説明

金属箔ポリイミド積層体

【課題】微細配線を形成でき、低寸法変化率を実現できる金属箔ポリイミド積層体を提供すること。
【解決手段】この金属箔ポリイミド積層体は、非熱可塑性ポリイミド層3と非熱可塑性ポリイミド層3の一方の面に積層される熱圧着性ポリイミド層4とを備え、厚さが5μm以上、15μm以下のポリイミドフィルム1と、熱圧着性ポリイミド層4上に積層される金属箔2と、を具備し、非熱可塑性ポリイミド層3は、線熱膨張係数が10ppm/K以上で金属箔2の線熱膨張係数よりも小さく、熱圧着性ポリイミド層4の線熱膨張係数が40ppm/K以上60ppm/K以下であり、金属箔2は、エッチング法によりパターニングした際、配線の厚さをTc、配線のトップ側の幅をWt、配線のボトム側の幅をWb、エッチングファクター(Ef)をEf=(2×Tc)/(Wb−Wt)としたとき、Efが2.0以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板などに使用される金属箔ポリイミド積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化とともに、小型化、高機能化などの技術進歩を求められ、それらを構成する電子部品にも電気特性、機械特性、耐熱性なども、より高性能なものを求められている。また、基板実装時のスペースの問題、屈曲性の問題などから、フレキシブルプリント配線板の総膜厚を、より薄くすることが求められている。例えば現在フレキシブルプリント配線板に使用されるポリイミドフィルムの厚みは25μm(1ミル)が主流であるが、ポリイミドフィルムの膜厚を13μm〜15μmにした、いわゆる「ハーフミル」の要求に対応した研究が行われている(特許文献1)。フレキシブルプリント配線板を加工する際、ポリイミドフィルムは張力を掛けた状態で搬送される。よって、薄いポリイミドフィルムを搬送した際、少しのキズをきっかけにフィルムの一部または全体が引裂かれてしまうことにより、加工の歩留まりが低減する恐れがある。よって、薄いポリイミドフィルムであっても、引裂伝播のしにくいフィルムが求められている。
【0003】
一方、より多くの電子情報を送信するため、配線幅をより細くすることが求められている。例えば高精細な配線幅を持つことを可能にするべく、キャリア付の銅箔を用い、銅箔厚みを5μm以下にすることによる配線の高精細化が提案されている(特許文献2)。さらに、キャリア付の銅箔のキャリアを剥離する際にカールが発生するという問題があったが、樹脂の熱膨張係数を調整することで解決できることが開示されている(特許文献3)。しかしながら、キャリア付の銅箔が高価であるため、一般的には製造コストが高価になる。よって、キャリア箔を使用しない銅箔を用いて配線形成した方が安価に製造することが可能となる。但し、更なる微細配線加工を行う際、エッチング法では配線の断面形状が台形となるため、ICチップ実装時に実装部面積が減少する。このため、ICチップの実装不具合が生じることに加え、配線の十分な断面積が得られなくなるため、導電率低下等の不具合が発生する可能性が高い。このような観点から、配線を微細化した場合、配線の断面形状を矩形状に近づけるべく、高いエッチングファクターとすることが求められており、例えば、銅箔の粒子径をコントロールによる解決が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−50599号公報
【特許文献2】特開2007−55165号公報
【特許文献3】特開2005−210145号公報
【特許文献4】特開2008−294432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、銅箔などの粒子径の制御によるエッチングファクターの制御は困難であった。また、微細配線形成後、他のデバイスとの接続の際、配線の位置ずれ等の問題もあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、微細配線を形成でき、低寸法変化率を実現できる金属箔ポリイミド積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
本発明の金属箔ポリイミド積層体は、非熱可塑性ポリイミド層と前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に積層される熱圧着性ポリイミド層とを備え、厚さが5μm以上、15μm以下のポリイミドフィルムと、前記熱圧着性ポリイミド層上に積層される金属箔と、を具備する金属箔ポリイミド積層体であって、前記非熱可塑性ポリイミド層は、線熱膨張係数が10ppm/K以上でかつ金属箔の線熱膨張係数よりも小さく、かつ前記熱圧着性ポリイミド層の線熱膨張係数が40ppm/K以上60ppm/K以下であり、前記金属箔は、エッチング法によりパターニングした際、配線の厚さをTc、配線のトップ側の幅をWt、配線のボトム側の幅をWb、エッチングファクターEfをEf=(2×Tc)/(Wb−Wt)としたとき、エッチングファクターが2.0以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の金属箔ポリイミド積層体においては、前記金属箔は、10点平均粗さRzが0.8μm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の金属箔ポリイミド積層体においては、前記熱圧着性ポリイミド層の引張弾性率が3.0GPa以上、4.0GPa以下であり、平均引張破断伸度が60%以上、180%以下の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明の金属箔ポリイミド積層体においては、前記ポリイミドフィルムのトラウザー引裂法による引裂伝播抵抗がMD方向、TD方向ともに25mN以上となることが好ましい。
