説明

金融端末、金融端末制御方法、金融端末制御プログラムおよびプログラム記録媒体

【課題】当該金融端末の操作時に、口座を開設した真正なカード所有者の取引情報(暗証番号や口座情報等)の第三者への漏洩の防止が可能な金融端末を提供する。
【解決手段】口座を開設した真正なカード所有者による金融端末の最初の操作時に画面表示される初期画面として、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角それぞれに該当する視野角のみで視認可能な画像情報をそれぞれ画面表示し、該初期画面中の複数の画像情報のうち、該真正なカード所有者が通常の姿勢において視認可能な画像情報を選択することにより、該真正なカード所有者に対する以降の案内画面として画面表示する画像情報の設定視野角を決定する(ステップS4〜S6)。つまり、真正なカード所有者の身体的な特徴に応じて案内画面の画像情報(文字列や数字等)の視野角を狭く設定する。而して、第三者が真正なカード所有者の背後や側面から覗き込んで取引情報を盗み取ることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融端末、金融端末制御方法、金融端末制御プログラムおよびプログラム記録媒体に関し、特に、金融端末例えばATM端末(Automatic Teller Machine:現金自動預け払い端末)操作時の取引情報(暗証番号、口座情報等)の漏洩防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行等の金融機関の店舗やコンビニエンスストア等に設置されている金融端末例えばATM端末(Automatic Teller Machine:現金自動預け払い端末)は、キャッシュカードを使用して、暗証番号の入力や金額情報の入力等の取引情報に関する顧客の操作により、即時に決済が行われるようになってきている。
【0003】
この結果、キャッシュカードが盗難や偽造等の何らかの不正な方法で、真正なカード所有者以外の第三者によって使用される事態が発生すると、金融端末による不正な取引が簡単に行われ兼ねない。このため、金融端末は、一般には、暗証番号等を用いて、真正なカード所有者による操作であるか否かを判別する仕組みを採用して、第三者が金融端末による不正な取引を行うことを防止している。
【0004】
しかしながら、真正なカード所有者による金融端末の操作を、定点から盗撮したり、ショルダーハック(Shoulder Hack)したりして、当該カード所有者の取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み取るという悪質な手口が、近年増加してきている。そこで、金融端末操作時に取引情報(暗証番号や口座情報等)が第三者に漏洩することを防ぐ技術として、例えば特許文献1の特開2000−99801号公報「暗証番号の入力装置」に記載されているように、暗証番号入力用の数字ボタンの画面表示を小さくしたり、あるいは、各数字ボタンの配置位置を入力装置ごとにランダムにしたりすることによって、金融端末の操作者の指の動きや画面表示情報から、暗証番号が第三者に認識されてしまうことを防止するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−99801号公報(第3−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のような技術では、金融端末の近傍に盗撮機器を設置されてしまうと、暗証番号や口座情報等を容易に盗み取られてしまう恐れがある。
【0007】
また、携帯端末やノートPC(Personal Computer)等においては、隣にいる第三者からの覗き込みによって画面の表示情報が盗み見されることを防止するためのフィルタ技術が用いられている。かくのごとき携帯端末やノートPCのフィルタ技術を金融端末にも転用して、金融端末の表示画面の視野角を狭くして、当該金融端末の操作者以外の第三者の覗き込みによって、取引情報(暗証番号や口座情報等)の盗み見を防止しようとすることも可能である。しかしながら、携帯端末やノートPCのように、特定の1人の個人ユーザのみが使用する装置であれば、表示画面の視野角を当該個人ユーザ専用に設定すれば良いが、身体的な特徴(例えば身長等)がそれぞれで異なる不特定多数のユーザが利用するような金融端末例えばATM端末に対しては、1つの特定の視野角のみに限るような設定方法では、当該金融端末を利用し難くしてしまう。