説明

金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法、筒状容器の製造方法及び金型コア

【課題】筒状容器の製造コストを低減させるとともに製造効率を向上させ、筒状容器の品質も保持する。
【解決手段】金型コアであるマンドレル3の先端部にラミネート筒状部材4を押し込み、マンドレル3とラミネート筒状部材4との間に気体を噴出しながらラミネート筒状部材4をマンドレル3の基端側に案内し、マンドレル3の外面に前記ラミネート筒状部材4を被着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器等の筒状容器の胴部を構成すべく筒状に形成されたフィルム状の薄肉筒状部材を金型コアの外面に被着させる金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法、筒状容器の製造方法及び金型コアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック容器の廃棄容量を減少させるべく極力肉厚の薄い容器を提供しようとする試みがなされている。例えば特許文献1には肉厚の薄いプラスチックラミネートフィルムを用いて形成されるプラスチック容器が開示されている。このプラスチック容器は有底円筒状とされ、プラスチックラミネートフィルムで筒状に成形された胴部と、この胴部の一端側及び他端側にインサートインジェクション成形手段により結合された成形部とを有している。
【0003】
そして、この特許文献1には、プラスチックラミネートフィルムを素材とした筒状部材を金型コアとなるマンドレルに被着することが開示されている。そして、この特許文献1に記載の技術では、筒状部材を被着したマンドレルを成形型に装着し、その後、筒状部材の一端側及び他端側に結合される成形部を形成すべくインサートインジェクション成形手段により溶融プラスチック樹脂材料を成形型内キャビティに注入することで、上記のプラスチック容器を成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−103428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたプラスチック容器は、筒状の胴部の一端側及び他端側にインサートインジェクション成形手段により結合される成形部を有しているが、このような容器を成形する金型では通常、射出樹脂の成形後の収縮を考慮して、上記成形部を成形する成形空間を大きめに形成する一方で、胴部を構成する筒状部材については、成形後の外観品質を考慮し、マンドレル(金型コア)に対して隙間無く被着させることが必要となる。
【0006】
これは、筒状部材を金型コアに対してやや大きめに形成すると、プラスチック容器の成形部の成形後の収縮により、胴部と成形部との結合部位にシワ等が生じやすくなってしまい、外観品質だけでなく機能の低下まで招く可能性があるという問題があるからである。より具体的に説明すると、シワ等による外観品質の低下に加え、シワ等の発生と成形部の収縮が相まって、胴部と成形部との結合部位における密封性が低下する可能性があるという問題があるからである。このため、金型コアの直径と同一かそれよりも小さい内径の筒状部材を被着させることが必要となる。
【0007】
しかし、金型コアに対して隙間無く筒状部材を被着させる作業は、筒状部材を伸ばすようにして取り付けることが必要であるので、非常に手間がかかる。上述のように筒状部材を金型コアに対してやや大きめに形成することは、取付性の向上という点では対策になるものの、外観品質等は維持できない。
【0008】
こうした事情に対し通常は、金型コアを先端に向けて縮径するテーパ状とするとともに、筒状部材も先端に向けて縮径するテーパ状に形成し、筒状部材の金型コアに対する取付性を向上させるとともに、成形品の取り抜き性も良好にさせる対策がとられる。しかしながら、この手法にあっては、成形の都度、筒状部材をテーパのついた筒状に形成して金型コアに被着させることが必要であるので、筒状部材の製造に非常に手間がかかるという問題が生じてしまい、製造コスト、製造効率の点で良好でない。
【0009】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、プラスチックラミネートフィルム等で形成される筒状の薄肉筒状部材を金型コアに被着して筒状容器を成形する場合において、筒状容器の製造コストを低減できるとともに製造効率を向上させることができ、また、筒状容器の品質も維持できる金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法及び金型コア等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、筒状容器の胴部を構成すべく同一断面形状で筒状に形成されたフィルム状の薄肉筒状部材を金型コアの外面に被着させる金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法であって、前記金型コアの先端部に前記薄肉筒状部材を押し込み、前記金型コアと前記薄肉筒状部材との間に気体を噴出しながら前記薄肉筒状部材を前記金型コアの基端