【0012】
本発明の金属箔ポリイミド積層体においては、前記熱圧着性ポリイミド層のガラス転移温度(Tg)が200℃以上300℃未満であることが好ましい。
【0013】
本発明の金属箔ポリイミド積層体においては、前記金属箔のエッチング前後の金属箔ポリイミド積層体の寸法変化率がMD方向、TD方向ともに−0.05%から0.05%となることが好ましい。
【0014】
本発明の金属箔ポリイミド積層体の製造方法は、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に溶剤可溶な熱圧着性ポリイミド層を塗布後、溶媒を乾燥する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、微細配線を形成でき、低寸法変化率を実現できる金属箔ポリイミド積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属箔ポリイミド積層体のエッチングによるパターニング後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る金属箔ポリイミド積層体は、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に熱圧着性ポリイミド層が積層されてなる、厚さが5μm以上、15μm以下のポリイミドフィルムと、及び熱可塑性ポリイミド層を介して非熱可塑性ポリイミド層と接着した金属箔と、を備えて構成される。
【0018】
本発明において、ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に熱圧着性ポリイミド層を積層した耐熱性ポリイミドフィルムであることが望ましい。
【0019】
耐熱性ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層の片面または両面に、熱圧着性ポリイミドワニスを塗布し、加熱による溶媒乾燥を行うことによって製造することができる。
【0020】
非熱可塑性ポリイミドフィルムの製造法は、特に限定されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとを用いて、公知の有機極性溶媒中で重合し、ステンレスベルトへ流延塗布し、高温乾燥による脱溶媒、イミド化をすることにより得られる。そのような酸二無水物と芳香族ジアミンの例としては、特に制限されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物またはピロメリット酸二無水物、芳香族ジアミンとしてp‐フェニレンジアミンまたはジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0021】
有機極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジグライム、トリグライムなどを挙げることができる。これらの有機極性溶媒は、トルエン、ベンゾニトリル、キシレン、メシチレンなどの他の有機溶媒と混合して使用することもできる。
【0022】
非熱可塑性ポリイミド層は、後の工程で積層される熱圧着性ポリイミド層との接着力を向上させるために表面処理が施される場合があるが、特に制限されるものではない。表面処理の例としては、プラズマ処理やコロナ処理、シランカップリング剤類での処理、バフ研磨、サンドブラスト、ウェットブラスト、UVオゾン処理などが挙げられる。
【0023】
また、非熱可塑性ポリイミド層は、市販のポリイミドフィルムも使用できる。例えば、ユーピレックス(登録商標)S、ユーピレックス(登録商標)SGA、ユーピレックス(登録商標)SN(宇部興産社製、商品名);カプトン(登録商標)H、カプトン(登録商標)V、カプトン(登録商標)EN(東レ・デュポン社製、商品名);アピカル(登録商標)AH、アピカル(登録商標)NPI、アピカル(登録商標)NPP、アピカル(登録商標)HP、アピカル(登録商標)FP(カネカ社製、商品名)などが挙げられる。
【0024】
非熱可塑性ポリイミド層の片面、もしくは両面に熱圧着性ポリイミド層が積層され、ポリイミドフィルムを得ることができるが、この非熱可塑性ポリイミド層への熱圧着性ポリイミド層の積層方法としては、公知の塗布方法が使用できる。すなわち、ブレードコーター、ナイフコーター、コンマコーター、含浸コーター、グラビアコーター、リバースロールコーターなどを使用して行うことができるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0025】
