説明

鉄ニッケル(FeNi)含有スラッジを利用したステンレスの溶解原料の製造方法

【課題】 本発明によれば、スラッジからClを完全に除去せず、ステンレス鋼の原料として使用することにおいて、Clの蒸発による環境問題がないため、ステンレス鋼の原料化ができるようにするものである。
【解決手段】
Fe、Ni、Cl含有スラッジを活用してステンレス鋼の溶解原料に製造する方法が提供される。この方法は、Fe、Ni、Clが含まれるスラッジの中和過程において水酸化カルシウムの投入モル比(水酸化カルシウムの投入モル数/存在するClモル数)が0.5−1.5になるように水酸化カルシウムを投与し、中和する段階と、前記中和段階で得たスラッジを濾過乾燥し、粉砕する段階と、前記乾燥粉末100重量部に対して還元剤を5−15重量部混合する段階と、前記混合粉末100重量部にセメントのバインダを5−15重量部添加し、成形する段階と、前記成形体を養生する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFe、Ni、Clが含まれたスラッジを再活用する方法に関し、より詳細にはClを非揮発性の安定化合物にし、スラッジ内のFeNiを有効に再活用することができる方法に関する。本発明によれば、Fe、Ni、Clが含まれたスラッジをステンレス鋼の溶解原料として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
FeNi含有スラッジは、シャドーマスクの製造工程のエッチング工程等で生じる。
【0003】
シャドーマスクは、Niを含有したFe合金、即ち、インバー(Invar)合金をFeClエッチング液で局部エッチングする工程を通じて連続的にエッチング作業をする。エッチング作業では、下記のような反応によりインバー合金母材は溶解され、溶液内にはFeClとNiClが生じる。
【0004】
[反応式1]
2FeCl+Ni=2FeCl+NiCl
【0005】
[反応式2]
2FeCl+Fe=3FeCl
【0006】
エッチング作業がある程度進み、FeClとNiClの含有量が多くなると、エッチング能力が落ちるが、このような現象を溶液の疲労度が増加したと言う。従って、疲労度の管理のために特定の濃度以上FeClとNiClの混入量が増えると、溶液は廃棄され、新たなFeCl溶液を使用しなければならない。
【0007】
このように発生したエッチング廃液は、Fe粉末処理をし、NiをFe粉末に置換させて除去した後、溶液を塩素酸化してFeClとして再活用する方法(特許文献1)が主に用いられている。
【0008】
前記FeClの再活用方法は、前記反応式1により生成されたNiイオンを電気化学的に置換析出させる方法に関するもので、この反応式は下記反応式3のようである。
【0009】
[反応式3]
NiCl+2Fe=FeNi+FeCl
【0010】
前記反応式3により生成されたFeNiスラッジを再活用する方法として、FeOOHとNiOに分離して回収する方法が提案された(特許文献2)。前記のFeNiスラッジの再活用方法について説明すると、以下のようである。
【0011】
即ち、FeNi含有スラッジを塩酸にpH3〜4になるよう溶解させて鉄塩化物及びニッケル塩化物含有水溶液を製造し、前記塩化物含有水溶液に空気を取り入れて酸化させることでFeClをFeClに酸化させる。
【0012】
次に、前記のように生成されたFeClをpH3〜5で水と反応させてオレンジ色の水酸化鉄(FeOOH)核を形成した後、酸化雰囲気下で溶液中のFeモル数の最大2倍のモル数で、また、pH3〜5に保持されるようにアルカリを添加しながら温度を40〜70℃に調節して水酸化鉄スラッジを形成する。次に、前記のように形成された水酸化鉄スラッジを濾過して水酸化鉄スラッジとニッケル塩化物含有濾液を分離し、水酸化鉄スラッジを水洗いをして水酸化鉄を得る。また、濾過時に分離された濾液にはpH10以上になるようにアルカリを添加し、水酸化ニッケルの沈殿物を形成し、濾過及び水洗いして水酸化ニッケルを得る。しかし、前記のFeNiスラッジの再活用方法は工程が複雑で、且つ回収されるFeOOHの活用が制限される等の問題点がある。
【0013】
よって、本発明者らは、前記FeNiスラッジを活用し、FeとNiが含まれた金属粉末で回収する技術を開発し特許出願した(特許文献3)。
【0014】
前記の技術によって回収されたFeとNiが含まれた金属粉末をステンレス鋼用の原料として使用する場合、転炉に投入時に、粉塵状態で飛散し、実際の歩留まりの低下等の問題点が発生するため、粉末を塊状化し合金塊を製造する工程が必要となる。
