説明

金属板の誘導加熱装置及び誘導加熱方法

【課題】薄い金属板であっても、磁性、非磁性を問わず加熱温度分布が制御でき、また、板幅変更、蛇行に追従加熱できる誘導加熱装置及び誘導加熱方法を提供する。
【解決手段】誘導コイルの内側を通過する金属板を誘導加熱する装置であって、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ該金属板へ垂直投影した際の垂直投影像において、表面側と裏面側の該導体が、該金属板の幅方向中央部においては、金属板の長手方向に対して互いに重ならないようにずらして配置されるとともに、該金属板の少なくともどちらかの幅方向端部においては、金属板の長手方向に対して互いに少なくとも一部が重なるように配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄やアルミなどの鉄及び非鉄金属板の誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関する。特に、金属板が薄板、厚板にかかわらず、非磁性状態でも金属板を効率よく加熱する誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の高周波電流による誘導加熱は、焼き入れをはじめとして熱処理をするために広く使われている。鋼板やアルミ板などの鉄、非鉄の薄板も製造過程で材質を制御する目的で、加熱速度をあげて、生産性の向上や、生産量を自在に調整する目的などで、従来のガス加熱や電気加熱による間接加熱に代わる加熱方式として使用されてきている。
【0003】
金属板を誘導加熱する場合には、大きく2つの方式がある。1つは、金属板の周囲を囲んだ誘導コイルに高周波電流を流し、発生した磁束が金属板の長手方向を貫通し、金属板の断面内に誘導電流を発生させ加熱するいわゆるLF(縦断磁束加熱)方式と呼ばれる誘導加熱方式と、金属板を1次コイルの巻かれたインダクターと呼ばれる良磁性体の間に配置し、1次コイルに電流を通じ発生させた磁束をインダクターに通すことにより、インダクター間を流れる磁束を金属板が横切る様に通過することにより、金属板の平面に誘導電流が発生し誘導加熱するTF(横断加熱方式)方式である。
【0004】
LF方式の誘導加熱は、温度分布の均一性が良いものの、発生する誘導電流は板断面内を循環するが、電流浸透深さの関係から、板厚が薄い場合には電源の周波数を高くしなければ、誘導電流が発生せず、さらに、非磁性材、又は、磁性材でもキュリー点温度を超えたものは、電流の浸透深さが深くなるため板厚の薄いものは加熱ができないという課題がある。
【0005】
一方、TF方式の誘導加熱は、磁束が金属板の平面を貫通するため、板厚や磁性、非磁性の区別無く加熱できるという特徴や、磁気抵抗の小さいインダクターを用いることにより漏れ磁束を少なくでき、金属板の表裏に対抗するインダクター間に磁束を集中させることができるため、加熱効率が高いという特徴がある。
【0006】
その反面、温度分布の不均一が生じやすいという問題や、金属板が対向するインダクターの中心に無い場合、磁性材ではどちらかのインダクターに吸引され、より温度偏差がつきやすくなるという問題がある。
【0007】
さらに、TF方式の誘導加熱の場合、金属板の板幅変更や連続通板ラインでは、蛇行した場合の対応が難しいという欠点がある。
【0008】
これらの課題を解決するため、特許文献1では、帯板の進行方向の表面、裏面のシングルターンのコイルをずらして配置することが開示されている。
【0009】
また、特許文献2では、被加熱材に面する誘導加熱コイルの長軸が湾曲するような菱形形状の誘導コイルが提案されている。
【0010】
特許文献3は、本発明者による金属板を周回する誘導コイルを進行方向でシフトさせる誘導コイルを提案している。
【0011】
【特許文献1】特開2002−43042号公報
【特許文献2】特開2002−151245号公報
【特許文献3】特開2004−120173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図1は、従来のLF方式の誘導加熱を示す模式図である。被加熱材である金属板1の周囲を高周波電源3に接続された誘導コイル2で囲み、1次電流5を通じることにより、金属板1の内部を磁束4が貫通し、磁束4の周りに誘導電流が発生し、発生した誘導電流により、金属板1を加熱する。図2は、誘導電流が金属板1の断面内に発生する様子を示す断面模式図を示す。
【0013】
金属板1を貫通する磁束4により、金属板1の断面には誘導コイル2に流れる1次電流5と、逆向きの方向に誘導電流6が流れる。この誘導電流6は、金属板1の表面から1式で示される電流浸透深さδの範囲に集中して流れる。
δ[mm]=5.03×10+5(ρ/μrf)0.5 ・・・ 1式
ここで、ρ:比抵抗[Ωm]、μr:比透磁率[−]、f:加熱周波数[Hz]
【0014】
発生した誘導電流6は、図2に示すように、板断面の表裏で逆向きに流れるため、電流浸透深さδが深くなると、板表裏の誘導電流が互いに打ち消し合う結果、板断面内を電流が流れなくなってしまう。
【0015】
金属は、温度の上昇に伴いρが上昇するため、δは温度上昇とともに深くなる。また、強磁性や常磁性の磁性材は、温度が上昇しキュリー点に近づくにつれμrが減少し、キュリー点を超えるとμrは1になる。
【0016】
また、非磁性材もμrは1である。μrが小さくなると、1式より非磁性材、又は磁性材の場合は、キュリー点直前からキュリー点を超える温度域では、電流浸透深さδが深くなり、薄い板厚の被加熱材では加熱ができなくなってしまう。