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、不特定多数のユーザが利用する金融端末の操作性を損なうことなく、口座を開設した真正なカード所有者の身体的な特徴に応じて当該金融端末の案内画面(表示画面)に画面表示される画像情報(文字列や数字等)の視野角を狭く設定することにより、当該金融端末の操作時において、真正なカード所有者の取引情報(暗証番号や口座情報等)が第三者へ漏洩することをより確実に防止することが可能な金融端末、金融端末制御方法、金融端末制御プログラムおよびプログラム記録媒体を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による金融端末は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)取引用の案内画面に応じて操作することによりキャッシュカードを用いた取引処理を行う金融端末において、前記案内画面として画面表示される画像情報が、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、口座を開設した真正なカード所有者があらかじめ選択した設定視野角に狭めて画面表示される金融端末。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金融端末、金融端末制御方法、金融端末制御プログラムおよびプログラム記録媒体によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0012】
取引情報(暗証番号や口座情報等)の第三者への漏洩は、主として、金融機関や警察を装った詐欺と金融端末(例えばATM端末)操作時における覗き込みによるものとの2つがあるが、本発明は、後者に対処するものであり、金融端末の操作時に、取引情報が不本意に流出することをより確実に抑止することを可能としている。すなわち、金融端末の操作時に、金融端末の案内画面として画面表示される画像(文字列や数字等)の視野角を、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、真正なカード所有者(口座開設者)本人の身体的特徴(例えば身長等)に応じて視認することが可能な設定視野角のみに狭く限定して設定することによって、当該真正なカード所有者とは一般的に身体的な特徴が異なる第三者が、金融端末を操作する当該真正なカード所有者本人の背後や側面から覗き込んで取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み取ることを確実に防止することを可能としていることにある。
【0013】
また、たとえ、第三者が、真正なカード所有者のキャッシュカードを不正に取得して取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み取ったとしても、金融端末の案内画面として画面表示された画像(文字列や数字等)の視野角は、当該真正なカード所有者本人に特有の設定視野角に設定されることになる。したがって、当該真正なカード所有者本人とは身体的な特徴が異なる第三者が、金融端末を使用しようとする場合に、通常の姿勢とは異なり、案内画面を覗き込むような不振な行動を取ることが必要となるので、例えば、振り込め詐欺などにおいて、当該真正なカード所有者の口座に詐欺等でお金を振り込ませた場合であっても、当該口座に振り込まれたお金を不正に引き出し難くなる環境を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る金融端末の構成の一例を示すブロック構成図である。
【図2】本発明に係る金融端末の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図3】本発明に係る金融端末の一例であるATM端末による最初の取引時にタッチパネル付き表示部に画面表示される初期画面の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る金融端末の一例であるATM端末のタッチパネル付き表示部に画面表示する初期画面中の複数種類の画像情報(文字列)ごとの設定視野角の属性の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る金融端末の一例であるATM端末のタッチパネル付き表示部に4種類の視野角A,B,C,Dでそれぞれ画面表示された初期画面の文字列のうち、真正なカード所有者が視認することができる表示画面の画像情報(文字列)が視野角Bの文字列のみである場合を例示する説明図である。
【図6】本発明に係る金融端末の一例であるATM端末のタッチパネル付き表示部に画面表示された初期画面中の4種類の文字列のうち、視認することができた文字列の指示に応じて真正なカード所有者が数字を入力する操作を説明するための説明図である。
