説明

針一体型バイオセンサー

【課題】構成が簡単なため強度がありながら組立が容易であり、試料体液の採取が無駄なく確実に行なえ、穿刺針が試薬層に汚染されず、簡易な包装により持ち運びも容易で、使用後も衛生的である針一体型バイオセンサーを提供する。
【解決手段】被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサー本体とが一体となって構成され、該穿刺針は、外部の駆動手段によってバイオセンサー本体を垂直方向に駆動して貫通し、皮膚を突き刺すように構成されている針一体型バイオセンサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針一体型バイオセンサーに関する。さらに詳しくは、皮膚を突き刺して体液(血液等)を得るための穿刺針と、皮膚の表面に取り出された体液を採取し、分析するためのバイオセンサーとを一体化した構成を有する針一体型バイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、糖尿病患者自らが採血して血中のグルコース値である血糖値を測定する場合がある。この場合、患者は採血針を着脱するランセットと称される採血器具を用い、自身の指先や腕などに採血針を刺して採血し、採血した血液を血糖値分析計に移して血糖値を測定している。このような測定方式では、患者は血糖値分析器、ランセット、採血針および分析素子といった数点からなる測定器具の一式を携帯所持し、必要時にそれらを組み合わせて測定しなければならず、操作法も長い訓練を要し、確実な測定を患者自身で行うことができるようになるまでかなりの時間を要する。実際に、指先、前腕以外の部位(腹壁、耳たぶ等)での測定は、熟練者ですら困難である。また、近年においては、より痛みの少ない低侵襲検体供給のニーズから、検体量が1μl以下で測定可能なバイオセンサーが開発されており、このような極微量な場合、またバイオセンサーへの検体を正確に供給する作業は非常に困難になる。その結果、測定の失敗を招き、被測定者である患者は再度穿刺して、またバイオセンサーも交換し、測定をやり直さなければならないという不都合があった。
【特許文献1】特開平9−266898号公報
【特許文献2】特公平8−20412号公報
【0003】
そこで、いくつかの針一体型バイオセンサーが考え出された。まず、特許文献3に示された針一体型バイオセンサーでは、穿刺針の駆動部を備えたペン型(2色ボールペン様)の測定装置の内部に穿刺針とバイオセンサーがそれぞれ別の位置にセットされており、ペン様の測定装置の先端部を被検体の皮膚に当て、穿刺した後、次にバイオセンサーを先端部に露出させ、採血を行なうことで血糖測定が行なわれる。しかし、この方法では針およびバイオセンサーを測定装置にそれぞれセットするという煩わしさは解消されていない。
【特許文献3】特開2000−217804号公報
【0004】
また、特許文献4で示された針一体型バイオセンサーでは、穿刺針を外部の駆動に委ねるものであり、穿刺針が細長い小片状のバイオセンサーの長手方向に沿って平行に移動する一体構造をとっている。しかし、このタイプでは穿刺針がバイオセンサーから露出するため、穿刺針の先端を保護するカバーが必要であり、さらに穿刺針がバイオセンサーの採血搬送路および試薬層を移動するため、穿刺針が被検体の皮膚を突き刺す前に、穿刺針の表面が試薬で汚染される危険性がある。
【特許文献4】再公表2002−056769号公報
【0005】
さらに、従来の針一体型バイオセンサーでは、試料液として必要な採血量が多く、かつ無駄なスペースへの入り込みなどの影響があった。これには、穿刺採血口と被検体の皮膚との密着性などの問題もある。また、感染や試薬の劣化などを防ぐための包装にコストが多くかかる上、使用後の廃棄には感染症などへの配慮が不十分であったり、穿刺用の駆動が測定装置側に備えられ、針一体型バイオセンサーユニットが穿刺時の駆動による衝撃に耐えられない構造であったりなど、多くの問題を残している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、構成が簡単なため強度がありながら組立が容易であり、試料体液の採取が無駄なく確実に行なえ、穿刺針が試薬層に汚染されず、簡易な包装により持ち運びも容易で、使用後も衛生的である針一体型バイオセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる本発明の目的は、被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と、体液の分析を行うためのバイオセンサー本体とが一体となって構成され、該穿刺針は、外部の駆動手段によってバイオセンサー本体を垂直方向に駆動して貫通し、皮膚を突き刺すように構成されている針一体型バイオセンサーによって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る針一体型バイオセンサーは、構成が簡単なため強度がありながら組立が容易であり、試料体液の採取が無駄なく確実に行なえ、穿刺針が試薬層に汚染されず、簡易な包装により持ち運びも容易で、使用後も衛生的であるという特徴を有し、それはカートリッジとして使用することができる。また、測定環境の温度や血液のヘマトクリット値などのデータを正確な血糖値算出に反映させる機能(温度補正およびヘマトクリット値補正)、ロット差を補う校正機能、暗所における表示部および穿刺部の自動照明機能をはじめ、糖尿病疾患による視覚障害に対応した音声ガイド機能及び音声認識機能、電波時計の内臓による測定データ管理機能、測定データなどの医療機関などへの通信機能、充電機能などを併せ持った、携帯が容易でユニバーサル企画に対応した針一体型バイオセンサー用測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に関わる針一体型バイオセンサーは、プラスチック製などの絶縁基板上に電極パターンおよびスペーサーとしての接着剤層などがスクリーン印刷により印刷できる、簡便に作製可能なバイオセンサーを備えている。このバイオセンサーについてさらに詳しく述べる。
【0010】
バイオセンサー
絶縁性の基板、スペーサー層を兼ねた接着剤層を介して基板と結合する絶縁性カバーおよび基板とカバーとに挟まれた空間に形成された基板上の電極を含み、基板およびカバーに挟まれた空間には、穿刺採血口から電極を通って空気排出口まで伸びる採血搬送路が設けられ、上から穿刺針貫通膜(以後、穿刺膜と称する)、基板、スペーサー、カバーの順序で重なり、カバーには体液を下方から採血するための貫通穴が穿刺採血口として設けられ、貫通穴と重なる位置には基板の貫通穴も設けられ、その上には穿刺膜が設けられ、カバーから膜にかけて穿刺針貫通路が設けられている。
【0011】
試料搬送路が通過する電極上に試薬層が設けられたバイオセンサは、試料搬送路から送り込まれる試料が電極上の試薬層と接触することにより、試料と試薬とが反応する。この反応は、電極における電気的な変化としてモニタされる。
【0012】
上記構成において、カバー部材上の穿刺採血口の周辺及び採血搬送路表面に界面活性剤、脂質を塗布することもできる。界面活性剤や脂質を塗布することにより、試料の移動を円滑にさせることが可能となる。
【0013】
また、穿刺採血口付近の採血搬送路は、採血の導入を円滑にするために、接着剤層のパターンをテーパー構造とすることができる。同様に、採血の必要以上の導入を抑えるため、空気排出口を狭めたり、空気排出口部分に通気性フィルムを設けても良い。
【0014】
さらに、バイオセンサー内への採血の効率的な導入のため、穿刺採血口と被検体の皮膚との密着性を高める目的で、穿刺採血口の材質を軟質材料に置き換えることもできる。軟質材料としては、ゲル、弾性材料、発泡性材料などを使用できる。その他のバイオセンサー内への採血の効率的な導入方法として、穿刺採血口の周囲または外郭に凸状構造を持たせることができる。この場合には、凸状構造をなす材料として、ゲル、弾性材料、発泡性材料などを使用することができる。例えば、穿刺採血口の外郭に凸状構造を持たせると、穿刺前に穿刺部分を針一体型バイオセンサーに押し当てることで、被検体の皮膚を盛り上げることができ、その頂点を穿刺出来る。以上に示した穿刺採血口への修飾は、穿刺採血口ガイドとして、使用者が穿刺位置を感覚的に把握するのにも役立ち、また滑り止めとしての効果も示すことができる。
【0015】
さらに、穿刺位置を視覚的に把握するために、試料導入口からの照明手段が挙げられる。照明は可視光領域の光の照射であり、好ましくは発光ダイオードなどによるレーザー光線または有機ELなどの発光体であることが望ましい。発光体が発光ダイオードである場合、穿刺針ハウジングおよびバイオセンサーの板部材、穿刺膜などを透明な材質で形成し、その内部に発光ダイオードを組み込むことで、穿刺部位を照明できる。また、前記の如き透明な材質で形成された穿刺針ハウジングおよびバイオセンサーの内、穿刺針ハウジングの底部の板及びバイオセンサーのカバーのみを色を吸収する部材にしておけば、試料導入口からの光のみが照射されるので、穿刺部位のスポットライトとなり得る。また、有機ELを使用する場合には、穿刺針ハウジングの底部の板及びバイオセンサーのカバーの少なくとも一部または全部を有機ELで表面加工すればよい。以上に示した照射手段を採る場合の電力の供給源としては、測定装置のバッテリーが挙げられる。この場合、バイオセンサーの端子を通して電力を供給することが望ましい。