【0017】
例えば、加熱周波数が10[KHz]の場合、常温で、各種金属の電流浸透深さδは、非磁性のアルミで約1[mm]、SUS304で約4.4[mm]、磁性材の鋼では約0.2[mm]であるのに対し、磁性材である鋼の場合、キュリー点を超えた750℃で、電流浸透深さδは約5[mm]となる。
【0018】
板内に発生する表裏電流が打ち消し合わないためには、板厚は最低でも、10[mm]以上必要であり、効率よくパワーを入れるためには、15[mm]程度の厚みが必要になる。
【0019】
一般に、熱処理は、10数μmの箔のような薄板から100mmを超えるような厚板まで、様々な厚みのものを対象としている。
【0020】
例えば、使用量の多い金属板の代表的な素材である自動車や家電品に使用される鋼板は、通常、冷間圧延の済んだ3[mm]前後より薄い板厚が多く、特に、2[mm]以下の場合が多い。これらの材料をLF式で加熱するためには、加熱周波数を、数100[KHz]以上に上げる必要があるが、大容量で高い周波数の電源製作などにハード上の限界があり、工業規模で実現することは困難な場合が多い。
【0021】
特許文献1の方法は、板の上下に誘導コイルを配置した1種のTF方式と考えられ、金属板の進行方向で発生する磁束は、交互に逆向きに発生するが、上下コイルがずれているため、上下コイルで発生する磁束が打ち消し合う領域と磁束が帯板を斜めに横切る領域が交互にでき、磁束が集中するのを防ぐことが可能になっていると考えられる。
【0022】
そのため、従来のTF方式では、端部に磁束が集中し、端部が過加熱するという問題を緩和する効果が発現すると考えられるが、磁束が打ち消し合う領域ができること、シングルターンであることのため、帯板にパワーを入れ電界強度を上げるためには、コイルへ流す電流値を大きくしなければならず、コイルの銅損が増えることなどにより、効率が低下しやすいという問題がある。
【0023】
効率を上げるためには、特許文献1の実施例で開示されているように、上下のシングルターンコイルを帯板に近接させる必要があるが、通板している帯板は形状が変形していたり振動したりするため、広幅で長い区間を通板しながら加熱するのには困難がある。
【0024】
また、特許文献2の方法は、金属の面と対向するように金属の搬送方向おいて、幅方向中央で最も広がった誘導加熱コイルを備え、金属材料の搬送方向に沿ったコイル幅の合計を、実質的に均一とする方法であるが、この方法は、金属材に向かい合わせた誘導コイルからの漏れ磁束により加熱を行う方法となるため、誘導コイルとの距離が離れると、磁束が金属を貫通する保証はなく、金属と近接させないと加熱が起き難く、また、金属の形状が悪く、誘導コイルとの距離が変化する場合には、大きな温度偏差が生じる。
【0025】
また、誘導コイルの幅を進行方向で実質同じ幅になるように菱形形状のコイルとしているが、この形状では、板幅が変化したときには対応がつかない。回転機構を設けるようにしているが、回転させた場合には、進行方向で加熱時間が同じにはならないため、均一温度にはなり難いし、工業規模で大電流を流す加熱装置の回転機構を実現するのは、極めて困難である。
【0026】
両特許文献とも、誘導コイルが金属を囲んだ閉ループ内の加熱ではないため、磁束が確実に金属を貫通する保証は無く、誘導コイルとの距離の影響を受けやすいとともに、誘導コイルのターン数を変えられないため、磁界の強度を制御することは難しい。
【0027】
金属材料が巻き数Nの一次コイルで囲まれている場合、金属材料には一次電流のN倍の電流が流れるが、特許文献2では、5巻きにした例が示されているものの、これは、実質誘導コイルの幅を変えているだけで、巻き数に応じた誘導電流が金属に発生するわけではない。そのため、金属材料に大電流を流すためには、一次電流に大電流を流さなければならず、一次コイルでの発熱損失が大きくなるという問題がある。
【0028】
それに対し、特許文献3は、上記加熱装置の欠点を解消するため、金属板を囲む誘導コイルを、金属板の進行方向でずらすことにより、金属板表裏に面した誘導コイルの直下の金属板内に、表裏誘導コイルで発生する誘導電流が、お互いに干渉しないように独立した電流を発生させることで、電流の浸透深さ以下の板厚の金属板でも、非磁性の金属板でも、加熱することができることを示している。
【0029】
また、誘導コイルが金属板を閉じて周回することから、磁束は、必ず金属板と鎖交するため、誘導コイルと金属板が比較的離れていても容易に加熱することができるという実用上の大きな利点もある。
【0030】
ところが、金属板中央で発生した誘導電流は、金属板端部を流れる時に、電流が集中し高電流密度になりやすいこと、表裏の誘導コイルを離したことにより、端部を流れる誘導電流の時間が長くなることから、板端部が過加熱になりやすく、温度偏差の小さな分布を得るための条件(表裏誘導コイルのズレ量、誘導コイルの幅等)が狭いという問題があった。
【0031】
本発明は、これら従来のLF方式やTF方式が抱える金属板の誘導加熱の課題を解決するもので、誘導コイルを用いて、磁性材に限らず非磁性材や非磁性域においても、また、板厚が10mm以下の金属板でも、また、100mmを超えるような厚板においても、金属板と誘導コイルとのギャップを十分に保ちながら、温度を自在に制御できる温度制御性に優れるとともに、幅変更や蛇行などにも効果的に対応することが可能で、効率よく加熱できる誘導加熱装置、及び、誘導加熱方法を提供することを目的とする。