【図7】本発明に係る金融端末の一例であるATM端末のタッチパネル付き表示部に画面表示した初期画面において真正なカード所有者が選択した視野角に基づいて以降の取引用の案内画面をタッチパネル付き表示部へ画面表示する動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による金融端末、金融端末制御方法、金融端末制御プログラムおよびプログラム記録媒体の好適な実施例について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による金融端末および金融端末制御方法について説明するが、かかる金融端末制御方法をコンピュータにより実行可能な金融端末制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、金融端末制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0016】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、金融端末例えばATM端末の操作時に、口座を開設した真正なカード所有者の取引情報(暗証番号や口座情報等)を第三者に盗み取られることを防止するために、口座を開設した真正なカード所有者本人が金融端末を一番最初に操作する際に、金融端末の表示画面に表示される案内用の画像情報(文字列や数字等)の視野角を、当該真正なカード所有者が金融端末操作時における通常の姿勢で視認することが可能な視野角に当該真正なカード所有者本人が選択することによって、以降の案内画面の画像情報(文字列や数字等)を選択した当該視野角により画面表示するように設定することを特徴としている。これにより、金融端末の操作時において、通常の姿勢では、真正なカード所有者が、金融端末の表示画面に画面表示された案内用の画像情報(文字列や数字等)を視認することが可能であり、当該真正なカード所有者とは一般的に身体的な特徴が異なる第三者によって、当該真正なカード所有者による操作時の取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み取られないようにすることができる。
【0017】
つまり、本発明は、身体的な特徴(例えば身長等)が異なる不特定多数のユーザが利用する金融端末例えばATM端末において、当該金融端末の案内画面を画面表示する際の画像情報(文字列や数字等)の視野角を、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、口座開設後の最初の金融端末操作時において真正なカード所有者があらかじめ選択した設定視野角に狭めて設定することにより、一般的に身体的な特徴が異なる第三者においては視認することができず、真正なカード所有者のみが、通常の姿勢で、案内画面の情報を視認することができる状態に設定することを主要な特徴としている。これにより、当該真正なカード所有者(口座開設者)とは身体的な特徴が一般には異なる第三者が、通常の姿勢で、当該真正なカード所有者の取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み見ることを確実に防止することができる。
【0018】
(本発明の実施形態)
次に、本発明に係る金融端末の構成についてその一例を、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る金融端末の構成の一例を示すブロック構成図であり、金融端末の一例としてATM端末(Automatic Teller Machine:現金自動預け払い端末)を例にとって、その斜視図と制御系のブロック構成図とを示している。
【0019】
図1の斜視図に示すように、金融端末の一例を示すATM端末10は、カードリーダ挿入口11、印字用紙排出口12、紙幣入出金口13、硬貨入出金口14、通帳挿入口15、音声出力部16、タッチパネル付き表示部17、および、送受話器19を少なくとも備えている。また、ATM端末10の制御系として、図1のブロック構成図に示すように、カードリーダ部21、印字部22、紙幣入出金部23、硬貨入出金部24、通帳処理部25、音声案内部26、表示部27、タッチパネル入力部28、主制御部30、メモリ部31、および、インタフェース部32を少なくとも備えている。
【0020】
カードリーダ部21は、金融機関が発行したキャッシュカード(金融機関コード、顧客口座情報等が記録されたカード)をカードリーダ挿入口11に挿入したり、あるいは、排出したりするとともに、カードリーダ挿入口11に挿入されたキャッシュカードの記録内容を読み取る部位である。印字部22は、通帳処理部25の処理結果に応じて通帳挿入口15に挿入された通帳に印字したり、また、取引結果の明細を取引明細書として印字して、印字した取引明細書を印字用紙排出口12から排出したりする部位である。