【0016】
バイオセンサーの板部材としては、電気絶縁性であればプラスチック、生分解性材料、紙などを選択することができる。プラスチックの好適な例としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0017】
電極はカーボン、銀、銀/塩化銀、白金、金、ニッケル、銅、パラジウム、チタン、イリジウム、鉛、酸化錫、白金黒などから構成することができる。また、カーボンとしては、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、フラーレン、デンドリマーもしくはそれらの誘導体を用いることができる。こうした電極は、スクリーン印刷法、蒸着法、スパッタリング法、箔貼り付け法、メッキ法などにより板部材に形成することができる。
【0018】
電極は、作用極と対極で形成される2極法または作用極と対極、参照極で形成される3極法、あるいはそれ以上の極数の電極法であってもよい。ここで、3極法を採用すると、測定対象物質の電気化学測定の他に、搬送路内に導入される採血の移動速度の計測ができ、これによりヘマトクリット値が測定できる。また、2組以上の電極系で構成されていても良い。
【0019】
接着剤層も、スクリーン印刷法により形成することができる。接着剤としては、例えばアクリル樹脂系接着剤などが用いられ、約5〜500mm、好ましくは約10〜100mmの厚さで形成される接着剤層はスペーサーとしても作用する。また、接着剤層中に試薬を含有させてもよい。
【0020】
さらに、バイオセンサーは電極がレジスト層により規定されていてもよく、レジスト層もスクリーン印刷などで容易に形成できる。
【0021】
試薬層はスクリーン印刷法またはデスペンサー法により形成され、この試薬層の電極表面または板部材表面への固定化は、乾燥を伴う吸着法または共有結合法により行うことができる。
【0022】
なお、本発明の針一体型バイオセンサーを血糖値測定用に構成する場合、バイオセンサーの反応部に配置する反応試薬としては、例えば酸化酵素であるグルコースオキシターゼおよびメディエータとしてのフェリシアン化カリウムを含むものが採用される。
【0023】
上記反応部が血液によって溶解されると、酵素反応が開始される結果、反応層に共存させているフェリシアン化カリウムが還元され、還元型の電子伝達体であるフェロシアン化カリウムが蓄積される。その量は、基質濃度、すなわち血液中のグルコース濃度に比例する。一定時間蓄積された還元型の電子伝達体は、電気化学反応により、酸化される。測定装置本体内の電子回路は、このとき測定される陽極電流から、グルコース濃度(血糖値)を演算・決定し、上述したように、本体表面に配置された表示部に表示する。
【0024】
本発明の針一体型バイオセンサー装置は、上記の如きいずれかのバイオセンサー、バイオセンサーの電極における電気的な値を計測する計測部および計測部における計測値を表示する表示部を備えている。この計測部における計測方法としては、ポテンシャルステップクロノアンペロメトリー法、クーロメトリー法、サイクリックボルタンメトリー法などが用いられる。さらに、本装置に無線手段として電波、例えばブルートゥース(登録商標)を搭載することもできる。
【0025】
針一体型バイオセンサー
針一体型バイオセンサーは、前記バイオセンサーを試薬層とは異なる部位に貫通して、被検体の皮膚から体液を採取するための穿刺針が、バイオセンサとともに同じ容器内に、基板を境にして上下に分かれて格納されることで一体形成している。
【0026】
針一体型バイオセンサーの穿刺針ハウジング内には、穿刺針が外部駆動によって外部に突出した後、直ちに元の位置に戻るための弾性体と穿刺針を規定どおりに駆動させるガイドが設けられている。針一体型バイオセンサーは簡易な包装も可能であるため、使用の前後において終始衛生的であり、さらにカートリッジ式になっているので、持ち運びに便利な専用容器への収納ができ、誰でも簡便かつ確実に測定装置に装着することもできる。このカートリッジ式の態様を採ることにより、針一体型バイオセンサーの利便性は従来の方法に比べ飛躍的に向上できる。さらに詳しく、穿刺針ハウジング内の構造について述べる。
【0027】
穿刺針は、垂直方向に駆動するためのハウジング内に収納され、穿刺針ハウジング内には、外部の駆動手段によって駆動した穿刺針がバイオセンサーを貫通し、被検体の皮膚を穿刺した後に元の位置に戻るための機構を備える必要がある。この条件を満たす方法の一例として、穿刺針のハウジング以外に、内部にも軌道ずれを最小限小さくするためのガイドを設けても良い。ガイドは、例えば外部からの駆動を受ける穿刺針固定基板の下方に設けられた穿刺針の周囲を円筒状のガイドで保護し、同様に穿刺針ハウジングの穿刺針フォルダー基板上にも、ガイドよりも半径が小さい円筒状のガイドを設けることにより、穿刺時には穿刺針フォルダー基板上のガイドが穿刺針固定基板のガイドの内側にわずかな隙間を持って入り込むことで、穿刺針の軌道を規定どおりに確保できる。
【0028】
また、外部の駆動により、バイオセンサーの外部に突出した穿刺針を元の位置に戻すための弾性体が必要である。この弾性体としては、例えば巻きバネが考えられる。巻きバネは、穿刺針ハウジング内の穿刺針固定基板の下方に設けられた円筒状のガイドの外側に設けることができる。この場合、穿刺針の軌道を規定するガイドの存在によって、巻きバネの動きを上下方向のみに規定することができる。また、巻きバネ以外にも、伸縮性フィルムの使用が考えられる。この場合、伸縮性フィルムを穿刺針固定基板及び穿刺針ハウジング上部の両方に固定することで、巻きバネと同様の効果を得ることができる。すなわち、外部駆動により上方から下方に向けて穿刺針固定基板が移動するとき、伸縮性フィルムは穿刺針固定基板及び穿刺針ハウジング上部の両方の間の距離が開いて、伸びることになる。そして、この反動が外部駆動の退却に伴って起こり、穿刺針は元の位置に戻ることができる。
【0029】
伸縮性フィルムを前記の目的で使用する場合、穿刺針ハウジングの内部は容易に気密性を確保することができる。従って、穿刺針ハウジングに内部の気圧を調整する機構を設けることによって、穿刺後の体液を吸引力でバイオセンサー内部に取り込むことも可能になる。この機構を実現する道具として、逆流防止弁が挙げられる。すなわち、外部駆動が働くことで穿刺針ハウジング内は一時的に高圧になる。この圧力を逆流防止弁で下げた後、伸縮性フィルムには元の状態に戻ろうとする力が働く。その結果、ハウジング内部の気圧は外気圧と比べて低くなり、それが体液を採取するための吸引力となり得る。さらに、この伸縮性フィルムの伸縮性を変えることで、採血の吸引力も変えることができるので、使用者の体質(血液の粘度)の違いを反映させることも可能である。
【0030】
次に、穿刺膜について説明する。バイオセンサーの基板部にある穿刺膜は、穿刺後に毛管現象による採血のセンサー内部への導入を妨げないことを必要としている。また、穿刺膜は採血の導入に伴って、搬送路内の容積に変化を与えない材質であれば、基板の板部材を省いて穿刺膜に基板の役割を持たせることもできる。この場合、穿刺膜が穿刺針フォルダー基板と密着していれば、穿刺膜は硬質である必要がないため、穿刺針が貫通し易い柔らかい材質を選ぶことができる。このような条件を満たす穿刺膜としては、天然材料、プラスチック、生分解性材料、形状記憶材料などで形成されていることが望ましく、さらに好ましくは、天然材料では紙、コラーゲン、セルロース、コットンなどが、プラスチックでは発泡性材料、特に人工皮膚、弾性材料、フィルム形成材料などが、フィルム形成材料ではセロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0031】
さらに、穿刺膜の構造においては、材質の異なる2層以上の多層構造を有してもよい。例えば、2層膜の場合下方の膜は薄膜で穴のない完全なフィルム状で、上方は穿刺によって空いた穴を埋めるための嵩のある膜などであっても良い。穿刺膜は、厚さ100μm以下の薄膜であることが、穿刺針の通りを良くする上で望ましい。また、穿刺膜の代りに、穿刺針の動きに連動して開閉するシャッターがバイオセンサーのカバー部に設けられていてもよい。
【0032】
穿刺膜は試薬層とは独立して配置されることで、穿刺による針先への試薬の付着を防ぐことができるので、安全かつ衛生的である。
【0033】
針一体型バイオセンサーに使用する穿刺針については、穿刺膜を貫通して、さらに被検体を穿刺する必要があるため、ある程度の強度を持ち、鋭利であることが望ましい。また、穿刺時の痛みを抑えるためには、細い穿刺針が好ましい。さらに、穿刺針は使用されるまでハウジング内に衛生的に収納されている必要があることから、抗菌・抗ウィルスに効果がある光触媒機能を針の表面に付与させても良い。その場合、酸化チタンまたは二酸化チタンの膜が望ましい。
