説明

金属ベース基板

【課題】金属ベース基板の製造時に生じ得る反りを抑制し得るとともに、ヒートシンクへの熱伝導性を向上させることができる、金属ベース基板を提供する。
【解決手段】金属ベース基板1は、互いに対向する第1および第2の主面2および3を有する金属板4と、第1および第2の主面2および3上にそれぞれ形成された第1および第2のセラミック層5および6とを備える。第1および第2の主面2および3の双方に形成されるセラミック層5および6は、反りを抑制する。第2のセラミック層6は、第2の主面3上における枠状領域に沿って位置する枠状部分8を少なくとも含むとともに、枠状部分8に囲まれた領域において第2の主面3の一部を露出させる開口9を有する。開口9は、金属板4にヒートシンクを接合することを可能にし、金属ベース基板1の放熱性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子などを実装しながら放熱機能をも与える金属ベース基板に関するもので、特に、セラミック層と金属板とを組み合わせた金属ベース基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属ベース基板は、比較的高い放熱機能を有しており、たとえば半導体素子のような放熱を必要とする電子部品を実装するために有利に用いられている。
【0003】
この発明にとって興味ある技術として、特表2002−505805号公報(特許文献1)には、接着ガラスを有する金属支持体の表面にグリーンテープ層が設けられたものを焼成して得られたセラミック多層回路基板が記載されている。
【0004】
ところが、特許文献1の特に図8に記載のもののように、金属板(金属支持体)の一方主面のみにセラミック層(グリーンテープ層)を設けた状態で焼成した場合、金属板とセラミック層との熱膨張係数差などに起因して金属ベース基板(セラミック多層回路基板)全体に反りが発生するという問題が生じることが十分に考えられる。
【0005】
この点、特開2003−124584号公報(特許文献2)には、2枚の窒化珪素板の間にCu板またはCu合金板を挟んで接合して成る基体の一方の主面に金属回路板を、他方の主面に金属板を接合して成るセラミック回路基板が記載されている。
【0006】
特許文献2の図1を参照しながら、より詳細に説明すると、セラミック層である焼成済の窒化珪素板2の間に金属板であるCu板等4を挟んで直接接合法や活性金属法を用いて接合して基体6を作製することで、接合時に発生する熱応力により窒化珪素板にクラックが生じることを防止している。また、基体6の下面に、金属板5を接合することにより、金属板5をヒートシンクとして機能させている。
【0007】
特許文献2に記載の技術を用いれば、金属板(Cu板等4)の上面および下面にセラミック層を形成することで熱膨張係数差に起因する金属ベース基板(基体6)の反りを抑制することができる。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の構造では、金属ベース基板(基体6)に熱伝導率の高い金属板(Cu板等4)を用いているにも関わらず、ヒートシンク(金属板5)との間にはセラミック層(窒化珪素板2)が介在するため、下面のセラミック層の存在によって放熱性が低下してしまうという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2002−505805号公報
【特許文献2】特開2003−124584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の目的は、製造時に生じ得る反りを抑制し得るとともに、ヒートシンクへの熱伝導性を向上させることができる、金属ベース基板の構造を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、互いに対向する第1および第2の主面を有する金属板と、金属板の第1の主面上に形成された第1のセラミック層と、金属板の第2の主面上に形成された第2のセラミック層とを備える、金属ベース基板に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、第2のセラミック層は、第2の主面上における枠状領域に沿って位置する枠状部分を少なくとも含むとともに、枠状部分に囲まれた領域において第2の主面の一部を露出させる開口を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、金属板の第1および第2の主面上に第1および第2のセラミック層がそれぞれ形成されるとともに、第2のセラミック層が開口を形成しながらも枠状部分を有しているので、金属ベース基板の反りを抑制することができる。
