説明

金属検出装置

【課題】 金属の検出能力を高める。金属体が励磁器に対して対称に位置しても検出する。金属体が片側に位置する時とその反対側に位置する時とで出力信号の極性が異なることをなくす。
【解決手段】 励磁器1による一次磁界で受信器3、5と検出領域を覆い、検出領域の一次磁界中に金属体が存在すると、二次磁界の発生又は一次磁界の変形によって受信器の出力信号が変化し、出力信号の変化で金属体を検出する方法において、励磁器は、両側に、極性が逆になる対の一次磁界を発生する対の電流線路を有し、受信器は、磁界の無感方向を有する。受信器は、励磁器に対して非対称になる位置であって励磁器の片側になる位置に配置し、励磁コイルの片側の一次磁界中に位置させ、その励磁コイルの片側の一次磁界に対して無感方向に配置する。検出領域の一次磁界中に金属体が存在しないときには、受信コイルの出力信号を零ないし微小量にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して金属を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気を利用して金属体、導電体を検出する場合、検出領域に隣接して励磁コイルと受信コイルを配置する。励磁コイルには、交流電圧を加え、一次磁界を発生させる。一次磁界は、検出領域と受信コイルを覆う。受信コイルは、その配置位置の磁界で起電力が誘起し、信号を出力する。
【0003】
検出領域の一次磁界中に金属体が存在すると、その金属体に渦電流が発生し、二次磁界が生ずる。二次磁界は、一次磁界に重なる。その金属体が磁性体であるときには、一次磁界が変形する。二次磁界の発生又は一次磁界の変形によって受信コイルの配置位置の磁界が変わる。受信コイルは、出力信号が変化する。この出力信号の変化で金属体を検出する。出力信号の変化量は、金属体までの距離や金属体の大きさに応じて変化する。
【0004】
金属の検出能力を高めるため、検出領域に金属体が存在しないときには、受信コイルの出力信号が零ないし微小量になる構成にする。例えば、金属体が存在しないときには、受信コイルに一次磁界による起電力を出力させないため、励磁コイルと受信コイルは、直交して、T字形に配列する。受信コイルは、励磁コイルに対して対称になる位置に配置する。また、励磁コイルと受信コイルは、平行して、一部を重ねる。受信コイルは、コイル面を一次磁界の磁束が一方向に鎖交する量と反対方向に鎖交する量が同じになる位置に配置する。
【0005】
金属検出装置は、励磁コイルと受信コイルをケースに内蔵している。ケースは、検出領域に隣接させる検出面を設け、検出面に対して励磁コイルと受信コイルを平行又は直交して配置している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−122806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[背景技術の課題]
金属の検出能力を高めるため、検出領域に金属体が存在しないときには、受信コイルの出力信号が零ないし微小量になる構成にすることが望まれる。
【0008】
ところが、上記のように、受信コイルを励磁コイルに対して対称になる位置に配置する場合、検出領域の金属体が励磁コイルに対して対称に位置すると、受信コイルは、出力しない。金属体が検出されない。また、金属体が励磁コイルに対して片側に位置する時と、その反対側に位置する時とでは、受信コイルの出力信号は、極性が異なる。
【0009】
また、上記のように、受信コイルを励磁コイルに対して一部が重なる位置に並列する場合、検出領域の金属体が、受信コイル側に位置して受信コイル面を一方向に鎖交する磁束量を増加させる時と、その反対側に位置して受信コイル面をその反対方向に鎖交する磁束量を増加させる時とでは、受信コイルの出力信号は、極性が異なる。
【0010】
[課題を解決するための着想と研究]
1)受信コイルの接線配置
励磁コイルは、両側に、電流の向きが反対になる対の電流線路を有する。両側の電流線路は、極性が逆になる対の一次磁界を発生する。受信コイルは、磁界の無感方向を有する。即ち、受信コイルは、両側の電流線路を含む面、コイル面を磁界の磁力線の接線方向に配置すると、出力信号が零ないし微小量になる。
【0011】
