説明

金属製床束

【課題】傾斜方向からの床荷重を、部品相互間の相対位置の変化が発生しない状態で受け止めることのできる金属製床束を提供する。
【解決手段】下部が基礎7に固定されている高さ調整部22と、高さ調整部22と大引1とを結合する結合部材24に設けられ大引1の傾斜に順応する変角機構部40とを備え、変角機構部40は、大引1側に一体化された揺動部材41と、高さ調整部22側に一体化された静止部材45と、揺動部材41を静止部材45に対して揺動可能な状態で結合する軸部材50とを有し、静止部材45に設けられ軸部材50が貫通する貫通穴の一部に、大引1からの荷重を受ける平坦な受け面53,54,55が形成され、上記軸部材50に、受け面53,54,55によって受け止められる平坦な加圧面61,62,63が形成されている。よって、荷重は平坦な面で受け止められ、安定した機能の変角機構部となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大引をその傾斜状態に順応させて支持する金属製床束に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅や工業化住宅の1階床は、束石または土間コンクリート等の基礎の上に束を起立させて大引を支持し、その上に直交するように根太をのせて床板を張る構造が一般的である。束は、高さ調整の容易な鋼製束が普及し、また、大引も価格と性能の点から一部の工業化住宅では鋼製のものが採用されている。さらに、現今では、一般住宅においてもバリヤーフリーの住宅構造が普及し、その中の構造として傾斜した床構造が採用され、歩行を楽にしたり車椅子の通行を可能にしている。そして、上記のような傾斜した床構造においては、床剛性を確保する大引にも傾斜構造を採用する必要があり、そのために大引の傾斜に順応できる床束が開発されている。
【特許文献1】特開2002−47771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように大引の傾斜に順応できる床束においては、床束の一部に屈曲可能な構造を付与する必要があり、このような屈曲構造部には大引の傾斜に応じた斜め方向からの荷重が作用する。したがって、上記屈曲構造部には種々な方向からの荷重が作用するので、屈曲構造部を形成する部品相互間の相対位置が変化し、これがきしみ音や床鳴り、あるいは床面の撓み現象の原因になっている。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、傾斜方向からの床荷重を、部品相互間の相対位置の変化が発生しない状態で受け止めることのできる金属製床束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の金属製床束は、下部が基礎に固定されて略鉛直方向に起立する高さ調整部と、上記高さ調整部と大引とを結合する結合部材に設けられ大引の傾斜に順応する変角機構部とを備え、上記変角機構部は、大引側に一体化された揺動部材と、高さ調整部側に一体化された静止部材と、上記揺動部材を静止部材に対して揺動可能な状態で結合する軸部材とを含んで構成され、上記静止部材に設けられ軸部材が貫通する貫通穴の一部に、大引からの荷重を受ける平坦な受け面が形成され、上記軸部材に、受け面によって受け止められる平坦な加圧面が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、上記静止部材に設けられ軸部材が貫通する貫通穴の一部に、大引からの荷重を受ける平坦な受け面が形成され、上記軸部材に、受け面によって受け止められる平坦な加圧面が形成されていることにより、軸部材から静止部材に作用する大引等の床構造部材の荷重が、平坦な加圧面と受け面との衝合によって受け止められる。したがって、加圧面と受け面における受圧面積を平面状態で大きく確保し、低い面圧のもとで上記変角機構部における荷重支持を、偏荷重等が発生することなく良好なものとすることができる。とくに、大引の傾斜によって変角機構部に鉛直線に対して傾斜した方向の荷重が、軸部材から静止部材に作用しても、上記加圧面と受け面との面数や面の向きを選定することにより、傾斜方向の荷重を的確に受け止めて荷重支持を行なうことができる。したがって、床面に歩行者や車椅子等の荷重が作用しても、変角機構部からきしみ音等が発生することがない。また、大引に撓み変形が発生しないので、床鳴りが発生したりしない。
【0007】
