金属酸化物ゾルの調製方法、前記ゾルを用いる金属酸化物薄膜の調製方法及び前記薄膜を含む固体酸化物燃料電池
固体酸化物燃料電池用金属酸化物薄膜構造は、金属酸化物塩溶液に金属酸化物ナノ粉末を分散させること、次いで、得られた金属酸化物粉末分散ゾル及び金属酸化物塩溶液を多孔質基板に被覆させることを含む方法によって調製され、優れたガス不透過性及び優れた相安定性を有し、クラック又はピンホールがない。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、ゾルゲル法を用いる金属酸化物薄膜構造を製造するための方法と、金属酸化物薄膜を含む固体酸化物燃料電池(SOFC)に関するものである。
【0002】
発明の背景
固体酸化物燃料電池(SOFC)は、空気極(カソード)、燃料極(アノード)及び電解質を含み、ここにおいて電解質はSOFCの性能に影響を及ぼす最も重要な成分である。
【0003】
SOFCに使用される電解質は、酸素と燃料の混合を抑制する緻密な微細構造を形成するために、1000〜1400℃の高温で焼成される。SOFCは、酸素イオン伝導率を高い水準に維持するため、800℃以上の高温で一般に操作される。この理由のため、高い生産コストと、そのような高温条件下での除々の性能劣化のために、SOFC成分用の材料が制限されるという問題点がある。
【0004】
最近、800℃未満の温度での操作が可能なSOFCが開発されている。そのようなSOFCのため、500〜800℃での優れた相安定性及び構造安定性と同様に十分に良好な酸素イオン伝導率を示す電解質システムを開発することが要望されている。そのような電解質を開発するため、前記温度範囲で高いイオン伝導率を持つ新規な電解質材料が開発されている。一方、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの従来の電解質材料の抵抗を減少する努力は、それらを薄膜の形態にすることによって盛んに試みられている。
【0005】
薄膜形態の電解質を使用することによりSOFCの作動温度を減少させるため、スパッタリング及びイオンメッキのような気相法により、SOFC用電解質としての使用に適したセラミック薄膜を調製するための様々な研究が行われている(日本公開公報 特開2000−62077号公報、特開2000−329729号公報及び特開2004−87490号公報参照)。しかしながら、そのような気相法は、高いコストの装置及び出発原料の使用が要求されること、基板の形状及びサイズが制限されること、薄膜の形成が遅いこと、ピンホールのない膜を形成するのが困難であることという問題を含む。
【0006】
従来の粉末に基づく方法により電解質薄膜が形成される場合、ミクロンサイズの出発粉末が使用され、そして、それが1200℃以上の高温で焼成される場合、ミクロンサイズの粒子からなる膜が得られる。しかしながら、電解質薄膜の厚さが粉末の粒子サイズよりも小さい場合、電解質薄膜は粒子成長中に分解し、緻密な薄膜を形成するのが困難になる。
【0007】
それゆえ、SOFC用電解質薄膜を調製する経済性に優れる方法であって、800℃未満の温度でそれの作動中にそれを通じてのガス透過を抑制するため、安定相、耐久性のある構造及び十分な密度を維持することができる方法を開発する必要性がある。
【0008】
発明の要旨
従って、本発明の目的は、ゾルゲル法を用いて多孔質基板上に金属酸化物薄膜を調製する方法であって、それにより低温度法で安定な微細構造を容易に調製することが可能な方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、相及び構造の点で安定で、反応ガスの直接接触を抑制するのに十分な緻密さのSOFC用金属酸化物薄膜を提供することである。
【0010】
本発明の態様によると、金属酸化物粉末分散ゾルを調製する方法が提供され、この方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、前記金属酸化物塩溶液に分散させる工程とを含む。
【0011】
本発明の他の態様によると、金属酸化物薄膜構造を製造する方法が提供され、この方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)金属酸化物粉末分散ゾルを調製するため、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、金属酸化物塩溶液に分散させる工程と、(3)金属酸化物粉末分散ゾルで多孔質基板を被覆する工程と、(4)被覆の結果得られた基板を、工程(1)で調製された金属酸化物塩溶液で被覆する工程と、(5)金属酸化物薄膜構造を調製するために得られた基板を焼成する工程とを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様によると、発明の方法により製造された金属酸化物薄膜構造を提供する。
【0013】
本発明のいっそうさらなる態様によると、発明の金属酸化物薄膜構造を含む固体酸化物燃料電池を提供する。
【0014】
本発明によると、金属酸化物薄膜がゾルゲル法を用いて多孔質基板上に形成される場合、結果として得られた微細構造は、高いコストの装置と出発原料を用いることなしに容易に制御されることができ、基板の形状及びサイズは限定要素にならず、そして、低いSOFC作動温度で安定な相を容易に得ることができる。この方法で形成された金属酸化物膜は、ガスに対して不浸透性である程度に緻密であり、クラック又はピンホールが発生し難く、そしてその薄い構造のために低い電子抵抗を示し、そして低温SOFC法で使用される場合にそれは安定で、かつ耐久性がある。それゆえ、発明の金属酸化物膜は、燃料電池又は酸素センサー用の電解質として有意に使用されることができ、そして、それは、電子装置及び他の分野において、熱的なバリア被覆、光学材料、高温超伝導性の薄い緩衝層、絶縁フィルムにも適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
それぞれが示す付随する図面と共に解釈される場合、上述及び他の、本発明の課題及び特徴は、発明の以下の記載から明らかになるであろう。
【図1】実施例1のYSZ薄膜を調製するための方法の概略的なフローチャート。
【図2A】15重量%のYSZ粉末分散ゾルを用いてスピンコーティングにより得られたYSZ薄膜の表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真。
【図2B】15重量%のYSZ粉末分散ゾルを用いてスピンコーティングにより得られたYSZ薄膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真。
【図3A】実施例1で得られたYSZ薄膜の表面のSEM写真。
【図3B】実施例1で得られたYSZ薄膜の断面のSEM写真。
【図4】様々な温度での金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のX線回折(XRD)パターン。
【図5】800℃で金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のラマンスペクトル。
【図6A】実施例2で得られたYSZ薄膜についての表面のSEM写真。
【図6B】実施例2で得られたYSZ薄膜についての断面のSEM写真。
【図7A】実施例3で調製された0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜の表面のSEM写真。
【図7B】実施例3で調製された0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜の横断面のSEM写真。
【図8】実施例3で調製された1μmの厚さを有するYSZ薄膜及び比較例のNiO−YSZ基板のガス透過性を示す図。
【図9A】1μmの厚さを有する実施例3で調製されたYSZ薄膜を含むSOFCのセル特性を示す図。
【図9B】0.5μmの厚さを有する実施例3で調製されたYSZ薄膜を含むSOFCのセル特性を示す図。
【0016】
発明の詳細な記載
本発明は、金属酸化物粉末分散ゾルを調製する方法を提供し、方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、前記金属酸化物塩溶液に分散させる工程とを含む。
