説明

金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び光拡散材

【課題】粒径、分散性を制御した金属酸化物微粒子を樹脂中に分散させ、光拡散性、または屈折率を向上させた硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明硬化性樹脂組成物は、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する有機化合物(A)、1分子中に2個以上のSiH基を含有するケイ素化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、及び、金属酸化物微粒子(D)を含む金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物微粒子を含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び光拡散材に関するものであり、更に詳しくは光拡散材料、または透明高屈折率材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビやDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)などの画面が広く普及している。しかし、これらの画面にはシンチレーションと呼ばれる画質の低下が起きることがある。これは小さな光源から出射された光が充分に拡散しないために起きる現象である。
【0003】
このシンチレーションを抑えるために、スクリーン用材料に、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の微粒子を添加した、光拡散材料が知られている。中でも酸化亜鉛は透明性が高く、こうした光拡散材料用の光拡散性微粒子として使用されている。一般にこれらの光拡散性微粒子ではその微粒子の二次粒径を100nm以上にしなければ光拡散が起こりにくいことが知られており、このような二次粒径とするために、光拡散性微粒子を一定程度凝集させることが必要である。
【0004】
しかし、このような凝集を制御することは一般に非常に困難であり、凝集し過ぎてしまうと、保存や硬化作業中に金属微粒子が沈殿してしまうため、樹脂中に均一に分散することが非常に困難であるという問題があった。
【0005】
一方、白色発光ダイオード(LED)が、従来の白熱電球の1/3〜1/10の消費電力、10倍近い長寿命を達成できることから、次世代の照明として注目されており、携帯電話やパソコンなどのバックライトとしても非常に身近なものとなっている。このようなLEDからの光の取り出しについては、更にその取り出し効率を向上させることが重要であるが、一般にLED封止剤として使用されるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂は、その屈折率が1.4〜1.5前後と、一般に高屈折率材料からなるLEDの発光領域と比べて低いため、LEDの光がこれらの界面で全反射してしまい、外部への光取り出し効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
こうしたことから、簡便に、これらの封止樹脂の透明性、耐光性等の樹脂特性を維持しつつ屈折率を高くする技術の開発が望まれており、そのひとつとして、金属微粒子をこれらの樹脂中に分散する方法が検討されている。例えば、金属酸化物である、酸化ジルコニウムや酸化チタンは屈折率が2.0以上と高く、これらの粒子を20nm以下にすることにより、透明性を確保しながら屈折率を上昇させることができると考えられる。
【0007】
例えば、特許文献1には、可視光域において、透明、且つ、1.55以上の屈折率を有するナノ粒子−樹脂複合材料である、シロキサン架橋生成物中に無機ナノ粒子が分散されて成り、無機ナノ粒子は有機化合物で被覆されており、可視光域において透明で1.55以上の屈折率を有するナノ粒子−樹脂複合材料として、シロキサン架橋生成物は、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を有し、且つ、反応性官能基を含んだシロキサン化合物の架橋に基づき形成されており、有機化合物は、無機ナノ粒子表面と共有結合あるいはイオン結合を形成する官能基、及び、シロキサン化合物と親和性を示す有機基を有し、分子量が1×103以下であるナノ粒子−樹脂複合材料が記載されている。
【0008】
また、例えば、特許文献2には、耐熱性、耐紫外線性、光学的透明性、強靭性、接着性に優れ、高い屈折率で半導体発光素子からの光取り出し効率を向上させた硬化物が得られる、良好な硬化性を有する光関連デバイスの封止用樹脂組成物として、(イ)平均組成式:R1a(OX)bSiO(4-a-b)/2(式中、R1は独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、Xは独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、aは1.00〜1.5の数、bは0<b<2の数であり、但し、1.00<a+b<2である)で表されるポリスチレン換算の重量平均分子量が3×103以上のオルガノポリシロキサン、(ロ)アルミニウムキレート化合物、及び(ハ)金属酸化物ゾル微粒子を含有する光関連デバイス封止用樹脂組成物が記載されている。
【0009】
しかし、上述したように、このような金属酸化物微粒子の凝集を制御することは困難であり、特に、添加した樹脂材料を透明なものとするために、前記20nm以下の超微粒子を凝集させることなく、均一に分散させることは非常に困難であるという問題があった。
【0010】
このように金属微粒子は様々な用途に利用できるものの、分散性、粒径、樹脂への親和性の制御が非常に難しいという問題があった。
【特許文献1】特開2007−302799号公報
【特許文献2】特開2008−013623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物と、ヒドロシリル化触媒とを含有する硬化性組成物において、粒径、分散性を制御した金属酸化物微粒子を樹脂中に分散させ、光拡散性、または屈折率を向上させた硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題に鑑み、金属微粒子を含む硬化性樹脂中の、金属微粒子の分散性制御、粒径制御、樹脂への親和性の制御、の各々の改善につき、鋭意検討した。即ち、本発明者らは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する有機化合物(A)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物(B)、及びヒドロシリル化触媒を含有する組成物に金属酸化物微粒子(D)を分散させ、この硬化組成物につき鋭意検討し、当該組成物の硬化物が奏す優れた耐熱性・耐光性を維持しつつ、光拡散性が向上した光拡散材料や、透明高屈折率材料が得られること、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する有機化合物(A)、1分子中に2個以上のSiH基を含有するケイ素化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、及び、金属酸化物微粒子(D)を含む金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様は、前記金属酸化物微粒子(D)の数平均粒子径を、0.5〜20nmとすることである。
【0015】
好ましい実施態様は、前記金属酸化物微粒子(D)を、酸化亜鉛とすることである。
【0016】
好ましい実施態様は、前記金属酸化物微粒子(D)を、加水分解性基含有シラン化合物、カルボキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、メルカプト基含有化合物、リン酸基含有化合物、スルフォン酸基含有化合物、及び配位性高分子からなる群から選ばれる1種以上を含む表面修飾剤(S)により表面修飾された金属酸化物微粒子(D)とすることである。
【0017】
好ましい実施態様は、前記表面修飾剤(S)を、下記一般式1であらわされるSi−O−Si結合を有しない加水分解性基含有シラン化合物(S−1)、及び下記一般式2であらわされるSi−O−Si結合を有する加水分解性基含有シラン化合物(S−2)、を含む表面修飾剤(S)とすることである。
【0018】
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜18の1価の、Si−O−Si結合を有しない有機基;Xは加水分解性基;aは1、2、または3である。)
【0019】
【化6】

