金属−絶縁体転移素子基盤の発振回路、及びその発振回路の駆動方法
金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)素子を利用して、非常に高い発振周波数を簡単に発生することができるMIT素子基盤の発振回路及びその発振回路の駆動方法を提供する。該発振回路は、MIT薄膜と、MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが起きるMIT素子と、MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、MIT素子に最大通電電流を制限しつつ直流定電圧を印加する電源と、MIT素子に電磁波を照射する光源とを備え、光源を介した電磁波照射によって、MIT素子で発振特性を発生させることができる。また、該発振回路は、MIT薄膜と、MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが起きるMIT素子と、MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、MIT素子に短パルス電圧を印加する電源とを備え、短パルス電圧の印加によって、MIT素子で発振特性を発生させることも可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)素子に係り、特に、MIT素子を利用して発振現象を観測できる回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近まで、外部印加電圧によって抵抗の変化が発生する絶縁体についての研究が活発に行われてきた。特に、絶縁体から金属への急激な転移が発生する金属−絶縁体転移(MIT)物質についても、最近その原因の究明が実験的になされている(Hyun-Tak Kimら、New Journal of Physics,vol.6,p 52,2004)。MIT物質は、基板に形成された後で電極を形成し、2端子または3端子の素子に製作でき、そのように製作されたMIT素子は、様々な電子素子としての応用性を有する。例えば、MIT物質を電界効果トランジスタ(field effect transistor)として活用できるという特許が報告された(US 6624463 B2、米国特許登録、2003年9月23日、Hyun-Tak Kimら)。
【0003】
MIT素子は、MIT素子に印加される電圧が特定電圧(以下、「MIT発生電圧」とする)以上になれば、電流の不連続的な急増(または急激な抵抗減少)特性を示し、絶縁体状態から金属状態に転移が起きる特性を有する。そのようなMIT素子の電気的特性は、多様な応用性を有して様々な電気電子素子に利用することができるが、現在まで発振現象にMIT素子を利用した例はない。
【0004】
現在まで、電圧と電流との発振特性を記述する研究が次の通り報告されている。すなわち、III−V族半導体では、Gunn効果と呼ばれる電圧及び電流の発振現象がかなり以前から報告され、その発振現象は、電荷の移動度変化によって発生すると説明されている(J.B.Gunn,Solid State Communications,vol.1,p 88,1963)。最近、有機物(organic material)でもそのような発振現象が報告されたが、外部印加電圧によって、抵抗値が大きく変わる導電性有機塩物質と薄膜抵抗素子とを直接接触させて回路を構成し、回路に外部電圧を特定値以上印加すれば、回路に流れる通電電流に発振特性が生じるということが報告された(F.Sawanoら,Nature,vol.437,p523,2005)。そのような導電性有機塩での抵抗変化は、電荷秩序の変化のために起こると解釈されている。III−V族物質と有機物とでの発振は、外部電圧を印加する方式でのみ発生し、発振波形は、連続的に変わる正弦波の形態を示す。また、有機物を利用した発振素子で発生した発振周波数は非常に低い。
【0005】
一方、既存の発振素子、例えばサイリスタまたはオシレータを具現するために、増幅器と帰還回路(feedback loop)とを構成しなければならないが、かかる増幅器と帰還回路とを構成するためには、抵抗素子以外にトランジスタ、キャパシタ、インダクタなど、様々な電子素子が必須である。従って、既存の様々な電子素子を利用した発振素子は、小型化に限界があって製品の経済性面でも不利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、MIT素子を利用し、簡単でありつつも非常に高い発振周波数を発生しうるMIT素子基盤の発振回路及びその発振回路の駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は、MIT薄膜と、MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧によって不連続MITが起きるMIT素子と、MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、MIT素子に最大通電電流を制限しつつ直流定電圧を印加する電源と、MIT素子に電磁波を照射する光源とを備え、光源を介した電磁波照射によって、MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路を提供する。
【0008】
本発明において、光源は赤外線光源であり、MIT素子に照射される光源の赤外線強度が増加すれば、MIT素子のMIT発生電圧が低くなる。従って、MIT素子に一定の直流定電圧が印加された状態で赤外線の強度を調節し、MIT素子の不連続MITが発生または消滅するように調節でき、そのような不連続MITの発生または消滅を介して、発振回路で発振特性を生じさせられる。一方、発振回路の発振特性は、不連続MITが発生しうる強度以上の赤外線を照射する間に発生しうる。
【0009】
本発明はまた、上記の技術的課題を達成するために、MIT薄膜と、MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが起きるMIT素子と、MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、MIT素子に短パルス電圧を印加する電源とを備え、短パルス電圧の印加によって、MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路を提供する。
【0010】
本発明において、電源から印加する短パルス電圧のピーク値は、MIT発生電圧以上でなければならず、短パルス電圧のパルス幅は、MIT素子から発生するジュール熱を最小にする大きさを有することが望ましい。例えば、短パルス電圧のパルス幅は、100μs以下でありうる。一方、発振回路の発振特性は、短パルスのパルス幅内でのみ維持することができる。
【0011】
本発明においてMIT素子は、水平型または垂直型に製作され、MIT薄膜は、Al2O3、VO2、V2O3、ZrO2、ZnO、HfO2、CuO、Ta2O5、La2O3、Fe2O3、NiO及びMgOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、AlxTiyO、ZnxTiyO、ZrxTiyO、TaxTiyO、VxTiyO、LaxTiyO、BaxTiyO及びSrxTiyOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)、Si及びGeのうち、少なくとも一つが含まれた半導体物質とのうち、少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0012】
また、MIT薄膜は、低濃度の正孔が加えられたp型無機物半導体、p型無機物絶縁体、p型有機物半導体及びp型有機物絶縁体のうち、少なくとも一つを含むことができ、そのようなMIT薄膜物質は、酸素、炭素、Si、Ge、半導体化合物(III−V族、II−IV族)、遷移金属元素、希土類元素、及びランタン系元素のうちでも、少なくとも一つを含むことができる。ここで、加えられた正孔の濃度は、3×1016cm-3ほどである。一方、MIT薄膜は、n型半導体及び絶縁体を含むこともできる。
【0013】
本発明において、発振回路には、MIT素子に直列連結された抵抗素子が含まれるが、MIT素子の電圧−電流特性によって、抵抗素子の抵抗値が100Ω〜100kΩまで変化しうる。また、発振回路は、電源、MIT素子及び抵抗素子のうち、少なくとも一つに直列または並列に連結されるか、または直列及び並列に連結されたキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを含むことができる。そのような発振回路は、発振特性が要求される装置またはシステムに利用することができる。例えば、本装置は、MIT電池、MITセンサ、MIT 2端子スイッチング素子、MIT 3端子スイッチング素子(トランジスタ)、MITメモリ、MIT振動子、及びMIT RF素子のうち、少なくとも一つに利用することができる。さらに、例えば、本装置は、DC電圧及びDC電流を交流電圧及び交流電流に変換することができる。
【0014】
さらに本発明は、上記の技術的課題を達成するために、光源を介して赤外線を照射するか、または短パルス電圧を印加する電源を介して短パルス電圧を印加することによって、発振回路で発振特性を示させるMIT素子基盤の発振回路の駆動方法を提供する。
【0015】
本発明において、発振特性が赤外線照射を介してなされる場合、MIT素子に一定の直流定電圧が印加された状態で、MIT素子に照射される赤外線の強度を調節し、MIT素子の不連続MITが発生または消滅するように調節することによって、発振特性を生じさせることができる。
【0016】
また、発振特性が電源を介した短パルス電圧の印加を介してなされる場合、短パルス電圧のピーク値をMIT発生電圧以上として、短パルス電圧のパルス幅をMIT素子から発生するジュール熱が最小になる大きさに設定して印加することによって、発振回路内に発振特性を生じさせることができる。
【0017】
本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子への赤外線照射または短パルス電圧の印加を介して、簡単に赤外線強度または印加電圧の大きさを調節して不連続MIT現象を発生及び消滅させることによって、発振現象を生じさせられる。それによって、直流電圧及び電流を交流電圧及び電流に容易に変換させることができ、そのような機能は、オシレータ、サイリスタ、MIT太陽電池、MIT発光素子のような不連続MIT現象を応用する様々な素子に直接適用することができる。
【0018】
一方、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、抵抗素子一つだけ追加することによって発振特性を得ることができるという長所があるので、発振回路を非常に小型に簡単に製作でき、併せて発振周波数も数〜数百kHzの高い周波数を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路及びその発振回路の駆動方法において、該発振回路は、MIT素子及び抵抗素子を利用して簡単に発振回路を構成することができる。すなわち、既存のサイリスタやオシレータを具現するために、増幅器または帰還回路など、他の様々な電子素子が必要であるが、本発明のMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子に直列連結される抵抗素子を一つだけ追加することによって、発振回路を構成できる。
【0020】
また、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、赤外線の強度または印加電圧の大きさを調節することによって、発振現象を簡単に発生及び消滅させることができ、従来の有機物質を利用した発振素子に比べ、100〜10,000倍以上増加した発振周波数を発生させることができる。
【0021】