【0017】
発明の方法において、第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、サマリア(samaria)がドープされた酸化セリウム(SDC)、ガドリア(gadolia)がドープされた酸化セリウム(GDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、ストロンチウムマンガンドープのランタン没食子酸塩(LSGM)、及び銀イットリアドープの酸化ビスマス(YDB)からなる群より選択されても良く、好ましいのはYSZである。しかしながら、本願はそれらに限定されず、酸素イオン伝導性材料及びプロトン伝導性材料のような他のイオン伝導性材料から選択されても良い。
【0018】
金属酸化物塩溶液は、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた相よりなる群から選択される金属酸化物を、水溶性もしくは有機の溶媒に分散又は混合することにより調製されても良い。例えば、YSZ塩溶液は、混合物を形成するためにキレート剤(例えば、アセチルアセトナト又は酢酸)、触媒及び乾燥調整剤を、硝酸塩又は酢酸塩に基づくイットリウム前駆体及びジルコニウム前駆体と共に混合し、その後、混合物を水溶性もしくは有機の溶媒に溶解し、攪拌することによって得られても良い。
【0019】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物塩溶液に使用される第1の金属酸化物と同様な金属酸化物のナノ粉末であっても良い。しかしながら、それは、第1の金属酸化物とは異なる金属酸化物のナノ粉末でも良い。異なる金属酸化物を使用する場合、金属酸化物は、金属酸化物塩溶液と反応せず、良好な熱膨張係数のような良好な物理特性を持ち、そして電解質又は電極材料として使用されることが可能であることが要求されて良い。
【0020】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有していて良く、10〜900m2/g、好ましくは10〜200m2/gの比表面積を有していても良い。
【0021】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準とした1〜50重量%の量で金属酸化物塩溶液に分散されていても良い。
【0022】
さらに、本発明は、金属酸化物薄膜構造を製造する方法を提供し、この方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)金属酸化物粉末分散ゾルを調製するため、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、金属酸化物塩溶液に分散させる工程と、(3)金属酸化物粉末分散ゾルで多孔質基板を被覆する工程と、(4)被覆の結果得られた基板を、工程(1)で得られた金属酸化物塩溶液で処理する工程と、(5)金属酸化物薄膜構造を調製するために得られた基板を焼成する工程とを含む。
【0023】
別な方法で述べない限り、金属酸化物溶液を調製する前述の方法の記述は、金属酸化物薄膜構造を製造する方法にも適用される。
【0024】
本発明の実施形態によると、異なる含有量を持つ2又はそれ以上の金属酸化物粉末分散ゾルは工程(2)で調製されて良く、そして工程(3)の多孔質基板は様々な程度でそれらで被覆されて良い。
【0025】
例えば、均一で、かつ緻密な金属酸化物薄膜は、多孔質基板上を金属酸化物ナノ粉末で以下の工程に従って被覆することにより、クラック又は微小なピンホールなしで多孔質基板に形成されることができる。この工程は、(i)20重量%のYSZナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルで多孔質基板上を被覆した後、乾燥させる工程、(ii)それに対し、10重量%のYSZナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルを被覆させた後、乾燥させる工程、(iii)それに対し、5重量%のYSZナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルを被覆させた後、乾燥させる工程、及び(iv)それに対し、YSZナノ粉末を含まないYSZ塩溶液を被覆させた後、乾燥させる工程である。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、工程(1)において、第1の金属酸化物が異なる濃度を持つ2又はそれ以上の金属酸化物塩溶液を調製し、工程(4)において、基板はそれぞれの金属酸化物塩溶液で様々な程度で被覆される。
【0027】
異なる濃度を持つ金属酸化物塩溶液は、蒸発を通して金属酸化物塩溶液を濃縮することにより調製されることができる。金属酸化物塩溶液の濃度は、0.01〜10mol/L、好ましくは0.5〜5mol/Lの範囲内であって良い。異なる濃度を持つ金属酸化物塩溶液は、様々な程度で基板上に被覆されることができる。例えば、それは、(i)より高い濃度を持つ金属酸化物塩溶液で基板を被覆し、次いで乾燥する工程と、(ii)得られた基板をより低い濃度を持つ金属酸化物塩溶液で被覆し、次いで乾燥する工程とを含む方法によって被覆されても良い。
【0028】
第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、SDC,GDC,YSZ,ScSZ,LSGM及びYDBよりなる群から選択されて良く、好ましいのはYSZである。
【0029】
金属酸化物ナノ粉末は、多孔質基板に存在するクラック又はピンホールを埋め、金属酸化物粉末分散ゾルと多孔質基板との間の圧縮率の差を減少させる役割をなす。第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有していて良く、10〜900m2/g、好ましくは10〜200m2/gの比表面積を有していても良い。
【0030】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準とした1〜50重量%の量で金属酸化物塩溶液に分散されていても良い。
【0031】
工程(3)及び(4)において、被覆は、スピンコーティング、浸漬、スプレー熱分解、静電塗装めっき(electro-static spray deposition)(ESD)、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される方法によって行われても良い。被覆された多孔質基板の乾燥は、100〜400℃の温度で行われて良い。工程(3)または(4)は、基板の性質、溶液の濃度及びナノ粉末の量を考慮しつつ、得られた膜の厚さを調整するために一回よりも多く繰り返されても良い。好ましくは、工程(3)及び(4)のそれぞれは、2〜4回行われても良い。
【0032】
得られた膜は、600℃あるいはそれ以上の温度で焼成されても良く、好ましくは600〜800℃で2〜10時間焼成されて良い。得られた金属酸化物薄膜は、0.1〜30μmの厚さを有していて良い。
【0033】
本発明で使用される多孔質基板は制限されるものではなく、例えば、それは、従来のSOFCで使用され、かつ酸素が除去されるサイトでの細孔を備えた多孔質金属セラミック複合体(サーメット)、多孔質セラミック絶縁体、多孔質金属複合体、カソード酸化を用いる多孔質シリコン複合体、及び多孔質アルミナから選択されて良い。SOFC用に適した基板材料は、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、白金(Pt)等のような金属、それらの合金、及びYSZ及びGDCと金属との複合体(サーメット)、及び酸化ルテニウムよりなる群から選択されて良い。多孔質基板は、加圧成形方法、テープキャスティング(tape casting)法などのような粉末を基にした方法を通じて製造されて良い。
【0034】