【0021】
紙幣入出金部23、硬貨入出金部24は、それぞれ、紙幣入出金口13、硬貨入出金口14から入金された紙幣や硬貨の真偽を判定し、計数を行って金種別金庫に収納したり、あるいは、紙幣や硬貨を金種別金庫から繰り出して、紙幣入出金口13、硬貨入出金口14から出金したりする部位である。
【0022】
通帳処理部25は、通帳挿入口15に通帳を挿入したり排出したりするとともに、通帳挿入口15に挿入された通帳に記帳すべき情報をメモリ部31から読み出して印字形式に編集するとともに、印字頁行を検出したり、改頁したりした後、印字部22により、通帳に印字する部位である。音声案内部26は、取引手順を案内する音声情報を音声出力部16から出力して、ユーザに対して報知する部位である。
【0023】
表示部27は、ユーザが取引操作を行うための各種の案内画面を編集して、タッチパネル付き表示部17に画面表示して、ユーザに対して提示する部位である。この表示部27は、主制御部30とともに、本発明の主要部を構成しており、口座を開設した真正なカード所有者が当該ATM端末10による取引を開始する最初の操作時において、タッチパネル付き表示部17に画面表示する案内画面中の画像情報(文字列や数字等)の視野角としてあらかじめ定めた複数種類の設定視野角の中から、当該真正なカード所有者が選択した設定視野角の範囲内においてのみ視認することができる画像情報(文字列や数字等)によって取引用の案内画面を画面表示するように制御する。なお、タッチパネル付き表示部17は、タッチパネルを前面に取り付けた液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display Panel)等からなっている。
【0024】
タッチパネル入力部28は、タッチパネル付き表示部17に表示されている画像(文字列や数字)の中からユーザが指やペンによって画面に軽くタッチすることによって、画面上のタッチ位置を検出する部位であり、該タッチ位置から案内画面上でユーザが選択した画像情報(文字列や数字等)を特定する。また、任意の文字列をペン入力することも可能としている。
【0025】
メモリ部31は、ATM端末10の各種の制御を行うための金融端末制御プログラムを格納したり、上位装置(ホストコンピュータ)から取得した情報やユーザの取引内容等を記憶したりする部位である。メモリ部31は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク装置等からなっている。また、インタフェース部32は、上位装置(ホストコンピュータ)と接続し、各種情報の送受信を行う部位である。
【0026】
なお、主制御部30は、メモリ部31に格納されている金融端末制御プログラムの動作に応じて、ATM端末10内の各部位を制御し、ATM端末10の全体の動作を制御する中枢部である。送受話器19は、ハンドセットであり、ユーザは、上位装置(ホストコンピュータ)との間でインタフェース部32を介して音声による入出力を行うことができる。
【0027】
(実施形態の動作の説明)
次に、本発明に係る金融端末の一例として図1に示したATM端末10の動作の一例について、図2のフローチャートを用いて説明する。図2は、本発明に係る金融端末の動作の一例を説明するフローチャートであり、本発明に係る金融端末制御方法の一例として、真正なカード所有者(口座開設者)の図1のATM端末10を用いた最初の取引時において、当該ATM端末10のタッチパネル付き表示部17に案内画面として画面表示される画像情報(文字列や数字等)の視野角を当該真正なカード所有者が選択するまでの手順について示している。
【0028】
まず、ATM端末10は、当該ATM端末10による取引を行おうとするユーザに対して、当該ユーザが携行するキャッシュカードをカードリーダ挿入口11に挿入することを案内する案内画面を、表示部27によって、タッチパネル付き表示部17に画面表示する(ステップS1)。当該ATM端末10による取引を行おうとするユーザが、案内画面にしたがって、キャッシュカードをカードリーダ挿入口11に挿入すると、カードリーダ部21によって、挿入されたキャッシュカードの記録内容(金融機関コード、顧客口座情報等)が読み取られる(ステップS2)。
【0029】