【0034】
本発明の針一体型バイオセンサーを使用時まで衛生的に保存する方法として、接着性保護フィルム(以後、保護フィルムと称する)などを使用した簡易包装法がある。針一体型バイオセンサーでは、外気と接触するバイオセンサーの穿刺採血口及び/または空気排出口への包装、及び穿刺針ハウジングの上部への包装の必要がある。以上の包装手段は穿刺針の露出も防ぐことができるので、衛生面のみならず、安全面においても重要である。
【0035】
本発明のバイオセンサーにおいて包装する場合は、外気と直接触れる穿刺採血口への包装が有効である。この場合に使用する簡易包装体として最も適しているのが、接着及び剥離が可能な保護フィルムである。さらに、保護フィルムは少なくとも接着及び剥離が可能な接着剤層のほかに、非接着部を設けることで、その部分を保護フィルムの接着及び剥離を行なうための摘みとすることができる。さらに、保護フィルムの少なくとも一部を強力な接着層でバイオセンサー基板に固定することで、剥離後の保護フィルムによる再包装が可能となる。
【0036】
また、上記バイオセンサーの内、絶縁性基板の電極を含まない部分と絶縁性基板の電極を含む部分との境目に切断線があり、この切断線はカバー部材にも基板上の切断線と一致するように設けられており、絶縁性基板の電極を含まない部分を切断線に沿って切り離すことで、空気排出口が開放されたバイオセンサーが使用できる。この場合、開口用のキャップ部の少なくとも一部が保護フィルムと強力に接着する部分を有し、さらに保護フィルムには、バイオセンサー本体との接着部分に脱着可能な粘着部が設けられ、バイオセンサーの使用時にキャップをバイオセンサー本体から切り離すことにより、保護フィルムも同時に剥離できる構造を採ることができる。この構造であれば、キャップおよび保護フィルムからなる包装体を、バイオセンサーの使用後に元の状態に貼り直すことが可能になる。
【0037】
同様に、針一体型バイオセンサーの包装形態を考えると、バイオセンサーの端子についても保護が必要になる。この場合、絶縁性基板上の端子をカバーで被覆することができる。
端子を被覆するカバーには接着剤層は設けないで、折返し可能な折り返し線を設け、その折り返し線に沿って外部端子を露出させてもよい。この場合の折り返し線としては、ミシン目や切れ目などが挙げられる。
【0038】
次に、穿刺針ハウジング上部への簡易包装方法の例を挙げる。まず、第一の手段として、キャップの使用例を挙げる。キャップは穿刺針ハウジング上部に単にはめ込むだけで、最も簡単に包装が可能である。また、キャップにハウジングとの鎹で連結させることで、針一体型バイオセンサーの使用中はキャップを開放したままにしておき、使用後に再びキャップで蓋をすることで、使用後の針一体型バイオセンサーを感染症などの影響を受けることなく廃棄できる。
【0039】
第二の手段として、保護フィルムの使用例を挙げる。保護フィルムはバイオセンサーで使用したものと同じく、接着及び剥離が可能であり、摘み部分として非接着部を設け、保護フィルムの少なくとも一部を強力な接着層で穿刺針ハウジングに固定してもよい。強力な接着層を設けることで、針一体型バイオセンサーの使用中は保護フィルムは剥れた状態を維持し、使用後に再び包装することで使用後の針一体型バイオセンサーを感染症などの影響を受けることなく廃棄できる。
【0040】
さらに、第三の手段として、上記で説明した伸縮性フィルムを穿刺針ハウジングの上部に設けた場合がそのまま適用できる。すなわち、この態様の場合、穿刺針ハウジング内部は気密性が保たれているため、そのことが穿刺針ハウジングを含めた針一体型バイオセンサーカートリッジを包装の不要な形態にしている。この態様であれば、穿刺針ハウジング部の簡易包装が不要であるため、使用前の包装を解く操作(手間)と再包装の操作を共に省くことができ、これまでに例を挙げた中で最も使い勝手の良い包装手段である。
【0041】
測定装置と共に、針一体型バイオセンサーカートリッジの携帯性を向上させる手段として、複数個のカートリッジをまとめて収納できるボックスを使用することもできる。収納ボックスは、例えば10個のカートリッジを収納できるタイプであっても、ボールペン程度の大きさに留めることができる。本発明のカートリッジがこのような形態で持ち運べるのは、バイオセンサーの端子など、通常では包装が困難な素子を含め、使用者が怪我をし難い安全な形状を確保しているためである。
【0042】
針一体型バイオセンサー用測定装置
本発明の針一体型バイオセンサー用測定装置の一例は、カートリッジタイプの針一体型バイオセンサーを使用した測定が繰り返し確実に行なえるための操作性および耐久性が確保され、ボールペンと同様のサイズおよび形状で持ち運びが容易であることを特徴としている。例えば、胸ポケットやスーツなどの内ポケットに掛けるためのフックを測定装置上部に設けても良い。
【0043】
さらに、本測定装置は市販のランセットとほぼ同じサイズであり、通常の穿刺針を駆動させる動力を生むための機構が備えられている。測定装置は、下部にある導入部にカートリッジ式の針一体型バイオセンサーを横にスライドさせ、バイオセンサーの端子が測定装置のコネクターと接続することで測定が可能な状態となる。続いて、上部にある穿刺のための引き金を引くことで測定の準備が完了し、あとは穿刺開始ボタンのスイッチを押すことで穿刺・採血・測定の順序で自動的に作動し、最終的に測定結果が導かれる仕組みになっている。
【0044】
構造上の特徴の一例を、さらに詳しく述べる。本測定装置は穿刺針駆動部と測定装置部が一体化しており、穿刺針駆動部は引き金部、穿刺開始ボタン部、バネなどの弾性体による駆動部から構成される。一方、測定装置部については、カートリッジの導入部、コネクター、電気化学測定用回路、メモリ部、操作パネル、表示部を基本構成としている。
【0045】
前記スライド構造により、カートリッジを確実にホールドした状態を保ったまま穿刺駆動を受けるので、測定装置全体としての強度を高めることができる。
【0046】
測定装置の穿刺駆動は、カートリッジ上部を鉛直方向にたたいた後、速やかに戻る機構がよく、さらに被検体の皮膚を穿刺する深度が調整可能な機構を有することが好ましい。また、被検体の皮膚への穿刺を確実に行なうために、測定装置の底部、例えばカートリッジとの接点であるコネクターの底部付近に、滑り止め具を取り付けても良い。その場合、ゴム製の滑り止め具が好ましい。同様に、穿刺開始ボタンについても、このような滑り止め具による修飾を行なっても良い。それに加え、測定装置の穿刺駆動の引き金を引くのと連動して、前記照明機能が自動的に作動し、採血導入部から照射された光が被検体の穿刺部分を照らす機能を備えてもよい。これにより、視覚障害者を含め穿刺・採血・測定の一連能操作がより確実に行なえるようになる。
【0047】
本発明の測定装置におけるその他の照明手段として、測定装置に内蔵したフォトオードなどの光検出素子が自動で照度を測定することで、必要に応じて穿刺部分および表示部を照らす機構を備えても良い。これにより、暗所やトイレなどのやや暗い環境においても、わざわざ照明のスイッチを入れることなく測定が行なえる。また、データの呼び出し、表示部の操作時など、ある特定の操作時に限ってこの機構が働くことで本発明の測定装置の利便性がさらに向上する。ただし、このような便利な機構を取り入れることで、電力の消費が大きくなる可能性がある。その対応としては、測定装置を充電が可能なシステムとし、さらには太陽電池を備えて充電できるようにしても良い。また、補助バッテリーを内部に備えておいても良い。
【0048】
測定装置の計測部における計測方法としては、特に限定はしないがポテンシャルステップクロノアンペロメトリー法、クーロメトリー法またはサイクリックボルタンメトリー法などを用いることができる。
【0049】
また、種々の補正機構についても備えることができる。血糖測定における重要な補正として、温度補正およびヘマトクリット値がある。温度補正は、血糖測定に使用される酵素の活性が温度の影響を受け易いので、特に測定時間を短縮する場合には重要である場合が多い。また、ヘマトクリット値も血糖値測定に影響を与える要因である。ヘマトクリット値の測定は、例えばバイオセンサー内の採血の移動速度から推測することも可能である。その手段としては、例えば3本の電極を使用して、採血がはじめの2本を通過した時刻と、3本目を通過した時刻を求め、その時間差と電極間距離から採血の移動速度を算出することもできる。
【0050】
その他、バイオセンサーのロットなどの違いによる測定値の変動を抑える必要がある。その場合、ロット毎に自動で校正が行なえる機能を備えればよい。
【0051】
上記の手段などにより正確に求めた血糖値のデータを管理するには、正確な時刻も管理する必要がある。その場合、最近になって安価で入手しやすくなった電波時計の素子を測定装置に組み込んでもよい。これにより、過去のデータを正確な時刻管理の下で記憶させることが可能となる。
