説明

金属酸化物でコーティングされたリチウム系電池用正極材料

種々の金属酸化物コーティングを使用して正極活物質が形成される。リチウムに富む金属酸化物活物質上のコーティングによって優れた結果が得られた。より少ない量のコーティング材料を使用した金属酸化物コーティングによって、驚くべき改善された結果が得られる。高い放電率出でさえも、高い比容量の結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月27日に出願されたVenkatachalamらの「Cathode Compositions for Lithium Ion Batteries」と題される米国仮特許出願第61/237,344号明細書、および2009年10月20日に出願されたVenkatachalamらの「Metal Oxide Coated Positive Electrode Materials for Lithium Ion Batteries」と題される米国仮特許出願第61/253,286号明細書の優先権を主張し、両方の文献が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、一般に、リチウムイオン電池の正極用活物質に関して、この活物質は、金属/半金属酸化物を含むコーティングを含む。本発明は、さらに、金属/半金属酸化物でコーティングされた活物質の形成方法、およびその活物質を含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池は、比較的高いエネルギー密度を有するために、消費者用エレクトロニクスにおいて広く使用されている。蓄電池は、二次電池とも呼ばれ、リチウムイオン二次電池は、電池が充電されるときにリチウムを含む負極材料を一般に有する。現在市販される一部の電池では、負極材料は黒鉛であってよく、正極材料はコバルト酸リチウム(LiCoO)を含むことができる。実際には、正極活物質の理論容量の一部しか一般に使用できない。少なくとも2種類の他のリチウム系正極活物質も、現在商業的に使用されている。これら2種類の材料は、スピネル構造を有するLiMn、およびかんらん石構造を有するLiFePOである。これらの別の材料は、エネルギー密度に関して顕著な改善が得られていない。
【0004】
リチウムイオン電池は、それらの用途に基づいて一般に2種類に分類される。第1の種類は、高出力電池を含み、そのリチウムイオン電池セルは、電動工具およびハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle)(HEV)などの用途のために、大電流(アンペア数)を送出するように設計される。しかし、大電流を得るための設計では、一般に電池から送出できる全エネルギーが減少するので、設計によってこれらの電池セルのエネルギーは少なくなる。第2の設計の種類は高エネルギー電池を含んでおり、そのリチウムイオン電池セルは、より高い総容量が送出される、携帯電話、ラップトップコンピュータ、電気自動車(Electric Vehicle)(EV)、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug in Hybrid Electric Vehicle)(PHEV)などの用途のために、低から中の電流(アンペア数)を送達するように設計される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、式Li1+x1−x2−z(式中、Mは、非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせであり、0.01≦x≦0.3、0≦z≦0.2である)で近似的に表されるリチウム金属酸化物を含み、約0.1〜約0.75重量パーセントの金属/半金属酸化物でコーティングされたリチウムイオン電池正極材料に関する。
【0006】
別の一態様においては、本発明は、金属/半金属酸化物コーティング組成物でコーティングされたリチウム金属酸化物を含むリチウムイオン電池正極材料であって、リチウム金属酸化物は、式Li1+bNiαMnβCoγδ2−z(式中、bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは約0〜約0.15の範囲であり、zは0〜約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、Aは、Mg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表すことができる、リチウムイオン電池正極材料に関する。コーティング組成物は、一般に、正極材料の2重量パーセント未満を構成する。また、正極材料は、室温において4.6Vから2.0Vまで放電させた場合にC/3の放電率で少なくとも約260mAh/gの比放電容量を有することができる。
【0007】
さらなる一態様においては、本発明は、正極と、リチウム含有組成物を含む負極と、正極および負極の間のセパレーターと、リチウムイオンを含む電解質とを含むリチウムイオン電池に関する。正極は、一般に、活物質、別個の導電性粉末、およびポリマーバインダーを含む。また、正極活物質は、金属/半金属酸化物コーティング組成物がコーティングされたリチウム金属酸化物を含む。このリチウム金属酸化物は、式Li1+bNiαMnβCoγδ2−z(式中、bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.3〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは約0〜約0.15の範囲であり、zは0〜約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、Aは、Mg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表すことができる。コーティング組成物は、正極材料の2重量パーセント未満を構成することができる。ある実施形態においては、正極材料は、室温において4.6Vから2.0Vまで放電させた場合に50回目の充電/放電サイクルでC/3の放電率で少なくとも約230mAh/gの比放電容量を有する。
【0008】
他の態様においては、本発明は、リチウム系電池用のコーティングされた正極活物質組成物の形成方法であって、活物質をアルミニウム前駆体コーティングとともに約500℃〜約800℃の温度に加熱するステップを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】種々の処理温度および処理経路で得ることができる酸化アルミニウムの相を示す概略図である。
【図2】容器から分離された電池構造の概略図である。
【図3】無垢のリチウム金属酸化物(LMO)および種々のAlコーティング厚さを有するLMOのXRDである。
【図4】無垢のLMOおよび種々のAlコーティング厚さを有するリチウム金属酸化物のDSC分析である。
【図5A】コーティングしていないLMOから形成したコイン電池のC/10のレートでの第1サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図5B】0.5重量パーセント酸化アルミニウムでコーティングしたLMOから形成したコイン電池のC/10のレートでの第1サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図6A】コーティングしていないLMOから形成したコイン電池のC/3のレートでの第5サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図6B】0.5重量パーセント酸化アルミニウムでコーティングしたLMOから形成したコイン電池のC/3のレートでの第5サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図7】最初の2つのサイクルを0.1C、サイクル番号3および4を0.2C、サイクル番号5〜54を0.33Cでサイクルを行った、無垢のLMO、および種々のAlコーティング厚さのLMOの、比放電容量対サイクル番号の一連のプロットである。
【図8】最初の2つのサイクルを0.1C、サイクル番号3および4を0.2C、サイクル番号5および6を0.33C、サイクル番号7〜11を1.0C、サイクル番号12〜16を2.0C、サイクル番号17〜21を5.0Cでサイクルを行った、無垢のLMO、および種々のAlコーティング厚さのLMOの、比放電容量対サイクル番号の一連のプロットである。
【図9】コーティングしていないLMOから作製したコイン電池、あるいは400、500、600、800、または1000℃で焼成して0.5重量パーセント酸化アルミニウムをコーティングしたLMOから作製したコイン電池のサイクル番号の関数としての比放電容量のプロットのグラフであり、放電率は、最初の2つのサイクルが0.1C、サイクル番号3および4が0.2C、サイクル番号5および6が0.33C、サイクル番号7〜11が1.0C、サイクル番号12〜16が2.0C、サイクル番号17〜21が5.0C、サイクル22〜24が0.2Cである。
【図10】LMO上の酸化アルミニウムコーティングの焼成温度の関数としての第1サイクル充電および放電比容量のプロットである。
【図11】LMO上の酸化アルミニウムコーティングの焼成温度の関数としての第1サイクル不可逆容量損失のプロットである。
【図12】無垢のLMO、および種々のBiコーティング厚さを有するLMOのXRDである。
【図13A】無垢のLMOの0.1Cのレートにおける第1サイクル充電および放電曲線である。
【図13B】BiをコーティングしたLMOの0.1Cのレートにおける第1サイクル充電および放電曲線である。
【図13C】無垢のLMOの0.33Cのレートにおける第5サイクル充電/放電曲線である。
【図13D】BiをコーティングしたLMOの0.33Cのレートにおける第5サイクル充電/放電曲線である。
【図14】最初の2つのサイクルを0.1C、サイクル番号3および4を0.2C、サイクル番号5および6を0.33C、サイクル番号7〜11を1.0C、サイクル番号12〜16を2.0C、サイクル番号17〜21を5.0Cでサイクルを行った、無垢のLMO、および種々のBiコーティング厚さのLMOの、比放電容量対サイクル番号の一連のプロットである。
【図15A】コーティングしていないLMOから作製したコイン電池のC/10のレートでの第1サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図15B】0.5重量パーセントの酸化マグネシウムをコーティングしたLMOから作製したコイン電池のC/10のレートでの第1サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図16A】コーティングしていないLMOから作製したコイン電池のC/3のレートでの第5サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図16B】0.5重量パーセントの酸化マグネシウムをコーティングしたLMOから作製したコイン電池のC/3のレートでの第5サイクル充電および放電における比容量の関数としてのセル電圧のグラフである。
【図17】最初の2つのサイクルを0.1C、サイクル番号3および4を0.2C、サイクル番号5および6を0.33C、サイクル番号7〜11を1.0C、サイクル番号12〜16を2.0C、サイクル番号17〜21を5.0C、サイクル番号22〜24を0.2Cでサイクルを行った無垢のLMOの比容量対サイクル番号の一連のプロットである。
【図18】最初の2つのサイクルを0.1C、サイクル番号3および4を0.2C、サイクル番号5および6を0.33C、サイクル番号7〜11を1.0C、サイクル番号12〜16を2.0C、サイクル番号17〜21を5.0C、サイクル番号22〜24を0.2Cでサイクルを行った、0.5重量%のMgOをコーティングしたLMOの比容量対サイクル番号の一連のプロットである。
【図19】コーティングしていないLMO、および0.5重量%のMgOをコーティングしたLMOの、微分容量(mAh/V)対電圧(V)の一連のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
リチウムに富む金属酸化物活物質上の比較的少量の金属酸化物コーティングによって、比放電容量およびサイクルに関してリチウム系電池性能の望ましい改善を得ることができることが分かった。ある実施形態においては、正極の活物質を約2重量パーセント以下の金属酸化物でコーティングすると望ましい場合がある。この結果コーティングされた材料は、コーティングされていない材料よりもはるかに大きい比放電容量を示すことができる。この材料は、妥当なレートでの電池のサイクルにおいて、比放電容量の低下速度の大きな減少を示すこともできる。驚くべきことに、少なくとも比較的少量のコーティング材料まで減少させた量のコーティング材料で、放電特性を改善することができる。中程度の量のコーティングでは、適切な薄さのコーティングでは比放電容量が増加するが、コーティングされていない材料が示すよりも低い比容量の結果が得られることがあるため、比放電容量のコーティング量に対する依存性は、より高い放電率でより顕著となりうる。コーティングは、商業生産に容易に拡張可能な技術を使用して効率的に合成することができる。さらに、コーティングされた活物質は、高いタップ密度で合成できるので、結果として得られる電池は、特定の電池体積においてより効率的な容量を示すことができる。