読み取られたキャッシュカードの記録内容(金融機関コード、顧客口座情報等)は、インタフェース部32を介して上位装置(ホストコンピュータ)側に送信され、上位装置(ホストコンピュータ)において、キャッシュカードの正当性が判定されると同時に、当該キャッシュカードによるATM端末10を使用した最初の取引か否かが判別され、その判別結果がインタフェース部32を介して当該ATM端末10に返送されてくる(ステップS3)。上位装置(ホストコンピュータ)から判別結果が返送されてくると、主制御部30において、返送されてきた上位装置(ホストコンピュータ)の判別結果が解釈され、正当なキャッシュカードによるATM端末10を使用した最初の取引であるとの判別結果が得られた場合(ステップS3のYES)、主制御部30は、当該ユーザは真正なカード所有者であり、かつ、当該真正なカード所有者によるATM端末10を用いた最初の取引であるものと判断して、表示部27を制御して、図3に例示するような初期画面を、タッチパネル付き表示部17に画面表示する(ステップS4)。
【0030】
図3は、本発明に係る金融端末の一例であるATM端末による最初の取引時にタッチパネル付き表示部17に画面表示される初期画面の一例を示す模式図であり、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角の範囲内においてのみそれぞれを視認することが可能な複数の画像情報(文字列)として、それぞれの視野角ごとに異なるユニークな文字列を画面表示し、ユーザが視認することが可能な文字列を選択することによって、今後の取引用の情報を画面表示する際の設定視野角を決定するために用いる案内画面の一例を示している。なお、図3には、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角として、視野角A,B,C,Dの4種類とし、それぞれの設定視野角においてのみそれぞれに対応する画像情報(文字列)を視認することができるという表示方法によって画面表示されている例を示している。例えば、ユーザがATM端末10を操作する際の通常の姿勢において視野角Aの文字列を視認することができる場合には、当該ユーザは、「操作画面に「1472」と入力してください。」の文字列のみが画面表示されているように見え、また、ユーザが視野角Bの文字列を視認することができる場合には、当該ユーザは、「操作画面に「2468」と入力してください。」の文字列のみが画面表示されているように見える。
【0031】
タッチパネル付き表示部17に画面表示された初期画面において、ユーザが視認することができたいずれかの設定視野角に該当する文字列にて指示されている数字列を入力すると、タッチパネル入力部28は、入力された数字列を読み取り(ステップS5)、主制御部30に通知する。主制御部30は、入力された数字列に該当する設定視野角を判別し、判別した設定視野角が、ATM端末10を用いた今後の取引の操作時に真正なカード所有者であるユーザに対して画面表示する案内画面の画像情報(文字列や数字等)の視野角であるものとして決定する(ステップS6)。例えば、図3の初期画面中の第2列目に画面表示されている「操作画面に「2468」と入力してください。」の文字列がユーザに視認された場合には、当該ユーザは初期画面の案内に応じて「2468」という数字列を入力してくるので、主制御部30は、今後の取引用の案内画面の画像情報(文字列や数字等)を、視野角Bの範囲内においてのみ視認することが可能な表示方法で画面表示することに決定する。
【0032】
しかる後、決定した設定視野角例えば視野角Bは、以降、当該ユーザ(真正なカード所有者)が取引情報(暗証番号や口座情報)を入力するための取引用の案内画面をタッチパネル付き表示部17に画面表示する際の視野角として、上位装置(ホストコンピュータ)に対してインタフェース部32を介して送信され、上位装置(ホストコンピュータ)側に当該ユーザ用の視野角として設定登録される。以降は、当該ユーザによって決定された該当する設定視野角で取引用の案内画面をタッチパネル付き表示部17に画面表示することになる(ステップS7)。なお、ATM端末10を使用した最初の取引ではないとの判別結果が得られた場合(ステップS3のNO)には、タッチパネル付き表示部17に案内画面として画面表示する画像情報(文字列や数字等)の視野角は既に決定して、上位装置(ホストコンピュータ)に設定登録されている場合であり、上位装置(ホストコンピュータ)から当該ユーザ用の視野角情報がインタフェース部32を介してATM端末10に送信されてくるので、送信されてきた当該視野角情報に基づいた視野角にて取引用の案内画面を画面表示する。
【0033】
以降に画面表示される取引用の案内画面としては、例えば、入金、出金、振込等の取引種別の選択、通帳の挿入案内、暗証番号の入力案内、入出金額や振込金額の入力案内、入金時や振込時の現金(紙幣、硬貨)の入金案内、出金時の現金(紙幣、硬貨)の取り出し案内、釣り銭の出金案内、通帳や明細書の排出案内、キャッシュカードの排出案内等がある。
【0034】