本発明の金属製床束において、上記軸部材の軸線が、大引の長手方向線に対して略直角に食い違っている場合には、軸部材の軸線回りに大引が傾斜揺動をすることができ、金属製床束として大引の傾斜に対して正確に順応することができる。
【0008】
本発明の金属製床束において、上記静止部材は、揺動部材を挟んで保持する2つの支持片を備えた断面略コ字型の部材で構成され、一方の上記支持片に上記受け面が形成されている場合には、軸部材から静止部材に対する荷重を受ける受け面が、一方の支持片において十分な面積を確保した状態で形成できる。また、一方の支持片に受け面を形成するものであるから、構造の簡素化にとっても有効である。
【0009】
本発明の金属製床束において、上記受け面は、少なくとも上方からの荷重を受ける上下荷重受け面と水平方向の荷重を受ける水平荷重受け面を有している場合には、大引の傾斜に順応させて揺動部材が傾斜することにより、鉛直方向の荷重成分を斜め方向の荷重成分に変換した状態のもので、上下荷重受け面と水平荷重受け面の両方の受け面で荷重支持をすることができる。したがって、2つの受け面により十分に大きな受圧面積のもとで荷重支持ができ、信頼性の高い床束機能が得られる。また、上下荷重受け面と水平荷重受け面とは直交した位置関係になっているので、斜め方向からの荷重を両受け面で受け止めることにより、軸部材側の加圧面がずれたりすることがなく、正確な荷重支持が行なわれる。
【0010】
本発明の金属製床束において、上記受け面は、上記貫通穴の一部に設けられた角穴の内面であり、上記加圧面は、上記角穴に略隙間のない状態ではまり込む上記軸部材の一部に設けられた角軸の外面である場合には、角穴と角穴内に略隙間のない状態で挿入された角軸との組み合わせによって、角軸が角穴内に拘束されたような形態になる。このような組み合わせ構造のもとで荷重支持がなされるため、受け面と加圧面との圧接が正確に位置ずれを起こすことなく成立する。また、角穴と角軸との組み合わせであるから、変角機構部の構造簡素化にとって有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の金属製床束を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図14は、本発明の金属製床束の一実施例を示す。
【0013】
本実施例に係る金属製床束(以下「鋼製束」という)2によって支持される大引は鋼製であり、この鋼製大引1は、図1に示すように、基礎7上に起立させた3本の鋼製束2によって支持されている。上記鋼製大引1は、図1に示すように、傾斜した姿勢で支持され、その上に取り付けられた根太1a上に床板1bがはり付けてある。同図に2点鎖線で示されている床板1cは水平な状態であり、両床板1cの間に傾斜した床板1bが連なっている。したがって、バリアフリーとされた床構造が形成され、歩行しやすく車椅子も通行できるようになっている。
【0014】
上記鋼製大引1は、図2に示すように、鋼板をプレス成形またはロール成形することにより、断面形状が長方形の中空状に形成されたもので、下面11の中央部には、鋼板大引1の長手方向線に沿って延びる開口部12が形成されている。この開口部12の両側には、鋼板の幅方向の両縁部が下面11から内側に(上面13に向かって)略直角に折り曲げられて形成された一次折込部14aと、この一次折込部14aの先端からさらに開口部12から離れる方向に(側面15,15に向かって)折り曲げられて形成された二次折込部14bとからなる折込部14が設けられている。
【0015】
一方、上記鋼製束2の束本体20は、図3に示すように、ベースプレート21と、高さ調整部22とを備え、さらに、上記高さ調整部22の上側に高さ調整部22と鋼製大引1を結合する結合部材24が配置されている。そして、上記結合部材24の上端部に結合部30が設けられている。
【0016】
上記結合部材24に後述の変角機構部40が配置され、鋼製大引1の傾斜角に応じた鋼製束2の支持機能が果たされるようになっている。
【0017】
上記高さ調整部22は、ターンバックル23の上下にそれぞれ、上記結合部材である上部ボルト24および下部ボルト25がねじ込まれ、上部ボルト24および下部ボルト25にそれぞればね座金26およびナット27が装着されている。下部ボルト25とこれに螺合されているナット27は逆ねじになっている。ターンバックル23を回すことにより、束本体20(鋼製束2)の高さが上下する。束本体20の高さを調整した後、上部ボルト24および下部ボルト25にそれぞれ螺合されているナット27,27をターンバックル23側に締め込むことにより、束本体20の高さ(長さ)が固定される。下部ボルト25の下端に、ベースプレート21が溶接されて固定されている。
