説明

金属部材に突起を形成する方法及び突起形成装置、並びに突起を形成する方法で加工された金属部品

【課題】外部から熱エネルギーを付与することなく金属部材に機械的特性の優れた中実突起を形成する方法及び加工装置並びにそれによって製造された突起を有する金属部品を提供する。
【解決手段】被加工金属部材111の表面に先端部に開孔13bを有する加工治具13の先端部13aを押圧して、被加工金属部材111と加工治具13を相対的に反対方向へ回転して摩擦熱を発生し、この摩擦熱によって開孔13b内への塑性流動を生じさせる点に特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属部材表面にそれと同一材料の突起を摩擦攪拌プロセスにより形成する方法及び突起形成装置並びに突起を形成する方法で加工された金属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材の表面に中実の突起を形成することは、位置決め手段、支持手段、固定・固着手段、冷却手段として広く使用されており、携帯電話やモバイルパソコンなどの携帯型情報端末、家電製品、自動車部品、鉄道用車両等において不可欠の技術になっている。金属部材の表面に中実の突起を形成する方法としては、突起を予め準備しておいて金属部材に溶接、ろう付け、固相接合する方法、摩擦接合する方法、金型を用いてプレス加工する方法が知られ使用されている。溶接、ろう付けする方法は製造工数が増えコスト高になること及び軽量化という観点で使用される傾向にあるマグネシウム、マグネシウム合金及びアルミニウム、アルミニウム合金には適用できないという問題があり、摩擦接合する方法は寸法精度が悪いという問題があり、プレス加工する方法は金属部材が小型化、薄板化かつ複雑化すると適用できないという問題がある。
【0003】
金属部材の表面に中実の突起を形成する技術として、凹部を形成した第2物体(金型)上にアルミニウムの第1物体を置き、第1物体に摩擦熱発生攪拌手段を当接して両者間で相対移動を生じさせて摩擦熱を発生し、これによって第1物体を非溶融状態で塑性流動を生じさせ、第1物体に第2物体の凹部に相当する凸部を転写する摩擦攪拌成型方法(特許文献1)及び一対の上下金型の間に素材板を狭圧して加熱することにより、素材板の一部を金型の凹部内へ塑性流動させて凸部を形成するマグネシウム合金部品の製造方法(特許文献2)が提案されている。前者の摩擦攪拌成型方法は熱源を必要とせず摩擦熱を利用して生じる塑性流動を用いて攪拌手段とは反対側に配置した金型に形成した凹部を充填するものであり、上記した問題点を解消できる。しかしながら、この方法で形成した突起は機械的特性(強度と延性)が低く実用上の問題が残っている。その理由は、本発明者らの確認したところによれば、組織が微細化する領域は第1物体の摩擦熱発生攪拌手段によって摩擦攪拌されている領域であり、それから離れた領域に第2物体に形成した凹部が位置しており、突起部分の組織の微細化が図られていないことにある。更に、薄板(〜2mm厚)に直径3mm以上、高さ5mm以上の突起をこの方法により形成することは難しい。後者の製造方法は溶接、ろう付けが出来ないマグネシウム合金部材に凸部を形成することを可能にするもので上記した問題点を解消できる。しかしながら、この方法は上金型と下金型に夫々ヒ−ターを内蔵し、ヒーターによる加熱によって塑性流動を生じさせるものであり、熱エネルギーを必要とすることの他に突起の機械的特性が低いという問題を有している。その理由は、攪拌を用いないで生じる塑性流動では生じる歪みエネルギーが小さく組織の微細化が充分に図れないことにある。
【特許文献1】特開2002−256453号
【特許文献2】特開2004−337935号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は外部から熱エネルギーを付与することなく金属部材に機械的特性(強度と延性)の優れた中実の突起を形成する方法及び突起形成装置を提供することにある。
本発明の他の目的は溶接やろう付けが難しい金属部材に機械的特性の優れた中実の突起を形成する方法及び突起形成装置を提供することにある。