側に案内し、前記金型コアの外面に前記薄肉筒状部材を被着させることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記金型コアを、外周長さが同一の棒状体として構成し、この外周長さを前記薄肉筒状部材の内周長さ以上に設定することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記金型コアの最大外径寸法を、少なくとも該金型コアの基端に設定することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記金型コアの先端部外面に気体噴出孔を形成し、該気体噴出孔から前記金型コアと前記薄肉筒状部材との間に気体を噴出することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記金型コアの先端部外面に溝部を形成し、該溝部に前記気体噴出孔を形成することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記金型コアの先端部に前記薄肉筒状部材の押し込みを許容する誘い部を形成することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、前記誘い部を、前記金型コアの先端部に面取りを施すことで構成することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、前記誘い部を、前記金型コアの先端部に取り付けられ前記金型コアの外径寸法よりも小さい外径寸法を設定された別体コアで構成することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、上記のいずれかに記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法を用いて筒状容器を製造することを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、筒状容器の胴部を構成すべく同一断面形状で筒状に形成されたフィルム状の薄肉筒状部材をその外面に被着させる金型コアであって、外周長さが同一の棒状体として構成され、この外周長さが前記薄肉筒状部材の内周長さ以上に設定され、その先端部外面に気体を噴出する気体噴出孔が形成されていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、前記先端部外面に溝部が形成され、該溝部に前記気体噴出孔が形成されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、前記金型コアの先端部に前記薄肉筒状部材の押し込みを許容する誘い部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルム状の筒状の薄肉筒状部材を金型コアに被着して筒状容器を成形する場合において、筒状容器の製造コストを低減できるとともに製造効率を向上させることができ、また、筒状容器の品質も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成形型の概略構成を説明する図である。
【図2】第1の実施形態に係る成形型により成形されるプラスチック容器の一例を示した図である。
【図3】第1の実施形態に係る成形型における金型コアの概略構成を説明する図である。
【図4】第1の実施形態に係る金型コアに対してプラスチックラミネートフィルムを取り付ける装置である受け渡し治具の概略構成を説明する図である。
【図5】第1の実施形態に係る金型コアに対するプラスチックラミネートフィルムの取付を説明する図である。
【図6】第1の実施形態に係る金型コアに対するプラスチックラミネートフィルムの取付を説明する図である。
【図7】第1の実施形態に係る金型コアに対するプラスチックラミネートフィルムの取付を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る金型コアの斜視図である。
【図9】第2の実施形態に係る金型コアの形状を説明する図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る金型コアの側面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態において成形されるプラスチック容器を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を基に説明する。
<第1の実施形態>
図1にプラスチック容器を成形するための成形型1の概略構成を示す。同図に示す成形型1は、固定型2と金型コアとなる円柱状のマンドレル3とを備えている。マンドレル3は固定型2に対して進退移動可能とされ、その外面に薄肉筒状部材の一例であるラミネート筒状部材4を被着されるとともに、その先端に円形フィルム5を当接された状態で固定型2に装着されている。
【0021】