(式中、R2は炭素数1〜18の1価の、Si−O−Si結合を有する有機基;Xは加水分解性基;aは1、2、または3である。)
【0020】
好ましい実施態様は、前記表面修飾剤(S)を、前記金属酸化物微粒子(D)1モルに対して、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−1)、及び前記加水分解性基含有シラン化合物(S−2)を併せて0.1〜5モル含むものとすることである。
【0021】
好ましい実施態様は、前記表面修飾剤(S)を、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−1)と、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−2)とのモル比が、(S−1):(S−2)=1:0.05〜1:20の範囲含むものとすることである。
【0022】
好ましい実施態様は、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−1)の炭素数1〜18の有機基R1を、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシルメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び2−シアノエチル基からなる群より選ばれる1種以上の有機基であるものとすることである。
【0023】
好ましい実施態様は、前記有機化合物(A)を、脂肪族系化合物、イソシアヌル環含有化合物、及び前記一般式3で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機化合物であるものとすることである。
【0024】
【化7】

(式中、R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)
【0025】
好ましい実施態様は、前記有機化合物(A)の分子量を、2000以下であるものとすることである。
【0026】
好ましい実施態様は、前記オルガノシロキサン(B)が、下記一般式4で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノシロキサンであるものとすることである。
【0027】
【化8】

