説明

重荷重用空気入りタイヤ

【課題】リボン状ゴムストリップを積層する成型方法により製造された重荷重用空気入りタイヤの該リボン状ゴムストリップ界面の剥離耐久性を高めることを目的とする。
【解決手段】天然ゴム20〜80質量%及び少なくとも一種類以上の合成ゴム80〜20質量%からなるゴム成分を含有するゴム組成物からなるリボン状ゴムストリップが積層されて成型された重荷重用空気入りタイヤにおいて、該リボン状ゴムストリップ界面のカーボンブラック不在層の厚さが3μm以下であることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性を向上した重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤへの要求特性が多様化・高度化し、それに対応すべく、例えば、トレッド、ベルト被覆ゴム等に複数の性能の異なるゴムを配置することが考案されている。これらの配置を可能にすべく開発されたタイヤ製造方法がリボン状ゴムストリップを積層して部材を構成する成型方法である。(例えば、特許文献1参照。)
しかしながら、重荷重用空気入りタイヤにおいては、リボン状ゴムストリップを積層する成型方法により製造されたタイヤの該リボン状ゴムストリップ界面が剥離することがあり、該リボン状ゴムストリップ界面の剥離耐久性を高めることが望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−226114号公報
【特許文献2】特開2004−359716号公報
【特許文献3】特開2004−359717号公報
【特許文献4】特開2004−359713号公報
【特許文献5】特開2004−99625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、リボン状ゴムストリップを積層する成型方法により製造された重荷重用空気入りタイヤの該リボン状ゴムストリップ界面の剥離耐久性を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために、長期間走行した多数の重荷重用空気入りタイヤのリボン状ゴムストリップ界面の状況を鋭意観察した所、界面にはカーボンブラック不在層が存在し、その厚みが3μmを超えた場合には剥離が発生しているのに対して、その厚みが3μm以下の場合には剥離が発生していないことを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
1.天然ゴム20〜80質量%及び少なくとも一種類以上の合成ゴム80〜20質量%からなるゴム成分を含有するゴム組成物からなるリボン状ゴムストリップが積層されて成型された重荷重用空気入りタイヤにおいて、該リボン状ゴムストリップ界面のカーボンブラック不在層の厚さが3μm以下であることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ、
2.リボン状ゴムストリップが120℃以下で押出成形された後積層されてなる請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
3.リボン状ゴムストリップを構成するゴム組成物の天然ゴムが変性天然ゴムである上記1に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
4.リボン状ゴムストリップを構成するゴム組成物が天然ゴムカーボンブラックマスターバッチを含有する上記1に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
5.変性天然ゴムが、天然ゴムラテックス中の天然ゴムに極性基含有単量体、スズ含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体をグラフト重合させてなる上記3に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
6.極性基含有単量体の極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から一種以上選択される基である上記5に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
7.極性基含有単量体が、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ピリジル基含有ビニル化合物、(メタ)アクリロニトリル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から一種以上選択される単量体である上記5又は6に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
8. スズ含有単量体が、アリルトリ−n−ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ−n−オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−オクチルスズ、ビニルトリ−n−ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ及びビニルトリ−n−オクチルスズからなる群から一種以上選択される単量体である上記5に記載の重荷重用空気入りタイヤ、及び
9.アルコキシシリル基含有単量体が、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6―トリメトキシシリル―1,2−ヘキセン及びp−トリメトキシシリルスチレンからなる群から一種以上選択される単量体である上記5に記載の重荷重用空気入りタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リボン状ゴムストリップ界面の剥離耐久性を高めた、リボン状ゴムストリップが積層されて成型された重荷重用空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、重荷重用空気入りタイヤとは、トラック・バス用空気入りタイヤ、軽トラック用空気入りタイヤ、旅客航空機用空気入りタイヤ及び建設車両用空気入りタイヤをいう。
また、リボン状ゴムストリップとは、トラック・バス用空気入りタイヤや軽トラック用空気入りタイヤにおいては、通常、5〜40mm程度の幅と、0.2〜5mm程度の厚みを有する長尺状ゴムストリップをいい、旅客航空機用空気入りタイヤや建設車両用空気入りタイヤにおいては、通常、10〜100mm程度の幅と、2〜20mm程度の厚みを有する長尺状ゴムストリップをいう。
【0008】