マンドレル3は基端側から先端部手前まで断面形状(長手方向に直交する方向の断面)が同一の円柱状に形成され、かかる区間におけるその外周長さが同一の棒状体として構成されている。一方、ラミネート筒状部材4は、プラスチックラミネートフィルムを素材として形成されており、成形するプラスチック容器の筒状(円筒状)の胴部を構成すべく断面形状(長手方向に直交する方向の断面)が同一の筒状体として形成されている。すなわち、ラミネート筒状部材4は、断面形状が同一直径の円形である円筒状とされ、かつ、その内周長さは一定に形成されている。また円形フィルム5はプラスチック容器の底部の一部を構成するものである。なお、マンドレル3の先端部は先細り形状とされるが、その詳細については後述する。
【0022】
固定型2には、成形するプラスチック容器の形状に対応した空間が穿設され、マンドレル3が固定型2に装着された状態では、マンドレル3の先端と固定型2との間に、プラスチック容器の底部を形成する円板状となる成形空間6が形成される。また、マンドレル3の基部側側面と固定型2との間には、ラミネート筒状部材4の外面から放射状に延びるドーナッツ形状の成形空間7が形成される。キャビティである成形空間6、成形空間7は、固定型2に設けられた溶融樹脂充填のためのランナー8と連通している。これにより、成形空間6、成形空間7に溶融樹脂が流れるようになっている。
【0023】
マンドレル3に被着されたラミネート筒状部材4について詳しく説明すると、ラミネート筒状部材4は、矩形状に裁断した素材であるプラスチックラミネートフィルムを側端同士を封筒貼り型に接合することで形成される両端開口の筒状体であるが、必要に応じて、素材の側端同士を突き合わせて合掌貼り型に接合した両端開口の筒状体や、側端同士を封筒貼り型に重ね合わせ内側からテープで側端同士を接合した両端開口の筒状体であってもよい。また、ラミネート筒状部材4の素材となるプラスチックラミネートフィルムは、防湿性やガス遮断性を考慮すると、厚さ70ミクロンのポリエチレンフィルムと厚さ12ミクロンのポリエステルフィルムとバリアー材として厚さ12ミクロンのアルミニウム箔と厚さ70ミクロンのポリエチレンフィルムをラミネート加工したものや、厚さ70ミクロンのキャストポリプロピレンと厚さ12ミクロンのポリエステルフィルムと厚さ12ミクロンのアルミニウム箔と厚さ70ミクロンのキャストポリプロピレンをラミネート加工したものや、厚さ70ミクロンのキャストポリプロピレンと厚さ12ミクロンのポリエステルフィルムと厚さ70ミクロンのキャストポリプロピレンをラミネート加工したものが適している。また、アルミニウム箔をはじめとする金属箔のほか、バリアー材としてアルミニウムやマグネシウムをはじめとする金属をプラスチックフィルムに蒸着したもの、酸化アルミニウムや酸化ケイ素をはじめとする金属酸化物をプラスチックフィルムに蒸着したもの、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体系などのバリアーフィルム、又はポリ塩化ビニリデンをはじめとするバリアー素材をプラスチックフィルムに塗工したコートフィルムなどを用いることができる。なお、この実施形態では、積層であるプラスチックラミネートフィルムを素材としたラミネート筒状部材4を用いるが、紙にプラスチックやアルミニウム箔をラミネート加工した素材や単層のフィルム状材料を素材とした筒状部材を用いてもよく、広く言えば伸縮性を有する材料からなるものであればよい。
【0024】
上記構成の成形型1で成形するプラスチック容器は有底円筒状の容器であり、図2に成形型1で成形されるプラスチック容器20が示されている。図2に示すようにプラスチック容器20は、ラミネート筒状部材4で筒状に成形された胴部21と、この胴部21の一端側外面に一体的に成形された上側成形部22と、胴部21の他端側内面に一体的に成形された下側成形部23とから構成されている。上側成形部22は上端開口の筒状成形体であり、成形空間7により形成される部位である。下側成形部23は有底状の成形体であり、成形空間6により形成される部位であり、円形フィルム5と一体に結合されている。
【0025】
ここでマンドレル3について説明すると、図3に示すようにマンドレル3においては、その先端部3Aの外周面に周方向に沿った溝部10が形成され、溝部10には空気を噴出する噴出孔11が形成されている。噴出孔11は、マンドレル3の内部に穿設形成された空気連通路12に連通し、この空気連通路12から圧送される空気を外部に噴出可能とされている。また、マンドレル3の先端部3Aには誘い部である面取り部13が施され、マンドレル3の先端部3Aは先細り形状とされている。
【0026】
上記のプラスチック容器20を成形型1で成形する手順では、先ず、このマンドレル3に対してラミネート筒状部材4を取り付ける。本実施形態では、図4に示す受け渡し治具9を用いて、マンドレル3に対してラミネート筒状部材4を取り付ける。この受け渡し治具9は、図4に示すように板状の基部14から突出する円柱状の受け渡し治具本体15と、受け渡し治具本体15の軸方向(図中矢印方向)に摺動可能に設けられた可動部16とを有している。受け渡し治具本体15はラミネート筒状部材4を、その外面に取り付け可能なように外径寸法を設定されている。
【0027】
以下、図5〜図7を用いて、本実施形態におけるマンドレル3及び受け渡し治具9間におけるプラスチックラミネートフィルムの取付の手順について詳しく説明する。
【0028】