一方、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、直流電圧及び電流を交流電圧及び電流に変換することができる機能を行うために、そのような機能をサイリスタ、オシレータ、MIT太陽電池及びMIT発光素子など、MIT現象を応用する素子などに、直接有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
上記及びその他の本発明の特徴及び利点は添付の図面を参照してそれらの例示的な実施形態をより詳細に記載することによってより明らかになる。
【0023】
【図1】垂直型MIT素子を概略的に示す断面図である。
【図2A】水平型MIT素子を概略的に示す断面図である。
【図2B】水平型MIT素子を概略的に示す平面図である。
【図3】MIT素子の不連続MIT発生及び消滅による電圧−電流ヒステリシス曲線で、ヒステリシス幅が最大通電電流に比例する特性を示すグラフである。
【図4】MIT素子に赤外線を照射したとき、赤外線の強度によってMIT発生電圧が変化する特性を示すグラフである。
【図5】最大通電電流量を固定してMIT素子に赤外線を照射したとき、赤外線の強度によって、MIT素子の電圧−電流ヒステリシス曲線が移動する特性を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施例によるMIT素子での発振現象観測のための赤外線光源を利用する回路図である。
【図7】図6の回路図を介してMIT素子から発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【図8】図7の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【図9】本発明の他の実施例によるMIT素子での発振現象観測のために、短パルス電圧を利用する回路図である。
【図10】図9の回路図を介してMIT素子から発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【図11】図10の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施例について詳細に説明する。以下の説明で、ある構成要素が他の構成要素の上部に存在すると記述されるとき、それは、他の構成要素のすぐ上に存在することもあり、その間に第三の構成要素が介在することもある。また、図面で、各構成要素の厚さや大きさは、説明の便宜及び明確性のために誇張され、説明と関係のない部分は省略されている。図面上で同一符号は、同じ要素を指す。一方、使われる用語は、本発明を説明するための目的で使われただけであり、意味限定または特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使われたものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態にかかる、垂直型構造を有する金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)素子についての断面図である。
【0026】
図1を参照すれば、垂直型構造を有するMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200及びバッファ層200上に形成された第1電極薄膜410、MIT薄膜300及び第2電極薄膜420を備える。
【0027】
バッファ層200は、基板100と第1電極薄膜410との間で格子不整合を緩和させる役割を担う。基板100と第1電極薄膜410との間で格子不整合が非常に小さいときは、バッファ層200を用いずに、第1電極薄膜410を基板100上に形成できる。そのようなバッファ層200は、SiO2またはSi3N4膜を含んで形成することができる。
【0028】
MIT薄膜300は、低濃度の正孔が添加されたp型無機物半導体、p型無機物絶縁体、p型有機物半導体及びp型有機物絶縁体のうち、少なくとも一つを含むことができ、そのようなMIT薄膜物質は、酸素、炭素、Si、Ge、半導体化合物(III−V族、II−IV族)、遷移金属元素、希土類元素、及びランタン系元素のうちでも、少なくとも一つを含むことができる。例えば、MIT薄膜300は、GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)の化合物、Si,Geのような半導体物質から形成することができる。一方、MIT薄膜300は、n型であり、非常に大きい抵抗を有する半導体及び絶縁体を含んで形成することもできる。ここで、添加された正孔の濃度は、3×1016cm-3ほどである。
【0029】
具体的に、MIT薄膜300は、Al2O3、VO2、V2O3、ZrO2、ZnO、HfO2、CuO、Ta2O5、La2O3、Fe2O3、NiO及びMgOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、AlxTiyO、ZnxTiyO、ZrxTiyO、TaxTiyO、VxTiyO、LaxTiyO、BaxTiyO及びSrxTiyOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)、Si及びGeのうち、少なくとも一つが含まれた半導体物質とのうち、少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0030】
そのようなMIT薄膜300は、スパッタリング方式、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、EB蒸着(E−Beam evaporation)、熱蒸着(thermal evaporation)、ALE(Atomic Layer Epitaxy)、PLD(Pulsed Laser Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ゾル−ゲル法及びALD(Atomic Layer Deposition)などの方法のうち、少なくとも1つの方法を介して形成することができる。
【0031】
一方、電極薄膜400は、Al、Cu、Ni、W、Mo、Cr、Zn、Mg、Fe、Co、Sn、Pb、Au、Ag、Pt、Ti、Ta、TaN、TaW、WN、TiN、TiW、poly−Si及び酸化物電極のうち、少なくともいずれか一つを含んで形成することができる。ここで、酸化物電極は、IrO、RuO、InSnO(InO:Sn)またはZnOなどを挙げることができる。
【0032】
基板100の場合、Si、SiO2、GaAs、Al2O3、プラスチック、ガラス、V2O5、PrBa2Cu3O7、YBa2Cu3O7、MgO、SrTiO3、NbがドーピングされたSrTiO3及び絶縁薄膜上のシリコン(SOI)のうち、少なくとも1つの物質を含んで形成することができる。
【0033】
本発明に適用されるMIT素子は、印加される電圧によって電気的特性が急激に変わる。すなわち、MIT発生電圧未満でMIT素子は、絶縁体の特性を示し、MIT発生電圧以上で不連続MITが発生し、金属性物質の性質を帯びることになる。
【0034】
図2Aは、水平型構造を有するMIT素子に係る断面図である。
【0035】
図2Aを参照すれば、水平型構造を有するMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200、バッファ層200上面の一部に形成されたMIT薄膜300a、及びバッファ層200上部に、MIT薄膜300aの側面及び上面に互いに対向しつつ形成された第1の電極薄膜410a及び第2の電極薄膜420aを備える。すなわち、第1の電極薄膜410a及び第2の電極薄膜420aは、MIT薄膜300aを挟んで互いに分離されている。
【0036】
バッファ層200は、MIT薄膜300aと基板100との間の格子不整合を緩和させる。基板100とMIT薄膜300aとの間の格子不整合が非常に小さいときは、バッファ層200を用いずに、MIT薄膜300aを基板100上に形成することができる。
【0037】
バッファ層200、MIT薄膜300a、電極薄膜400a及び基板100が、図1の説明で述べた材質から形成することができることはいうまでもない。一方、垂直型及び水平型MIT素子は、μm単位の小型に作ることができ、経済的な側面でも非常に安価に製作可能である。
【0038】
図2Bは、図2Aで説明した水平型MIT素子に係る平面図である。図2Bを参照すれば、MIT素子のバッファ層200、MIT薄膜300a、第1の電極薄膜410a及び第2の電極薄膜420aが図示されている。前述の通り、MIT素子は、MIT発生電圧以上で不連続MITを起こすが、そのようなMIT発生電圧は、素子の構造によって変わりうる。例えば、2つの電極薄膜410a,420a間の距離Dを変化することによって、または、MIT薄膜300aの幅Wを変化することによって、MIT発生電圧を変化させることができる。
【0039】
図3は、MIT素子の不連続MIT発生及び消滅による電圧−電流ヒステリシス曲線でのヒステリシス幅が、最大通電電流に比例する特性を示すグラフである。図3から分かるように、MIT発生電圧に対して一定のヒステリシス幅を有した電圧(以下、「MIT消滅電圧」)でMITが消滅する。
【0040】
一方、そのようなMIT素子の電圧−電流ヒステリシス曲線の特性を利用して、発振現象を発生させることができ、MIT素子で発生する発振現象について図3を参照して簡単に説明する。ここで、MIT素子には、所定抵抗値を有した抵抗素子が直列連結されている。
【0041】
最初に、電源を介して印加される電圧のほとんどがMIT素子に印加されるが、これは、MIT素子が絶縁体としての特性を有するためである。MIT素子に印加される電圧がMIT発生電圧を超えれば、MIT素子で急激な電流の増加、すなわち不連続電流ジャンプが発生する。これは、MIT素子が金属の特性を有するようになり、急激に抵抗が低下するためである。また、印加された電圧はほとんど抵抗素子に印加され、MIT素子には、微小な電圧しか印加されない。
【0042】
従って、MIT素子に印加された電圧は、MIT消滅電圧より低い電圧になり、MIT素子は再び絶縁体として行動し、急激に抵抗が増加する。すなわち、MIT素子に流れる電流は急激に減少し、印加された電圧のほとんどは再びMIT素子に印加される。このように、MIT素子に流れる電流が急激に減少して、印加された電圧のほとんどがMIT素子に印加されれば、再びMIT素子に印加された電圧がMIT発生電圧を超え、再び急激な電流の増加が発生する。また、そのような急激な電流増加によって、再びMIT素子にかかる電圧がMIT消滅電圧以下になり、MIT素子の抵抗が増加して電流が急激に減少する。そのような過程の継続的な反復は、その結果、発振現象として現れることになる。
【0043】
図3で、通電電流の大きさによって、ヒステリシス幅が変わることが分かる。すなわち、大きい通電電流H1の場合に大きいヒステリシス幅を示し、小さい通電電流H3の場合に小さいヒステリシス幅を示すことを確認することができる。そのような通電電流の大きさによってヒステリシス幅に差が現れる理由は、ヒステリシス幅がMIT素子に流れる電流によって発生するジュール熱に比例して大きくなるためである。すなわち、通電電流が大きいほど、ジュール熱の発生量が多くなり、素子のMIT電圧−電流ヒステリシス幅も大きくなる。そのような電圧−電流のヒステリシス幅が大きくなれば、電流が急増した後にMIT素子に印加される電圧が、MIT消滅電圧より小さくならない確率が高まる。すなわち、通電電流が不連続MIT発生前の値に戻る確率が低くなり、それによって、MIT素子で発振現象を観測し難くなる。
【0044】
従って、円滑な発振現状の観測のためには、測定時に、MIT素子の電圧−電流曲線でのヒステリシス幅が大きくならないように維持することが重要である。例えば、MIT素子の発振条件を満たす適切な抵抗値を有する抵抗素子を連結し、MIT素子のMIT発生電圧及び電源の印加電圧を適切に調節することによって、MIT素子に印加された電圧に対する発振現象を観測できる。
【0045】