本発明におけるゴム成分を、天然ゴム20〜80質量%及び少なくとも一種類以上の合成ゴム80〜20質量%からなると限定するのは、天然ゴム20〜80質量%のゴム成分を含むゴム組成物からなるリボン状ゴムストリップ界面に剥離現象が現れるからである。
ここで、合成ゴムとは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等をいう。
【0009】
本発明におけるリボン状ゴムストリップの界面とは、該ゴムストリップの上表面、下表面及び側表面における界面をいう。
剥離現象を起こした界面に存在するカーボンブラック不在層は、主に天然ゴムの低分子量成分で構成されており、カーボンブラックが殆ど存在しないため破壊強力が低く、ゴムに歪が負荷された場合にこのカーボンブラック不在層が剥離することにより結果としてリボン状ゴムストリップ界面の剥離に至るのである。
この界面の剥離現象の要因として、以下の2つが見出された。
(1)リボン状ゴムストリップは、通常、押出し成形により製造される。この押出し時の比較的高い温度の状態でリボン状ゴムストリップの表面に天然ゴムの低分子量成分が移行し、その低分子量成分が加硫後にもその表面に残るため、タイヤ中にカーボンブラック不在層が存在するのである。
(2)2種類以上のゴムをブレンドするゴム組成物では、配合されるカーボンブラックがどちらかのゴム中に偏在することがあり、この天然ゴムと合成ゴムのブレンドの場合では、微視的に見れば、合成ゴム中にカーボンブラックが偏在すると考えられる。従って、微視的な天然ゴム中にカーボンブラック不在層が存在することとなる。
【0010】
上記の(1)の場合では、リボン状ゴムストリップの表面への天然ゴムの低分子量成分の移行は、ゴムストリップ温度と雰囲気温度との温度差により決定されること、即ち、ゴムストリップ温度を低くすれば、該低分子量成分のゴムストリップの表面への移行を抑制できること、を見出した。そして、詳細な検討の結果、リボン状ゴムストリップが120℃以下で押出成形された後に積層されると、タイヤでのカーボンブラック不在層の厚さが3μm以下に抑えられるという知見を得た。
また、上記の(2)の場合では、合成ゴム中にカーボンブラックが偏在することを防ぐために変性天然ゴムや天然ゴムカーボンブラックマスターバッチを用いれば、リボン状ゴムストリップが120℃を超える温度で押出成形されても、タイヤでのカーボンブラック不在層の厚さが3μm以下に抑えられるという知見をも得た。
さらに、上記の(1)の場合において、リボン状ゴムストリップが120℃以下で押出成形されても、積層後からタイヤ加硫までの放置時間が3日以上経過するとカーボンブラック不在層の厚さが3μmを超えることがあるという知見をも得た。
【0011】
上記の(1)の場合の押出成形は、通常のゴム用押出機により行われる。押出したリボン状ゴムストリップをいったん巻き取り、その後、タイヤ成型時に積層してもよいが、ゴム用押出機とタイヤ成型機とを直結し、押出されたリボン状ゴムストリップをそのままタイヤ成型機上で巻回し積層した方が、タイヤ生産性の観点から好ましい。
【0012】
上記の(2)の場合に用いられる変性天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス中の天然ゴムに極性基含有単量体又はスズ含有単量体をグラフト重合させてなるものが好ましい。(特許文献2〜4参照)
上記変性天然ゴムラテックスの製造に用いる天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンバク質ラテックス、及びこれらを組み合せたもの等を用いることができる。
【0013】
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合できる限り特に制限されるものでないが、分子内に少なくとも一つの極性基を有することが好ましい。極性基を有することによりカーボンブラックとの反応性を確保することができる。ここで、該極性基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。
上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基を好適に挙げることができる。これら極性基を含有する単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0014】
上記アミノ基を含有する単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくともlつのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0015】
ここで、第1級アミノ基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4−ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アタリレート等が挙げられる。
【0016】
また、第2級アミノ基含有単量体としては、
(1)アニリノスチレン、β−フェニル−p−アニリノスチレン、β−シアノ−p−アニリノスチレン、β−シアノ−β−メチル−p−アニリノスチレン、β−クロロ−p−アニリノスチレン、β−カルボキシ−p−アニリノスチレン、β−メトキシカルボニル−p−アニリノスチレン、β−(2−ヒドロキシエトキシ〉カルボニル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−β一メチル−p−アニリノスチレン、α−カルボキシ−β−カルボキシ−β−フェニル−p−アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、
(2)アニリノフェニルブタジエン、1−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン、3−アニリノフェニル−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、
(3)N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェ二ル)メタクリルアミド等のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0017】
更に、第3級アミノ基含有単量体としては、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