【0032】
特に、金属板中央部と端部での温度偏差を、従来よりも小さくすることができる誘導加熱装置、及び、誘導加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の要旨は下記の通りである。
【0034】
(1)誘導コイルの内側を通過する金属板を誘導加熱する装置であって、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ該金属板へ垂直投影した際の垂直投影像において、表面側と裏面側の該導体が、(i)該金属板の幅方向中央部においては、金属板の長手方向に対して互いに重ならないようにずらして配置されるとともに、(ii)該金属板の少なくともどちらかの幅方向端部においては、金属板の長手方向に対して互いに少なくとも一部が重なるように配置されることを特徴とする金属板の誘導加熱装置。
(2)前記金属板の少なくともどちらかの幅方向端部における表面側と裏面側の該導体の重なり割合を制御できるように、表面側と裏面側の少なくともどちらかの導体に、前記金属板の長手方向又は幅方向の一方又は両方への移動機構が備えられていることを特徴とする(1)記載の金属板の誘導加熱装置。
(3)前記誘導コイル全体が、前記金属板の幅方向に対して傾斜を有して配置されていることを特徴とする(1)又は(2)記載の金属板の誘導加熱装置。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属板の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法であって、前記表面側と裏面側の導体において、前記少なくとも一部が重なるように配置される金属板の幅方向端部の前記導体から、前記ずらして配置される金属板の幅方向中央部の前記導体までの間に配置されている導体の、傾斜角度、傾斜開始位置、導体幅の少なくともいずれかを調整することで、前記金属板の温度分布を制御することを特徴とする金属板の誘導加熱方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属板の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法であって、加熱される金属板の板幅の変化、蛇行の程度の少なくともいずれかに対応して、前記表面側と裏面側の導体の少なくともいずれかを移動させることを特徴とする金属板の誘導加熱方法。
【0035】
本発明でいう「金属板の長手方向」とは、金属板の通過方向(搬送ラインと同一方向)のことである。
【0036】
本発明でいう「LF方式」とは、非加熱物の軸方向に交番磁界を与える従来のongitudinal lux(縦断磁束加熱)方式のことである。
【発明の効果】
【0037】
本発明による誘導加熱は、板厚の厚い材料や磁性域の薄板の加熱を可能とするだけではなく、従来の誘導加熱方式では不可能であった比抵抗が小さく非磁性のアルミや銅などの非鉄金属板の加熱、鉄などの磁性材におけるキュリー点以上の温度での非磁性域における加熱を可能とする。
【0038】
また、本発明は、金属板中央部と端部での温度偏差を、従来法よりも小さくすることを可能とする。誘導コイルを構成する導体の位置や幅等を調整した場合には、加熱温度分布も、容易に制御できることから、前工程での温度偏差の解消や後工程での温度特性を考慮した精密な温度制御性を有する加熱をすることができ、冶金特性の均一化による品質の向上や、品質の安定性の向上、操業変動の解消も可能となる。
【0039】
さらに、ガス加熱の炉で問題となる熱慣性の影響が無いため、板厚変更があっても加熱速度を自在に制御できることから、通板速度を変更する必要も無くなる。そのため、ガス加熱の炉では、通常、板厚変更時に炉が安定するまでの間必要とされる繋ぎ材が不要になるばかりではなく、通板速度を落とすことなく生産を続けることができるので、生産性の低下を回避することができる。
【0040】
また、本発明の誘導加熱装置は、板厚・板幅の変さらに対応できるだけではなく、蛇行などの変動要因にも柔軟に対応し、所望の温度分布が得られるばかりではなく、板幅に応じた誘導コイルのセットを複数持たずに済むことから、設備費も格安にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、誘導コイルの内側を通過する金属板を誘導加熱する装置であって、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ該金属板へ垂直投影した際の垂直投影像において、表面側と裏面側の該導体が、該金属板の幅方向中央部においては、金属板の長手方向に対して互いに重ならないようにずらして配置されるとともに、該金属板の少なくともどちらかの幅方向端部においては、金属板の長手方向に対して互いに少なくとも一部が重なるように配置されることを特徴とする。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、説明を簡単にするため1T(ターン)の場合について図面を用いて説明するが、本発明は、1Tに限定されるものでは無く、複数Tでも可能なものである。
【0043】
図3は、本発明の誘導加熱装置の1例を示す平面模式図であり、図4は、そのA−A断面の模式図である。以下の本発明の説明で用いる誘導コイルとは、電気良導体で構成されるパイプや線材、板などで、被加熱材を周回させて1周以上巻いた、導体により形成されるコイルの総称として用い、被加熱材を囲む形状は、矩形でも円形でも、特に規定するものではない。導体の材質は、銅やアルミ等の電気伝導良好な材質が好ましい。