先ず、図5に示されるように、受け渡し治具本体15の外面にラミネート筒状部材4を被せるように取り付ける。ここでラミネート筒状部材4の端部は受け渡し治具本体15の先端からややはみ出した状態としておく。またラミネート筒状部材4の端部側の内部には円形フィルム5を嵌め込んでおき、円形フィルム5を受け渡し治具本体15の先端に当接させた状態としておく。そして、この状態で、同図に示すように受け渡し治具本体15の先端とマンドレル3の先端とを向かい合わせるように位置決めを行う。
【0029】
次に、図6に示されるように、受け渡し治具本体15の先端をマンドレル3の先端に当接させるように近づけ、ラミネート筒状部材4の受け渡し治具本体15からはみ出た部位をマンドレル3の先端部3Aに押し込むようにする。そして、次にマンドレル3の噴出孔11より空気を噴出させる。
なお、マンドレル3の外周長さはラミネート筒状部材4の内周長さ以上に設定されているが、マンドレル3の先端部3Aに面取り部13が形成されているので、ラミネート筒状部材4の押し込みが容易に許容されるようになっており、また、噴出孔11は溝部10に形成されているので、効率的にマンドレル3とラミネート筒状部材4との間に空気を効率的に送り込むことができるようになっている。
【0030】
そして次に、図7に示されるように、噴出孔11より空気を噴出させながら受け渡し治具9の可動部16を受け渡し治具本体15の軸方向(基端側、図中矢印方向)に移動させる。これにより、可動部16はラミネート筒状部材4と当接する状態となり、移動を進めるに従い、ラミネート筒状部材4がマンドレル3に取り付けられるように案内される。また、ここで可動部16がラミネート筒状部材4を移動させることで、円形フィルム5はラミネート筒状部材4内を相対的に摺動する。
そして、可動部16が所定の量だけラミネート筒状部材4を移動させて、マンドレル3の全体渡ってラミネート筒状部材4が被着させることで(図1の状態)、マンドレル3に対するラミネート筒状部材4の取付が完了する。
【0031】
このようにして本実施形態ではラミネート筒状部材4の取付がなされる。その後の成形では、図1で示したようにマンドレル3を固定型2に装着して、固定型2に設けられるゲートからランナー8を通して成形空間6と成形空間7にインサートインジュクション成形手段により合成樹脂材料を溶融状態で注入する。なお、本実施形態の成形型1の構成では、成形後にマンドレル3の噴出孔11より空気を噴出させるようにすれば型抜きも容易に行える。
【0032】
以上に記載した本実施形態では、マンドレル3の先端部3Aにラミネート筒状部材4を押し込み、マンドレル3とラミネート筒状部材4との間に空気を噴出しながらラミネート筒状部材4をマンドレル3の基端側に案内することで、マンドレル3の外面にラミネート筒状部材4を被着させている。このため、マンドレル3とラミネート筒状部材4との間に空気層を形成して、ラミネート筒状部材4をマンドレル3の基端側に案内することができるので、マンドレル3の外周長さ以下の内周長さを設定されたテーパのない円筒状のラミネート筒状部材4を、マンドレル3に対して容易に取り付けることができる。
【0033】
したがって、マンドレル3を先端に向けて縮径するテーパ状とするとともに、ラミネート筒状部材4も先端に向けて縮径するテーパ状に形成する必要なく、取付の容易性を確保できるので、長尺の一定の直径の円筒体に形成したものを所定の寸法に切断してラミネート筒状部材4を製造でき、結果として、プラスチック容器の製造コストを低減できるとともに製造効率を向上させることができる。また、ラミネート筒状部材4をマンドレル3に対して大きめにする必要なく、マンドレル3の外周長さ以下の内周長さを設定されたラミネート筒状部材4のマンドレル3に対する取付の容易性を確保できるので、シワ等の発生を抑えて、筒状容器の品質も維持できる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では金型コアであるマンドレルの形状が第1の実施形態と相違する。以下では第1の実施形態と共通する部位に関しては同一符合で示し説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0035】
図8に本実施形態のマンドレル30が示されている。本図では紙面上方をマンドレル30の基端側とし、紙面下方をマンドレル39の先端側として見る。図8に示すように本実施形態のマンドレル30は、基端部31から先端部32までの断面形状(長手方向に直交する方向の断面)が不定の棒状体とされるが、かかる区間におけるその外周長さは同一に設定されている。
【0036】
図9には、マンドレル30の基端部31の円形の断面と先端部32の多角形の断面とが示されている。図9において、先端部32の断面は八角形とされ、その一辺の長さは他の辺の長さと同一であり、図中Aはこの先端部32の一辺の長さを示し、図中D1は基端部31の直径(外径寸法)を示している。
【0037】
図9を用いて、マンドレル30の基端部31から先端部32までの外周長さが同一であることを具体的に説明すると、先端部32の外周長さ(8×A)=基端部31の外周長さ(πD1)、となっている。また基端部31から先端部32の間に位置する断面も基端部31の円形の断面及び先端部32の多角形の断面と同一の外周長さを設定されている。