発明の方法により調製された金属酸化物薄膜は、低温中で形成されるために相形成及び構造の点から安定であり、緻密に形成されているためにピンホールの問題が生じず、SOFC用電解質として使用されることが可能であり、それによりSOFCの効率が増加する。本発明による金属酸化物薄膜の製造方法は、固体酸化物燃料電池(SOFC)用電解質膜を製造するために使用されることができる。発明の方法によって製造された金属酸化物薄膜構造を含む固体酸化物燃料電池は、燃料電池の性能を改善することができ、それの生産コストを減少させることができる。発明の固体酸化物燃料電池において、多孔質基板は、燃料極(アノード)または空気極(カソード)として機能しても良い。
【0035】
実施例
以下の実施例は、発明を説明することを意図したものであり、しかしながら、これらの実施例は発明の範囲を制限するために解釈はされない。
【0036】
実施例1 YSZ薄膜構造(1)の調製
YSZ薄膜構造は、以下の方法により調製され、図1に概略的に示された。
【0037】
1−1.YSZ粉末分散ゾル及びYSZ塩溶液の調製
a)分散溶液を形成するため、溶媒としてエタノール、溶媒及び乾燥調整剤としてDMF(C3H7NO)、及びキレート剤としてアセチルアセトナト(C5H8O2)が体積比率30:40:30(%)で混合され、その後、室温で30分攪拌された。
【0038】
b)82.6gの分散溶液が、希釈酢酸中の53.21gの酢酸ジルコニウムに添加され、その後、1時間攪拌され、このようにして第1の塩溶液を得た。82.6gの他の分散溶液を16.5gの硝酸イットリウム六水和物(Y(NO3)3・6H2O)に添加し、その後、30分攪拌し、このようにして第2の塩溶液を得た。YSZ塩溶液(約pH2.5)を得るため、第1及び第2の塩溶液は、共に混合され、室温で2時間攪拌された後、触媒として硝酸(HNO3)が加えられた。
【0039】
c)15,10,5及び2.5重量%それぞれの濃度を有するYSZ粉末分散ゾルを得るため、YSZナノ粉末(粒子サイズ:20−30nm、比表面積:160m2/g、fuelcellmaterials社から入手可能)は、工程b)で得られたYSZ塩溶液中に、15,10,5及び2.5重量%それぞれの濃度で分散され、その後、超音波(60%出力)が照射された。
【0040】
d)一方、2mol/L及び1mol/Lそれぞれの濃度を持つYSZ塩溶液を調製するため、工程b)と同様な方法で調製されたYSZ塩溶液を80℃で蒸発させた。
【0041】
1−2.YSZ薄膜構造の調製
結着剤として8重量%のジ−n−フタル酸ブチル(DBP)及び分散剤として1.3重量%のKD−1(Hypermer,オランダ(Netherland))を、NiO−YSZ粉末(TOSOH社)に添加し、そしてその後、スラリーを得るために室温で1日間ボールミルが施された。それから、0.4mmの厚さを有するNiO−YSZ基板を得るために、スラリーを、Korea Advanced Institute of Science and Technology製のテープキャスタ(tape caster)に通過させた。得られたNiO−YSZ基板は、YSZ粉末分散ゾル及び工程1−1で得られたYSZ塩溶液で以下の工程に従ってスピンコートがなされた。
【0042】
i)10重量%YSZ粉末分散ゾルでスピンコーティング;
ii)5重量%YSZ粉末分散ゾルでスピンコーティング;及び
iii)YSZ塩溶液(2mol/L)でスピンコーティング。
【0043】
スピンコーティングの各工程は、1000〜4000rpmの速度で40秒間行なわれ、得られた基板は、各工程において300℃で乾燥された。この場合、工程iii)で形成されたYSZ塩溶液層の厚さは、50〜400nmの範囲内であった。
【0044】
0.5〜1μmの厚さを有するYSZ薄膜がNiO−YSZ基板上に形成されている構造を得るため、得られたスピンコート基板は800℃で4時間焼成された。
【0045】
図2A及び2Bは、それぞれ、工程1−1で調製された15重量%のナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルを用いて1度スピンコーティングした後に800℃で焼成されることにより得られたYSZ薄膜の表面及び断面のSEM写真を示す。図2A及び2Bに示すように、YSZ薄膜は均一で、約90%の密度を示す。
【0046】
図3A及び3Bは、それぞれ、実施例1で得られたYSZ薄膜の表面及び断面のSEM写真を示す。図3A及び3Bに示すように、YSZ薄膜は、良好な均一性と、クラック又はピンホールのないほぼ100%の密度を示す。
【0047】
図4は、様々な温度での金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のX線回折(XRD)パターンを示す。YSZの主要なピークが300〜1200℃の広い温度範囲に現れることが図4から理解することができ、このことは相形成が生じていることを意味している。図5は、800℃で金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のラマンスペクトルを示す。立方相が現れることが図5から理解することができ、これは800℃の低温でさえ安定である。
【0048】
実施例2 YSZ薄膜構造(2)の調製
2−1.YSZ粉末分散ゾルの調製
第1の塩溶液を得るため、3.3gの硝酸イットリウム六水和物(Y(NO3)3・6H2O)及び20.49gの塩化ジルコニル(IV)八水和物(ZrOCl2・8H2O)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノール及び水が40:40:20(%)の体積比率で混合された混合溶媒に溶解された後、キレート剤として20重量%のアセチルアセトンがそれに添加された。
【0049】
第2の塩溶液を得るため、1重量%のYSZナノ粉末(粒子サイズ:20〜30nm,比表面積:160m2/g,fuelcellmaterials社から入手可能である)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノール及び水40:40:20(%)の体積比率で混合された混合溶媒に分散され、超音波(60%出力)が照射された。
【0050】
YSZ粉末分散ゾルを得るため、第1及び第2の塩溶液は、50:50の体積比率で混合された。
【0051】
2−2.YSZ薄膜構造の調製
工程2−1で得られたYSZ粉末分散ゾルを、実施例1と同様な方法で調製されたNiO−YSZの多孔質基板に、340℃の基板温度、14kVの電圧、基板と針との距離が10cm、流量が0.5mL/h、40分間の条件の静電放電(ESD)を用いることにより、析出させた。
【0052】
NiO−YSZ基板上に形成された0.4μmの厚さを有するYSZ薄膜を得るため、得られた基板は900℃で4時間焼成された。
【0053】
図6A及び6Bは、それぞれ、実施例2で得られたYSZ薄膜についての表面及び断面のSEM写真を示す。YSZ薄膜が良好な均一性と、クラック又はピンホールのない約94%の密度とを示すことが、図6A及び6Bから理解することができる。
【0054】
実施例3 SOFC単セルの調製
3−1 YSZ薄膜構造の調製
1μmの厚さを有するYSZ薄膜が基板に形成されている第1の構造が、スピンコーティングが以下の工程で行われることを除き、実施例1と同様にして調製された。
【0055】
i)10重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
ii)5重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
iii)YSZ塩溶液(2mol/L)で2回スピンコーティング;及び
iv)YSZ塩溶液(1mol/L)で2回スピンコーティング。
【0056】
第1の構造において、工程iii)及びiv)で形成されたYSZ塩溶液層の厚さは、50〜400nmの範囲内であった。
【0057】
さらに、0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜が基板に形成されている第2の構造が、スピンコーティングが以下の工程で行われることを除き、実施例1と同様にして調製された。
【0058】
i)5重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