【0018】
図5および図6は、上記結合部30の細部構造を詳しく示している。すなわち、上部ボルト24と、この上部ボルト24の頭部24aの下面に固定された押え金物31と、上部ボルト24に螺合された大引固定用ナット32と、このナット32と押え金物31との間において上部ボルト24に挿入された受け金物33と、この受け金物33とナット32との間において上部ボルト24に装着されたばね座金34とを備えている。
【0019】
上記押え金物31は、長方形の鋼板が折り曲げられて形成されたもので、両端に下方に直角に折り曲げられて形成された折曲部31a,31aを備えている。押え金物31は、中央部の孔(図示せず)に上部ボルト24が貫通されて、上部ボルト24の頭部24aにかしめまたは溶接等により固定されている。押え金物31の幅は鋼製大引1の開口部12の幅よりも狭く、長さは開口部12の幅よりも長く設定されている。
【0020】
上記受け金物33は、長方形の鋼板が折り曲げられて形成されたもので、水平に延在する底壁部33aと、この底壁部33aの長手方向の両端に上方に直角に折り曲げられて形成された側壁部33b,33bと、底壁部33aの幅方向の両端の中央部が切り起こされて形成された起立部33c,33cとを備えている。上記底壁部33aの中央部には、上部ボルト24のボルト径よりやや大きな孔(図示せず)が形成されており、この孔に上部ボルト24が空隙をもって貫通されているが、固定はされていない。
【0021】
上記両側壁部33b,33bの間に挿入された鋼製大引1は、これらの両側壁部33b,33bと底壁33aとにより、その下端部が抱えられる。また、両起立部33c,33cの幅は、鋼製大引1の開口部12の幅より若干小さく設定されており、これにより両起立部33c,33cは、鋼製大引1の開口部12に嵌入されるようになっている。
【0022】
鋼製大引1と鋼製束2とは、次のようにして結合されている。すなわち、図3に示すように、鋼製大引1の下端部が受け金物33に挿入されて、受け金物33の底壁部33aと両側壁部33b,33bとにより抱えられているとともに、鋼製大引1の開口部12内に受け金物33の両起立部33c、33cが嵌入されている。押え金物31は鋼製大引1の開口部12内に、例えば開口部12の幅方向と押え金物31の幅方向とを合わせて挿入された後、鉛直軸の回りに90°回転されて、折込部14の二次折込部14b,14b間に掛け渡され、押え金物31と受け金物33の底壁部33aとの間に、折込部14が挟み込まれ、ナット32により締め付けられることにより、鋼製大引1と鋼製束2とが結合されている。
【0023】
通常、鋼製束2を使用する場合の鋼製大引1の施工は、図7に示すように、土間の上に鋼製大引1を上下逆さまに置き、上から鋼製束2を逆さまに全て固定した後、全体を上下反転して所定の位置に設置し、その後、図3に示すように、各鋼製束2のベースプレート21と基礎(束石または土間コンクリート)7とを、接着剤とコンクリート釘8で固定し、その後、鋼製束2の高さをターンバックル23により調整する。
【0024】
次に、鋼製大引1と鋼製束2とを結合する手順について説明する。
【0025】
先ず、図8(A)に示すように、押え金物31とナット32との距離が十分あることを確認した後、鋼製束2を逆さまに保持した状態で、開口部12の幅方向と押え金物31の幅方向とを合わせて、押え金物31を鋼製大引1の開口部12から中空部に挿入する。このとき、受け金物33の底壁部33aが鋼製大引1の下面に当接されるとともに、鋼製大引1の底壁部33aの端部が、受け金物33の底壁部33aと両側壁部33b,33bとにより抱えられるように、かつ鋼製大引1の開口部12内に両起立部33c、33cが嵌入されるようにして、受け金物33を鋼製大引1の上に載せる。
【0026】
次に、鋼製大引1の開口部12に指等を入れて、図8(B)に示すように、押え金物31を鉛直軸を中心に90°回転させてから、図8(C)に示すように、鋼製束2を引き上げて押え金物31を鋼製大引1の折込部14の二次折込部14b,14bに密着させる。最後に、図8(D)に示すように、ナット32を受け金物33側に締め込む。このようにすると、鋼製大引1の折込部14が押え金物31と受け金物33の底壁部33aとの間に挟み挟み込まれて、鋼製大引1と鋼製束2とが結合される。なお、鋼製大引1と鋼製束2とを解体するには、逆の手順によればよい。