上記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ〉アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ〉アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アタリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アタリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アタリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アタリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アタリレート等が特に好ましい。
【0019】
また、上記N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ〉アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプチル(メタ〉アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ〉アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクノルアミド等が特に好ましい。
【0020】
上記ニトリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0021】
上記ヒドロキシル基を含有する単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキンプロピル(メタ)アタリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル〔メタ)アタリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アタリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキンエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド額;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0022】
上記カルボキシル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0023】
上記エポキシ基を含有する単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アタリレート、3,4−オキシシクロへキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0024】
上記含窒素複素環基を含有する単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有する単量体としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらの中でも、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が特に好ましい。これら含窒素複素環基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0025】
本発明に係る変性天然ゴムの製造に用いるスズ含有単量体としては、アリルトリ−n−ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ−n−オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−オクチルスズ、ビニルトリ−n−ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ−n−オクチルスズ等を挙げることができる。これらスズ含有単量体は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0026】
本発明に用いるアルコキシ シリル基含有単量体としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6―トリメトキシシリル―1,2−ヘキセン、p−トリメトキシシリルスチレン等を挙げることができる。これらアルコキシ シリル基含有単量体は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0027】
本発明においては、上記極性基含有単量体、スズ含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体の天然ゴム分子へのグラフト重合を乳化重合で行う。ここで、該乳化重合においては、一般的に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記単量体を加え、更に重合開始剤を加えて、所定の温度で撹拌して単量体を重合させることが好ましい。なお、上記単量体の天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、単量体を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は単量体の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0028】
上記重合開始剤としては、特に制限はなく、種々の乳化重合用の重合開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合間始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。
【0029】
上記変性天然ゴムを含有する天然ゴム及び合成ゴムからなるゴム成分等にカーボンブラック等の充填材を配合して、リボン状ゴムストリップ界面のカーボンブラック不在層の厚さを抑えるためには、各天然ゴム分子に上記単量体が少量且つ均一に導入されることが好ましく、上記重合開始剤の添加量は、上記単量体に対し1〜100モル%の範囲が好ましく、10〜100モル%の範囲が更に好ましい。
【0030】
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させることで、天然ゴム分子に上記単量体がグラフト共重合した変性天然ゴムラテックスが得られる。
また、該変性天然ゴムラテックスを凝固し、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することで変性天然ゴムが得られる。ここで、変性天然ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。
【0031】