ii)2.5重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
iii)YSZ塩溶液(2mol/L)で2回スピンコーティング;及び
iv)YSZ塩溶液(1mol/L)で2回スピンコーティング。
【0059】
第2の構造において、工程iii)及びiv)で形成されたYSZ塩溶液層の厚さは、70〜150nmの範囲内であった。
【0060】
3−2 SOFC単セルの調製
第1及び第2のYSZ薄膜構造それぞれは、2×2cmのサイズで裁断され、その後、電解質−カソード複合体として提供される。
【0061】
スラリーを得るため、2〜3μmの粒子サイズを有するSSC粉末(SEIMI Chemical社)は、室温で約6時間粉砕された。カソード、電解質及びアノードを含むSOFC単セルを製造するため、スラリーは、各電解質−カソード複合体上で1×1のパターンでスクリーン印刷され、その後、800℃で焼成された。SSCアノードの一般的な焼成温度が1000℃以上であるにも拘らず、電解質−カソード複合体は、電解質の最終焼成温度が800℃であるために、800℃で焼成された。
【0062】
図7A及び7Bは、実施例3で得られた0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜の表面及び断面のSEM写真をそれぞれ示す。YSZ薄膜が良好な均一性と、クラック又はピンホールのないほぼ100%の密度を示すことが、図7A及び7Bから理解することができる。
【0063】
実験的な実施例1 ガス透過性
実施例3で調製された1μmの厚さを有するYSZ薄膜及び比較例としてのNiO−YSZ基板は、空気中(Journal of Powder Sources,140:226−234(2005)参照)で多孔度計(Porous Materials Inc.,U.S.A.)を用いて測定が施された。
【0064】
その結果、実施例3で調製されたYSZ薄膜は、ガス透過を全く生じなかった(図8参照)ことが見出された。それゆえ、発明の薄膜は優れたガス気密性を示すことを理解することができる。
【0065】
実験的な実施例2 構造安定性
実施例3で調製された1μmの厚さを有するYSZ薄膜を含むSOFC単セルは、750℃での開回路電圧(OCV)の測定がなされ、その結果が図9Aに示される。さらに、実施例3で調製された0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜を含むSOFC単セルは、650℃での開回路電圧(OCV)の測定がなされ、その結果が図9Bに示される。
【0066】
1μm及び0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜のOCVは、それぞれ、1.08V及び1.03Vであることが、図9A及び9Bから理解することができ、そして、発明のYSZ薄膜は、SOFCの電解質として安定に作動した。
【0067】
発明は前述の詳細な実施形態について記載されているが、様々な修正及び変更が当業者により発明に対してなされて良く、それも添付された請求項によって規定された発明の範囲内を満足することが、認識されるべきである。
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、ゾルゲル法を用いる金属酸化物薄膜構造を製造するための方法と、金属酸化物薄膜を含む固体酸化物燃料電池(SOFC)に関するものである。
【0002】
発明の背景
固体酸化物燃料電池(SOFC)は、空気極(カソード)、燃料極(アノード)及び電解質を含み、ここにおいて電解質はSOFCの性能に影響を及ぼす最も重要な成分である。
【0003】
SOFCに使用される電解質は、酸素と燃料の混合を抑制する緻密な微細構造を形成するために、1000〜1400℃の高温で焼成される。SOFCは、酸素イオン伝導率を高い水準に維持するため、800℃以上の高温で一般に操作される。この理由のため、高い生産コストと、そのような高温条件下での除々の性能劣化のために、SOFC成分用の材料が制限されるという問題点がある。
【0004】
最近、800℃未満の温度での操作が可能なSOFCが開発されている。そのようなSOFCのため、500〜800℃での優れた相安定性及び構造安定性と同様に十分に良好な酸素イオン伝導率を示す電解質システムを開発することが要望されている。そのような電解質を開発するため、前記温度範囲で高いイオン伝導率を持つ新規な電解質材料が開発されている。一方、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などの従来の電解質材料の抵抗を減少する努力は、それらを薄膜の形態にすることによって盛んに試みられている。
【0005】
薄膜形態の電解質を使用することによりSOFCの作動温度を減少させるため、スパッタリング及びイオンメッキのような気相法により、SOFC用電解質としての使用に適したセラミック薄膜を調製するための様々な研究が行われている(日本公開公報 特開2000−62077号公報、特開2000−329729号公報及び特開2004−87490号公報参照)。しかしながら、そのような気相法は、高いコストの装置及び出発原料の使用が要求されること、基板の形状及びサイズが制限されること、薄膜の形成が遅いこと、ピンホールのない膜を形成するのが困難であることという問題を含む。
【0006】
従来の粉末に基づく方法により電解質薄膜が形成される場合、ミクロンサイズの出発粉末が使用され、そして、それが1200℃以上の高温で焼成される場合、ミクロンサイズの粒子からなる膜が得られる。しかしながら、電解質薄膜の厚さが粉末の粒子サイズよりも小さい場合、電解質薄膜は粒子成長中に分解し、緻密な薄膜を形成するのが困難になる。
【0007】
それゆえ、SOFC用電解質薄膜を調製する経済性に優れる方法であって、800℃未満の温度でそれの作動中にそれを通じてのガス透過を抑制するため、安定相、耐久性のある構造及び十分な密度を維持することができる方法を開発する必要性がある。
【0008】
発明の要旨
従って、本発明の目的は、ゾルゲル法を用いて多孔質基板上に金属酸化物薄膜を調製する方法であって、それにより低温度法で安定な微細構造を容易に調製することが可能な方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、相及び構造の点で安定で、反応ガスの直接接触を抑制するのに十分な緻密さのSOFC用金属酸化物薄膜を提供することである。
【0010】
本発明の態様によると、金属酸化物粉末分散ゾルを調製する方法が提供され、この方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、前記金属酸化物塩溶液に分散させる工程とを含む。
【0011】
本発明の他の態様によると、金属酸化物薄膜構造を製造する方法が提供され、この方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)金属酸化物粉末分散ゾルを調製するため、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、金属酸化物塩溶液に分散させる工程と、(3)金属酸化物粉末分散ゾルで多孔質基板を被覆する工程と、(4)被覆の結果得られた基板を、工程(1)で調製された金属酸化物塩溶液で被覆する工程と、(5)金属酸化物薄膜構造を調製するために得られた基板を焼成する工程とを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様によると、発明の方法により製造された金属酸化物薄膜構造を提供する。
【0013】
本発明のいっそうさらなる態様によると、発明の金属酸化物薄膜構造を含む固体酸化物燃料電池を提供する。
【0014】
本発明によると、金属酸化物薄膜がゾルゲル法を用いて多孔質基板上に形成される場合、結果として得られた微細構造は、高いコストの装置と出発原料を用いることなしに容易に制御されることができ、基板の形状及びサイズは限定要素にならず、そして、低いSOFC作動温度で安定な相を容易に得ることができる。この方法で形成された金属酸化物膜は、ガスに対して不浸透性である程度に緻密であり、クラック又はピンホールが発生し難く、そしてその薄い構造のために低い電子抵抗を示し、そして低温SOFC法で使用される場合にそれは安定で、かつ耐久性がある。それゆえ、発明の金属酸化物膜は、燃料電池又は酸素センサー用の電解質として有意に使用されることができ、そして、それは、電子装置及び他の分野において、熱的なバリア被覆、光学材料、高温超伝導性の薄い緩衝層、絶縁フィルムにも適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
