説明

金属ナノ粒子組成物

【課題】基材の単純な摩擦によって金属ナノ粒子が基材から脱落することのない、基材への接着性が改良された導電性の金属ナノ粒子組成物を提供することである。
【解決手段】金属ナノ粒子組成物は、金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有し、接着促進化合物は、少なくとも1つの有機官能性部分を有する加水分解シランである。また、基材上に導電性形体を形成する方法は、金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する液体組成物を基材上に成膜して成膜形体を形成し、基材上の成膜形体を加熱処理して導電性形体を形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子を含有する組成物、特に、金属ナノ粒子および溶媒(分散媒)を含有する液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体成膜技術を用いた電子回路要素の製造は、このような技術が電子応用、たとえば、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED)、RFIDタグ、光電池等にとって主流である常套的なアモルファスシリコン技術に代えて、潜在的に低コストを与えるので、非常に興味深い。しかし、実際には、導電性、プロセスおよびコスト要求に見合う機能電極や画素パッド、導電性トレース、ライン、トラックを成膜・パターニングすることは、大きな挑戦であった。
【0003】
溶液処理可能な導電体は、このような電子応用での使用にとって非常に興味深い。金属ナノ粒子ベースのインクは、有望な種類の印刷電子工学用材料である。しかし、大抵の金属ナノ粒子、たとえば、銀および金といった金属ナノ粒子は、溶液中での適度な溶解性と安定性を確保するのに分子量の大きい安定剤を要する。これらの分子量の大きい安定剤は、安定剤を焼失させるために、金属ナノ粒子の焼成温度を200℃以上に必然的に上げることになり、この温度は、溶液が塗布される最も低コストのプラスチック基材、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)には適さず、基材にダメージを与えることが懸念される。
【0004】
さらに、現行の金属ナノ粒子組成物は、基材に十分に接着しない。このような金属ナノ粒子組成物を用いて印刷された形体は、形体表面を単純に摩擦する・形体表面に接触することによって必然的にダメージを受ける。したがって、金属ナノ粒子の劣悪な接着は、組成物の用途を制限する。たとえば、このような組成物は、印刷アンテナ等の用途には用いることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開2003/0160234号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2003/0160230号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開2003/0136958号明細書
【特許文献4】米国特許第6107117号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開2007/0099357号明細書
【特許文献6】米国特許第7270694号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、たとえば、基材の単純な摩擦によって金属ナノ粒子が基材から脱落することのない、基材への接着性が改良された導電性の金属ナノ粒子組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記および他の問題に取り組むものであり、実施の形態では、金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する組成物に関する。
【0008】
実施の形態では、金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する組成物を記載し、接着促進化合物は、少なくとも1つの有機官能性部分、たとえば、エポキシ基やアミノ基等の有機官能基を有する加水分解シランである。
【0009】
さらなる実施の形態では、基材上に導電性形体を形成する方法を記載し、この方法は、金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する液体組成物を提供し、液体組成物を基材上に成膜して成膜形体を形成し、基材上の成膜形体を約100℃〜約200℃の温度に加熱して基材上に導電性形体を形成することを包含する。
【0010】
すなわち、基材上に導電性形体を形成する方法は、金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する液体組成物を基材上に塗布して成膜し、基材上の成膜形体を加熱処理することで導電性形体を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