【0052】
測定データを管理する別の手段として、他の媒体へのデータの移動が挙げられる。その例としては、測定装置からデータ送信用のケーブルを介してPCなどへデータを送る方法のほかに、電波などによる通信手段の使用が考えられる。このような通信手段を測定装置に応用することで、コードの接続などの煩わしさが解消される。
【0053】
さらに、測定装置に音声ガイドおよび音声認識機能を搭載させることで、身体に障害をもつ利用者を始め、多くの利用者がその使い勝手の良さを認識することができる。例えば、音声ガイドについては、実際に測定装置を使用して血糖値を測定するときに、その操作手順や関連する注意事項などを使用者にリアルタイムで案内することで、操作上の失敗の頻度を低く抑えることができる。さらに、測定結果の報告や過去のデータなどを音声による呼び出しで行なえることができる。
【0054】
また、音声認識機能も同様に、操作性の向上につながる。例えば、過去のデータの呼び出し、穿刺箇所の照明などは、操作ボタンを押さずに、測定装置に声をかけるだけでできるようにすることも可能である。また、表示部を測定装置の置かれている状態、すなわち縦置きかたは横置きなどにした場合に、その置き方に応じて表示部を縦または横に自動で切り換えられることが望ましい。あるいは、測定装置の置かれている角度に応じて、表示が連続的に切り替わることで、常時画面の文字などが平行に映し出される機能を備えていることが望ましい。このような機能により、使用者が表示部の文字の置かれ方に合わせて視線を合わせるような動作をしなくて済むようになる。
【0055】
以上より、本発明の針一体型バイオセンサー、カートリッジ及び針一体型バイオセンサー用測定装置は、使用者を限定することのない、すなわち、ユニバーサルな企画に対応し得るものとなっている。
【0056】
本発明による実施態様の針一体型バイオセンサー、カートリッジ、及び針一体型バイオセンサー用測定装置について、それぞれ図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に制限されるものではない。
【0057】
図1は、本発明のバイオセンサーの構成図の一例を示している。図1(a)は基板1の外面側を示し、基板1上には穿刺膜5が貼られている。図1(b)は基板1の内面側を示し、基板1上には導電体3,3が2本配置され、貫通穴4が基板の幅方向に対して中心にある。図1(c)はカバー2の外面側を示し、カバー2の中心には貫通穴が設けられている。図1(d)はカバー2の内面側を示し、カバー2上にはスペーサー用に接着剤層8が設けられ、接着剤層8が設けられない部分には貫通穴4および非スペーサー部分6が設けられている。図1(e)は、組み立て後のバイオセンサー42の基板1側を示している。同じく図1(f)は、組み立て後のバイオセンサー42のカバー2側を示している。ここでは、図1(c)で示した貫通穴4が穿刺採血口10となり、カバー2で覆われない2本の導電体9,9はそれぞれ端子となる。また、カバー2からはみ出た左右の基板1は、後に示す穿刺針ハウジング61底部のセンサーカバーフォルダー33(図示せず)に掛かり、穿刺時の衝撃からバイオセンサー本体42が穿刺針ハウジング61から脱落するのを防止するために設けられている。図1(g)は(f)におけるA-A'断面を示す。基板1の上面には穿刺膜5が設けられ、基板1から下方に向かって導電体3、スペーサーとしての接着剤層8及びカバー2が穿刺針貫通路12を境に2つに分かれている。(g)では穿刺針が穿刺膜5の上方から穿刺膜5を貫通し、穿刺針貫通路12を通過して、穿刺採血口10を突出した後、元の位置に戻る。その過程で、一度開口した穿刺膜5の貫通穴が塞がるか小さくなることで、毛細管現象を妨げることなく、穿刺採血口10から流入する採血を採血搬送路7上にある電極反応部13まで導入できる。図1(h)は同じく、B-B'の断面図を示している。穿刺針が穿刺膜5を貫通して得られる採血は、穿刺採血口から取り込まれ、電極反応部13まで送られる。図1のバイオセンサーでは、(h)に示すように空気排出口11がバイオセンサーの上部に設けられている。
【0058】
図2は、図1で示したバイオセンサーにおいて、採血を効率よく導入して、必要以上の体液を取り込みにくくするための工夫がなされている。その特徴は、以下に示す3つの部分に現れている。
(1)カバー部2の貫通穴4の直径を基板1のそれよりも大きくする((b)と(c)を比較)。これにより、カバー部2の採血口10に入り込んだ採血が、その表面張力によって基板部1に到達し易くなる。
(2)穿刺採血口10から流入した採血を電極反応部13へ速やかに移動させるため、電極反応部13側の採血搬送路7の幅を一部大きくする((d)を参照)。これにより、採血搬送路7が穿刺採血口10から電極反応部13に向かって狭くなるテーパー構造により、穿刺採血口で採血された血液が電極反応部13に向かい易くなる。
(3)空気排出口11の幅を狭くすることで、必要以上の体液が取り込み難くなる((d)を参照)。
【0059】
図3は、図1に示したバイオセンサーの穿刺採血口の外郭に採血導入ガイド14を取り付けた例である((c),(f),(g),(h)を参照)。採血導入ガイド14は、材質には特にこだわらないが、可能であれば弾力性があって滑り難い材質であることが望ましい。このようなガイドの取り付けによって、穿刺部分を感覚的に捉えられ、かつ穿刺時に滑り止めの効果が働いて被検体の皮膚を押し当てることができ、それにより被穿刺部を盛り上げ、穿刺による採血を容易にすることができる。
【0060】
図4は、図1に示したバイオセンサーの穿刺採血口10の周囲に採血導入ガイド14を取り付けた例である((c),(f),(g),(h)を参照)。採血導入ガイド14は、材質には特にこだわらないが、可能であればゲル状のものが好ましい。このようなガイドの取り付けによって、図3に示したバイオセンサーと同様に、穿刺部分は感覚的に捉えられ、かつ穿刺時に滑り止めの効果および皮膚との密着性を高めることができる。それにより、被穿刺部で採取した体液をカバー2部材に浸透させるような採血の無駄を省くことができる。さらに、この図に示したバイオセンサーであれば、上記説明のとおり、皮膚との密着性を高めることが可能なため、穿刺針ハウジング61(図示せず)で生じた負圧を利用して採血を吸引し、電極反応部13まで採血した血液を速やかに移送できる。この図に示したバイオセンサーでは、吸引による採血を可能にするために、基板1の表側と穿刺針ハウジング61との間に穿刺膜5を挟んで密着させ、その穿刺膜5に空気排出口11用の貫通穴を設けて((a),(e),(g),(h)を参照)、負圧によって吸引される排気を穿刺針ハウジング61内に送り込める構造を採っている。従って、この場合の穿刺膜は基板との密着性が高い、例えば人工皮膚のようなものを使用してもよい。
【0061】
図5は、図4に示したバイオセンサーの簡易包装例である。図5(a)は穿刺採血口10の周囲に採血導入ガイド14を設けたカバー2の表面側を示す。図5(b)は、図4(f)に示したバイオセンサーのカバー2の表面側から基板1上の端子9に至るまで保護フィルム17で覆われている状態を示している。図5(c)は(b)で図示したA-A'の断面を示す。保護フィルム17は、カバー2の表面側上部から保護フィルム17の折り目15に至る範囲が強力接着層18で固定されている。保護フィルム17のその他の部分には、接着剤層は特に設けられていない(非接着部20)が、図4に示したバイオセンサーの一つの特徴であるゲル状の採血導入ガイド14と簡易に接着することにより、穿刺採血口10が蓋をされている。図5(d)は保護フィルム17で簡易包装されたバイオセンサーの使用例を示している。保護フィルム17を折り目15までめくることで、バイオセンサーが測定に使用できる状態となる。さらに、使用後に保護フィルム17を貼り直すことで再包装ができるので、感染の危険を回避できる。
【0062】
図6は、図4に示したバイオセンサーの空気排出口11に通気性フィルム60を設けた例を示す。図6(a)の基板1の裏側には穿刺膜5以外に通気性フィルム60が貼られている。通気性フィルム60は(b)に示した貫通穴4を覆っている。この貫通穴4は、図6(h)で分るように空気排出口11となる。この図に示すバイオセンサーの特徴は、図4で示したバイオセンサーと同様に、穿刺針ハウジング61での穿刺後に起こる負圧によって採血を吸引し、バイオセンサーの内部に送り込む仕組みであるが、このときに生じるおそれのある過剰な吸引による、必要以上の体液の流入を空気排出口11に設けた通気性フィルムまでで留めるためである。
【0063】