上記変性天然ゴムラテックス及び変性天然ゴムにおいて、上記極性基含有単量体、スズ含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜10.0質量%の範囲が好ましい。極性基含有単量体のグラフト量のより好適な範囲は、0.1〜5.0質量%である。上記極性基含有単量体、スズ含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体のいずれにおいても、グラフト量は0.1〜5.0質量%の範囲が更に好ましく、0.2〜1.0質量%の範囲が特に好ましい。単量体のグラフト量が0.01〜10.0質量%の範囲であれば、カーボンブラック不在層の厚さを抑えることができると共に、天然ゴム本来の物理特性(特に、加工性)を損なわないので好ましい。
【0032】
上記の極性基含有単量体、スズ含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体をグラフトした変性天然ゴムは、上述した本発明の効果を享受するのに加えて、重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴム組成物に配合した場合、低ロス性及び耐摩耗性向上の効果も併せ享受することとなる。
なお、変性天然ゴムの上述の効果を奏するためには、天然ゴムの50質量%以上が変性天然ゴムであることが好ましい。
【0033】
上記の(2)の場合に用いられる天然ゴムカーボンブラックマスターバッチとしては、乾式マスターバッチ及び湿式マスターバッチのいずれを用いてもよい。
ここで、乾式マスターバッチとは、天然ゴムと、カーボンブラックとをバンバリーミキサー、インターナルミキサー、ロール等の混練機にて混練してマスターバッチとするものである。
また、湿式マスターバッチとは、天然ゴムラテックスと、カーボンブラックとを混合してマスターバッチとするものであり、カーボンブラックを予め水中に分散させたスラリー溶液とした後に混合することが好ましい。(例えば、特許文献5参照。)カーボンブラックの分散性をよくするためには、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を用い、均一に混合することが望ましい。
また、カーボンブラックの分散性を高めるためには、連続混練り機を用いて湿式マスターバッチを乾燥することが好ましく、連続混練り機として2軸混練押出機を用いることが更に好ましい。
本発明の効果をより享受するためには、湿式マスターバッチがより好ましい。
上記の天然ゴムカーボンブラックマスターバッチを用いれば、上記の(2)のように、天然ゴムと合成ゴムとの併用の場合であっても、カーボンブラックが合成ゴムに偏在するのを防ぐことができる。
【0034】
本発明におけるリボン状ゴムストリップに用いられるゴム組成物においては、上記ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック20〜120質量部を含有させることができる。このカーボンブラックの含有量が20質量部以上であれば、補強性や他の物性の改良効果が良好に発揮され、一方120質量部以下であれば、加工性も良好である。該カーボンブラックの好ましい含有量は、補強性、他の物性及び加工性等を考慮すると、30〜100質量部の範囲である。
上記カーボンブラックとしては、例えばFEF、GPF、SRF、HAF、IISAF、ISAF、SAF等が挙げられる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠する)は20〜160m2/gであることが好ましく、70〜160m2/gであることがより好ましい。20m2/g以上であれば、補強性が発揮され、耐久性能も良好であり、160m2/g以下では加工性及びカーボンブラックの分散が良好であるからである。また、好ましくはジブチルフタレート吸油量(DBP、JIS K 6217−4:2001に準拠する)が80〜170cm3/100gのカーボンブラックである。これらのカーボンブラックを用いることにより、諸物性の改良効果は大きくなる。好ましいカーボンブラックは、特に耐摩耗性に優れるHAF、IISAF、ISAF、SAFである。
【0035】
本発明におけるリボン状ゴムストリップに用いられるゴム組成物には、カーボンブラックに加えて、所望により、シリカや他の無機充填材を配合することができる。
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。好適な湿式シリカとしては、東ソー・シリカ(株)製のAQ、VN3、LP、NA等、デグッサ社製のウルトラジルVN3等が挙げられる。
シリカ以外の他の無機充填材として、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0036】
本発明におけるリボン状ゴムストリップに用いられるゴム組成物においては、補強用充填材としてシリカを併用する場合、その補強性をさらに向上させる目的で、一種又は二種以上のシランカップリング剤を配合することができる。このシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが挙げられる。
このシランカップリング剤の配合量は、カップリング剤としての効果及びゴム成分のゲル化防止等の観点から、シリカに対して、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
【0037】
本発明におけるリボン状ゴムストリップに用いられるゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を含有させることができる。
上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、0.5〜5.0質量部がより好ましい。
【0038】
本発明において使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアジニン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0039】
また、本発明におけるリボン状ゴムストリップに用いられるゴム組成物で使用できるプロセス油としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性が良好となる。
【0040】
本発明におけるリボン状ゴムストリップは、例えば重荷重用空気入りタイヤのトレッドに好適に用いられるが、ベルトの被覆ゴム、間シート、カーカスの被覆ゴム等のケース部材等としても用いられる。
【0041】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、上述の本発明にかかるリボン状ゴムストリップをタイヤ成型機上で積層して成型され、生タイヤに作製される。その後、加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