【0013】
また、第2のセラミック層は、枠状部分に囲まれた領域において第2の主面の一部を露出させる開口を有しているので、この開口を通して金属板にヒートシンクを直接接合することができ、よって、金属ベース基板の放熱性を向上させることができる。
【0014】
この発明において、第2のセラミック層の枠状部分が金属板の第2の主面の周縁部にマージンを残さず、周縁部を覆うように位置していると、金属板の周縁部まで含めて金属ベース基板全体の反りを抑制することができる。
【0015】
第2のセラミック層が、枠状部分に囲まれた領域において格子状に延びる格子状部分をさらに含み、開口が、この格子状部分の格子間に形成されかつ島状に分布していると、格子状部分による反り抑制の作用を十分に発揮させながらも、より高い放熱性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1の実施形態による金属ベース基板1を示すもので、(1)は断面図、(2)は底面図である。
【図2】この発明の第2の実施形態による金属ベース基板1aを示すもので、(1)は断面図、(2)は底面図である。
【図3】図2に示した金属ベース基板1aを用いて構成される電子部品装置11を示す断面図である。
【図4】実験例1において作製しようとする試料1に係る金属ベース基板21を示すもので、(1)は断面図、(2)は底面図である。
【図5】実験例1において作製しようとする試料2に係る金属ベース基板31を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、この発明の第1の実施形態による金属ベース基板1について説明する。
【0018】
金属ベース基板1は、互いに対向する第1および第2の主面2および3を有する金属板4と、金属板4の第1の主面2上に形成された第1のセラミック層5と、同じく第2の主面3上に形成された第2のセラミック層6とを備えている。金属板4は、その機能を効果的に発揮させるため、熱伝導率の高い金属、たとえばアルミニウム、銅または銀を主成分とすることが好ましい。それらの中でも、未焼成の低温焼結セラミック層を金属板4と同時焼成することによってセラミック層5および6を形成する場合には、金属板4は銅または銀、特に銅を主成分とすることが好ましい。
【0019】
第1のセラミック層5上には、図1では図示しないが、IC等の半導体素子やその他の電子部品が実装される。そのため、第1のセラミック層5上には、いくつかの表面導体7が形成されている。図示しないが、第1のセラミック層5は、複数のセラミック層からなる積層構造を有していて、内部に配線等のための内部導体が設けられていてもよい。
【0020】
第2のセラミック層6は、第2の主面3上における枠状領域に沿って位置する枠状部分8を少なくとも含むとともに、この枠状部分8に囲まれた領域において第2の主面3の一部を露出させる開口9を有している。図1に示した実施形態では、第2のセラミック層6は、枠状部分8のみによって構成されている。
【0021】
また、枠状部分8は、第2の主面3の周縁部にマージンをしていてもよいが、周縁部にマージンを残さず、周縁部を覆うように位置していることが好ましい。この構成によって、金属板4の周縁部をも含めて金属ベース基板1全体の反りを抑制することができる。
【0022】
図示しないが、第2のセラミック層6についても、複数のセラミック層からなる積層構造を有していて、内部に配線等のための内部導体が設けられていてもよい。
【0023】
なお、枠状部分8は、その一部に切欠きまたは分断部を有していてもよいが、切欠きまたは分断部を有しないことが好ましい。
【0024】
第2のセラミック層6に形成された開口9は、金属板4にヒートシンク(図1では図示されない。)をたとえばはんだ付けによって接合することを可能にし、よって、金属ベース基板1の放熱性を向上させることができる。
【0025】
金属ベース基板1は、たとえば、次のようにして製造される。
【0026】
まず、金属板4が用意され、金属板4の第1および第2の主面2および3上に、それぞれ第1および第2のセラミック層5および6となるべき生の状態のセラミックグリーン層が積層される。第1のセラミック層5となるべきセラミックグリーン層には、表面導体7が形成され、また、必要に応じて、第1および第2のセラミック層5および6となるべきセラミックグリーン層には、内部導体が形成される。次いで、焼成工程が実施される。これによって、セラミックグリーン層が焼結して、第1および第2のセラミック層5および6となり、金属ベース基板1が得られる。