【0015】
よって、本発明者らは、FeNi含有金属粉末を水素等の還元性ガスを利用して還元焼結させる方法としてFeNi合金塊を製造する技術を開発し、特許出願した(特許文献4)。
【0016】
しかし、前記方法はClを除去するために、水洗いまたは脱Cl熱処理工程が必要であり、別途の還元工程が求めれらて費用が高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】日本公開特許1995−87474
【特許文献2】大韓民国特許出願1998−56697
【特許文献3】大韓民国特許出願第2004−0107059
【特許文献4】大韓民国特許出願第2005−69124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、FeNi含有スラッジ内のClを非揮発性の安定化合物にし、Clを完全に除去しなくても製鉄所の溶解炉における溶解原料として使用することができるステンレス鋼の溶解原料の製造方法を提供しようするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するための本発明のスラッジをFeNi成形体に製造する方法は、Fe、Ni、Clが含まれるスラッジの中和過程でスラッジに水酸化カルシウムの投入モル比(水酸化カルシウムの投入モル数/存在するClモル数)が0.5−1.5になるように水酸化カルシウムを投与し、中和する段階と、前記中和段階で得たスラッジを濾過乾燥し、粉砕する段階と、前記乾燥粉末100重量部に対して還元剤を5−15重量部混合する段階と、前記混合粉末100重量部にセメントのバインダを5−15重量部添加し、成形する段階と、前記成形体を養生する段階を含んで構成される。
【0020】
本発明において、前記Fe、Ni、Clが含まれるスラッジの最も好ましい例は、シャドーマスクの製造工程で発生するエッチング(etching)廃液を再活用する工程で発生する2次廃棄物であるFeNi含有スラッジである。本発明における還元剤の例としては、炭素、フェロシリコン、アルミニウムのグループから選択される少なくとも1種である。本発明の一実施例により、前記養生は含水率が10%以下になるようにすることである。前記成形する段階は混合粉末をペレット化することである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、FeNi含有スラッジを、より経済的でありながら環境に無害にステンレス鋼原料として資源化することができる。さらに、得られた溶解原料は、ステンレス溶解炉に直投入して使用することに伴う分化及び未還元による原料消失の問題を最小化することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に対して説明する。
【0023】
本発明は、Fe、Ni、Clが含まれたスラッジからClを除去する代わりに熱処理時に揮発しない物質に完全に変換させることにより環境問題を起こさせず、FeNiを有効な資源として活用できるようにすることに特徴がある。本発明により得られる成形体はFeNiを有効資源に使用できる分野に適用可能で、その代表的な例がステンレス鋼の溶解原料である。ペレット化したスラッジをステンレス溶解炉に直接装入することができ、別途の還元過程を省略することができる。
【0024】
本発明は、Fe、Niスラッジを活用しステンレス鋼の製造原料等に用いられるFeNi合金塊を製造することができる方法に適用される。
【0025】
本発明により活用されることができるFeNi含有スラッジは、特に限定はされないが、スラッジにFe、Niが含まれたものであれば適用可能である。本発明に活用されることができるFe、Ni含有スラッジの代表的な例は、電子会社のシャドーマスクの製造工程で発生するエッチング廃液を再活用する工程において発生する2次廃棄物であるFe、Ni含有スラッジを挙げることができる。
【0026】
本発明によりスラッジを再活用してFeNi合金塊を製造するためには、先ずFeNi含有スラッジに含まれているClを非揮発性の安定化合物にするための技術が先決されるべきである。
【0027】