【0027】
このような鋼製大引1と鋼製束2との結合部30にあっては、押え金物31を鋼製大引1の開口部12から中空部に挿入するとともに、受け金物33を鋼製大引1の上に載せた後、押え金物31を回転させ、その後鋼製束2を引き上げて押え金物31を折込部14の二次折込部14bに密着させてから、ナット32を締め付けることにより、鋼製大引1と鋼製束2とを結合することができる。したがって、簡単かつ確実に結合作業を行うことができる。またこれらの解体作業も簡単に行うことができるので、これらの部材を容易に再利用することができる。
【0028】
また、この鋼製大引1と鋼製束2との結合部30にあっては、鋼製大引1として開口部12を有するものを使用するので、従来のように閉断面にするためのカシメ加工等を必要としないため、鋼製大引の製造コストを低減することができる。また、鋼製大引1として開口部12を有するものを使用するので、2本の鋼製大引1の互いの下面11および側面15を、相手の開口部12に突っ込むことにより、運搬の荷姿を小さくすることができ、運搬効率を高めることができる。また、鋼製大引1が開断面でありながら、鋼板の縁部が内側に折り曲げられており、鋼板の縁が外部に露出していないので、素手で取り扱っても安全である。また、受け金物33に、鋼製大引1の開口部12に嵌入される起立部33cが形成されているので、受け金物33と鋼製大引1との間のがたつきを防止することができる。また、鋼製大引1に二次折込部14b,14bが形成されているので、押え金物31を所定の向きに固定しやすい上に、押え金物31からの圧縮力に対する補強の役割を果たすことができる。
【0029】
なお、上記実施例では、鋼製大引1は断面形状が長方形の中空状に形成されているが、これに限らず、鋼製大引1は、下面に開口部12が形成されていれば、上辺と下辺の長さが異なる台形の断面形状やその他の多角形の断面形状の中空状に形成してもよい。また、鋼製大引1は、補強等のために、各面に溝を設けたり、あるいは波型の加工を施してもよい。また、上記実施例では、開口部12が鋼製大引1に長手方向に沿って延びるように形成されているが、開口部は連続的に形成されていなくともよい。また、上記実施例では、鋼製束2の押え金物31を鋼製大引1の開口部12から中空部に挿入し、その後図8(b)に示すように、鋼製大引1の開口部12から押え金物31が抜けないようにしたが、これに代えて、押え金物31を鋼製大引1の端部から鋼製大引1の中空部に挿入し、その後鋼製大引1との結合位置までずらすようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施例では、鋼製大引1の折込部14が、一次折込部14aと二次折込部14bとから構成されているが、これに限らず、折込部14は鋼製大引1の内側に折り込まれて、押え金物31を当接させて受けることができるものであればよく、形状は問わない。さらには、折込部14を設けなくてもよい。
【0031】
さらに、上記実施例では、鋼製束2の高さ調整部22としてターンバックル23を使用したが、これに限らず、他の高さ調整機構を用いることもできる。また、ターンバックル形式の場合は、ターンバックル23にねじ込まれる上部ボルト24が、結合部30のボルトを兼用しているが、他の高さ調整機構を用いる場合には、結合部30のボルトを別に用意すればよい。
【0032】
次に、鋼製大引1が傾斜して配置される際に機能する上記変角機構部40について説明する。
【0033】
図3に示されている変角機構部40は正面図であり、図9は図3のものを左側から見た側面図、図10は図9の〔10〕−〔10〕断面図、図11は揺動部材の斜視図、図12は静止部材の斜視図、図13は軸部材の斜視図である。
【0034】
上記上部ボルトすなわち結合部材24は、上記高さ調整部22と鋼製大引1とを結合する機能を果たしている。上述の各部の構造説明においては、結合部材24と鋼製大引1との間に着脱性等に便宜を付与した結合部30が介在されているが、本発明の中核部分をなす変角機構部40にとっては、上記のような構造の結合部30を他の構造に変更してもよく、また、結合部30のような機構を止めて結合部材24が直接鋼製大引1に固定されていてもよい。
【0035】