一方、全体の発振回路の側面から見れば、印加電圧は直流電圧であるので、抵抗素子に印加された電圧にも相補的な電圧発振効果が発生する。また、回路の通電電流が印加された電圧と同位相であるので、回路に流れる通電電流にも発振効果が現れる。そのような発振現象に係る具体的な発振回路及びその発振回路での発振現象は、図6及び図9についての説明部分でさらに詳細に説明する。
【0046】
図4は、本発明の実施形態にかかる、MIT素子に照射される赤外線の強度によって、MIT発生電圧が変化する特性を示すグラフであり、特に波長1.55μmである電磁波をMIT素子、すなわち、MIT薄膜に照射して電流−電圧特性を測定したグラフである。
【0047】
図4を参照すれば、加えられる電磁波の光パワーが増大するにつれて、MIT発生電圧が低くなることを確認することができる。すなわち、−30dBmの光パワーに比べて、20dBmの光パワーで電磁波を照射したとき、MIT発生電圧は、12Vほどから7Vほどに減少することを確認することができる。ここで、dBmは、パワー単位のようなエネルギー単位である。その結果、電磁波によって、MIT素子のMIT発生電圧を変化させることができる。また、そのような電磁波によって、MIT発生電圧が変化しうるという概念は、赤外線熱線のような輻射波によって転移電圧を変化しうるという概念にも解釈できる。
【0048】
図5は、最大通電電流量を固定して赤外線を照射したとき、赤外線の強度によって、電圧−電流ヒステリシス曲線が移動する特性を示すグラフであり、不連続MITが発生した後でも、回路に流れる電流量が大きくならないように、最大通電電流量を制限することによって、ジュール熱の発生を最小としつつ、MIT発振を起こすことができるように、MIT電圧−電流ヒステリシス幅を小さく維持したグラフである。
【0049】
例えば、ジュール熱の発生を小さくするために、最大通電電流量は、1mAに固定し、また、MIT発生及び消滅電圧を調節するために、1.55μm帯域の赤外線光源を使用する。一方、本グラフは、赤外線光の強度に変化を与えつつ、MIT素子の電圧−電流ヒステリシス曲線を観測するが、グラフを介して確認することができるように、赤外線光の強度によってMIT発生及び消滅電圧が移動し、それによって、電圧−電流ヒステリシス曲線が移動する特性を観測できる。これは、図4で説明した通り、赤外線光の強度によってMIT発生電圧が移動する特性によって、当然のこととして予想される結果である。
【0050】
従って、光源の赤外線光の強度を調節することによって、MIT素子のMIT発生及び消滅電圧を調節でき、結果的に、赤外線光源をMIT素子の発振現状の駆動スイッチとして使用できることが分かる。ここで、左側のヒステリシス曲線H6が赤外線光の強度を強く照射した場合のグラフであり、右側のヒステリシス曲線H4は、赤外線光を弱く、または全く照射していない場合のヒステリシス曲線である。すなわち、赤外線光の強度が増加するほど、ヒステリシス曲線が左に移動することを確認することができる。
【0051】
以下では、本発明の実施例を介して、具体的な発振回路、及びそれに係る発振現象を説明する。以下に記述される2つの方法の実施例は本発明の例示に属し、その範囲が限定されることを意味するものではない。従って、実施例で提示される図面に示される電圧、電流、抵抗、時間、周波数、光源の波長、光源の強度などは、本発明で提示するMIT素子基盤の発振回路での発振現象を説明するための例示のうちの一つであり、その範囲を限定するものではない。
【0052】
本発明の実施例では、図2Aで説明した基板上に形成されたMIT薄膜、及びMIT薄膜両端に形成された2個の電極薄膜を備えた水平型構造のMIT 2端子素子を利用する。一方、ここで使われたMIT薄膜は、VO2から形成され、幅Wは10μmほどであり、電極薄膜間の距離Dは30μmほどである。
【0053】
図6は、本発明の一実施例によるMIT素子での発振現象観測のための赤外線光源を利用する回路図である。
【0054】
図6を参照すれば、本実施例のMIT素子基盤の発振回路は、前述の水平型構造のMIT素子800、MIT素子800に直列に連結される抵抗素子700、MIT素子800に最大通電電流を制限しつつ、直流定電圧を印加する電源600、及びMIT素子800に電磁波Aを照射する光源900を備える。一方、図示されていないが、本実施例のMIT発振回路は、必要によって、電源600、MIT素子800または抵抗素子700などに直列、並列または直並列に連結されるキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを備えることも可能である。
【0055】
本実施例の発振回路に発振現象を起こす方法は、次の通りである。
【0056】
まず、電源600を介して、最大通電電流量を1mAに制限した状態で、MITが発生しないほどの直流定電圧を印加する。図5のヒステリシス曲線に適用する場合、電源600を介して、19Vほどの電圧を回路に印加する。すなわち、赤外線光が照射されていない状態で、MIT発生電圧より若干低い電圧を回路に印加する。ここで、電流制限の意味は、通電電流量が1mA以上になる場合、電源600が回路に印加する電圧を、通電電流量が1mA以下になるまで減らすことを意味する。
【0057】
次に、MIT素子800、すなわちMIT薄膜に光源900を適切な強度に調節し、赤外線光を集光して照射する。やはり、図5のヒステリシス曲線に適用する場合、真ん中のヒステリシス曲線H5になるほどの強度で赤外線光をMIT素子800に照射する。このように、赤外線光をMIT素子800に照射すれば、MIT素子800のMIT発生電圧がすでに印加された直流電圧、すなわち、19Vより低くなりつつ、MIT素子800に不連続MITが発生することになる。
【0058】
その後、急激な電流の増加によって、MIT素子800に印加される電圧が急激に小さくなる。しかしながら、制限された最大通電電流量によって、素子のMIT電圧−電流ヒステリシス幅が2V以内に小さく維持され、これはすなわち、通電電流をMIT発生以前の値に減少させる。すなわち、MIT素子800の抵抗が急増し、その後急増したMIT素子800の抵抗のために、再び素子に印加された電圧が急増しつつ、素子に不連続MITが再び発生して電流が急激に増加することになる。その後にも、上記の過程が同一に反復して進められることによって、MIT素子800に印加される電圧に発振現象が観測される。
【0059】
図7は、図6の回路図において、MIT素子で発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【0060】
図7を参照すれば、MIT素子に印加された電圧に対する発振現象は、0.14msほどの周期、すなわち、7.3kHzほどの周波数を有した発振波形を示していることが分かる。そのようなMIT素子の発振現象は、光源900を介した赤外線光が照射される間だけ維持され、集光された赤外線光を遮断するようになれば、MIT素子の発振現象は、消滅することになる。
【0061】
一方、MIT素子の保護及び適切な周波数の発振波形を得るために、MIT素子に連結される抵抗素子の抵抗値は、MIT素子の電圧−電流特性によって、数百Ωから数十kΩまで変化させることができる。
【0062】
図8は、図7の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【0063】
図8を参照すれば、図7で概略的に計算した通り、図6の発振回路に赤外線光を照射してMIT発振を観測した場合、MIT素子に印加された電圧の発振波形の基本周波数が7.3kHzほどであることを確認することができる。
【0064】
図9は、本発明の他の実施例によるMIT素子での発振現象観測のための短パルス電圧を利用する回路図である。
【0065】
図9を参照すれば、本実施例のMIT素子基盤の発振回路は、水平型構造のMIT素子800、MIT素子に短パルス電圧を印加する電源600a、及びMIT素子800に直列連結された抵抗素子700を備える。本実施例のMIT発振回路も、必要によって、電源600a、MIT素子800または抵抗素子700などに直列、並列または直並列に連結されるキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを含むことができることはいうまでもない。
【0066】
本実施例の発振回路は、通電電流が流れる時間を短くし、発生するジュール熱を最小化させるために、電気短パルス電圧を印加できる電源600aを利用する。このように電気短パルス電圧を利用する場合には、MIT素子800に急激なMITが発生した後にも、MIT素子800に大きい電流が流れる時間を、数十μs以下の短時間に制限でき、それによって、MIT素子に発生するジュール熱を減少させ、MIT素子の電圧−電流ヒステリシス幅を小さくし、MIT素子の発振現象を容易に観測できるようにすることができる。このときに印加される短パルス電圧のピーク電圧値は、MIT発生電圧以上でなければならない。
【0067】
本実施例の発振回路で発振現象を起こす方法は、次の通りである。
【0068】
まず、MIT素子800に、電源600aを介して、約20μsほどのパルス幅を有する短パルス電圧を印加する。そのような短パルス電圧が印加されれば、パルス電圧のピーク電圧値がMIT発生電圧を超える瞬間から、MIT素子800の抵抗減少によって電流が急増し、それによって、印加された電圧のほとんどが抵抗素子700にかかり、MIT素子800にかかる電圧は、MIT消滅電圧より低くなる。従って、再びMIT素子800の抵抗が急激に増加して、通電電流は、MIT発生以前の値に戻る。一方、このように、通電電流がMIT発生以前の値に戻る理由は、数十μs以下の短い電流通電時間によって、ジュール熱の発生が最小になり、それによって、素子のMIT電圧−電流ヒステリシス幅が小さく維持されるためである。
【0069】
次に、急増したMIT素子800の抵抗のために、MIT素子800に印加された電圧は急増しつつMIT発生電圧を超えるようになり、再び不連続MITが発生して電流が急激に増加する。その後、そのような過程が同一に反復され、その結果、MIT素子800の電圧に対する発振現象として現れることになる。
【0070】
図10は、図9の回路図を介してMIT素子から発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【0071】
図10を参照すれば、MIT素子に印加された電圧に対する発振現象は、2.05μsほどの周期、すなわち、488kHzほどの周波数を有した発振波形を示していることが分かる。そのようなMIT素子の発振現象は、電源600aを介して印加された短パルス電圧のパルス幅、すなわち、20μs間隔でのみ発生し、パルス電圧が消えれば、MIT発振現象もまた消滅する。また、パルス電圧の大きさをMIT消滅電圧以下に減少させれば、発振現象を消滅させることができる。
【0072】
一方、前述のように、MIT素子の保護、及び適切な周波数の発振波形を得るために、MIT素子に連結される抵抗素子の抵抗値は、MIT素子の電圧−電流特性によって、数百Ωから数十kΩまで変化させることができることはいうまでもない。
【0073】
図11は、図10の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【0074】
図11を参照すれば、図10で概略的に計算した通り、図9の発振回路に、20μsほどのパルス幅を有する短パルス電圧を印加してMIT発振を観測した場合、MIT素子に印加された電圧の発振波形の基本周波数が、488kHzほどであることを確認することができる。
【0075】
