説明

金属平板の製造方法

【課題】 一の金属平板の端面と他の金属平板の端面とを突合せ接合し、高い平坦度を有する幅の広い金属平板を製造することができる金属平板の製造方法を提供する
【解決手段】 矯正処理工程におけるアルミニウム平板3の挙動に対し、第1の矯正処理工程によって図5の点線Cで示すような逆反り部6が残存した状態で、さらに第2の矯正処理工程を実施するので、第1の矯正処理工程によってアルミニウム平板3全体を可及的に平坦にし、さらに第2の矯正処理工程で逆反り部6を可及的に解消して、一枚板で用いられていたアルミニウム平板のガラストレイと同等の平坦度を有して接合されたアルミニウム平板を工業的に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属平板の製造方法に関し、特にガラストレイ用アルミニウム平板を製造する際に適用される金属平板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶パネル等に用いるガラス基板の製造工程では、非常に薄いガラスを運搬するためのガラストレイが用いられ、このガラストレイには1枚ものアルミニウム板(平板)が使われている。運搬に際しては、通常、アルミニウム板の上にウレタン等の薄い緩衝材を密着させ貼り付けたガラストレイ上にガラスを載置している。
現状、ガラストレイによって運搬される最も大きいガラスは、およそ2500×2500mmである。
【0003】
ガラストレイにはJIS A3004PやJIS A5052Pのアルミニウム板が一般的に用いられている。係るガラストレイ用アルミニウム板としては薄板の部類に入る3mm以下程度の板厚のものが用いられ、その大きさはガラスと同等以上であることが必要である。また、その重量は約40kg程度である。
【0004】
現状、係るガラストレイには、全体のひずみが2mm以内、長さ方向のそり3mm以下、表面部には傷等の凹凸は不可といった平坦度に関する極めて厳格な特性が求められている。係る要求特性を超えるひずみやそりがガラストレイに生じていると、ガラストレイを用いて運搬するガラス自体にも傷や変形が生じ、最終製品となった際に色むらや寸法不具合等の問題が発生する。
通常は所定回数の熱間圧延加工を行った後、最終的な仕上げとしての冷間圧延加工を施すことにより寸法出しを行い平坦度に関する特性を満足している。
【0005】
また、ガラストレイは通常、繰り返して使用されるが、運搬中にガラス破損等の不具合が生じた場合には、そのガラストレイは再利用することなく処分されるため、ガラストレイの製造方法に関しては極力安価で安定した製造方法が必要となる。
【0006】
ところで、近年、液晶パネル等の大型化に伴い、これに用いるガラスも3500×3500mm程度にまで大型化してきていることから、これを搬送するためのガラストレイも同等以上の大きさのものが必要となってきている。
しかし、3500×3500mm程度といった程の大きさともなると、熱間圧延加工は可能であるものの、高い平坦度を確保しつつ所望の板厚(3mm以下程度)に精度良く仕上げ得る方法であるところの冷間圧延加工を施すことは、通常用いられる生産設備で対応することは困難なのが現状である。即ち、これを一挙に1枚板として得ることは困難である。そのため、既存生産設備で製造された複数のアルミニウム平板を接合することで必要とする大きさのガラストレイを製造する方法が検討されている。
【0007】
一般的にアルミニウム平板を接合する方法には溶融接合又は固相接合に大別される各種接合法がある。この各種接合法によってアルミニウム平板の接合を行った場合には、溶融接合及び固相接合の何れであっても、接合の際の熱影響等に起因して当該接合部付近に反り上がりや変形が生じやすい。
【0008】
しかし、これらの各種接合法の中で、固相接合である摩擦攪拌接合法(Friction Stir Welding、以下「FSW」とも記載)は接合変形が比較的に少ない接合方法として注目されている(例えば特許文献1)。
ただし、FSWにおいても接合変形が皆無という訳ではない。
【0009】
接合部付近に生じやすい上述の反り上がりや変形の一般的な矯正方法の一つとしては、被加工材の両端をクランプしてお互いを逆方向に引っ張る方法であるストレッチャー加工がある。
しかし、このストレッチャー加工により接合アルミニウム平板を矯正すると、接合部の板厚が減少してしまい完全に平坦にすることはできない。接合部の強度が溶接時の入熱により低下しているからである。