ここで、初期画面として表示される4種類の設定視野角すなわち視野角A,B,C,Dは、例えば、図4に示すように、ユーザ個々人の身体的な特徴の一つである身長に基づいて分類する場合であっても良く、タッチパネル付き表示部17の上下方向に4種類の視野角属性を有する画像(文字列や数字の画像)を画面表示するようにしても良い。図4は、本発明に係る金融端末の一例であるATM端末10のタッチパネル付き表示部17に画面表示する初期画面中の複数種類の画像情報(文字列)ごとの設定視野角の属性の一例を示す説明図であり、口座を開設した真正なカード所有者(口座名義人)が最初にATM端末10を操作しようとした際に、視野角A,B,C,Dごとにあらかじめ定めた上下方向に異なる視野角でタッチパネル付き表示部17に画面表示される初期画面の画像情報(文字列)の一例を示している。図4の例では、当該ユーザの身体的な特徴の一つである身長に応じて、通常の姿勢で、当該ユーザの目によって視認することができる視野角が、視野角Bである場合を示している。なお、設定視野角としては、画面の上下方向に狭める形で分割する場合のみに限るものではなく、例えば、画面の左右方向に、あるいは、上下方向と左右方向とを併用する状態で分割するようにしても良い。また、設定視野角として分割する分割数は、前述のような4種類に限るものではなく、身体的な特徴によって視認可能な画像情報が変化するものであれば、如何なる分割数に分割しても良い。
【0035】
図4の初期画面の例では、図5に示すように、あらかじめ定めた設定視野角としてタッチパネル付き表示部17の上下方向に異なる視野角A,B,C,Dに基づいて画面表示された初期画面の4種類の文字列のうち、視野角Bにて画面表示される「操作画面に「2468」と入力してください。」の文字列のみが、口座を開設した真正なカード所有者である当該ユーザによって視認することができる文字列となっている。図5は、タッチパネル付き表示部17に4種類の設定視野角すなわち視野角A,B,C,Dでそれぞれ画面表示された初期画面の画像情報(文字列)のうち、真正なカード所有者が視認することができる初期画面の画像情報(文字列)が視野角Bの文字列のみである場合を例示する説明図である。
【0036】
したがって、ATM端末10のユーザは、初期画面として視認することができる視野角Bの文字列「操作画面に「2468」と入力してください。」に応じて、タッチパネル付き表示部17に画面表示された数字ボタンに順次タッチすることによって、図6に示すように、数字2,4,6,8を順次入力する。図6は、タッチパネル付き表示部17に画面表示された初期画面中の4種類の文字列のうち、視認することができた文字列の指示に応じて、真正なカード所有者が数字を入力する操作を説明するための説明図であり、当該ユーザが視認することができる視野角Bの文字列を参照して数字ボタン2,4,6,8を順次操作している例を示している。
【0037】
初期画面において、図6に示すように、ユーザによって視認することができる設定視野角として視野角Bが示す数字列「2468」が入力されることにより、ATM端末10は、口座を開設した正当なカード所有者である当該ユーザは、視野角Bにて画面表示される文字列のみを視認することができるものと判断して、当該ユーザに対する以降の取引用の案内画面のタッチパネル付き表示部17への画面表示を、図7に示すように、視野角Bのみに限定する。図7は、タッチパネル付き表示部17に画面表示した初期画面において真正なカード所有者が選択した視野角に基づいて以降の取引用の案内画面をタッチパネル付き表示部17へ画面表示する動作を説明するための説明図であり、以降の取引用の案内画面を、初期画面において真正なカード所有者により選択された視野角Bにより画面表示する例を示している。
【0038】
ここで、あらかじめ定めた複数の設定視野角それぞれにおいて画面表示する取引用の案内画面については、各設定視野角すべてにおいて各画面要素を同一位置に配置した画面構成とするのではなく、各設定視野角ごとにいずれか1ないし複数の画面要素を異なる位置に配置するようにしても良い。例えば、案内画面を構成する画面要素のうち、少なくとも、数字を入力するための数字ボタンの配置位置を各設定視野角ごとに異なる位置に配置するようにしても良い。かくのごとく、設定視野角ごとに異なる画面レイアウトとすることによって、覗き見しようとする第三者によってたまたま視認し易い或る視野角の案内画面による操作と、当該視野角とは異なる視野角の案内画面による操作とは、たとえ、同一の取引情報(暗証番号や口座情報等)を入力する場合であったとしても、異なる操作(指の動きやペン先の動き)となるので、取引情報が第三者に漏洩してしまう事態をより確実に防止することができる。
【0039】
(本実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果が得られる。一般に、金融端末例えばATM端末10に入力する取引情報(暗証番号や口座情報等)の第三者への漏洩ルートは、金融機関や警察を装った詐欺と金融端末例えばATM端末10の操作時における覗き込みによるものとの2つが考えられる。本実施形態は、後者の漏洩ルートに対処するものである。