【0011】
本明細書に記載の電池は、非水性電解質溶液がリチウムイオンを含むリチウム系電池である。充電中の二次リチウムイオン電池では、カソード(正極)において酸化が起こり、リチウムイオンが引き出されて、電子が放出される。放電中は、カソードでは還元が起こり、リチウムイオンが挿入されて電子が消費される。一般に、電池は正極材料中のリチウムイオンで形成され、そのため、電池の初期充電で、かなりの割合のリチウムが正極材料から負極材料に移動し、それによって電池の放電の準備ができる。特に明記しない限り、本明細書において参照される性能値は室温におけるものである。
【0012】
本明細書において単語「元素」は、従来通りに周期表の番号を意味する場合に使用され、元素が組成物中にある場合、その元素は適切な酸化状態を有し、元素形態にあると言及される場合にのみ、その元素は元素形態Mとなる。したがって、金属元素は、一般に、その元素形態、またはその金属の元素形態の対応する合金においては、金属状態のみで存在する。言い換えると、金属酸化物および、金属合金以外の他の金属組成物は、一般には金属ではない。さらに、用語「無垢」は、コーティングされた状態に対して、活物質がコーティングされていない状態を意味するために本明細書で使用される。
【0013】
本明細書に記載されるリチウムイオン電池は、金属酸化物コーティングと関連して改善されたサイクル性能が達成され、同時に、高い比容量および高い総容量を示す。リチウムに富む金属酸化物の好適な合成技術としては、たとえば、共沈法またはゾルゲル合成が挙げられる。改善されたサイクル性能、高い比容量、および高い総容量を合わせもつことは、結果として得られるリチウムイオン電池が、特に、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車などの高エネルギー用途の改善された電源として機能できることを示唆している。
【0014】
ある実施形態においては、リチウムイオン電池は、基準となる均一な電気活性リチウム金属酸化物組成物よりもリチウムに富む正極活物質を使用することができる。組成物LiMO(式中、Mは、平均酸化状態が+3である1種類以上の金属である)に対して、リチウム過剰であるということができる。初期カソード材料中のリチウムの増加に対応して、充電中に負極に移動できるリチウムが増加し、それによって特定のカソード活物質重量における電池容量が増加する。ある実施形態においては、リチウムの増加によって、より高い電圧が得られ、そのため、初期充電より高い電圧で行われ、正極のリチウムの増加によって容量が増加する。リチウムに富む活物質は、電池の初回充電中に顕著な不可逆変化が進行しうることが観察されているが、これらのリチウムに富む組成物は、サイクルにおいて驚くべき高い比放電容量を依然として示すことができる。
【0015】
適切に形成されたリチウムに富むリチウム金属酸化物は複合結晶構造を有し、過剰のリチウムがもう1つの別の結晶相の形成を促進すると考えられる。たとえば、リチウムに富む材料のある実施形態においては、LiMnO材料は、層状LiMnO成分、またはマンガン陽イオンが適切な酸化状態を有する他の遷移金属陽イオンで置換された類似の複合組成物のいずれかと構造的に一体化することができる。ある実施形態においては、正極材料は、xLiM’O・(1−x)LiMO(式中、Mは、平均バランスが+3である1種類以上の金属陽イオンであり、少なくとも1つの陽イオンがMnイオンまたはNiイオンであり、M’は、平均バランスが+4である1種類以上の金属陽イオンである)として二成分表記で表すことができる。これらの組成物は、たとえば、参照により本明細書に援用される、「Lithium Metal Oxide Electrodes for Lithium Cells and Batteries」と題されるThackerayらに付与された米国特許第6,680,143号明細書にさらに記載されている。
【0016】
特に対象となる正極活物質は、式Li1+bNiαMnβCoγδ2−z(式中、bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは約0〜約0.15の範囲であり、zは0〜約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、AはMg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で表される。さらに、参照により本明細書に援用される、「Positive Electrode Material for High Specific Discharge Capacity Lithium Ion Batteries」と題されるLopezらの同時係属中の米国特許出願第12/332,735号明細書(’735号出願)に記載されるように、Li[Li0.2Ni0.175Co0.10Mn0.525]Oでは驚くべき高い容量が得られた。’735号出願の材料は、炭酸塩共沈法を使用して合成された。また、参照により本明細書に援用される、「Positive Electrode Material for Lithium Ion Batteries Having a High Specific Discharge Capacity and Processes for the Synthesis of these Materials」と題されるVenkatachalamらの米国特許出願第12/246,814号明細書(’814号出願)に記載の水酸化物共沈およびゾルゲル合成方法を使用してこの組成物で非常に高い比容量が得られた。これらの組成物は、層状構造を有し、一部の他の高容量カソード材料よりもニッケル量が少ないこれらの固有の組成のため、改善された安全特性を有するので、火災の危険性が低い。これらの組成物は、環境の観点からあまり望ましくない元素の使用が少量であり、商業規模製造において妥当な費用の出発物質から製造することができる。
【0017】
組成物中にニッケル、コバルト、およびマンガンの陽イオンを有し、高い比容量性能を示す、本明細書に記載の望ましいリチウムに富む金属酸化物材料のために、炭酸塩および水酸化物の共沈法が行われている。高比容量であることに加えて、本発明の材料は、高いタップ密度を示すことができ、そのため固定容積用途で材料の高い総容量が得られる。特に、共沈法によって形成される前段落の特定のリチウムに富む組成物は、コーティングされた形態で使用することで、以下の実施例における結果が得られる。
【0018】
インターカレーション系正極活物質を有する対応する電池が使用される場合、インターカレーションおよび格子からのリチウムイオンの放出によって、電気活性物質の結晶格子中に変化が生じる。それらの変化が実質的に可逆的である限りは、材料の容量のサイクルによる実質的な変化はない。しかし、種々の程度でサイクルで活物質の容量の低下が観察される。したがって、多数のサイクル後、電池の性能が低下して許容値を下回り、その電池は交換される。また、電池の第1サイクルでは、一般に、後のサイクルにおける1サイクル当たりの容量損失よりもはるかに大きい不可逆容量損失が存在する。不可逆容量損失は、新しい電池の充電容量と初回放電容量との差である。不可逆容量損失の結果に対応して、セルの容量、エネルギー、および出力が低下する。不可逆容量損失は、一般に、電池材料初期充電−放電サイクル中の変化に起因する場合があり、これは電池の後のサイクル中に実質的に維持される。これらの不可逆容量損失の一部は、正極活物質に起因する場合があり、本明細書に記載されるコーティング材料によって、電池の不可逆容量損失が減少する。
【0019】
コーティングされていないカソード材料は、初期サイクル中にたとえば>250mAh/gの非常に高い容量を有することができる。しかし、特に、より大きな電流または放電率における長期間のサイクルにわたって、大きな容量の低下が見られる。容量低下の可能性のある原因の1つは、高い充電カットオフ電圧であり、非リチウム金属イオン、特にMnが正極から溶解しうる原因となりうる。Mnの溶解は、不均化反応Mn3+:2Mn3+→Mn2++Mn4+を介して起こる場合があり、Mn2+は電解質およびアノードすなわち負極に移動し、そのため容量が低下すると考えられる。Mn+3の不均化反応は、より高温およびより高い充電/放電率においてより高い頻度で自発的に発生しうる。高容量カソード(すなわち正極)では、合成された状態の材料は、イオン溶解の傾向がないMn4+を主として有するが、サイクルが続くとMn3+が形成され、これは溶解する傾向があり、そのため容量が低下する。金属酸化物、たとえば、混合金属酸化物のナノコーティングを高容量カソード粒子の表面上に混入することによって、高容量カソード系リチウムイオンセル電池のサイクル寿命を改善することができる。金属酸化物コーティングは、同様にサイクルによる容量低下に寄与しうるリチウム金属酸化物活物質の他の不可逆変化も減少させることができる。
【0020】
適切なコーティング材料によって、材料の長期サイクル性能の改善、および第1サイクル不可逆容量損失の減少の両方が可能である。理論によって限定しようと望むものではないが、コーティングは、リチウムイオンの取り込みおよび放出の間の正極活物質の結晶格子を安定化することができ、そのため結晶格子の不可逆変化が大きく減少する。たとえば、金属フッ化物組成物も有効なコーティングとして使用することができる。カソード活物質、特にLiCoOおよびLiMnのコーティングとしての金属フッ化物組成物の一般的な使用は、参照により本明細書に援用される、「Cathode Active Material Coated with Fluorine Compound for Lithium Secondary Batteries and Method for Preparing the Same」と題されるSunらの国際公開第2006/109930A号パンフレットに記載されている。薄い金属フッ化物コーティングによって、特に改善された性能が得られることが発見されており、対象の多くの電池パラメーターの性能のピークは、10ナノメートル未満の比較的薄いコーティング厚さで得られる。改善された薄い金属フッ化物コーティングは、参照により本明細書に援用される、「Coated Positive Electrode Materials for Lithium Ion Batteries」と題されるLopezらの同時係属中の米国特許出願第12/616,226号明細書にさらに記載されている。
【0021】
金属酸化物コーティングによって、少量のコーティング材料でピーク性能が改善されることが分かった。適切に選択された金属酸化物コーティングによって、比較的高レートでさえも比容量を改善できる。一般に、正極中の活物質の比容量は、比較的少量で塗布されたコーティングによって顕著に増加する。一般に、正極中の材料の性能は、比容量に関しては、約1重量パーセント未満の金属酸化物コーティングが存在する場合により良好となる。コーティングは、サイクル性能の改善、およびサイクルによる低下の減少にも有用であることが分かった。
【0022】
一般に、本発明の金属酸化物コーティングは、最初に、活物質の粉末を含有する溶液から、水酸化物を固体としてまたはゾルゲルとして沈殿させることによって形成することができる。沈殿させる材料の量は、所望の量のコーティング材料が形成されるように選択することができる。同様に、金属炭酸塩を沈殿させて前駆体コーティングを形成することができる。この結果得られた材料を、乾燥させ、一般には約300℃を超える適切な温度で焼成して、金属水酸化物または金属炭酸塩の前駆体コーティングを金属酸化物に変換することができる。
【0023】
さらなる実施形態においては、金属酸化物コーティングの別の形成方法は、金属硝酸塩の分解を伴うことが分かった。適切な金属硝酸塩を高温で分解して、対応する金属酸化物を形成する。活性リチウム金属酸化物粉末を、適切な量の金属硝酸塩溶液と混合して、所望のコーティング材料を形成することができる。金属硝酸塩は一般に水溶液に対して溶解性であるので、次にこの金属硝酸塩溶液を乾燥させて、活性粒子上に乾燥前駆体コーティングを有する粉末を形成することができる。乾燥粉末は、次に加熱して金属硝酸塩を分解させることで、金属酸化物コーティングを形成することができる。
【0024】