【0010】
また、重しを載せ加熱炉に保持する熱処理加工も考えられる。
しかし、均一な平坦度を得るにはガラストレイ全体をカバーする大きさが必要となり、更にはその重しを載せても耐えることができる剛性のある受けも必要となる。また、熱処理であるため反り上がりを矯正させるだけの温度(300℃前後)と時間(5時間前後)にて熱処理炉の中で保持することが必要となり、簡便な方法とは言いがたく、生産効率が低く、工業的な適用は現実的ではない。
【0011】
また、突合せ溶接継手の矯正法の公知例として特許文献2がある。突合せ溶接し、凝固完了直後の未冷却ビード部近傍に溶接角変形とは逆方向に逆モーメントを付与する方法であり、接合部を高温時に矯正することで極めて小さな加圧力で接合角変形を矯正できるとされる。
省スペースで高能率に溶接角変形の発生を防止する方法ではあるとしても、部材(本願でいえばアルミニウム平板)全体の中の極めて局所的な範囲に加圧力を及ぼすに過ぎない方法であるので、アルミニウム平板全体としての平坦度をガラストレイ用に適する程に高め得るとは到底期待することができない。
また、この方法は高温で矯正加工を行なっているものであり、接合温度の低いFSWでは適用しにくい。
【0012】
また、アルミニウム薄板突合せ継手の矯正法の公知例として特許文献3がある。アルミニウム及びその合金板の突合せ溶接継手において、溶接部に平行に溶接部境界から30mmの範囲の板部をロール加圧することを特徴とする。
接合変形を簡便にかつ効果的に行なう方法で加圧部を減厚させる方法ではあるとしても、上の特許文献2で述べたところと同様の理由により、高い平坦度をもつガラストレイ用アルミニウム平板を得ることは到底期待することができない。
【0013】
同様に、ローラを用いて矯正を行なう公知例として特許文献4がある。
摩擦攪拌接合装置に矯正加工機を付随した一体型の装置であり、接合と同時に矯正加工を行なっている。
その矯正加工は上下一対のローラにて押付け加圧を行なっている。接合装置と一体化のためコンパクトで有効なものであるが、しかし、一体化ゆえに装置が複雑なものとなってしまう欠点がある。しかも後に説明するように、一回の矯正処理を施すだけでは、高い平坦度をもつガラストレイ用アルミニウム平板の製造に対応することは期待することができない。
【0014】
同様に、接合時に加工を行う特許文献5もある。この公知例の接合方法はFSWにおいて接合線方向に沿う引張力を加えながら接合する技術であり、前述した矯正加工の一種にあげたストレッチャー加工に該当する。
この様なストレッチャー加工では接合と矯正加工を同時に行なう必要が有り設備及び工程が複雑化する要因となる。また、この方法では、接合線方向についての平坦度は得られるとしても、幅方向、即ち接合線方向に垂直な方向についての平坦度は得られにくいため、板全体に渡っての高い平坦度が要求されるガラストレイ用アルミニウム平板の製造に適用することは期待することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第2712838号公報
【特許文献2】特開昭60−221190号公報
【特許文献3】特開平08−39285号公報
【特許文献4】特許第4008535号公報
【特許文献5】特開平10−230373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の金属平板の製造方法は、一の金属平板の端面と他の金属平板の端面とを突合せ接合し、高い平坦度を有する幅の広い金属平板を製造することができ、一枚板で用いられていたアルミニウム平板のガラストレイと同等の平坦度を有して、接合されたアルミニウム平板を工業的に製造することができる金属平板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の金属平板の製造方法は、一の金属平板の端面と他の金属平板の端面とを突合せ接合して一枚の金属平板とする工程と、金属平板の突合せ接合部が平板部から偏奇している面を前記突合せ接合部を挟む幅W1の範囲に渡って押圧すると共に前記偏奇している面と反対側の面を少なくとも幅W1よりも広い幅の範囲に渡って支持する第1の矯正処理工程と、前記第1の矯正処理工程における押圧面とは反対側の面を前記突合せ接合部を挟む前記幅W1よりも狭い幅W2範囲に渡って押圧すると共にその反対側の面、即ち前記第1の矯正処理における押圧面を少なくとも幅W2よりも広い幅の範囲に渡って支持する第2の矯正処理工程とよりなることを特徴とする。