本発明の別の目的は機械的特性の優れた中実の突起を有する金属部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明金属部材に中実の突起を形成する方法の特徴とするところは、被加工金属部材表面に先端部に開孔を有する加工手段の先端部を押圧して被加工金属部材と加工手段を相対的に反対方向へ回転させる点にある。被加工金属部材に加工手段を押し当てて加工手段を回転させると摩擦熱が発生し、この摩擦熱によって加工手段に当接する被加工金属部材の部分の温度が上昇することにより低応力下で塑性流動が発現し、被加工金属部材の塑性流動が発現していない周囲の領域がストッパーとなり加工手段の先端部に形成された開孔内へ被加工金属部材が流れ込み突起が形成される。回転している時間に比例して塑性流動が発現している時間が長くなり、塑性流動によって加工手段の開孔内に被加工金属部材の流れ込む量が増え、突起が高くなる。塑性流動は被加工金属部材が固体の状態で発現するため被加工金属部材の組織は粗大化せず、他方、加工手段の摩擦攪拌によって突起及びその近傍の被加工金属部材の表面領域が他の領域に比較して微細化されているため、加工中の高温状態(被加工金属部材の融点を絶対温度で表した数値の1/2以上の温度をいう)では超塑性的流動が生じて、変形応力は小さく、塑性流動性は非常に大きい。一方、加工終了後室温に戻った時の突起の機械的強度を大きくすることができる。摩擦熱は被加工金属部材と加工手段を圧接した状態で両者を相対的に反対方向に回転させることによって発生するので、被加工金属部材を静止して加工手段を回転すること、加工手段を静止して被加工金属部材を回転すること、被加工金属部材と加工手段を反対方向または同じ方向に異なる速度で回転することがこれに相当する。
【0006】
本発明金属部材に中実の突起を形成する方法を適用する金属部材としては、これらに限定されるものではないがマグネシウム合金及びアルミニウム合金が好ましい。マグネシウム合金としては、アルミニウムAl、亜鉛Zn、ジルコニウムZr、マンガンMn、リチウムLi、鉄Fe、珪素Si、銅Cu、ニッケルNi、カルシウムCa,希土類元素を少なくとも1種類含むマグネシウム合金が挙げられる。また、アルミニウム合金としては、銅Cu、マンガンMn、珪素Si、マグネシウムMg、亜鉛Zn、ニッケルNi、クロムCr、チタンTiを少なくとも1種類含むアルミニウム合金が挙げられる。
【0007】
本発明突起形成装置の特徴とするところは、被加工金属部材を保持する手段と、先端部に開孔を有する加工手段と、加工手段を回転駆動する手段と、保持手段及び加工手段の少なくとも一方を両手段を結ぶ線上に沿って移動させる手段と、加工手段を被加工金属部材表面に押圧する手段とを具備する点にある。この構成により、外部から熱エネルギーを付与することなく被加工金属部材の表面に被加工金属部材と同一材料の突起を塑性流動により形成することが出来る。この加工装置は金属部材に突起を形成する単機能装置であっても、また順送プレス装置の複数の工程の中の一工程を担う装置部分であってもよい。
【0008】
本発明突起形成装置に使用する加工治具としては、耐熱性、耐摩耗性、濡れ性が低い(被加工材と接着しない)ことが要求され、具体的材料としてはステンレス(例えばSUS鋼)、工具鋼(例えばSK鋼)、超合金(Ni系、Fe系、Co系)、セラミックス(CBCN(立方晶ボロンナイトライド)、ZrO、SiC、Si、SiALON、Al及びこれらの複合材料)、金属とセラミックスの複合材(例えばサーメット)が使用できる。
【0009】
本発明突起を有する金属部品の特徴とするところは、金属部材と前記金属部材の表面にそれと同一材料で一体に形成された突起とを有し、突起及びその近傍の金属部材の表面領域が他の領域より微細化された組織である点にある。この突起を有する金属部品は、携帯型情報端末、家電製品、自動車部品、鉄道用車両等に使用される突起部分を有する部品として使用するに適している。
【発明の効果】
【0010】