(式中、R2は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
【0028】
好ましい実施態様は、前記ケイ素化合物(B)を、炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(B−1)と、1分子中に2個以上のSiH基を有するオルガノシロキサン(B−2)とのヒドロシリル化反応により得られる化合物とすることである。
【0029】
また、本発明は、前記金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。このような本発明の硬化物は、光拡散材として好適に使用される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の硬化性組成物は、含有する金属酸化物微粒子の分散性に優れ、粒径制御性にも優れ、樹脂への親和性にも優れた金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物なので、光拡散性、または屈折率を向上させた硬化物として利用できる硬化性樹脂組成物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物)
本発明の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物は、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する有機化合物(A)、1分子中に2個以上のSiH基を含有するケイ素化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、及び、金属酸化物微粒子(D)を含む金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物である。
【0032】
前記有機化合物(A)と前記ケイ素化合物(B)との混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、ケイ素化合物(B)中のSiH基の数(Y)の有機化合物(A)中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比において、好ましい範囲の下限はY/X≧0.3、より好ましくはY/X≧0.5、さらに好ましくはY/X≧0.7であり、好ましい範囲の上限はY/X≦3、より好ましくはY/X≦2、さらに好ましくはY/X≦1.5である。好ましい範囲からはずれた場合には十分な強度が得られない場合や、熱劣化しやすくなる場合がある。
【0033】
前記ヒドロシリル化触媒(C)の量は、十分な硬化性を有し、かつ、硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、前記ケイ素化合物(B)成分のSiH基1モルに対して、好ましい下限は、10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい上限は、10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0034】
本発明の硬化性組成物には、硬化遅延剤、接着性改良剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填材を添加してもよい。
【0035】
(硬化物)
本発明の硬化物は、効率的な光拡散材、透明高屈折材として好ましくは利用でき、特に好ましくは光拡散材としての利用である。
【0036】
硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは100℃であり、好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。
【0037】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0038】
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0039】
(有機化合物(A))
本発明に係る有機化合物(A)は、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する有機化合物であり、好ましくは、構成元素としてC、H、N、O、S、及びハロゲンからなる群から選ばれる1種以上の元素のみを含むものである。
【0040】
前記有機化合物(A)は、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を、(A)成分1g当たり、0.001mol以上含有するものが好ましく、0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。言い換えれば、前記炭素−炭素二重結合の数は、平均して前記有機化合物(A)1分子当たり2個以上あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、それが1個以下の場合は、本発明に係るケイ素化合物(B)と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0041】
前記有機化合物(A)は、力学的耐熱性が高いという観点、及び原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性が良好であるという観点からは、分子量が2000以下であるものが好ましく、900未満のものがより好ましく、700未満のものがさらに好ましく、500未満のものが特に好ましい。
【0042】
前記有機化合物(A)は、前記SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合以外の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0043】
前記有機化合物(A)は、有機重合体系化合物、及び有機単量体系化合物からなる1種以上であることが好ましい。
【0044】
前記有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物などが挙げられる。
【0045】
前記有機化合物(A)の具体的な例としては、得られる硬化物の着色が少なく、光学的透明性が高く、耐光性が高いという観点からは、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0046】
最も好ましい前記有機化合物(A)は、耐熱性および透明性が高い前記一般式3で表される化合物である。
【0047】
前記一般式3のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0048】
(SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合)
前記有機化合物(A)中の、SiH基との反応性を有する、前記炭素−炭素二重結合の結合位置は、特に限定されず、分子内のどこに存在してもよいが、有機化合物(A)の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合することで、側鎖に存在していても良い。
【0049】
原料の入手の容易さからは、下記一般式5、又は、下記一般式6で示される基が好ましく、その中でも下記一般式6で示される基が反応性の観点から特に好ましい。
【0050】
【化9】

(式中R3は水素原子あるいはメチル基を表す。)
【0051】
【化10】

【0052】
また、前記SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式7又は、下記一般式8で示される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さ、反応性の観点からは、下記一般式8で示される脂環式の基が特に好ましい。
【0053】
【化11】