揺動部材41は、鋼製大引1側に一体化されているもので、板厚の大きな鋼板によって形成され、結合部材24に溶接されている。符号44は、その溶接部を示している。上記揺動部材41の下部の角部分に円弧部42が形成され、揺動時に後述の静止部材と干渉しないようになっている。そして、揺動部材41の下方寄りに、後述の軸部材が貫通する円形穴43があけられている。
【0036】
静止部材45は、揺動部材41と組み合わされ高さ調整部22側に一体化されているもので、高さ調整部22にねじ込まれている結合部材24に溶接されている。符号46は、その溶接部を示している。上記静止部材45は、揺動部材41を挟んで保持する2つの支持片47,48と、これらの支持片47,48を接続する基部49を有している。したがって、静止部材45は、断面が略コ字型の部材で構成されている。両支持片47,48の間に摺動できる状態で揺動部材41が挿入され、両支持片47,48および揺動部材41を貫通する軸部材50によって、揺動部材41が静止部材45に対して揺動できるようになっている。
【0037】
また、上記軸部材50の軸線は、鋼製大引1の長手方向線に対して略直角に食い違った位置関係とされ、こうすることにより軸部材50を中心にして鋼製大引1の角度変化ができるようになっている。
【0038】
片側の支持片47の側面に浅い深さの円形の窪み51が形成され、その中央部に四角い角穴52が設けられている。上記角穴52は正方形であり、その4つの平坦な内面のうち下側の水平面が上下荷重受け面53とされ、上記水平面(53)に対して垂直に交差している内側面が水平荷重受け面54,55とされている。
【0039】
上記軸部材50は、円形の上記窪み51にはまり込む円盤型の頭部57と、上記角穴52内に略隙間のない状態ではまり込む角軸58と、軸部59とが同軸の状態で一体に成形されたもので、上記軸部59の先端側に雄ねじ60が設けられている。上記角軸58の4つの平坦な外面のうち下面が上記上下荷重受け面53に密着する加圧面61とされ、両横側面が上記水平荷重受け面54,55に密着する加圧面62,63とされている。
【0040】
もう一方の支持片48には、角穴52と同心の状態で円形穴64があけられ、角穴52と円形穴64によって、静止部材45に軸部材50が貫通する貫通穴が形成されている。図10に示すように、静止部材45の角穴52と円形穴64および揺動部材41の円形穴43に軸部材50を差し込んで、スプリングワッシャ65を嵌めてからナット66を雄ねじ60に締め込んで揺動部材41と静止部材45との結合が完了する。
【0041】
上記ナット66の締め付け前に、揺動部材41を鋼製大引1の傾斜角度に応じて傾け、この傾いた状態でナット66を強固に締め付けて、鋼製束2の設置が完了する。揺動部材41の上記傾き角度は、揺動部材41に溶接されている上部ボルト24の軸線が、鋼製大引1の長手方向線に対して直交するように設定される。すなわち、図1に示すように、角度θが90度とされる。
【0042】
図14は、鋼製大引1の傾斜によって変角機構部40に発生する傾斜荷重の作用状態を示す荷重分布図である。図14(A)に示すように、鋼製大引1の左側が低くなるような傾斜の場合には、揺動部材41から軸部59に鉛直方向の下向き荷重Wが作用する。この荷重Wを分解することによって生じる荷重成分W1によって、角軸58は下方と右方の両方に押される状態となる。
【0043】
したがって、角軸58の加圧面61は角穴52の上下荷重受け面53で受け止められる。同時に、角軸58の加圧面62は水平荷重受け面54で受け止められる。このように変角機構部40に作用する荷重Wは、上下荷重受け面53と水平荷重受け面54の2面によって受け止められるので、広い受圧面積によって安定した荷重支持がなされる。また、荷重Wは上下荷重受け面53と水平荷重受け面54がなす隅角部67に集中する形態となるので、両受け面53,54に対して加圧面61,62がずれることがない。換言すると、断面円形の軸からの荷重を円形の穴の内面に作用させる場合には、軸外周面と穴内周面との接触は点接触になるので、受圧面積を大きく確保することができない。そして、軸が穴内で転動するので、上記のように両受け面53,54による支持のような位置ずれの防止ができないことになる。
【0044】
図14(B)に示した場合は、鋼製大引1の傾斜方向が(A)とは逆方向となっているもので、そのために水平荷重受け面が符号54から55の方に逆転している。それ以外の荷重分布の状態は(A)と同様である。
【0045】
