合物を重合して得られる液晶性高分子を構成材料としているので、均一で高品質な液晶配向性を有している。
【実施例】
【0172】
本発明の製造方法を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0173】
〔実施例1〕化合物1の合成
【0174】
【化34】

【0175】
(ステップ1)中間体Aの合成
【0176】
【化35】

【0177】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、4−ヒドロキシ安息香酸30g(0.25mol)、t−ブチルジメチルシリルクロライド 44.4g(0.29mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)400mlに溶解した。この溶液に、水浴下にて、イミダゾール41.8g(0.61mol)をDMF200mlに溶解した溶液を滴下漏斗にてゆっくりと加えた。その後、室温下にて4時間反応を行った。反応終了後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3Lに投入し、n−ヘキサン500mlで3回抽出を行った。n−ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、硫酸マグネシウムをろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮して淡黄色オイルを得た。この淡黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1(体積比))により精製して、無色オイル30gを得た(収率:50.8%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0178】
H−NMR(500MHz,CDCl、TMS、δppm):9.87(s、1H)、7.78(d,2H,J=7.8Hz)、6.93(d,2H,J=7.8Hz)、0.98(s,9H)、0.23(s,6H)
【0179】
(ステップ2)中間体Bの合成
【0180】
【化36】

【0181】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、ヒドラジン1水和物10.6g(0.21mol)をエタノール50mlに溶解した。この溶液に、室温下にて、中間体A 10.0g(0.042mol)をテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する。)50mlに溶解した溶液を滴下漏斗にてゆっくりと加えた。その後、室温下にて3時間反応を行った。反応終了後、反応液をロータリーエバポレーターにて濃縮して黄色オイルを得た。この黄色オイルをクロロホルム200mlに溶解させ、クロロホルム層を飽和炭酸水素ナトリウム水500mlで2回洗浄した。次いで、クロロホルム層にトリエチルアミン6mlを加えた後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、硫酸マグネシウムをろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮して淡黄色オイルを得た。
【0182】
この黄色オイルをTHF50mlに溶解し、トリエチルアミン6mlを加えた。この溶液に、室温下、エチルバニリン(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド)6.3g(0.038mol)をTHF50mlに溶解した溶液を滴下漏斗にてゆっくりと加えた。その後、室温で12時間反応を行った。反応終了後、不溶物をろ別し、得られたろ液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して黄色オイルを得た。得られた黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:THF=2:1(体積比))により精製し、黄色固体10.76gを得た(収率:60.3%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0183】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):8.59(s,1H)、8.56(s,1H)、7.73(s,1H)、7.71(s,1H)、7.50(s、1H)、7.21(d,1H,J=8.0Hz)、7.00−6.89(m,3H)、4.23(t,2H,J=6.8Hz)、1.49(t,3H,J=6.8Hz)、1.00(s,9H)、0.23(s,6H)
【0184】
(ステップ3)中間体Cの合成
【0185】
【化37】

【0186】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、中間体B5.0g(0.0125mol)、4−(6−アクリロイル−n−ヘキシルオキシ)安息香酸(日本シイベルへグナー社製)を4.0g(0.014mol)をDMF80mlに溶解した。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)2.6g(0.014mmol)を室温下に加えた。その後、室温で12時間反応を行った。反応終了後、反応液を水に投入し、クロロホルム200mlで2回抽出を行った。クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、硫酸マグネシウムをろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮して黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:THF=85:15(体積比))により精製して、淡黄色固体4.8gを得た(収率:57.1%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0187】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):8.41(s,2H)、7.97−7.95(m,2H)、7.55−7.53(m,2H)、7.06−6.98(m,3H)、6.78−6.70(m,4H)、6.21(d,1H,J=17.2Hz)、5.93(dd,1H,J=10.4Hz,J=17.2Hz)、5.62(d,1H,J=10.4Hz)、4.00−3.92(m,4H)、3.86−3.83(m,2H)、1.66−1.63(m,2H)、1.54−1.51(m,2H)、1.34−1.28(m,4H)、1.13(t,3H,J=6.2Hz)、0.81(s,9H)、0.21(s,6H)
【0188】
(ステップ4)中間体Dの合成
【0189】
【化38】