それぞれが示す付随する図面と共に解釈される場合、上述及び他の、本発明の課題及び特徴は、発明の以下の記載から明らかになるであろう。
【図1】実施例1のYSZ薄膜を調製するための方法の概略的なフローチャート。
【図2A】15重量%のYSZ粉末分散ゾルを用いてスピンコーティングにより得られたYSZ薄膜の表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真。
【図2B】15重量%のYSZ粉末分散ゾルを用いてスピンコーティングにより得られたYSZ薄膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真。
【図3A】実施例1で得られたYSZ薄膜の表面のSEM写真。
【図3B】実施例1で得られたYSZ薄膜の断面のSEM写真。
【図4】様々な温度での金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のX線回折(XRD)パターン。
【図5】800℃で金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のラマンスペクトル。
【図6A】実施例2で得られたYSZ薄膜についての表面のSEM写真。
【図6B】実施例2で得られたYSZ薄膜についての断面のSEM写真。
【図7A】実施例3で調製された0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜の表面のSEM写真。
【図7B】実施例3で調製された0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜の横断面のSEM写真。
【図8】実施例3で調製された1μmの厚さを有するYSZ薄膜及び比較例のNiO−YSZ基板のガス透過性を示す図。
【図9A】1μmの厚さを有する実施例3で調製されたYSZ薄膜を含むSOFCのセル特性を示す図。
【図9B】0.5μmの厚さを有する実施例3で調製されたYSZ薄膜を含むSOFCのセル特性を示す図。
【0016】
発明の詳細な記載
本発明は、金属酸化物粉末分散ゾルを調製する方法を提供し、方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、前記金属酸化物塩溶液に分散させる工程とを含む。
【0017】
発明の方法において、第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、サマリア(samaria)がドープされた酸化セリウム(SDC)、ガドリア(gadolia)がドープされた酸化セリウム(GDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、ストロンチウムマンガンドープのランタン没食子酸塩(LSGM)、及び銀イットリアドープの酸化ビスマス(YDB)からなる群より選択されても良く、好ましいのはYSZである。しかしながら、本願はそれらに限定されず、酸素イオン伝導性材料及びプロトン伝導性材料のような他のイオン伝導性材料から選択されても良い。
【0018】
金属酸化物塩溶液は、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた相よりなる群から選択される金属酸化物を、水溶性もしくは有機の溶媒に分散又は混合することにより調製されても良い。例えば、YSZ塩溶液は、混合物を形成するためにキレート剤(例えば、アセチルアセトナト又は酢酸)、触媒及び乾燥調整剤を、硝酸塩又は酢酸塩に基づくイットリウム前駆体及びジルコニウム前駆体と共に混合し、その後、混合物を水溶性もしくは有機の溶媒に溶解し、攪拌することによって得られても良い。
【0019】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物塩溶液に使用される第1の金属酸化物と同様な金属酸化物のナノ粉末であっても良い。しかしながら、それは、第1の金属酸化物とは異なる金属酸化物のナノ粉末でも良い。異なる金属酸化物を使用する場合、金属酸化物は、金属酸化物塩溶液と反応せず、良好な熱膨張係数のような良好な物理特性を持ち、そして電解質又は電極材料として使用されることが可能であることが要求されて良い。
【0020】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有していて良く、10〜900m2/g、好ましくは10〜200m2/gの比表面積を有していても良い。
【0021】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準とした1〜50重量%の量で金属酸化物塩溶液に分散されていても良い。
【0022】
さらに、本発明は、金属酸化物薄膜構造を製造する方法を提供し、この方法は、(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、(2)金属酸化物粉末分散ゾルを調製するため、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、金属酸化物塩溶液に分散させる工程と、(3)金属酸化物粉末分散ゾルで多孔質基板を被覆する工程と、(4)被覆の結果得られた基板を、工程(1)で得られた金属酸化物塩溶液で処理する工程と、(5)金属酸化物薄膜構造を調製するために得られた基板を焼成する工程とを含む。
【0023】
別な方法で述べない限り、金属酸化物溶液を調製する前述の方法の記述は、金属酸化物薄膜構造を製造する方法にも適用される。
【0024】
本発明の実施形態によると、異なる含有量を持つ2又はそれ以上の金属酸化物粉末分散ゾルは工程(2)で調製されて良く、そして工程(3)の多孔質基板は様々な程度でそれらで被覆されて良い。
【0025】
例えば、均一で、かつ緻密な金属酸化物薄膜は、多孔質基板上を金属酸化物ナノ粉末で以下の工程に従って被覆することにより、クラック又は微小なピンホールなしで多孔質基板に形成されることができる。この工程は、(i)20重量%のYSZナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルで多孔質基板上を被覆した後、乾燥させる工程、(ii)それに対し、10重量%のYSZナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルを被覆させた後、乾燥させる工程、(iii)それに対し、5重量%のYSZナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルを被覆させた後、乾燥させる工程、及び(iv)それに対し、YSZナノ粉末を含まないYSZ塩溶液を被覆させた後、乾燥させる工程である。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、工程(1)において、第1の金属酸化物が異なる濃度を持つ2又はそれ以上の金属酸化物塩溶液を調製し、工程(4)において、基板はそれぞれの金属酸化物塩溶液で様々な程度で被覆される。
【0027】
異なる濃度を持つ金属酸化物塩溶液は、蒸発を通して金属酸化物塩溶液を濃縮することにより調製されることができる。金属酸化物塩溶液の濃度は、0.01〜10mol/L、好ましくは0.5〜5mol/Lの範囲内であって良い。異なる濃度を持つ金属酸化物塩溶液は、様々な程度で基板上に被覆されることができる。例えば、それは、(i)より高い濃度を持つ金属酸化物塩溶液で基板を被覆し、次いで乾燥する工程と、(ii)得られた基板をより低い濃度を持つ金属酸化物塩溶液で被覆し、次いで乾燥する工程とを含む方法によって被覆されても良い。
【0028】