本発明金属部材に突起を形成する方法によれば、摩擦熱を利用して金属部材の塑性流動を発現して加工手段の開孔に流れ込み、金属部材と同一材料でかつ表面領域が微細組織の突起を形成出来、機械的特性の優れた中実突起を得ることが出来る。また、本発明加工装置は、本発明金属部材に突起を形成する方法を実現する手段を提供するもので、外部から熱エネルギーを付与することなく被加工金属部材の表面に被加工金属部材と同一材料の突起を塑性流動により形成することが可能になる。更に、本発明突起を有する金属部品は、突起及びその近傍の金属部材の表面領域が他の領域より微細化された組織になっているため、機械的特性の優れた突起を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明金属部材に中実の突起を形成する方法の最良の実施形態は、マグネシウム合金を
被加工金属部材とし、その表面にステンレス製の加工治具による摩擦攪拌を利用して突起を形成する場合である。マグネシウム及びマグネシウム系合金は軽量金属材で携帯型情報端末、家電製品、自動車部品、鉄道用車両等の金属部品として広く使用される傾向にある反面、溶接、ろう付けする方法が適用できない問題点があり、普及には解決する課題が残されている。本発明はこの問題を解決することが出来る。
【実施例1】
【0012】
図1及び図2は本発明金属部材に突起を形成する方法の実施例を示す工程図で、図1において、111は突起を形成する被加工金属部材、12は被加工金属部材111を載置固定する加工台、13は先端部13aに開孔13bを有する外形断面が円形の加工治具、14は加工治具13を回転可能に支承する保持治具である。加工治具13は回転駆動源で回転され、かつ先端部13a方向に所定圧力で押圧する手段を有している。被加工金属部材111に突起を形成する場合には、被加工金属部材111を加工台12上の所定位置に載置して機械的、静電的または真空吸着により固定する(図2の工程A)と共に、形成する突起の太さに合致した開孔13bを有する加工治具13を保持具14に装着する(図2の工程B)。次には加工治具13を回転しながら先端部13aを被加工金属部材111の表面に所定の圧力で押圧する(図2の工程C)。加工治具13の先端部13aを回転しながら被加工金属部材111の表面に押圧すると、加工治具13の先端部13aに当接している被加工金属部材111の表面領域の組織が摩擦熱による温度上昇により被加工金属部材が軟化し、押圧下での加工治具の回転により容易に攪拌され、強ひずみ加工状態になり、動的再結晶等により微細化する。このように微細化された組織は高温で塑性変形が容易となる超塑性的現象を発現する。超塑性的現象の発現により、塑性流動が生じ、更に、微細化していない領域でも高温状態下で、軟化して塑性流動する(図2の工程D)。塑性流動は後述するように、加工治具13の開孔13bに向かって流れ(図2の工程E)、図1の(b)に示すように被加工金属部材111の表面より高い位置まで充填し、突起112を形成する(図2F)。しかる後、加工治具13を被加工金属部材111の表面から離す(図2の工程G)。これによって、図1(c)に示す金属部材111表面に中実の突起112を有する金属部品11が得られる。
【0013】
塑性流動によって突起が形成される理由を図3を用いて説明する。図3は図1(b)を拡大して示したもので、加工治具13の先端部13aに当接している被加工金属部材111の表面領域111aが超塑性的現象を発現して塑性流動を黒矢印方向に生じている状態を示している。一方、攪拌が生じない下部領域は摩擦熱による温度上昇により軟化しており、加工治具13による押圧力により塑性流動を白矢印方向に生じる(通常の熱間成形に近い)。超塑性的現象を発現している被加工金属部材111の表面領域111aは、その側方が超塑性的現象を発現していない周囲領域111bによって包囲されてY12方向に押圧され、上方は加工治具13の先端部13a及び保持治具14によって矢印Y13及びY14方向に押圧されており、黒矢印Y111a及び白矢印Y112a方向に押され、黒矢印Y111ab及び白矢印Y112bで示す加工治具13の開孔13b方向が唯一の流動方向になる。加工治具13による摩擦攪拌が継続されている時間に比例して開孔13bへの流動は続き、突起112の高さが増加する。