(式中R4は水素原子あるいはメチル基を表す。)
【0054】
【化12】

(ケイ素化合物(B))
【0055】
本発明に係るケイ素化合物(B)は、1分子中に2個以上のSiH基を含有するケイ素化合物であり、好ましくは、鎖状、及び/又は、環状オルガノポリシロキサンである。
【0056】
中でも、前記有機化合物(A)との相溶性が良いという観点からは、さらに、前記一般式4で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましく、特に好ましくは、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンである。
【0057】
一般式4中の置換基R2は、C、H、およびOからなる群から選ばれる元素のみから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0058】
(B)成分の分子量は流動性を発現しやすいという観点から、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0059】
前記有機化合物(A)と良好な相溶性を有するという観点、およびケイ素化合物(B)の揮発性が低くなり得られる硬化物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、ケイ素化合物(B)は、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(B−1)と、1分子中に2個以上のSiH基を有する鎖状、及び/又は、環状のポリオルガノシロキサン(B−2)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましく、このようにして得られた、本発明に係るケイ素化合物(B)を含む複数の化合物の混合物はそのまま、本発明の硬化性組成物の成分とすることができ、その状態で本発明に係るヒドロシリル化触媒(C)を含んでいるので特に好ましい。
【0060】
このような、有機化合物(B−1)とポリオルガノシロキサン(B−2)との反応物であるケイ素化合物(B)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの反応物、等を挙げることができる。
【0061】
(有機化合物(B−1))
有機化合物(B−1)は、上述の有機化合物(A)と同様であり、即ち、前記有機化合物(A)の好ましい態様は有機化合物(B−1)についても同様に好ましい。
【0062】
(ヒドロシリル化触媒(C))
本発明に係るヒドロシリル化触媒(C)としては、白金化合物の触媒としては、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)らによって開発された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)らによって開発された白金アルコラート触媒、モディック(Modic)らによって開発された塩化白金−オレフィン複合体等が挙げられ、また、白金化合物以外の触媒としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0063】
これらの中で、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0064】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0065】
(金属酸化物微粒子(D))
本発明に係る金属酸化物微粒子(D)としては、実用性に優れる点で、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化パラジウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ユーロピウム、酸化ディスプロシウム、酸化インジウムスズ、チタン酸バリウム、コバルト酸リチウムから選ばれる1種以上の微粒子が好ましく、紫外線吸収、高屈折率、導電性、高誘電率、光触媒活性などの特性を有する点で酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化インジウムスズ、チタン酸バリウム、コバルト酸リチウムの微粒子がより好ましく、安全性および入手性の点で酸化亜鉛微粒子がもっとも好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。また他の元素を若干量含む、いわゆるドーピングされた材料の微粒子であってもよい。
【0066】
本発明において使用する金属酸化物微粒子(D)の粒子径は、サイズに由来する量子効果が顕著である点、及び樹脂中に分散させた際の透明性に優れる点で、数平均粒子径で0.5〜20nmの範囲が好ましく、1〜10nmの範囲がより好ましい。
【0067】
例えば、酸化亜鉛微粒子の数平均粒子径は、TEM観察において90〜110個程度の粒子の直径を測定し、その和を粒子数で除することにより求めることができる。
【0068】
前記金属酸化物微粒子(D)は、表面修飾剤(S)、即ち、金属酸化物微粒子表面に化学的・物理的に吸着したり結合したりできる化合物で表面修飾されたものであることが、凝集防止の観点から好ましい。
【0069】
(表面修飾剤(S))
前記表面修飾剤(S)としては、加水分解性基含有シラン化合物、カルボキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、メルカプト基含有化合物、リン酸基含有化合物、スルフォン酸基含有化合物、及び配位性高分子からなる群から選ばれる1種以上であることが、微粒子の分散性や安定性を確保するという点で好ましい。前記配位性高分子としては、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等を挙げることができる。これらの中でも、効率が高く強固である点、及び金属酸化物微粒子の表面に起因する物性をコントロールできる点で、加水分解性基含有シラン化合物(以下、シランカップリング剤とも呼ぶ。)が好ましく、樹脂および溶媒への親和性を操作するために、少なくとも1種類以上のシランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0070】
特に好ましい前記表面修飾剤(S)は、樹脂および溶媒への親和性制御の観点から、前記一般式1であらわされるSi−O−Si結合を有しない加水分解性基含有シラン化合物(S−1)、及び前記一般式2であらわされるSi−O−Si結合を有する加水分解性基含有シラン化合物(S−2)、を含むものである。
【0071】
本発明において、金属酸化物微粒子1モルに対して、加水分解性基含有シラン化合物(S−1)と(S−2)とを併せて0.1〜5モル使用することが好ましく、さらに0.2〜2モルの範囲であることがより好ましい。
【0072】
本発明において、金属酸化物微粒子表面を修飾する加水分解性基含有シラン化合物(S−1)と(S−2)とのモル比が、(A):(B)=1:0.05〜1:20の範囲であることが好ましい。
【0073】
上記一般式1、又は一般式2のR1、又はR2は、入手性、及び価格の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシルメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び2−シアノエチル基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、その中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、アリル基が好ましい。またaが2以上の場合、1分子中の複数のRは同一でもよく異なっていてもよい。
【0074】
上記一般式1、又は一般式2の加水分解性基Xは、アルコキシ基、オキシム基、オキシカルボニル基、ハロゲン原子、水素原子などを挙げることができるが、金属酸化物微粒子表面を修飾する際の反応がマイルドである点で、アルコキシ基、オキシム基、及びオキシカルボニル基から選ばれる1種以上であることが好ましく、その中でも、入手性、及び価格の点で、アルコキシ基がより好ましく、炭素数3以下のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0075】
また、上記一般式1、又は一般式2のaは、1、2、又は3であるが、入手性、及び価格の点で、aは、1、又は2であることが好ましい。
【0076】
本発明で使用する上記一般式1、又は一般式2であらわされる加水分解性基含有シラン化合物の好ましい例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0077】
本発明において金属酸化物微粒子と表面修飾剤とを反応させる際、使用する加水分解性基含有シラン化合物(S−2)は特には限定されないが、金属酸化物微粒子の凝集を防止し、かつSi−O結合を有する樹脂中に容易に均一分散でき、かつ樹脂による極性や親和性を制御できる点で、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロピルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,−オクタメチルテトラシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)シランからなる群より選ばれる1種類以上のシラン化合物とのヒドロシリル化反応により合成できるものが挙げられる。中でも入手性および価格の点で1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンであることが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0079】
(BC含有合成物の合成)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、及び冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、及び1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。そこに、トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g、及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、及びトルエンを減圧留去することでBC含有合成物を得た。
【0080】
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた1H−NMRにより、このBC含有合成物を測定したところ、反応生成物として、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものが生成していることがわかった。
【0081】
また、このBC含有合成物を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものを、NMR用チューブに加えて測定し、未反応アリル基由来のメチレン基のピークと、反応アリル基由来のメチレン基のピークから、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて、1H−NMRによりSiH基の含有量であるジブロモエタン換算の官能基価としてジブロモエタン換算でのSiH基価(mmol/g)を求めたところ、8.08mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。
【0082】
上記のように、このBC含有合成物は、混合物であるが、本発明に係る1分子中に2個以上のSiH基を含有するケイ素化合物(B)である下記一般式9であらわされる化合物を主成分として含有し、また、本発明に係るヒドロシリル化触媒(C)である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0083】
【化13】