従来技術に言及された有機物を利用した発振と比較してみるとき、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子及び抵抗素子を利用して簡単に発振回路を構成でき、MIT素子、すなわちMIT薄膜に直流定電圧を印加した後、電磁波光源を照射するか、または電気短パルス電圧を印加する方法を用いて、容易に発振特性を誘導することができる。また、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、発振波形が連続的な変化ではないランプ(rump)型に近い電圧増加形態、すなわち、発振波形が不連続に近い電圧降下を示すという側面で、有機物質を利用した発振と大きな差異点を有する。さらに、発振周波数の側面から見た発明によるMIT素子基盤の発振回路は、有機物質を使用した発振素子の場合に比べ、発振周波数を100〜10,000倍以上増加させることができるという長所を有する。例えば、本実施例で発振周波数は、十〜数百kHzまで発生することを確認することができる。
【0076】
一方、本発明によるMIT素子基盤の発振回路での発振現象は、赤外線の強度または印加電圧の大きさのみを簡単に調節することによって、発振現象を発生及び消滅させることができるために、直流電圧及び電流を交流電圧及び電流に変換することができる機能を有し、そのような機能はサイリスタ、オシレータ、MIT電池、MIT発光素子、MITセンサ、MIT 2端子スイッチング素子、MIT 3端子スイッチング素子(トランジスタ)、MITメモリ、MIT振動子、及びMIT RF素子のような電子素子に有用に応用することができる。
【0077】
上記のように、本発明及び発振回路の駆動方法にかかるMIT素子基盤の発振回路において、発振回路はMIT素子及び抵抗素子を用いて簡単に構成することができる。すなわち、従来のサイリスタまたはオシレータを具現するために、様々な電気素子、例えば増幅器、帰還回路などが要求される。しかしながら、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子と連続的に接続された抵抗素子を加えることだけによって構成することができる。
【0078】
また、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、赤外線光の強度または適用する電圧の振幅を調節することによって、発振現象を簡単に発生したり消滅したりすることができ、有機物を用いる従来の発振素子の発振周波数よりも大きい100〜10000以上に増加した発振周波数を生成することができる。
【0079】
一方、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、直流電圧及び直流電流を交流電圧及び交流電流に変換する機能を有するため、この機能はMIT現象が用いられる電気素子(例えばサイリスタ、オシレータ、MIT太陽電池、MIT発光素子)に効率的に用いられることができる。
【0080】
本発明は、それらの例示的な実施形態を参照して特に示され、説明された一方で、以下の特許請求の範囲によって定められるように形式及び細部で様々な変更が本発明の概念及び範囲から逸脱せずになされることができることを当業者は理解されよう。
【0081】
本発明は、金属−絶縁体転移(MIT)に関し、より詳細には発振現象をMIT素子を用いて観察することができる回路に関する。本発明及び発振回路の駆動方法にかかるMIT素子基盤の発振回路において、発振回路はMIT素子及び抵抗素子を用いて簡単に構成することができる。すなわち、従来のサイリスタまたはオシレータを具現するために、様々な電気素子、例えば増幅器、帰還回路などが要求される。しかしながら、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子と連続的に接続された抵抗素子を加えることだけによって構成することができる。
【0082】
以上、本発明について、図面に図示された実施例を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することが可能であろう。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)素子に係り、特に、MIT素子を利用して発振現象を観測できる回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近まで、外部印加電圧によって抵抗の変化が発生する絶縁体についての研究が活発に行われてきた。特に、絶縁体から金属への急激な転移が発生する金属−絶縁体転移(MIT)物質についても、最近その原因の究明が実験的になされている(Hyun-Tak Kimら、New Journal of Physics,vol.6,p 52,2004)。MIT物質は、基板に形成された後で電極を形成し、2端子または3端子の素子に製作でき、そのように製作されたMIT素子は、様々な電子素子としての応用性を有する。例えば、MIT物質を電界効果トランジスタ(field effect transistor)として活用できるという特許が報告された(US 6624463 B2、米国特許登録、2003年9月23日、Hyun-Tak Kimら)。
【0003】
MIT素子は、MIT素子に印加される電圧が特定電圧(以下、「MIT発生電圧」とする)以上になれば、電流の不連続的な急増(または急激な抵抗減少)特性を示し、絶縁体状態から金属状態に転移が起きる特性を有する。そのようなMIT素子の電気的特性は、多様な応用性を有して様々な電気電子素子に利用することができるが、現在まで発振現象にMIT素子を利用した例はない。
【0004】
現在まで、電圧と電流との発振特性を記述する研究が次の通り報告されている。すなわち、III−V族半導体では、Gunn効果と呼ばれる電圧及び電流の発振現象がかなり以前から報告され、その発振現象は、電荷の移動度変化によって発生すると説明されている(J.B.Gunn,Solid State Communications,vol.1,p 88,1963)。最近、有機物(organic material)でもそのような発振現象が報告されたが、外部印加電圧によって、抵抗値が大きく変わる導電性有機塩物質と薄膜抵抗素子とを直接接触させて回路を構成し、回路に外部電圧を特定値以上印加すれば、回路に流れる通電電流に発振特性が生じるということが報告された(F.Sawanoら,Nature,vol.437,p523,2005)。そのような導電性有機塩での抵抗変化は、電荷秩序の変化のために起こると解釈されている。III−V族物質と有機物とでの発振は、外部電圧を印加する方式でのみ発生し、発振波形は、連続的に変わる正弦波の形態を示す。また、有機物を利用した発振素子で発生した発振周波数は非常に低い。
【0005】
一方、既存の発振素子、例えばサイリスタまたはオシレータを具現するために、増幅器と帰還回路(feedback loop)とを構成しなければならないが、かかる増幅器と帰還回路とを構成するためには、抵抗素子以外にトランジスタ、キャパシタ、インダクタなど、様々な電子素子が必須である。従って、既存の様々な電子素子を利用した発振素子は、小型化に限界があって製品の経済性面でも不利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、MIT素子を利用し、簡単でありつつも非常に高い発振周波数を発生しうるMIT素子基盤の発振回路及びその発振回路の駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は、MIT薄膜と、MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧によって不連続MITが起きるMIT素子と、MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、MIT素子に最大通電電流を制限しつつ直流定電圧を印加する電源と、MIT素子に電磁波を照射する光源とを備え、光源を介した電磁波照射によって、MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路を提供する。
【0008】
本発明において、光源は赤外線光源であり、MIT素子に照射される光源の赤外線強度が増加すれば、MIT素子のMIT発生電圧が低くなる。従って、MIT素子に一定の直流定電圧が印加された状態で赤外線の強度を調節し、MIT素子の不連続MITが発生または消滅するように調節でき、そのような不連続MITの発生または消滅を介して、発振回路で発振特性を生じさせられる。一方、発振回路の発振特性は、不連続MITが発生しうる強度以上の赤外線を照射する間に発生しうる。
【0009】
本発明はまた、上記の技術的課題を達成するために、MIT薄膜と、MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが起きるMIT素子と、MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、MIT素子に短パルス電圧を印加する電源とを備え、短パルス電圧の印加によって、MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路を提供する。
【0010】
本発明において、電源から印加する短パルス電圧のピーク値は、MIT発生電圧以上でなければならず、短パルス電圧のパルス幅は、MIT素子から発生するジュール熱を最小にする大きさを有することが望ましい。例えば、短パルス電圧のパルス幅は、100μs以下でありうる。一方、発振回路の発振特性は、短パルスのパルス幅内でのみ維持することができる。
【0011】
本発明においてMIT素子は、水平型または垂直型に製作され、MIT薄膜は、Al2O3、VO2、V2O3、ZrO2、ZnO、HfO2、CuO、Ta2O5、La2O3、Fe2O3、NiO及びMgOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、AlxTiyO、ZnxTiyO、ZrxTiyO、TaxTiyO、VxTiyO、LaxTiyO、BaxTiyO及びSrxTiyOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)、Si及びGeのうち、少なくとも一つが含まれた半導体物質とのうち、少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0012】
また、MIT薄膜は、低濃度の正孔が加えられたp型無機物半導体、p型無機物絶縁体、p型有機物半導体及びp型有機物絶縁体のうち、少なくとも一つを含むことができ、そのようなMIT薄膜物質は、酸素、炭素、Si、Ge、半導体化合物(III−V族、II−IV族)、遷移金属元素、希土類元素、及びランタン系元素のうちでも、少なくとも一つを含むことができる。ここで、加えられた正孔の濃度は、3×1016cm-3ほどである。一方、MIT薄膜は、n型半導体及び絶縁体を含むこともできる。
【0013】
本発明において、発振回路には、MIT素子に直列連結された抵抗素子が含まれるが、MIT素子の電圧−電流特性によって、抵抗素子の抵抗値が100Ω〜100kΩまで変化しうる。また、発振回路は、電源、MIT素子及び抵抗素子のうち、少なくとも一つに直列または並列に連結されるか、または直列及び並列に連結されたキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを含むことができる。そのような発振回路は、発振特性が要求される装置またはシステムに利用することができる。例えば、本装置は、MIT電池、MITセンサ、MIT 2端子スイッチング素子、MIT 3端子スイッチング素子(トランジスタ)、MITメモリ、MIT振動子、及びMIT RF素子のうち、少なくとも一つに利用することができる。さらに、例えば、本装置は、DC電圧及びDC電流を交流電圧及び交流電流に変換することができる。
【0014】
さらに本発明は、上記の技術的課題を達成するために、光源を介して赤外線を照射するか、または短パルス電圧を印加する電源を介して短パルス電圧を印加することによって、発振回路で発振特性を示させるMIT素子基盤の発振回路の駆動方法を提供する。
【0015】
本発明において、発振特性が赤外線照射を介してなされる場合、MIT素子に一定の直流定電圧が印加された状態で、MIT素子に照射される赤外線の強度を調節し、MIT素子の不連続MITが発生または消滅するように調節することによって、発振特性を生じさせることができる。
