説明

金属−セラミック基板を金属体に接合する方法

【課題】金属ーセラミック基板と金属体との接合方法に関する。
【解決手段】少なくとも1つの面上にメタライゼーション1,4を有する金属−セラミック基板を、金属合金4によって金属体5に接合する方法であって、(a)厚みが1mm未満である金属体を使用し、(b)(b−1)アルミニウムを含み、(b−2)液相温度が450℃より高い金属合金を、金属−セラミック基板と金属体との間に配置し、(c)ステップ(b)が提供する配置を450℃より高い温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−セラミック基板を金属体に接合する方法に関する。結果として得られる金属−セラミックモジュールは、特に、回路キャリアとしてパワー半導体モジュールの分野で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
これらの回路キャリアは、典型的には、メタライゼーション、例えば、アルミニウムまたは銅を上面および下面に備えたセラミック、例えば、少なくとも1つの金属化された面が回路構造を有する酸化物セラミックである。セラミック基板に接合される金属体は、特に、操作動作中または絶え間なくパワーエレクトロニクス部品中で発生した熱を伝導する役割を果たす。
【0003】
例えば、モジュールベースプレートの場合に、熱を除去するために利用される金属体にセラミック基板を固定する先行技術に、例えば、SnPb、SnAg、SnAgCu、または同等の適切なはんだ材料を使用する軟はんだ付けによる部品の接着結合がある。そのような方法は、例えば、特許文献1に記載されている。典型的に使用される金属体は、3mm〜10mmの範囲の厚みを有する。
【0004】
しかし、セラミック基板とベースプレートとの接着結合は、典型的には軟質はんだによる銅(Cu)を含み、パワーモジュールの周期的熱応力によって、はんだ層中に亀裂の形成および層間剥離をもたらし、それは、まず、熱移動を低減し、部品の破壊をもたらす可能性もある。例えば、使用中の周期的熱応力による、クラック形成までの機械的荷重サイクル数は、セラミック基板、ベースプレート、およびはんだ材料の機械的特性、例えば、熱膨張率およびE係数だけでなく、有効温度変化、はんだ厚み、および横方向の基板サイズにも依存する。
【0005】
セラミック基板を金属体に接合するための硬はんだ材料の使用も既に知られている。
【0006】
例えば、特許文献2は、チタン、クロム、またはハフニウムなどの活性金属を含む硬はんだ材料を使用して、セラミック基板を銅板に接合する方法について記載している。個々の部品は、結合を形成するために、真空炉内でプレスされ、850℃または1063℃で加熱される。
【0007】
特許文献3は、1000℃以下の融点を有し、ニッケル、銅、および/または鉄から実質的になるはんだを使用して、セラミック基板を金属層に接合する方法を開示する。例えば、NiPの使用が述べられ、それは、まず、600℃でセラミック基板に接合され、その後、970℃で金属層に接合される。結果として得られるはんだの結合層の厚みは、2μm〜40μmであるとされている。
【0008】
特許文献4は、同様に、1000℃以下の融点を有し、ニッケル、銅、および/または鉄から実質的になるはんだが使用される、セラミック基板を金属層に接合する方法に関する。例えば、NiPの使用が述べられ、それは、まず、600℃でセラミック基板に接合され、その後、970℃で金属層に接合される。
【0009】
しかし、この手順は、パワーモジュールの周期的熱応力が、まず、熱移動を低減し、部品の破壊をももたらす可能性がある亀裂の形成および層間剥離をもたらすので、熱を除去するために利用される金属体に対して、少なくとも一方の面上にメタライゼーションを有するセラミック基板を固定するのにふさわしくない。さらに、この手順は、特に、比較的高温の結果、極めて複雑であり高価である。
【0010】
はんだ付け方法とは別に、直接結合方法、例えば、直接銅結合(DCB)、直接アルミニウム結合(DAB)、および活性金属ろう付け(AMB)も知られており、これらの方法では、金属は高温で融解され、結果として得られる融解生成物がセラミック基板に適用され、その後、凝固させられる。そのような方法は、例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7に開示されており、これらは、アルミニウム金属化セラミック基板を製造する方法、およびそのような基板をアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベースプレートに接合する方法についても記載している。
【0011】
さらに、特許文献6は、実験部分において、窒化アルミニウムセラミック基板を、まず87.5重量%のAlおよび12.5重量%のSiを含むはんだで印刷し、巻回アルミニウム板を、その後セラミック基板上に配置し、アセンブリを真空炉内で575℃に加熱し、次いで無電解法によってニッケルめっきする方法と上記手順を比較する(特許文献6:比較例1参照)。