金属ナノ粒子を含有し基材表面への接着性を改良した組成物をここで記載する。組成物は金属ナノ粒子溶液から成り、この溶液は任意に、安定剤、接着促進化合物および溶媒を含有してもよい。組成物を基材上に印刷した後、基材を焼成して基材上に導電性金属形体を形成する。
【0012】
「金属ナノ粒子」で使用される「ナノ」という用語は、たとえば、約1,000nm以下、たとえば、約0.5nm〜約1,000nm、たとえば、約1nm〜約500nm、約1nm〜約100nm、約1nm〜約25nmまたは約1〜約10nmの粒子サイズを言う。粒子サイズは、TEM(透過型電子顕微鏡)によって、または他の好適な方法によって決定される金属粒子の平均直径を言う。
【0013】
金属ナノ粒子溶液は、液体溶液中に金属ナノ粒子を含むものである。実施の形態では、金属ナノ粒子は、(i)1以上の金属または(ii)1以上の金属複合材から成る。好適な金属としては、たとえば、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、およびNi、特に遷移金属、たとえば、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Niおよびその混合物が挙げられる。銀(Ag)を好適な金属として使用してもよい。好適な金属複合材としては、Au−Ag、Ag−Cu、Ag−Ni、Au−Cu、Au−Ni、Au−Ag−Cu、およびAu−Ag−Pdが挙げられる。また、金属複合材は、非金属、たとえば、Si、CおよびGeを含んでもよい。金属複合材の各種成分は、たとえば、約0.01重量%〜約99.9重量%、特に約10重量%〜約90重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0014】
実施の形態では、金属複合材は、銀と少なくとも1つ以上の他の金属から成り、たとえば、銀をナノ粒子の少なくとも約20重量%、特にナノ粒子の約50重量%以上含有する金属合金である。
【0015】
特に記載しない限り、溶液中の金属ナノ粒子の成分について述べる重量%には安定剤が含まれない。
【0016】
金属ナノ粒子は、2以上の二金属性金属ナノ粒子種の混合物、たとえば、同一出願人による米国特許出願第12/113,628(ナビーン・コプラ(Naveen Chopra)ら、2008年5月1日出願)号公報に記載されるもの、または二峰性金属ナノ粒子、たとえば、米国特許出願第12/133,548(マイケル・N.クレテイン(Michelle N. Chretien)、2008年6月5日出願)に記載されるものであってもよい。
【0017】
金属ナノ粒子が銀の場合、たとえば、銀ナノ粒子は少なくとも約1日または約3日〜約1週間、約5日〜約1ヶ月、約1週間〜約6ヶ月、約1週間〜1年以上の安定性(すなわち、銀含有ナノ粒子の最小沈殿物または凝集物が表れる期間)を有する。
【0018】
さらに、組成物は接着促進化合物を含有する。接着促進化合物としては、少なくとも1つの有機官能性部分を有するシラン化合物を用いることができる。接着促進化合物のシラン部分は、接着促進化合物を基材に結び付け、一方、少なくとも1つの有機官能性部分は、金属ナノ粒子の表面に、または金属ナノ粒子に直接付着した安定剤の表面に付着する。さらに、接着促進化合物は、インクに要求される噴出性や安定性を満たす必要がある。
【0019】
実施の形態では、接着促進化合物は、少なくとも1つの有機官能性部分を有する加水分解シランとすることができる。少なくとも1つの有機官能性部分を有する加水分解シランの例には、少なくとも1つの有機官能性部分を有するアルコキシシラン、少なくとも1つの有機官能性部分を有するクロロシランまたは少なくとも1つの有機官能性部分を有するアセトキシシランが挙げられる。加水分解化合物の少なくとも1つの有機官能性部分は、エポキシ部分(エポキシ基)、アクリレート部分、メタクリレート部分、アミノ部分、アセチル部分、シアノ部分、ハロゲン部分、メルカプト部分、スルフィド部分、ビニル部分、アルコキシアルキル部分、カルバメート部分、カルボキシル部分、エステル部分、芳香族部分およびアルキル部分から成る群から選択することができる。
【0020】
少なくとも1つの有機官能性部分を有するアルコキシシランは、化学式(1)によって表される。
(Y)x−Si−(OR)4-x (1)
ここで、xは1、2または3であり、ORは加水分解可能なアルコキシ基であり、Rはアルキル基であり、Yはエポキシ基やアミノ基等の有機官能性部分である。
【0021】
実施の形態では、アルコキシシランの各Yは、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、アミノ、アセチル、シアノ、ハロゲン、メルカプト、ビニル、アルコキシアルキル、カルバメート、カルボキシル、スルフィド、エステル、芳香族またはアルキル(直鎖、分岐または環状)官能性部分から成る群から選択される少なくとも1つの有機官能性部分である。さらに、アルコキシシランの各Yは、1〜約100個の炭素原子、約1〜約75個の炭素原子、約2〜約50個の炭素原子、約2〜40個の炭素原子または約2〜約30個の炭素原子を有してもよい。さらに、アルコキシシランの各アルキル基Rは、約1〜約20個の炭素原子、約1〜約15個の炭素原子、約1〜約10個の炭素原子、約1〜約8個の炭素原子または約1〜約4個の炭素原子を有してもよい。