充電/放電測定中、材料の比容量は放電率に依存することに留意すると有用である。個別の材料の最大比容量は、非常に低い放電率で測定される。実際の使用では、実際の比容量は、より速い速度で放電させるため、最大値よりも小さい。より現実的な比容量は、実際の使用中に遭遇するレートにより類似した妥当な放電率を使用して測定することができる。たとえば、低から中レートの用途では、妥当な試験レートでは、3時間を超えて電池を放電させることを伴う。従来の表記では、これはC/3または0.33Cと記載される。より速いまたはより遅い放電率を希望通りに使用することができ、それらのレートを同じ表記で記載することができる。
【0025】
本明細書に記載の材料は、少なくとも約1.65グラム/ミリリットル(g/ml)の値などの大きなタップ密度も示す。一般に、比容量が同等である場合、正極材料のタップ密度が大きいと、特に本明細書に記載される正極材料の大きな比容量を考慮すれば、電池の総容量が大きくなる。本発明の活物質の大きなタップ密度によって、比エネルギーおよび比出力がより大きな電池を得ることもできる。一般に、容量がより大きな電池は、個別の用途でより長い放電時間を得ることができる。したがって、これらの電池は、有意義に改善された性能を有する。
【0026】
蓄電池は、電話などの移動通信装置、MP3プレイヤーおよびテレビなどの携帯用娯楽装置、ポータブルコンピューター、幅広い使用が見いだされているこれらの装置の組み合わせ、ならびに自動車およびフォークリフトなどの運送手段などの一連の用途を有する。これらの電子装置中に使用される電池の大部分は、固定された容積を有する。したがって、これらの電池中に使用される正極材料が高いタップ密度を有することは、正極中に実質的により多く充電可能な材料が存在して電池の総容量がより高くなるので、非常に望ましい。比容量、タップ密度、およびサイクルに関して改善された正極活物質が組み込まれた本明細書に記載の電池は、特に中電流用途の場合に、消費者に改善された性能を提供することができる。
【0027】
本明細書に記載の電池は、自動車用途に好適である。特に、これらの電池は、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、および純粋に電気自動車の電池パック中に使用することができる。これらの自動車は、一般に、重量、体積、および容量のバランスが取れるように選択された電池パックを有する。より大きな電池パックは、電気運転の範囲を広げることができるが、より大きなパックはより大きな空間を占めるため、他の目的では使用できず、重量が増加するために、性能が低下しうる。したがって、本明細書に記載の電池は高容量であるため、所望の量の総出力が得られる電池パックを適度な体積で製造することができ、これらの電池パックは、それに対応して本明細書に記載の優れたサイクル性能を実現することができる。
【0028】
正極活物質
本発明の正極活物質は、リチウムインターカレーション金属酸化物組成物を含む。ある実施形態においては、リチウムイオン電池は、基準となる均一な電気活性リチウム金属酸化物組成物よりもリチウムに富む正極活物質を含むことができる。一般に、LiMOをこの基準組成物と見なすことができ、本発明のリチウムに富む組成物は、近似的な式Li1+x1−y(式中、Mは1種類以上の非リチウム金属を表し、yは、金属の平均バランスに基づいてxに関係している)で表すことができる。ある実施形態においては、リチウムに富む組成物は、一般に、層状複合結晶構造を形成すると考えられ、これらの実施形態ではxはyにほぼ等しい。初期カソード材料中の追加されたリチウムによって、充電中に負極に移動することができるリチウムがある程度追加され、それによって特定の重量のカソード活物質の電池容量を増加させることができる。ある実施形態においては、追加のリチウムによってより高い電圧が得られ、それによって初期充電がより高い電圧で行われることで、さらに容量が増加する。
【0029】
特に対象となる正極活物質は、式Li1+bNiαMnβCoγδ2−z(bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは0〜約0.15の範囲であり、zは0〜約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、AはMg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表された。ある実施形態においては、αは約0.1〜約0.3の範囲であり、βは約0.3〜約0.65の範囲であり、γは約0.05〜約0.4の範囲である。b+α+β+γ+δがほぼ1に等しい場合、上記式で表される正極材料は、二成分表記でxLiM’O・(1−x)LiMO(0<x<1、Mは、平均バランスが+3である1種類以上の金属陽イオンであり、少なくとも1つの陽イオンはMnイオンまたはNiイオンであり、M’は、平均バランスが+4である1種類以上の金属陽イオンである)で近似的に表すことができる。適切に形成されたリチウムに富むリチウム金属酸化物は、複合結晶構造を有することができ、過剰のリチウムは、もう1つの別の結晶相の形成を促進すると考えられる。たとえば、リチウムに富む材料のある実施形態においては、LiMnO材料は、層状LiMO成分(式中、Mは選択された非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせを表す)のいずれかと構造的に一体化することができる。これらの組成物は、参照により本明細書に援用される、「Lithium Metal Oxide Electrodes for Lithium Cells and Batteries」と題されるThackerayらに付与された米国特許第6,680,143号明細書に一般に記載されている。この項における以下の説明を簡単にするため、場合により使用されるフッ素ドーパントのさらなる議論は行わない。
【0030】
一部の特定の層状構造の構造は、参照により本明細書に援用される、Thackeryらの「Comments on the structural complexity of lithium−rich Li1+x1−x electrodes(M=Mn,Ni,Co) for lithium batteries」Electrochemistry Communications 8(2006),1531−1538にさらに記載されている。この論文に報告される研究では、式Li1+x[Mn0.5Ni0.51−xおよびLi1+x[Mn0.333Ni0.333Co0.3331−xで表される組成物がレビューされている。この論文には、層状材料構造の複雑性も記載されている。
【0031】
リチウムに富む金属酸化物に関して、参照により本明細書に援用される、「Positive Electrode Material for High Specific Discharge Capacity Lithium Ion Batteries」と題されるLopezらの同時係属中の米国特許出願第12/332,735号明細書(’735号出願)に記載されるように、Li[Li0.2Ni0.175Co0.10Mn0.525]Oでは驚くべき高い容量が得られた。’735号出願の材料は、炭酸塩共沈法を使用して合成された。また、参照により本明細書に援用される、「Positive Electrode Material for Lithium Ion Batteries Having a High Specific Discharge Capacity and Processes for the Synthesis of these Materials」と題されるVenkatachalamらの米国特許出願第12/246,814号明細書(’814号出願)に記載の水酸化物共沈およびゾルゲル合成方法を使用してこの組成物で非常に高い比容量が得られた。これらのマンガンに富む組成物は、層状構造を有し、一部の他の高容量カソード材料よりもニッケル量が少ないこれらの固有の組成のため、改善された安全特性を有するので、火災の危険性が低い。これらの組成物は、環境の観点からあまり望ましくない元素の使用が少量であり、商業規模製造において妥当な費用の出発物質から製造することができる。
【0032】
最近になって、正極活物質の性能特性は、組成物の化学量論の特定の設計のあたりで設計できることが分かった。特に対象となる正極活物質は、二成分表記でxLiMnO・(1−x)LiMO(式中、Mは、平均バランスが+3である2種類以上の金属元素であり、1つの金属元素はMnであり、別の金属元素はNiおよび/またはCoである)で近似的に表すことができる。一般に、0<x<1であるが、ある実施形態においては0.03≦x≦0.55、さらなる実施形態においては0.075≦x≦0.50、さらなる実施形態においては0.1≦x≦0.45、別の実施形態においては0.15≦x≦0.425である。上記パラメーターxの明示された範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを、当業者は理解されよう。たとえば、Mは、ニッケル、コバルト、およびマンガンの組み合わせであってよく、その場合、たとえば、初期のリチウムマンガン酸化物中の酸化状態がNi+2、Co+3、およびMn+4であってよい。これらの組成物の全体の式は、Li2(1+x)/(2+x)Mn2x/(2+x)(2−2x)/(2+x)と表すことができる。全体の式において、マンガンの総量は、二成分表記における両方の構成要素に寄与する。したがって、ある意味では、組成物はマンガンに富む。
【0033】
一般に、MはNiMnCoと表すことができる。y=0である実施形態では、これはNiMnCoと簡略化される。MがNi、Co、Mn、および場合によりAを含む場合、組成物は、別の二成分表記および一成分表記で以下のように表すこともできる。
xLiMnO・(1−x)LiNiMnCo (1)
Li1+bNiαMnβCoγδ (2)
ここで、u+v+w+y≒1であり、b+α+β+γ+δ≒1である。これら2つの式を一致させると,以下の関係が得られ:
b=x/(2+x)、
α=2u(1−x)/(2+x)、
β=2x/(2+x)+2v(1−x)/(2+x)、
γ=2w(1−x)/(2+x)、
δ=2y(1−x)/(2+x)、
同様に、
x=2b/(1−b)、
u=α/(1−3b)、
v=(β−2b)/(1−3b)、
w=γ/(1−3b)、
y=δ/(1−3b)
となる。
【0034】
ある実施形態においては、u≒vが望ましい場合があり、それによってLiNiMnCoは近似的にLiNiMnCoと表される。この組成では、y=0の場合、Ni、Co、およびMnの平均バランスが+3となり、u≒vの場合、これらの元素はおよそNi+2、Co+3およびMn+4のバランスを有すると考えることができる。リチウムが完全に引き出されると仮定すると、すべての元素のバランスが+4になる。NiおよびMnのバランスによって、電池中で材料のサイクルが行われるときに、Mnが+4のバランスを維持することができる。このバランスによって、Mn+3の形成が回避され、Mn+3の形成は、Mnの電解質中への溶解、対応する容量の低下に関連している。
【0035】
さらなる実施形態においては、本発明の組成物は、LiNiu+ΔMnu−ΔCo(式中、Δの絶対値は一般に約0.3以下であり(すなわち、−0.3≦Δ≦0.3)、ある実施形態においては約0.2以下であり、別の実施形態においては0.175以下であり、さらなる実施形態においては約0.15以下である)のように上記式の周囲で変動しうる。xの望ましい範囲は前述の通りである。2u+w+y≒1の場合、パラメーターの望ましい範囲は、ある実施形態においては、0≦w≦1、0≦u≦0.5、0≦y≦0.1(但しu+Δおよびwの両方が0であることはない)であり、さらなる実施形態においては、0.1≦w≦0.6、0.1≦u≦0.45、0≦y≦0.075であり、さらなる実施形態においては0.2≦w≦0.475、0.2≦u≦0.4、0≦y≦0.05である。上記の明示された範囲内の組成パラメーターのさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることは、当業者には理解されよう。本明細書において使用される場合、表記(値1≦変数≦値2)は、値1および値2が近似値であることを暗に仮定している。所望の電池性能特性を得るための組成の設計は、本出願と同日に出願された同時係属中のLopezらの「Layer−Layer Lithium Rich Complex Metal Oxides With High Specific Capacity and Excellent Cycling」と題される米国特許出願第12/869,976号明細書にさらに記載されており、この出願は本明細書に参照により援用される。
【0036】
正極作用組成物の合成
本明細書に記載される合成方法を使用して、高い比容量値および比較的高いタップ密度を有する層状−層状(layered−layered)のリチウムに富む正極活物質などの正極活物質組成物を形成することができる。本発明の合成方法は、式Li1+bNiαMnβCoγδ2−zで表され、前述の所望のパラメーター範囲を有する組成物の合成に適応されている。本発明の合成方法は、商業規模へのスケールアップにも適している。特に、共沈法を使用して、所望の結果が得られる所望のリチウムに富む正極材料を合成することができる。