図7および図8は、図1に示した本発明の最も基本的なバイオセンサーの構造に改良を加えたものの例を示している。バイオセンサーは使用時までバイオセンサー内部を密閉状態に保ち、内部の試薬の状態を長期にわたり安定に保つための工夫がなされている。図7(a)は図1(a)で示した基板1に、溝15を境に上部方向に板部材を延ばしたものである。図7(b)では基板1上の溝15が導電体3を跨ぐことなく設けられている。図7(c)に示すカバー2も同様で、図1(c)で示したカバー2に、溝15を境に上部方向に板部材を延ばしたものである。図7(d)ではカバー2上の溝15が非スペーサー部分6を跨いで設けられている。図7(e)及び(f)は、バイオセンサー本体42の基板1またはカバー2側をそれぞれ示している。さらに、図7(g)及び(h)はA-A'断面およびB-B'断面を示している。図7(h)に示すように、溝15は採血搬送路7を分断するように設けられている。
【0064】
図8は、図7で示したバイオセンサーの保護フィルムによる包装体を形成した状態の例を示している。図8(a)はバイオセンサー42のカバー部2の外側を保護フィルム17で包装している例を示している。図8(b)は(a)のA-A'断面を示している。この図では、使用する保護フィルム17に脱着可能な層19が新たに設けられている。ここで、脱着可能な層19とは、強力接着層18で使用する接着剤とは異なり、接着及び剥離が繰り返して行なえる接着力の弱い粘着層を意味している。また、図8(c)は保護フィルム17で簡易包装されたバイオセンサーの使用例を、図8(b)のA-A'断面をもとに示したものである。このように、基板1及びカバー2部に設けられたV字型の溝に沿ってバイオセンサーを分断することで、電極パターンを含まない密閉キャップ部分16がはずれ、空気排出口11が新たに開口し、穿刺採血口10も保護フィルム17の脱着可能な層19部分が剥離することで開放する。このとき、密閉キャップ部16には強力接着層18で固定された保護フィルム17も合せて、センサー切り離し部分57として、バイオセンサー本体42から取り外される。このセンサー切り離し部分57は、バイオセンサー本体42を測定に使用した後、元のとおりに貼り直して再包装するのに使用できる。
【0065】
図9は、カートリッジタイプの針一体型バイオセンサーの構成図の例を示す。因みに、ここに図示されているバイオセンサーは図1で示したものである。図9(a)は針一体型バイオセンサー21の分解図を示している。針一体型バイオセンサー21は、上部が穿刺針、下部がバイオセンサーという構成になっている。穿刺針26は穿刺針固定基板24に固定され、その外枠には巻きバネ27との接触回避および巻きバネの運動方向を規定するための巻きバネガイド25が設けられている。また、穿刺針26の下部には穿刺針フォルダー基板30があり、この基板には穿刺針の貫通穴4および穿刺針の軌道を内側から保護するための穿刺針ガイド28が設けられている。穿刺針フォルダー22と穿刺針フォルダー基板30との間の空間には穿刺に必要な部品が納められ、穿刺針ハウジング61を形成している。
【0066】
穿刺針ハウジング61より下の部分には、穿刺時の衝撃によるバイオセンサー42の脱落を防ぐため、2枚のフォルダーが設けられている。図9(b)及び(c)はそれぞれ、センサー基板1(32)をセンサー基板フォルダー31にはめ込んだ状態を上方または下方から見た場合、図9(d)及び(e)はセンサーカバー2(34)をセンサーカバーフォルダー33にはめ込んだ状態を上方または下方から見た場合を示している。図9(b)〜(e)に示すように、これらのフォルダーは、穿刺によるバイオセンサーの脱落を防ぐために、形状を異にしたセンサー基板32およびセンサーカバー34を型どおりにはめ込むことが可能な構造になっている。カバー34よりも大きなサイズのセンサー基板32を固定するセンサー基板フォルダー31の下に、センサーカバーフォルダー33が設けられることで、カバー34からはみ出る基板部分が、センサーカバーフォルダー33に支えられる。この支えは、穿刺時の衝撃によるバイオセンサー42の脱落を防ぐのに役立つ以外に、針一体型バイオセンサーを組み立てる場合に、バイオセンサー42をこれらのフォルダーにスライドさせてはめ込むのにも都合が良い。さらに、図9(b)及び(c)に示すように、センサー基板32をセンサー基板フォルダー31にスライドさせてはめ込んで、外れないように確実に固定するため、センサー基板固定具35がセンサー基板フォルダー31に設けられている。図10(a)〜(b)は、図9で示した針一体型バイオセンサー21の組み立て例を示す。
【0067】
図11は、図7および図8で示したバイオセンサー42を針一体型バイオセンサーとして組み込む場合を示している。図11(a)及び(b)はそれぞれ、センサー基板32をセンサー基板フォルダー31にはめ込んだ状態を上方または下方から見た場合、図9(c)及び(d)はセンサーカバー34をセンサーカバーフォルダー33にはめ込んだ状態を上方または下方から見た場合を示している。図11(a)及び(b)に示すように、この形状のバイオセンサーを針一体型バイオセンサーカートリッジに収めて固定するには、センサー基板32用の固定具35で4箇所を固定する必要がある。図11(e)は包装状態にあるバイオセンサー42がカートリッジ内に納まっている状態を下方から見た場合を示す。ここで、破線40は透視したときのセンサー基板32の外枠部分を示している。この破線40からも、バイオセンサーがスライド式にフォルダー内に収まっていて、穿刺時の衝撃にも十分耐え得ることが見て取れる。図11(f)は(e)の状態からバイオセンサーの包装を解いた場合を示し、そのときに外されたセンサー切り離し部分57を図11(g)に示す。このような態様であれば、バイオセンサーを使用後に、貼り直しによる再包装が容易であることが分る。
【0068】
図12は、針一体型バイオセンサー21と外部駆動41の位置関係を立体的に示した図である。この図が示すように、外部駆動41が穿刺針フォルダー22の頭部に開けた外部駆動の導入部23に入る構造となっており、外部駆動41が穿刺針ハウジング61内の穿刺針固定基板24の上部に伝わる構造となっている。
【0069】
図13は、図9で示した針一体型バイオセンサー21を側面から見た場合を示している。図13(a)は針一体型バイオセンサー21のバイオセンサー本体が頭の部分を正面に向けている状態を示し、図13(b)はそのときの断面図を示しいている。また、図13(c)は針一体型バイオセンサー21のバイオセンサー本体を側面から見た状態を示し、図13(d)はそのときの断面図を示しいている。
【0070】
図14は、図13で示した針一体型バイオセンサー21を穿刺駆動の挙動と合わせて示している。これらの断面図から、図14(b)では、穿刺針ハウジング61内の中心には穿刺針26が位置し、その下に穿刺針の貫通路が穿刺膜5を隔てて設けられていることが分る。そして、図14(d)では、穿刺駆動を受けることで穿刺針の先端が下方に移動し、バイオセンサーを貫通してからカートリッジ外部を短時間だけ突出する状態を示している。
【0071】
図15は、伸縮性フィルムを針一体型バイオセンサー21に応用した例を示している。図15(a)において、図9(a)で示した針一体型バイオセンサー21との構成上の違いは、穿刺針ハウジング61上部に伸縮性フィルム58が接着剤により固定され、穿刺針ハウジング61内に内部気圧調整用の逆流防止弁が設けられ、穿刺針フォルダー基板30には採血吸引用の貫通穴が設けられ、図15(b)〜(e)に示すように、バイオセンサーにおいては包装が可能でかつ、穿刺針ハウジング内で生じた負圧による採血の吸引が可能であることなどが挙げられる。
【0072】
図16は、図15で示した密閉型カートリッジにおける穿刺駆動による内部の挙動を示している。図16(a)は使用前の密閉型カートリッジの内部を示す。図16(b)はバイオセンサーの包装17を解いて、穿刺駆動が働いている場面を示している。この図が示すように、穿刺針26が穿刺膜5、バイオセンサー本体42を貫通して外部に突出している。このとき、穿刺針ハウジング61内部では気圧の急激な上昇に伴って、逆流防止弁による内部空気の排気が行なわれている。
【0073】
図17は、図15(a)で示した伸縮性フィルムを使用した密閉型カートリッジを改良した例を挙げている。図15(a)では弾性体として巻きバネが使用されているが、図17では巻きバネを使用する代りに、伸縮性フィルム58のみの使用で補っている。すなわち、穿刺針ハウジング61の上部以外に、穿刺針固定基板30にも伸縮性フィルム58を固定することで、巻きバネを不要にしている。これは、穿刺駆動により穿刺針が外部に突出したとき、伸縮性フィルム58は最も伸びた状態となり、この反動が穿刺針を元に戻すための動力となるためである。図17(a)は一枚の伸縮性フィルム58を穿刺針固定基板30に固定する場合、図17(b)は穿刺針固定基板30の上下に2枚の伸縮性フィルム58をそれぞれ挟んで固定する場合を示している。
【0074】
図18は、図17(a)に示した密閉型カートリッジの断面図であり、図18(a)は使用前の状態を、また図18(b)はバイオセンサーの包装17を解いて、穿刺駆動が働いている場面を示している。
【0075】
図19は、図17(b)に示した密閉型カートリッジの断面図であり、図19(a)は使用前の状態を、また図19(b)はバイオセンサーの包装17を解いて、穿刺駆動が働いている場面を示している。
【0076】