【0022】
好適なアルコキシシランの例としては、エポキシ官能性を有するアルコキシシランが挙げられる。エポキシ官能性は、単純なまたは置換オキシラン、グリシジル基、グリシジルオキシ基、シクロヘキサンオキサイド(エポキシシクロヘキシル)またはシクロペンタンオキサイド(エポキシシクロペンチル)重合性基であってもよい。組成物に好適なエポキシ官能性アルコキシシランモノマーの例には、3−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシメチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシメチルトリブトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、2−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、グリシドキシエチルトリエトキシシラン、グリシドキシエチル−トリプロポキシシラン、グリシドキシエチルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、1−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、1−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、4−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、3−プロポキシブチルトリブトキシシラン、1−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、1−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、1−グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、1−グリシドキシブチルトリブトキシシラン、2−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2−エポキシプロピルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−メチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−メチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−メチルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−プロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−プロピルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−プロピルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−プロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−ブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−ブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−ブチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)−ブチルトリブトキシシラン、および3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、その混合物等がある。
【0023】
アクリレートまたはメタクリレート官能性を有する好適なアルコキシシランの例としては、(3−メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、 メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、その混合物等が挙げられる。
【0024】
アミノ基を有する好適なアルコキシシランの例としては、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリブトキシシラン、1−アミノプロピルトリメトキシシラン、1−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−アミノプロピルトリブトキシシラン、1−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチル−メチルジエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチル−トリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチル−トリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチル−ジメトキシメチルシラン、3−(アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(アミノフェノキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(アミノフェノキシ)プロピルジメトキシメチルシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、 アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルジメトキシメチルシラン、アミノフェニルジエトキシメチルシラン、その混合物等挙げられる。
【0025】
アセチル基を有する好適なアルコキシシランの例としては、アセトキシメチルトリエトキシシラン、アセトキシメチルトリメトキシシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、その混合物等がある。
【0026】
シアノ基を有する好適なアルコキシシランの例としては、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−シアノプロピル)ジメトキシシラン、その混合物等がある。
【0027】
ハロゲン基を有する好適なアルコキシシランの例としては、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロドデシル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、1,1−ブロモウンデシルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)−トリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリイソプロピルシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、その混合物等がある。
【0028】
メルカプト基を有する好適なアルコキシシランの例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、[3−トリエトキシシリル]プロピル]−ジスルフィド、[3−トリメトキシシリル]プロピル]−ジスルフィド、[3−ジエトキシメチルシリル]プロピル]−ジスルフィド、ビス[3−トリエトキシシリル]プロピル]−テトラスルフィド、[3−ジエトキシメチルシリル]プロピル]−テトラスルフィド、[3−トリメトキシシリル]プロピル]−テトラスルフィド、その混合物等がある。
【0029】
ビニル基を有する好適なアルコキシシランの例としては、ブテニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、[2−(3−シクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、[2−(3−シクロヘキシル)エチル]トリエトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、その混合物等がある。
【0030】
芳香族基を有する好適なアルコキシシランの例としては、フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、その混合物等がある。
【0031】
アルキル基を有する好適なアルコキシシランの例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、その混合物等がある。
【0032】
アルコキシアルキル基を有する好適なアルコキシシランの例としては、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、3−エトキシプロピルトリメトキシシラン、3−プロポキシプロピルトリメトキシシラン、3−メトキシエチルトリメトキシシラン、3−エトキシエチルトリメトキシシラン、3−プロポキシエチルトリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]ヘプタメチルトリシロキサン、[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、[メトキシ(ポリエチレンオキシ)エチル]トリメトキシシラン、[メトキシ(ポリエチレンオキシ)エチル]トリエトキシシラン、[メトキシ(ポリエチレンオキシ)エチル]トリメトキシシラン、その混合物等がある。
【0033】
接着促進化合物は、組成物中に組成物の少なくとも0.1重量%、たとえば、組成物の約0.1重量%〜約10重量%、約0.5重量%〜約10重量%、約1重量%〜約8重量%、約2重量%〜約6重量%、約3重量%〜約5重量%、または約0.5〜約2重量%の量で存在してもよい。