【0027】
上述した製造方法に関して、金属板4とセラミック層5および6の各々とを接合するため、以下のように、セラミック層5および6の各々が、積層構造を有し、かつ焼成工程において主面方向での収縮が抑制され得るような対策が講じられることが好ましい。
【0028】
まず、金属板4が用意されるとともに、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーと、この低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーとがそれぞれ用意される。
【0029】
次に、金属板4の第1の主面2上に、第1のセラミック層5となるべき第1のセラミックスラリーからなる第1のセラミックグリーン層および第2のセラミックスラリーからなる第2のセラミックグリーン層が配置される。
【0030】
他方、金属板4の第2の主面3上に、第2のセラミック層6となるべき第1のセラミックスラリーからなる第1のセラミックグリーン層および第2のセラミックスラリーからなる第2のセラミックグリーン層が配置される。第2のセラミック層6となるべき第1のセラミックグリーン層および第2のセラミックグリーン層は、枠状部分8を与える形状とされる。
【0031】
ここで、前述した表面導体7および、必要に応じて、内部導体が、特定のセラミックグリーン層に設けられる。
【0032】
上述の工程を実施するにあたり、好ましくは、第1のセラミックスラリーをシート状に成形して得られたセラミックグリーンシート上で、第2のセラミックスラリーをシート状に成形することによって、第1のセラミックグリーン層と第2のセラミックグリーン層とが重ね合わされた複合グリーンシートを得た上で、この複合グリーンシートを金属板4の第1および第2の主面2および3上に必要枚数積層し、圧着することが行なわれる。
【0033】
なお、上記方法に代えて、第1のセラミックスラリーを成形して得られた第1のセラミックグリーンシートと、第2のセラミックスラリーを形成して得られた第2のセラミックグリーンシートとを、金属板4の第1および第2の主面2および3の各々上で、交互に積層してもよい。あるいは、第1のセラミックグリーンシート上で、第2のセラミックグリーン層の成形と第1のセラミックグリーン層の成形とを繰り返してもよい。
【0034】
次に、第1および第2のセラミック層5および6の各々となるべき第1および第2のセラミックグリーン層と金属板4とを同時焼成する工程が実施される。この同時焼成する工程において、第1のセラミックグリーン層に含まれている低温焼結セラミック材料は焼結する。また、この低温焼結セラミック材料の一部は、第2のセラミックグリーン層へと流動し、第2のセラミックグリーン層に含まれる難焼結性セラミック材料を固化し、第2のセラミックグリーン層を緻密化させる。
【0035】
上記第2のセラミックグリーン層は、焼成工程において、主面方向へは実質的に収縮しないため、第1のセラミックグリーン層の主面方向での収縮を抑制するように作用する。したがって、金属板4の上の第1および第2のセラミックグリーン層からなる積層体部分全体の主面方向での収縮が有利に抑制される。そのため、収縮に起因する第1または第2のセラミックグリーン層と金属板4との間での剥離を生じさせにくくすることができる。
【0036】
第2のセラミックグリーン層の厚みが、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.05倍以上であれば、第2のセラミックグリーン層による焼成時の収縮抑制作用を十分に働かせることができ、その結果、収縮に起因する第1または第2のセラミックグリーン層と金属板4との間での剥離をより生じにくくし得ることがわかっている。
【0037】
この同時焼成する工程において、第1のセラミックグリーン層を緻密化させることができるばかりでなく、第1のセラミックグリーン層に含まれる低温焼結セラミック材料の一部を第2のセラミックグリーン層に十分に流動させ、その結果、第2のセラミックグリーン層をも緻密化させることを可能とするため、第2のセラミックグリーン層の厚みは、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.4倍以下と薄くされることが好ましい。