熱圧着性ポリイミドワニスは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを反応させて得られるポリアミド酸をイミド化して得られる。つまり、非熱可塑性ポリイミド層へ塗付される前に既にイミド化されている。
【0026】
テトラカルボン酸二無水物は、諸特性調製の目的で公知のものを使用することが出来る。例えば、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−1−メチル−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロー3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2酸二無水物、1,5−シクロオクタンジエン−1,2,5,6テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル二無水物などが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0027】
これらの中で、耐熱性、金属箔との接着性の観点から、特にビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、これに公知の酸無水物を併用しても構わない。
【0028】
ジアミンは、諸特性調製の目的で公知のものを使用することが出来る。例えば、イソホロンジアミン、2,5−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−オキシビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−チオビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−イミノビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノ−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノ−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノ−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノ−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−オキシビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−チオビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−イミノビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ビス(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビスメチルアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,8−ジアミノ−p−メンタン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロポキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、イソホロンジアミンなどが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0029】
この中でも、耐熱性、金属箔との接着性の観点から、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが好ましく、これに公知のジアミンを併用しても構わない。反応の際、γ−バレロラクトンやピリジンなどを触媒として用いることもできる。
【0030】
金属箔をポリイミドフィルム上に形成して金属箔ポリイミド積層体を得る方法としては、該ポリイミドフィルム上に金属箔を重ね、真空プレスや、ロールラミネーターやダブルベルトプレスなどの連続ラミネーターなど、両者の接着に必要な温度と圧力と時間を加えることができる公知慣用の装置を用いることができる。
【0031】
本発明における金属箔ポリイミド積層体の金属箔をエッチング法によりパターニングして得られた後の断面図を図1示す。同図に示すように、本発明における金属箔ポリイミド積層体の断面は、ポリイミドフィルム1と金属箔2とが積層されて構成される。ポリイミドフィルム1は、非熱可塑性ポリイミド層3と、非熱可塑性ポリイミド層3上に積層される熱圧着性ポリイミド層4との2層構造となっている。金属箔2は、熱圧着性ポリイミド4上に積層され、エッチングにより台形形状の配線5に形成され、隣接する配線5同士が互いに離間されて形成されている。