【0034】
また、金属ナノ粒子溶液は、金属ナノ粒子の表面に吸着し、基材上に金属形体を形成する際の金属ナノ粒子の焼成までは除去されない有機安定剤を含有してもよい。
【0035】
実施の形態では、安定剤は物理的または化学的に金属ナノ粒子の表面と結合する。このようにして、金属ナノ粒子は、溶媒が蒸発してもその表面に安定剤を有する。すなわち、表面に安定剤を有する金属ナノ粒子を、金属ナノ粒子と安定剤を形成する際に使用した反応混合物溶液から単離し回収することができる。そして、安定化した金属ナノ粒子を、印刷可能な溶液(組成物)を調整するための溶媒中に容易にかつ均一に分散させることができる。
【0036】
金属ナノ粒子と安定剤との「物理的または化学的に結合する」という表現は、化学的結合および/または他の物理的結びつきのことである。化学的結合は、たとえば、共有結合、水素結合、配位錯体結合、またはイオン結合または異なる化学的結合の混合の形態を取ることができる。物理的結びつきは、たとえば、ファンデアワールス力または双極子−双極子相互作用または異なる物理的結びつきの混合の形態を取ることができる。
【0037】
「有機安定剤」の「有機」という用語は、たとえば、炭素原子の存在を言うが、有機安定剤は1以上の非金属ヘテロ原子、たとえば、窒素、酸素、硫黄、珪素、ハロゲン等を含んでもよい。有機安定剤は、オルガノアミン安定剤、たとえば、米国特許第7,270,694号明細書に記載されるものであってもよい。オルガノアミンの例としては、アルキルアミン、たとえば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノオクタン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等またはその混合物が挙げられる。
【0038】
他の有機安定剤の例としては、たとえば、チオールおよびその誘導体、ROC(=S)SH(キサントゲン酸)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドンおよび他の有機界面活性剤がある。有機安定剤は、チオール、たとえば、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、およびドデカンチオール;ジチオール、たとえば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、および1,4−ブタンジチオールまたはチオールおよびジチオールの混合物から成る群から選択されてもよい。有機安定剤は、キサントゲン酸、たとえば、O−メチルキサンテート、O−エチルキサンテート、O−プロピルキサントゲン酸、O−ブチルキサントゲン酸、O−ペンチルキサントゲン酸、O−ヘキシルキサントゲン酸、O−ヘプチルキサントゲン酸、O−オクチルキサントゲン酸、O−ノニルキサントゲン酸、O−デシルキサントゲン酸、O−ウンデシルキサントゲン酸、O−ドデシルキサントゲン酸から成る群から選択されてもよい。また、金属ナノ粒子を安定化させることができるピリジン誘導体(たとえば、ドデシルピリジン)および/またはオルガノホスフィンを含有する他の安定剤を、実用的安定剤として使用してもよい。
【0039】
さらなる有機安定剤の例としては、米国特許出願第11/950,450号明細書(ヤニング・リ(Yuning Li)2007年12月5日出願)に記載されるカルボン酸−オルガノアミン錯体安定化金属ナノ粒子、米国特許出願公開第2007/0099357号明細書に記載されるカルボン酸安定剤金属ナノ粒子、および米国特許出願第12/013,539号明細書(ヤニング・リ(Yuning Li)2008年1月14日出願)に記載される熱的に除去可能な安定剤およびUV分解可能な安定剤が挙げられる。
【0040】
金属ナノ粒子表面上の安定剤の被覆率は、金属ナノ粒子を安定化させる安定剤の能力に応じて、たとえば、一部から全部被覆まで変更することができる。もちろん、個々の金属ナノ粒子についても安定剤被覆率は変化する。
【0041】
金属ナノ粒子溶液中の安定剤の重量%は、たとえば、約5重量%〜約80重量%、約10重量%〜約60重量%または約15重量%〜約50重量%であってもよい。
【0042】
金属ナノ粒子および接着促進化合物から成る組成物は、いずれかの好適な分散溶媒中に金属ナノ粒子および接着促進化合物を分散して製造される。そして、基材上にこの組成物を成膜(印刷)することで、基材上に金属形体を形成することができる。
【0043】
分散組成物中での金属ナノ粒子の重量%は、たとえば、約5重量%〜約80重量%、約10重量%〜約60重量%または約15重量%〜約50重量%であってもよい。分散溶媒の例としては、たとえば、水、1〜16個の炭素原子を有するアルキルアルコール、約5〜約15個の炭素原子を有するシクロカルビルアルコール、約6〜約16個の炭素原子を有するアルカン、約3〜約12個の炭素原子を有するアルキルアセテート、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、シアノベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドンおよびその混合物が挙げられる。分散溶媒のさらなる例としては、米国特許出願第12/331,573号明細書に開示される分散溶媒がある。