【0038】
また、第2のセラミックグリーン層は、焼成工程における脱脂段階では、未だ緻密化されていないため、脱脂の結果生じたガスの排出経路を与える。そのため、第1および第2のセラミックグリーン層からなる積層体部分全体において、良好な脱脂性が確保される。特に金属板4の近傍での脱脂性についても良好なものとされるので、残留炭素による当該部分での剥離発生を抑制することができる。
【0039】
上述した良好な脱脂性のより確実な確保のためには、第2のセラミックグリーン層の厚みが、第1のセラミックグリーン層の厚みの0.06倍以上であることが好ましいことがわかっている。
【0040】
このようにして、金属ベース基板1が得られる。この金属ベース基板1において、金属板4とセラミック層5および6の各々とは、接合ガラス層を別途形成しておくことなく、接合状態とされる。このとき、金属ベース基板1の金属板4とセラミック層5および6の各々の間には、焼成過程で1〜5μm程度の薄いガラス層が形成されることがある。
【0041】
なお、上述した製造方法では、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーからなる第1のセラミックグリーン層と、この低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーからなる第2のセラミックグリーン層とを用いたが、これに代えて、収縮開始温度が異なる2種以上のセラミックグリーン層を用いてセラミック層5および6の主面方向への収縮を抑制してもよい。具体的には、収縮開始温度が比較的低いセラミックグリーン層と収縮開始温度が比較的高いセラミックグリーン層とを積層することで、前者が収縮する温度領域では後者が前者の主面方向への収縮を抑制し、後者が収縮する温度領域では収縮が完了した前者が後者の主面方向への収縮を抑制することで、セラミック層5および6の主面方向への収縮を抑制する方法である。
【0042】
また、上述した製造方法に関して、金属板4とセラミック層5および6の各々とを接合するため、金属板4とセラミック層5および6の各々との間に予め数十μm程度の接合ガラス層を形成しておき、上記の焼成工程において、接合ガラス層を溶融させ、接合状態を達成する製造方法を採用してもよい。
【0043】
ただし、この場合、接合ガラス層を緩和層として働かせることができるため、接合ガラス層を予め形成しない場合に比べて反りをある程度抑制することができる。
【0044】
また、金属ベース基板1は、金属板4と焼成済のセラミック層5および6とを重ねた状態として焼成工程を実施することによって、金属板4とセラミック層5および6の各々との接合状態を得る方法によっても製造することができる。この場合、セラミック層5および6は、前述したような低温焼結セラミックから構成されても、窒化アルミニウムなどの高温焼結セラミックから構成されてもよい。ただし、この場合、セラミック層5および6は焼成時の収縮が実質的に生じず、また、接合のための焼成温度を比較的低温にすることが可能であるため、反りはある程度抑制される。
【0045】
したがって、この発明は、未焼成の低温焼結セラミック層を金属板4と同時焼成する場合に特に有効であり、さらに言えば、接合ガラス層を介さずに、未焼成の低温焼成セラミック層を金属板4と同時焼成する場合に最も効果を発揮することになる。
【0046】
次に、図2を参照して、この発明の第2の実施形態による金属ベース基板1aについて説明する。図2において、図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
図2に示した金属ベース基板1aは、第2のセラミック層6aの形態に特徴がある。第2のセラミック層6aは、第2の主面3上における枠状領域に沿って位置する枠状部分8aを少なくとも含むとともに、この枠状部分8aに囲まれた領域において第2の主面3の一部を露出させる開口9aを有している点で、図1に示した第2のセラミック層6と同様であるが、以下の点で、図1に示したものと異なっている。
【0048】
図2に示した第2のセラミック層6aは、枠状部分8aに囲まれた領域において格子状に延びる格子状部分10をさらに含み、開口9aは、格子状部分10の格子間に形成されかつ島状に分布している。このような構成によれば、枠状部分8aによる反り抑制作用に加えて、格子状部分10による反り抑制作用をも発揮させることができ、しかも、格子状部分10において、高い放熱性を実現することができる。
【0049】
