説明

金属管柱の基部構造

【課題】 金属管柱の下部に取り付けられたベースプレートからのアンカーボルトの端部及び締め付けナット部の突出による不都合を解消してなる金属管柱の基部構造の提供。
【解決手段】
基礎5に埋め込み、かつ一端部を基礎の上面から突出させたアンカーボルト10を、金属管柱の下部に取り付けたベースプレート10のざぐり加工による開口部17を有するアンカーボルト挿入用孔13に挿入し、このアンカーボルトを外面多角形状の締め付け用ナット7で締め付けてなる金属管柱の基部構造であって、締め付け用ナット7の外側面の少なくとも1個所に嵌合する形状を内面4に有し、かつ外周面に凸部9を有する弛緩防止金物11が、その凸部をざぐり加工孔の側面部に設けた凹部12に嵌合するとともに、その内面を締結された締め付け用ナットの外側面嵌合するように載置されていることを特徴とする金属管柱の基部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明柱、信号柱や標識柱等に用いられる金属管柱の基部構造に関し、さらに詳しくは、金属管柱の下部に取り付けられたベースプレートからのアンカーボルトの端部及び締め付けナット(以下、「ナット締結部」と総称する)の突出による不都合を解消してなる金属管柱の基部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に付随して設置される照明柱、信号柱および標識柱等の金属管柱は、その下端部に溶接、螺合等の手段によって取り付けられたベースプレートを介して基礎に固定される。その固定方法としては、基礎コンクリートに埋設し、一端をコンクリートから突出させたアンカーボルトをベースプレートに設けられた複数のアンカーボルト挿入用孔に挿入し、締め付け用ナットで固定することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属管柱の下端とベースプレートをねじによって螺合することができる金属管柱の基部構造が開示されており、溶接による作業を不要にすることで、低コストかつ簡単に接合することを可能としている。
【0004】
図5は、この特許文献1に開示されている金属管柱の基部構造の縦断面図である。金属管柱1はその下端部の外周に雄ねじ部を有し、ベースプレート2と一体化したねじ筒3に螺合されている。ベースプレート2は、基礎5から突出させたアンカーボルト6と2個の締め付け用ナット7により固定されている。この基部構造では、鋼管柱1がねじ筒3を介してベースプレート2に溶接ではなく螺合により取り付けられている。
【0005】
図6は、図5の点線の丸印で示すAの部分の拡大図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図を示す。このアンカーボルト6には平座金8と2個の締め付け用ナット7が使用されている。締め付け用ナットが2個必要なのは下記の理由による。
【0006】
橋や道路脇に設置された金属管柱は、人や車両が通過する時に振動が生じる。また、金属管柱は風が当たると金属管柱の風下にはカルマン渦が生じ、それにより励起される振動が生じる。金属管柱の基部がこのような振動を繰り返し受けるとアンカーボルトに止められている締め付け用ナットが1個の場合には緩みが生じる。一般に、1本のアンカーボルトに2個の締め付け用ナットを使用し、締め付け用ナット同士を強固に締め付けることによって、緩みの発生を防止している。
【0007】
【特許文献1】特開平10−317493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような二重ナットの構造では、ナット締結部の突出部が長いため、歩行者等がつまずいたり、衣服を引っかけたりする恐れがある。また、ナット締結部が直接歩行者等の目に触れるため、人為的な悪意によりナットが緩められる恐れがある。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ベースプレートからのナット締結部の突出による不都合を解消してなる金属管柱の基部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、金属管柱基部のベースプレートからのナット締結部の突出による不都合を解消するために、金属管柱の基部構造について鋭意実験、検討を重ねた。その結果、以下の(a)〜(d)の知見を得るに至った。
【0011】
(a)ナット締結部のアンカーボルトの長さを短くするには、1本のアンカーボルトに対して締め付け用ナット1個を用いればよく、それにより生じる振動によるナットの緩みを防止するには、ナットの外側面を機械的に固定すればよい。