【0012】
しかし、これらの文献の方法は、文献に開示された形態では、特に、単一部品の処理のため、そして比較的高温の結果、極めて複雑であり高価である。厚みの制限および使用されるベースプレートの降伏応力も、特許文献7に記載されるように、可能な適用分野の限定をもたらす。降伏応力の限定の理由は、このように、熱を受ける場合にシステムで発生する機械的応力であり、それは、提案された低い降伏応力値によって、セラミック基板が耐えることができる値に低減される。
【0013】
最後に、最近の文献は、セラミック基板を金属体に接着結合するための焼結または拡散結合を提案している。
【0014】
しかし、低温焼結技術は、近年、特に、ダイアタッチ方法にうまく使用されており、このプロセスでは、焼結された継ぎ目を製造するために2MPa〜20MPaの範囲の圧力を使用しなければならないので、セラミック基板を金属体に接合するための適合性は限定的なものでしかない。30×40mmの典型的な基板サイズの場合には、2MPa(例えば、ナノ銀技術の場合)の接合圧力のために、2.4kNの力を加えなければならない。
【0015】
金属体、特に、金属−セラミックモジュールのベースプレート、特に、パワーエレクトロニクス部品は、適切な方法、例えば、ねじまたは締め付けによって熱を除去するために必要な冷却体に高い頻度で固定される。金属体と冷却表面との間、特に、モジュールベースプレートと冷却表面との間の熱移動が、表面粗さおよび/または表面コルゲーションによって局部的に限定された小さな領域でのみ発生する可能性があるので、熱伝導材料(TIM)として知られる連結媒体は、金属体と冷却表面との間、特に、モジュールベースプレートと冷却表面との間の界面で凹凸をうめ、したがって、より良好な熱移動を確実にするものであり、アセンブリに使用される。
【0016】
しかし、現在利用可能なTIMの熱伝導率は0.5〜最大10K/Wmの範囲でしかないので、冷却器上におけるモジュール底部の取り付けにおいて要求されるTIMは、システム全体の耐熱性を向上させる。
【0017】
パワーエレクトロニクス部品の改善された冷却を達成するさらなる可能な方法は、セラミック基板の下面と冷却媒体との直接接触であり、セラミック基板が適切な形状体において固定され、部品への冷却媒体の侵入が適切に設計されたシール(例えば、Danfoss ShowerPower(登録商標))によって防止される。
【0018】
しかし、モジュール構造物(例えば、Danfoss ShowerPower(登録商標))における冷却媒体によるセラミック基板の直接冷却は、圧力増加とともに、部品への冷却媒体の侵入の危険が増大するので、冷却媒体の最大可能圧力によって限定される。さらに、冷却媒体と直接接触する基板下面は、それらの表面積の点から、限定的にのみ拡大することができ、その結果、この場合には、セラミック基板と冷却媒体との間に最適化された接触はなく、それにより熱移動に対する悪影響がある。
【0019】
最後に、セラミック基板の熱膨張率にさらによく調和する材料、例えば、AlSiC、MoCu、WCu、CuMoCu、またはCu/アンバー(Invar)/Cuを使用することによって、高品質の金属−セラミックモジュールを得ることができることも知られている。しかし、これは、同様に、セラミック基板と底部を接合するための公知の接合技術のうちの1つ、例えば、はんだ付けまたは焼結を必要とし、それには上記欠点があり、また、ベースプレートのための高い材料コストのために、信頼度の点から非常に厳しい必要条件を有するモジュール、例えば、宇宙飛行でのモジュールのためにのみ実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/068552号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0827198号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0788153号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0969511号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0676800号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1187198号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2214202号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