【0037】
共沈法では、金属塩を精製水などの水性溶媒中に所望のモル比で溶解させる。好適な金属塩としては、たとえば、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。溶液の濃度は一般に1M〜3Mの間で選択される。金属塩の相対モル量は、生成材料の所望の式に基づいて選択することができる。同様に、場合により使用されるドーパント元素も、他の金属塩とともに適切なモル量で導入することができ、それによってドーパントが沈殿材料中に混入される。次に、NaCOおよび/または水酸化アンモニウムを加えることなどによって、溶液のpHを調整して、所望の量の金属元素を有する金属水酸化物または金属炭酸塩を沈殿させることができる。一般に、pHは約6.0〜約12.0の間の値に調整することができる。水酸化物または炭酸塩の沈殿を促進するために、溶液の加熱および撹拌を行うことができる。沈殿した金属水酸化物または炭酸塩は、次に、溶液から分離し、洗浄し、乾燥させて、さらなる処理を行う前の粉末を形成することができる。たとえば、乾燥はオーブン中約110℃において約4〜約12時間行うことができる。当業者であれば、上記の明示された範囲内のプロセスパラメーターのさらなる範囲が考慮され、本開示の範囲内となることが理解されよう。
【0038】
回収した金属水酸化物または炭酸塩の粉末は、次に熱処理を行うことで、水または二酸化炭素を除去して、水酸化物または炭酸塩組成物を対応する酸化物組成物に変換することができる。MgFなどのフッ化物を加えて、フッ化物ドーパントを導入することができる。一般に、熱処理はオーブン、加熱炉などの中で行うことができる。熱処理は、不活性雰囲気中、または酸素が存在する雰囲気中で行うことができる。ある実施形態においては、材料を少なくとも約350℃の温度、ある実施形態においては約400℃〜約800℃の温度に加熱することで、水酸化物または炭酸塩を酸化物に変換することができる。熱処理は一般に少なくとも約15分行うことができ、さらなる実施形態においては、約30分〜24時間以上行うことができ、さらなる実施形態においては約45分〜約15時間行うことができる。生成材料の結晶性を改善するために、さらなる熱処理を行うことができる。結晶性生成物を形成するためのこの焼成ステップは、一般に少なくとも約650℃の温度、ある実施形態においては約700℃〜約1200℃の温度、さらなる実施形態においては約700℃〜約1100℃の温度で行われる。粉末の構造特性を改善するための焼成ステップは、一般に少なくとも約15分、さらなる実施形態においては約20分〜約30時間以上、別の実施形態においては約1時間〜約36時間行うことができる。希望するなら、所望の材料を得るために適切な温度勾配で、加熱ステップを組み合わせることができる。当業者であれば、上記の明示された範囲内の温度および時間のさらなる範囲が考慮され、本開示の範囲内となることが理解されよう。
【0039】
リチウム元素は、プロセス中の1つ以上の選択されたステップにおいて材料中に混入することができる。たとえば、沈殿ステップを行う前または行うときに、水和リチウム塩を加えることによって、リチウム塩を溶液中に混入することができる。この方法では、他の金属と同じ方法で水酸化物または炭酸塩材料中にリチウム種が混入される。また、リチウムの性質のために、リチウム元素は、結果として得られる生成組成物の性質に悪影響を与えることなく、固相反応中の材料中に混入することができる。したがって、たとえば、LiOH・HO、LiOH、LiCO、またはそれらの組み合わせなどの一般に粉末としての適切な量のリチウム源を沈殿した金属炭酸塩または金属水酸化物と混合することができる。次に、粉末混合物を加熱ステップに進めて酸化物を形成し、次に結晶性最終生成材料を得る。
【0040】
水酸化物共沈法のさらなる詳細は、前述の参照の’814号出願に記載されている。炭酸塩共沈法のさらなる詳細は、前述の参照の’735号出願に記載されている。
【0041】
金属/半金属酸化物コーティング
不活性金属酸化物コーティングは、リチウム金属酸化物正極活物質、特にリチウムに富む活物質組成物に比較的少量で使用した場合に驚くべき改善された性質を得ることができる。リチウムイオン電池の性能は、リチウムのトポタクティック過程中に構造および組成が変化しないことに大きく基づくことがある。リチウムイオン電池の動作のより広い電圧ウィンドウは、より多くの副反応と関連していると考えられ、その一部は、材料の不可逆変化の原因となり得る。副反応を減少させるために使用される種々の技術の中で、ナノコーティングによる表面改質は、電極−電解質界面が改善されるために非常に有効であると考えられている。電極−電解質界面は、この繊細な界面の「特性または性質」によって、全体的な電荷移動が決定されるので、固体電気化学の最も問題のある領域の1つである。より容易にLiを拡散させ、陰イオン(大部分はPF6−)の共インターカレーションを防止し、カソード活性金属イオンの電解質中への不可逆性の溶解を防止するために、コーティングは、活物質組成物の粒子上に配置することができる。したがって、コーティングによって、電極−電解質界面が改善されることで、リチウムイオン電池の性質が向上すると考えられる。本明細書に記載される場合、不活性金属酸化物コーティングは、リチウムに富むリチウム金属酸化物活物質組成物の性能の安定化および改善に効果的となりうる。
【0042】
カソード活性金属イオンが減少すると、正極の化学構造に依存して、電池のサイクル寿命および保管寿命を縮めると考えられる。たとえば、コーティングされていないLiMnを主成分とするスピネルカソード材料は、保管中でもMnが溶解しやすく、その理由は、3+のMnが50%存在すると、それがマンガンの溶解を引き起こす主要イオンになると考えられるためである。LiCoOなどの層状カソード材料は、充電電圧に依存してCoイオンの溶解を示すことがある。LiNiOの場合の場合、異なるLiインターカレーションおよびデインターカレーションにおいて種々の六方晶から斜方晶への相転移が起こり、これが大きな容量の低下の原因となる。たとえば、不活性金属酸化物コーティングを使用した相転移の抑制によって、リチウムイオン電池の寿命が長くなる。
【0043】
リチウムに富むカソード材料を有する実施形態では、上記の要因が、セル性能を低下させることがある。充電および放電の電圧ウィンドウが、従来のLi電池カソードよりも広くなる場合がある。繰り返しサイクルによって高容量カソードは、サイクルによってMn3+イオンが蓄積し、これが溶解して容量低下の原因となりうる。本明細書において示されるように、不活性金属酸化物コーティングは、正極活物質、特にリチウムに富む活物質組成物の性能の改善に効果的となりうる。前述したように、金属フッ化物コーティングは、正極活物質の性能を改善することも分かっている。
【0044】
本明細書に示されるように、正極活物質上の金属酸化物コーティングを適切に調節することで、優れた比容量を得ることができ、これ対応して、適度に高い充電/放電率におけるサイクルで高容量を驚くほどに維持することができる。コーティング厚さは、カソード材料の構造的完全性および電気化学的性能の両方に寄与する重要なパラメーターであることが分かった。後述の実施例の項で示されるように、コーティングが厚いほど、活物質の安定性が低下し、その結果電池の安定性が低下しうる。ある実施形態においては、コーティングされたリチウム金属酸化物組成物は、約2.0重量パーセント以下、さらなる実施形態においては約0.025〜約1.75重量パーセント、さらなる実施形態においては約0.05〜約1.5重量パーセントの金属酸化物コーティング組成物を含む。当業者であれば、上記コーティング組成物の明示された範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることが理解されよう。一般に、コーティング材料の選択される量は、粒度および粒子の表面積などの活物質組成物の性質に依存しうる。
【0045】
本発明の金属酸化物コーティングは、一般に、セル内の電気化学反応に対して実質的に不活性であると考えられる組成物を含む。好適な金属酸化物としては、たとえば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ホウ素(B)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化モリブデン(MoOおよびMoO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リチウムアルミニウム(LiAlO)またはそれらの組み合わせが挙げられる。酸化アルミニウムは、低コストであり比較的環境に優しい性質のために望ましい場合がある。
【0046】
適切なコーティング材料によって、材料の長期サイクル性能の改善、および不可逆容量損失(IRCL)の減少の両方が可能となる。理論によって限定しようと望むものではないが、コーティングは、リチウムイオンの取り込みおよび放出の間の正極活物質の結晶格子を安定化させることができ、そのため結晶格子中の不可逆変化が顕著に減少する。酸化アルミニウムコーティングは、層状のリチウムに富む正極粒子上に3重量パーセントの量と記載されている。参照に撚り本明細書に援用される、Wuらの「High Capacity,Surface−Modified Layered Li[Li(1−x)/3Mn(2−x)/3Nix/3Cox/3]O Cathodes with Low Irreversible Capacity Loss」 Electrochemical and Solid State Letters,2006,9(5),A221−A224を参照されたい。本明細書に記載されるように、大幅に少ない量の金属酸化物コーティングを使用して改善された結果が得られている。さらに、少ない量のコーティング材料を使用して、実際の使用に妥当なレートで放電した場合に、改善されたサイクルが観察される。
【0047】
Alは、α、χ、η、δ、κ、θ、γ、ρの多くの相の形態で存在し、これらはAl(OH)またはAlO(OH)−[アルミニウムオキシ−水酸化物]の熱処理中に生じる。Alの各相は、独自の結晶構造および性質を有する。図1は、一般に承認されているAlの相を示しており、これらは異なる焼成処理中に得られる。したがって、こうして形成されるAlの相は、温度および時間などの異なる焼成条件を使用して微調整することができる。おそらく、酸化アルミニウムをコーティングとして使用すると、この図の結果が変化しうるが、この図は、利用可能な相およびそれらの温度依存性に基づいてある程度の案内となり得ると考えている。コーティングとして比較的少量で使用される場合、酸化アルミニウムコーティングの結晶構造を直接測定することは困難である。実施例に示される結果は、500℃〜800℃の間で得られる中程度の温度の相は、対応する正極活物質をリチウム系電池中に使用する場合に初期サイクルにおいてより望ましい電池性能が得られることを示唆している。異なる温度で形成される異なるAl相も、遷移金属の溶解またはその他の望ましくない副次的な相互作用が生じうるリチウム金属酸化物材料と電解質との相互作用または副反応に対して、改善された安定性を付与することができる。
【0048】
複数の熱処理およびコーティングプロセスの組み合わせを使用することもでき、最初にAlコーティングまたは他の金属酸化物コーティングをより低温で形成して、カソード材料を封入することができる。この初期のコーティング層は、活物質コアまたは金属酸化物コーティングの結晶性を改善するために使用できるより高温の熱処理中に、一部の成分(Li、遷移金属、またはドーパント)の蒸発からカソードを保護することができる。2段階焼成プロセスと同様に、2段階コーティングプロセスを2回の焼成とともに使用して、所望のAl相または他の金属酸化物を形成し、さらに高温処理中のカソード材料の蒸発から保護することができる。最初に、Al表面コーティングを合成し、低温で熱処理し、続いて、第2のコーティング(同じAlまたは異なる材料であってよい)をより高温で焼成することができる。Alの相をたとえば焼成温度によって制御することによって、最終カソード材料が改善されたサイクル性能、容量、熱安定性、およびレート性能を有する。
【0049】
一般に、カソード材料は、電気化学的、熱的、および構造的特性を向上させるために、一次金属酸化物または混合金属酸化物などの一連の金属酸化物でコーティングすることができる。不活性金属酸化物コーティングは、カソード活物質中の種々の金属イオンの構造的完全性を向上させることができ、その結果、比較的長いサイクル寿命のリチウム電池を得ることができる。リチウムに富むLMO上の金属酸化物または混合金属酸化物での表面コーティングによって、金属イオンが溶解し構造的完全性が低下してより大きな性能の低下が生じうる多くの不当な副反応を防止することで電極−電解質界面を向上させることができる。