【0032】
エッチングファクターEfは、配線5の厚さをTc、配線のトップ側の幅(台形形状の上底)をWt、配線のボトム側の幅(台形形状の下底)をWbとしたときに、Ef=(2×Tc)/(Wb−Wt)として表わされる。本発明における金属箔ポリイミド積層体は、エッチングファクターが2.0以上となる。このようなエッチングファクターを得るためにはJIS B0601:1982に記載の十点平均粗さRzの条件で測定した、金属箔の10点平均粗さRz=0.8μm以下にすることが好ましい。
【0033】
一般的に、ポリイミドと配線(金属箔)との接着力を向上させるために、配線(金属箔)のボトム側の面は粗化処理を施している。粗化処理を施すと、金属箔をエッチング法によりパターニングして配線を形成する際に、粗化された部分においては、エッチング液との接触効率が小さくなるので、金属箔の除去がされにくくなるという問題がある。金属箔が除去し切れず残存した場合、図1の配線間において導電する可能性がある。よって、配線間の絶縁性を確保するためには、過剰な条件でエッチングする必要が生じる。しかし、過剰な条件でエッチングを行うと、金属箔除去の進行が遅い配線のボトム側に対して、配線のトップ側の金属箔除去の方が早く進行するため、上記式で表されるエッチングファクターは小さくなる。
【0034】
以上より、金属箔表面の粗さを小さくすることにより、過剰な条件でエッチングする必要性が軽減される。よって、配線のトップ側の必要以上の金属箔除去が進行する前にエッチングを終了することが出来るので、エッチングファクターを高くすることが可能になる。また本発明においては、熱圧着性ポリイミド層の組成を上記に示す中から選択することにより、金属箔との接着強度が高くなり、10点平均粗さRz=0.8μm以下である金属箔を選択することが可能になる。その際、金属箔とポリイミドフィルムの接着強度が必要であるという点から、両者の接着強度は0.5N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.7N/mm以上である。
【0035】
また金属箔の粗度は、金属箔にポリイミドフィルムを積層するため、ポリイミドフィルムの金属箔と接する面側に保持されると考えられる。よって、ポリイミド金属積層体から、金属箔を除去し、ポリイミドフィルムの金属箔と接する面側の粗度を測定することで、ポリイミドフィルムと接していた面の金属箔の粗度とすることができる。
【0036】
本発明に係る金属箔ポリイミド積層体においては、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に熱圧着性ポリイミド層が積層される。この熱圧着性ポリイミドは、塗付前に既にイミド化しているので、非熱可塑性ポリイミド層を接着する際の低寸法変化率を実現できる。
【0037】
一方、従来熱圧着性ポリイミド層を使用せず、代わりにポリアミド酸を使用する場合、ポリアミド酸を乾燥しイミド化後に非熱可塑性ポリイミド層を連続ラミネートする。その際、連続ラミネート前の熱処理温度が300℃未満の場合、イミド化が不完全な状態で金属箔と連続ラミネートすることがあり、連続ラミネートと同時にイミド化が進行し、イミド化の際に発生する水分によるフクレ、もしくは残留溶媒の突沸によるフクレが発生する恐れがある。さらに、金属箔積層時にフクレが発生しなくても、金属箔をパターニング後、ポリイミドフィルムを吸湿した後に、半田リフローを行う際に、水分、もしくは溶媒由来のフクレが発生する恐れがある。一方、連続ラミネート前の熱処理温度が300℃以上の場合は、イミド化が完全に進行していたとしても、フィルム搬送時の残留応力が大きく、寸法変化率が悪くなる。
【0038】
以上のように、連続ラミネート前の熱処理温度が300℃以上、または300℃未満どちらであってもポリアミド酸を使用して非熱可塑性ポリイミド層をラミネートする場合は寸法変化率が悪化する問題が生じる。
【0039】
本発明に係る熱圧着性ポリイミド層のガラス転移温度は、200℃以上300℃未満であることが好ましく、これに伴いポリイミドフィルムと金属箔を積層する前における、溶媒乾燥のための熱処理は、熱圧着性ポリイミド層のガラス転移温度以上300℃未満であることが好ましい。耐熱性の観点から熱圧着性ポリイミド層のガラス転移温度が200℃以上であることが好ましい。また、連続ラミネートの後、熱圧着性ポリイミド層の接着性を得るという点からガラス転移温度が300℃未満であることが好ましい。
【0040】
さらに、連続ラミネート前の熱処理温度は300℃未満であることが好ましい。300℃未満が好ましいのは、イミド化が完全に進行していたとしても、フィルム搬送時の残留応力が大きくなり、寸法変化率が悪くなるため、これを避けるというためである。
【0041】