図2に示した金属ベース基板1aのその他の構成および製造方法については、図1に示した金属ベース基板1の場合と実質的に同様である。
【0050】
以上、図1および図2を参照して説明した金属ベース基板1および1aは、たとえば、図3に示すような状態で使用される。図3は、図2に示した金属ベース基板1aを用いて構成される電子部品装置11を示している。
【0051】
図3を参照して、金属ベース基板1aの第1のセラミック層5上には、たとえばICのような半導体素子12が実装される。半導体素子12は、表面導体7の特定のものとボンディングワイヤ13によって電気的に接続される。
【0052】
他方、金属ベース基板1aの第2のセラミック層6a側には、ヒートシンク14が配置される。ヒートシンク14は、熱伝導性の良好な金属からなり、第2のセラミック層6aに設けられた開口9a内に導入されたはんだ15を介して、金属板4と機械的に接合されかつ熱的に結合される。
【0053】
使用状態において、半導体素子12において発生した熱は、第1のセラミック層5を介して金属板4に伝えられ、金属板4からはんだ15等を介してヒートシンク14へと放熱される。
【0054】
次に、この発明に基づいて実施した実験例について説明する。
【0055】
1.実験例1
[複合グリーンシートの作製]
BaCO、Al、およびSiOの各粉末を用意し、これらを混合した混合粉末を840℃の温度で120分間仮焼することによって、BaO:37.0重量%、Al:11.0重量%、およびSiO:52.0重量%の含有比率となる原料粉末を作製した。
【0056】
次に、上記原料粉末:90.0重量部、MnCO粉末:7.0重量部、Mg(OH)粉末:1.0重量部、およびTiO粉末:2.0重量部を、分散剤が添加された有機溶剤中で混合し、後に樹脂および可塑剤を添加してさらに混合して、低温焼結セラミック材料を含む第1のセラミックスラリーを得た。
【0057】
次に、第1のセラミックスラリーを脱泡した後、ドクターブレード法により、厚み80μmの第1のセラミックグリーン層となるべきセラミックグリーンシートを作製した。
【0058】
他方、BaO、Al、SiO、MgO、B、およびLiOからなるガラス粉末とAl粉末とを、40重量部:60重量部の比率で、分散剤が添加された有機溶剤中で混合し、後に樹脂および可塑剤を添加してさらに混合して、難焼結性セラミック材料を含む第2のセラミックスラリーを得た。
【0059】
次に、第2のセラミックスラリーを脱泡した後、前述したセラミックグリーンシート上で、ドクターブレード法により、厚み10μmのシート状に成形した。このようにして、上記セラミックグリーンシートによって与えられた第1のセラミックグリーン層と、第2のセラミックスラリーから成形された第2のセラミックグリーン層とが重ね合わされた複合グリーンシートを得た。
【0060】
なお、上記第2のセラミックスラリーを単独で成形して得られたセラミック成形体は、後述する焼成条件で焼成しても、焼結しないことが確認されている。
【0061】
[焼成前の金属ベース基板の作製]
図4には、この実験例1において作製しようとする試料1に係る金属ベース基板21が示されている。
【0062】
金属板として、長さ100mm、幅50mmおよび厚さ0.8mmの銅板22を用意した。この銅板22の上面23上に、第1のセラミック層24を形成するため、上記複合グリーンシートを3枚積層し、さらにその上に、厚み0.2mmの電極形成用銅箔25を積層した。銅板22の下面26上には、第2のセラミック層27を形成するため、枠状部分28および開口29を与えるように所定の形状に切った上記複合グリーンシートを3枚積層した。試料1では、後述する焼成後において、図4に示した枠状部分28の幅「W1」の、上記銅板22の長さ100mmに対する比率、および枠状部分28の幅「W2]の、上記銅板22の幅50mmに対する比率がともに、表1の「W比率」の欄に示す「10%」となるように、複合グリーンシートの切断形状を変更した。次いで、プレス工程を実施し、金属ベース基板21の焼成前の状態のものを得た。
【0063】
図5には、この実験例1において作製しようとする試料2に係る金属ベース基板31が示されている。
【0064】
上記と同様の長さ100mm、幅50mmおよび厚さ0.8mmの銅板32の上面33上に、第1のセラミック層34を形成するため、上記複合グリーンシートを3枚積層し、さらにその上に、厚み0.2mmの電極形成用銅箔35を積層した。銅板32の下面36上には、第2のセラミック層37を形成するため、上記複合グリーンシートを3枚積層し、さらにその上に、厚み0.2mmの放熱用銅箔38を積層した。試料2では、後述する焼成後において、上記試料1の場合と同様の表現方法に従うと、表1の「W比率」は「50%」となる。次いで、プレス工程を実施し、金属ベース基板31の焼成前の状態のものを得た。