第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、SDC,GDC,YSZ,ScSZ,LSGM及びYDBよりなる群から選択されて良く、好ましいのはYSZである。
【0029】
金属酸化物ナノ粉末は、多孔質基板に存在するクラック又はピンホールを埋め、金属酸化物粉末分散ゾルと多孔質基板との間の圧縮率の差を減少させる役割をなす。第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有していて良く、10〜900m2/g、好ましくは10〜200m2/gの比表面積を有していても良い。
【0030】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準とした1〜50重量%の量で金属酸化物塩溶液に分散されていても良い。
【0031】
工程(3)及び(4)において、被覆は、スピンコーティング、浸漬、スプレー熱分解、静電塗装めっき(electro-static spray deposition)(ESD)、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される方法によって行われても良い。被覆された多孔質基板の乾燥は、100〜400℃の温度で行われて良い。工程(3)または(4)は、基板の性質、溶液の濃度及びナノ粉末の量を考慮しつつ、得られた膜の厚さを調整するために一回よりも多く繰り返されても良い。好ましくは、工程(3)及び(4)のそれぞれは、2〜4回行われても良い。
【0032】
得られた膜は、600℃あるいはそれ以上の温度で焼成されても良く、好ましくは600〜800℃で2〜10時間焼成されて良い。得られた金属酸化物薄膜は、0.1〜30μmの厚さを有していて良い。
【0033】
本発明で使用される多孔質基板は制限されるものではなく、例えば、それは、従来のSOFCで使用され、かつ酸素が除去されるサイトでの細孔を備えた多孔質金属セラミック複合体(サーメット)、多孔質セラミック絶縁体、多孔質金属複合体、カソード酸化を用いる多孔質シリコン複合体、及び多孔質アルミナから選択されて良い。SOFC用に適した基板材料は、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、白金(Pt)等のような金属、それらの合金、及びYSZ及びGDCと金属との複合体(サーメット)、及び酸化ルテニウムよりなる群から選択されて良い。多孔質基板は、加圧成形方法、テープキャスティング(tape casting)法などのような粉末を基にした方法を通じて製造されて良い。
【0034】
発明の方法により調製された金属酸化物薄膜は、低温中で形成されるために相形成及び構造の点から安定であり、緻密に形成されているためにピンホールの問題が生じず、SOFC用電解質として使用されることが可能であり、それによりSOFCの効率が増加する。本発明による金属酸化物薄膜の製造方法は、固体酸化物燃料電池(SOFC)用電解質膜を製造するために使用されることができる。発明の方法によって製造された金属酸化物薄膜構造を含む固体酸化物燃料電池は、燃料電池の性能を改善することができ、それの生産コストを減少させることができる。発明の固体酸化物燃料電池において、多孔質基板は、燃料極(アノード)または空気極(カソード)として機能しても良い。
【0035】
実施例
以下の実施例は、発明を説明することを意図したものであり、しかしながら、これらの実施例は発明の範囲を制限するために解釈はされない。
【0036】
実施例1 YSZ薄膜構造(1)の調製
YSZ薄膜構造は、以下の方法により調製され、図1に概略的に示された。
【0037】
1−1.YSZ粉末分散ゾル及びYSZ塩溶液の調製
a)分散溶液を形成するため、溶媒としてエタノール、溶媒及び乾燥調整剤としてDMF(C3H7NO)、及びキレート剤としてアセチルアセトナト(C5H8O2)が体積比率30:40:30(%)で混合され、その後、室温で30分攪拌された。
【0038】
b)82.6gの分散溶液が、希釈酢酸中の53.21gの酢酸ジルコニウムに添加され、その後、1時間攪拌され、このようにして第1の塩溶液を得た。82.6gの他の分散溶液を16.5gの硝酸イットリウム六水和物(Y(NO3)3・6H2O)に添加し、その後、30分攪拌し、このようにして第2の塩溶液を得た。YSZ塩溶液(約pH2.5)を得るため、第1及び第2の塩溶液は、共に混合され、室温で2時間攪拌された後、触媒として硝酸(HNO3)が加えられた。
【0039】
c)15,10,5及び2.5重量%それぞれの濃度を有するYSZ粉末分散ゾルを得るため、YSZナノ粉末(粒子サイズ:20−30nm、比表面積:160m2/g、fuelcellmaterials社から入手可能)は、工程b)で得られたYSZ塩溶液中に、15,10,5及び2.5重量%それぞれの濃度で分散され、その後、超音波(60%出力)が照射された。
【0040】
d)一方、2mol/L及び1mol/Lそれぞれの濃度を持つYSZ塩溶液を調製するため、工程b)と同様な方法で調製されたYSZ塩溶液を80℃で蒸発させた。
【0041】
1−2.YSZ薄膜構造の調製
結着剤として8重量%のジ−n−フタル酸ブチル(DBP)及び分散剤として1.3重量%のKD−1(Hypermer,オランダ(Netherland))を、NiO−YSZ粉末(TOSOH社)に添加し、そしてその後、スラリーを得るために室温で1日間ボールミルが施された。それから、0.4mmの厚さを有するNiO−YSZ基板を得るために、スラリーを、Korea Advanced Institute of Science and Technology製のテープキャスタ(tape caster)に通過させた。得られたNiO−YSZ基板は、YSZ粉末分散ゾル及び工程1−1で得られたYSZ塩溶液で以下の工程に従ってスピンコートがなされた。
【0042】
i)10重量%YSZ粉末分散ゾルでスピンコーティング;
ii)5重量%YSZ粉末分散ゾルでスピンコーティング;及び
iii)YSZ塩溶液(2mol/L)でスピンコーティング。
【0043】
スピンコーティングの各工程は、1000〜4000rpmの速度で40秒間行なわれ、得られた基板は、各工程において300℃で乾燥された。この場合、工程iii)で形成されたYSZ塩溶液層の厚さは、50〜400nmの範囲内であった。
【0044】
0.5〜1μmの厚さを有するYSZ薄膜がNiO−YSZ基板上に形成されている構造を得るため、得られたスピンコート基板は800℃で4時間焼成された。
【0045】
図2A及び2Bは、それぞれ、工程1−1で調製された15重量%のナノ粉末を含むYSZ粉末分散ゾルを用いて1度スピンコーティングした後に800℃で焼成されることにより得られたYSZ薄膜の表面及び断面のSEM写真を示す。図2A及び2Bに示すように、YSZ薄膜は均一で、約90%の密度を示す。
【0046】
図3A及び3Bは、それぞれ、実施例1で得られたYSZ薄膜の表面及び断面のSEM写真を示す。図3A及び3Bに示すように、YSZ薄膜は、良好な均一性と、クラック又はピンホールのないほぼ100%の密度を示す。
【0047】
図4は、様々な温度での金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のX線回折(XRD)パターンを示す。YSZの主要なピークが300〜1200℃の広い温度範囲に現れることが図4から理解することができ、このことは相形成が生じていることを意味している。図5は、800℃で金属酸化物塩溶液の熱処理により得られたYSZ粉末のラマンスペクトルを示す。立方相が現れることが図5から理解することができ、これは800℃の低温でさえ安定である。
【0048】
実施例2 YSZ薄膜構造(2)の調製
2−1.YSZ粉末分散ゾルの調製
第1の塩溶液を得るため、3.3gの硝酸イットリウム六水和物(Y(NO3)3・6H2O)及び20.49gの塩化ジルコニル(IV)八水和物(ZrOCl2・8H2O)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノール及び水が40:40:20(%)の体積比率で混合された混合溶媒に溶解された後、キレート剤として20重量%のアセチルアセトンがそれに添加された。
【0049】