【0018】
前記接合がFSWであって、前記W1は少なくともFSW接合における攪拌領域の幅よりも広いものである様にしてもよい。
【0019】
前記第1の矯正処理工程及び前記第2の矯正処理工程の少なくともいずれかにおける押圧をローラによる押圧としても良い。
【0020】
前記金属平板をアルミニウム金属平板とすることができる。
なお、本発明において、アルミニウム金属平板とは純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属平板をいうものとする。
【0021】
前記したようにFSW(摩擦攪拌接合法)は接合変形が比較的に少ない接合方法ではあるものの、しかし、この方法によった場合においても接合変形が皆無という訳ではない。
従って、それを矯正するために前記したロール加圧その他の方法を試みたが、ガラストレイ用アルミニウム板に求められる前記した通りの極めて厳格な平坦度特性を満足することはなかなか困難であり、容易にはその課題を乗り越えることが出来なかった。
【0022】
そこで、この問題を解決するために多くの観点から種々の詳細な検討を行なったところ、その解決の糸口として、FSWにおいては、接合部の近傍に接合線に沿って一定の幅で平坦な面が出現するという、知られている各種の接合方法の中でも特にFSWの場合のみにおいて生じると思われるFSW固有の現象が存在する点にこそ問題の原因が有るらしいことが分かった。
即ち、図5に示すように、FSWにより一のアルミニウム平板1と、他のアルミニウム平板2との端面同士を接合して1枚の金属平板としたアルミニウム平板3は接合により接合実施面3aの裏面であるガラスを置く面(以下「使用面」)3bを上面に置いた場合、接合部4が図5内に矢印Iで示すアルミニウム平板3の法線方向に反り上がりを生じるが、この接合部4を含む領域が山形状をなす反り上がり変形形状は、図5の実線Aで示すようにアルミニウム平板3の接合方向に対して垂直な面で切った断面が山形状の山頂付近にほぼ接合部の幅に相当する範囲に渡って平坦な水平部4aを有するようなものとなる。
【0023】
然るに、この反り上がりを矯正するよう前記アルミニウム平板3の接合部4を使用面3b側から接合実施面3a側へと矢印IIで示す方向に押圧した時、前記アルミニウム平板3全体には図5内に矢印III、IVで示す向きに曲げモーメントが負荷される。そのため、この押圧によって、アルミニウム平板3の反り上がりは矢印IIで示す方向に矯正されるものの、しかし、同時に、上記した水平部4aが存在するため、アルミニウム平板3の上記水平部4aの肩部では、この曲げモーメントIII、IVは前記水平部4aを矢印IIで示す方向に突き出す力となり、図5の点線Bで示すような逆反り変形を生じさせてしまう。
【0024】
その後、矢印IIで示す方向への押圧を更に進めアルミニウム平板3全体を可及的に平坦にし、その後押圧力を除荷すると、前記アルミニウム平板3にはスプリングバックが生じるため、アルミニウム平板3全体の断面形状は図5の点線Cで示すようになり、逆反り部6が残存してしまう。
【0025】
矯正処理工程における上記した如くのアルミニウム平板3の挙動に対し、本発明の金属平板の製造方法は、まず第1の矯正処理工程によって山頂を押圧することにより板面の広い範囲に渡る反り上がり(いわば「うねり」といってもよい。)を矯正した後、次に、その第1の矯正処理工程によって惹起されてしまったところの図5の点線Cで示すような逆反り部6(即ち、狭い範囲での細かな凹凸。)を矯正するために、さらに第2の矯正処理工程を施すようにしたものである。即ち、本発明の金属平板の製造方法によれば、第1の矯正処理工程によってアルミニウム平板3全体を可及的に平坦にし、さらに第2の矯正処理工程で逆反り部6を可及的に解消することが出来るので、一枚板で用いられていたアルミニウム平板のガラストレイと同等の平坦度を有して、接合されたアルミニウム平板を工業的に製造することができる。
【0026】
上に説明した本発明の矯正メカニズムから明らかなように、第2の矯正処理工程によって押圧する幅W2は、第1の矯正処理工程によって押圧する幅W1よりも狭いものであることが必要である。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、幅の広いアルミニウム平板を得るために溶接後、その接合部に生じる可能性のある反り上がりを矯正し、従来の一枚板で用いられていたガラストレイと同等の平坦度を有するアルミニウム平板を工業的に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の説明図であり、(a)反り上がりを矯正する斜視図、(b)逆反りを矯正する斜視図である。