そこで、受信コイルは、励磁コイルに対して対称になる位置ではなく、非対称になる位置であって、励磁コイルの片側に配置し、励磁コイルの片側の電流線路を囲う磁力線群の一次磁界、励磁コイルの片側の一次磁界中に位置させる。そして、その励磁コイルの片側の一次磁界に対して無感方向に配置する。即ち、受信コイルは、コイル面を励磁コイルの片側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置することにした。
【0012】
すると、検出領域の一次磁界中に金属体が存在しないときには、受信コイルの出力信号が零ないし微小量になる。金属体の検出能力が高くなる。検出領域の金属体が励磁コイルに対して対称に位置しても、受信コイルは出力する。その金属体を検出する。金属体が受信コイル側に位置する時と、その反対側に位置する時とで出力信号の極性が異ならない。
【0013】
2)励磁コイルの配置
励磁コイルは、従来、コイル面を検出面に対して平行又は直交して、即ち検出方向に対して直交又は平行して配置していた。励磁コイルの平行配置と直交配置の外に傾斜配置を着想したのである。
【0014】
(1)励磁コイルの平行配置(図1参照)
励磁コイルを検出面に対して平行に配置したときには、上記の受信コイルの接線配置は、図1の上部に示すようになる。方形状の励磁コイル1は、コイル面を検出面2に平行し、両側の電流線路を前後に配置する。受信コイル3は、励磁コイル1の後側に配置し、励磁コイル1の後側の電流線路を囲う磁力線群の一次磁界、励磁コイルの後側の一次磁界中に位置させる。受信コイル3のコイル面は、励磁コイル1の後側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置する。
【0015】
検出面2の検出方向4側の検出領域には、励磁コイル1の両側の一次磁界が広がる。検出範囲が前後方向に広くなる。受信コイル3は、受信能力を高めるため、検出面2の近くに配置し、軟質磁性材料のフェライトコア、鉄心5を同心状に挿入している。鉄心5は、励磁コイル1の後側、受信コイル3側の一次磁界を凝縮し、反対側の一次磁界を拡大する。
【0016】
鋼棒Rは、検出領域に左右方向に沿って配置し、検出面2に沿って前後方向に移動する。すると、受信コイル3の出力電圧は、図1の下部に示すように、大きさが山形状に変化する。極性は、反転しない。最大出力位置は、励磁コイル1と受信コイル3の間にある。この位置は、検出基準軸6とする。
【0017】
(2)励磁コイルの直交配置(図2参照)
励磁コイルを検出面に対して直交して配置したときには、上記の受信コイルの接線配置は、図2の上部に示すようになる。励磁コイル1は、コイル面を検出面2に直交し、両側の電流線路を上下に配置する。受信コイル3は、励磁コイル1の後側に配置し、励磁コイル1の下側の電流線路を囲う磁力線群の一次磁界、励磁コイル1の下側の一次磁界中に位置させる。受信コイル3のコイル面は、励磁コイル1の下側、検出面2側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置する。
【0018】
検出領域には、励磁コイル1の検出面2側の一次磁界が広がる。受信コイル3のフェライトコアの鉄心5は、励磁コイル1の検出面2側の一次磁界を凝縮する。
【0019】
鋼棒Rは、検出領域に左右方向に沿って配置し、検出面2に沿って前後方向に移動する。すると、受信コイル3の出力電圧は、図2の下部に示すように、大きさが山形状に変化する。極性は、反転しない。最大出力位置は、励磁コイル1と受信コイル3の間にある。この位置は、検出基準軸6とする。
【0020】
(3)励磁コイルの傾斜配置(図3参照)
励磁コイルを検出面に対して傾斜して配置したときには、上記の受信コイルの接線配置は、図3の上部に示すようになる。励磁コイル1は、コイル面を検出面2に対して傾斜し、両側の電流線路を前下側と後上側に配置する。受信コイル3は、励磁コイル1の後側に配置し、励磁コイル1の後上側の電流線路を囲う磁力線群の一次磁界、励磁コイル1の後上側の一次磁界中に位置させる。受信コイル3のコイル面は、励磁コイル1の後上側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置する。
【0021】
検出領域には、主に励磁コイル1の前下側、検出面2側の一次磁界が広がる。受信コイル3のフェライトコアの鉄心5は、励磁コイル1の検出面2側の一次磁界を拡大する。その一次磁界の拡大で、検出範囲が広くなる。
【0022】
鋼棒Rは、検出領域に左右方向に沿って配置し、検出面2に沿って前後方向に移動する。すると、受信コイル3の出力電圧は、図3の下部に示すように、大きさが山形状に変化する。極性は、反転しない。最大出力位置は、励磁コイル1の中央位置から受信コイル3側に寄っている。この位置は、検出基準軸6とする。