【0038】
また、マンドレル30においては型抜きの容易性を考慮し、基端部31の外形寸法D1が長手方向全域にわたり最大となるように設定され、基端部31と先端部32との間で、基端部30の外形寸法D1を越える外径寸法の部位はないように形成されている。例えば本実施形態では先端部32の最大外径寸法D2は、「D1=D2」と設定されている。なお、ここでの外径寸法とは、マンドレル30の断面においてマンドレル30の中心点を通る直線で結ばれた、対向する箇所間の距離を言う。また、外径寸法に関して更に言えば、マンドレル30においては、先端側に位置する断面の最大外径寸法は、基端側に位置する断面の最大外径寸法以下に設定されている。
【0039】
そして、図8では、図示都合上省略したが、マンドレル30の先端部32には図10に示すように第1の実施形態と同様の面取り33、溝部34及び噴出孔35が形成されている。マンドレル30に対するラミネート筒状部材4の取付では、第1の実施形態と同様に、面取り部33側からマンドレル30の先端部31にラミネート筒状部材4を押し込み、噴出孔35からマンドレル30とラミネート筒状部材4との間に空気を噴出しながらラミネート筒状部材4をマンドレル30の基端部31側に案内するようにする。
【0040】
図11には、マンドレル30を用いて成形されたプラスチック容器40が示されている。このプラスチック容器40は、ラミネート筒状部材4で筒状に成形された胴部41と、この胴部41の一端側外面に一体的に成形された上側成形部42と、胴部41の他端側内面に一体的に成形された下側成形部43とから構成されている。下側成形部43マンドレル30の先端部32の形状に対応して多角形状となっている。
【0041】
この実施形態においても、プラスチック容器の製造コストを低減できるとともに製造効率を向上させることができ、また、筒状容器の品質も維持できる。また、バリエーションに富んだ形状のプラスチック容器の製造も可能となる。
【0042】
なお、以上で説明した第1,第2の実施形態における構成はこの発明の一例であり、部品構成や構造、形状、大きさ、数及び配置等を含め、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば第1の実施形態では、マンドレル3の先端部3Aに形成した面取り部13を所謂C面取りとしているが、これに代えて弧状の面取りを施してもよい。また、面取りを施さずに、マンドレル3の先端部3Aに、マンドレル3の外径寸法よりも小さい外径寸法を設定された別体コアを取り付けるようにしてもよい。また、第1の実施形態ではプラスチック容器20が円筒状であり、ラミネート筒状部材4も円筒状である例を説明したが、プラスチック容器の胴部が断面視で矩形であるような場合にも、本発明は適用可能である。
【0043】
また、本実施形態では、受け渡し治具9を用いてマンドレル3,30に対してラミネート筒状部材4を取り付ける例を説明したが、受け渡し治具9の構成は他の態様であってもよく、例えば受け渡し治具本体15の形状が断面形状が長手方向に不定のもの等であってもよく、また、人手によってラミネート筒状部材4をマンドレル3,30に対して取り付けてもよい。また、本実施形態では、樹脂かなる筒状部材を金型コアに対して取り付けることを想定したが、本発明は筒状部材を金属材料とした場合にも応用可能と考えられる。
【実施例1】
【0044】
次に本発明の実施例を説明する。
実施例1では、第1の実施形態で説明したマンドレル3及びラミネート筒状部材4に具体的な寸法を設定し、ラミネート筒状部材4をマンドレル3に対して取り付け、成形を行った。
【0045】
マンドレル3については、その直径が55.66mm、その外周長さが174.86mmとなるものを用いた。ラミネート筒状部材4については、その直径が54mm、その外周長さが169.64mmであり、マンドレル3の直径に対して3.07%(1.66/54)、マンドレル3の外周長さに対して3.07%(5.22/169.64)小さいものを用いた。
【0046】
また、ラミネート筒状部材4の材質としては、高密度ポリエチレン(厚さ100μm)/ラミネート/PET(厚さ12μm)/ラミネート/アルミニウム箔(厚さ12μm)/ラミネート/HDPE120μm、からなるものを用いた。
【0047】
この実施例では、マンドレル3の直径及び外周長さよりも直径及び内周長さの小さいラミネート筒状部材4を、マンドレル3の先端に押し込み、その後空気を噴出しながらマンドレル3の基端側に案内することで、ラミネート筒状部材4をマンドレル3に対して容易に取り付けることができることを確認できた。そして、成形後の容器にはシワ等の発生が無く、外観及び機能も良好な容器を得られることが確認できた。なお、上記と同様の寸法設定で、ラミネート筒状部材の材質を、高密度ポリエチレン(厚さ100μm)/ラミネート/PET(厚さ12μm)/ラミネート/アルミニウム蒸着(厚さ12μm)/ラミネート/HDPE120μm、としたものでも、取付及び成形を行ったが、同様に良好な結果が得られた。
【実施例2】
【0048】
実施例2においても、第1の実施形態で説明したマンドレル3及びラミネート筒状部材4に具体的に寸法を設定し、ラミネート筒状部材4をマンドレル3に対して取り付け、成形を行った。