図20は、本発明の針一体型バイオセンサーカートリッジを使用して測定するための穿刺駆動つきの測定装置の例を示す。図20(a)は測定装置43にカートリッジ21を導入する前の状態を示している。この図について、測定装置の説明をする。該測定装置43は、
針一体型バイオセンサーカートリッジ21の導入部44、穿刺駆動用の引き金部45、操作パネル46、バイオセンサー端子のコネクター部49及び穿刺開始ボタン50で構成されている。操作パネル46上には表示部47及び操作ボタン48が、また穿刺開始ボタン50には滑り止め具51が設けられている。図20(b)は測定装置43にセンサーカートリッジ21を導入して、上部にある引き金45を引くことで測定装置の電源が入り、測定モードに入った状態を示す。このときに表示される文字は、測定装置の置かれている向きに等しくなるための自動切り替えモードの作動により、読み取り易い向きになっている。図20(c)はセンサーカートリッジ21を測定装置43に導入した後の様子を横から示している。この図が示すように、表示部の裏側にはフック63が設けられ、測定装置本体が胸ポケットや内ポケットなどに収め易くなっている。図20(d)はセンサーカートリッジ21及び測定装置43を下方から見たときの様子を示している。センサーカートリッジ21に備え付けられているバイオセンサー42は、図3で示した穿刺採血口10の外郭に採血導入ガイド14を取り付けたものである。また、測定装置の底部、すなわち、センサーカートリッジ導入部44の底部には、穿刺時における測定装置と皮膚との位置のずれを起こさないための滑り止め具51が設けられている。
【0077】
図21は、簡易包装を施したセンサーカートリッジ21の使用例を示している。図21(a)においては、該センサーカートリッジ21は、取り外しが可能なキャップ52で穿刺針ハウジング61の上部に蓋がされ、バイオセンサー42には保護フィルムによる包装が施されている。センサーカートリッジ21には、図7及び図8で示した密閉型バイオセンサーがセットされている。図21(b)は、センサーカートリッジ21からキャップ52及びバイオセンサー42の保護フィルム付き切り離し部分57が外され、測定装置43に導入される前の状態を示している。図21(c)は、測定装置43にセンサーカートリッジ21がセットされて、表示部のスイッチが入り、測定が可能な状態になったことを示している。図21(d)は、測定に使用した後のセンサーカートリッジ21を測定装置43から取り出して、再包装し、廃棄できる状態になっているところを示している。
【0078】
図22は、図21に示した簡易包装を施したセンサーカートリッジ21の別の使用例を示している。図22(a)に示すように、センサーカートリッジ21上部には図22と同様のキャップ53が穿刺針ハウジング61の上部に取り付けてあり、鎹でつながっている。図22(b)は、キャップ53を開けて測定装置にはめ込む前の状態を示している。図22(d)は、測定に使用した後のセンサーカートリッジ21を測定装置43から取り出して再包装し、廃棄できる状態になっているところを示している。この場合、キャップ53が鎹で穿刺針ハウジング61から外れない構造となっているので、使用後にキャップを紛失することがなくなる。
【0079】
図23および図24は、保護フィルム17で簡易包装を施したセンサーカートリッジ21の別の使用例を示している。図23に示す保護フィルム17はカートリッジから脱着するタイプ、図24に示す保護フィルム17は一部がカートリッジと強力に接着しているタイプのものをそれぞれ示している。なお、使用するバイオセンサー42は図22に示したものと同じである。
【0080】
図25は、伸縮性フィルム58を穿刺針ハウジング61の上部に施したセンサーカートリッジ21の使用例を示している。このセンサーカートリッジ21であれば、使用前にバイオセンサー42の保護フィルム17を剥がすのみの操作で、最も簡単に測定に入ることができる。
【0081】
図26は、本発明の針一体型バイオセンサーを測定装置に取り付けて、被検体である指先に測定装置を当てて、穿刺開始ボタン50を押して、穿刺した後の測定モードに入っている状態を示している。この図が示すように、測定装置の画面は水平を保って表示され、表示内の文字が認識しやすい状態になっている。
【0082】
図27は、図26で示した測定装置による測定操作中のセンサーカートリッジ21内の様子をバイオセンサー42の長手方向に沿って断面で示している。ここで使用している穿刺ユニットは図9に示したものであり、バイオセンサー42については空気排出口11が採血搬送路7の延長に設けられており、また穿刺採血口10の外郭に採血導入ガイド14が付いている。この図では、測定装置43に指54を押し当てることで、採血導入ガイド14により、穿刺予定部分の皮膚が盛り上がっている様子を示している。その状態で測定装置の穿刺駆動部41を駆動すると、穿刺針26が下方に向けて駆動し、穿刺膜5、バイオセンサー本体42を貫通して、指に向かって突出する。その後、穿刺針26は元の位置に戻り、穿刺膜5はその材質の特徴により貫通口が小さくなると同時に、穿刺採血口には指からの体液(血液)が流入する。
【0083】
図28は、図15で示したセンサーカートリッジ21の使用例を、バイオセンサー42の長手方向に沿った断面図で示したものである。該センサーカートリッジ21は伸縮性フィルム58で覆われた穿刺針ハウジング61と吸引によって採血が可能なバイオセンサーとが組み込んである。ここで図示した穿刺針ハウジングには逆流防止弁59が設けられており、バイオセンサー42は吸引による採血が可能な構造を有している。さらに、バイオセンサーの穿刺採血口10に取り付けたゲル状の採血導入ガイド14によって、皮膚との密着性が高まり、効率よく採血ができる機構となっている。
【0084】
図29は、図28で示したセンサーカートリッジ21において、空気排出口11に通気性フィルム60を設けたバイオセンサー42が組み込まれている例を示している。これは、吸引によってセンサー内に送り込まれた採血が、通気性フィルム60で留まるようにしたものである。この機構により、必要以上の採血の取り込みを防ぐことができる。
【0085】
図30は、暗所における測定例を示している。この図が示すように、暗所では測定装置が表示部のバックライトを自動的に点灯させ、穿刺採血口10からは穿刺部を照らす光が照射されている。
【0086】
図31及び図32は、それぞれ形状が異なるバイオセンサー42を組み込んだセンサーカートリッジ21の収納ボックス56を示している。該ボックスの内部には、例えばセンサーカートリッジ21が10個前後収めることができ、蓋53が開閉することでセンサーカートリッジを取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のバイオセンサーの一実施態様を示す図である。
【図2】本発明のバイオセンサーの他の実施態様を示す図である。
【図3】本発明のバイオセンサーの他の実施態様を示す図である。
【図4】本発明の吸引型バイオセンサーの一実施態様を示す図である。
【図5】本発明の包装形態を有する吸引型バイオセンサーの一実施態様を示す図である。
【図6】本発明の吸引型バイオセンサーの他の実施態様を示す図である。
【図7】本発明のバイオセンサーの他の実施態様を示す図である。
【図8】本発明の包装形態を有するバイオセンサーの他の実施態様を示す図である。
【図9】本発明の針一体型バイオセンサーの一構成例を示す図である。
【図10】本発明の穿刺針ハウジング底部にあるフォルダーにバイオセンサーをはめ込んで形成される針一体型バイオセンサーの一構成例を示す図である。
【図11】本発明の包装形態を有する針一体型バイオセンサーのセンサーフォルダーの一構成例および該センサーの一使用例を示す図である。
【図12】本発明の針一体型バイオセンサーの一動作例を示す図である。
【図13】本発明の針一体型バイオセンサーの側面およびその断面の一例を示す図である。
【図14】本発明の針一体型バイオセンサーの他の動作例を側面およびその断面で示す図である。
【図15】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの一構成例を示す図である。
【図16】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの一動作例を側面の断面で示す図である。
【図17】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの他の構成例を示す図である。
【図18】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの他の動作例を側面側の断面で示す図である。
【図19】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの他の動作例を側面側の断面で示す図である。
【図20】本発明の針一体型バイオセンサーに取り付けるランセット組込型測定装置の一例を示す図である。
【図21】本発明の包装形態を有する針一体型バイオセンサーをランセット組込型測定装置に取り付けて使用する一例を示す図である。