【0050】
コーティングされた電気活性物質の第1サイクル不可逆容量損失は、同等の性能のコーティングされていない材料に対して、少なくとも約15%減少させることができ、さらなる実施形態においては約20%〜約35%で減少させることができる。また、金属酸化物がコーティングされた材料は、比較的高いタップ密度を有することができる。タップ速度、落下高さ、および容器の大きさが制御された条件下で、得られるタップ密度は、高い再現性を有することができる。本明細書に記載される正極活物質のタップ密度は、あらかじめ決定されたタッピングパラメーターを使用して市販のタップ装置上で目盛り付き測定シリンダーを使用することによって測定することができる。本明細書に記載の測定のためのタップ密度の具体的な測定方法は、実施例に明確に示している。ある実施形態においては、材料のタップ密度は、少なくとも約1.65g/mLとなることができ、さらなる実施形態においては約1.75〜約2.75g/mLとなることができる。タップ密度が高いと、一定体積での電池の総量量が高くなる。当業者であれば、タップ密度および不可逆容量損失の低下のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることは理解されよう。
【0051】
コーティングの形成方法
安定化金属酸化物コーティングは、商業的に好適な方法を使用して選択された粒子状正極活物質上に形成することができる。一般に、この方法は、最初に分解性金属化合物のコーティングを活物質の粉末と混合する。次に、乾燥粉末を加熱してコーティングを分解させて、金属酸化物コーティングを形成する。ある実施形態においては、金属酸化物コーティングは、複数の溶液相堆積方法の組み合わせを使用して合成し、熱処理と組み合わせて、酸化物を形成することができる。別のまたはさらなる実施形態においては、前駆体コーティングは、直接乾燥ステップによって塗布することができる。
【0052】
溶液相堆積ステップは、金属酸化物前駆体コーティングの堆積を含むことができる。特に、前駆体は、ゾルゲル(金属水酸化物の形態)、金属水酸化物、金属硝酸塩、または金属炭酸塩であってよい。一般に、水酸化物または炭酸塩の前駆体を沈殿させて、前駆体コーティングを形成することができる。ある実施形態においては、金属イオンの可溶性硝酸塩または酢酸塩を、リチウム金属酸化物の粒子と混合し、続いて、水酸化アンモニウムを使用して金属イオンを沈殿させることができる。沈殿を促進するために、次に反応混合物を、たとえば約45〜約90℃、ある実施形態においては、約50〜約80℃およびさらなる実施形態においては、約55〜約75℃の高温で撹拌することができる。沈殿反応混合物の加熱は、約1〜約20時間、さらなる実施形態においては約1.5〜約10時間、さらなる実施形態においては約2〜約8時間の加熱で行うことができる。続いて、混合物を濾過し、得られた固体の適切な洗浄を行うことができる。当業者であれば、加熱温度および時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることは理解されよう。
【0053】
金属硝酸塩前駆体コーティングは、金属硝酸塩化合物は一般に可溶性であるため、一般に沈殿法によっては塗布できない。硝酸塩系前駆体コーティングを形成するためには、活物質組成物の粉末を金属硝酸塩溶液と混合して、その溶液を蒸発乾固させる。溶液は、適切な温度に加熱することで、適度な速度で水を除去することができる。この方法は、酸化ビスマスコーティングの形成に関して後述しており、多くの金属硝酸塩は好適に分解するため、この方法を一般化することができるが、硝酸ビスマスなどの一部の金属硝酸塩は、溶融時または溶融前に分解する。あるいは、金属イオン可溶性硝酸塩または酢酸塩の溶液をリチウム金属酸化物の粒子と混合し、その混合物を直接撹拌しながら高温、たとえば約80〜約120℃、ある実施形態においては約85〜約115℃、さらなる実施形態においては約90〜約110℃に加熱する。加熱は、乾燥するまでの適切な時間で行うことができ、たとえばなくとも約1時間、さらなる実施形態においては約1.5時間〜約8時間、さらなる実施形態においては約2時間〜6時間行うことができる。当業者であれば、上記の明示された範囲内の温度および時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることは理解されよう。
【0054】
たとえば沈殿または蒸発によって形成された前駆体コーティング粉末は、焼成によって前駆体コーティングが分解して金属酸化物コーティングになる。水酸化物前駆体コーティングの場合、一般に、粉末を約300〜約800℃、ある実施形態においては、約350〜約700℃、さらなる実施形態においては約400〜約600℃で焼成して、金属酸化物でコーティングされたリチウム金属酸化物粉末を形成することができる。最初に金属水酸化物コーティングを有する粉末の焼成は、約1時間〜約20時間、さらなる実施形態においては約1.5〜約15時間、別の実施形態においては約2時間〜約10時間行うことができる。金属硝酸塩前駆体コーティングを有する乾燥粉末は、回収して、約250〜約550℃、ある実施形態においては約300〜約500℃、さらなる実施形態においては約350〜約450℃の温度で、たとえば乾燥空気中で焼成することができる。最初に金属硝酸塩前駆体コーティングを有する粉末の焼成は、少なくとも約30分、さらなる実施形態においては約1時間〜約12時間、さらなる実施形態においては約2〜約6時間の時間で行うことができる。当業者であれば、上記の明示された範囲内の温度および時間のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることは理解されよう。
【0055】
前述したように、酸化アルミニウムは、種々の結晶構造を有することができる。酸化物コーティングのために、種々の焼成温度で形成した水酸化アルミニウム前駆体コーティングから形成した酸化アルミニウムコーティングに関する結果を、以下の実施例に示している。酸化アルミニウムコーティングの形成の場合、水酸化アルミニウム前駆体コーティングを約500℃〜約800℃の温度に加熱することが一般に望ましい。上記の明示される範囲内の酸化アルミニウム焼成温度のさらなる範囲が考慮され、それらは本開示の範囲内となる。少ないコーティング量のため、酸化アルミニウム結晶構造の観察は困難であるが、種々の焼成温度での結果は、高温相(おそらくθ−アルミナまたはα−アルミナ)は、良好な電池性能を得ることに関しては望ましくなく、中程度の温度相(おそらくγ−アルミナ)では望ましい電池性能が得られないことを示唆している。
【0056】
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、一般に、正極、負極、負極と正極との間のセパレーター、およびリチウムイオンを含む電解質を含む。電極は、一般に、金属箔などの金属集電体と関連している。リチウムイオン電池は、負極活物質が、充電中にリチウムを取り込み、放電中にリチウムを放出する材料である電池を意味する。図2を参照すると、負極102、正極104、および負極102と正極104との間のセパレーター106を有する電池100が概略的に示されている。電池は、適切に配置されたセパレーターとともにスタックなどで複数の正極および複数の負極を含むことができる。電極に接触する電解質は、互いに反対の極性の電極の間でセパレーターを介してイオン伝導性を提供する。電池は、一般に、それぞれ負極102および正極104と関連する集電体108、110を含む。
【0057】
リチウムは、一次電池および二次電池の両方で使用されている。リチウム金属の興味深い特徴は軽量であり、最も陽性の金属であることであり、これらの特徴の側面は、リチウムイオン電池中にも好都合に取り込むことができる。金属、金属酸化物、および炭素材料のある種の形態は、インターカレーション、合金化、または類似の機構を介して、その構造中にリチウムイオンを取り込むことが知られている。望ましい混合金属酸化物は、二次リチウムイオン電池中の正極の電気活性材料として機能することがさらに本明細書に記載されている。リチウムイオン電池は、負極活物質が、充電中にリチウムを取り込み、放電中にリチウムを放出する材料である電池を意味する。リチウム金属自体がアノードとして使用される場合、その結果得られる電池は、一般に単にリチウム電池と呼ばれる。
【0058】
電圧は、カソードおよびアノードにおける半電池電位の間の差であるため、負極インターカレーション材料の性質は、結果として得られる電池の電圧に影響を与える。好適な負極リチウムインターカレーション組成物としては、たとえば、黒鉛、人造黒鉛、コークス、フラーレン類、五酸化ニオブ、スズ合金、ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、ならびにLiTiO(0.5<x≦1)またはLi1+xTi2−x(0≦x≦1/3)などの酸化チタンリチウムを挙げることができる。さらなる負極材料は、Kumarに付与され「Composite Compositions, Negative Electrodes with Composite Compositions and Corresponding Batteries」と題される米国特許出願公開第2010/0119942号明細書、およびKumarらに付与され「High Energy Lithium Ion Batteries with Particular Negative Electrode Compositions」と題される米国特許出願公開第2009/0305131号明細書に記載されており、両方が参照により本明細書に援用される。
【0059】
本発明の正極活物質組成物および負極活物質組成物は、一般に粉末組成物であり、対応する電極中にポリマーバインダーとともに維持される。バインダーは、電解質と接触するときに活性粒子にイオン伝導性を付与する。好適なポリマーバインダーとしては、たとえば、ポリフッ化ビニリジン(polyvinylidine fluoride)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート類、ゴム類、たとえばエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)ゴムまたはスチレンブタジエンゴム(SBR)、それらのコポリマー、あるいはそれらの混合物が挙げられる。バインダー中の粒子充填率は、約80重量パーセントを超えるなど大きくすることができる。電極を形成するために、ポリマー用溶媒などの好適な液体中で、粉末をポリマーと混合することができる。この結果得られたペーストをプレスして電極構造を得ることができる。ある実施形態においては、電池は、参照により本明細書に援用される、Buckleyらに付与され、「High Energy Lithium Ion Secondary Batteries」と題される米国特許出願公開第2009/0263707号明細書に記載の方法に基づいて作製することができる。
【0060】
本発明の正極組成物、および場合により負極組成物は、一般に、電気活性組成物とは異なる導電性粉末も含む。好適な補足的導電性粉末としては、たとえば、黒鉛、カーボンブラック、銀粉末などの金属粉末、ステンレス鋼繊維などの金属繊維など、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一般に、正極は約1重量パーセント〜約25重量パーセント、さらなる実施形態においては約2重量パーセント〜約15重量パーセントの異なる導電性粉末を含むことができる。当業者であれば、上記の明示される範囲内の導電性粉末の量のさらなる範囲が考慮され、本開示の範囲内となることが理解されよう。
【0061】
電極は、一般に、電極と外部回路との間の電子の流れを促進するための導電性集電体と関連づけられている。集電体は、金属箔または金属グリッドなどの金属を含むことができる。ある実施形態においては、集電体は、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、銅などから形成することができる。集電体の上に薄膜として電極材料をキャストすることができる。次に、たとえばオーブン中で、電極材料を集電体とともに乾燥させて、電極から溶媒を除去することができる。ある実施形態においては、集電体の箔またはその他の構造と接触する乾燥した電極材料に約2〜約10kg/cm(キログラム/平方センチメートル)の圧力を加えることができる。
【0062】