また、本発明において非熱可塑性ポリイミド層の線熱膨張係数が10ppm/K以上で金属箔の線熱膨張係数以下であり、かつ熱圧着性ポリイミド層の線熱膨張係数が40ppm/K以上60ppm/K以下である。この構成により、寸法変化率がMD方向、TD方向ともに−0.05%から0.05%とすることができる。ここで、寸法変化率とは、連続ラミネーターを用いて得られた金属箔ポリイミド積層体の金属箔をエッチング後、80℃30分乾燥し、23±2℃、湿度50±5RH%に調湿された環境内に24時間以上調湿した後の寸法変化率である。金属箔をエッチング後の寸法変化率の絶対値を小さくするには、金属箔をエッチングする前に、金属箔とポリイミドフィルム間の応力を小さくする必要がある。一般的には、金属箔とポリイミドの弾性率を比較すると、圧倒的に金属箔の方が大きい。よって、両者が積層された場合、加熱、冷却時には、両者の線熱膨張係数差由来で相対的にポリイミドが引張、または収縮の応力が働き、金属箔をエッチングすると、応力を開放する方向にフィルムが動く。
【0042】
連続ラミネート時には、熱圧着性ポリイミド層のガラス転移温度以上の温度で金属箔と熱圧着されるため、両者の間には応力は発生しない。しかし、連続ラミネート後、熱圧着性ポリイミド層がそのガラス転移温度以下に温度が下がった際には、金属箔よりも熱圧着性ポリイミド層の線熱膨張係数が大きいため、金属箔より収縮しようとする力が働き、結果的には内部応力が発生する。
【0043】
これに対して、非熱可塑性ポリイミド層の線熱膨張係数が金属箔よりも小さい場合、連続ラミネート後、非熱可塑性ポリイミド非層を通じて、金属箔よりも膨張しようとする力が働く。
【0044】
従って、一般的に銅箔をエッチングした際、熱可塑性ポリイミドフィルムは収縮しようとし、非熱可塑性ポリイミド層は膨張しようとする。これに対して、非熱可塑性ポリイミド層の線熱膨張係数が10ppm/K以上、金属箔の線熱膨張係数以下であり、かつ熱圧着性ポリイミド40ppm/K以上60ppm/K以下の構成とすることで、寸法変化率を−0.05%から0.05%とすることができる。より好ましくは、非熱可塑性ポリイミド層の線熱膨張係数が10ppm/K以上でかつ、金属箔の線熱膨張係数よりも3ppm/K以上小さいことである。また、熱圧着性ポリイミド層については寸法変化率の絶対値を更に小さくするという観点から、40ppm/K以上50ppm/K以下であることが好ましい。また、より微細配線に対応するために寸法変化率の範囲が、より好ましくは−0.03%から0.03%であり、さらに好ましくは−0.02%から0.02%である。
【0045】
また、本発明におけるポリイミドフィルムのトラウザー引裂試験の引裂強度は25mN以上であることが好ましい。ロールtoロールでフィルムを搬送する際、搬送途中でフィルムが切断するなどの問題が発生することがある。これはポリイミドフィルム膜厚が薄くなっているために機械強度が減少し、フィルム内に発生した小さな傷がきっかけで、搬送張力がかかることによって引裂かれることが原因と考えられる。搬送中のフィルム破断を防ぐためには、フィルム自身が引裂かれにくい材料であることが必要であり、引裂かれにくい材料とは、引張弾性率が高く、平均引張破断伸度も高いポリイミドフィルムが求められることになる。このような熱圧着性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層を積層したポリイミドフィルムの平均破断伸度は好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上である。弾性率は、3.5GPa以上9.0GPa以下が好ましく、より好ましくは、3.5GPa以上、6.5GPa以下である。
【0046】
上記のような引裂強度を満たすポリイミドフィルムになるためには、特に熱圧着性ポリイミド層の引張弾性率、平均破断伸度、分子量は以下のものが好ましい。引張弾性率は3.0GPa以上4.0GPa以下が好ましく、平均引張破断伸度が60%以上180%以下であることが好ましい。また、分子量は8万以上であり、金属箔との接着強度を維持するという点から、分子量が20万以下であることが好ましい。
【0047】
また、本発明におけるポリイミドフィルムの膜厚はハーフミルの要求に応える中で高い引裂強度を得るという点から、15μm以下が好ましい。よって、ポリイミドフィルムを構成する上記非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚さは5μm〜13μmであるものが好ましい。また、同様にポリイミドフィルムを構成する熱圧着性ポリイミド層の厚さは、熱圧着性ポリイミド層を非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面のみに積層する場合は、2μm〜10μmが好ましく、両面に積層する場合は、片面辺り1μm〜5μmであるものが好ましい。また、金属箔の(1)上面だけをエッチングする、(2)下面だけをエッチングする、(3)上面、下面ともにエッチングする、という(1)〜(3)のいずれの場合においてもカールを抑えるという観点から、両面に積層する方が好ましい。さらに両面に熱圧着性ポリイミド層を積層する際は、両面ともに同じ種類の熱圧着性ポリイミド層を同じ膜厚になるように積層することが好ましい。両面の組成が異なる、または膜厚が大きく異なる場合、金属箔をエッチングした後にカールが生じるのを避けるためである。
【0048】