【0023】
3)検出方向の検出範囲(図4参照)
上記のように、受信コイル3は、接線配置する。励磁コイル1は、平行配置、直交配置又は傾斜配置する。鋼棒Rは、検出領域に左右方向に沿って配置し、検出基準軸6上を移動する。すると、受信コイル3の出力電圧は、図4に示すように、鋼棒Rが検出面2に近付くに従って、大きさが増加する。極性は、反転しない。検出範囲が検出方向4に最も広い励磁コイル1の配置は、傾斜配置である。次に広い励磁コイル1の配置は、平行配置である。3番目に広い励磁コイル1の配置は、直交配置である。
【0024】
実験例は、次の通りである。励磁コイル1は、35×35mmの矩形である。フェライトコアの鉄心5は、13×13×長さ15mmの角棒である。受信コイル3は、直径0.1mmのエナメル線を鉄心5の下部に600回巻き付けている。励磁コイル1と鉄心5付き受信コイル3の間の距離は、15〜20mmである。励磁コイル1に加える正弦波状交流電圧の周波数は、7kHzである。鋼棒Rは、直径12 mmで、長さ300mmである。励磁コイル1の傾斜配置では、検出範囲の検出方向の最大距離が220mm位である。
【0025】
4)金属検出の磁気シールド(図5と図6参照)
検出領域の金属を検出するに当たり、受信コイル3は、検出領域以外に位置する金属では出力しないことが望まれる。励磁コイル1と受信コイル3は、検出面2以外の外回りを磁気シールドすることにした。そして、磁気シールドは、検出面2の検出方向4側、検出領域の一次磁界を凝縮させないため、非磁性金属を用いることにした。
【0026】
金属検出装置は、図5と図6に示すように、励磁コイル1と鉄心5付き受信コイル3をアルミニウムのような非磁性金属のケース7に収納し、ケース7の開口面を検出面2にする。図示例のケース7は、三角形状の左側と右側の壁、四角形状の前下がりの前上側の壁と四角形状の後下がりの後上側の壁を有する。ケース7の下面は、開口面にして検出面2にする。ケース7の前上側の壁には、励磁コイル1を並列する。励磁コイル1と受信コイル3は、検出面2以外の外回りをケース7の非磁性金属の壁で囲う。ケース7の非磁性金属の壁を外側に通過しようとする一次磁界は、非磁性金属の壁で減衰し、壁の外側では弱くなる。ケース7の壁の外側に位置する金属では、受信コイル3は、出力しなくなる。
【0027】
ケース7の非磁性金属の壁は、一次磁界を吸収すると、渦電流が発生し、二次磁界が生ずる。この二次磁界が金属検出に与える影響を除くため、ケース7の非磁性金属の壁の内側にNi−Znフェライトのような電気抵抗の高い低損失磁性材料の板8を配置する。この低損失磁性材料の板8は、二次磁界を凝縮し、二次磁界の影響を弱める。また、板8は、検出面2の検出方向4側の一次磁界を凝縮させないため、ケース7の非磁性金属の壁に接し、励磁コイル1や受信コイル3から離す。更に、板8は、ケース7内面の全面ではなく一部に配置する。板8の部分配置位置は、ケース7の前上側の壁と励磁コイル1の間、ケース7の後上側の壁と受信コイル3の間、及び、ケース7の左側、右側の壁と受信コイル3の間にする。ケース7の左側、右側の壁と励磁コイル1の間には、板8を配置しない。
【0028】
このような磁気シールド付き金属検出装置は、金属の接近でスイッチを作動する近接スイッチに利用される。また、案内用の金属線に沿って移動する移動体の金属線検出装置に利用される。
【0029】
5)検出範囲の絞り(図7〜図9参照)
検出領域に複数の金属体が存在してその内の1個の金属体を検出するには、検出範囲は狭いことが望まれる。金属検出装置は、図7と図8に示すように、励磁コイル1の左右の両側にアルミニウムのような非磁性金属の絞り板9を並列することにした。
【0030】
励磁コイル1から検出領域に広がる一次磁界は、励磁コイル1の両側の絞り板9でそれらの並列方向、左右方向が絞られる。検出範囲kの左右方向は、図9に示すように、絞り板9のないときの鎖線で示す範囲から、実線で示す範囲に狭くなる。
【0031】
このような検出範囲絞り機能付き金属検出装置は、コンクリート壁内の鉄筋群中の1本の鉄筋について、太さやかぶり量を求める鉄筋検出装置に利用される。
【課題を解決するための手段】
【0032】