【0014】
金属部材表面に塑性流動によって突起を形成する場合、突起の裏面側にヒケと称する窪みが形成され、突起が高くなるほどヒケが大きくなる。突起を形成する時に、加工治具13を金属部材表面と平行な面で円運動、直線運動させることによりヒケの発生を防止することが出来る。金属部材の突起を形成する面は最終製品では外部から見えない面になり、突起を形成する面とは反対側の面が外観面となる場合が殆どである。従って、ヒケが形成されることは、外観面が設計通りの平面にならないこと、及び美観を損ねること、などの不都合がある。
【0015】
本発明金属部材に突起を形成する方法において重要な事項は、加工条件の設定である。マグネシウム、マグネシウム系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金を被加工金属部材とし室温で加工する場合、加工治具の回転数は200〜20000rpm、好ましくは500〜5000rpm、押し込み圧力は50kg/cm以上が好ましい。
【0016】
図4を用いて本発明方法によって金属部材に形成した突起の機械的特性が優れている点を説明する。被加工金属部材111の加工治具13によって摩擦攪拌された領域は微細化(動的再結晶等の発現)される。微細化された領域は高温で塑性変形が容易となり、超塑性的現象が発現して塑性流動が生じ、加工治具13の開孔13b内に流れ込み突起112を形成する。図4(b)の突起112及びその近傍のハッチングで示した領域は摩擦攪拌によって微細化された組織を有する領域となっている。組織が微細化されると一般に機械的特性が向上する。金属部材に突起を形成する場合、金属部材と突起の連結個所に応力集中が起こり、この個所で機械的破損が生じることが多い。本発明の方法で突起を形成すると、微細化された組織が突起から突起と金属部材の連結個所を超えて金属部材にわたって存在しているため、機械的強度の向上が図れる。
【0017】
図5は本発明の突起を形成する方法で形成した突起の付け根部分(図4の被加工金属部材111と突起112の連結部分)の組織状態を示す顕微鏡写真である。写真から、図4(b)のハッチング出示した領域に対応する個所の組織が他に比較して微細化されていることが判る。
【0018】
図6に本発明の突起を形成する方法で形成した突起の機械的性質の一つである衝撃値を計測した結果を示す。試験機はテスター産業株式会社のアイゾット型衝撃試験装置(WR=3kg・m)を用い、室温(20℃)にて同一条件で突起を形成した試料を各3個づつ準備して計測した。図の縦軸は衝撃値、横軸はマグネシウム合金の種類を示す。図中の点線及び一点鎖線はAZ31及びZK60Aの各素材の衝撃値を示す。試験片は板厚2mmのAZ31板材(AZ31t2)及び板厚3mmのAZ31板材(AZ31t3)並びに板厚3.1mmのZK60A板材に本発明方法により直径3mm、高さ約4mmの突起を形成している。図6から解るように、本発明方法によって形成した突起の衝撃値はいずれも素材より大きい値を示している。これは、突起から突起と金属部材の連結個所を超えて金属部材にわたる部分表面が微細組織になっていること等に起因している。
【実施例2】
【0019】
図7は本発明金属部材に突起を形成する方法を実行するために使用する突起形成装置の一例を示す概略正面図及び側面図である。図において、51は装置を設置する基台、52は基台51に固定されたフレーム、53はフレーム52に水平面でXY方向に移動可能に支持されたワーク保持ヘッド、531はワーク保持ヘッド53の表面付近に埋設された温度・圧力センサー、54はワーク保持ヘッド53を上下方向に移動する駆動軸で図示せぬ駆動モータで駆動される。55はワーク保持ヘッド53に支持されたワークホルダー、56は図1に示す加工治具13と保持具14からなる回転ツール、57は回転ツール56を保持するツールホルダー、58はツールホルダー57を支持すると共にツールホルダー57を上下方向に移動するツールホルダー駆動モータ、581はツールホルダー駆動モータに支持された定速度・低荷重制御装置、59はフレーム52に支持され、ツールホルダー駆動モータ58を支持し、回転ツール56を回転駆動するツール回転モータである。回転ツール56は図1の加工治具13のみであってもよい。