また、本発明で使用される金属箔は、より微細な配線幅をエッチング法によって得るという観点から、膜厚12μm以下の銅箔であることが望ましい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、熱圧着性ポリイミド層、ポリイミドフィルム、金属箔、及び金属箔ポリイミド積層体、の各々の物性測定は、次のようにして行った。
【0050】
(1)熱圧着性ポリイミド層の引張破断伸度ならびに引張弾性率の測定、算出方法
固形分濃度18質量%の熱圧着可能なポリイミドワニスをN−メチル−2−ピロリドンとγ−ブチロラクトンの混合液(重量比10:7)で固形分12質量%まで希釈した。これを、銅をスパッタしたシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布し、空気下100℃で20分乾燥した。更に窒素下で150℃、10分、続いて180℃、10分、続いて260℃、30分、続いて325℃、30分間乾燥した。熱圧着性ポリイミド層の厚みは10μmであった。熱圧着性ポリイミド層のついたシリコンウェハ表面を3mm幅でダイシングした後、塩化第二鉄水溶液に1晩浸漬し、遊離した熱圧着性ポリイミド層を十分に水洗した後、105℃で1時間乾燥した。
【0051】
引張破断伸度、引張弾性の測定は、23±2℃、湿度50±5RH%に調湿された環境内24時間以上調湿後、テンシロン(エー・アンド・デイ社製)にて、3MPa以上のAir圧力で熱圧着性ポリイミド層を挟んでサンプルセットした。その後2.5MPa〜6.5MPaの応力をかけた状態から50mm/分の引張速度で測定を行い、測定機と接続したパーソナルコンピューターはサンプリング間隔20μmでサンプリングを行った。測定本数は、それぞれ10本とし、引張破断伸度、引張弾性率を求めた。引張破断伸度はサンプルが破断したときの伸度の平均値を算出することにより求めた。引張弾性率の算出方法は、引張伸度0.4%〜1.0%間の傾きを計算することにより算出し、平均値を求めた。
【0052】
(2)ポリイミドフィルムの引張破断伸度ならびに引張弾性率の測定、算出方法
非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱圧着可能なポリイミドワニスを、塗布、加熱乾燥させ、ポリイミドフィルムとし、続いて該ポリイミドフィルムの両面に公知の方法で銅箔を加熱圧着し、銅箔ポリイミド積層体を得た。
【0053】
得られた銅箔ポリイミド層の銅箔層を塩化第二鉄水溶液(鶴見曹達社製)に浸漬し、銅箔層をエッチング処理し、水洗することでポリイミドフィルムを得た。ポリイミドフィルムを、105℃にて1時間熱風乾燥機にて乾燥させた。ポリイミドフィルムを3mm幅、測定長50mmになるようにフィルムを切断した。フィルムの切断には、鋭黒刃小(KDS社製、S刃)を用い、フィルムの切断1回ごとに刃を交換した。また、切断したフィルムに傷がないことを目視で確認した。また、フィルムの幅は引張強伸度測定を行う50mm内で誤差100μm以下のもののみ使用した。
【0054】
引張破断伸度、引張弾性の測定は、23℃±2℃、湿度50RH%±5RH%に調湿された環境内24時間以上調湿後、テンシロン(エー・アンド・デイ社製)にて、3MPa以上のAir圧力でフィルムを挟んでサンプルセットした。その後2.5MPa〜6.5MPaの応力をかけた状態から50mm/分の引張速度で測定を行い、測定機と接続したパーソナルコンピューターはサンプリング間隔20μmでサンプリングを行った。測定本数は、5本とし、引張破断伸度、引張弾性率を求めた。引張破断伸度はサンプルが破断したときの伸度の平均値を算出することにより求めた。引張弾性率の算出方法は、引張伸度0.4%〜1.0%間の傾きを計算することにより算出し、平均値を求めた。
【0055】
(3)トラウザー引裂試験
上記と同様に、銅箔ポリイミド積層体の銅箔層を塩化第二鉄水溶液(鶴見曹達社製)に浸漬し、銅箔層をエッチング処理し、水洗することでポリイミドフィルムを得た。該ポリイミドフィルムを、105℃にて1時間熱風乾燥機にて乾燥させた。その後、JIS K7128−1に準拠した測定法で、サンプルサイズ150mm×50mmにサンプルを切断し、さらにポリイミドフィルムの中心部分から長手方向に75mm切断し、スリットを作製した。測定は、23℃±2℃、湿度50±5RH%に調湿された環境内に24時間以上調湿後、テンシロン(エー・アンド・デイ社製)にて、引裂速度200mm/分の引裂速度で測定を行い、測定機と接続したパーソナルコンピューターによってサンプリング間隔100μmでサンプリングを行った。引裂伝播抵抗値は、引裂開始の20mmと引裂終了前の5mmを除外し、残り50mmの引裂強さの平均値(a)を算出することにより求めた。測定本数は、1実施例あたり5本とし、それぞれの値(a1〜a5)の平均値を算出し、求める引裂強度とした。
【0056】
(4)金属箔の10点平均粗さ
JIS B0601:1982に記載の十点平均粗さRzを、サーフコーダ(小坂研究所社製、SE−30D)で測定した。
【0057】
(5)線熱膨張係数とガラス転移温度
熱圧着性ポリイミド層のサンプル作成方法:(1)と同様の方法で厚み10μm、幅3mmのサンプルを得た。