セパレーターは正極と負極との間に配置される。セパレーターは、電気的に絶縁されながら、2つの電極の間で少なくとも選択されたイオンを伝導させる。種々の材料をセパレーターとして使用することができる。市販のセパレーター材料は、一般に、イオン伝導性が得られる多孔質シートであるポリエチレンおよび/またはポリプロピレンなどのポリマーから形成される。市販のポリマーセパレーターとしては、たとえば、Hoechst Celanese,Charlotte,N.C.のCelgard(登録商標)系列のセパレーター材料が挙げられる。また、セラミック−ポリマー複合材料が、セパレーター用途で開発されている。これらの複合セパレーターは、より高温で安定となることができ、この複合材料は火災の危険性を大きく低下させることができる。セパレーター材料のためのポリマー−セラミック複合材料は、参照により本明細書に組み入れられる、Hennigeらに付与され、「Electric Separator, Method for Producing the Same and the Use Thereof」と題される米国特許出願公開第2005/0031942A号明細書にさらに記載されている。リチウムイオン電池セパレーター用のポリマー−セラミック複合材料は、Evonik Industries,Germanyより商標Separion(登録商標)で販売されている。
【0063】
本発明者らは、溶媒和したイオンを含む溶液を電解質と呼び、適切な液体中で溶解して溶媒和したイオンを形成するイオン性組成物を電解質塩と呼んでいる。リチウムイオン電池用電解質は、1種類以上の選択されたリチウム塩を含むことができる。適切なリチウム塩は、一般に不活性陰イオンを有する。好適なリチウム塩としては、たとえば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ビス(トリフルオロメチルスルホニルイミド)リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドリチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、塩化リチウム、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウムおよびそれらの組み合わせが挙げられる。通常、電解質は1M濃度のリチウム塩を含むが、より高いまたは低い濃度を使用することができる。
【0064】
対象となるリチウムイオン電池の場合、リチウム塩を溶解させるために、一般に非水性液体が使用される。溶媒は一般に不活性であり、電気活性材料を溶解させない。適切な溶媒としては、たとえば、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルエチルジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、トリグリム(トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル)、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、DME(グリムまたは1,2−ジメチルオキシエタンまたはエチレングリコールジメチルエーテル)、ニトロメタン、およびそれらの混合物が挙げられる。高電圧リチウムイオン電池用に特に有用な溶媒は、「Lithium Ion Battery With High Voltage Electrolytes and Additives」と題される2009年12月4日に出願された同時係属中のAmiruddinらの米国特許出願第12/630,992号明細書にさらに記載されており、これは参照により本明細書に援用される。
【0065】
本明細書に記載の電極は、種々の市販の電池設計に組み込むことができる。たとえば、カソード組成物は、角柱型電池、捲回円筒型電池、コイン型電池、またはその他の妥当な電池形状に使用することができる。電池は、1つのカソード構造、あるいは並列および/または直列の電気接続中に組み立てられたまたは複数のカソード構造を含むことができる。正極活物質は、一次電池、または1回の充電用途に使用することができるが、結果として得られる電池は、一般に、電池の複数のサイクルわたって二次電池に望ましいサイクル特性を有する。
【0066】
ある実施形態においては、正極および負極は、それらの間のセパレーターとともに積み重ねることができ、その結果得られた積層構造を円筒または角柱構造に配置して、電池構造を形成することができる。適切な導電性タブを溶接などによって集電体に取り付けることができ、その結果得られるジェリーロールまたはスタック構造は、金属缶またはポリマー包装材料の中に配置し、負極タブおよび正極タブを適切な外部接点に溶接することができる。電解質は缶に加えられ、その缶を封止することで、電池が完成する。現在使用されている一部の市販の蓄電池としては、たとえば、円筒形の18650電池(直径18mmおよび長さ65mm)および26700電池(直径26mmおよび長さ70mm)が挙げられるが、他の電池のサイズを使用することもできる。
【0067】
電池性能
金属酸化物がコーティングされた正極活物質粉末を使用した電池性能の結果は、驚くべきことに少量のコーティング材料で、中程度のレートにおける比容量に基づいて最良の電池性能が得られるという結論を裏付けている。ある実施形態においては、本明細書に記載のリチウムイオン電池は、4.6Vから2.0Vまで放電した場合C/3の放電率で、少なくとも約260mAh/g、ある実施形態においては少なくとも約270mAh/gの比放電容量を示すことができる。また、室温においてのC/3のレートで4.6Vから2.0Vまで放電した場合、50回目のサイクルにおける比放電容量は、少なくとも230mAh/g、さらなる実施形態においては少なくとも約245mAh/gとなることができる。当業者であれば、上記の特定の範囲内の比容量およびサイクル容量のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることは理解されよう。
【実施例】
【0068】
実施例1−リチウム金属酸化物活物質の合成
この実施例では、炭酸塩または水酸化物共沈法を使用した所望の正極活物質の形成を示す。化学量論量の金属前駆体を蒸留水中に溶解させて、所望のモル比で金属塩を有する水溶液を形成した。これとは別に、NaCOおよび/またはNHOHを含有する水溶液を調整した。サンプル作製のために、一方または両方の溶液を反応容器に徐々に加えて、金属炭酸塩または水酸化物の沈殿物を形成した。反応混合物を撹拌し、反応混合物の温度を室温から80℃の間に維持した。反応混合物のpHは6〜12の間であった。一般に、遷移金属水溶液は濃度が1M〜3Mであり、NaCO/NHOH水溶液はNaCO濃度が1M〜4Mおよび/またはNHOH濃度が0.2〜2Mであった。金属炭酸塩または水酸化物の沈殿物を濾過し、蒸留水で複数回洗浄し、110℃で約16時間乾燥させて、金属炭酸塩または水酸化物粉末を形成した。サンプル調製の反応条件の具体的な範囲は、表1にさらに概略を示しており、ここで溶液はNaCOおよびNHOHの両方を含まなくてよい。
【0069】
【表1】

【0070】
適切な量のLiCO粉末を乾燥した金属炭酸塩または水酸化物粉末と混合し、Jar Mill、二重遊星形ミキサー、または乾燥粉末回転ミキサーによって十分に混合して、均一粉末混合物を形成した。得られた均一粉末の一部、たとえば5グラムを1段階で焼成し手酸化物を軽視し、続いてさらなる混合ステップを行って、さらに粉末を均質化させた。さらに均質化された粉末を再び焼成して、高結晶性リチウム複合酸化物を形成した。焼成条件の具体的な範囲は、表2にさらに概略を示している(scfh=標準立方フィート/時)。
【0071】
【表2】

【0072】
こうして形成されたリチウム金属酸化物(LMO)正極複合材料粒子は、一般に、実質的に球形であり、大きさは比較的均一である。生成物の組成は、組成物の形成に使用した金属反応物の部分に対応して仮定し、全体的に目標の酸化状態となるように酸素で調節した。前述の項で議論したように、これらのLMO組成物の全体の式は、xLiMnO・(1−x)LiNiCoMn(1)またはLi1+bNiαCoγMnβ(2)で表すことができる。サンプル1〜8は、本明細書に概略が示された手順を使用して合成し、対応するu、v、w、およびα、γ、βの値は、2組の組成物を含めて表3に示している。第1の組の組成物の場合、u=vであるサンプル2〜8の種々の組成物を合成した。第2の組の組成物の場合、uがvに等しくないサンプル1を合成した。
【0073】
【表3】

【0074】
両方の組の組成物に、以下の実施例2、4、および6に記載されるように安定化組成物としての金属/半金属酸化物をコーティングした。コーティングした組成物およびコーティングしていない組成物を使用して、次に、実施例3に概略を示す手順に従ってコインセル電池を作製した。コインセル電池の試験を行い、結果を以下の実施例3、5、および7に記載している。
【0075】
実施例2−Alによるコーティング
この実施例では、表3のサンプル1の式で表される実施例1のリチウムに富む正極活物質上への酸化アルミニウムコーティングの形成を説明する。酸化アルミニウム表面コーティングは、水酸化アルミニウム沈殿反応を使用し、続いて焼成を行って形成した。一般に、コーティングの場合、最初に、選択された量の硝酸アルミニウムを適切な量の水中に溶解させて、硝酸アルミニウムの溶液を形成する。この硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、実施例1のリチウム金属酸化物(LMO)粒子を分散させて、十分分散した混合物を形成した。この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下すると、水酸化アルミニウムが沈殿して、LMO粒子をコーティングされる。水酸化アンモニウムの添加後、混合物を約60℃に2〜10時間の範囲の時間加熱した。続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性LMO材料上に有する材料を形成した。
【0076】
次に、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、4〜12時間焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされたLMO粉末を形成した。0.5重量パーセントの酸化アルミニウムを有するサンプルの一部を、選択された温度で適度な範囲にわたって焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされた材料を使用した後に得られる電池性能に対する温度の影響を調べた。サンプルの別の一部を、選択された量の酸化アルミニウムコーティングでコーティングし、500〜800℃の温度で焼成して、酸化アルミニウムコーティングの量の関数としての電池性能を評価した。酸化アルミニウムをコーティングした材料を、X線回折を使用して調べた。コーティングされていない材料とともに、酸化アルミニウムコーティング材料の量が異なる5サンプルのX線回折図を図3に示している。図3のX線回折図に示されるように、酸化アルミニウムコーティングが、コアのリチウム金属酸化物材料の結晶構造を大きく変化させることはなかった。
【0077】
示差走査熱量測定(DSC)を使用してカソード活物質の安定性を調べた。コーティングされていないリチウム金属酸化物粒子、および5つの異なる量のコーティング材料を有する粒子のDSC結果を図4に示している。温度の関数としての熱流量のピークは、材料の相転移または類似の変化を示している。図4から分かるように、より薄いAlコーティングを有する粒子は、コーティングされていない粉末と比較して高い熱安定性を示したが、2重量パーセントおよび5重量パーセントのより厚いコーティングを有する粒子は、コーティングされていない粉末と比較して熱安定性の低下を示した。したがって、薄い酸化物コーティングを有するLMO材料を正極中に使用した場合に、薄い酸化物コーティングを有する材料から形成した電池は、より高温で高い温度判定性を示すと推測される。
【0078】
タップ密度測定も表4中に示している。Quantachrome InstrumentsAUTOTAP(商標)装置を使用して、サンプルのタップ密度を測定した。典型的な測定方法の1つにおいては、4〜10グラムの量のサンプル粉末を秤量し、目盛りの付いたシリンダー(10mL)中に入れた。次にこのシリンダーを、260/分のタップ速度および3mmの落下高さでタップするAUTOTAP(商標)のホイールに取り付けた。2000回のタップの後、目盛り付きシリンダーの測定標線を使用して粉末の体積を求めた。サンプルの最初の重量を、タッピング後の測定体積で割ることによって、g/mLの単位でのサンプルのタップ密度が求められる。
【0079】
実施例3−選択された量のコーティングで酸化アルミニウムがコーティングされた材料の電池性能
この実施例では、コインセル電池中の酸化アルミニウムがコーティングされた材料の性能を説明し、酸化アルミニウムコーティング材料の量の関数としての電池性能を評価するために、種々の量のコーティング材料を使用して結果を求めている。
【0080】