【0190】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、1MのテトラブチルアンモニウムフルオライドのTHF溶液を30ml加えた。そこへ、室温下、中間体C 4.0g(0.0059mol)をTHF50mlに溶解した溶液を滴下漏斗にてゆっくりと加えた。滴下終了後、室温で3時間反応を行った。反応終了後、反応液を水に投入し、1%のクエン酸水溶液を50ml加えて酸性にした。この溶液をクロロホルム300mlで2回抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮して黄色オイルを得た。この黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:THF=2:1(体積比))により精製して、黄色固体2.2gを得た(収率:66.8%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0191】
H−NMR(400MHz,CDCl/CDOD,TMS、δppm):8.60(s,1H)、8.57(s,1H)、8.14(d,2H,J=8.4Hz)、7.72(d,2H,J=8.4Hz)、7.54(s,1H)、6.70−6.95(m,4H)、6.84(d,2H,J=8.4Hz)、6.39(d,1H,J=17.2Hz)、6.11(dd,1H,J=10.0Hz,J=17.2Hz)、5.81(d,1H,J=10.0Hz)、4.18−4.02(m,6H)、1.85−1.82(m,8H)、1.30(t,3H,J=6.8Hz)
【0192】
(ステップ5)中間体Eの合成
【0193】
【化39】

【0194】
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、THF200ml、4−ヒドロキシ安息香酸12.0g(0.087mol)、およびN,N−ジメチルアニリン22.1g(0.18mol)を加えて均一な溶液とした。その後、水浴下にてアクリル酸クロライド8.66g(0.1mol)をTHF40mlに溶解した溶液を15分かけて滴下し、その後さらに5時間反応を行った。
【0195】
反応終了後、反応液を1.2Nの塩酸水溶液1500mlに投入し、クロロホルム300mlで2回抽出した。クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、硫酸マグネシウムをろ別した。ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮して黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:THF=75:25(体積比))により精製して、白色固体6.2gを得た(収率:37.1%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0196】
H−NMR(400MHz,CDOD,TMS,δppm):8.08(d,2H,J=8.8Hz)、7.22(d,2H,J=8.8Hz)、6.61(d,1H,J=17.6Hz)、6.33(dd,1H,J=10.6Hz,J=17.6Hz)、6.04(d,1H,J=10.6Hz)
【0197】
(ステップ6)化合物1の合成
冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、中間体D 2.0g(0.0036mol)、中間体E0.76g(0.004mol)、N,N−ジメチルアミノピリジン49mg(0.0004mol)をDMF50mlに溶解した。この溶液に、室温下、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)0.77g(0.004mmol)を加えた。その後、室温下にて9時間反応を行った。反応終了後、反応液を水に投入し、クロロホルム200mlで2回抽出を行った。クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過を行い、硫酸マグネシウムを除去した。ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮して黄色固体を得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=90:10(体積比)からトルエン:酢酸エチル=85:15(体積比)に途中変更)により精製して、淡黄色固体として化合物1を1.85g得た(収率:70.1%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0198】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):8.67(s,1H)、8.62(s,1H)、8.25(d,2H,J=8.4Hz)、8.15(d,2H,J=8.8Hz)、7.91(d,2H,J=8.4Hz)、7.61(s,1H)、7.37−7.27(m,5H)、6.97−6.95(m,3H)、6.65(d,1H,J=17.6Hz)、6.41−6.30(m,2H)、6.14−6.05(m,2H)、5.81(dd,1H,J=1.2Hz,J=10.4Hz)、4.19−4.12(m,4H)、4.06−4.02(m,2H)、1.85−1.80(m,2H)、1.75−1.68(m,2H)、1.55−1.49(m,4H)、1.32(t,3H,J=7.0Hz)
【0199】
<化合物の評価>
(1)相転移温度の測定
化合物1(試験化合物)を10mg計量し、固体状態のままで2枚のラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板に挟んだ。この基板をホットプレート上にて、30℃から250℃まで昇温した後、再び30℃まで降温させた。昇温、降温する際の組織構造の変化を偏向光学顕微鏡(ニコン社製 ECLIPSE LV100POL型)で観察し、相転移温度を測定した。測定した相転移温度を第1表に示す。
【0200】
第1表中、「C」はCrystal、「N」はNematic、「I」はIsotropicをそれぞれ表す。Crystalとは、試験化合物が固相にあることを、Nematicとは、試験化合物がネマチック液晶相にあること、Isotropicとは、試験化合物が等方性液体相にあることを、それぞれ示す。
【0201】
(2)光学異方性(Δn値)の測定
化合物1の100重量部をシクロペンタノン233重量部に溶解した。この溶液に、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア907)を2.7重量部添加して溶解した溶液を試料とした。調製した溶液を、ラビング処理を施したポリビニルアルコール膜を有するガラス基板にバーコーター(テスター産業社製:バーコーター Rod No.4 シャフト径 12.7mm)を用いて塗布した後、ホットプレート上にて100℃で2分間乾燥させた。得られた皮膜に水銀ランプで700mJ/cmに相当する紫外線を照射して、厚さ1.5μmの高分子硬化膜を得た。この硬化膜をエリプソメーター(J.A.Woollam社製 XLS−100型)を用いて波長545.3nmのレタデーション(Re)を測定した。その後、別に求めた液晶層の膜厚(d)から計算式Δn=Re/dによりΔnを算出した。算出結果を第1表に示す。
【0202】
(3)コレステリック相の形成
化合物1の100重量部をシクロペンタノン153重量部に溶解した。この溶液に、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア1919)を3.3重量部、キラル剤6.0重量部、界面活性剤(1重量%のシクロペンタノン溶液として使用)11.6重量部を添加して溶解した溶液を試料とした。キラル剤として前記式(X)で示される化合物を、界面活性剤としてセイミケミカル社製、KH−40を、それぞれ使用した。
【0203】
以上のようにして調製した溶液を、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にバーコーター(テスター産業社製:SA−203 バーコーター Rod No.8 シャフト径 12.7mm)を用いて塗布した後、ホットプレート上にて100℃で3分間乾燥させた。得られた皮膜に水銀ランプで1000mJ/cmに相当する紫外線を照射して厚さ4μmの硬化膜を得た。この硬化膜を分光光度計(大塚電子社製、瞬間マルチ測光システム MCPD−3000)を使用して透過スペクトルを測定した。コレステリック相を形成している場合、選択反射領域(透過率が約50%となる領域)が観察され、その帯域幅は、約50−100nmであった。評価結果を第1表に示す。
【0204】
また、試験化合物の硬化膜を得た際、23℃において目視観察により、試験化合物の相溶性を、濁りがない場合を「○」、濁りが発生した場合を「×」として評価した。評価結果を第1表に示す。さらに、試験化合物の濃度が40重量%の溶液を得た際、試験化合物の溶解性についても評価した。60℃において、試験化合物がシクロペンタノンに溶解した場合を「○」、しなかった場合を「×」とした。評価結果を第1表に示す。
【0205】
評価結果を以下にまとめて示す。化合物1は溶剤への高い溶解性を示すだけでなく、重合開始剤、キラル剤などの添加剤との相溶性に優れ、ハンドリング性に優れることが確認された。また、いずれの化合物も広い温度範囲で良好な液晶性を示し、コレステリック相を形成した。得られた硬化皮膜は高い光学異方性(Δn)を示す良好な液晶皮膜であった。
【0206】
【表1】