【0012】
(b)ナット締結部を短くしても突出部が残るが、この突出部を最小限にするためには、ベースプレートのアンカーボルト挿入用孔にざぐり加工によって開口部を形成し、この開口部にナット締結部の突出部を収容すればよい。
【0013】
(c)ざぐり加工によって形成された開口部にナット締結部の突出部を収容すれば、歩行者等の目に触れにくくなるので、人為的な悪意によってナットが緩められる恐れが少なくなる。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので、本発明の金属管柱の基部構造は、下記の(1)〜(5)の基部構造を要旨とする。
【0015】
(1)基礎に埋め込み、かつ一端部を基礎の上面から突出させたアンカーボルトを、金属管柱の下部に取り付けたベースプレートのざぐり加工による開口部を有するアンカーボルト挿入用孔に挿入し、このアンカーボルトを外面多角形状の締め付け用ナットで締め付けてなる金属管柱の基部構造であって、ナットの外側面の少なくとも1個所に嵌合する形状を内面に有しかつ外周面に凸部を有する弛緩防止金物が、その凸部をざぐり加工による開口部の側面に設けた凹部に嵌合するとともに、その内面を締結された締め付け用ナットの外側面に嵌合するように載置されている金属管柱の基部構造。
【0016】
(2) 基礎に埋め込み、かつ一端部を基礎の上面から突出させたアンカーボルトを、金属管柱の下部に取り付けたベースプレートのざぐり加工による開口部を有するアンカーボルト挿入用孔に挿入し、このアンカーボルトを外面多角形状の締め付け用ナットで締め付けてなる金属管柱の基部構造であって、ナットの外側面の少なくとも1個所に嵌合する形状を内面に有しかつ外周面に凹部を有する弛緩防止金物が、その凹部をざぐり加工による開口部の側面に設けた凸部に嵌合するとともに、その内面を締結された締め付け用ナットの外側面に嵌合するように載置されていることを特徴とする金属管柱の基部構造。
【0017】
(3)ベースプレートと弛緩防止金物の間に平座金を設けた上記(1)又は(2)の金属管柱の基部構造。
【0018】
(4)弛緩防止金物は、締め付け用ナットの上面から突出しているアンカーボルトの端部と締め付け用ナットを内部に収容可能なキャップ形状を有している上記(1)〜(3)の金属管柱の基部構造。
【0019】
(5)ざぐり加工孔による開口部が閉塞板により閉塞されている上記(1)〜(4)の金属管柱の基部構造。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金属管柱の基部構造は、ベースプレートからのナット締結部の突出による不都合が解消される。したがって、歩行者等がつまずいたり、衣服を引っかけたりすることはなくなる。また、ナット締結部が人目に触れにくくなり、人為的な悪意によるナットの緩めを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明にかかる金属管柱の基部構造を説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる金属管柱の基部構造の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【0023】
ベースプレート10には金属管柱(図示せず)が螺合、溶接等により固定されている。ベースプレート10には、ざぐり加工17による開口部を有するアンカーボルト挿入用の孔13が設けられている。このベースプレート10は、以下のようにして基礎コンクリート5に固定されている。
【0024】
アンカーボルト挿入用の孔13に、基礎コンクリート5に埋設して一端をコンクリート表面上に突出させたアンカーボルト6を挿入し、平座金8をアンカーボルトに通し、締め付け用ナット7により締結された上に弛緩防止金物11が載置される。
【0025】
弛緩防止金物11は、その内面4に締め付け用ナットの外側面に嵌合する孔形状を有しており、かつその外周には凸部9を備えている。そして、その内面4が締め付け用ナットの外側面に嵌合している。また、ざぐり加工による開口部17の側面には凹部12が設けられており、その凹部に弛緩防止金物11の凸部9を嵌合させてあり、弛緩防止金物の水平方向における回転を防止する構造となっている。ここでは、凹部12の形状は横断面が半円形状でベースプレート上面に開口した縦溝となっているが、横断面の形状はこれに限定されるものではなく、多角形状であってもよい。また、凸部9の形状も限定されるものでなく、凸部がこの凹部に拘束されて弛緩防止金物の水平方向における回転が防止できる形状であればよい。また、ここでは、ざぐり加工による開口部17に浸入した雨水を外部に排出するための排水用孔16が設置されている。排水用孔16は必ずしも必要でないが、ナット締結部に腐食防止のために設置するのが好ましい。