この先行技術の観点から、本発明の目的は、金属−セラミック基板を金属体に接合するより良好な方法を提供することであった。特に、少なくとも一方の面上にメタライゼーションを有するセラミック基板に金属体を接合する、特に、少なくとも一方の面上にメタライゼーションを有するセラミック基板に金属冷却体をより強くより安定して接合し、その結果、継ぎ目は、好ましくは周期的熱応力にも非常に良好に耐える、より良好な方法が求められた。そのような周期的熱応力下での継ぎ目での亀裂の形成および層間剥離は、金属−セラミックモジュールのより良好な長期特性、特に、より良好な長期的熱移動を確実にし、使用中に金属−セラミックモジュールの破壊の危険を最小限にするためにできるだけ回避されるべきである。さらなる接合手段、特に、ねじ、クランプ、または熱伝導材料(TIM)などの他の連結媒体の使用もできることなら回避されるべきである。同時に、本発明による解決法は、好ましくは簡単な方法で非常に安価に効率的に実現されることができるに違いない。
【0022】
本明細書で検討する内容に直接導かれ得るこれらおよびさらなる目的は、請求項1のすべての特徴を有する金属−セラミックモジュールを製造する方法によって達成される。請求項1を参照する従属クレームは、本発明の方法の好ましい変形例について記載している。さらに、本発明による金属−セラミックモジュール、および本発明による金属−セラミックモジュールの特に有利な使用分野が保護される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有する金属−セラミック基板を、金属合金によって金属体に接合する方法であって、(a)厚みが1mm未満である金属体を使用し、(b)(b−1)アルミニウムを含み、(b−2)液相温度が450℃より高い合金を、金属−セラミック基板と金属体との間に配置し、(c)ステップ(b)が提供する配置を450℃より高い温度に加熱する方法は、驚いたことに、より良好な特性プロフィールを有する金属−セラミックモジュールを提供することを可能にする。本発明の方法は、セラミック基板に金属体を結合することを可能にし、特に、セラミック基板への金属体のより強くより安定した結合を達成することを可能にし、継ぎ目も非常に良好に周期的熱応力に耐える。そのような周期的熱応力の場合の継ぎ目での亀裂の形成および層間剥離は、できるだけ回避され、金属−セラミックモジュールのより良好な長期特性、特に、より良好な長期的熱移動が、このようにして保証され、使用中の金属−セラミックモジュールの破壊の危険は比較的低い。金属体の厚みの本発明による1mm未満への制限の結果、金属−セラミック基板にとって重要でない小さな機械的応力のみが、金属−セラミック基板と金属体の複合材料の熱応力の場合に発生し、その結果、使用される金属体の降伏応力の限定は必要ない。さらなる接合手段、特に、ねじ、クランプ、または熱伝導材料(TIM)などの他の連結媒体を使用することは、本発明の目的に絶対に必要というわけではない。さらに、本発明による解決法は、比較的簡単な方法で、極めて安価で効率的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】構造の断面を通る原理的なスケッチ
【発明を実施するための形態】
【0025】
したがって、本発明は、金属合金によって金属−セラミック基板を金属体に接合する方法を提供し、金属−セラミック基板と金属体との間に金属合金がまず配置される。
【0026】
本発明によって使用される金属−セラミック基板は、セラミック基板と、少なくとも1つの面上のメタライゼーションとを含む。
【0027】
セラミック基板は、無機、非金属基板、特に、粘土鉱物が好ましい。好ましいセラミック基板は、酸化物および窒化物、特に、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および窒化ケイ素、特に、酸化アルミニウムを含む。
【0028】
本発明の目的のために、セラミック基板は、メタライゼーションを含み、好ましくはアルミニウムまたは銅、特に、少なくとも1つの表面上のアルミニウムからなる。
【0029】
メタライゼーションの導電率は、有利には10(Ω・cm)−1より大きく、好ましくは10(Ω・cm)−1より大きく、特に好ましくは10(Ω・cm)−1より大きく、特に10(Ω・cm)−1より大きい。
【0030】
本特許出願においては、他に指定のない限り、示されたすべての値は、25℃の温度に関係する。
【0031】
メタライゼーションの厚みは、好ましくは50.0μmより大きく、より好ましくは75.0μmより大きく、特に好ましくは100.0μmより大きく、とても好ましくは150.0μmより大きく、特に200.0μmより大きい。さらに、メタライゼーションの厚みは、有利には1000.0μm未満、好ましくは750.0μm未満、特に好ましくは500.0μm未満、特に400.0μm未満である。
【0032】