1)励磁器と受信器を検出領域に隣接して配置し、励磁器による一次磁界で受信器と検出領域を覆い、検出領域の一次磁界中に金属体が存在すると、二次磁界の発生又は一次磁界の変形によって受信器の配置位置の磁界が変わり、受信器の出力信号が変化し、出力信号の変化で金属体を検出する方法において、
励磁器は、両側に、極性が逆になる対の一次磁界を発生する対の電流線路を有し、受信器は、磁界の無感方向を有し、
受信器は、励磁器に対して非対称になる位置であって励磁器の片側になる位置に配置し、励磁コイルの片側の一次磁界中に位置させ、その励磁コイルの片側の一次磁界に対して無感方向に配置し、
検出領域の一次磁界中に金属体が存在しないときには、受信コイルの出力信号を零ないし微小量にすることを特徴とする金属検出方法。
2)上記の金属検出方法を実施する装置であって、
励磁器と受信器は、ケースに内蔵し、ケースは、検出領域に隣接させる検出面を設けたことを特徴とする金属検出装置。
3)上記の金属検出装置において、
励磁器は、両側の電流線路を含む面を検出面に対して傾斜して配置したことを特徴とする。
4)上記の金属検出装置において、
受信器は、コイルと軟質磁性材料の鉄心を有し、コイルに鉄心を同心状に挿入したことを特徴とする。
5)上記の金属検出装置において、
励磁器と受信器は、検出面以外の外回りを非磁性金属の壁で囲い、励磁器と非磁性金属の壁の間、又は、受信器と非磁性金属の壁の間に、低損失磁性材料の板を配置し、
低損失磁性材料の板は、非磁性金属の壁に接し、励磁器又は受信器から離し、非磁性金属の壁の一部に配置し、
励磁器と受信器は、検出面以外の外回りを磁気シールドしたことを特徴とする。
6)上記の金属検出装置において、
受信器は、2個にし、励磁器の後側に左側と右側に並べて配置し、
左側と右側の受信器は、移動体の移動路に沿って配した金属線が前後方向になる位置に配置し、検出領域の金属線を左右の両受信器で検出し、両受信器の出力信号から金属線に対する左右方向位置を得る構成にしたことを特徴とする。
7)上記の金属検出装置において、
励磁器の両側には、非磁性金属の絞り板を並列し、
検出領域の一次磁界は両側の絞り板の並列方向を絞って、検出範囲は両側の絞り板の並列方向を狭くしたことを特徴とする。
8)上記の2)、3)、4)、5)又は7)の金属検出装置において、
受信器は、2個にし、励磁器の後側に前側と後側に並べて配置し、
前側と後側の受信器は、検出領域の金属棒が左右方向になって前側受信器又は後側受信器の出力信号が最大になる前後方向位置に配置し、前側受信器の出力信号と後側受信器の出力信号から金属棒の太さと金属棒までの距離を得る構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
受信器の出力信号は、検出領域の一次磁界中に金属体が存在しないときには零ないし微小量になり、検出領域の一次磁界中に金属体が存在すると大きくなる。検出領域の金属体による出力信号の変化が大きくなる。金属の検出能力が高くなる。
【0034】
検出領域の金属体が励磁器に対して対称に位置しても、受信器は出力して検出する。
検出領域の金属体が受信コイル側に位置する時と、その反対側に位置する時とで出力信号の極性が異ならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[第1例(図10と図11参照)]
本例の金属検出装置は、磁気シールドを施し、金属の接近でスイッチを作動する近接スイッチにしている。
この近接スイッチは、図10と図11に示すように、励磁器11、12と受信器13、14をケース21〜27に内蔵している。
【0036】
励磁器は、非磁性不導体の枠11に電線を複数回巻き付けた方形状のコイル12にしている。この励磁コイル12は、空心にしている。受信器は、軟質磁性材料のフェライトコアの鉄心13に電線を複数回巻き付けた方形状のコイル14にしている。この受信コイル14は、鉄心13を同心状に挿入している。
【0037】
ケースは、非磁性金属のアルミニウム合金製にし、箱形構造にしている。三角形状の左側と右側の壁21、22、四角形状の前下がりの前上側の壁23と四角形状の後下がりの後上側の壁24を備えている。ケースの下面25は、開口面にしている。片側の三角形状の壁22は、前上側の壁23と後上側の壁24の上側に延長し、延長部分を取付板26にし、取付板26に取付孔27を貫通している。
【0038】