【0016】
また、発振特性が電源を介した短パルス電圧の印加を介してなされる場合、短パルス電圧のピーク値をMIT発生電圧以上として、短パルス電圧のパルス幅をMIT素子から発生するジュール熱が最小になる大きさに設定して印加することによって、発振回路内に発振特性を生じさせることができる。
【0017】
本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子への赤外線照射または短パルス電圧の印加を介して、簡単に赤外線強度または印加電圧の大きさを調節して不連続MIT現象を発生及び消滅させることによって、発振現象を生じさせられる。それによって、直流電圧及び電流を交流電圧及び電流に容易に変換させることができ、そのような機能は、オシレータ、サイリスタ、MIT太陽電池、MIT発光素子のような不連続MIT現象を応用する様々な素子に直接適用することができる。
【0018】
一方、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、抵抗素子一つだけ追加することによって発振特性を得ることができるという長所があるので、発振回路を非常に小型に簡単に製作でき、併せて発振周波数も数〜数百kHzの高い周波数を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路及びその発振回路の駆動方法において、該発振回路は、MIT素子及び抵抗素子を利用して簡単に発振回路を構成することができる。すなわち、既存のサイリスタやオシレータを具現するために、増幅器または帰還回路など、他の様々な電子素子が必要であるが、本発明のMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子に直列連結される抵抗素子を一つだけ追加することによって、発振回路を構成できる。
【0020】
また、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、赤外線の強度または印加電圧の大きさを調節することによって、発振現象を簡単に発生及び消滅させることができ、従来の有機物質を利用した発振素子に比べ、100〜10,000倍以上増加した発振周波数を発生させることができる。
【0021】
一方、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、直流電圧及び電流を交流電圧及び電流に変換することができる機能を行うために、そのような機能をサイリスタ、オシレータ、MIT太陽電池及びMIT発光素子など、MIT現象を応用する素子などに、直接有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
上記及びその他の本発明の特徴及び利点は添付の図面を参照してそれらの例示的な実施形態をより詳細に記載することによってより明らかになる。
【0023】
【図1】垂直型MIT素子を概略的に示す断面図である。
【図2A】水平型MIT素子を概略的に示す断面図である。
【図2B】水平型MIT素子を概略的に示す平面図である。
【図3】MIT素子の不連続MIT発生及び消滅による電圧−電流ヒステリシス曲線で、ヒステリシス幅が最大通電電流に比例する特性を示すグラフである。
【図4】MIT素子に赤外線を照射したとき、赤外線の強度によってMIT発生電圧が変化する特性を示すグラフである。
【図5】最大通電電流量を固定してMIT素子に赤外線を照射したとき、赤外線の強度によって、MIT素子の電圧−電流ヒステリシス曲線が移動する特性を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施例によるMIT素子での発振現象観測のための赤外線光源を利用する回路図である。
【図7】図6の回路図を介してMIT素子から発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【図8】図7の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【図9】本発明の他の実施例によるMIT素子での発振現象観測のために、短パルス電圧を利用する回路図である。
【図10】図9の回路図を介してMIT素子から発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【図11】図10の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施例について詳細に説明する。以下の説明で、ある構成要素が他の構成要素の上部に存在すると記述されるとき、それは、他の構成要素のすぐ上に存在することもあり、その間に第三の構成要素が介在することもある。また、図面で、各構成要素の厚さや大きさは、説明の便宜及び明確性のために誇張され、説明と関係のない部分は省略されている。図面上で同一符号は、同じ要素を指す。一方、使われる用語は、本発明を説明するための目的で使われただけであり、意味限定または特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使われたものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態にかかる、垂直型構造を有する金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)素子についての断面図である。
【0026】
図1を参照すれば、垂直型構造を有するMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200及びバッファ層200上に形成された第1電極薄膜410、MIT薄膜300及び第2電極薄膜420を備える。
【0027】
バッファ層200は、基板100と第1電極薄膜410との間で格子不整合を緩和させる役割を担う。基板100と第1電極薄膜410との間で格子不整合が非常に小さいときは、バッファ層200を用いずに、第1電極薄膜410を基板100上に形成できる。そのようなバッファ層200は、SiO2またはSi3N4膜を含んで形成することができる。
【0028】
MIT薄膜300は、低濃度の正孔が添加されたp型無機物半導体、p型無機物絶縁体、p型有機物半導体及びp型有機物絶縁体のうち、少なくとも一つを含むことができ、そのようなMIT薄膜物質は、酸素、炭素、Si、Ge、半導体化合物(III−V族、II−IV族)、遷移金属元素、希土類元素、及びランタン系元素のうちでも、少なくとも一つを含むことができる。例えば、MIT薄膜300は、GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)の化合物、Si,Geのような半導体物質から形成することができる。一方、MIT薄膜300は、n型であり、非常に大きい抵抗を有する半導体及び絶縁体を含んで形成することもできる。ここで、添加された正孔の濃度は、3×1016cm-3ほどである。
【0029】
具体的に、MIT薄膜300は、Al2O3、VO2、V2O3、ZrO2、ZnO、HfO2、CuO、Ta2O5、La2O3、Fe2O3、NiO及びMgOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、AlxTiyO、ZnxTiyO、ZrxTiyO、TaxTiyO、VxTiyO、LaxTiyO、BaxTiyO及びSrxTiyOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)、Si及びGeのうち、少なくとも一つが含まれた半導体物質とのうち、少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0030】
そのようなMIT薄膜300は、スパッタリング方式、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、EB蒸着(E−Beam evaporation)、熱蒸着(thermal evaporation)、ALE(Atomic Layer Epitaxy)、PLD(Pulsed Laser Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ゾル−ゲル法及びALD(Atomic Layer Deposition)などの方法のうち、少なくとも1つの方法を介して形成することができる。
【0031】
一方、電極薄膜400は、Al、Cu、Ni、W、Mo、Cr、Zn、Mg、Fe、Co、Sn、Pb、Au、Ag、Pt、Ti、Ta、TaN、TaW、WN、TiN、TiW、poly−Si及び酸化物電極のうち、少なくともいずれか一つを含んで形成することができる。ここで、酸化物電極は、IrO、RuO、InSnO(InO:Sn)またはZnOなどを挙げることができる。
【0032】
基板100の場合、Si、SiO2、GaAs、Al2O3、プラスチック、ガラス、V2O5、PrBa2Cu3O7、YBa2Cu3O7、MgO、SrTiO3、NbがドーピングされたSrTiO3及び絶縁薄膜上のシリコン(SOI)のうち、少なくとも1つの物質を含んで形成することができる。
【0033】
本発明に適用されるMIT素子は、印加される電圧によって電気的特性が急激に変わる。すなわち、MIT発生電圧未満でMIT素子は、絶縁体の特性を示し、MIT発生電圧以上で不連続MITが発生し、金属性物質の性質を帯びることになる。
【0034】
図2Aは、水平型構造を有するMIT素子に係る断面図である。
【0035】
図2Aを参照すれば、水平型構造を有するMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200、バッファ層200上面の一部に形成されたMIT薄膜300a、及びバッファ層200上部に、MIT薄膜300aの側面及び上面に互いに対向しつつ形成された第1の電極薄膜410a及び第2の電極薄膜420aを備える。すなわち、第1の電極薄膜410a及び第2の電極薄膜420aは、MIT薄膜300aを挟んで互いに分離されている。
【0036】
バッファ層200は、MIT薄膜300aと基板100との間の格子不整合を緩和させる。基板100とMIT薄膜300aとの間の格子不整合が非常に小さいときは、バッファ層200を用いずに、MIT薄膜300aを基板100上に形成することができる。
【0037】
バッファ層200、MIT薄膜300a、電極薄膜400a及び基板100が、図1の説明で述べた材質から形成することができることはいうまでもない。一方、垂直型及び水平型MIT素子は、μm単位の小型に作ることができ、経済的な側面でも非常に安価に製作可能である。
【0038】
図2Bは、図2Aで説明した水平型MIT素子に係る平面図である。図2Bを参照すれば、MIT素子のバッファ層200、MIT薄膜300a、第1の電極薄膜410a及び第2の電極薄膜420aが図示されている。前述の通り、MIT素子は、MIT発生電圧以上で不連続MITを起こすが、そのようなMIT発生電圧は、素子の構造によって変わりうる。例えば、2つの電極薄膜410a,420a間の距離Dを変化することによって、または、MIT薄膜300aの幅Wを変化することによって、MIT発生電圧を変化させることができる。
【0039】
図3は、MIT素子の不連続MIT発生及び消滅による電圧−電流ヒステリシス曲線でのヒステリシス幅が、最大通電電流に比例する特性を示すグラフである。図3から分かるように、MIT発生電圧に対して一定のヒステリシス幅を有した電圧(以下、「MIT消滅電圧」)でMITが消滅する。
【0040】
一方、そのようなMIT素子の電圧−電流ヒステリシス曲線の特性を利用して、発振現象を発生させることができ、MIT素子で発生する発振現象について図3を参照して簡単に説明する。ここで、MIT素子には、所定抵抗値を有した抵抗素子が直列連結されている。
【0041】