【0049】
マンドレル3については、その直径が34.14mm、その外周長さが107.25mmとなるものを用いた。ラミネート筒状部材4については、その直径が33.74mm、その外周長さを106.00mmであり、マンドレル3の直径に対して1.19%(0.4/33.74)、マンドレル3の外周長さに対して1.18%(1.25/106.00)小さいものを用いた。
【0050】
また、ラミネート筒状部材4の材質としては、高密度ポリエチレン(厚さ50μm)/ラミネート/PET(厚さ12μm)/ラミネート/酸化アルミニウム蒸着(厚さ12μm)/ラミネート/HDPE120μm、からなるものを用いた。
【0051】
この実施例でも、マンドレル3の直径及び外周長さよりも直径及び内周長さの小さいラミネート筒状部材4を、空気を噴出しながらマンドレル3の基端側に案内することで、ラミネート筒状部材4をマンドレル3に対して容易に取り付けることができることを確認できた。そして、成形後の容器にはシワ等の発生が無く、外観及び機能も良好な容器を得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0052】
3,30 マンドレル(金型コア)
4 ラミネート筒状部材(薄肉筒状部材)
10,34 溝部
11,35 噴出孔(気体噴出孔)
13,33 面取り部(誘い部)
20,40 プラスチック容器
21,41 胴部(筒状胴部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状容器の胴部を構成すべく同一断面形状で筒状に形成されたフィルム状の薄肉筒状部材を金型コアの外面に被着させる金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法であって、
前記金型コアの先端部に前記薄肉筒状部材を押し込み、前記金型コアと前記薄肉筒状部材との間に気体を噴出しながら前記薄肉筒状部材を前記金型コアの基端側に案内し、前記金型コアの外面に前記薄肉筒状部材を被着させることを特徴とする金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項2】
前記金型コアを、外周長さが同一の棒状体として構成し、この外周長さを前記薄肉筒状部材の内周長さ以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項3】
前記金型コアの最大外径寸法を、少なくとも該金型コアの基端に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項4】
前記金型コアの先端部外面に気体噴出孔を形成し、該気体噴出孔から前記金型コアと前記薄肉筒状部材との間に気体を噴出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項5】
前記金型コアの先端部外面に溝部を形成し、該溝部に前記気体噴出孔を形成することを特徴とする請求項4に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項6】
前記金型コアの先端部に前記薄肉筒状部材の押し込みを許容する誘い部を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項7】
前記誘い部を、前記金型コアの先端部に面取りを施すことで構成することを特徴とする請求項6に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項8】
前記誘い部を、前記金型コアの先端部に取り付けられ前記金型コアの外径寸法よりも小さい外径寸法を設定された別体コアで構成することを特徴とする請求項6に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金型コアに対する薄肉筒状部材の取付方法を用いて筒状容器を製造することを特徴とする筒状容器の製造方法。
【請求項10】
筒状容器の胴部を構成すべく同一断面形状で筒状に形成されたフィルム状の薄肉筒状部材をその外面に被着させる金型コアであって、
外周長さが同一の棒状体として構成され、この外周長さが前記薄肉筒状部材の内周長さ以上に設定され、その先端部外面に気体を噴出する気体噴出孔が形成されていることを特徴とする金型コア。
【請求項11】
前記先端部外面に溝部が形成され、該溝部に前記気体噴出孔が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の金型コア。
【請求項12】
前記金型コアの先端部に前記薄肉筒状部材の押し込みを許容する誘い部が形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の金型コア。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189682(P2011−189682A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59323(P2010−59323)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】