材料の性能を試験するために、選択された量のコーティング材料で実施例2の酸化アルミニウムコーティングを有するまたは有さないリチウム金属酸化物(LMO)粉末を、アセチレンブラック(Timcal,Ltd,SwitzerlandのSuper P(商標))および黒鉛(Timcal,LtdのKS 6(商標))と十分に混合して、上記均一粉末混合物を形成した。これとは別に、ポリフッ化ビニリデンPVDF(株式会社クレハ(日本)のKF1300(商標))をN−メチル−ピロリドンNMP(Sigma−Aldrich)と混合し、終夜撹拌して、PVDF−NMP溶液を形成した。次に、上記均一粉末混合物をPVDF−NMP溶液に加え、約2時間混合して、均一スラリーを形成した。このスラリーをアルミニウム箔集電体上に塗布して、未乾燥の薄膜を形成した。
【0081】
未乾燥の薄膜を有するアルミニウム箔集電体を真空オーブン中110℃で約2時間乾燥させて、NMPを除去することによって、正極材料を形成した。シートミルのローラーの間で正極材料をプレスして、所望の厚さの正極を得た。混合物は、少なくとも約75重量パーセントの活性金属酸化物、少なくとも約3重量パーセントのアセチレンブラック、少なくとも約1重量パーセントの黒鉛、および少なくとも約2重量パーセントのポリマーバインダーを含んだ。
【0082】
コインセル電池製造のために、正極をアルゴンを充填したグローブボックスの内側に入れた。厚さ約125ミクロンのリチウム箔(FMC Lithium)を負極として使用した。電解質は高電圧において安定となるように選択し、適切な電解質は、参照により本明細書に援用される、「Lithium Ion Battery With High Voltage Electrolytes and Additives」題され同時係属中のAmiruddinらの米国特許出願第12/630,992号明細書に記載されている。電解質に浸した3層(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)微孔質セパレーター(Celgard,LLC,NC,USAの2320)を、正極と負極との間の配置した。さらに数滴の電解質を電極の間に加えた。電極を、圧着法を使用して、2032コイン電池ハードウェア(宝泉株式会社、日本)の内部に封止して、コイン電池を形成した。得られたコインセル電池は、Maccorサイクル試験器を使用して試験し、多数のサイクルにわたる充電−放電曲線およびサイクル安定性を求めた。
【0083】
第1の組の電池では、4.6Vから2.0Vの間で、サイクル1および2はC/10のレート、サイクル3および4はC/5、サイクル5〜55はC/3を使用してサイクルを行った。平均電圧、第1サイクル充電比容量、第1サイクル放電比容量および不可逆容量損失(IRCL)のまとめを表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
充電比容量および放電比容量の関数としての第1サイクル(レートC/10)電圧のプロットを図5Aおよび5Bに示しており、それぞれ、コーティングされていないLMOから形成した電池、および0.2重量パーセントのAlでコーティングLMOから形成した電池のプロットである。充電比容量および放電比容量の関数としての第5サイクル(レートC/3)電圧のプロットを図6Aおよび6Bに示しており、それぞれ、コーティングされていないLMOから形成した電池、および0.2重量パーセントのAlでコーティングLMOから形成した電池のプロットである。
【0086】
コーティングされていない、すなわち無垢の材料、ならびに0.2重量%、0.5重量%、1重量%、および2重量%の4つの異なる量のAlコーティングの1つを有する正極活物質の、サイクル番号の関数としての得られた放電比容量のプロットを図7に示している。最良の結果は、0.2重量パーセントの少ない量のコーティングを有するサンプルで得られた。2重量パーセントの最も多いコーティング材料を有するサンプルは、コーティングされていないサンプルから形成した電池よりも比容量が小さかった。0.2重量パーセントのコーティングを有するサンプルから形成した電池は、放電率のC/3で55サイクルまで驚くべき優れた性能を示した。特に、このサンプルは、サイクル5における容量と実質的に同じ放電容量をサイクル55において示した。
【0087】
別の組の電池について、異なるサイクル手順でサイクルを行った。第2のサイクル手順を使用して類似の結果が得られた。図8を参照すると、これらの電池は、サイクル1および2はC/10、サイクル3および4はC/5、サイクル5および6はC/3、サイクル7〜11は1C、サイクル12〜16は2C、サイクル17〜21は5Cの放電率でサイクルを行った。サイクル番号の関数としての比放電容量のプロットを図8にプロットしている。0.2重量パーセントのコーティングを有するサンプルは、すべてのレートにおいて、他のコーティングされたサンプルより高い電池容量を示した。
【0088】
実施例4−ある範囲にわたる温度で焼成したコーティングを有する酸化アルミニウムコーティングした材料の電池性能
この実施例では、コインセル電池中の酸化アルミニウムコーティングされた材料の性能を説明し、これらの結果は、種々の温度で焼成下コーティング材料を使用して得られ、それより酸化アルミニウムコーティング材料の処理温度の関数としての電池性能を評価した。
【0089】
材料の性能を試験するために、コインセル電池は、実施例2の酸化アルミニウムコーティングを有するまたは有さないリチウム金属酸化物(LMO)粉末から作製し、コーティング材料は400、500、600、800、または1000℃で焼成した。サンプルは、0.5重量パーセント酸化アルミニウムコーティングを有した。実施例3に記載のようにしてLMO粉末からコイン電池を作製し、得られた電池について、サイクル1および2はC/10、サイクル3および4はC/5、サイクル5および6はC/3、サイクル7〜11は1C、サイクル12〜16は2C、サイクル17〜21は5C、サイクル22〜24はC/5の放電率でサイクルを行った。サイクル番号の関数としての比容量を図9にプロットしている。1000℃で焼成したコーティング材料の比容量結果は、コーティングされていないサンプルよりも全体的に悪かった。500℃および600℃で焼成したコーティングサンプルの比容量は、全体的に非常に良好な比容量であった。第1サイクル比充電および放電容量を、コーティングの焼成温度の関数として図10にプロットしている。第1サイクル不可逆容量損失を、コーティングの焼成温度の関数として図11にプロットしている。電池の性能結果を表5にまとめている。
【0090】
【表5】

【0091】
実施例5−酸化ビスマスによるコーティング
この実施例では、表3のサンプル1の式で表され、実施例1に記載のように形成される、高容量のリチウムに富む金属酸化物上の酸化ビスマスコーティングの形成を説明する。
【0092】
高容量カソード材料上の酸化ビスマスのコーティングは、硝酸ビスマスを活性リチウム金属酸化物上で乾燥させ、続いて焼成ステップを行うことで実施した。具体的には、硝酸ビスマスを選択された量の水中に溶解させ、Biでコーティングすべきカソード材料を硝酸ビスマス溶液中に分散させた。次に、この混合物を、乾燥するまで80〜100℃で約2時間加熱した。得られた乾燥粉末を回収し、従来のマッフル炉中、乾燥空気中、300〜400℃で2時間焼成して、酸化ビスマスコーティングを形成した。
【0093】
酸化ビスマスでコーティングされた材料をX線回折で調べる。コーティングされていない材料とともに、同じ材料の酸化ビスマスコーティング量が異なる4サンプルのX線回折図を図12に示している。サンプルは、約0.1、0.5.2.0および5.0重量パーセントのコーティング材料を使用して調製した。図12の回折図から分かるように、コーティングが材料の結晶構造を大きく変化させることはなかった。
【0094】
実施例6−酸化ビスマスでコーティングされた材料の電池性能
この実施例では、実施例4の酸化ビスマスコーティングを有する正極活物質を含む電池の電池性能結果を示す。
【0095】
実施例5に記載されるようにして合成した粉末を使用して、実施例3に記載されるようにしてコイン電池を作製した。比容量の関数としてのセル電圧を図13Aおよび13Bにプロットしており、それぞれ、コーティングされていないLMO活物質を使用した電池、および0.5重量パーセントのBiでコーティングしたLMO活物質を使用した電池の、C/10のレートにおける第1充電および放電サイクルのプロットである。コーティングしたサンプルは、放電比容量が増加し、対応して第1サイクル不可逆容量損失(IRCL)の低下を示した。対応する充電および放電プロットを図13Cおよび13Dに示しており、それぞれ、コーティングしていないサンプル、および0.5重量パーセントでコーティングしたサンプルの、C/3のレートにおける第5充電/放電サイクルのプロットである。再び、適切にコーティングしたサンプルを有する電池が高い放電比容量を示した。
【0096】
コーティングされていないリチウム金属酸化物から形成された電池、および酸化ビスマスでコーティングされたリチウム金属酸化物の4つのサンプルから形成された電池の、サイクル番号の関数としての比放電容量のプロットを図14に示している。図14を参照すると、電池は、サイクル1および2はC/10、サイクル3および4はC/5、サイクル5および6はC/3、サイクル7〜11は1C、サイクル12〜16は2C、サイクル17〜22は5Cの放電率でサイクルを行った。0.1重量パーセントのBiコーティングおよび0.5重量パーセントのBiコーティングを有するリチウム金属酸化物粉末から作製した電池は、コーティングされていないサンプルから作製した電池よりも高い比放電容量をあらゆるレートで有した。
【0097】
実施例7−酸化マグネシウムでコーティングしたリチウム金属酸化物活物質組成物
この実施例では、表3のサンプル2〜8の式で表され、実施例1に記載される様にして形成される、高容量のリチウムに富む金属酸化物上の酸化マグネシウムコーティングの形成を説明する。
【0098】
高容量カソード材料上の酸化マグネシウムのコーティングは、水酸化マグネシウムの沈殿の後、焼成ステップを行うことによって実施した。具体的には、硝酸マグネシウムを選択された量の水中に溶解させ、MgOでコーティングすべきカソード材料を硝酸マグネシウム溶液中に分散させた。次に、水酸化アンモニウムを加えた後、混合物を約60℃に2〜10時間の範囲の時間加熱した。続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄した。次に、固体を300〜800℃で4〜12時間焼成して、酸化マグネシウムでコーティングされたLMO粉末を形成した。この乾燥粉末を回収し、従来のマッフル炉中、乾燥空気中、350℃で2時間焼成した。実施例1のサンプル2〜8のコーティングされていない材料とともに、同じサンプル2〜8の0.5重量%MgOコーティングを有する7つのサンプルを合成した。コーティングしていないサンプルおよびMgOでコーティングしたサンプルで得られたX線回折図は、コーティングが材料の結晶構造を大きく変化させることがなかったことを示している。
【0099】
実施例8−酸化マグネシウムでコーティングされた材料の電気性能
この実施例では、実施例7の酸化マグネシウムコーティングを有する正極活物質を含む電池の電池性能結果を示す。
【0100】
実施例7に記載の様にして合成した粉末を使用して、実施例3に記載されるようにして、コインセル電池を作製した。初回充電および放電サイクルにおける比容量、第1サイクル不可逆容量損失(IRCL)、および電池の平均電圧を比較し、結果を概略的に以下の表4に示している。前述したように、不可逆容量損失は、電池の初回充電容量と初回放電容量の差である。第1サイクル(レートC/10)の電圧対充電および放電比容量のプロットを図15Aおよび15Bに示しており、それぞれ、コーティングされていないLMOから作製した電池、実施例1のサンプル2のMgOコーティングしたLMOから作製した電池のプロットである。第5サイクル(レートC/3)の電圧対充電および放電比容量のプロットを図16Aおよび16Bに示しており、それぞれ、コーティングされていないLMOから作製した電池、実施例1のサンプル2のMgOコーティングしたLMOから作製した電池のプロットである。
【0101】
C/10の放電率で4.6Vから2Vまで放電させた場合の初回放電サイクルで平均電圧を求めた。具体的には、表6に示されるデータは、サンプル3、4、および6〜8の式で表される正極活物質、ならびに0.5重量%のMgOでコーティングされた対応する複合材料から得られた正極活物質の電池性能に関する。コーティングされたサンプルは、充電および放電比容量の増加を示し、対応する同程度または増加した第1サイクル不可逆容量損失(IRCL)を示した。
【0102】
【表6】

【0103】