【0084】
(酸化亜鉛微粒子の合成)
3Lの4つ口フラスコに、KOH44.9g、及びメタノール1.6Lを入れて攪拌し、完全に溶解させることでKOHのメタノール溶液を得た。別の容器に、酢酸亜鉛二水和物87.8gをとり、メタノール0.4Lを加えて溶解させた。この酢酸亜鉛のメタノール溶液をすばやくKOHのメタノール溶液に加え、35℃で10分間攪拌することにより透明な酸化亜鉛微粒子メタノール分散液を得た。この分散液中の酸化亜鉛微粒子の濃度は0.2mol/Lである。
【0085】
得られた酸化亜鉛微粒子分散液を支持膜に付着、乾燥させた後、そのサンプルにつきTEM観察したところ、この酸化亜鉛微粒子の数平均粒子径は5nmであった。
【0086】
(デシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子の合成)
前記酸化亜鉛微粒子メタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)を500mL三口フラスコに入れ、デシルトリメトキシシラン3.85g(LS−5258;信越化学工業(株)製;酸化亜鉛1モルに対して0.37モルに相当)を加え、
60℃で2時間加熱したところ白色沈殿物が生成した。次に、上澄み液を取り除き、この白色沈殿物にヘキサン50mLを加えたところ、デシル基の導入により溶媒への親和性が向上し、沈殿物は殆ど溶解した。少量の不溶物をろ過により除去した後、このヘキサン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、デシルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子5.3gを無色透明液体として得た。
【0087】
このデシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子の灰分測定を実施した結果、酸化亜鉛の含有量は80wt%であり、収率は100%であった。
【0088】
(フェニルシラン修飾酸化亜鉛微粒子の合成)
前記酸化亜鉛微粒子メタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)を500mL三口フラスコに入れ、フェニルトリメトキシシラン2.62g(Gelest社製;酸化亜鉛1モルに対して0.33モルに相当)を加え、60℃で2時間加熱したところ白色沈殿物が生成した。次に、上澄み液を取り除き、この白色沈殿物にアセトン50mLを加えたところ、フェニル基の導入により溶媒への親和性向上し、沈殿物は殆ど溶解した。少量の不溶物をろ過により除去した後、このアセトン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、フェニルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子4.45gを白色固体として得た。
【0089】
このフェニルシラン表面修飾酸化亜鉛微粒子の灰分測定を実施した結果、酸化亜鉛の含有量は62wt%であり、収率は86%であった。
【0090】
(ヘキシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子の合成)
前記酸化亜鉛微粒子メタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)を
500mL三口フラスコに入れ、ヘキシルトリメトキシシラン2.96g((株)アズマックス製;酸化亜鉛1モルに対して0.33モルに相当)を加え、60℃で2時間加熱したところ白色沈殿物が生成した。次に、上澄み液を取り除き、この白色沈殿物にヘキサン50mLを加えたところ、ヘキシル基の導入により溶媒への親和性向上し、沈殿物は殆ど溶解した。少量の不溶物をろ過により除去した後、このヘキサン溶液から溶媒を留去し、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、ヘキシルトリメトキシシランで表面修飾された酸化亜鉛微粒子3.5gを白色固体として得た。
【0091】
このヘキシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子の灰分測定を実施した結果、酸化亜鉛の含有量は80wt%であり、収率は87%であった。
【0092】
(表面修飾剤(SS)の合成)
100mLの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、及び冷却管をセットした。このフラスコにトルエン10mL、及び1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン16.3mLを入れ60℃で攪拌した。そこに、ビニルトリメトキシシラン7.7mL、トルエン20mL、及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.75mlの混合液を20分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま1時間加温、攪拌した後、未反応の1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、ビニルトリメトキシシラン、及びトルエンを減圧留去することで表面修飾剤(SS)を得た。
【0093】
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた1H−NMRにより、この表面修飾剤(SS)を測定したところ、反応生成物として、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンのSiH基の一部がビニルトリメトキシシランと反応した、下記一般式10で表されるものが生成していることが判った。
【0094】
【化14】