第2の塩溶液を得るため、1重量%のYSZナノ粉末(粒子サイズ:20〜30nm,比表面積:160m2/g,fuelcellmaterials社から入手可能である)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノール及び水40:40:20(%)の体積比率で混合された混合溶媒に分散され、超音波(60%出力)が照射された。
【0050】
YSZ粉末分散ゾルを得るため、第1及び第2の塩溶液は、50:50の体積比率で混合された。
【0051】
2−2.YSZ薄膜構造の調製
工程2−1で得られたYSZ粉末分散ゾルを、実施例1と同様な方法で調製されたNiO−YSZの多孔質基板に、340℃の基板温度、14kVの電圧、基板と針との距離が10cm、流量が0.5mL/h、40分間の条件の静電放電(ESD)を用いることにより、析出させた。
【0052】
NiO−YSZ基板上に形成された0.4μmの厚さを有するYSZ薄膜を得るため、得られた基板は900℃で4時間焼成された。
【0053】
図6A及び6Bは、それぞれ、実施例2で得られたYSZ薄膜についての表面及び断面のSEM写真を示す。YSZ薄膜が良好な均一性と、クラック又はピンホールのない約94%の密度とを示すことが、図6A及び6Bから理解することができる。
【0054】
実施例3 SOFC単セルの調製
3−1 YSZ薄膜構造の調製
1μmの厚さを有するYSZ薄膜が基板に形成されている第1の構造が、スピンコーティングが以下の工程で行われることを除き、実施例1と同様にして調製された。
【0055】
i)10重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
ii)5重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
iii)YSZ塩溶液(2mol/L)で2回スピンコーティング;及び
iv)YSZ塩溶液(1mol/L)で2回スピンコーティング。
【0056】
第1の構造において、工程iii)及びiv)で形成されたYSZ塩溶液層の厚さは、50〜400nmの範囲内であった。
【0057】
さらに、0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜が基板に形成されている第2の構造が、スピンコーティングが以下の工程で行われることを除き、実施例1と同様にして調製された。
【0058】
i)5重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
ii)2.5重量%YSZ粉末分散ゾルで1回スピンコーティング;
iii)YSZ塩溶液(2mol/L)で2回スピンコーティング;及び
iv)YSZ塩溶液(1mol/L)で2回スピンコーティング。
【0059】
第2の構造において、工程iii)及びiv)で形成されたYSZ塩溶液層の厚さは、70〜150nmの範囲内であった。
【0060】
3−2 SOFC単セルの調製
第1及び第2のYSZ薄膜構造それぞれは、2×2cmのサイズで裁断され、その後、電解質−カソード複合体として提供される。
【0061】
スラリーを得るため、2〜3μmの粒子サイズを有するSSC粉末(SEIMI Chemical社)は、室温で約6時間粉砕された。カソード、電解質及びアノードを含むSOFC単セルを製造するため、スラリーは、各電解質−カソード複合体上で1×1のパターンでスクリーン印刷され、その後、800℃で焼成された。SSCアノードの一般的な焼成温度が1000℃以上であるにも拘らず、電解質−カソード複合体は、電解質の最終焼成温度が800℃であるために、800℃で焼成された。
【0062】
図7A及び7Bは、実施例3で得られた0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜の表面及び断面のSEM写真をそれぞれ示す。YSZ薄膜が良好な均一性と、クラック又はピンホールのないほぼ100%の密度を示すことが、図7A及び7Bから理解することができる。
【0063】
実験的な実施例1 ガス透過性
実施例3で調製された1μmの厚さを有するYSZ薄膜及び比較例としてのNiO−YSZ基板は、空気中(Journal of Powder Sources,140:226−234(2005)参照)で多孔度計(Porous Materials Inc.,U.S.A.)を用いて測定が施された。
【0064】
その結果、実施例3で調製されたYSZ薄膜は、ガス透過を全く生じなかった(図8参照)ことが見出された。それゆえ、発明の薄膜は優れたガス気密性を示すことを理解することができる。
【0065】
実験的な実施例2 構造安定性
実施例3で調製された1μmの厚さを有するYSZ薄膜を含むSOFC単セルは、750℃での開回路電圧(OCV)の測定がなされ、その結果が図9Aに示される。さらに、実施例3で調製された0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜を含むSOFC単セルは、650℃での開回路電圧(OCV)の測定がなされ、その結果が図9Bに示される。
【0066】
1μm及び0.5μmの厚さを有するYSZ薄膜のOCVは、それぞれ、1.08V及び1.03Vであることが、図9A及び9Bから理解することができ、そして、発明のYSZ薄膜は、SOFCの電解質として安定に作動した。
【0067】
発明は前述の詳細な実施形態について記載されているが、様々な修正及び変更が当業者により発明に対してなされて良く、それも添付された請求項によって規定された発明の範囲内を満足することが、認識されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、
(2)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、前記金属酸化物塩溶液に分散させる工程と
を含む、金属酸化物粉末分散ゾルを調製する方法。
【請求項2】
第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、サマリア(samaria)がドープされた酸化セリウム(SDC)、ガドリア(gadolia)がドープされた酸化セリウム(GDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、ストロンチウムマンガンドープのランタン没食子酸塩(LSGM)、及び銀イットリアドープの酸化ビスマス(YDB)からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
第1及び第2の金属酸化物の両方は、YSZである、請求項1の方法。
【請求項4】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有する、請求項1の方法。
【請求項5】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準として1〜50重量%の量で使用される、請求項1の方法。
【請求項6】
(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、
(2)金属酸化物粉末分散ゾルを調製するため、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、金属酸化物塩溶液に分散させる工程と、
(3)金属酸化物粉末分散ゾルで多孔質基板を被覆する工程と、
(4)得られた基板を、工程(1)で調製された金属酸化物塩溶液で被覆する工程と、
(5)金属酸化物薄膜構造を調製するために得られた基板を焼成する工程と
を含む、金属酸化物薄膜構造を製造する方法。
【請求項7】
様々な含有量を持つ、2又はそれ以上の金属酸化物粉末分散ゾルが工程(2)で調製され、かつ工程(3)で使用された多孔質基板がそれを用いて様々な程度に被覆される、請求項6の方法。
【請求項8】
工程(1)において、第1の金属酸化物が異なる濃度を持つ2又はそれ以上の金属酸化物塩溶液を調製し、かつ工程(4)において、基板はそれぞれの金属酸化物塩溶液で様々な程度で被覆される、請求項6の方法。
【請求項9】