最初に、電源を介して印加される電圧のほとんどがMIT素子に印加されるが、これは、MIT素子が絶縁体としての特性を有するためである。MIT素子に印加される電圧がMIT発生電圧を超えれば、MIT素子で急激な電流の増加、すなわち不連続電流ジャンプが発生する。これは、MIT素子が金属の特性を有するようになり、急激に抵抗が低下するためである。また、印加された電圧はほとんど抵抗素子に印加され、MIT素子には、微小な電圧しか印加されない。
【0042】
従って、MIT素子に印加された電圧は、MIT消滅電圧より低い電圧になり、MIT素子は再び絶縁体として行動し、急激に抵抗が増加する。すなわち、MIT素子に流れる電流は急激に減少し、印加された電圧のほとんどは再びMIT素子に印加される。このように、MIT素子に流れる電流が急激に減少して、印加された電圧のほとんどがMIT素子に印加されれば、再びMIT素子に印加された電圧がMIT発生電圧を超え、再び急激な電流の増加が発生する。また、そのような急激な電流増加によって、再びMIT素子にかかる電圧がMIT消滅電圧以下になり、MIT素子の抵抗が増加して電流が急激に減少する。そのような過程の継続的な反復は、その結果、発振現象として現れることになる。
【0043】
図3で、通電電流の大きさによって、ヒステリシス幅が変わることが分かる。すなわち、大きい通電電流H1の場合に大きいヒステリシス幅を示し、小さい通電電流H3の場合に小さいヒステリシス幅を示すことを確認することができる。そのような通電電流の大きさによってヒステリシス幅に差が現れる理由は、ヒステリシス幅がMIT素子に流れる電流によって発生するジュール熱に比例して大きくなるためである。すなわち、通電電流が大きいほど、ジュール熱の発生量が多くなり、素子のMIT電圧−電流ヒステリシス幅も大きくなる。そのような電圧−電流のヒステリシス幅が大きくなれば、電流が急増した後にMIT素子に印加される電圧が、MIT消滅電圧より小さくならない確率が高まる。すなわち、通電電流が不連続MIT発生前の値に戻る確率が低くなり、それによって、MIT素子で発振現象を観測し難くなる。
【0044】
従って、円滑な発振現状の観測のためには、測定時に、MIT素子の電圧−電流曲線でのヒステリシス幅が大きくならないように維持することが重要である。例えば、MIT素子の発振条件を満たす適切な抵抗値を有する抵抗素子を連結し、MIT素子のMIT発生電圧及び電源の印加電圧を適切に調節することによって、MIT素子に印加された電圧に対する発振現象を観測できる。
【0045】
一方、全体の発振回路の側面から見れば、印加電圧は直流電圧であるので、抵抗素子に印加された電圧にも相補的な電圧発振効果が発生する。また、回路の通電電流が印加された電圧と同位相であるので、回路に流れる通電電流にも発振効果が現れる。そのような発振現象に係る具体的な発振回路及びその発振回路での発振現象は、図6及び図9についての説明部分でさらに詳細に説明する。
【0046】
図4は、本発明の実施形態にかかる、MIT素子に照射される赤外線の強度によって、MIT発生電圧が変化する特性を示すグラフであり、特に波長1.55μmである電磁波をMIT素子、すなわち、MIT薄膜に照射して電流−電圧特性を測定したグラフである。
【0047】
図4を参照すれば、加えられる電磁波の光パワーが増大するにつれて、MIT発生電圧が低くなることを確認することができる。すなわち、−30dBmの光パワーに比べて、20dBmの光パワーで電磁波を照射したとき、MIT発生電圧は、12Vほどから7Vほどに減少することを確認することができる。ここで、dBmは、パワー単位のようなエネルギー単位である。その結果、電磁波によって、MIT素子のMIT発生電圧を変化させることができる。また、そのような電磁波によって、MIT発生電圧が変化しうるという概念は、赤外線熱線のような輻射波によって転移電圧を変化しうるという概念にも解釈できる。
【0048】
図5は、最大通電電流量を固定して赤外線を照射したとき、赤外線の強度によって、電圧−電流ヒステリシス曲線が移動する特性を示すグラフであり、不連続MITが発生した後でも、回路に流れる電流量が大きくならないように、最大通電電流量を制限することによって、ジュール熱の発生を最小としつつ、MIT発振を起こすことができるように、MIT電圧−電流ヒステリシス幅を小さく維持したグラフである。
【0049】
例えば、ジュール熱の発生を小さくするために、最大通電電流量は、1mAに固定し、また、MIT発生及び消滅電圧を調節するために、1.55μm帯域の赤外線光源を使用する。一方、本グラフは、赤外線光の強度に変化を与えつつ、MIT素子の電圧−電流ヒステリシス曲線を観測するが、グラフを介して確認することができるように、赤外線光の強度によってMIT発生及び消滅電圧が移動し、それによって、電圧−電流ヒステリシス曲線が移動する特性を観測できる。これは、図4で説明した通り、赤外線光の強度によってMIT発生電圧が移動する特性によって、当然のこととして予想される結果である。
【0050】
従って、光源の赤外線光の強度を調節することによって、MIT素子のMIT発生及び消滅電圧を調節でき、結果的に、赤外線光源をMIT素子の発振現状の駆動スイッチとして使用できることが分かる。ここで、左側のヒステリシス曲線H6が赤外線光の強度を強く照射した場合のグラフであり、右側のヒステリシス曲線H4は、赤外線光を弱く、または全く照射していない場合のヒステリシス曲線である。すなわち、赤外線光の強度が増加するほど、ヒステリシス曲線が左に移動することを確認することができる。
【0051】
以下では、本発明の実施例を介して、具体的な発振回路、及びそれに係る発振現象を説明する。以下に記述される2つの方法の実施例は本発明の例示に属し、その範囲が限定されることを意味するものではない。従って、実施例で提示される図面に示される電圧、電流、抵抗、時間、周波数、光源の波長、光源の強度などは、本発明で提示するMIT素子基盤の発振回路での発振現象を説明するための例示のうちの一つであり、その範囲を限定するものではない。
【0052】
本発明の実施例では、図2Aで説明した基板上に形成されたMIT薄膜、及びMIT薄膜両端に形成された2個の電極薄膜を備えた水平型構造のMIT 2端子素子を利用する。一方、ここで使われたMIT薄膜は、VO2から形成され、幅Wは10μmほどであり、電極薄膜間の距離Dは30μmほどである。
【0053】
図6は、本発明の一実施例によるMIT素子での発振現象観測のための赤外線光源を利用する回路図である。
【0054】
図6を参照すれば、本実施例のMIT素子基盤の発振回路は、前述の水平型構造のMIT素子800、MIT素子800に直列に連結される抵抗素子700、MIT素子800に最大通電電流を制限しつつ、直流定電圧を印加する電源600、及びMIT素子800に電磁波Aを照射する光源900を備える。一方、図示されていないが、本実施例のMIT発振回路は、必要によって、電源600、MIT素子800または抵抗素子700などに直列、並列または直並列に連結されるキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを備えることも可能である。
【0055】
本実施例の発振回路に発振現象を起こす方法は、次の通りである。
【0056】
まず、電源600を介して、最大通電電流量を1mAに制限した状態で、MITが発生しないほどの直流定電圧を印加する。図5のヒステリシス曲線に適用する場合、電源600を介して、19Vほどの電圧を回路に印加する。すなわち、赤外線光が照射されていない状態で、MIT発生電圧より若干低い電圧を回路に印加する。ここで、電流制限の意味は、通電電流量が1mA以上になる場合、電源600が回路に印加する電圧を、通電電流量が1mA以下になるまで減らすことを意味する。
【0057】
次に、MIT素子800、すなわちMIT薄膜に光源900を適切な強度に調節し、赤外線光を集光して照射する。やはり、図5のヒステリシス曲線に適用する場合、真ん中のヒステリシス曲線H5になるほどの強度で赤外線光をMIT素子800に照射する。このように、赤外線光をMIT素子800に照射すれば、MIT素子800のMIT発生電圧がすでに印加された直流電圧、すなわち、19Vより低くなりつつ、MIT素子800に不連続MITが発生することになる。
【0058】
その後、急激な電流の増加によって、MIT素子800に印加される電圧が急激に小さくなる。しかしながら、制限された最大通電電流量によって、素子のMIT電圧−電流ヒステリシス幅が2V以内に小さく維持され、これはすなわち、通電電流をMIT発生以前の値に減少させる。すなわち、MIT素子800の抵抗が急増し、その後急増したMIT素子800の抵抗のために、再び素子に印加された電圧が急増しつつ、素子に不連続MITが再び発生して電流が急激に増加することになる。その後にも、上記の過程が同一に反復して進められることによって、MIT素子800に印加される電圧に発振現象が観測される。
【0059】
図7は、図6の回路図において、MIT素子で発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【0060】
図7を参照すれば、MIT素子に印加された電圧に対する発振現象は、0.14msほどの周期、すなわち、7.3kHzほどの周波数を有した発振波形を示していることが分かる。そのようなMIT素子の発振現象は、光源900を介した赤外線光が照射される間だけ維持され、集光された赤外線光を遮断するようになれば、MIT素子の発振現象は、消滅することになる。
【0061】
一方、MIT素子の保護及び適切な周波数の発振波形を得るために、MIT素子に連結される抵抗素子の抵抗値は、MIT素子の電圧−電流特性によって、数百Ωから数十kΩまで変化させることができる。
【0062】
図8は、図7の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【0063】
図8を参照すれば、図7で概略的に計算した通り、図6の発振回路に赤外線光を照射してMIT発振を観測した場合、MIT素子に印加された電圧の発振波形の基本周波数が7.3kHzほどであることを確認することができる。
【0064】
図9は、本発明の他の実施例によるMIT素子での発振現象観測のための短パルス電圧を利用する回路図である。
【0065】
図9を参照すれば、本実施例のMIT素子基盤の発振回路は、水平型構造のMIT素子800、MIT素子に短パルス電圧を印加する電源600a、及びMIT素子800に直列連結された抵抗素子700を備える。本実施例のMIT発振回路も、必要によって、電源600a、MIT素子800または抵抗素子700などに直列、並列または直並列に連結されるキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを含むことができることはいうまでもない。
【0066】
本実施例の発振回路は、通電電流が流れる時間を短くし、発生するジュール熱を最小化させるために、電気短パルス電圧を印加できる電源600aを利用する。このように電気短パルス電圧を利用する場合には、MIT素子800に急激なMITが発生した後にも、MIT素子800に大きい電流が流れる時間を、数十μs以下の短時間に制限でき、それによって、MIT素子に発生するジュール熱を減少させ、MIT素子の電圧−電流ヒステリシス幅を小さくし、MIT素子の発振現象を容易に観測できるようにすることができる。このときに印加される短パルス電圧のピーク電圧値は、MIT発生電圧以上でなければならない。
【0067】
本実施例の発振回路で発振現象を起こす方法は、次の通りである。
【0068】
まず、MIT素子800に、電源600aを介して、約20μsほどのパルス幅を有する短パルス電圧を印加する。そのような短パルス電圧が印加されれば、パルス電圧のピーク電圧値がMIT発生電圧を超える瞬間から、MIT素子800の抵抗減少によって電流が急増し、それによって、印加された電圧のほとんどが抵抗素子700にかかり、MIT素子800にかかる電圧は、MIT消滅電圧より低くなる。従って、再びMIT素子800の抵抗が急激に増加して、通電電流は、MIT発生以前の値に戻る。一方、このように、通電電流がMIT発生以前の値に戻る理由は、数十μs以下の短い電流通電時間によって、ジュール熱の発生が最小になり、それによって、素子のMIT電圧−電流ヒステリシス幅が小さく維持されるためである。