図15〜図21は、変角機構部40に結合部30が組み付けられた状態を示す外観形状の図であり、図15は平面図,図16は結合部30を除いて示した平面図,図17は正面図,図18は背面図,図19は右側面図,図20は左側面図,図21は底面図である。
【0046】
なお,上記実施例においては、角穴52および角軸58が略正方形の四角いものであるが、これを五角形や六角形にすることも可能である。
【0047】
上記実施例の作用効果を列記すると、つぎのとおりである。
【0048】
すなわち、上記静止部材45に設けられ軸部材50が貫通する貫通穴の一部に、鋼製大引1からの荷重を受ける平坦な受け面53,54,55が形成され、上記軸部材50に、受け面53,54,55によって受け止められる平坦な加圧面61,62,63が形成されていることにより、軸部材50から静止部材45に作用する鋼製大引1等の床構造部材の荷重が、平坦な加圧面61,62,63と受け面53,54,55との衝合によって受け止められる。したがって、加圧面61,62,63と受け面53,54,55における受圧面積を平面状態で大きく確保し、低い面圧のもとで上記変角機構部40における荷重支持を、偏荷重等が発生することなく良好なものとすることができる。とくに、鋼製大引1の傾斜によって変角機構部40に鉛直線に対して傾斜した方向の荷重が、軸部材50から静止部材45に作用しても、上記加圧面61,62,63と受け面53,54,55との面数や面の向きを選定することにより、傾斜方向の荷重を的確に受け止めて荷重支持を行なうことができる。したがって、床面に歩行者や車椅子等の荷重が作用しても、変角機構部40からきしみ音等が発生することがない。また、鋼製大引1に撓み変形が発生しないので、床鳴りが発生したりしない。
【0049】
上記軸部材50の軸線が、鋼製大引1の長手方向線に対して略直角に食い違っているので、軸部材50の軸線回りに鋼製大引1が傾斜揺動をすることができ、金属製床束2として鋼製大引1の傾斜に対して正確に順応することができる。
【0050】
上記静止部材45は、揺動部材41を挟んで保持する2つの支持片47,48を備えた断面略コ字型の部材で構成され、一方の上記支持片47に上記受け面53,54,55が形成されている。そのため、軸部材50から静止部材45に対する荷重を受ける受け面53,54,55が、一方の支持片47において十分な面積を確保した状態で形成できる。また、一方の支持片47に受け面53,54,55を形成するものであるから、構造の簡素化にとっても有効である。
【0051】
上記受け面53,54,55は、少なくとも上方からの荷重を受ける上下荷重受け面53と水平方向の荷重を受ける水平荷重受け面54,55を有していることにより、鋼製大引1の傾斜に順応させて揺動部材41が傾斜することにより、鉛直方向の荷重成分を斜め方向の荷重成分に変換した状態のもので、上下荷重受け面53と水平荷重受け面54,55の両方の受け面で荷重支持をすることができる。したがって、2つの受け面53および54,55により十分に大きな受圧面積のもとで荷重支持ができ、信頼性の高い床束機能が得られる。また、上下荷重受け面53と水平荷重受け面54,55とは直交した位置関係になっているので、斜め方向からの荷重を両受け面53と54または53と55で受け止めることにより、軸部材側の加圧面61,62,63がずれたりすることがなく、正確な荷重支持が行なわれる。
【0052】
上記受け面53,54,55は、上記貫通穴の一部に設けられた角穴52の内面であり、上記加圧面61,62,63は、上記角穴52に略隙間のない状態ではまり込む上記軸部材50の一部に設けられた角軸58の外面である。このため、角穴52と角穴52内に略隙間のない状態で挿入された角軸58との組み合わせによって、角軸58が角穴52内に拘束されたような形態になる。このような組み合わせ構造のもとで荷重支持がなされるため、受け面53,54,55と加圧面61,62,63との圧接が正確に位置ずれを起こすことなく成立する。また、角穴52と角軸58との組み合わせであるから、変角機構部40の構造簡素化にとって有効である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記のように本発明によれば、金属製床束に、荷重の平坦な受け面と加圧面とを有する変角機構部を設けて、位置ずれ等が発生しない荷重支持が可能となる。したがって、現今の高齢化社会に適応したバリアフリーの行届いた住宅構造が一層充実したものとして実現し、市場ニーズの高い金属製床束が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の金属製床束の設置状態を示す側面図である。