このようにして得られた本発明の重荷重用空気入りタイヤは、優れた耐久性等を有している。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、リボン状ゴムストリップ押出し温度、カーボンブラック不在層の厚さ及びリボン状ゴムストリップの剥離耐久性は、下記の方法に従って測定した。
(1)リボン状ゴムストリップ押出し温度
押出し直後のリボン状ゴムストリップの表面温度を非接触温度計にて測定した。
(2)カーボンブラック不在層の厚さ
タイヤから取り出した試料1gをベンゼン10ミリリットルへ1日間浸漬した後、1日ドラフト中で乾燥させた後、界面をTEM(透過電子顕微鏡)により観察し、カーボンブラック不在層、即ち電子線密度が他の部分より弱い層を見つけ出し、その層の最大幅を測定し、カーボンブラック不在層の厚さとした。電子線密度の弱い部分とは、電子線密度がゴムのマトリックス部の電子線密度の70%以下の部分をいう。
(3)リボン状ゴムストリップの剥離耐久性
部材により評価方法が異なる。本実施例はトレッドの場合であり、タイヤサイズ11R22.5のトラック・バス用空気入りタイヤのトレッドに9種類のゴム組成物を配設し、9種類のトラック・バス用空気入りタイヤを調製した。この9種類のタイヤをテストコースにて8の字旋回を行なった後、各トレッド表面を観察し、リボン状ゴムストリップ界面での剥離の発生の有無を評価した。剥離の発生がなく良好なものを○、剥離の発生が認められ不良なものを×と表記した。
なお、ベルト被覆ゴム、カーカス被覆ゴム等のケース部材の評価は、タイヤから切り出した試料を室内で繰り返し疲労試験にて疲労させた後、剥離の有無を評価する。
【0043】
製造例1(変性天然ゴムの製造)
(1)天然ゴムラテックスの変性反応工程
フィールドラテックスを、ラテックスセパレーター(斎藤遠心工業製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離して乾燥ゴム 濃度60質量%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機、温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mlの水と90mgの乳化剤(エマルゲン1108,花王株式会社製)をN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gに加えて乳化したものを990mlの水とともに添加し、これらを窒素置換しながら30分間撹拌した。次いで、重合開始剤としてtert−ブチルヒドロパーオキサイド1.2gとテトラエチレンペンタミン1.2gとを添加し、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
【0044】
(2)凝固、乾燥工程
次いで、ギ酸を添加してpHを4.7に調整することにより、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得た固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化し、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムAを得た。このようにして得た変性天然ゴムAの質量から極性基含有単量体としてのN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率は100%であることが確認された。また、該変性天然ゴムAを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1(容量比)混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたが、抽出物の分析からホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることを確認した。
【0045】
製造例2−5(変性天然ゴムの製造)
3.0gのN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートの代わりに、製造例2では2−ヒドロキシエチルメタクリレートを2.1g、製造例3では4−ビニルピリジンを1.7g、製造例4ではアクリロニトリルを1.7g、製造例5ではアリルトリ−n−ブチルスズを5gを用い、さらに製造例5では乳化剤量を210mgとした以外、製造例1と同じ処理を行って変性天然ゴムB(製造例2)、C(製造例3)、D(製造例4)、E(製造例5)をそれぞれ得た。
製造例1と同様な方法により変性天然ゴムB−Eを分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることを確認した。
【0046】
製造例6(変性天然ゴムの製造)
フィールドラテックスを、ラテックスセパレーター(斎藤遠心工業製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離して乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機、温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000mlの水と、0.19gの乳化剤(エマルゲン1108,花王株式会社製)と、4.1gのγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとを添加し、これらを窒素置換しながら15分間撹拌した。次いで、重合開始剤としてtert−ブチルヒドロパーオキサイド1.2gとテトラエチレンペンタミン1.2gとを添加し、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。この変性天然ゴムラテックスから、製造例1と同じ凝固、乾燥工程を経て、変性天然ゴムFを得た。
製造例1と同様な方法により変性天然ゴムFを分析したところ、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることを確認した。
【0047】
製造例7(天然ゴムカーボンブラックマスターバッチの製造)
天然ゴムのフィールドラテックス(ゴム分24.2質量%)を脱イオン水で希釈し、ゴム分20質量%のものにした。また、ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425gと、カーボンブラックSAF(N110:東海カーボン(株)製、シースト9)の75gを投入し、ローター・ステーター間隙0.3mm、回転数5000rpmで10分間攪拌した。