従来は、Clを完全に除去するために、含有スラッジを中和剤で中和水洗いをしClを除去する方法及びFeNi含有スラッジを600−900℃で熱処理しClを除去する方法を用いた。これはFeNiスラッジの生成反応、即ち、前記反応式3が水溶液中で起こるため、FeClがスラッジ内に含まれている。また、前記反応式3の反応中にFeとNiが不動態化することによって相当量がFe、Ni水酸化物の形態で存在するため、この水酸化物を得ることができる。
【0028】
前記の還元熱処理時、反応式3でFeNiスラッジに含まれたFeClと不働態化したスラッジ内のCl含有により熱処理時に設備腐食を起こし、有毒ガスび埃を多量に放出するために、事前に脱塩素(Cl)処理をしなければならない。
【0029】
即ち、Cl含有スラッジにCa(OH)等のような中和剤を加えて当量点(水酸化カルシウムの投入モル数/存在するClモル数=0.5)に至るように、pH=9−12に高めると、金属成分のFeNiは反応はしないが、Clを含有した成分は下記反応式4及び5のような反応を起こすようになる。
【0030】
[反応式4]
FeCl+Ca(OH)=Fe(OH)+CaCl
【0031】
[反応式5]
2(Fe、Ni)(OH)Cl+Ca(OH)=2(Fe、Ni)(OH)+CaCl
【0032】
即ち、中和剤を加えると、FeClは無論、不動態スラッジ内のClも中和されてCaClが形成され、CaClは可溶性塩であるため、固状物質である2(Fe、Ni)(OH)等を濾過してから、後続の水洗いだけでも除去可能であり、Fe、Niを損失することなくClを除去する方法を用いた。
【0033】
しかし、この方法は、前述のように多くの水を使用し、反復洗浄をしなければならず、特に反応式5の反応は非常に遅く、単純な中和/濾過のみをする場合、2(Fe、Ni)(OH)Clが中和濾過の産物に含まれるため、反復中和攪拌を長時間行い、反復水洗いが求められ、水洗い及び費用が高いという短所があった。
【0034】
しかし、本発明者は、前記実験途中、過剰のCa(OH)を中和理論当量比(=水酸化カルシウムの投入モル数/存在するClモル数)である0.5以上加えた場合、一例の当量比(1.5/2=0.75)で下記のような反応が起こって問題点が解決できることが分かった。この際、溶液のpH=12以上となり、水酸化カルシウムの溶解度の特性上pH=12.6以上増加せず水酸化カルシウムは固状で残留する。
【0035】
[反応式6]
FeCl+1.5Ca(OH)=Fe(OH)+CaCl
+0.5 Ca(OH)
【0036】
[反応式7]
2(Fe、Ni)(OH)Cl+1.5 Ca(OH)=2(Fe、Ni)(OH)+CaCl
+0.5 Ca(OH)
【0037】
即ち、理論当量比より過剰の水酸化カルシウムを加えると、CaClと残余水酸化カルシウムが反応物に残るようになる。
【0038】
前記反応物をフィルタープレス等の濾過機で濾過すると、下記のような3種類の産物が得られる。
【0039】
1番目に、FeNi水酸化物は、反応物であるFe(OH)、(Fe、Ni)(OH)と一部の反応が遅くて混入された(Fe、Ni)(OH)Clが反応濾過物に含まれる。
【0040】
2番目に、CaClは可溶性であるため、濾過中に水に溶けているClは相当量が除去され、スラッジに含まれる水に溶けているのは一部が反応濾過物に含まれる。
【0041】
3番目に、Ca(OH)は水に対する溶解度が大きくないため、前記反応物を濾過すると、一部のみが溶解されて80%以上の歩留まりで回収される。
【0042】
前記1番目の産物は、鉄ニッケルの水酸物中にClを含んだ水酸化物、即ち、(Fe、Ni)(OH)Clは後続のステンレス鋼の溶解原料の投入時に、NiClに変わって蒸発するため、原料損失と環境問題を引き起こす。
【0043】
しかし、3番目の産物である過剰のCa(OH)はステンレス溶解炉の投入時にCaOに変化しながら1番目の産物である(Fe、Ni)(OH)Clと先ず反応を起こし、下記のような反応が起こる。
【0044】
[反応式8]
2(Fe、Ni)(OH)Cl+CaO=CaCl+2(Fe、Ni)O+H
【0045】
従って、過剰の水酸化カルシウムの投与はCaClを作る。CaClは1400℃−1500℃の高温の溶解炉でも分解されない安定な化合物であり、特に炉内でスラグに形成され安定して排出されるため、環境問題を全く引き起こさない。
【0046】
スラッジに水酸化カルシウムを投入する投入モル比(=水酸化カルシウムの投入モル数/存在するClモル数)は0.5−1.5が好ましい。投入モル比の下限である0.5は残留水酸化カルシウムを作るための最小の投入量であり、1.5を超えて投入すると効果はこれ以上大きくならず、原料費増加及びNi濃度の低下という問題が生じる。