【0058】
非熱可塑性ポリイミド層のサンプル作成方法:非熱可塑性ポリイミド層を3mm幅、測定長50mmになるようにフィルムを切断した。フィルムの切断には、鋭黒刃小(KDS社製、S刃)を用い、フィルムの切断1回ごとに刃を交換した。また、切断したフィルムに傷がないことを目視で確認した。また、フィルムの幅は引張強伸度測定を行う50mm内で誤差100μm以下のもののみ使用した。
【0059】
測定と解析方法:熱機械分析装置(島津製作所社製)を用いて、測定長15mm、サンプル幅3mm、荷重5.0gでサンプルをセットし、室温より、10℃/分の昇温速度で測定を行い、50℃から200℃までの線熱膨張から線熱膨張係数を算出した。また、ガラス転移温度は接線法により求めた。
【0060】
(6)エッチングファクターの測定
金属箔積層体の片面にドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニクス社製:SPG−102)を貼り付け、平行光露光機で露光し、最終的にL/S=30μm/30μmとなるようにパターニングを行った。次にレーザーテック社製OPTELICS S130を用い、倍率500倍、Imaging ModeをMax PeakにしてZ画像測定を行った後、高度差グラフを作成し、配線のトップ側の幅Wtとボトム側の幅Wbを測定した。また、使用した銅箔の膜厚はミツトヨ社製LITEMATIC VL‐50ASを用いて実測した。
【0061】
以上のように観察した結果、配線の厚さをTc、配線のトップ側の幅をWt、配線のボトム側の幅をWbとしたときに、エッチングファクターEfをEf=(2×Tc)/(Wb−Wt)として計算した。配線はそれぞれ10本測定し、その平均値を求めた。
【0062】
(7)寸法変化率の測定方法
金属箔ポリイミド積層体をMD方向290mm、TD方向270mmに切り出し、IPC−TM−650 2.2.4のMethod(B)法に従い、MD方向25cm、TD方向23cm間の寸法を測定した。寸法測定にはソキア社製AMIC−300を用いた。
【0063】
(8)90°方向ピール強度
銅箔ポリイミド積層体を長さ150mm、幅10mmに切出し、幅10mmの中央部の幅1.0mmをビニールテープにてマスキングし、塩化第二鉄水溶液(鶴見曹達社製)に浸漬し、銅箔層をエッチング処理し、水洗を行った。その後、ビニールテープを除去し、得られたフレキシブル配線基板を105℃にて1時間熱風乾燥機にて乾燥させた。その後、温度23±2℃、湿度50±5%RHの環境下24時間以上調湿後、同環境下で、幅1.0mmの銅箔をポリイミド層から剥離し、その応力を測定した。剥離角度を90度、剥離速度を50mm/分とした。
【0064】
[実施例1]
ステンレス容器に攪拌器、窒素ガス導入管及び還流冷却器を取り付け、窒素ガス気流中で反応させた。γ−ブチロラクトン中にビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物と3,5−ジアミノ安息香酸をモル比2:1の割合で加え、γ−ブチロラクトンに対する固形分濃度を17質量%として攪拌した。更に、γ−バレロラクトン、ピリジン、トルエンを加え、これに窒素ガスを通じながら180℃(浴温)で1時間、トルエンと水の共沸物を除きながら反応した。この反応液中に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,5−ジアミノ安息香酸に対するモル比4)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3,5−ジアミノ安息香酸に対するモル比5)、γ−ブチロラクトン、トルエンを加え、γ−ブチロラクトンに対する固形分濃度を31質量%とし、窒素ガスを通じながら室温で1時間反応した。次いで180℃(浴温)で4.5時間、トルエンと水の共沸物を除きながら反応した。得られた溶液を冷却後、N−メチル−2−ピロリドンを加え、固形分濃度を18質量%とし、ポリイミドワニスAを得た。分子量は14万だった該ポリイミドワニスAを(1)に記載の方法で、引張破断伸度及び引張弾性率を測定したところ、引張破断伸度は123%、引張弾性率は3.3GPaとなった。また、(5)に記載の方法で、線熱膨張係数を測定したところ、48ppm/Kだった。
【0065】
続いて、ポリイミドワニスAにN−メチル−2−ピロリドンとメシチレンを2:1の割合(質量比)で加え、固形分濃度10質量%の熱圧着可能なポリイミドワニスBを得た。
【0066】
バックアップロールを有するクローズドエッジダイコーター(井上金属工業社製)を用いて、非熱可塑性ポリイミド層(カネカ社製:アピカル9FPI、線熱膨張係数6.8GPa)の両面に上記の方法で合成した熱圧着可能なポリイミドワニスBを、予備乾燥後の塗布膜厚みが片面あたり2.8μmになるように、ライン速度14m/minで片面ずつ塗布し、150℃で予備乾燥した。さらに溶剤を揮発させるため、ロールtoロール式遠赤外線加熱炉を用い、温度260℃、ライン速度3m/minで乾燥させ、ポリイミドフィルムCを得た。
【0067】