メタライゼーションは、好ましくは直接結合方法によってセラミック基板の表面に適用される。そのような方法としては、特に、直接銅結合(DCB)、直接アルミニウム結合(DAB)、および活性金属ろう付(AMB)が挙げられ、金属は高温で融解され、結果として得られる融解生成物は、セラミック基板に適用され、その後凝固させられる。そのような方法は、例えば、欧州特許出願公開第0676800(A2)号および欧州特許出願公開第1187198(A2)号(特許文献6)に記載されている。
【0033】
本発明の第1の特に好ましい実施形態では、セラミック基板は、その上面およびその下面にメタライゼーションを有し、金属体は、これらの面の1つ、好ましくは下面を介してセラミック基板に接合される。
【0034】
本発明の第2の特に好ましい実施形態では、セラミック基板は、その上面上にのみメタライゼーションを有し、金属体はセラミック基板の下面を介してセラミック基板に接合される。
【0035】
少なくとも1つの金属化された面が回路構造を有することが有利である。
【0036】
本発明によって使用される金属体は、好ましくは金属板である。
【0037】
本発明によれば、金属体の厚みは、1.0mm未満、好ましくは0.9mm未満、特に好ましくは0.8mm未満、とても好ましくは0.7mm未満、特に0.6mm未満である。さらに、金属体の厚みは、好ましくは0.05mmより大きく、さらに特に好ましくは0.1mmより大きく、とても好ましくは0.2mmより大きく、特に0.3mmより大きい。金属体の厚みは、好ましくは継ぎ目に対して垂直に決まる。
【0038】
もしくは、金属−セラミック基板に接合される金属体は、原則として、いかなる特定の制限をも受けない。しかし、金属体は、好ましくは操作動作中または絶え間なくパワーエレクトロニクス部品中で発生した熱を伝導する役目をする。この理由で、金属体に対向する金属−セラミック基板の面は、好ましくは、特に効率的な冷却作用を確実にするために、金属−セラミック基板に対向する金属体の面より小さい。
【0039】
本発明の目的のために、金属体は、好ましくは次の材料特性を有する。
1.高い導電率、
2.高い熱伝導率、
3.延性(変形能)、および
4.金属の輝き(鏡面の輝き)。
【0040】
好ましい金属体は、元素周期表で、ホウ素からアスタチンの境界線の左および下に位置する化学元素からなる。本発明の目的に非常に特に有利な金属体は、アルミニウムおよび銅、特に、アルミニウムである。さらに、AlSiC、MoCu、WCu、CuMoCu、および/またはCu/アンバー(Invar)/Cuを含む金属体は、高出力用途に有利であることが分かった。
【0041】
金属合金は、冶金学的に相互に作用する2つ以上の合金元素からなる材料である。したがって、合金は、アルミニウムとさらなる合金元素、好ましくは元素周期表の主族IIまたはIVの元素、有利にはマグネシウム(Mg)またはケイ素(Si)、特にケイ素を含む。
【0042】
合金のアルミニウム含有量は、本発明によれば、各場合とも合金の全重量に基づいて、0.0重量%より大きく100.0重量%未満、好ましくは50.0重量%より大きく、特に好ましくは70.0重量%より大きく、有利には75.0%より大きく、より有利には80.0%より大きく、特に85.0%より大きい。
【0043】
本発明の特に好ましい変形例では、合金は、さらなる合金元素としてケイ素を含む。合金のケイ素含有量は、好ましくは各場合とも合金の全重量に基づいて、0.1重量%より大きく、より好ましくは4.0重量%より大きく、特に好ましくは5.0重量%より大きく、有利には7.5重量%より大きく、より好ましくは10.0重量%より大きく、特に11.5重量%より大きい。
【0044】
さらに、合金のケイ素含有量は、各場合とも合金の全重量に基づいて、好ましくは30.0重量%未満、より好ましくは25.0重量%未満、特に好ましくは20.0重量%未満、有利には15.0重量%未満、より有利には13.5重量%未満、特に12.5重量%未満である。
【0045】
とても有利な結果が、各場合とも合金の全重量に基づいて、アルミニウム88.0重量%、およびケイ素12.0重量%からなる合金を使用する場合に得られる。
【0046】
さらに、アルミニウム、ケイ素4.0重量%〜12.0重量%、および製造関連の不純物0.1重量%以下は別として、以下:
各場合とも合金の全重量に基づいて、
a)銅0.5重量%〜32.0重量%、
b)錫0.5重量%〜8.0重量%、
c)マグネシウム0.2重量%〜2.0重量%、
d)銀0.2重量%〜8.0重量%、
から選択される少なくとも2つのさらなる合金成分からなり、すべての合金成分が100.0重量%以内になる合金の使用も有利である。合金中に存在する不純物元素、例えば、鉄およびマグネシウムは、有利には各場合とも合金の全重量に基づいて、0.05重量%を超えるべきでない。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態では、さらなる合金成分が、各場合とも合金の全重量に基づいて、
a−1)銅23.0重量%〜32.0重量%、
d−1)銀0.1重量%〜8.0重量%
から選択される。