【0095】
(SS修飾酸化亜鉛微粒子の合成)
前記酸化亜鉛微粒子メタノール分散液200mL(酸化亜鉛0.04モル含有)を4つ口フラスコ(容量500mL)に入れ、前記表面修飾剤(SS)2.38g(酸化亜鉛1モルに対して0.16モルに相当)、及びデシルトリメトキシシラン0.42g(LS−5258;信越化学工業(株)製;酸化亜鉛1モルに対して0.04モルに相当)を加え、
60℃で2時間加熱したところ白色沈殿物が生成した。次に、上澄み液を取り除き、得られた白色固体成分を、80℃で10時間減圧乾燥させることにより、1,1,1,3,5,5,5ヘプタメチルシロキサン誘導体、及びデシルトリメトキシシランの混合物で表面修飾された酸化亜鉛微粒子としてSS修飾酸化亜鉛微粒子4.07gを白色固体として得た。
【0096】
このSS修飾酸化亜鉛微粒子の灰分測定を実施した結果、酸化亜鉛の含有量は80wt%であり、収率は100%であった。
【0097】
(実施例1:デシルシシラン修飾酸化亜鉛微粒子)
上記デシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子0.13g(4重量部)をトルエン20mLに分散させたところ、透明な溶液が得られた。この溶液に、前記BC含有合成物2g、及び有機化合物(A)としてトリアリルイソシアヌレート(エボニック デグサ ジャパン社製、TAICROS(登録商標)))1gを加え攪拌した。攪拌後40℃で溶媒を留去し、酸化亜鉛微粒子を微分散させた硬化性樹脂組成物を得た。なおこの有機化合物(A)は、前記一般式3で示される化合物であり、そのR1はアリルであり、分子量は249である。
【0098】
この硬化性樹脂組成物を、厚さ1mmのスペーサーを入れたガラス板入れ、順に、60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間で段階的に加熱した後、ガラス板から硬化物を剥がすことで、フィルム状の硬化物サンプルを作製した。作製したサンプル片を、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 300A)によるヘイズ測定、及び紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製 V−560)による光線透過率により評価した。尚、本発明の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物を、透明材料や光拡散材料として用いた場合には、吸収光が少ないことが重要なので、全光線透過率が90%以上を「◎」、80%以上90%未満を「○」、80%未満を「×」と評価した。
【0099】
(実施例2:フェニルシラン修飾酸化亜鉛微粒子)
実施例1において、デシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子0.13gに代えて、前記フェニルシラン表面修飾酸化亜鉛微粒子0.13gを、トルエン20mLに代えて、アセトン20mLに分散させたこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル片を作成し評価した。
【0100】
(実施例3:ヘキシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子)
実施例1において、デシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子0.13gに代えて、前記ヘキシルシラン表面修飾酸化亜鉛微粒子0.13gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サンプル片を作成し評価した。
【0101】
(実施例4)
実施例1において、デシルシラン修飾酸化亜鉛微粒子0.13gに代えて、前記SS修飾酸化亜鉛微粒子0.13gを、トルエン20mLに代えて、トルエン/イソプロバノール=5/1で混合した溶媒20mLに分散させたこと以外は、実施例1と同様に、サンプル片を作成し評価した。
【0102】
以上、実施例1〜4の結果を表1にまとめて示す。
【0103】
【表1】