励磁器11、12は、ケースの前上側の壁23の後側に後倒しに配置している。励磁コイル12のコイル面は、ケースの前上側の壁23と並列し、ケースの開口面25に対して傾斜している。励磁コイル12は、傾斜配置にし、両側の電流線路を前下側と後上側に配置している。受信器13、14は、励磁コイル12に対して非対称になる位置であって励磁器11、12の後側になる位置に後倒しに配置している。この受信器13、14は、励磁コイル12の後上側の電流線路を囲う磁力線群の一次磁界、励磁コイル12の後上側の一次磁界中に位置している。受信コイル14は、接線配置にし、コイル面を励磁コイル12の後上側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置している。励磁器11、12と受信器13、14は、下側以外の外回りをケースの非磁性金属の壁21、22、23、24で囲っている。
【0039】
励磁器11、12とケースの前上側の壁23の間には、低損失磁性材料のNi−Znフェライトの板31を配置している。この板31は、四角形状にし、前上側の壁23に接し、励磁コイル12から離している。受信器13、14とケースの後上側の壁24の間には、低損失磁性材料のNi−Znフェライトの板32を配置している。この板32は、四角形状にし、後上側の壁24に接し、受信器13、14から離している。受信器13、14とケースの左側の壁21の間には、低損失磁性材料のNi−Znフェライトの板33を配置している。この板33は、三角形状にし、左側の壁21に接し、受信器13、14から離している。受信器13、14とケースの右側の壁22の間には、低損失磁性材料のNi−Znフェライトの板34を配置している。この板34は、三角形状にし、左側の壁22に接し、受信器13、14から離している。前上側の板31は、後上側の板32、左側の板33と右側の板34から離している。左側の板33と励磁コイル12の間、右側の板34と励磁コイル12の間には、低損失磁性材料の板を配置しない。
【0040】
励磁器11、12と受信器13、14は、下側以外の外回りをケースの非磁性金属の壁21〜24と低損失磁性材料の板31〜34で磁気シールドしている。
【0041】
ケースの前上側の壁23と低損失磁性材料の板31の下面には、低損失磁性材料のNi−Znフェライトの四角形状の板35を配置している。この板35は、磁界拡大用であり、ケースの開口面25から流出する励磁コイル12の前下側の電流線路を囲う磁力線群の一次磁界、励磁コイル12の前下側の一次磁界を前方に広げる。
【0042】
ケースの壁23、24の上端には、ケーブル37を貫通している。ケーブル37は、励磁コイル12と受信コイル14の導線に連結している。励磁コイル12と受信コイル14は、それぞれ、ケーブル37を経て、図示しない励磁回路と受信回路に接続している。受信回路は、金属の接近で作動するスイッチイング回路に接続している。
【0043】
三角形状箱形のケースは、励磁器11、12と受信器13、14及び板31〜34を収納した内部の隙間に、プラスタや合成樹脂のような非磁性不導体の可塑性充填剤38を充填し、硬化した充填剤38に励磁器11、12と受信器13、14及び板31〜34を埋没してそれらの位置を固定している。また、充填剤38は、ケースの開口面25から突出し、その突出部を板状に成形している。その板状部は、下面をケースの開口面25と平行にして検出面39にしている。検出面39の下側は、検出領域にしている。また、板状部は、磁界拡大用の板35を埋没して固定している。
【0044】
検出領域の検出範囲に金属体が進入すると、スイッチイング回路のスイッチが作動する。金属体が検出領域の検出範囲から退出すると、スイッチイング回路のスイッチが作動中から不作動になる。
【0045】
[第2例(図12〜図14参照)]
本例の金属検出装置は、磁気シールドを施し、案内用の金属線に沿って移動する移動体の金属線検出装置にしている。第1例の近接スイッチと異なる点を中心に説明する。
【0046】
金属線検出装置では、図12と図13に示すように、受信器は、左側受信器13、14と右側受信器15、16の2個にし、傾斜配置の励磁器11、12の後側に左側と右側に並べて配置している。左側受信器13、14と右側受信器15、16は、それぞれ、励磁コイル12の後上側の一次磁界中に位置している。受信コイル14と受信コイル16は、それぞれ、接線配置にし、コイル面を励磁コイル12の後上側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置している。
【0047】
左側受信器13、14と右側受信器15、16は、構造と性能を同一にし、ケース21〜24の前後方向に沿った中心線を挟んで左右対称に位置している。励磁器11、12は、ケース21〜24の前後方向に沿った中心線に対して左右対称の構造にしている。