【0044】
本発明では、まず、誘導コイルの内側を通過する金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ該金属板へ垂直投影した際に、表面側と裏面側の該導体の垂直投影像が、金属板の長手方向に対して互いにずれるように該導体を配置する。
【0045】
すなわち、図3のように、金属板1と面する板幅方向に向かう誘導コイル2を構成する導体2a及び2bを、金属板1を挟んで金属板の長手方向でずらして配置する。
【0046】
さらに、本発明では、該ずれ幅が板幅方向の中央部よりも板幅方向の端部において小さくなるように、金属板の表面側と裏面側の少なくともどちらか一方の該導体を、金属板の板幅方向端部(板端部とも言う)に向かって、板幅方向に対して斜めに横切る向きに配置するとともに、金属板の板幅方向端部近傍で誘導コイル2を構成する導体2a及び2bが金属板へ垂直投影した際に重なるように配置する。
【0047】
ここで、図3では、ずれ幅が板幅方向の中央部よりも板幅方向の両端部において小さくなるように、金属板の表面側の導体2aと裏面側の導体2bを、両方、共に、板端部に対し斜めに横切るように配置した場合を示している。
【0048】
金属板の表裏面側の誘導コイルを構成する導体を、互いに金属板の長手方向に対してずらして配置する理由は2つある。その理由について、図3のB−B’断面を模式化した図5を用いて説明する。
【0049】
第1の理由は、金属板に面する誘導コイル2の表面側と裏面側の導体2a、2bを長手方向にずらすことにより、表裏の誘導コイルで発生する磁束の干渉する割合が減り、マクロ的には右ねじの法則により、図5の金属板の側面図に示すように(誘導コイルは表面側の導体のみを図示)、金属板表裏面に面する各々の誘導コイルを構成する表裏導体で発生した磁束4が金属板1を斜めに貫通するようになり、その磁束4によって、誘導電流のパス10が、磁束4と直角に板厚斜め方向に広がるためである。
【0050】
従来のLF式誘導加熱では、金属板の表裏面で誘導コイルを構成する導体により発生する磁束が、金属板長手方向すなわち進行方向成分のみが金属板の断面を貫通し、金属板の表裏に、向きが逆で大きさの等しい誘導電流が発生する。ところが、非磁性材又は磁性材が非磁性域の温度になると、電流浸透深さが深くなり、板厚が薄いと、金属板表裏面の誘導電流が干渉するため、電流が流れなくなる。
【0051】
金属板の長手方向表裏面で誘導コイルを構成する導体をずらす第2の理由は、上述した誘導電流のパス10が板の表裏で打ち消し合わないようにするためである。金属板表裏で発生した誘導電流は、独立したパスを形成することで、金属板を循環する誘導電流となり、金属板が非磁性であっても、誘導加熱が可能となる。
【0052】
すなわち、図5の表面側の導体2aを流れる一次電流の向き(紙面に対して垂直で奥へ向かう向き)と反対の向きに、金属板1の内部の表面側に誘導電流が流れ、一方、裏面側の導体2bにおいても、2bを流れる一次電流の向き(図示していないが、紙面に対して垂直で手前へ向かう向き)と反対の向きに、金属板1の内部の裏面側表層付近に誘導電流が流れる。
【0053】
図6及び図7は、本発明の効果を説明するために用いるが、これを平面図で示すと、導体2a、2bを流れる一次電流の向きは図6のようになり、生じる誘導電流はそれぞれの導体2a、2bの位置に対応して、図7のようになる。
【0054】
なお、導体2a、2bによって生じた誘導電流(金属板の幅方向で互いに逆向き)は、金属板内部で繋がり、図7に示すような環状の誘導電流が発生する。2a、2bにより生じる誘導電流同士を結びつける金属板両端部の誘導電流(金属板長手方向)は、主に、金属板側面に面する誘導コイルの導体(導体2aと導体2bを結ぶ側面の導体)を流れる一次電流によって生じる。
【0055】
このように発生した環状の誘導電流により、金属板はジュール加熱される。環状の誘導電流を金属板1の断面の図5で見ると、導体2aの一次電流により生じる誘導電流のパス10(金属板内部の右上)と、図示していない導体2bの一次電流により生じる誘導電流のパス(図5の金属板内部の左下に生じる)同士を、右上と左下を結ぶように、金属板両端部の誘導電流が流れる(図7のA−A断面模式図、参照)。
【0056】
金属板に面する誘導コイル2の表面側と裏面側の導体を長手方向にずらす量が小さい場合には、従来のLF式誘導加熱に近づき、板厚が薄い非磁性の金属板の場合には、発生する誘導電流密度が低下してくる。
【0057】
誘導電流が有効に発生するずらし量(ずれ量とも言う)について、電磁場解析により種々の検討を行った結果、金属板と誘導コイルを構成する導体が近い場合には、表側の導体と裏側の導体のずれ量が比較的小さくても、非磁性域でも有効な誘導電流が金属板に発生するが、金属板と導体が離れる場合には、表側の導体と裏側の導体のずれ量を大きくしなければ、有効な誘導電流が金属板に発生させることができないことが判明した。
【0058】
本発明の誘導加熱が非磁性域で有効に機能させるには、生産現場で実現できる金属板と誘導コイルを構成する導体の間隔を考慮し、以下の範囲で表裏面の導体を互いにずらすことが好ましい。
【0059】
すなわち、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ金属板の通板ラインへ垂直投影した際に、図8(a)、(b)に示すように表面側と裏面側の導体における垂直投影像の重なりが、面積で80%を越えて金属板の進行方向で互いに重ならないような位置に配置するのが望ましい。