【0069】
次に、急増したMIT素子800の抵抗のために、MIT素子800に印加された電圧は急増しつつMIT発生電圧を超えるようになり、再び不連続MITが発生して電流が急激に増加する。その後、そのような過程が同一に反復され、その結果、MIT素子800の電圧に対する発振現象として現れることになる。
【0070】
図10は、図9の回路図を介してMIT素子から発生した電圧発振現象を測定したデータに係るグラフである。
【0071】
図10を参照すれば、MIT素子に印加された電圧に対する発振現象は、2.05μsほどの周期、すなわち、488kHzほどの周波数を有した発振波形を示していることが分かる。そのようなMIT素子の発振現象は、電源600aを介して印加された短パルス電圧のパルス幅、すなわち、20μs間隔でのみ発生し、パルス電圧が消えれば、MIT発振現象もまた消滅する。また、パルス電圧の大きさをMIT消滅電圧以下に減少させれば、発振現象を消滅させることができる。
【0072】
一方、前述のように、MIT素子の保護、及び適切な周波数の発振波形を得るために、MIT素子に連結される抵抗素子の抵抗値は、MIT素子の電圧−電流特性によって、数百Ωから数十kΩまで変化させることができることはいうまでもない。
【0073】
図11は、図10の電圧発振波形を高速フーリエ変換させた結果を示すグラフである。
【0074】
図11を参照すれば、図10で概略的に計算した通り、図9の発振回路に、20μsほどのパルス幅を有する短パルス電圧を印加してMIT発振を観測した場合、MIT素子に印加された電圧の発振波形の基本周波数が、488kHzほどであることを確認することができる。
【0075】
従来技術に言及された有機物を利用した発振と比較してみるとき、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子及び抵抗素子を利用して簡単に発振回路を構成でき、MIT素子、すなわちMIT薄膜に直流定電圧を印加した後、電磁波光源を照射するか、または電気短パルス電圧を印加する方法を用いて、容易に発振特性を誘導することができる。また、本発明によるMIT素子基盤の発振回路は、発振波形が連続的な変化ではないランプ(rump)型に近い電圧増加形態、すなわち、発振波形が不連続に近い電圧降下を示すという側面で、有機物質を利用した発振と大きな差異点を有する。さらに、発振周波数の側面から見た発明によるMIT素子基盤の発振回路は、有機物質を使用した発振素子の場合に比べ、発振周波数を100〜10,000倍以上増加させることができるという長所を有する。例えば、本実施例で発振周波数は、十〜数百kHzまで発生することを確認することができる。
【0076】
一方、本発明によるMIT素子基盤の発振回路での発振現象は、赤外線の強度または印加電圧の大きさのみを簡単に調節することによって、発振現象を発生及び消滅させることができるために、直流電圧及び電流を交流電圧及び電流に変換することができる機能を有し、そのような機能はサイリスタ、オシレータ、MIT電池、MIT発光素子、MITセンサ、MIT 2端子スイッチング素子、MIT 3端子スイッチング素子(トランジスタ)、MITメモリ、MIT振動子、及びMIT RF素子のような電子素子に有用に応用することができる。
【0077】
上記のように、本発明及び発振回路の駆動方法にかかるMIT素子基盤の発振回路において、発振回路はMIT素子及び抵抗素子を用いて簡単に構成することができる。すなわち、従来のサイリスタまたはオシレータを具現するために、様々な電気素子、例えば増幅器、帰還回路などが要求される。しかしながら、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子と連続的に接続された抵抗素子を加えることだけによって構成することができる。
【0078】
また、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、赤外線光の強度または適用する電圧の振幅を調節することによって、発振現象を簡単に発生したり消滅したりすることができ、有機物を用いる従来の発振素子の発振周波数よりも大きい100〜10000以上に増加した発振周波数を生成することができる。
【0079】
一方、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、直流電圧及び直流電流を交流電圧及び交流電流に変換する機能を有するため、この機能はMIT現象が用いられる電気素子(例えばサイリスタ、オシレータ、MIT太陽電池、MIT発光素子)に効率的に用いられることができる。
【0080】
本発明は、それらの例示的な実施形態を参照して特に示され、説明された一方で、以下の特許請求の範囲によって定められるように形式及び細部で様々な変更が本発明の概念及び範囲から逸脱せずになされることができることを当業者は理解されよう。
【0081】
本発明は、金属−絶縁体転移(MIT)に関し、より詳細には発振現象をMIT素子を用いて観察することができる回路に関する。本発明及び発振回路の駆動方法にかかるMIT素子基盤の発振回路において、発振回路はMIT素子及び抵抗素子を用いて簡単に構成することができる。すなわち、従来のサイリスタまたはオシレータを具現するために、様々な電気素子、例えば増幅器、帰還回路などが要求される。しかしながら、本発明にかかるMIT素子基盤の発振回路は、MIT素子と連続的に接続された抵抗素子を加えることだけによって構成することができる。
【0082】
以上、本発明について、図面に図示された実施例を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することが可能であろう。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属−絶縁体転移(metal-insulator transition:MIT)薄膜と、前記MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが発生するMIT素子と、
前記MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、
前記MIT素子に最大通電電流を制限しつつ直流定電圧を印加する電源と、
前記MIT素子に電磁波を照射する光源とを備え、
前記光源を介した電磁波照射によって、前記MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路。
【請求項2】
前記光源は赤外線光源であり、
前記MIT素子に照射される前記光源の赤外線強度が増加すれば、前記MIT素子の前記MIT発生電圧が低くなることを特徴とする請求項1に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項3】
前記赤外線強度を調節し、前記MIT素子の前記不連続MITが発生または消滅するように調節することを特徴とする請求項2に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項4】
前記不連続MITの発生または消滅を介して、前記発振特性が生じることを特徴とする請求項3に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項5】
前記発振回路の発振特性は、前記不連続MITが発生する強度以上の赤外線を照射する間に発生することを特徴とする請求項3に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項6】
MIT薄膜と、前記MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが発生するMIT素子と、
前記MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、
前記MIT素子に短パルス電圧を印加する電源とを備え、
前記短パルス電圧の印加によって、前記MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路。
【請求項7】
前記電源から印加する短パルス電圧のピーク値は、前記MIT発生電圧以上であることを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項8】
前記短パルス電圧のパルス幅は、前記MIT素子から発生するジュール熱を最小にする大きさを有することを特徴とする請求項7に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項9】
前記発振回路の発振特性は、前記短パルス電圧のパルス幅内で維持されることを特徴とする請求項7に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項10】
前記MIT素子は、
基板と、
前記基板上に形成された第1の電極薄膜と、
前記第1電極薄膜の上部に形成され、低濃度の正孔を含むMIT薄膜と、
前記MIT薄膜の上部に形成された第2の電極薄膜とを備える垂直型構造を有することを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項11】
前記MIT素子は、
基板と、
前記基板上部の一部に形成された低濃度の正孔を含むMIT薄膜と、
前記基板上部に、MIT薄膜の一側面及び上面の一部に形成された第1の電極薄膜と、
前記基板上部に、MIT薄膜の前記一側面に対向する他側面及び上面の一部に形成された第2の電極薄膜とを備える水平型構造を有することを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項12】
前記MIT薄膜は、
Al2O3、VO2、V2O3、ZrO2、ZnO、HfO2、CuO、Ta2O5、La2O3、Fe2O3、NiO及びMgOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、
AlxTiyO、ZnxTiyO、ZrxTiyO、TaxTiyO、VxTiyO、LaxTiyO、BaxTiyO及びSrxTiyOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、
GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)、Si及びGeのうち、少なくとも一つが含まれた半導体物質とのうちから、少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項13】
前記MIT薄膜は、
低濃度の正孔が添加されたp型無機物半導体、p型無機物絶縁体、p型有機物半導体及びp型有機物絶縁体のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項14】
前記MIT薄膜は、
酸素、炭素、Si、Ge、半導体化合物(III−V族、II−IV族)、遷移金属元素、希土類元素、及びランタン系元素のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項13に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項15】
前記MIT薄膜は、
n型半導体及び絶縁体を含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項16】
前記電極薄膜は、Al、Cu、Ni、W、Mo、Cr、Zn、Mg、Fe、Co、Sn、Pb、Au、Ag、Pt、Ti、Ta、TaN、TaW、WN、TiN、TiW、poly−Si、IrO、RuO、InSnO(InO:Sn)及びZnOのうち、少なくとも一つを含む物質から形成されたことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項17】
前記抵抗素子は、前記MIT素子の電圧−電流特性によって、抵抗値が100Ω〜100kΩまですることを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項18】