【0026】
ここで、弛緩防止金物11の内面4の孔と締め付け用ナット7の外側面は、互いに嵌合できる形状を有する必要があるが、締め付け用ナット7の回転が、弛緩防止金物11の内面4の孔の存在によって妨げられていればよく、嵌合時に少々の遊びが存在しても構わない。なお、弛緩防止金物11は、嵌合部に遊びの存在する方が取り付け作業が容易になるので、嵌合部にある程度の遊びが存在するような形状とするのが好ましい。
【0027】
そして、締め付け用ナットは6角形状のものが用いられているが、特に限定されるものではなく、その他の多角形状のものでもよい。そして、この締め付け用ナットに嵌合する弛緩防止金物の内面の孔は、ここでは6角形状となっているが、弛緩防止金物の内面の孔の形状に合わせて、その他の多角形状のものでもよい。なお、弛緩防止金物の内面の孔の形状と、締め付け用ナットの外側面の形状は全く同じ形状である必要はなく、締め付け用ナットの回転が、ベースプレートに固定された弛緩防止金物の内面の孔によって妨げられていればよいので、締め付け用ナットが6角形状のときの弛緩防止金物の内面の孔は、その倍の12角形状であっても構わない。
【0028】
なお、平座金8は必ずしも使用する必要はないが、使用するとナットの締め付けが安定するので座金を用いるのが好ましい。
【0029】
さらに、ここでは、弛緩防止金物11の外周に凸部9を備え、そして、ざぐり加工による開口部17の側面には凹部12が設けられているが、この凹凸を逆にして、弛緩防止金物11の外周に凹部を備え、そして、ざぐり加工による開口部17の側面には凸部が設けられていてもよい。この場合にも、ざぐり加工による開口部17の側面の凸部に弛緩防止金物11の凹部が嵌合させることができるので、弛緩防止金物の水平方向における回転を防止できる構造となっている。
【0030】
また、このように、ざぐり加工を施して開口部にナット締結部を収容した後に、その開口部をパテ等の充填材により埋める構造にすることもできる。これにより、ナット締結部は歩行者の目には全く触れなくなる。ただし、充填材により密封されるので、雨水が浸入することはなく、したがって、排水用孔17を設けなくてもよい。充填材は、特に限定するものではないが、たとえば、ポリブタジエンを主成分とする弾性シール材が好ましい。
【0031】
図2は、本発明にかかる弛緩防止金物の一例を示す平面図である。図2に示す弛緩防止金物の内面4は、締め付け用ナットの3つの角部と嵌合する形状となっている。このように、ナット角部の一部が嵌合できれば、ナットの緩みを防止することができるので、弛緩防止金物の内面4の形状は、締め付け用ナットの外面形状と同じである必要はない。締め付け用ナットの外側面の少なくとも一個所に嵌合する形状を有しておればよい。
【0032】
図3は、本発明にかかる弛緩防止金物の他の例であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【0033】
この弛緩防止金物は、ナット締結部を内部に収容可能なキャップ形状を有している。すなわち、キャップ形状の内部は締め付け用ナットの上面から突出しているアンカーボルトの端部6aと締め付け用ナット7を収容することができる収容部14を形成している。このような弛緩防止金物とすることにより、ナット締結部が歩行者等の目に触れることがないので、人為的な悪意によるナットの緩めを防止することができる。
【0034】
図4は、本発明にかかる金属管柱の基部構造の他の例を示す縦断面図である。
【0035】
ベースプレート10に設けたざぐり加工孔による開口部17を、平板状の閉塞板15で閉塞したものである。開口部17を閉塞板15で閉塞することにより、ナット締結部は、歩行者の目には全く触れなくなる。ここでも、ざぐり加工による開口部17の下部に排水用孔16が設置されている。排水用孔16は必ずしも必要ではないが、ナット締結部の腐食防止のために設置するのが好ましい。ただし、閉塞板により完全に密封されている場合は、雨水が浸入しないので、排水用孔16を設けなくてもよい。
【0036】
なお、閉塞板の材料は鋼や硬質樹脂等でよい。また、ここでは、閉塞板は平板状であるが、ざぐり加工による開口部が浅くて、ベースプレートからナット締結部が突出してしまう場合には、閉塞板をドーム状のものにすることによって、歩行者の目には全く触れなくすることができる。
【0037】
また、ざぐり加工による開口部17の深さを深くすれば、ナットを2個以上用いてもナット締結部をベースプレート内に収容できる。このような構造にすれば、ナットの外側面の機械的な固定に加え、2個以上のナット同士を強固に締め付けることができるので、ナットの緩みは一層防止できる。