【0040】
金融端末例えばATM端末10の操作時に、ATM端末10の案内画面として画面表示される画像情報(文字列や数字等)の視野角を、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、口座を開設した真正なカード所有者本人の身体的特徴(例えば身長等)に応じて視認することが可能な設定視野角のみに狭く限定して設定することによって、当該真正なカード所有者とは一般的に身体的特徴が異なる第三者が、金融端末例えばATM端末10を操作する当該真正なカード所有者本人の背後や側面から覗き込んで取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み取ることを確実に防止することを可能としていることにある。
【0041】
また、たとえ、第三者が、当該真正なカード所有者のキャッシュカードを不正に取得して取引情報(暗証番号や口座情報等)を盗み取ったとしても、金融端末例えばATM端末10の案内画面として画面表示される画像情報(文字列や数字等)の視野角は、当該真正なカード所有者本人に特有の設定視野角に設定されることになる。したがって、当該真正なカード所有者本人とは身体的な特徴が異なる第三者が金融端末を使用しようとする場合に、通常の姿勢とは異なり、案内画面を覗き込むような不振な行動を取ることが必要となるので、例えば、振り込め詐欺などのように、当該真正なカード所有者の口座に詐欺等でお金を振り込ませた場合であっても、当該口座に振り込まれたお金を不正に引き出し難くする環境を提供することも可能となる。
【0042】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記真正なカード所有者が当該金融端末を初めて操作した際に画面表示される初期画面として、あらかじめ定めた複数種類の前記設定視野角それぞれに該当する視野角のみで視認することが可能な画像情報をそれぞれ画面表示し、前記真正なカード所有者が、該初期画面中の複数の画像情報のうち、当該真正なカード所有者が当該金融端末を操作する際の通常の姿勢において視認することが可能な画像情報を選択することにより、当該真正なカード所有者に対する以降の前記案内画面として画面表示される画像情報の設定視野角が決定される上記(1)の金融端末。
(3)前記案内画面の画像情報を構成する画面要素のうち、いずれか1ないし複数の画面要素の配置位置が、複数種類の前記設定視野角ごとに異なっている上記(1)または(2)の金融端末。
(4)前記案内画面の画像情報を構成する前記画面要素のうち、少なくとも、数字を入力するための数字ボタンの配置位置が、複数種類の前記設定視野角ごとに異なっている上記(3)の金融端末。
(5)取引用の案内画面に応じて操作することによりキャッシュカードを用いた取引処理を行う金融端末を制御する金融端末制御方法であって、前記案内画面として画面表示される画像情報を、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、口座を開設した真正なカード所有者があらかじめ選択した設定視野角に狭めて画面表示する金融端末制御方法。
(6)前記真正なカード所有者が当該金融端末を初めて操作した際に画面表示される初期画面として、あらかじめ定めた複数種類の前記設定視野角それぞれに該当する視野角のみで視認することが可能な画像情報をそれぞれ画面表示し、前記真正なカード所有者が、該初期画面中の複数の画像情報のうち、当該真正なカード所有者が当該金融端末を操作する際の通常の姿勢において視認することが可能な画像情報を選択することにより、当該真正なカード所有者に対する以降の前記案内画面として画面表示される画像情報の設定視野角を決定する上記(5)の金融端末制御方法。
(7)前記案内画面の画像情報を構成する画面要素のうち、いずれか1ないし複数の画面要素の配置位置を、複数種類の前記設定視野角ごとに異なった位置に配置する上記(5)または(6)の金融端末制御方法。
(8)前記案内画面の画像情報を構成する前記画面要素のうち、少なくとも、数字を入力するための数字ボタンの配置位置を、複数種類の前記設定視野角ごとに異なった位置に配置する上記(7)の金融端末制御方法。
(9)上記(5)ないし(8)のいずれかの金融端末制御方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施する金融端末制御プログラム。
(10)上記(9)の金融端末制御プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録しているプログラム記録媒体。