ダブルベルトプレス機(加圧媒体:加熱オイル)を用いて、乾燥後のポリイミドフィルムCの両面に銅箔(三井金属鉱業社製:NA−DFF(12μm厚)、ポリイミドフィルムCと接する側のRzは0.6μm、線熱膨張係数は18ppm/K)を積層し、銅箔ポリイミド積層体Dを得た。銅箔ポリイミド積層体Dから(2)に記載の方法で銅箔を除去し、得られたポリイミドフィルムの引張破断伸度及び引張弾性率を測定したところ、引張破断伸度は54%、引張弾性率は5.5GPaとなった。このことから、非熱可塑性ポリイミド層を積層しても、高い引張伸度を維持していることが分かる。銅箔ポリイミド積層体のピール強度は0.9N/mmであり、実用上は充分な強さを有する。
【0068】
[比較例1]
実施例1で示したポリイミドフィルムCの両面に積層する銅箔を日本電解社製:HLB(12μm厚、熱圧着性ポリイミド層と接する側のRzは1.2μm、線熱膨張係数は18ppm/K)であること以外は実施例1と同様にダブルベルトプレス機を用いて、銅箔ポリイミド積層体Eを得た。この銅箔ポリイミド積層体Eはエッチングファクターが低く、微細配線形成が困難である。
【0069】
非熱可塑性ポリイミド層と熱圧着性ポリイミド層の各種物性を表1、ポリイミドフィルムと銅箔の物性を表2、銅箔ポリイミド積層体の物性を表3に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、微細配線が必要なCOF(チップ・オン・フィルム)などの基板として有用であり、特に、微細配線が必要でかつ、薄膜化が必要な多層フレキブルプリント配線板等、高性能な電子機器の部材に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 ポリイミドフィルム
2 金属箔
3 非熱可塑性ポリイミド層
4 熱圧着性ポリイミド層
5 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非熱可塑性ポリイミド層と前記非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも一方の面に積層される熱圧着性ポリイミド層とを備え、厚さが5μm以上、15μm以下のポリイミドフィルムと、前記熱圧着性ポリイミド層上に積層される金属箔と、を具備する金属箔ポリイミド積層体であって、前記非熱可塑性ポリイミド層は、線熱膨張係数が10ppm/K以上でかつ金属箔の線熱膨張係数よりも小さく、かつ前記熱圧着性ポリイミド層の線熱膨張係数が40ppm/K以上60ppm/K以下であり、前記金属箔は、エッチング法によりパターニングした際、配線の厚さをTc、配線のトップ側の幅をWt、配線のボトム側の幅をWb、エッチングファクターEfをEf=(2×Tc)/(Wb−Wt)としたとき、エッチングファクターが2.0以上であることを特徴とする金属箔ポリイミド積層体。
【請求項2】
前記金属箔は、10点平均粗さRzが0.8μm以下であることを特徴とする請求項1記載の金属箔ポリイミド積層体。
【請求項3】
前記熱圧着性ポリイミド層の引張弾性率が3.0GPa以上、4.0GPa以下であり、平均引張破断伸度が60%以上、180%以下の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の金属箔ポリイミド積層体。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムのトラウザー引裂法による引裂伝播抵抗がMD方向、TD方向ともに25mN以上となることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の金属箔ポリイミド積層体。
【請求項5】
前記熱圧着性ポリイミド層のガラス転移温度(Tg)が200℃以上300℃未満であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の金属箔ポリイミド積層体。
【請求項6】
前記金属箔のエッチング前後の金属箔ポリイミド積層体の寸法変化率がMD方向、TD方向ともに−0.05%から0.05%となることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属箔ポリイミド積層体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の金属箔ポリイミド積層体の製造方法であって、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に溶剤可溶な熱圧着性ポリイミド層を塗布後、溶媒を乾燥する工程を含むことを特徴とする金属箔ポリイミド積層体の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−37157(P2011−37157A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187191(P2009−187191)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】