【0048】
別の好ましい4成分合金では、さらなる合金成分が、各場合とも合金の全重量に基づいて、
a−2)銅0.5重量%〜8.0重量%、
d−2)銀0.1重量%〜8.0重量%
から選択される。
【0049】
さらに好ましい合金では、さらなる合金成分が、各場合とも合金の全重量に基づいて、
a−3)銅0.5重量%〜8.0重量%、
b−3)錫0.2重量%〜8.0重量%、
c−3)マグネシウム0.2重量%〜2.0重量%
から選択される。
【0050】
さらなる合金成分が次の濃度:
各場合とも合金の全重量に基づいて、
b−4)錫0.5重量%〜8.0重量%、
c−4)マグネシウム0.1重量%〜2.0重量%
の錫およびマグネシウムである合金も特に適切である。
【0051】
アルミニウム、ケイ素4.0重量%〜12.0重量%、および製造関連の不純物0.1重量%以下は別として、次の合金成分:
a−5)銅0.5重量%〜8.0重量%、
d−5)銀1.0重量%〜8.0重量%
からなり、百分率は、各場合とも合金の全重量に基づくAl−Si合金が、特に、アルミニウム継ぎ目の硬質はんだ付けのための使用に適切であることが分かった。
【0052】
これらの合金の銀含有量を増加させると、さらに融点が低下し、接合される部品の濡れが向上することが分かった。
【0053】
アルミニウム継ぎ目の硬質はんだ付けのための使用に非常によく適しているAl−Si合金のさらなる群が、アルミニウム、ケイ素4.0重量%〜12重量%、および製造関連の不純物0.1重量%以下は別として、さらに次の合金成分:
銅2.0重量%〜8.0重量%、
錫0.2重量%〜3.0重量%、
マグネシウム0.2重量%〜2.0重量%
からなり、百分率は、各場合とも合金の全重量に基づくAl−Si合金であることが分かった。
【0054】
本発明のさらに特に好ましい変形例では、合金は、さらなる合金元素としてマグネシウムを含む。元素のマグネシウム含有量は、各場合とも合金の全重量に基づいて、好ましくは0.1重量%より大きく、より好ましくは0.5重量%より大きく、特に好ましくは1.0重量%より大きく、有利には1.5重量%より大きく、より有利には2.0重量%より大きく、特に2.5重量%より大きい。さらに、合金のマグネシウム含有量は、各場合とも合金の全重量に基づいて、好ましくは10.0重量%未満、より好ましくは9.0重量%未満、特に好ましくは8.0重量%未満、有利には7.0%未満、より有利には6.0%未満、特に5.5%未満である。
【0055】
合金中に存在する不純物元素、例えば、鉄およびマンガンは、有利には、各場合とも合金の全重量に基づいて0.05重量%を超えるべきでない。
【0056】
本発明の目的ために、セラミック基板、金属合金、および好ましくは金属体も大きな化学類似性を有することが特に有利である。この理由で、セラミック基板、金属合金、および好ましくは金属体も、有利には、少なくとも1つの共通の元素を有し、各部品中のその重量割合が、各場合とも部品の全重量に基づいて、有利には25.0重量%より大きく、好ましくは50.0重量%より大きい。共通の元素は、好ましくは、アルミニウムである。
【0057】
本発明による金属合金の液相温度は、450℃より高く、好ましくは500℃より高く、特に好ましくは550℃より高く、特に575℃より高い。さらに、金属合金の液相温度は、有利には650℃未満、好ましくは625℃未満、特に好ましくは600℃未満、とても好ましくは590℃未満、特に580℃未満である。
【0058】
本発明の目的ために、液相温度は、それより高くなると合金が完全に液体である温度である。
【0059】
金属合金の固相温度は、好ましくは450℃より高く、より好ましくは500℃より高く、特に好ましくは550℃より高く、特に575℃より高い。さらに、固相温度は、有利には650℃未満、好ましくは625℃未満、特に好ましくは600℃未満、とても好ましくは590℃未満、特に580℃未満である。
【0060】
本発明の目的のために、固相温度は、それより低くなると合金が完全に固体である温度である。
【0061】
本発明の特に好ましい実施形態では、金属合金の厚みは、50.0μmより大きく、好ましくは75.0μmより大きく、特に好ましくは100.0μmより大きく、とても好ましくは150.0μmより大きく、特に200.0μmより大きい。さらに、金属合金の厚みは、有利には1000.0μm未満、好ましくは750.0μm未満、特に好ましくは500.0μm未満、特に250.0μm未満である。
【0062】
セラミック基板の厚みは、いかなる制限も特に受けない。しかし、本発明による手順は、2000.0μm未満、好ましくは1500.0μm未満、特に好ましくは750.0μm未満、とても好ましくは500.0μm未満、特に400.0μm未満の厚みを有するセラミック基板に特に適切であることが分かった。さらに、セラミック基板の厚みは、好ましくは、50.0μmより大きく、より好ましくは75.0μmより大きく、特に好ましくは100.0μmより大きく、とても好ましくは200.0μmより大きく、特に300.0μmより大きい。