【符号の説明】
【0043】
10 ATM端末
11 カードリーダ挿入口
12 印字用紙排出口
13 紙幣入出金口
14 硬貨入出金口
15 通帳挿入口
16 音声出力部
17 タッチパネル付き表示部
19 送受話器
21 カードリーダ部
22 印字部
23 紙幣入出金部
24 硬貨入出金部
25 通帳処理部
26 音声案内部
27 表示部
28 タッチパネル入力部
30 主制御部
31 メモリ部
32 インタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引用の案内画面に応じて操作することによりキャッシュカードを用いた取引処理を行う金融端末において、前記案内画面として画面表示される画像情報が、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、口座を開設した真正なカード所有者があらかじめ選択した設定視野角に狭めて画面表示されることを特徴とする金融端末。
【請求項2】
前記真正なカード所有者が当該金融端末を初めて操作した際に画面表示される初期画面として、あらかじめ定めた複数種類の前記設定視野角それぞれに該当する視野角のみで視認することが可能な画像情報をそれぞれ画面表示し、前記真正なカード所有者が、該初期画面中の複数の画像情報のうち、当該真正なカード所有者が当該金融端末を操作する際の通常の姿勢において視認することが可能な画像情報を選択することにより、当該真正なカード所有者に対する以降の前記案内画面として画面表示される画像情報の設定視野角が決定されることを特徴とする請求項1に記載の金融端末。
【請求項3】
前記案内画面の画像情報を構成する画面要素のうち、いずれか1ないし複数の画面要素の配置位置が、複数種類の前記設定視野角ごとに異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の金融端末。
【請求項4】
前記案内画面の画像情報を構成する前記画面要素のうち、少なくとも、数字を入力するための数字ボタンの配置位置が、複数種類の前記設定視野角ごとに異なっていることを特徴とする請求項3に記載の金融端末。
【請求項5】
取引用の案内画面に応じて操作することによりキャッシュカードを用いた取引処理を行う金融端末を制御する金融端末制御方法であって、前記案内画面として画面表示される画像情報を、あらかじめ定めた複数種類の設定視野角のうち、口座を開設した真正なカード所有者があらかじめ選択した設定視野角に狭めて画面表示することを特徴とする金融端末制御方法。
【請求項6】
前記真正なカード所有者が当該金融端末を初めて操作した際に画面表示される初期画面として、あらかじめ定めた複数種類の前記設定視野角それぞれに該当する視野角のみで視認することが可能な画像情報をそれぞれ画面表示し、前記真正なカード所有者が、該初期画面中の複数の画像情報のうち、当該真正なカード所有者が当該金融端末を操作する際の通常の姿勢において視認することが可能な画像情報を選択することにより、当該真正なカード所有者に対する以降の前記案内画面として画面表示される画像情報の設定視野角を決定することを特徴とする請求項5に記載の金融端末制御方法。
【請求項7】
前記案内画面の画像情報を構成する画面要素のうち、いずれか1ないし複数の画面要素の配置位置を、複数種類の前記設定視野角ごとに異なった位置に配置することを特徴とする請求項5または6に記載の金融端末制御方法。
【請求項8】
前記案内画面の画像情報を構成する前記画面要素のうち、少なくとも、数字を入力するための数字ボタンの配置位置を、複数種類の前記設定視野角ごとに異なった位置に配置することを特徴とする請求項7に記載の金融端末制御方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の金融端末制御方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施することを特徴とする金融端末制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の金融端末制御プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録していることを特徴とするプログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−60090(P2011−60090A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210408(P2009−210408)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】