サンプル2〜5の式で表される無垢およびコーティングされたLMOから作製される電池は、実施例3に概略的に示される手順を使用して作製される。コーティングされていないリチウム金属酸化物から作製した電池のサイクル番号の関数としての比放電容量のプロットを図17に示しており、0.5重量%のMgOをコーティングしたリチウム金属酸化物から作製した電池のサイクル番号の関数としての比放電容量のプロットを図18に示している。電池は、サイクル1および2はC/10、サイクル3および4はC/5、サイクル5および6はC/3、サイクル7〜11は1C、サイクル12〜16は2C、サイクル17〜21は5C、サイクル22〜24は0.2Cの放電率でサイクルを行った。コーティングしたサンプルおよびコーティングしていないサンプルの微分容量(mAh/V)対電圧(V)のプロットを図19に示している。充電プロセスは性の微分容量としてプロットされ、放電プロセスは負の放電容量としてプロットされる。微分容量結果は、使用したコーティングしたサンプルまたはコーティングしていないサンプルとは無関係に定性的には同じである。3.8〜3.9ボルト付近の放電ピークは式IのLiMO成分の反応に関連すると考えられ、4.4〜4.5ボルト付近のピークは組成物のLiMnO成分の反応に関連すると考えられる。
【0104】
上述した実施形態は、限定としてではなく例示として意図したものである。さらなる実施形態は特許請求の範囲に記載する。さらに、特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細に変更を加えることができることを当業者は理解されよう。上記文献の参照による援用は、本明細書における明示的な開示に反する主題は組み込まないように限定する。本明細書で使用するとき、表記(値1≦変数≦値2)は、値1と値2が近似的な量であることを暗に仮定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Li1+x1−x2−z(Mは、非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせであり、0.01≦x≦0.3であり、0≦z≦0.2である)で近似的に表されるリチウム金属酸化物を含み、約0.1〜約0.75重量パーセントの金属/半金属酸化物でコーティングされた、リチウムイオン電池正極材料。
【請求項2】
前記金属/半金属酸化物が、酸化アルミニウム(Al)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ホウ素(B)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化モリブデン(MoOおよびMoO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リチウムアルミニウム(LiAlO)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記金属/半金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または酸化ビスマスを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記リチウム金属酸化物が、式xLiM’O・(1−x)LiM”O(式中、M’は、平均バランスが+4である1種類以上金属イオンを表し、およびM”は、平均バランスが+3である1種類以上の金属イオンを表し、0<x<1である)で近似的に表すことができる、請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
前記リチウム金属酸化物が、式Li1+bNiαMnβCoγδ(bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは0〜約0.15の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、AはMg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表すことができる、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
前記リチウム金属酸化物が、式Li1+bNiαMnβCoγ(bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは約0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲である)で近似的に表すことができる、請求項1に記載の正極材料。
【請求項7】
室温において4.6Vから2.0Vまで放電した場合にC/3の放電率で少なくとも約260mAh/gの比放電容量を有する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項8】
室温において4.6Vから2.0Vまで放電した場合の50回目の充電/放電サイクルにおいてC/3の放電率で少なくとも約230mAh/gの比放電容量を有する、請求項1に記載の正極活性材料。
【請求項9】
不可逆容量損失が、コーティングされていないリチウム金属酸化物の不可逆容量損失に対して少なくとも約15%減少する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項10】
前記リチウム金属酸化物が、式LiNiu+ΔMnu−ΔCo(式中、2u+w+y≒1であり、−0.3≦Δ≦0.3、0≦w≦1、0≦u≦0.5、および0≦y≦0.1であり、但しu+Δおよびwの両方が0であることはない)で近似的に表される、請求項1に記載の正極材料。
【請求項11】
金属/半金属酸化物コーティング組成物でコーティングされたリチウム金属酸化物を含むリチウムイオン電池正極材料であって、
前記リチウム金属酸化物が、式Li1+aNiαMnβCoγδ2−z(式中、aは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは約0〜約0.15の範囲であり、zは0〜約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、AはMg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表すことができ、
前記コーティング組成物が、前記正極材料2重量パーセント未満を構成し、
前記正極材料が、室温において4.6Vから2.0Vまで放電した場合にC/3の放電率で少なくとも約260mAh/gの比放電容量を有する、リチウムイオン電池正極材料。
【請求項12】
前記金属/半金属酸化物コーティング組成物が、酸化アルミニウム(Al)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ホウ素(B)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化モリブデン(MoOおよびMoO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リチウムアルミニウム(LiAlO)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の正極材料。
【請求項13】
前記コーティング組成物が酸化アルミニウムを含む、請求項11に記載の正極材料。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、前記正極材料の約0.025〜約1重量パーセントを構成する、請求項11に記載の正極材料。
【請求項15】
前記コーティング組成物が、前記正極材料の約0.1〜約0.75重量パーセントを構成する、請求項11に記載の正極材料。
【請求項16】
室温において4.6Vから2.0Vまで放電した場合の50回目の充電/放電サイクルにおいてC/3の放電率で少なくとも約230mAh/gの比放電容量を有する、請求項11に記載の正極材料。
【請求項17】
不可逆容量損失が、コーティングされていないリチウム金属酸化物の不可逆容量損失に対して少なくとも約10%減少する、請求項11に記載の正極材料。
【請求項18】
前記リチウム金属酸化物が、式LiNiu+ΔMnu−ΔCo(式中、2u+w+y≒1であり、−0.3≦Δ≦0.3、0≦w≦1、0≦u≦0.5、および0≦y≦0.1であり、但し(u+Δ)およびwの両方が0であることはない)で近似的に表される、請求項11に記載の正極材料。
【請求項19】
正極と、
リチウム含有組成物を含む負極と、
前記正極と前記負極の間のセパレーターと、
リチウムイオンを含む電解質と、を含むリチウムイオン電池であって、
前記正極が、活物質、別個の導電性粉末、およびポリマーバインダーを含み、
前記正極活物質が、金属/半金属酸化物コーティング組成物でコーティングされたリチウム金属酸化物を含み、
前記リチウム金属酸化物が、式Li1+bNiαMnβCoγδ2−z(式中、bは約0.05〜約0.3の範囲であり、αは0〜約0.4の範囲であり、βは約0.2〜約0.65の範囲であり、γは0〜約0.46の範囲であり、δは約0〜約0.15の範囲であり、zは0〜約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、AはMg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表すことができ、
前記コーティング組成物が、前記正極材料の2重量パーセント未満を構成し、
前記正極材料が、室温において4.6Vから2.0Vまで放電した場合の50回目の充電/放電サイクルにおいてC/3の放電率で少なくとも約230mAh/gの比放電容量を有する、リチウムイオン電池。
【請求項20】
前記金属/半金属酸化物コーティング組成物が、酸化アルミニウム(Al)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ホウ素(B)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr)、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、酸化ガリウム(Ga)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、酸化モリブデン(MoOおよびMoO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リチウムアルミニウム(LiAlO)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項19に記載のリチウムイオン電池。
【請求項21】
前記コーティング組成物が酸化アルミニウムを含む、請求項19に記載のリチウムイオン電池。
【請求項22】
前記コーティング組成物が、前記正極材料の約1重量パーセント未満を構成する、請求項19に記載のリチウムイオン電池。
【請求項23】
前記リチウム金属酸化物が、式LiNiu+ΔMnu−ΔCo(2u+w+y≒1であり、−0.3≦Δ≦0.3、0≦w≦1、0≦u≦0.5、および0≦y≦0.1であり、但し(u+Δ)およびwの両方が0であることはない)で近似的に表される、請求項19に記載のリチウムイオン電池。
【請求項24】
リチウムイオン系電池用のコーティングされた正極活物質組成物の形成方法であって、前記活物質をアルミニウム前駆体コーティングとともに約500℃〜約800℃の温度に加熱するステップを含む、方法。
【請求項25】
前記アルミニウム前駆体コーティングが水酸化アルミニウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記正極活物質組成物が、式Li1+x1−x2−z(式中、Mは、非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせであり、0.01≦x≦0.3であり、0≦z≦0.2である)で近似的に表されるリチウムに富む金属酸化物を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記コーティングされた正極活物質組成物が、約0.1〜約0.75重量パーセントの酸化アルミニウムコーティングを含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図13D】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2013−503449(P2013−503449A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527016(P2012−527016)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/046941
【国際公開番号】WO2011/031544
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(510275367)エンビア・システムズ・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】ENVIA SYSTEMS, INC.
【Fターム(参考)】