第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、サマリア(samaria)がドープされた酸化セリウム(SDC)、ガドリア(gadolia)がドープされた酸化セリウム(GDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、ストロンチウムマンガンドープのランタン没食子酸塩(LSGM)、及び銀イットリアドープの酸化ビスマス(YDB)からなる群より選択される、請求項6の方法。
【請求項10】
第1及び第2の金属酸化物の両方は、YSZである、請求項6の方法。
【請求項11】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有する、請求項6の方法。
【請求項12】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物塩溶液に、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準として1〜50重量%の量で分散される、請求項6の方法。
【請求項13】
工程(3)及び(4)における被覆は、スピンコーティング、浸漬、スプレー熱分解、静電塗装めっき(electro-static spray deposition)(ESD)、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される方法により行われる、請求項6の方法。
【請求項14】
工程(3)又は(4)は、1回より多く繰り返される、請求項6の方法。
【請求項15】
金属酸化物薄膜構造は、多孔質基板上に形成された0.1〜30μmの厚さを有する金属酸化物薄膜を有する、請求項6の方法。
【請求項16】
工程(5)での焼成温度は、600℃あるいはそれ以上である、請求項6の方法。
【請求項17】
多孔質基板は、多孔質金属セラミック複合体、多孔質セラミック絶縁体、多孔質金属複合体、多孔質シリコン複合体及び多孔質アルミナからなる群より選択される、請求項6の方法。
【請求項18】
請求項6〜17のいずれか1項記載の方法によって製造された金属酸化物薄膜構造。
【請求項19】
請求項18の金属酸化物薄膜構造を含む固体酸化物燃料電池。
【請求項1】
(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、
(2)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、前記金属酸化物塩溶液に分散させる工程と
を含む、金属酸化物粉末分散ゾルを調製する方法。
【請求項2】
第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、サマリア(samaria)がドープされた酸化セリウム(SDC)、ガドリア(gadolia)がドープされた酸化セリウム(GDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、ストロンチウムマンガンドープのランタン没食子酸塩(LSGM)、及び銀イットリアドープの酸化ビスマス(YDB)からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
第1及び第2の金属酸化物の両方は、YSZである、請求項1の方法。
【請求項4】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有する、請求項1の方法。
【請求項5】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準として1〜50重量%の量で使用される、請求項1の方法。
【請求項6】
(1)酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第1の金属酸化物を含む金属酸化物塩溶液を調製する工程と、
(2)金属酸化物粉末分散ゾルを調製するため、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、ランタン没食子酸塩、バリウムセラート、ジルコン酸バリウム、酸化ビスマス、及びそれらにドープのなされた形態よりなる群から選択される第2の金属酸化物のナノ粉末を、金属酸化物塩溶液に分散させる工程と、
(3)金属酸化物粉末分散ゾルで多孔質基板を被覆する工程と、
(4)得られた基板を、工程(1)で調製された金属酸化物塩溶液で被覆する工程と、
(5)金属酸化物薄膜構造を調製するために得られた基板を焼成する工程と
を含む、金属酸化物薄膜構造を製造する方法。
【請求項7】
様々な含有量を持つ、2又はそれ以上の金属酸化物粉末分散ゾルが工程(2)で調製され、かつ工程(3)で使用された多孔質基板がそれを用いて様々な程度に被覆される、請求項6の方法。
【請求項8】
工程(1)において、第1の金属酸化物が異なる濃度を持つ2又はそれ以上の金属酸化物塩溶液を調製し、かつ工程(4)において、基板はそれぞれの金属酸化物塩溶液で様々な程度で被覆される、請求項6の方法。
【請求項9】
第1及び第2の金属酸化物は、それぞれ、サマリア(samaria)がドープされた酸化セリウム(SDC)、ガドリア(gadolia)がドープされた酸化セリウム(GDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、ストロンチウムマンガンドープのランタン没食子酸塩(LSGM)、及び銀イットリアドープの酸化ビスマス(YDB)からなる群より選択される、請求項6の方法。
【請求項10】
第1及び第2の金属酸化物の両方は、YSZである、請求項6の方法。
【請求項11】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、1〜990nmの平均粒子サイズを有する、請求項6の方法。
【請求項12】
第2の金属酸化物ナノ粉末は、金属酸化物塩溶液に、金属酸化物粉末分散ゾルの総重量を基準として1〜50重量%の量で分散される、請求項6の方法。
【請求項13】
工程(3)及び(4)における被覆は、スピンコーティング、浸漬、スプレー熱分解、静電塗装めっき(electro-static spray deposition)(ESD)、及びそれらの組み合わせよりなる群から選択される方法により行われる、請求項6の方法。
【請求項14】
工程(3)又は(4)は、1回より多く繰り返される、請求項6の方法。
【請求項15】
金属酸化物薄膜構造は、多孔質基板上に形成された0.1〜30μmの厚さを有する金属酸化物薄膜を有する、請求項6の方法。
【請求項16】
工程(5)での焼成温度は、600℃あるいはそれ以上である、請求項6の方法。
【請求項17】
多孔質基板は、多孔質金属セラミック複合体、多孔質セラミック絶縁体、多孔質金属複合体、多孔質シリコン複合体及び多孔質アルミナからなる群より選択される、請求項6の方法。
【請求項18】
請求項6〜17のいずれか1項記載の方法によって製造された金属酸化物薄膜構造。
【請求項19】
請求項18の金属酸化物薄膜構造を含む固体酸化物燃料電池。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2012−505820(P2012−505820A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532008(P2011−532008)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004401
【国際公開番号】WO2010/044538
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(304039548)コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004401
【国際公開番号】WO2010/044538
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(304039548)コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (36)
【Fターム(参考)】
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