【図2】鋼製大引の横断面図である。
【図3】鋼製大引と金属製床束との結合状態を示す正面図である。
【図4】金属製床束の平面図である。
【図5】結合部の正面図である。
【図6】結合部の側面図である。
【図7】鋼製大引の施工方法を示す側面図である。
【図8】鋼製大引に金属製床束を結合する順序を示す正面図である。
【図9】変角機構部の側面図である。
【図10】図9の〔10〕−〔10〕断面図である。
【図11】揺動部材の斜視図である。
【図12】静止部材の斜視図である。
【図13】軸部材の斜視図である。
【図14】変角機構部における荷重の作用状態を示す荷重分布図である。
【図15】結合部の平面図である。
【図16】結合部を除いて示した変角機構部を示した平面図である。
【図17】変角機構部の正面図である。
【図18】変角機構部の背面図である。
【図19】変角機構部の右側面図である。
【図20】変角機構部の左側面図である。
【図21】変角機構部の底面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 鋼製大引
1a 根太
1b 床板
1c 床板
2 金属製床束,鋼製束
7 基礎
8 コンクリート釘
11 下面
12 開口部
13 上面
14 折込部
14a 一次折込部
14b 二次折込部
15 側面
20 束本体
21 ベースプレート
22 高さ調整部
23 ターンバックル
24 上部ボルト,結合部材
24a 頭部
25 下部ボルト
26 ばね座金
27 ナット
30 結合部
31 押え金物
31a 折曲部
32 ナット
33 受け金物
33a 底壁部
33b 側壁部
33c 起立部
34 ばね座金
40 変角機構部
41 揺動部材
42 円弧部
43 円形穴
44 溶接部
45 静止部材
46 溶接部
47 支持片
48 支持片
49 基部
50 軸部材
51 窪み
52 角穴
53 上下荷重受け面
54 水平荷重受け面
55 水平荷重受け面
57 頭部
58 角軸
59 軸部
60 雄ねじ
61 加圧面
62 加圧面
63 加圧面
64 円形穴
65 スプリングワッシャ
66 ナット
67 隅角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が基礎に固定されて略鉛直方向に起立する高さ調整部と、上記高さ調整部と大引とを結合する結合部材に設けられ大引の傾斜に順応する変角機構部とを備え、
上記変角機構部は、大引側に一体化された揺動部材と、高さ調整部側に一体化された静止部材と、上記揺動部材を静止部材に対して揺動可能な状態で結合する軸部材とを含んで構成され、
上記静止部材に設けられ軸部材が貫通する貫通穴の一部に、大引からの荷重を受ける平坦な受け面が形成され、上記軸部材に、受け面によって受け止められる平坦な加圧面が形成されていることを特徴とする金属製床束。
【請求項2】
上記軸部材の軸線は、大引の長手方向線に対して略直角に食い違っている請求項1記載の金属製床束。
【請求項3】
上記静止部材は、揺動部材を挟んで保持する2つの支持片を備えた断面略コ字型の部材で構成され、一方の上記支持片に上記受け面が形成されている請求項1または2記載の金属製床束。
【請求項4】
上記受け面は、少なくとも上方からの荷重を受ける上下荷重受け面と水平方向の荷重を受ける水平荷重受け面を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属製床束。
【請求項5】
上記受け面は、上記貫通穴の一部に設けられた角穴の内面であり、上記加圧面は、上記角穴に略隙間のない状態ではまり込む上記軸部材の一部に設けられた角軸の外面である請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属製床束。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−57416(P2006−57416A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243153(P2004−243153)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(594102452)株式会社マイヅル (5)
【Fターム(参考)】