【0207】
(比較例1)
液晶化合物(BASF社製、LC242)を、実施例1に示した化合物の評価(1)〜(3)の方法と同様にして評価した。結果を第2表にまとめた。
【0208】
(比較例2)
また、従来のアジン液晶化合物の相転移温度を、特開平10−147562号公報の記載から抜粋して第2表に示した。
【0209】
【表2】

【0210】
比較例1,2で示した化合物の構造を以下に示す。
公知の重合性液晶化合物:BASF社製 LC242
【0211】
【化40】

【0212】
特開平10−147562号公報に記載のアジン液晶化合物:
【0213】
【化41】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

〔式中、Y〜Yはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、または−NR−O−を表す。ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。該脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
およびZはそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
およびAはそれぞれ独立して、炭素数1〜30の2価の有機基Aを表す。
〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、または−O−C(=O)−NRを表す。
は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。
およびRは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
aは0または1である。〕
で示される重合性液晶化合物。
【請求項2】
およびAが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニレン基、または置換基を有していてもよいナフチレン基である請求項1記載の重合性液晶化合物。
【請求項3】
およびZが、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=C(Cl)−、CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、CH=C(CH)−CHCH−、(CHC=CH−CH−、CH−CH=CH−、またはCH−CH=CH−CH−である請求項1または2に記載の重合性液晶化合物。
【請求項4】
〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−(これらの基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい。)であり、
およびZがそれぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、またはCH=C(Cl)−であり、
およびAがそれぞれ独立して、式
【化2】

で表されるいずれかの基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、または−OR〔Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)。〕である請求項1に記載の重合性液晶化合物。
【請求項5】
〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−であり、
およびZがそれぞれ独立して、CH=CH−またはCH=C(CH)−であり、
およびAが、式
【化3】

で表される基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、または−OR〔Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)。〕である請求項1に記載の重合性液晶化合物。
【請求項6】
〜Yがそれぞれ独立して、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、または−O−であり、
が、−(CH−または−(CH−であり、
およびZがCH=CH−であり、
およびAが、式
【化4】

で表される基であり、
〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、−C(=O)−ORまたは−OR(Rは、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。)である請求項1に記載の重合性液晶化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の重合性液晶化合物、および前記重合性液晶化合物と重合可能な重合性キラル化合物を含有する重合性液晶組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の重合性液晶化合物、または、請求項7に記載の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶性高分子。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶性高分子を構成材料とする光学異方体。

【公開番号】特開2009−167378(P2009−167378A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92162(P2008−92162)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】