【図22】本発明の包装形態を有する針一体型バイオセンサーをランセット組込型測定装置に取り付けて使用する他の例を示す図である。
【図23】本発明の包装形態を有する針一体型バイオセンサーをランセット組込型測定装置に取り付けて使用する他の例を示す図である。
【図24】本発明の包装形態を有する針一体型バイオセンサーをランセット組込型測定装置に取り付けて使用する他の例を示す図である。
【図25】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーをランセット組込型測定装置に取り付けて使用する一例を示す図である。
【図26】本発明の針一体型バイオセンサーをランセット組込型測定装置に取り付けて測定を実施する一例を示す図である。
【図27】本発明の針一体型センサーの採血時における動作を側面側の断面で見たときの一例を示す図である。
【図28】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの採血時における動作を側面側の断面で見たときの一例を示す図である。
【図29】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーの採血時における動作を側面側の断面で見たときの他の例を示す図である。
【図30】本発明の針一体型バイオセンサーを暗所でランセット組込型測定装置に取り付けて測定を実施する一例を示す図である。
【図31】本発明の包装形態を有する針一体型バイオセンサーを収納する容器の一例を示す図である。
【図32】本発明の包装形態を有する吸引型針一体バイオセンサーを収納する容器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 基板
2 カバー
3 導電体
4 貫通穴
5 穿刺膜
6 非スペーサー部分
7 採血搬送路
8 接着剤層(スペーサー)
9 端子
10 穿刺採血口
11 空気排出口
12 穿刺針貫通路
13 電極反応部(試薬層)
14 採血導入ガイド
15 溝
16 密閉キャップ部
17 保護フィルム
18 強力接着部
19 脱着可能部
20 非接着部
21 針一体型バイオセンサー(センサーカートリッジ)
22 穿刺針フォルダー
23 外部駆動導入部
24 穿刺針固定基板
25 巻きバネガイド
26 穿刺針
27 巻きバネ
28 穿刺針ガイド
29 穿刺針移動部
30 穿刺針フォルダー基板
31 センサー基板フォルダー
32 センサー基板
33 センサーカバーフォルダー
34 センサーカバー
35 センサー基板固定具
36 センサー基板外面側
37 センサー基板内面側
38 センサーカバー内面側
39 センサーカバー外面側
40 透視のための破線
41 外部駆動
42 バイオセンサー本体
43 穿刺針駆動器
44 針一体型バイオセンサーカートリッジ導入部(針一体型バイオセンサーカート リッジフォルダー)
45 引き金部
46 操作パネル
47 表示部
48 操作ボタン
49 コネクター部
50 穿刺開始ボタン
51 滑り止め具
52 キャップ
53 鎹つきキャップ
54 指
55 採血
56 針一体型センサー収納ボックス
57 センサー切り離し部分(密閉キャップと保護フィルム)
58 伸縮性フィルム
59 逆流防止弁
60 通気性フィルム
61 穿刺針ハウジング
62 テーパー
63 フック
64 折り目


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の皮膚を突き刺して体液を採取するための穿刺針と体液の分析を行うためのバイオセンサー本体とが一体となって構成され、該穿刺針は、外部の駆動手段によってバイオセンサー本体を垂直方向に駆動して貫通し、皮膚を突き刺すように構成されている針一体型バイオセンサー。
【請求項2】
電気絶縁性の基板とカバーとに挟まれた空間に設置されたスペーサー、電極、採血搬送路、電極反応部、穿刺針が貫通してカバーに採血を注入するための穿刺採血口および穿刺採血口に対向する位置に貫通穴と針が貫通し得る膜(穿刺膜)を備えた基板または穿刺膜のみからなる基板で構成され、基板とカバーとを穿刺針が貫通し得る穿刺針貫通部を有し、穿刺針による被検体の皮膚への穿刺によって流出する血液が毛細管現象により穿刺採血口から採血搬送路、電極反応部へと導かれ、血液中の測定対象物質が電極反応部の試薬と反応した結果を電気化学的に計測するための電極反応部を有し、バイオセンサーの本体を穿刺針と一体化するためのフォルダーを備えた請求項1記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項3】
穿刺針貫通部を移動する穿刺針が電極反応部の試薬と接触しないように設置された請求項2記載のバイオセンサー。
【請求項4】
電極がレジスト層により規定された請求項2記載のバイオセンサー。
【請求項5】
基板とカバーとに挟まれたスペーサーの試料導入口および空気排出口におけるパターンをテーパーにした請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項6】
穿刺後に穿刺採血口から導入される採血が毛細管現象により採血搬送路内へ円滑に導入させるため、基板部に使用される穿刺膜が穿刺針の貫通後には毛細管現象を妨げないものである請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項7】
穿刺膜が天然材料、プラスチック、生分解性材料、形状記憶材料のいずれかで形成されている請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項8】
天然材料が紙、コラーゲン、セルロース、コットンのいずれかである請求項7記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項9】
プラスチックが発泡性材料、弾性材料、フィルム形成材料のいずれかである請求項7記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項10】
発泡性材料が人工皮膚である請求項7記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項11】
フィルム形成材料がセロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素系樹脂のいずれかである請求項9記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項12】
穿刺膜が材質の異なる2層以上の多層構造を有する請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項13】
穿刺膜が厚さ100μm以下の薄膜である請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項14】
穿刺針の動きに連動して開閉するシャッターがバイオセンサーの基板部に設けられている請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項15】
穿刺採血口が軟質材料で形成されている請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項16】
軟質材料がゲル、弾性材料、発泡性材料のいずれかである請求項15記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項17】
カバー平面上にある穿刺採血口の周囲または外郭に段差をつけ、その段差を試料導入口ガイドとする請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項18】
試料導入口ガイドをなす材質がゲル、弾性材料、発泡性材料のいずれかである請求項17記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項19】
穿刺前に穿刺採血口から穿刺位置へ向けて可視光領域の光が照射される請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項20】
可視光領域の光が有機ELまたはレーザー光線である請求項19記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項21】
レーザー光線が発光ダイオードにより照射される請求項20記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項22】
絶縁性基板上の端子がカバーで被覆され、該カバーは、外部端子が露出するように、折返し可能な折り返し線を有している請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項23】
絶縁性基板外側表面に接着および剥離が可能な保護フィルムが設けられた請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項24】