【0063】
金属合金、セラミック基板、メタライゼーション、および金属体の厚みに関する上記値は、有利にはセラミック基板/金属合金/金属体の接触面に対して垂直に決まる。
【0064】
金属合金の厚みが不均一な場合には、示された図は、最も小さな値(最小厚み)に関する。
【0065】
湾曲面の場合には、厚みは各場合において、セラミック基板/金属合金/金属体の接触面に対して法線の方向に決まり、ここでも示された図は、最も小さな値(最小厚み)に関する。
【0066】
セラミック基板、金属体、および金属合金の導電率は、原則として自由に選択することができる。しかし、金属体の導電率は、有利には10(Ω・cm)−1より大きく、好ましくは10(Ω・cm)−1より大きく、特に好ましくは10(Ω・cm)−1より大きく、特に10(Ω・cm)−1より大きい。
【0067】
金属合金の導電率は、有利には金属体の導電率未満である。金属合金の導電率は、好ましくは10(Ω・cm)−1未満、好ましくは10(Ω・cm)−1未満、特に好ましくは10(Ω・cm)−1未満、有利には10−1(Ω・cm)−1未満、とても好ましくは10−2(Ω・cm)−1未満、特に10−3(Ω・cm)−1未満である。さらに、金属合金の導電率は、好ましくは10−8(Ω・cm)−1より大きく、好ましくは10−7(Ω・cm)−1より大きく、特に好ましくは10−6(Ω・cm)−1より大きく、特に10−5(Ω・cm)−1より大きい。
【0068】
セラミック基板の導電率は、有利には金属合金の導電率未満である。それは、好ましくは10−6(Ω・cm)−1未満、より好ましくは10−8(Ω・cm)−1未満、特に好ましくは10−10(Ω・cm)−1未満、有利には10−12(Ω・cm)−1未満、特に10−14(Ω・cm)−1未満である。
【0069】
本発明の方法は、構造化または非構造化金属−セラミック基板、例えば、DAB基板またはDCB基板を金属体に接合することを可能にする。これらの金属体は、好ましくはアルミニウムからなり、電子部品中で熱を除去するために典型的に使用されるような冷却体の形状を有することができる。
【0070】
金属−セラミック基板と金属体を接合するために、金属−セラミック基板、金属合金、および金属体を含むアセンブリは、450℃より高い、好ましくは500℃より高い、特に好ましくは550℃より高い、特に575℃より高い温度に加熱される。ここで、アセンブリは、好ましくは900℃未満、より好ましくは800℃未満、特に好ましくは700℃未満、特に650℃未満の温度に加熱される。合金の液化後、これは、有利には金属−セラミック基板、金属合金、および金属体を含むアセンブリを、450℃未満、好ましくは300℃未満、特に好ましくは200℃未満、さらにより好ましくは100℃未満、特に50℃未満の温度に冷却することによって、再度凝固させられることが好ましい。
【0071】
金属−セラミック基板と金属体を接合するために、金属−セラミック基板、金属合金、および金属体を含むアセンブリは、有利には、炉、例えば、トンネル窯に導入され、好ましくは、接合層の融点より高く、存在するいかなるセラミック基板のメタライゼーションおよび金属体の融点より有利には低い温度に加熱される。セラミック基板と金属体の接合は、有利には不活性ガス雰囲気下で行われる。接合層の融解の結果、いかなるセラミック基板のメタライゼーションおよび金属体も、有利には合金で濡らされ、発生する拡散過程によって冷却後に粘着的に結合される。とても有用であると分かった手順は、金属−セラミック基板、金属合金、および金属体を含むアセンブリが、450℃未満、好ましくは300℃未満、特に好ましくは200℃未満、さらにより好ましくは100℃未満、特に50℃未満の初期温度から、450℃より高い、好ましくは500℃より高い、特に好ましくは550℃より高い、特に575℃より高い温度に連続的に加熱され、次いで、450℃未満、好ましくは300℃未満、特に好ましくは200℃未満、さらにより好ましくは100℃未満、特に50℃未満の温度に再度連続的に冷却される。
【0072】
セラミック基板と金属体を接合する代替方法としては、プラズマはんだ付け、レーザーはんだ付け、炎はんだ付け、および誘導はんだ付けが挙げられる。しかし、炉はんだ付けが、本発明の目的にとても役立つことが分かった。
【0073】
金属−セラミック基板と金属体との間の結合の形成は、この界面に導入され、好ましくは存在するいかなる基板のメタライゼーションおよび金属体よりも低い融点を有し、表面が接合プロセスの間に非常によく濡らされる金属合金の層によって達成される。この層は、接合パートナー(金属−セラミック基板および/または金属体)の少なくとも1つに堅固に結合される、または結合される金属−セラミック基板の面と金属体との間の揚げ板として置くことができる。
【0074】