【図2】接合実施面をローラ加工することにより(a)反り上がりを矯正する模式図、(b)逆反りを矯正する模式図である。
【図3】実施例の使用面接合部表面形状を測定した結果を示す図である。
【図4】比較例の使用面接合部表面形状を測定した結果を示す図である。
【図5】使用面をローラ加工により第1の矯正処理を行った時に逆反りが生じる態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び図2は本発明の金属平板の製造方法の好ましい実施形態を示す説明図である。矯正処理方法はローラである例を示している。
先ず同厚の一のアルミニウム平板1と、他のアルミニウム平板2との端面同士を突合せ、使用面3bの裏側からFSWにより接合し、アルミニウム平板3を作成する工程を実施する。
次に、図1(a)及び図2(a)に示すように、使用面3bを上向きに置いた時、接合部4がアルミニウム平板3の図1上向き矢印Iで示す法線方向に反り上がるように溶接角変形している。その状態で、アルミニウム平板3の使用面3bの一箇所をローラ7で押圧すると共に、前記アルミニウム平板3の接合実施面3aのローラ7に対応する箇所は下側押さえ固定盤8で支持することにより、前記溶接角変形をアルミニウム平板3の図2下向き矢印IIで示す方向に矯正する。ローラ7の幅W1は接合部4の幅の1.5倍程度である。また、ローラ7の押圧を支持する下側押さえ固定盤8の幅は、少なくとも幅W1よりも広いものであればよいが、板面の広い範囲に渡る反り上がり(いわば「うねり」といってもよい。)を矯正する上ではアルミニウム平板3の幅よりも広いものであってアルミニウム平板3全体を支持し得ることが好ましい。
【0030】
引き続き下側押さえ固定盤8による前記アルミニウム平板3の接合実施面3aの支持状態は保持しつつ、ローラ7を接合部4に沿って移動しながらアルミニウム平板3の接合部4上面を押圧することにより前記接合角変形を前記アルミニウム平板3の接合部4全体に渡って順次矯正する第1の矯正処理工程を行う。
【0031】
以上の第1の矯正処理を施すことによって、前記アルミニウム平板3の広い範囲に渡る反り上がりは矯正され接合部を頂点として生じていたいわば「うねり」的な変形は殆どなくなる。しかし、図5の細かい点線Bに示すように、上記第1の矯正処理においてアルミニウム平板3の反り上がりが矯正されるにつれて、前記接合部4を含む水平部は、図5内に矢印III、IVで示す曲げモーメントに基づき矢印IIで示す方向に撓み、逆反り変形が生じる。その結果、点線Cで示すような逆反り部6が残存した状態となり、以上の第1の矯正処理のみによっては前記アルミニウム平板3を完全に平坦にすることができない。
【0032】
そこで、第1の矯正処理後に、図1(b)及び図2(b)に示すように、今度はアルミニウム平板3の接合実施面3aを上向きに置き、ローラ7’と固定盤8’(ここで、固定盤8’は、前記固定盤8と同一であってももちろんよい。)により再度矯正する第2の矯正処理を行う。この第2の矯正処理は、図2(b)に示すように逆反りが生じた箇所のみを ローラ7’により局部的に押圧する。次に、下側押さえ固定盤8’による前記アルミニウム平板3の使用面の支持状態は保持しつつ、 ローラ7’を接合部4に沿って移動しながらアルミニウム平板3の接合部4接合実施面を押圧することにより前記接合角変形をアルミニウム平板3の接合部4全体に渡って順次矯正する。この時のローラの幅は逆反りの幅の1.5倍程度の幅W2である。
【0033】
上記の例はローラ7及び ローラ7’と固定盤8及び固定盤8’とによる加工であるが、固定盤8及び固定盤8’の代わりにローラ7及びローラ7’とは別のローラを用いてもよい。その場合には、上下のローラの幅は同一とする。
【0034】
本発明の金属平板の製造方法では実施の態様により、接合部4全体をプレス機のような装置を用いて押圧する方法も可能である。上下の平坦工具の幅は同一である。初めに接合部4の幅1.5倍程度の幅W1を持つ平坦工具にて接合部4全体を押圧し矯正する。次に平坦工具の幅を逆反りが生じた幅の1.5倍程度の幅W2に変更し上記と同様に押圧し矯正する。
【0035】