【0104】
いずれのサンプルも、90%以上の全光線透過率を有しつつ、高いヘイズ率を有しており、本発明の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物が、効率的な光拡散材料として機能することがわかった。また、金属酸化物微粒子表面の修飾剤の組成を、その微粒子を覆うマトリックスを構成する材料の組成に近づけることにより、さらに透明度の高い複合材料も作成できると考えられることから、透明高屈折材料としての利用も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する有機化合物(A)、1分子中に2個以上のSiH基を含有するケイ素化合物(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、及び、金属酸化物微粒子(D)を含む金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子(D)の数平均粒子径が、0.5〜20nmである請求項1に記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子(D)が、酸化亜鉛である、請求項1、又は2に記載の金属酸化物樹脂硬化性組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子(D)が、表面修飾剤(S)により表面修飾されたものであって、該表面修飾剤(S)が、加水分解性基含有シラン化合物、カルボキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、メルカプト基含有化合物、リン酸基含有化合物、スルフォン酸基含有化合物、及び配位性高分子からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物
【請求項5】
前記表面修飾剤(S)が、下記一般式1であらわされるSi−O−Si結合を有しない加水分解性基含有シラン化合物(S−1)、及び下記一般式2であらわされるSi−O−Si結合を有する加水分解性基含有シラン化合物(S−2)、を含む表面修飾剤(S)である、請求項4に記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜18の1価の、Si−O−Si結合を有しない有機基;Xは加水分解性基;aは1、2、または3である。)
【化2】

(式中、R2は炭素数1〜18の1価の、Si−O−Si結合を有する有機基;Xは加水分解性基;aは1、2、または3である。)
【請求項6】
前記表面修飾剤(S)が、前記金属酸化物微粒子(D)1モルに対して、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−1)、及び前記加水分解性基含有シラン化合物(S−2)を併せて0.1〜5モル含む、請求項5に記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記表面修飾剤(S)が、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−1)と、前記加水分解性基含有シラン化合物(S−2)とのモル比が、(S−1):(S−2)=1:0.05〜1:20の範囲含む、請求項6に記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記加水分解性基含有シラン化合物(S−1)の炭素数1〜18の有機基R1が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシルメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ビニル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、アリル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及び2−シアノエチル基からなる群より選ばれる1種以上の有機基である、請求項5〜7のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機化合物(A)が、脂肪族系化合物、イソシアヌル環含有化合物、及び下記一般式3で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機化合物である、請求項1〜8のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)
【請求項10】
前記有機化合物(A)の分子量が、2000以下である、請求項9に記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記オルガノシロキサン(B)が、下記一般式4で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノシロキサンである、請求項1〜10のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【化4】

(式中、R2は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)
【請求項12】
前記ケイ素化合物(B)が、炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(B−1)と、1分子中に2個以上のSiH基を有するオルガノシロキサン(B−2)とのヒドロシリル化反応により得られる化合物である、請求項1〜10のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化物からなる光拡散材。

【公開番号】特開2010−138270(P2010−138270A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315330(P2008−315330)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】