次に、ホモミキサー中に、上記により調製されたラテックスとスラリーを、ゴム分100質量部に対して、カーボンブラックSAF50質量部になるよう添加し、攪拌しながら、蟻酸をpH4.5になるまで加えた。凝固したマスターバッチを回収、水洗し、水分が約40質量%になるまで脱水を行った。脱水後のマスターバッチの乾燥は、神戸製鋼製2軸混練押出機(同方向回転スクリュー径 30mm、L/D=35、ベントホール3ヶ所)を用いて、バレル温度120℃、回転数100rpmで乾燥する2軸混練押出機乾燥法により行なった。
上記により得られたマスターバッチ中の充填材量は、天然ゴム100質量部に対して、50質量部であった。
【0048】
実施例1〜8及び比較例1〜2
表1に示す配合処方により、実施例1〜8及び比較例1〜2のゴム組成物を調製した。なお、比較例1では、実施例1と同じゴム組成物を用いた。
また、実施例3のゴム組成物は、第1段階の混練り時(ノンプロ練時)に、バンバリーミキサーに、まず、ポリブタジエンゴムとカーボンブラックSAFとを投入し、充分練り合わせてから製造例7で得られた天然ゴムカーボンブラックマスターバッチを投入し、混練りした。天然ゴムとポリブタジエンゴムとの双方に均一にカーボンブラックSAFが分散するようにするためである。
これら10種類のゴム組成物をリボン状ゴムストリップ(幅:25mm、厚さ:2mm)に押出し成形した直後に、タイヤ成型機上で、タイヤサイズ11R22.5のトラック・バス用空気入りタイヤの生タイヤ台の周方向に巻回して積層し、トレッドを形成し、10種類の生タイヤを調製した。これら9種類の生タイヤを加硫し、10種類のトラック・バス用空気入りタイヤを製造した。いずれのタイヤもリボン状ゴムストリップの押出し成形直後からタイヤ加硫までの放置時間は1日であった。これら10種類のタイヤについて、カーボンブラック不在層の厚さ及びリボン状ゴムストリップの剥離耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

[注]
*1:宇部興産(株)製、商品名「UBEPOL−BR150L」
*2:東海カーボン(株)製、商品名「N110:東海カーボン(株)製、シースト9、N2SA: 142m2/g、DBP:115cm3/100g」
*3:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*4:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0050】
表1から分かるように、実施例1〜8の本発明の重荷重用空気入りタイヤは、比較例1の重荷重用空気入りタイヤと比較して、カーボンブラック不在層の厚さが薄く、リボン状ゴムストリップの剥離耐久性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、トラック・バス用空気入りタイヤ、軽トラック用空気入りタイヤ、旅客航空機用空気入りタイヤ及び建設車両用空気入りタイヤとして、トラック、バス、軽トラック及び建設車両の各種車両並びに旅客航空機に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム20〜80質量%及び少なくとも一種類以上の合成ゴム80〜20質量%からなるゴム成分を含有するゴム組成物からなるリボン状ゴムストリップが積層されて成型された重荷重用空気入りタイヤにおいて、該リボン状ゴムストリップ界面のカーボンブラック不在層の厚さが3μm以下であることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
リボン状ゴムストリップが120℃以下で押出成形された後積層されてなる請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
リボン状ゴムストリップを構成するゴム組成物の天然ゴムが変性天然ゴムを含有する請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
リボン状ゴムストリップを構成するゴム組成物が天然ゴムカーボンブラックマスターバッチを含有する請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
変性天然ゴムが、天然ゴムラテックス中の天然ゴムに極性基含有単量体、スズ含有単量体又はアルコキシシリル基含有単量体をグラフト重合させてなる請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
極性基含有単量体の極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から一種以上選択される基である請求項5に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
極性基含有単量体が、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ピリジル基含有ビニル化合物、(メタ)アクリロニトリル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から一種以上選択される単量体である請求項5又は6に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
スズ含有単量体が、アリルトリ−n−ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ−n−オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−オクチルスズ、ビニルトリ−n−ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ及びビニルトリ−n−オクチルスズからなる群から一種以上選択される単量体である請求項5に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
アルコキシシリル基含有単量体が、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6―トリメトキシシリル―1,2−ヘキセン及びp−トリメトキシシリルスチレンからなる群から一種以上選択される単量体である請求項5に記載の重荷重用空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2007−203903(P2007−203903A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25722(P2006−25722)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】