【0048】
左側受信器13、14と右側受信器15、16は、それぞれ、ケーブル37を経て、図示しない左側受信回路と右側受信回路に接続している。左側受信回路と右側受信回路は、両受信回路の出力電圧値の比較回路に接続している。
【0049】
ケースの前上側の壁23は、前下端を前側に延長し、延長部分を取付板26にし、取付板26に取付孔27を貫通している。ケースの後上側の壁24は、後下端を後側に延長し、延長部分を取付孔27付きの取付板26にしている。
【0050】
その他の構造は、第1例におけるのと同様であり、図12と図13に第1例におけるのと同じ符号を付している。
【0051】
自動搬送車のような移動体の移動路には、案内用の金属線wを張る。金属線wには、ステンレスワイヤやアルミニウムテープが例示される。金属線検出装置は、金属線wが検出領域の検出範囲内で前後方向になる位置であって、左側受信器13、14と右側受信器15、16が金属線wの両側になる位置に配置する。左側受信器13、14と右側受信器15、16は、それぞれ、検出領域の検出範囲内の金属線wを検出して出力する。左右の両受信器の出力電圧値は、左側受信回路と右側受信回路を経て比較回路に入力し、比較回路で比較され、金属線wに対する左右方向位置が得られる。この位置情報に基づいて、移動体は移動の向きを制御する。
【0052】
左側受信器13、14と右側受信器15、16の出力電圧値は、図14に示すように、それぞれ、金属線wの左右方向位置によって山形状に変化する。両受信器が金属線wに対して左右対称に位置すると、両受信器の出力電圧値が同一になる。両受信器が左側に寄ると、右側受信器15、16が金属線wに近づいて出力電圧値を増加し、左側受信器13、14が金属線wから遠ざかって出力電圧値を減少する。逆に、両受信器が右側に寄ると、左側受信器13、14の出力電圧値が増加し、右側受信器15、16の出力電圧値が減少する。
【0053】
[第3例(図15と図16参照)]
本例の金属検出装置は、検出範囲絞り機能を付設し、鉄筋検出装置にしている。第1例の近接スイッチと異なる点を中心に説明する。
【0054】
鉄筋検出装置では、図15と図16に示すように、受信器は、前側受信器13、14と後側受信器15、16の2個にし、傾斜配置の励磁器11、12の後側に前側と後側に並べて配置している。前側受信器13、14は、後倒しの接線配置にし、コイル面を励磁コイル12の後上側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置している。後側受信器15、16は、前倒しの接線配置にし、コイル面を励磁コイル12の後上側の一次磁界の磁力線の接線方向に配置している。
【0055】
前側受信器13、14と後側受信器15、16は、それぞれ、ケーブル37を経て、図示しない前側受信回路と後側受信回路に接続している。前側受信回路と後側受信回路は、両受信器の出力電圧値から鉄筋の太さと鉄筋までの距離、かぶり量を求める算出装置に接続している。この算出装置は、予め求めた両受信器の出力電圧値と鉄筋の太さとかぶり量との関係を示す式又は表を記憶している。
【0056】
鉄筋検出装置は、磁気シールドを施していない。検出範囲を狭くしないためである。第1例における磁気シールド用の板31〜34と磁界拡大用の板35を設けていない。ケース41は、非磁性不導体の合成樹脂成形品にしている。
【0057】
励磁コイル12の左右の両側には、非磁性金属のアルミニウム合金の絞り板42を並列している。左右の方形状の絞り板42は、ケース41内で励磁コイル12を挟んでいる。
【0058】
ケース41は、励磁器11、12、前側受信器13、14と後側受信器15、16及び左右の絞り板42を収納した内部の隙間に、プラスタや合成樹脂のような非磁性不導体の可塑性充填剤38を充填し、硬化した充填剤38に励磁器11、12、前側受信器13、14と後側受信器15、16及び左右の絞り板42を埋没してそれらの位置を固定している。また、充填剤38は、下面をケースの開口面25に一致させて検出面39にしている。検出面39の下側は、検出領域にしている。
【0059】
左右の両側の絞り板42は、検出領域の一次磁界の左右方向、両側の絞り板42の並列方向を絞っている。検出範囲は、左右方向が狭くなっている。
【0060】