【0044】
たとえば、3種以上の溶媒を用いてもよい。2以上の溶媒を用いる実施の形態では、各溶媒はいずれの好適な体積比またはモル比、たとえば、約99(第1溶媒):1(第2溶媒)〜約1(第1溶媒):99(第2溶媒)であってもよい。
【0045】
金属ナノ粒子分散体を用いた導電性要素の製造は、いずれか好適な液体分散技術を用いて、組成物を基材上に成膜することによって行われる。したがって、基材上への組成物の液体成膜は、基材上かまたはすでに作層された材料、たとえば、半導体層および/または絶縁層を有する基材上のいずれかに行うことができる。
【0046】
「液体分散技術」という表現は、たとえば、液体コーティングまたは印刷のような液体処理を用いた組成物の成膜を言い、液体は金属ナノ粒子および接着促進化合物の均一または不均一分散体である。金属ナノ粒子組成物は、基材上に成膜する場合のインクのようなものである。液体コーティング処理の例としては、たとえば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。印刷技術の例としては、たとえば、リソグラフィまたはオフセット印刷、グラビア、フレキソグラフィ、スクリーン印刷、ステンシル印刷、インクジェット印刷、スタンピング(たとえば、マイクロコンタクト印刷)等がある。液体成膜は、約5ナノメートル〜約5ミリメートル、好ましくは約10ナノメートル〜約1000マイクロメートルの範囲の厚さを有する組成物層を成膜するものである。この段階では成膜された金属ナノ粒子組成物は、評価可能な導電性を有しても有さなくてもよい。
【0047】
金属ナノ粒子分散体(金属ナノ粒子)を、基材上に、たとえば、約10秒〜約1000秒間、約50秒〜約500秒間または約100秒〜約150秒間で、たとえば、約100レボリューション/分(「rpm」)〜約5000rpm、約500rpm〜約3000rpmまたは約500rpm〜約2000rpmの速度で、スピンコートすることができる。
【0048】
金属形体が形成される基材としては、いかなる好適な基材、たとえば、シリコン、ガラスプレート、プラスチックフィルム、シート、ファブリックまたは紙でもよい。柔軟な素子では、プラスチック基材、たとえば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等のシートを用いてもよい。基材の厚さは、10マイクロメートル〜10ミリメートル以上でもよく、例示的厚さは、特に柔軟なプラスチック基材では、約50マイクロメートル〜約2ミリメートルであり、剛直な基材、たとえば、ガラスまたはシリコンでは、約0.4〜約10ミリメートルである。
【0049】
成膜した組成物を、たとえば、約200℃またそれ以下、たとえば、約80℃〜約200℃、約100℃〜約200℃、約100℃〜約180℃または約100℃〜約160℃の温度で加熱することで、金属ナノ粒子を誘起または金属ナノ粒子を「焼成(アニール)」して、電子素子における導電性要素として使用するのに好適な導電性層を形成する。加熱温度は、先に成膜された層または基材(単一層基材でも多層基材でも)の特性に悪い変化をもたらさない温度である。また、上記のような低温加熱(200℃以下)によれば、低コストのプラスチック基材を使用することができる。
【0050】
加熱は、たとえば、1秒〜約10時間または約10秒〜1時間で行ってもよい。加熱は、空気中、不活性雰囲気中、たとえば、窒素またはアルゴン雰囲気、または還元性雰囲気中、たとえば、1〜約20体積%の水素を含有する窒素雰囲気で行ってもよい。また、加熱は、通常大気圧下、または約1000mbar〜約0.01mbar等の減圧下で行ってもよい。
【0051】
「加熱」という用語は、十分なエネルギーを加熱される材料または基材に与えて、(1)金属ナノ粒子を焼成し、および/または(2)金属ナノ粒子から任意の安定剤を除去することができれば、いずれの技術も包含する。加熱技術の例としては、熱的加熱(たとえば、ホットプレート、オーブンおよびバーナ)、赤外(「IR」)放射線、レーザビーム、マイクロ波放射線、UV放射線またはその組み合わせがある。
【0052】
加熱は多くの効果を生じる。加熱前には、成膜された金属ナノ粒子層は、絶縁性または非常に低い導電性を有するかもしれないが、加熱によって、導電性が増加した焼成金属ナノ粒子から成る導電性層となる。実施の形態では、焼成された金属ナノ粒子は、部分的に癒着(融着)した金属ナノ粒子であってもよい。実施の形態では、焼成された金属ナノ粒子において、金属ナノ粒子は、癒着(融着)しなくても、導電性層を形成するのに十分な粒子−粒子間接触を達成することができるものでもよい。
【0053】
実施の形態では、加熱後に得られた導電性層は、たとえば、約5ナノメートル〜約5ミクロンまたは約10ナノメートル〜約2ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0054】