横寸法が最適に制限された複数の構造化金属−セラミック基板の接合成形された金属体への適用、およびこれらの金属−セラミック基板間の適切な電気的接続の生成は、比較的高出力用でさえ回路全体を信頼できるものとする。
【0075】
金属−セラミック基板に電気部品、例えば、半導体チップ、サーミスターなどを設けること、および電気回路構成の製造は、好ましくは、金属−セラミック基板と金属体との間の結合を確立した後に、当業者に公知の適切な方法によって達成される。
【0076】
本発明によれば、結果として得られる金属−セラミックモジュールの表面は、好ましくはニッケル、金、銀、および/またはこれらの材料からなる層系で少なくとも部分的に被覆される。
【0077】
本発明によって得ることができる金属−セラミックモジュールは、特に、金属体とセラミック基板との間の非常に強い結合を特徴とする。セラミック基板と金属体との分離に必要な剥離力は、好ましくは3N/mmより大きい。
【0078】
本発明によって得ることができる金属−セラミックモジュールの好ましい適用分野としては、電子装置における回路キャリアとしての使用が挙げられ、金属−セラミックモジュールの金属体が好ましくは冷却体として機能する。
【0079】
本発明は、これが発明の概念の限定を構成することなく、多くの例によって以下に説明される。
【実施例】
【0080】
実施例1
両面が金属化され、一方の面が構造化されたDAB基板のAl−Si被覆アルミニウム板に対する接合
この実施例において、両面にAlメタライゼーション(厚み0.3mm)を備えた36mm×20mmの横方向サイズを有するDABセラミック基板(Alセラミック(厚み0.38mm)、DAB基板の上面は回路のために構造化されている)を、一方の面にAl−Siで被覆された0.2mmの厚みのアルミニウム板に接合する。
【0081】
接合プロセスのため、非構造化面をアルミニウム板のAl−Si被覆面上の定義された位置にして、接合される基板を置く。
【0082】
構造の断面を通る原理的なスケッチを、図Aに示し、ここで、金属化されたセラミック基板は、セラミック(2)および両面にメタライゼーション(1、3)を含み、接合層(4)が、アルミニウム板(5)に堅固に接合されている。
【0083】
このスタックを、複数の加熱帯を有するトンネル窯のコンベヤーベルト上に置き、一定の走行速度で炉内を移動させ、プロセスにおいて580℃〜650℃の範囲の温度に加熱する。加熱帯を通り抜けた後、アセンブリを室温(25℃)に冷却する。炉プロセスをN雰囲気で行う。
【0084】
接合プロセス後、セラミック基板およびアルミニウム板を互いに粘着的に結合させ、セラミック基板とアルミニウム板とを分離するための剥離力は3N/mmより大きい。
【0085】
実施例2
接着せずに置いたAl−Siプレートによるアルミニウム板への構造化DAB基板の接合
この実施例において、36mm×20mmの横方向サイズを有するDABセラミック基板(Alメタライゼーション(厚み0.3mm)を両面に備えたAlセラミック(厚み0.38mm))を、0.8mmの厚みのAl板に接合する(DAB基板の上面メタライゼーションは、回路のために構造化されている)。接合プロセス前に、接合される各基板用に、36mm×20mmのサイズおよび0.075mmの厚みを有するAl−Siプレートを、アルミニウム板の上面の定義された位置に置き、セラミック基板の非構造化下面がその上に位置する。
【0086】
構造の断面の原理的なスケッチを、図Bに示し、ここで、金属化されたセラミック基板は、セラミック(20)および両面のメタライゼーション(10、30)を含み、接合層(40)はプレートから構成され、アルミニウム板は参照数字(50)によって示される。
【0087】
このスタックを、複数の加熱帯を有するトンネル窯のコンベヤーベルト上に置き、一定の走行速度で580℃〜650℃の範囲の温度に加熱し、加熱帯を通り抜けた後、室温に再度冷却する。ここで、炉プロセスをN雰囲気で行う。
【0088】
接合プロセス後、セラミック基板およびアルミニウム板を、互いに粘着的に結合させる。
【0089】
実施例3
一方の面に金属化、構造化されたDCB基板のAl−Si被覆アルミニウム板への接合
この実施例において、36mm×20mmの横方向サイズを有するDCBセラミック基板(Alセラミック(厚み0.63mm)およびその上面のみに適用されたCuメタライゼーション(厚み0.3mm))を、一方の面がAl−Siで被覆された0.5mmの厚みのアルミニウム板にその被覆されていない下面で接合する。DCB基板の銅メタライゼーションは回路のために構造化されている。
【0090】
接合プロセスのため、接合されるセラミック基板を、メタライゼーションが、AlシートのAl−Si被覆面上に上方を向く状態で置く。構造の断面を通る原理的なスケッチを図Cに示し、ここで、金属化されたセラミック基板はメタライゼーション(100)およびセラミック(200)を含み、接合層(300)がアルミニウム板(400)に堅固に接合されている。
【0091】