鉄筋Rは、検出領域に左右方向に沿って配置し、検出面39に沿って前後方向に移動する。すると、前側受信器13、14と後側受信器15、16の出力電圧値は、図15の下部に示すように、山形状に変化する。前側受信器13、14の最大出力位置は、励磁器11、12と前側受信器13、14の間になる。この位置は、前側検出基準軸43とする。後側受信器15、16の最大出力位置は、前側受信器13、14と後側受信器15、16の間になる。この位置は、後側検出基準軸44とする。
【0061】
ケース41は、直方体形状の箱形にし、左右の両側の側壁に、前側検出基準軸43の位置を示す一対の前側目印45と後側検出基準軸44の位置を示す一対の後側目印46を外側に突出して設けている。
【0062】
コンクリート壁内の鉄筋群中の1本の鉄筋Rについて、太さやかぶり量を求めるときには、鉄筋検出装置は、検出面39をコンクリート壁面に重ねる。そして、一対の前側目印46を利用し、検出対象の鉄筋Rが検出領域の検出範囲内で左右方向になる位置ないし向きに配置する。次に、鉄筋検出装置は、前側受信器13、14の出力電圧値を見ながら前後動し、前側受信器13、14の最大出力位置、前側検出基準軸43の位置に停止する。そして、算出装置を作動し、前側受信器13、14と後側受信器15、16の出力電圧値から鉄筋Rの太さとかぶり量を求める。算出装置は、鉄筋Rを前側検出基準軸43の位置に配置したときの両受信器の出力電圧値と鉄筋の太さとかぶり量との関係を記憶している。
【0063】
この例においては、鉄筋Rを前側検出基準軸43の位置に配置し、そのときの前後の受信器の出力から鉄筋Rの太さとかぶり量を求める。変形例は、鉄筋Rを後側検出基準軸44の位置に配置し、そのときの前後の受信器の出力から鉄筋Rの太さとかぶり量を求める構成にする。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、人には見えない位置の金属の検出装置、金属の無接触による検出装置や、近接スイッチ、移動体の案内用金属線の検出装置や鉄筋検出装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の励磁コイル平行配置、受信コイルの接線配置の方式を示す図で、上部は概念正面図、下部は受信コイルの出力電圧値と鋼棒の前後方向位置の関係を示す図。
【図2】本発明の励磁コイル直交配置、受信コイルの接線配置の方式を示す図で、上部は概念正面図で、下部は受信コイルの出力電圧値と鋼棒の前後方向位置の関係を示す図。
【図3】本発明の励磁コイル傾斜配置、受信コイルの接線配置の方式を示す図で、上部は概念正面図で、下部は受信コイルの出力電圧値と鋼棒の前後方向位置の関係を示す図。
【図4】本発明の各方式における受信コイルの出力電圧値と検出面から検出方向への鋼棒の距離の関係を示す図。
【図5】本発明の磁気シールド付き金属検出装置の概念縦断側面図。
【図6】同磁気シールド付き金属検出装置の概念底面図。
【図7】本発明の検出範囲絞り機能付き金属検出装置の概念縦断側面図。
【図8】同検出範囲絞り機能付き金属検出装置の概念正面図。
【図9】同検出範囲絞り機能付き金属検出装置における左右方向の検出範囲を示す概念正面図。
【図10】本発明の実施形態の第1例における金属検出装置、近接スイッチの縦断側面図。
【図11】同金属検出装置の励磁器の枠と充填剤を除去した状態の底面図。
【図12】本発明の実施形態の第2例における金属検出装置、金属線検出装置の縦断側面図。
【図13】同金属検出装置の励磁器の枠と充填剤を除去した状態の底面図。
【図14】同金属検出装置の左側受信器と右側受信器の出力電圧値と金属線の左右方向位置の関係を示す図。
【図15】本発明の実施形態の第3例における金属検出装置、鉄筋検出装置を示す図で、上部は縦断側面図、下部は前側受信器と後側受信器の出力電圧値と鉄筋の前後方向位置の関係を示す図。
【図16】同金属検出装置の励磁器の枠と充填剤を除去した状態の底面図。
【符号の説明】
【0066】
1 励磁器の励磁コイル
2 検出面
3 受信器の受信コイル、
4 検出方向
5 受信器の鉄心、フェライトコア、軟質磁性材料の鉄心
6 検出基準軸
7 磁気シールドの非磁性金属のケース
8 磁気シールドの低損失磁性材料の板
9 絞り板
R 鋼棒、金属体
k 検出範囲
実施形態の第1例
11、12 励磁器
11 非磁性不導体の枠
12 方形状のコイル、励磁コイル
13、14 受信器
13 軟質磁性材料の鉄心
14 方形状のコイル、受信コイル
21〜27 非磁性金属のケース
21 左側の壁
22 右側の壁
23 前上側の壁
24 後上側の壁
25 下面、開口面