成膜された金属ナノ粒子組成物を加熱することによって得られた金属要素の導電率は、たとえば、約100シーメンス/センチメートル(「S/cm」)以上、約1000S/cm以上、約2,000S/cm以上、約5,000S/cm以上、または約10,000S/cm以上である。
【0055】
得られた要素を、電子素子、たとえば、薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード、RFID(無線周波数識別)タグ、光電池、印刷アンテナ、導電性要素または部品を必要とする他の電子素子における電極、導電性パッド、薄膜トランジスタ、導電性ライン、導電性トラック等として使用することができる。
【0056】
また、他の実施の形態では、(a)絶縁層、(b)ゲート電極、(c)半導体層、(d)ソース電極、および(e)ドレイン電極を備える薄膜トランジスタにおいて、ソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極の少なくとも1つは、金属ナノ粒子および接着促進化合物を含有する溶液を基材上に成膜し、基材上の溶液を約100℃〜約200℃の温度まで加熱して基材上に導電性形体を形成することで形成される。なお、ゲート電極と半導体層が共に絶縁層と接触し、ソース電極とドレイン電極が共に半導体層と接触する限り、絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極は、いかなる順序でもよい。
【0057】
したがって、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極を、ここでの実施の形態によって製造することができる。ゲート電極層の厚さは、たとえば、約10〜約2000nmの範囲である。ソースおよびドレイン電極の典型的な厚さは、たとえば、約40nm〜約1マイクロメートルであり、より特別には厚さは約60ナノメートル〜約400nmである。
【0058】
一般的に、絶縁層は、無機材料フィルムまたは有機ポリマーフィルムである。絶縁層として好適な無機材料の例としては、たとえば、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、バリウムチタネート、バリウムジルコニウムチタネート等が挙げられる。絶縁層用有機ポリマーの例としては、たとえば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂等がある。絶縁層の厚さは、使用される誘電性材料の誘電率に応じて、たとえば、約10nm〜約500nmである。絶縁層の例示的厚さは、約100nm〜約500nmである。絶縁層は、たとえば、約10-12S/cm以下の導電率を有してもよい。
【0059】
半導体層が絶縁層とソース/ドレイン電極の間に接触して配置される場合には、半導体層の厚さは、通常、約10nm〜約1マイクロメートル、または約40〜約100nmである。いずれの半導体材料を用いてこの層を形成してもよい。例示的半導体材料には、レジオレギュラーポリチオフェン、オリゴチオフェン、ペンタセン、および米国特許出願公開第2003/0160230号明細書、米国特許出願公開第2003/0160234号明細書、米国特許出願公開第2003/0136958号明細書に開示される半導体ポリマーがある。いずれの好適な技術を用いて半導体層を形成してもよい。このような方法の1つは、約10-5torr〜10-7torrの真空を、基材とパウダー形態の化合物を入れた原料容器とを備えるチャンバーに施し、化合物が基材上へと昇華するまで容器を加熱するものである。一般的に、半導体層は、半導体の溶液または分散体の溶液処理、たとえば、スピンコーティング、スクリーン印刷、スタンピング、またはジェット印刷によって製造することができる。
【0060】
特に、実施の形態では、ゲート電極と半導体層が共に絶縁層と接触し、ソース電極とドレイン電極が共に半導体層と接触する場合には、絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極は、いかなる順序でも形成される。「いかなる順序でも」という表現は、順番に形成することと同時に形成することを含む。たとえば、ソース電極とドレイン電極を同時にまたは順番に形成してもよい。薄膜トランジスタの組成、製造および動作は、たとえば、米国特許第6,107,117号明細書に記載される。
【0061】
実施の形態では、薄膜トランジスタにおけるゲート、ソースまたはドレイン電極の少なくとも1つは、ここで記載される基材上に導電性形体を形成するための方法、すなわち、安定化した金属ナノ粒子および接着促進化合物を含有する溶液を基材上に成膜し、基材上への溶液の成膜時または成膜後に、安定剤を約200℃以下の温度で除去し、基材上に導電性形体を形成する方法を用いて形成される。
【0062】