本発明の金属平板の製造方法に用いられる同厚の一のアルミニウム平板1と、他のアルミニウム平板2は、特に限定されるものではなく、純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる任意のアルミニウム平板を用いることができる。また本発明の金属平板の製造方法において、同厚の一のアルミニウム平板1と、他のアルミニウム平板2の突合せ接合をする方法は固相接合法の一つであって熱変形が少ないFSWが好ましい。FSWを行うことにより、接合実施面の裏面側が平坦に仕上がるため、比較的平滑な板材を得ることができる。


【実施例1】
【0036】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、接合部の平坦度の評価は使用面3bの接合中心から左右に幅30mmの表面形状を接合開始側、終了側にて測定した。
【0037】
実施例
幅1750mm長さ3500mm厚み2.0mmのアルミニウム平板(材質:JIS A5052P−H32)を2枚、FSWを用いて接合し、幅および長さ3500mmの接合板を得た。
本実施例の接合板では角変形により接合部が20mm反り上がっていた。
この得られた接合材を図1に示す方法により、合金鋼材質のローラ(径100×幅20mm)を所定の荷重(10kN)にて、使用面3b側からローラ加工により矯正し、その後さらに接合実施面3a側から、同様にローラ加工により矯正を行ない、接合されたアルミニウム平板を得た。
【0038】
比較例
上記実施例にて作製したものと材質、大きさ及び接合後の角変形量が同じであった接合板を用いて、ローラによる押圧を実施したのが使用面3b側からのみであること以外は実施例と同様に矯正を行ない、アルミニウム平板を得た。
【0039】
上記の実施例及び比較例の接合後及び矯正加工後の使用面3b接合部の表面形状を測定した結果を図3、図4に示す。
【0040】
本発明による実施例では矯正後の表面形状は±20μm以下となり、非常に良好な平坦度が得られた。
【0041】
一方、比較例では接合部に逆反りが生じており、表面形状は±100μm以上であった。
【符号の説明】
【0042】
1 被接合材であるアルミニウム平板(一の金属平板)
2 被接合材であるアルミニウム平板(他の金属平板)
3 接合材であるアルミニウム平板(一枚の金属平板)
3a 接合材であるアルミニウム平板の接合実施面
3b 接合材であるアルミニウム平板の接合実施面裏面(使用面)
4 接合部
7、7’ ローラ
8 下側押さえ固定盤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の金属平板の端面と他の金属平板の端面とを突合せ
接合して一枚の金属平板とする工程と、金属平板の突合せ接合部が平板部から偏奇している面を前記突合せ接合部を挟む幅W1の範囲に渡って押圧すると共に前記偏奇している面と反対側の面を少なくとも幅W1よりも広い幅の範囲に渡って支持する第1の矯正処理工程と、前記第1の矯正処理工程における押圧面とは反対側の面を前記突合せ接合部を挟む前記幅W1よりも狭い幅W2範囲に渡って押圧すると共にその反対側の面、即ち前記第1の矯正処理における押圧面を少なくとも幅W2よりも広い幅の範囲に渡って支持する第2の矯正処理工程とよりなることを特徴とする金属平板の製造方法。
【請求項2】
前記接合がFSW(摩擦攪拌接合、Friction Stir Welding)であって、前記W1は少なくともFSW接合における攪拌領域の幅よりも広いものであることを特徴とする請求項1に記載の金属平板の製造方法。
【請求項3】
前記第1の矯正処理工程及び前記第2の矯正処理工程の少なくともいずれかにおける押圧がローラによる押圧であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属平板の製造方法。
【請求項4】
前記金属平板が、アルミニウム金属平板であることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれか一に記載の金属平板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−234432(P2010−234432A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86879(P2009−86879)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】