継ぎ目が、基板のセラミックと、アルミニウム板(中間層を含む)との間に生成される。このスタックを、複数の加熱帯を有するトンネル窯のコンベヤーベルト上に置き、一定の走行速度で炉内を移動させ、プロセスで580℃〜650℃の範囲の温度に加熱し、加熱帯を通り抜けた後、室温に再度冷却する。ここで、炉プロセスをN雰囲気で行う。
【0092】
接合プロセス後、基板およびアルミニウム板を、基板とアルミニウム板とを分離するための剥離力が3N/mmより大きい状態で、互いに粘着的に結合させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有する金属−セラミック基板を、金属合金によって金属体に接合する方法であって、
(a)厚みが1mm未満である金属体を使用し、
(b)(b−1)アルミニウムを含み、(b−2)液相温度が450℃より高い金属合金を、金属−セラミック基板と金属体との間に配置し、
(c)ステップ(b)が提供する配置を450℃より高い温度に加熱することを特徴とする、方法。
【請求項2】
ケイ素をさらに含む合金を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マグネシウムをさらに含む合金を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
合金の全重量に対して50.0重量%より多いアルミニウムを含む合金を使用することを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
金属−セラミック基板が金属体とは反対方向に向く面上にメタライゼーションを含むように、金属−セラミック基板を金属体に接合することを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの表面上に銅メタライゼーションを有するセラミック基板を使用することを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの表面上にアルミニウムメタライゼーションを有するセラミック基板を使用することを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
結果として得られる金属−セラミックモジュールの表面を、ニッケル、金、銀、および/またはこれらの材料からなる層系で少なくとも部分的に被覆することを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
アルミニウムを含む金属体を使用することを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
酸化アルミニウム、窒化ケイ素、および/または窒化アルミニウムを含むセラミックを使用することを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
AlSiC、MoCu、WCu、CuMoCu、および/またはCu/アンバー/Cuを含む金属体を使用することを特徴とする、請求項1〜10の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
金属体に対向する金属−セラミック基板の面は、金属−セラミック基板に対向する金属体の面よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜11の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
金属−セラミック基板と、金属体と、セラミック基板を金属体に接合し、金属合金を含む継ぎ目と、を含むモジュールであって、
金属−セラミック基板は、少なくとも1つの面上にメタライゼーションを有し、
金属体の厚みは1mm未満であり、金属合金はアルミニウムを含み、その液相温度は450℃より高いことを特徴とする、モジュール。
【請求項14】
セラミック基板と金属体との分離に必要な剥離力は、3N/mmより大きいことを特徴とする、請求項13に記載のモジュール。
【請求項15】
電子装置における回路キャリアとしての請求項13または14に記載のモジュールの使用。



【図1】
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【公開番号】特開2012−250284(P2012−250284A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−114560(P2012−114560)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(508093610)イクシス セミコンダクター ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】IXYS Semiconductor GmbH
【Fターム(参考)】