【0020】
かかる構成の突起形成装置を用いて金属部材に突起を形成する場合には、ワークホルダー55上に金属部材を載置固定し、ワーク保持ヘッド53をXY方向に移動して金属部材の突起を形成する位置を回転ツール56に対向させる。次にツール回転モータ59によって回転ツール56を回転しながらツールホルダー駆動モータ58によってツールホルダー57を下方に移動して、回転ツール56を金属部材表面に所定圧力で接触させる。これによって摩擦熱により金属部材の表面に塑性流動を生じさせて突起を形成する。突起が形成されるとツールホルダー駆動モータ58によってツールホルダー57を上方に移動させて回転ツール56を金属部材及び突起から離間し、ツール回転モータ59を停止して回転ツール56を停止する。
【0021】
回転ツール56を所定圧力で金属部材表面に接触させるための制御方法として圧力制御と位置制御が利用できる。圧力制御は一定荷重負荷により安定したボス高さ制御が可能になる利点があるが、システム構成が複雑になる欠点がある。具体的には、ひずみゲージ及びロードセルをステージ及び回転軸に装着することによって実現する。また、熱影響によりボス成形時の負荷荷重の変化が考えられ、この対策が必要である。位置制御はステージ及び回転軸をサーボモーター等で制御することで実現でき、制御が比較的容易である利点を持っている。しかし、提供される被加工材の板厚が均一でないと、ボス寸法精度(高さ)が低下する欠点がある。その解決策としては、レーザー変位計により常に板厚管理を行って、位置をボス成形ごとに調整する方法がある。
【実施例3】
【0022】
図8は加工治具の変形例を示す概略断面図である。この実施例は図1に示す加工治具13を、開孔13bに相当する孔131aを有する円筒部材131と、円筒部材131の孔131aに挿入される押圧部材132と、円筒部材131の孔131aに案内されて押圧部材132を円筒部材131の先端部13a方向の押圧するばね133から構成されている。加工治具13をこの構成にすることにより、(1)円筒部材131の孔131aと押圧部材132との間に僅かな間隙が形成されているため、突起形成時に空気の逃げ道が形成される、(2)突起形成時に突起先端部が押圧されるため先端部が平坦な形状の突起が形成できる、という効果がある。
【実施例4】
【0023】
図9は一度に2個の突起を形成する場合に使用する加工治具13を示す概略断面図及びそれを使用して2個の突起112を形成した金属部品11の概略断面図を示す。図1に示した保持治具14に2個の加工治具を併設した構成になっている。この加工治具13は近接する突起112を形成する場合に適した加工治具で、加工時間を1/2に短縮できる利点がある。これは2個の突起112を形成する場合を例に採って説明したが、2個に限定されるものではなく隣接する突起の数に応じて加工治具13の数を増やせばよい。好ましく実施例としては、突起間の距離を任意に変えることが出来るように開孔間の距離を調整する手段を設けるとよい。
【実施例5】
【0024】
図10は本発明金属部材に突起を形成する方法及び加工装置に使用する加工治具13の代表的な構造を示す正面図及び底面図である。(a)は1個の円柱状突起を形成する場合に使用する加工治具13で、開孔13bが1個形成されている。この加工治具13の上方部を破線で示す部分を切削して細くしてもよい。この変形は以下の加工治具においても適用できる。(b)は1個の円柱状突起の変形例を形成する場合に使用する加工治具13で、径大の円柱の上に径小の円柱の組合せた形状の開孔13bが1個形成されている。(c)は1個の円柱状突起とその周囲を包囲するリング状突起を形成する場合に使用する加工治具13で、リング状の開孔13bが形成されている。(d)は円錐状突起を形成する場合に使用する加工次具13で、円錐形状の開孔13bが形成されている。(e)は1個の半球状突起を形成する場合に使用する加工治具13で、半球状の開孔13bが形成されている。(f)は円錐台状突起を形成する場合に使用する加工治具13である。これら加工治具13は変形及び組合せが可能であり、本発明はこれら加工治具に限定されるものではない。