【0065】
さらに、図示しないが、試料3として、上記と同様の長さ100mm、幅50mmおよび厚さ0.8mmの銅板の上面上に、第1のセラミック層を形成するため、上記複合グリーンシートを3枚積層し、さらにその上に、厚み0.2mmの電極形成用銅箔を積層するが、銅板の下面上には、第2のセラミック層、電極形成用銅箔および放熱用銅箔のいずれをも形成しない、金属ベース基板の焼成前のものを作製した。試料3では、後述する焼成後において、上記試料1の場合と同様の表現方法に従うと、表1の「W比率」は「0%」となる。
【0066】
[焼成]
上記試料1、2および3に係る金属ベース基板の焼成前のものを、還元性雰囲気中、980℃の温度で180分間焼成することによって、焼結した、図4に示す試料1に係る金属ベース基板21、図5に示す試料2に係る金属ベース基板31および図示しない試料3に係る金属ベース基板をそれぞれ得た。
【0067】
[評価]
・反り
レーザー変位計で焼成後の試料1、2および3に係る金属ベース基板の反りを測定した。測定結果を表1の「反り」の欄に示す。
【0068】
・熱抵抗
熱抵抗測定装置で金属ベース基板21および31の熱抵抗を測定した。測定結果を表1の「熱抵抗」の欄に示す。表に示した「熱抵抗」の値は、試料2の熱抵抗値を100とした場合の比率で示している。
【0069】
【表1】

【0070】
表1からわかるように、試料1によれば、低い熱抵抗と小さい反りとを両立させることができた。これに対して、試料2では、反りを小さく抑えることができたが、熱抵抗が大きくなった。試料3では、熱抵抗を低く維持できたが、反りを小さく抑えることができなかった。
【0071】
2.実験例2
[複合グリーンシートの作製]
実験例1の場合と同様にして、複合グリーンシートを得た。
【0072】
[焼成前の金属ベース基板の作製]
実験例1において作製した試料1に係る金属ベース基板21における第2のセラミック層27となるべき複合グリーンシートに代えて、枠状部分と島状に開口を分布させた格子状部分とを与えるように所定の形状に切った複合グリーンシートを3枚積層した。次いで、プレス工程を実施し、金属ベース基板の焼成前の状態のものを得た。
【0073】
[焼成]
上記金属ベース基板の焼成前のものを、実験例1の場合と同様の条件で焼成することによって、焼結した、試料4としての金属ベース基板を得た。
【0074】
[評価]
実験例1の場合と同様、「反り」および「熱抵抗」を評価した。
【0075】
その結果、試料4によれば、格子状部分を形成しなかった前述の試料1に比べて、熱抵抗を低く維持したまま、反りをより抑えることができた。
【符号の説明】
【0076】
1,1a 金属ベース基板
2 第1の主面
3 第2の主面
4 金属板
5 第1のセラミック層
6,6a 第2のセラミック層
8,8a 枠状部分
9,9a 開口
10 格子状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1および第2の主面を有する金属板と、
前記金属板の前記第1の主面上に形成された第1のセラミック層と、
前記金属板の前記第2の主面上に形成された第2のセラミック層と
を備え、
前記第2のセラミック層は、前記第2の主面上における枠状領域に沿って位置する枠状部分を少なくとも含むとともに、前記枠状部分に囲まれた領域において前記第2の主面の一部を露出させる開口を有する、
金属ベース基板。
【請求項2】
前記枠状部分は前記第2の主面の周縁部にマージンを残さず、前記周縁部を覆うように位置している、請求項1に記載の金属ベース基板。
【請求項3】
前記第2のセラミック層は、前記枠状部分に囲まれた領域において格子状に延びる格子状部分をさらに含み、前記開口は、前記格子状部分の格子間に形成されかつ島状に分布する、請求項1または2に記載の金属ベース基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−9521(P2012−9521A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142222(P2010−142222)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】