【0047】
スラッジ内の通常のCl濃度が平均10.5%(スラッジ100g当りに10.5gCl=0.295モルCl)であるため、当然、スラッジ100g当り水酸化カルシウムは10.9g(0.295×0.5モル×74g/モル)以上投与し、32.745(0.295×1.5モル×74g/モル)以下投与する方式で重量部に換算して投入することができる。
【0048】
一方、前記濾過したスラッジは乾燥をさせた後、粉砕して粉末化し、乾燥スラッジ100重量部対比還元剤が5−15重量部になるよう混合する。
【0049】
それは、還元剤が5重量部未満では還元が不十分であり、15重量部を超えるとこれ以上の還元率の増加が困難であり、還元剤の費用のみがかかるためである。
【0050】
還元剤とは、ステンレス溶解炉内において反応式8で生成されたFeNi酸化物を還元し、金属FeNiにするためのものである。この反応は溶湯中で行われるため、溶融還元と言える。このような還元剤としてはカーボン、金属アルミニウム、フェロシリコン等を挙げることができる。
【0051】
還元反応は以下の通りである。
(FeNi)O+C=FeNi+CO
(FeNi)O+Al=FeNi+Al
(FeNi)O+FeSi=2FeNi+SiO
【0052】
還元剤が混合された粉末は、炉内に投入すると粉塵で排出されるため、塊状化しなければならない。
【0053】
塊状化は、少しの水を加えながら5−15%のセメントを添加して球状のペレット(pelletizing)の製造過程を通じて製造することができる。セメントバインダの添加量が5%未満では目標圧縮強度(100kg/cm)を得ることができず、15%を超えると圧縮強度が殆ど増加せず、スラグの処理量のみが増加するためである。セメントはポートランドセメント、高炉セメント等の通常のセメントのみが使用可能である。このようなセメントにはCaO、SiO、Al等が含まれる。
【0054】
バインダとしてのセメントの種類は、特に制限はしないが、セメント系バインダはCaO成分を多量に含むため、反応式8によるClの非揮発反応物の誘導に寄与することができる。塊状化の方法は、特に限定はされないが、ブリケッティング等の多様な方法を用いることができる。
【0055】
セメントバインダを用いる場合、ペレットは5−15日間の自然乾燥養生を通じて高強度のペレットを得ることができる。乾燥期間は特に制限はないが、最終製造製品の含水率が10%以下になるようにすることが好ましい。10%を超えるとステンレス炉況を(還元率の低下)悪くし、電気炉操業において制限されるためである。
【0056】
本方法により製造されたペレットは、ステンレス溶解炉に投入される場合、フェロニッケルで回収され、Clは安定なCaCl形態のスラグで排出されて環境に問題なくFeNiを経済的に回収することができる。前記ペレットは単にステンレス溶解炉に投入されることのみに限定されず、フェロニッケルを製造するために製錬所の原料としても使用可能である。
【0057】
以下、本発明を、実施例を通じてより具体的に説明する。
【0058】
[実施例1]
FeClエッチング液の再活用の工程において発生するFeNi含有スラッジを活用し、諸般変数を変えてステンレス鋼の溶解原料用のFeNi含有ペレットを合成した。
【0059】
先ず、前記FeNiスラッジの平均Cl含量を分析した結果、10.5%(スラッジ100g当たりに10.5gCl=0.295モルCl)であることを確認することができた。
【0060】
このようなFeNiCl含有スラッジ100gを水1リットルに溶かしてから、このスラッジを含んだ水溶液に中和剤の種類及び中和剤の投入量(スラッジ内のClに対するモル比)を変えて中和した。前記段階において水溶液内で発生するスラッジを固液分離機で濾過し、濾過液とスラッジに分離した。前記段階で得た濾過スラッジを乾燥してから、乾燥スラッジ100gに対して還元剤の種類と添加量を変えながらコークス、アルミニウム、フェロシリコンを夫々投与した。
【0061】
前記スラッジ100gに対してセメントのバインダの添加量を変えて添加し、ペレッタイザーを用いて40mmのサイズの球形ペレットを製造した。製造されたペレットを7日間養生して含水量を10%以下にしてから、圧縮強度を測定した。
【0062】
一方、製造されたペレットを1450℃でステンレス電気炉シミュレーターにおいて加熱し、還元産物及びガス発生の有無を観察した。
【0063】