ここで開示される実施の形態を、その特定の例示的実施の形態に関して、ここに詳細に記載するが、これらの実施例は単に例示を意図しており、ここで開示される実施の形態は、ここで示される材料、条件、または処理パラメータに限定することを意図するものではない。全てのパーセンテージおよび部は示さない限り重量による。室温はたとえば、約20〜約25℃の範囲の温度を言う。
【実施例1】
【0063】
アミノアルカン安定化銀ナノ粒子は、20gの酢酸銀を、ヘキサデシルアミン(289g)のトルエン(150ml)溶液(60℃の混合物)に添加することによって調製される。この混合物を攪拌して(約10分間)、酢酸銀を完全に溶解させる。次に、7gのフェニルヒドラジンをゆっくりと混合物に添加して、得られた混合物を約1時間、55℃で攪拌する。次に、イソプロパノール(240ml)とメタノール(560ml)を得られた混合物に添加する。生成物を濾過によって回収し、次いでイソプロパノール(200ml)中で30分間攪拌する。生成物に2回目の濾過を施し、真空下室温で約12時間乾燥する。最終生成物は、約80重量%の銀と、銀ナノ粒子安定剤として約20重量%のヘキサデシルアミンを含有する。
【0064】
0.03gのアミノプロピルトリメトキシシランを、0.15gのヘキサデシルアミン安定化銀ナノ粒子と0.85gのトルエンの混合物に添加することによって、インク組成物を調製した。約15重量%の銀ナノ粒子と約3重量%のアミノプロピルトリメトキシシランを含有するインク組成物を、マグネチックスチーラバーを用いて、約3時間攪拌し、次いで、ガラススライド上に1000rpmで2分間スピンコートして、銀ナノ粒子の褐色の薄膜を形成した。銀ナノ粒子の薄膜を、オーブン中で140℃の温度で10分間加熱し、銀ナノ粒子を焼成して、約85nmの厚さを有する光沢のある鏡状の薄膜を形成した。焼成された銀フィルムの平均導電率は、キースレイ 4−プルーブスで測定したところ、2.41×103S/cmであった。
【0065】
銀ナノ粒子の基材への接着性を、コートされた基材を綿棒で擦ることによってテストした。綿棒を基材のコートされた表面に所定量の力で(約10回)手で擦り付けた後、基材上には、全く認知可能なダメージがなく、コートされた焼成銀ナノ粒子フィルムが残った。さらに、基材への銀ナノ粒子の接着性を、コートされた基材上に3Mスコッチ(3/4インチ幅、1インチ長さ)のテープ片を貼ることによってもテストした。テープを剥がした後、焼成された銀ナノ粒子フィルムは無傷で導電性を残していた。
【0066】
<比較例>
上記実施例のヘキサデシルアミン安定化銀ナノ粒子0.15gと、0.85gのトルエンとを混合することによって、比較例のインク組成物を調製した。比較例のインク組成物は、アミノプロピルトリメトキシシラン接着促進化合物を全く含まない。15重量%の銀ナノ粒子を含有する比較例インク組成物を、マグネチックスチーラバーを用いて、約3時間攪拌し、次いで、ガラススライド上に1000rpmで2分間スピンコートして、銀ナノ粒子の褐色の薄膜を形成した。銀ナノ粒子の薄膜を、オーブン中で140℃の温度で10分間加熱し、銀ナノ粒子を焼成して、約85nmの厚さを有する光沢のある鏡状の薄膜を形成した。焼成された銀フィルムの平均導電率はキースレイ 4−プルーブス(Probes)で測定したところ、2.41×103S/cmであった。
【0067】
銀ナノ粒子の基材への接着性を、コートされた基材を綿棒で擦ることによってテストした。綿棒を基材のコートされた表面に所定量の力で(約10回)手で擦り付けた後、焼成された銀ナノ粒子フィルムは著しくダメージを受け、非導電性銀ナノ粒子フィルムとなった。さらに、基材への銀ナノ粒子の接着性を、コートされた基材上に3Mスコッチ(3/4インチ幅、1インチ長さ)のテープ片を貼ることによってもテストした。テープを剥がした後、焼成された銀ナノ粒子フィルムは著しくダメージを受け、非導電性であった。
【0068】
上で開示した各種特徴および機能および他の各種特徴および機能、またはその代替を、多くの他の異なるシステムまたは用途に好ましく組み合わせてもよいことは明らかである。また、現在では予期されない想定外のその各種代替、改良、変更または改善も、後に当業者は行ってもよく、これらも以下の請求の範囲は含むことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する組成物。
【請求項2】
金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有し、接着促進化合物は、少なくとも1つの有機官能性部分を有する加水分解シランである組成物。
【請求項3】
基材上に導電性形体を形成する方法であって、
金属ナノ粒子、接着促進化合物および溶媒を含有する液体組成物を提供し、
液体組成物を基材上に成膜して成膜形体を形成し、
基材上の成膜形体を約100℃〜約200℃の温度に加熱して基材上に導電性形体を形成することを包含する方法。

【公開番号】特開2010−219042(P2010−219042A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50781(P2010−50781)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】