【0025】
本発明金属部材に突起を形成する方法及び突起形成装置並びにそれによって製造された突起を有する金属部品は、実施例で説明された方法及び構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明金属部材に突起を形成する方法を説明する概略断面図である。
【図2】本発明金属部材に突起を形成する方法の工程を説明するブロック図である。
【図3】本発明金属部材に突起を形成する方法の作用を説明する概略拡大図である。
【図4】本発明方法によって金属部材に形成した突起の機械的特性が高い点を説明する概略断面度である。
【図5】本発明方法によって金属部材に形成した突起の付け根部分の組織状態を示す顕微鏡写真である。
【図6】本発明方法によって金属部材に形成した突起の機械的性質の一つである衝撃値を測定した結果を示す図である。
【図7】本発明金属部材に突起を形成する方法を実行するために使用する突起形成装置の一例を示す概略正面図及び側面図である。
【図8】本発明金属部材に突起を形成する方法に使用する加工治具の変形例を示す概略断面図である。
【図9】2個の突起を形成する場合に使用する加工治具の概略断面図及びそれを使用して2個の突起を形成した金属部品の概略断面図である。
【図10】本発明金属部材に突起を形成する方法及び突起形成装置に使用する加工治具の代表的な構造を示す概略正面図及び底面図である。
【符号の説明】
【0027】
11…金属部品、111…被加工金属部材、112…突起、12…加工台、13…加工治具、13a…先端部、13b…開孔、14…保持治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工金属部材表面に、先端部に開孔を有する加工手段の先端部を押圧して前記被加工金属部材と前記加工手段を相対的に反対方向に回転させることを特徴とする金属部材に中実の突起を形成する方法。
【請求項2】
前記加工手段の先端部を前記被加工金属部材に押圧した状態で、前記被加工金属部材の表面と平行な面で円運動または直線運動させることを特徴とする請求項1記載の金属部材に中実の突起を形成する方法。
【請求項3】
前記被加工金属部材表面に加えられる押圧力及び前記加工金属部材と前記加工手段との相対回転数はそれによって前記加工金属部材の前記加工手段に当接する領域に塑性流動が生じる値であることを特徴とする請求項1記載の金属部材に中実の突起を形成する方法。
【請求項4】
被加工金属部材を保持する手段と、先端部に開孔を有する加工手段と、前記加工手段を回転駆動する手段と、前記保持手段及び前記加工手段の少なくとも一方を両手段を結ぶ線上に沿って移動させる手段と、前記加工手段を被加工金属部材表面に押圧する手段とを具備することを特徴とする突起形成装置。
【請求項5】
金属部材と前記金属部材の表面にそれと同一材料で一体に形成された突起とを有し、前記突起及びその近傍の前記金属部材の表面領域が他の領域より微細化された組織であることを特徴とする中実の突起を有する金属部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−23040(P2010−23040A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183276(P2008−183276)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、関東経済産業局、戦略的基盤技術高度化支援事業の委託業務、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390005485)山野井精機株式会社 (6)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【Fターム(参考)】