【0060】
すなわち、重なりを0〜80%とすることで、斜めに発生する磁束4が有効に誘導電流を発生させることができる。この原理から明らかなように、重なりは少ない方が誘導電流は発生しやすく、好ましくは、0%(重ならない)である。
【0061】
さらに、本発明では、金属板の表面側と裏面側の少なくともどちらか一方の導体を、ずれ幅が板幅方向の中央部よりも板幅方向の両端部において小さくなるように、金属板の板幅方向端部(板端部とも言う)に向かって、板幅方向(板端部方向とも言う)に対して斜めに横切るように配置する。
【0062】
その理由は、図6の様に、導体2aと導体2bを金属板の長手方向に直角にして平行にずらして配置すると、発生する誘導電流10は、図7のように金属板内を流れるが、この時、金属板の端部側を流れる誘導電流は、金属板1の中央部を流れる時にはd1の幅であったものが、d2へと狭められてしまい、高電流密度化する。
【0063】
板端部側の誘導電流の流れる幅が狭まるのは、誘導電流と金属板端部側を流れる誘導コイルの一次電流との間のリアクタンスを下げるように、誘導電流が金属板端部側に寄るため等の理由による。誘導電流の流れる幅が狭まると、端部側の電流密度が板中央部を流れる電流密度より高くなり高温になりやすくなる。
【0064】
また、加熱時間も、金属板中央部を流れる電流がd1の幅に相当する時間加熱されるのに対し、金属板端部は、導体をずらしたことにより、d3の幅に相当する時間加熱されることになり、より金属板端部側の温度が高温になりやすくなる。
【0065】
そのため、本発明では、金属板1に発生する誘導電流の電流密度と加熱時間を制御するため、金属板の端部側に向かう導体を、金属板の幅方向途中から曲げる。
【0066】
効果的に温度分布を制御するためには、コイル導体2a及び2bの少なくともどちらかを、金属板端部に向かい斜めに横断するように配置をする。こうすることにより、金属板中央部を流れる電流の幅のまま、金属板端部側へ一次電流を流すと、誘導コイルを構成する導体の幅に近いまま、誘導電流が金属板端部側へ流れる。
【0067】
したがって、例えば、図3の場合には、図9のような電流路になり、電流密度が金属板端部で高くなるのを防ぐことができる。この場合、傾斜させる誘導コイルの導体の角度θを変えると、金属板が進行方向で誘導コイルを横切る時間、すなわち、加熱時間が変わるため、加熱温度分布を制御することができる。
【0068】
また、本発明においては、金属板の端部の表裏の誘導コイルを構成する導体を、垂直投影像において少なくとも一部は、重ねるように配置する。このようにすることで、さらに均一な加熱温度分布を得ることができる。
【0069】
特に、誘導加熱装置で加熱する前に、金属板が輻射加熱を受けてくる場合等には、一般に、板端部の温度が板中央部の温度よりも高く加熱されてくることが多く、金属板端部の温度を板中央部よりも下げて誘導加熱したいことなどがあるが、その際にも、本発明の構成により、均一に加熱することが可能となる。
【0070】
本発明の装置において、加熱時間を変えるためには、傾斜させる誘導コイルの導体幅を変化させてもよい。少なくとも一部が重なるように配置される金属板の幅方向端部の導体から、ずらして配置される金属板の幅方向中央部の導体までの間に配置されている導体の傾斜角度θは、表裏誘導コイルのずらし量、傾斜を開始する位置により変わる。それにより、加熱時間も変えられるので、温度分布も制御することができる。
【0071】
この場合、導体幅を変えると電流密度も変わるので、得たい加熱温度分布が得られるように、誘導コイルのずらし量、傾斜開始位置、傾斜角度、導体幅を検討して最適な構成となるように製作する必要がある。
【0072】
本発明においては、金属板の端部の表裏の誘導コイルを構成する導体を、垂直投影像において少なくとも一部は重ねるように配置する。すなわち、前述したように、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を互いに重なるような位置に配置し、逆向きの一次電流が流れるようにすると、金属板が非磁性域又は電流浸透深さよりも薄い板厚である場合、板の端部近傍では誘導電流が干渉しあい、環状電流が発生しなくなるため、板端部の加熱ができ難くなる。
【0073】
また、金属板の表裏の誘導コイルの重なり位置を板端部から板中央部へ向かわせるに従い、板端部の昇温させない範囲も、板中央寄りに拡大させることが可能となり、金属板の中央側の温度が高く、板端部の温度が低い加熱温度分布を得ることができる。
【0074】
金属板端部へ斜めに導体を配置し、板端部近傍で表裏誘導コイルを重ねる装置例としては、上述の図3の例の他に、例えば、図10aのように、金属板中央部を頂点として、山形の導体を金属板表裏に配置する方法や、同様に金属板長手方向に弧を描いて囲む図10bのような配置や、図11a、図11bのように、金属板の表面側又は裏面側に、長手方向に膨らんだ誘導コイル(この場合2a)を配置する方法などがある。
【0075】
また、図12のように、表裏面コイルのコイル片側ずつを斜めに配置したものを並べて配置してもよい。ただし、必ず、金属板端部近傍では、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ金属板の通板ラインへ垂直投影した際に、表面側と裏面側の導体が互いに重なり、一次電流が逆向きに流れるような位置に配置する。