【0038】
本発明においては、金属管柱のベースプレートへの固定手段は特に限定するものでなく、溶接、螺合等の通常の接合手段でよい。また、金属管柱の材質および形状は特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、ベースプレートからのナット締結部の突出による不都合を解消してなる金属管柱の基部構造を提供することができる。したがって、ナット締結部が通行上歩行者の妨げとならない。また、ナット締結部が歩行者の目に触れにくくなるので、人為的な悪意による人為的な締め付け用ナットの緩めを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる金属管柱の基部構造を示す図であり、(a)平面図、(b)は縦断面図である。
【図2】本発明にかかる弛緩防止金物の一例を示す平面図である。
【図3】本発明にかかる弛緩防止金物の他の例であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図4】本発明にかかる金属管柱の基部構造の他の例を示す縦断面図である。
【図5】従来の金属管柱の基部構造を示す縦断面図である。
【図6】従来の金属管柱の基部構造のナット締結部の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1・・・鋼管柱
2・・・ベースプレート
3・・・ねじ筒
4・・・弛緩防止金物の内面
5・・・基礎
6・・・アンカーボルト
6a・・・アンカーボルトの端部
7・・・締め付け用ナット
8・・・平座金
9・・・弛緩防止金物の外周に設けられた凸部
10・・・ベースプレート
11・・・弛緩防止金物
12・・・ざぐり加工孔の側面に設けられた凹部
13・・・アンカーボルト用孔
14・・・収容部
15・・・閉塞板
16・・・排水用孔
17・・・ざぐり加工による開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に埋め込み、かつ一端部を基礎の上面から突出させたアンカーボルトを、金属管柱の下部に取り付けたベースプレートのざぐり加工による開口部を有するアンカーボルト挿入用孔に挿入し、このアンカーボルトを外面多角形状の締め付け用ナットで締め付けてなる金属管柱の基部構造であって、ナットの外側面の少なくとも1個所に嵌合する形状を内面に有しかつ外周面に凸部を有する弛緩防止金物が、その凸部をざぐり加工による開口部の側面に設けた凹部に嵌合するとともに、その内面を締結された締め付け用ナットの外側面に嵌合するように載置されていることを特徴とする金属管柱の基部構造。
【請求項2】
基礎に埋め込み、かつ一端部を基礎の上面から突出させたアンカーボルトを、金属管柱の下部に取り付けたベースプレートのざぐり加工による開口部を有するアンカーボルト挿入用孔に挿入し、このアンカーボルトを外面多角形状の締め付け用ナットで締め付けてなる金属管柱の基部構造であって、ナットの外側面の少なくとも1個所に嵌合する形状を内面に有しかつ外周面に凹部を有する弛緩防止金物が、その凹部をざぐり加工による開口部の側面に設けた凸部に嵌合するとともに、その内面を締結された締め付け用ナットの外側面に嵌合するように載置されていることを特徴とする金属管柱の基部構造。
【請求項3】
ベースプレートと弛緩防止金物の間に平座金を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属管柱の基部構造。
【請求項4】
弛緩防止金物は、締め付け用ナットの上面から突出しているアンカーボルトの端部と締め付け用ナットを内部に収容可能なキャップ形状を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属管柱の基部構造。
【請求項5】
ざぐり加工孔による開口部が閉塞板により閉塞されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の金属管柱の基部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−274626(P2006−274626A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93712(P2005−93712)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000101949)住友金属建材株式会社 (44)
【Fターム(参考)】