26 取付板
27 取付孔
31 前上側の低損失磁性材料の板
32 後上側の低損失磁性材料の板
33 左側の低損失磁性材料の板
34 右側の低損失磁性材料の板
35 磁界拡大用の低損失磁性材料の板
37 ケーブル
38 非磁性不導体の可塑性充填剤、充填剤
39 検出面
実施形態の第2例
13、14 左側受信器
14 受信コイル
15、16 右側受信器
16 受信コイル
w 案内用の金属線
実施形態の第3例
13、14 前側受信器
15、16 後側受信器
41 非磁性不導体のケース
42 非磁性金属の絞り板
43 前側検出基準軸
44 後側検出基準軸
45 前側目印
46 後側目印
R 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁器と受信器を検出領域に隣接して配置し、励磁器による一次磁界で受信器と検出領域を覆い、検出領域の一次磁界中に金属体が存在すると、二次磁界の発生又は一次磁界の変形によって受信器の配置位置の磁界が変わり、受信器の出力信号が変化し、出力信号の変化で金属体を検出する方法において、
励磁器は、両側に、極性が逆になる対の一次磁界を発生する対の電流線路を有し、受信器は、磁界の無感方向を有し、
受信器は、励磁器に対して非対称になる位置であって励磁器の片側になる位置に配置し、励磁コイルの片側の一次磁界中に位置させ、その励磁コイルの片側の一次磁界に対して無感方向に配置し、
検出領域の一次磁界中に金属体が存在しないときには、受信コイルの出力信号を零ないし微小量にすることを特徴とする金属検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属検出方法を実施する装置であって、
励磁器と受信器は、ケースに内蔵し、ケースは、検出領域に隣接させる検出面を設けたことを特徴とする金属検出装置。
【請求項3】
励磁器は、両側の電流線路を含む面を検出面に対して傾斜して配置したことを特徴とする請求項2に記載の金属検出装置。
【請求項4】
受信器は、コイルと軟質磁性材料の鉄心を有し、コイルに鉄心を同心状に挿入したことを特徴とする請求項2又は3に記載の金属検出装置。
【請求項5】
励磁器と受信器は、検出面以外の外回りを非磁性金属の壁で囲い、励磁器と非磁性金属の壁の間、又は、受信器と非磁性金属の壁の間に、低損失磁性材料の板を配置し、
低損失磁性材料の板は、非磁性金属の壁に接し、励磁器又は受信器から離し、非磁性金属の壁の一部に配置し、
励磁器と受信器は、検出面以外の外回りを磁気シールドしたことを特徴とする請求項2、3又は4に記載の金属検出装置。
【請求項6】
受信器は、2個にし、励磁器の後側に左側と右側に並べて配置し、
左側と右側の受信器は、移動体の移動路に沿って配した金属線が前後方向になる位置に配置し、検出領域の金属線を左右の両受信器で検出し、両受信器の出力信号から金属線に対する左右方向位置を得る構成にしたことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の金属検出装置。
【請求項7】
励磁器の両側には、非磁性金属の絞り板を並列し、
検出領域の一次磁界は両側の絞り板の並列方向を絞って、検出範囲は両側の絞り板の並列方向を狭くしたことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の金属検出装置。
【請求項8】
受信器は、2個にし、励磁器の後側に前側と後側に並べて配置し、
前側と後側の受信器は、検出領域の金属棒が左右方向になって前側受信器又は後側受信器の出力信号が最大になる前後方向位置に配置し、前側受信器の出力信号と後側受信器の出力信号から金属棒の太さと金属棒までの距離を得る構成にしたことを特徴とする請求項2、3、4、5又は7に記載の金属検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−156706(P2009−156706A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335066(P2007−335066)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【特許番号】特許第4281974号(P4281974)
【特許公報発行日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(305025728)
【Fターム(参考)】