【0076】
本発明では、斜めに配置する導体の形状を、直線、円を組み合わせた形状としているが、曲線の形状は、特に規定するものではない。また、その導体の断面も、矩形に限らず、円形や楕円形でも構わない。
【0077】
また、表裏の導体は、金属板に対し表裏対称である必要も無く、また、左右等の対称性も必要無く、所望の温度分布になるように、誘導コイルを構成する導体を配置すればよい。図13aの場合には、金属板の幅方向、進行方向で表裏の誘導コイルが非対称に配置した場合を示す。
【0078】
図13bは、図13aの端部の重なり状態を示す。重なる範囲は、板端部から板中央へ向かう距離L、金属板の進行方向の距離wを調整すれば、板端部で発生する電流量を制御することができる。すなわち、前述の様に、表裏誘導コイルのズレ量(w)で、表裏の誘導コイルで発生させる誘導電流が干渉する範囲が決まり、板端部からその影響がおよぶ範囲(L)を大まかに決めることができる。
【0079】
wに関しては、前述のように、表裏誘導コイルの重なりが0〜80%であれば、誘導電流が有効に発生するため、逆に重なりを20〜100%にすると、誘導電流は有効に発生しないため、このような範囲にwを調整する。
【0080】
端部の誘導コイルの重なりの仕方については、これまでは、誘導コイルが平行に重なる場合を示してきたが、重なり方は必ずしも平行である必要は無い。
【0081】
例えば、図14a(金属板端部の重なりのみを模式化)のように誘導コイル2aと2bが斜めに交わるようであってもよいし、又は、図14b(金属板端部の重なりのみを模式化)のように、円弧が交わるような形であってもよく、表裏誘導コイルの一次電流で金属板端部に誘起される誘導電流が干渉しあう領域を生じさせるようにすればよい。この場合、重なり状態は、図13bような長方形ではなくなるが、構わない。
【0082】
図15は、図3の誘導コイルを進行方向に斜めに配置した例であるが、金属板の幅が狭く誘導コイルを斜向させることが難しい場合、誘導コイル全体を斜めにすることにより、金属板と鎖交する磁束の量を増やし誘導電流を多く発生させつつ板端部の温度制御も行う場合に効果的である。
【0083】
また、誘導コイルを板端部に向い斜向させなくても、図16のように途中から金属板進行方向に垂直に曲げ、金属板端部では表裏誘導コイルが重なるようにした場合も、金属板端部を流れる誘導電流の密度を制御し、板温分布を制御することが可能である。
【0084】
上述したそれぞれの実施形態に記載の手段は、全て、金属板内部に金属板長手方向における環状の誘導電流を発生させてジュール加熱し、かつ、金属板端部の誘導電流密度を低下させることができる機能を、誘導コイルを用いた金属板の誘導加熱装置に付与するという点で、技術上の意義が共通しており、対応する特別な技術的特徴を持つものである。
【0085】
これにより、金属板が薄い場合でも、金属板が非磁性であっても加熱でき、また、磁性材がキュリー点を超えた温度となっても、金属板端部の過加熱を防止しながら加熱することが可能となる。
【0086】
次に、本発明による、金属板の板幅変更、蛇行等金属板端部と誘導コイルとの位置関係が変わる場合の追従機構について説明する。
【0087】
本発明による誘導加熱では、前述のように、金属板中央部と端部を流れる誘導電流密度、加熱時間、端部で発生する誘導電流の量を制御することで金属板の温度分布を制御できるが、金属板の板幅や蛇行へ対応することも可能である。
【0088】
図17aは、表裏誘導コイルを構成する導体の長手方向でずらし、金属板中央部を流れる誘導電流の電流密度、加熱時間を制御する例であり、この場合には、金属板の板幅w1に対応した配置の場合とする。
【0089】
図17bは、板幅がw2に広がった場合の誘導コイルの配置を示すが、図中の表面の誘導コイル2aは紙面右側にシフトし、裏面の誘導コイル2bが紙面左側にシフトすることで板幅の変更に対応できる。このように表裏の誘導コイルをシフト(図17a、17bの場合左右に)することにより、板幅変更に対応できるが、金属板が蛇行した場合にも、同様に、誘導コイルを左右に移動させることにより対応が可能である。
【0090】
図18a、18bの様に片側の端部を傾斜させ、金属板へ投影すると平行四辺形になるような誘導コイル形状にした例であるが、板幅がW1からW2に変化するのに対応し、表裏誘導コイル2a、2bを図上左右に移動させ、金属板端部と誘導コイルの相対位置関係を保つことにより、板幅変更・蛇行に対応することが可能である。
【0091】
誘導コイルの移動機構としては、誘導コイル本体を架台に据付、その架台をエアシリンダや電動シリンダ、油圧シリンダ、モータ等による台車駆動などの移動機構を用いればよい。
【0092】
この場合、誘導コイルによる加熱を避けるため、できれば、エンジニアリングプラスチックやセラミックスなどの強度のある非金属材料を用い、やむを得ず金属を用いる場合には、発熱が起こらないように、誘導コイルと適切な距離をとったり、シールド構造とするなどの対策が必要であり、場合によっては、水冷など冷却構造をとる必要がある。
【0093】
図19a及び図19bは、図18a及び18bの誘導コイルを斜めに配置した例を示す。これは、前述のように、金属板の板幅が狭い場合に、多くの誘導電流を発生させる場合に有効で、板幅がW1からW2に変化するのにあわせ、誘導コイル2a及び2bを、図上、金属板の進行方向斜めに移動をさせればよい。
【0094】
また、蛇行に対しても同様に、図18a、図18b、図19a、図19bで示したように、誘導コイルの位置を蛇行検知装置からの金属板の蛇行量情報に基づいて移動させれば、常に安定した加熱が可能となる。