前記発振回路は、前記電源、MIT素子及び抵抗素子のうち、少なくとも一つに直列または並列に連結されるか、または直列及び並列に連結されたキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項19】
前記発振回路は、発振特性が要求される装置またはシステムに利用されることを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項20】
前記装置は、直流電圧及び直流電流を交流電圧及び交流電流に変換させる装置であることを特徴とする請求項19に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項21】
前記装置やシステムは、MIT電池、MIT発光素子、MITセンサ、MIT 2端子スイッチング素子、MIT 3端子スイッチング素子(トランジスタ)、MITメモリ、MIT振動子、及びMIT RF素子のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項19に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項22】
前記光源を介して赤外線を照射することによって、前記発振回路で発振特性を駆動することを特徴とする請求項1に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項23】
前記発振特性は、前記赤外線照射を介してなされ、
前記MIT素子に照射される前記赤外線の強度を調節し、前記MIT素子の前記不連続MITが発生または消滅するように調節することによって、前記発振特性を生じさせることを特徴とする請求項22に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項24】
前記短パルス電圧を印加する電源を介して短パルス電圧を印加することによって、前記発振回路で発振特性を駆動することを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項25】
前記発振特性は、前記電源を介した短パルス電圧の印加を介してなされ、
前記短パルス電圧のピーク値を前記MIT発生電圧以上として、
前記短パルス電圧のパルス幅を前記MIT素子から発生するジュール熱が最小になる大きさに設定して印加することによって、前記発振特性を生じさせることを特徴とする請求項24に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項1】
金属−絶縁体転移(metal-insulator transition:MIT)薄膜と、前記MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが発生するMIT素子と、
前記MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、
前記MIT素子に最大通電電流を制限しつつ直流定電圧を印加する電源と、
前記MIT素子に電磁波を照射する光源とを備え、
前記光源を介した電磁波照射によって、前記MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路。
【請求項2】
前記光源は赤外線光源であり、
前記MIT素子に照射される前記光源の赤外線強度が増加すれば、前記MIT素子の前記MIT発生電圧が低くなることを特徴とする請求項1に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項3】
前記赤外線強度を調節し、前記MIT素子の前記不連続MITが発生または消滅するように調節することを特徴とする請求項2に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項4】
前記不連続MITの発生または消滅を介して、前記発振特性が生じることを特徴とする請求項3に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項5】
前記発振回路の発振特性は、前記不連続MITが発生する強度以上の赤外線を照射する間に発生することを特徴とする請求項3に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項6】
MIT薄膜と、前記MIT薄膜に接続される電極薄膜とを具備し、MIT発生電圧で不連続MITが発生するMIT素子と、
前記MIT素子に直列に連結される抵抗素子と、
前記MIT素子に短パルス電圧を印加する電源とを備え、
前記短パルス電圧の印加によって、前記MIT素子で発振特性が生じるMIT素子基盤の発振回路。
【請求項7】
前記電源から印加する短パルス電圧のピーク値は、前記MIT発生電圧以上であることを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項8】
前記短パルス電圧のパルス幅は、前記MIT素子から発生するジュール熱を最小にする大きさを有することを特徴とする請求項7に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項9】
前記発振回路の発振特性は、前記短パルス電圧のパルス幅内で維持されることを特徴とする請求項7に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項10】
前記MIT素子は、
基板と、
前記基板上に形成された第1の電極薄膜と、
前記第1電極薄膜の上部に形成され、低濃度の正孔を含むMIT薄膜と、
前記MIT薄膜の上部に形成された第2の電極薄膜とを備える垂直型構造を有することを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項11】
前記MIT素子は、
基板と、
前記基板上部の一部に形成された低濃度の正孔を含むMIT薄膜と、
前記基板上部に、MIT薄膜の一側面及び上面の一部に形成された第1の電極薄膜と、
前記基板上部に、MIT薄膜の前記一側面に対向する他側面及び上面の一部に形成された第2の電極薄膜とを備える水平型構造を有することを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項12】
前記MIT薄膜は、
Al2O3、VO2、V2O3、ZrO2、ZnO、HfO2、CuO、Ta2O5、La2O3、Fe2O3、NiO及びMgOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、
AlxTiyO、ZnxTiyO、ZrxTiyO、TaxTiyO、VxTiyO、LaxTiyO、BaxTiyO及びSrxTiyOのうち、少なくとも一つが含まれた酸化膜物質と、
GaAS、GaSb、InP、InAs、GST(GeSbTe)、Si及びGeのうち、少なくとも一つが含まれた半導体物質とのうちから、少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項13】
前記MIT薄膜は、
低濃度の正孔が添加されたp型無機物半導体、p型無機物絶縁体、p型有機物半導体及びp型有機物絶縁体のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項14】
前記MIT薄膜は、
酸素、炭素、Si、Ge、半導体化合物(III−V族、II−IV族)、遷移金属元素、希土類元素、及びランタン系元素のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項13に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項15】
前記MIT薄膜は、
n型半導体及び絶縁体を含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項16】
前記電極薄膜は、Al、Cu、Ni、W、Mo、Cr、Zn、Mg、Fe、Co、Sn、Pb、Au、Ag、Pt、Ti、Ta、TaN、TaW、WN、TiN、TiW、poly−Si、IrO、RuO、InSnO(InO:Sn)及びZnOのうち、少なくとも一つを含む物質から形成されたことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項17】
前記抵抗素子は、前記MIT素子の電圧−電流特性によって、抵抗値が100Ω〜100kΩまですることを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項18】
前記発振回路は、前記電源、MIT素子及び抵抗素子のうち、少なくとも一つに直列または並列に連結されるか、または直列及び並列に連結されたキャパシタ及びインダクタのうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項19】
前記発振回路は、発振特性が要求される装置またはシステムに利用されることを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項20】
前記装置は、直流電圧及び直流電流を交流電圧及び交流電流に変換させる装置であることを特徴とする請求項19に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項21】
前記装置やシステムは、MIT電池、MIT発光素子、MITセンサ、MIT 2端子スイッチング素子、MIT 3端子スイッチング素子(トランジスタ)、MITメモリ、MIT振動子、及びMIT RF素子のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項19に記載のMIT素子基盤の発振回路。
【請求項22】
前記光源を介して赤外線を照射することによって、前記発振回路で発振特性を駆動することを特徴とする請求項1に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項23】
前記発振特性は、前記赤外線照射を介してなされ、
前記MIT素子に照射される前記赤外線の強度を調節し、前記MIT素子の前記不連続MITが発生または消滅するように調節することによって、前記発振特性を生じさせることを特徴とする請求項22に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項24】
前記短パルス電圧を印加する電源を介して短パルス電圧を印加することによって、前記発振回路で発振特性を駆動することを特徴とする請求項6に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【請求項25】
前記発振特性は、前記電源を介した短パルス電圧の印加を介してなされ、
前記短パルス電圧のピーク値を前記MIT発生電圧以上として、
前記短パルス電圧のパルス幅を前記MIT素子から発生するジュール熱が最小になる大きさに設定して印加することによって、前記発振特性を生じさせることを特徴とする請求項24に記載のMIT素子基盤の発振回路の駆動方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−510746(P2010−510746A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538310(P2009−538310)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005476
【国際公開番号】WO2008/062956
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005476
【国際公開番号】WO2008/062956
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】
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