溶融還元されたFeNiスラッジは金属相と非金属(slag)相に分離され、スラグ相から分離された金属はフェロニッケルであった。スラグの成分はセメントのバインダによるSiO、CaO、Alと一部の試料は未還元Fe、NiO等が混合されていた。CaClが相当数含まれてスラッジ内のClは揮発せず、スラグで排出されることを確認することができた。投入されたFeNiの総量に対する回収されたFeNi金属の割合(金属化率)を計算し、表1に示した。
【0064】
一方、電気炉シミュレーターで塩素ガスの発生量を定量するために、熱処理炉の後端に発生ガス中の塩素を吸収する水トラップ(water trap)を設けて熱処理中に発生するClを採集した後、この溶液内のClを分析し熱処理中のCl発生量を測定した。表1に実験条件による熱処理中のCl発生量を(mg/l)で表1に表した。
【0065】
【表1】

【0066】
中和剤として水酸化カルシウムを用いると熱処理中にClが発生せず、Cl分析trapにClが検出されないが、NaOH、NHOHを用いるとClが検出される。また、Clが揮発されてNiの損失が生じ、これにより金属化率も低くなる(比較材1、2)。
【0067】
中和剤の投入量はスラッジ100g当りに存在するClモル数に対する中和剤の投入モル比が0.5未満であれば(比較材3)、Clが揮発した。投入モル比が0.5−1.5の場合、Clは揮発せず、スラグで排出された。しかし、投入モル比が多すぎると(比較材4)、返って還元がうまく起こらずスラグの発生量も多くなって不利であった。
【0068】
還元剤はコークス(C)、金属Al、フェロシリコン金属のうち1種以上の添加が可能であり、添加量が5%未満であると(比較材6)還元が不十分であり、添加量が20%を超えるとそれ以上還元率が増加しない(比較材5)。セメントバインダの添加量が少なすぎると(比較材7)、ペレットの圧縮強度が低くて、現場で落下投入時に分化が生じるため好ましくない。また、投入しすぎると、スラグのみが増えて、金属の還元率は多少低下するため好ましくない(比較材8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、Ni、Clが含まれるスラッジに水酸化カルシウムの投入モル比(水酸化カルシウムの投入モル数/存在するClモル数)が0.5−1.5になるように水酸化カルシウムを投与し、中和する段階と、
前記中和段階で得たスラッジを濾過乾燥し、粉砕する段階と、
前記乾燥粉末100重量部に対して還元剤を5−15重量部混合する段階と、
前記混合粉末100重量部にセメントのバインダを5−15重量部添加し、成形する段階と、前記成形体を養生する段階を含む鉄ニッケル(FeNi)含有スラッジを用いるステンレス鋼の溶解原料の製造方法。
【請求項2】
前記Fe、Ni、Clが含まれるスラッジは、シャドーマスクの製造工程において発生するエッチング廃液を再活用する工程で発生する2次廃棄物であるFeNi含有スラッジであることを特徴とする請求項1に記載の鉄ニッケル(FeNi)含有スラッジを用いるステンレス鋼の溶解原料の製造方法。
【請求項3】
前記還元剤は炭素、フェロシリコン、アルミニウムのグループから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の鉄ニッケル(FeNi)含有スラッジを用いるステンレス鋼の溶解原料の製造方法。
【請求項4】
前記養生は、含水率が10%以下になるようにすることを特徴とする請求項1に記載の鉄ニッケル(FeNi)含有スラッジを用いるステンレス鋼の溶解原料の製造方法。
【請求項5】
前記成形する段階は、混合粉末をペレット化することであることを特徴とする請求項1に記載の鉄ニッケル(FeNi)含有スラッジを用いるステンレス鋼の溶解原料の製造方法。

【公表番号】特表2010−513715(P2010−513715A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542641(P2009−542641)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006635
【国際公開番号】WO2008/075879
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(592000705)リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー (12)
【Fターム(参考)】