【0095】
また、本発明の誘導コイルの前後に温度計測装置を設置し、誘導コイル前の金属板の温度分布を計測し、その情報をもとに誘導コイル位置を変えることにより、所望の温度分布の加熱が可能となり、高品質の加熱を安定して行うことができる。
【0096】
以上説明したように、本加熱方式は磁性域の加熱はもちろん、従来の誘導コイルの誘導加熱方式では不可能であった非磁性域の加熱を、単純な構成のコイルで可能とする。使用する加熱電源周波数も、扱いやすく安価な比較的低い周波数を使うことができるとともに、高周波数加熱で問題となるコイル電圧の高電圧化なども避けることが容易であり、ハード上の制約が大幅に緩和される。
【0097】
本発明による誘導加熱装置及び誘導加熱方法は、サイズ、品種を選ばず1台の装置で広範囲に対応が可能で、かつ、加熱温度分布も、これまでの誘導加熱装置で問題となっていた板端部の過加熱を防止し、板幅全体にわたる自在な制御が可能な、従来にはない特徴を持つ優れた金属板の加熱装置及び加熱方法である。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
本発明の効果を確認するため、0.6mm厚×800mm幅の非磁性鋼であるSUS304を用い通板しながら加熱する実験を行った。
【0099】
使用した電源は、10KHz、max100KWの高周波電源で、誘導コイルに合わせコンデンサの容量を増減し、整合をとるようにした。使用した誘導コイルは、幅200mm、板厚10mmの銅板に、外形10mm、内径8mmの水冷銅パイプを鋼板と反対側(外側)にロウ付けした水冷銅板製で、1Tの誘導コイルとして実験を行った。本実施例において導体は、銅板と銅パイプの両方を指す。被加熱材と誘導コイルとのギャップは、150mmとした。
【0100】
また、鋼板の表裏面に鋼板進行方向に直角に200mmずらし、両端端部に水冷銅版製のコイルを向かわせ、表裏コイルを構成する導体の重なる位置L(図16等参照)を変え、板中央の温度と板端部との温度差(端部温度−中央部温度)で評価を行った。温度は、被加熱材にK熱電対を溶着して通板しながら測定した。
【0101】
導体の角度は、あらかじめ傾斜をつけた水冷銅板で製作した。
【0102】
実施例としての実験は、図16に示す表裏コイルが90°の角度をなす本発明による実施例A、図14aに示す板端部に15°の角度で斜向する誘導コイルを用いる実施例B、比較例として、図6に示す表裏コイルを平行に配置した比較例C、表裏誘導コイルが重なるLF式誘導加熱による比較例Dで比較した。表裏誘導コイルの重なりは、100%とした。 通板速度は、5m/minである。
【0103】
結果を表1に示す。実験は、鋼板中央部の温度を200℃まで加熱し、その時の鋼板端部温度と中央部温度の差を温度偏差とした(温度偏差=板端部温度―板中央温度)。
【0104】
【表1】

【0105】
今回の実験では、従来のLF式誘導加熱装置による実験Dではまったく加熱ができなかった。また、比較例Cは、非磁性加熱はできるものの、板端部の温度上昇量が高く温度偏差が大きく板端部も変形し形状不良となった。
【0106】
一方、本発明による実施例A、Bは、鋼板端部の表裏誘導加熱の重なり範囲を広げるに従い温度偏差は小さくなり、端部から100mm重ねると両者とも板端部温度が板中央温度よりも低くなることが確認できた。また、板端部へ向かう誘導コイルに15度の傾斜をつけた実施例Bの方が、90度で表裏誘導コイルが重なる実施例Aよりも温度偏差が小さくなることが確認できた。
【0107】
(実施例2)
図11aの誘導コイルを用い、板端部からの重なり範囲Lを50mm一定として、表裏誘導コイルの重なり割合の変化による温度偏差の変化をみた。表裏誘導コイルのズレは、完全重なり時に200mmになるようにセットして実験した。
【0108】
表2に、その結果を示す。実験は、実施例1と同様に、鋼板中央部の温度を200℃まで加熱し、その時の鋼板端部部温度と中央部温度の差を温度偏差とした(温度偏差=板端部温度―板中央温度)。評価は、便宜上温度偏差が板中央部の昇温量の半分以上(100℃)を×、1/4以下(50℃)を○、その中間を△とした。
【表2】

【0109】
表2から明らかなように、表裏誘導コイルの重なる割合が増すにつれ、温度偏差は縮小していくことがわかる。重なり割合は、20%を超えると効果が出始め、40%以上あると大きく温度偏差が縮小することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】従来のLF式誘導加熱を示す模式図である。
【図2】従来のLF式誘導加熱の金属薄板の断面に流れる誘導電流を説明する断面模式図である。
【図3】本発明の誘導加熱装置例の平面模式図である。
【図4】本発明の誘導加熱装置及び方法を説明する断面模式図である。
【図5】表裏誘導コイルをずらしたことにより金属板に発生する誘導電流を説明する側面断面模式図である。
【図6】表裏誘導コイルをコイル長手方向に平行にずらした場合の平面模式図である。
【図7】図6のコイル配置で誘導電流が流れる様子を示す平面模式図である。
【図8】(a),(b)表コイルと裏コイルの金属板への垂直投影面積とその重なり割合を説明する模式図である。
【図9】図3の本発明による誘導加熱装置で発生する誘導電流の様子を表す平面模式図である。
【図10a】金属板中央部を頂点として、山形の導体を金属板表裏に配置する例を示す図である。