保護フィルムが絶縁性基板外側表面の少なくとも一部に強力に接着する部分を有する請求項23記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項25】
絶縁性基板の電極を含まない部分と絶縁性基板の電極を含む部分との境目に切断線があり、絶縁性基板の電極を含まない部分を該境目から切り離すことで空気排出口が開放される開口用のキャップ部を有する請求項2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項26】
キャップ部の少なくとも一部が保護フィルムと強力に接着する部分を有し、バイオセンサーの使用時にキャップをバイオセンサー本体から切り離すことで、保護フィルムも同時に剥離できる請求項25記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項27】
キャップおよび保護フィルムからなる包装体がバイオセンサーの使用後に元の状態に貼り直すことができる請求項2または26記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項28】
穿刺針は垂直方向に駆動するためのハウジング内に収納され、穿刺針ハウジング内には外部の駆動手段によって駆動した穿刺針がバイオセンサーを貫通し、被検体の皮膚を穿刺した後に元の位置に戻るための機構を備えた請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項29】
穿刺針の動作が外部から受ける駆動の方向と一致させるためのガイドが、穿刺針ハウジング内に設けられている請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項30】
穿刺針ハウジング内の穿刺針が元の位置に戻るための機構が、バネまたは伸縮性フィルムのいずれかである請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項31】
ハウジング内のバネが巻きバネであることを特徴とする請求項30記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項32】
巻きバネの動作が穿刺針の動く方向と一致させるためのガイドが、ハウジング内に設けられている請求項31記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項33】
伸縮性フィルムが穿刺針ハウジング上部平面の少なくとも一部または全部に接着固定されている請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項34】
伸縮性フィルムが穿刺針ハウジング上部平面の全部に接着固定されることで、穿刺針ハウジング内部が密栓状態となる請求項33記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項35】
外部からの駆動により密栓状態の穿刺針ハウジング内に急激に加わる圧力を和らげる内部圧力調整機構を設けた請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項36】
圧力を和らげる機構が逆流防止弁による請求項35記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項37】
逆流防止弁が穿刺針ハウジング内の空気を外部へ排気する方向に設けた請求項36記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項38】
外部の駆動によって穿刺後、気密状態にある穿刺針ハウジング内が陰圧となり、それが採血を搬送路へ導入する吸引力となる請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項39】
伸縮性フィルムが穿刺針固定基板と接着固定されている請求項33記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項40】
バイオセンサーへの採血導入に必要な空気排出口に通気性フィルムを備えた請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項41】
穿刺針が光触媒作用を有する請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項42】
穿刺針ハウジングの上部に簡易包装用のキャップを備えた請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項43】
簡易包装用キャップが穿刺針ハウジングと鎹で連結してある請求項42記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項44】
カートリッジ式である請求項1または2記載の針一体型バイオセンサー。
【請求項45】
使い捨てタイプである請求項44記載の針一体型バイオセンサーカートリッジ。
【請求項46】
簡易包装タイプである請求項44記載の針一体型バイオセンサーカートリッジ。
【請求項47】
廃棄するときに再包装が可能な簡易包装タイプである請求項44記載の針一体型バイオセンサーカートリッジ。
【請求項48】
感染症患者およびペットへの応用が可能な請求項44記載の針一体型バイオセンサーカートリッジ。
【請求項49】
請求項44乃至48のいずれかに記載の針一体型バイオセンサーカートリッジを複数個収納した針一体型バイオセンサーカートリッジ包装体。
【請求項50】
請求項44乃至48のいずれかに記載の針一体型バイオセンサーカートリッジと、針一体型バイオセンサーカートリッジをスライドさせ、セットする針一体型バイオセンサーカートリッジ導入部、針一体型バイオセンサーカートリッジの電極における電気的な信号を捉えるコネクター部、コネクター部を介して電気的な値を計測する計測部、計測のための操作パネル部、計測部における計測値を表示する表示部、計測値を保存するメモリ部、穿刺針の駆動部、駆動部引き金部および穿刺針による穿刺を開始する穿刺開始ボタンを備えた針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項51】
計測部における計測方法が、ポテンシャルステップクロノアンペロメトリー法、クーロメトリー法またはサイクリックボルタンメトリー法である請求項50記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項52】
穿刺針の外部の駆動手段が、穿刺針を駆動させた後、元の位置に戻る機構を備えた請求項50または51記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項53】
被検体の皮膚を穿刺する深度が調整可能な機構を有する請求項50乃至52のいずれかに記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項54】
電波時計により刻まれた正確な時刻に基づいて、採血中の成分測定結果が記録される請求項50乃至53のいずれかに記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項55】
温度補正、ヘマトクリット値に関連した血糖値自動補正、バイオセンサー校正、暗所における表示部および穿刺部の手動照明または自動照明、音声ガイド、音声認識、表示向き自動切換え、無線通信、充電の少なくとも一つの機能を備えた請求項50乃至54のいずれかに記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項56】
測定装置の穿刺駆動の引き金を引くのと連動して照明機能が作動し、採血導入部から照射された光が被検体の穿刺部分を照らす請求項50乃至55のいずれかに記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項57】
ヘマトクリット値の測定がバイオセンサー内における移動速度を測定して行なわれる請求項50乃至56のいずれかに記載の針一体型バイオセンサー用測定装置。
【請求項58】
針一体型バイオセンサーカートリッジを穿刺針への駆動手段を備えた測定装置にセットして、引き金を引くことで測定が可能な状態となり、被検体に測定装置の先端を当て、穿刺開始スイッチを押すことで、穿刺、採血、測定の一連の操作が自動的になされ、その結果が測定装置の表示部に表示されることを特徴とする請求項50〜57のいずれかの針一体型バイオセンサー用測定装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2006−239062(P2006−239062A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57286(P2005−57286)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】