【図10b】本発明の誘導加熱装置例で、表裏誘導コイルが板中央部で進行方向にずれ、端部が重なる例を示す図である。
【図11a】本発明の誘導加熱装置例で、表面の誘導コイルが板長手方向にズレるとともに板端部に斜向し、端部が重なる例を示す図である。
【図11b】本発明の誘導加熱装置例で、表面の誘導コイルが板長手方向弧を描いてズレるとともに、端部が重なる例を示す図である。
【図12】本発明の誘導加熱装置例で、表裏面の誘導コイルの一方の端部側の誘導コイルが傾斜して端部が重なる誘導コイルを組み合わせた例を示す図である。
【図13a】本発明の誘導加熱装置例で、表裏面の誘導コイルが左右非対称に傾斜しながら向かい、端部が重なる誘導コイルを組み合わせた例を示す図である。
【図13b】図13aの表裏誘導コイルの重なり状態を説明する図である。
【図14a】金属板端部の重なりの例を示す図である。
【図14b】端部が平行ではなく重なる場合の例を示す図である。
【図15】本発明の誘導加熱装置例で、図3に示す誘導コイルが金属板の進行方向に斜めに配置した例を示す図である。
【図16】本発明の誘導加熱装置例で、表面の誘導コイルが板長手方向にズレるとともに、途中から直角に曲がり板進行方向に配置した後、端部が重なる例を示す図である。
【図17a】表裏誘導コイルを構成する導体の長手方向でずらし、金属板中央を流れる誘導電流の電流密度、加熱時間を制御する例を示す図である。
【図17b】本発明の誘導加熱装置例で、金属板の幅が変わったときや蛇行への対応を説明する図である。
【図18a】本発明の誘導加熱装置例で、金属板の幅が変わったときや蛇行への対応を説明する図で、表裏誘導コイルが板幅方向にシフトする例を示す。
【図18b】本発明の誘導加熱装置例で、金属板の幅が変わったときや蛇行への対応を説明する図で、表裏誘導コイルが板幅方向にシフトする例を示す。
【図19a】本発明の誘導加熱装置例で、金属板の幅が変わったときや蛇行への対応を説明する図で、表裏誘導コイルが進行方向斜めにシフトする例を示す。
【図19b】本発明の誘導加熱装置例で、金属板の幅が変わったときや蛇行への対応を説明する図で、表裏誘導コイルが進行方向斜めにシフトする例を示す。
【符号の説明】
【0111】
1 金属板
2 誘導コイル
2a、2b、2a‘、2b’ 誘導コイル導体
3 高周波電源
4 磁束
5 一次電流の方向
6a 誘導電流のパス
6b 誘導電流の向き
7 導電部材
8 電源
9 接続導体
10 誘導電流
w1、w2 金属板の幅
W 金属板端部の重なり範囲
W0 金属板端部の誘導コイル幅
L 金属板端部から、板中央部へ向かう表裏誘導コイルが重なっている範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導コイルの内側を通過する金属板を誘導加熱する装置であって、金属板の表面側と裏面側の誘導コイルを構成する導体を、それぞれ該金属板へ垂直投影した際の垂直投影像において、表面側と裏面側の該導体が、
(i)該金属板の幅方向中央部においては、金属板の長手方向に対して互いに重ならないようにずらして配置されるとともに、
(ii)該金属板の少なくともどちらかの幅方向端部においては、金属板の長手方向に対して互いに少なくとも一部が重なるように配置される
ことを特徴とする金属板の誘導加熱装置。
【請求項2】
前記金属板の少なくともどちらかの幅方向端部における表面側と裏面側の該導体の重なり割合を制御できるように、表面側と裏面側の少なくともどちらかの導体に、前記金属板の長手方向又は幅方向の一方又は両方への移動機構が備えられていることを特徴とする請求項1記載の金属板の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記誘導コイル全体が、前記金属板の幅方向に対して傾斜を有して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の金属板の誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法であって、
前記表面側と裏面側の導体において、前記少なくとも一部が重なるように配置される金属板の幅方向端部の前記導体から、前記ずらして配置される金属板の幅方向中央部の前記導体までの間に配置されている導体の、傾斜角度、傾斜開始位置、導体幅の少なくともいずれかを調整することで、前記金属板の温度分布を制御する
ことを特徴とする金属板の誘導加熱方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属板の誘導加熱装置を用いた誘導加熱方法であって、
加熱される金属板の板幅の変化、蛇行の程度の少なくともいずれかに対応して、前記表面側と裏面側の導体の少なくともいずれかを移動させる
ことを特徴とする金属板の誘導加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19a】
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【図19b】
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【公開番号】特開2008−53010(P2008−53010A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226971(P2006−226971)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】