説明

鉄筋コンクリート版

【課題】せん断補強が施された構造鉄筋を備え、かつ、現場で構造鉄筋を容易に組み立てることができて現場での施工性に優れた、鉄筋コンクリート版を得る。
【解決手段】主鉄筋11,12及び配力鉄筋21,22を有し、かつ、せん断補強が施された構造鉄筋と、この構造鉄筋を包含するように打設されたコンクリート30とを備えた鉄筋コンクリート版であって、主鉄筋11,12にせん断補強を施してなる多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋10と配力鉄筋21,22にせん断補強を施してなる多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20とを、並列配置されている主鉄筋用ラチストラス鉄筋10に該各主鉄筋用ラチストラス鉄筋の開口部を通るように配力筋用ラチストラス鉄筋20を該配力筋用ラチストラス鉄筋全長にわたって貫き通した状態で、格子状に交差させることにより、構造鉄筋が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造鉄筋とこの構造鉄筋を包含するように打設されたコンクリートとを備えてなる鉄筋コンクリート版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、鉄筋コンクリート版は、構造鉄筋と、この構造鉄筋を包含するように打設されたコンクリートとを備えたものである。図6は従来の鉄筋コンクリート版の構造鉄筋を示す平面図、図7は図6の構造鉄筋のA矢視正面図である。
【0003】
図6に示すように、従来の鉄筋コンクリート版の構造鉄筋は、直交する縦横二方向のうち一方の方向に延び、互いに平行をなす多数の主鉄筋50と、前記縦横二方向のうち他方の方向に延び、互いに平行をなす多数の配力鉄筋60とを、格子状に配置し、十字に交差する各交点を溶接によって接合して構成されている。
【0004】
そして、図7に示すように、多数の前記主鉄筋50のそれぞれは、直線状をなして上下に平行配置された上側の圧縮主鉄筋51と下側の引張主鉄筋52によって構成されており、また、多数の前記配力鉄筋60のそれぞれは、直線状をなして上下に平行配置された上側の圧縮配力鉄筋61及び下側の引張配力鉄筋62によって構成されている。これらの主鉄筋50と配力鉄筋60は、曲げに対して抵抗する鉄筋である。70は、縦横に格子状に配置されたこれらの主鉄筋50と配力鉄筋60とを備えた構造鉄筋を包含するように打設されるコンクリートである。
【0005】
このように、一般に、鉄筋コンクリート版には、コンクリート梁とは違って、面外方向(厚み方向)に作用するせん断力に対するせん断補強鉄筋が備えられていることはほとんどない。
【0006】
せん断補強が施された鉄筋コンクリート版については、現状では、格子状に配置された主鉄筋と配力鉄筋との交差位置に現場での手作業によってせん断補強鉄筋を取り付けるようになされており(特開2006−283287号公報、図11)、多大の手間がかかるため、現場での施工性に優れた鉄筋コンクリート版が要望されている。
【特許文献1】特開2006−283287号公報(図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、せん断補強が施された構造鉄筋を備え、かつ、現場で構造鉄筋を容易に組み立てることができて現場での施工性に優れた、鉄筋コンクリート版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
請求項1の発明は、主鉄筋及び配力鉄筋を有し、せん断補強が施された構造鉄筋と、この構造鉄筋を包含するように打設されたコンクリートとを備えた鉄筋コンクリート版であって、前記構造鉄筋が、多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋と多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋とを格子状に交差させて配置し、十字に交差する各交点を接合して構成されており、前記多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋の各々が、直線状をなして上下に平行配置された圧縮主鉄筋及び引張主鉄筋と、この圧縮主鉄筋と引張主鉄筋とを交互に結ぶように連続波型状に形成されて延びる主筋用ラチス鉄筋とによって構成されるとともに、前記多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋の各々が、直線状をなして上下に平行配置された圧縮配力鉄筋及び引張配力鉄筋と、この圧縮配力鉄筋と引張配力鉄筋とを交互に結ぶように連続波型状に形成されて延びる配力筋用ラチス鉄筋とによって構成されており、かつ、前記多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋と前記多数の配力筋用ラチストラス鉄筋とが、並列配置されている主鉄筋用ラチストラス鉄筋に該各主鉄筋用ラチストラス鉄筋の開口部を通るように配力筋用ラチストラス鉄筋を配力筋用ラチストラス鉄筋全長にわたって貫き通した状態で、格子状に交差させて配置されていること、を特徴とする鉄筋コンクリート版である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の鉄筋コンクリート版において、前記鉄筋コンクリート版が床版として用いられるものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鉄筋コンクリート版は、主鉄筋にせん断補強を施してなる多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋と配力鉄筋にせん断補強を施してなる多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋とを備え、これら多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋と多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋とを、並列配置されている主鉄筋用ラチストラス鉄筋に該各主鉄筋用ラチストラス鉄筋の開口部を通るように配力筋用ラチストラス鉄筋を該配力筋用ラチストラス鉄筋全長にわたって貫き通した状態で、格子状に交差させることにより、構造鉄筋を構成するようにしている。よって、本発明によれば、予め、工場で主鉄筋用ラチストラス鉄筋及び配力鉄筋用ラチストラス鉄筋を製作しておき、これらを用いることにより、現場にて、せん断補強が施された構造鉄筋を容易に組み立てることができ、せん断補強が施された構造鉄筋を備え、かつ、現場での施工性に優れた、鉄筋コンクリート版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態による鉄筋コンクリート版の構造鉄筋を示す平面図である。
【0014】
本実施形態による鉄筋コンクリート版は、構造鉄筋と、この構造鉄筋を包含するように打設されるコンクリート30とを備えたものである。本実施形態による鉄筋コンクリート版の構造鉄筋は、図1に示すように、直交する縦横二方向のうち一方の方向(図例では図1における横方向)に延び、互いに平行をなす多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋10と、前記縦横二方向のうち他方の方向(図例では図1における縦方向)に延び、互いに平行をなす多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20とを、格子状に配置し、十字に交差する各交点を溶接によって接合して構成されている。
【0015】
図2は図1における主鉄筋用ラチストラス鉄筋の正面図である。
【0016】
図2に示すように、各主鉄筋用ラチストラス鉄筋10は、直線状をなして上下に所要間隔で平行配置された上側の圧縮主鉄筋11と下側の引張主鉄筋12と、この圧縮主鉄筋11と引張主鉄筋12とを交互に結ぶように連続波型状に形成されて延びる主筋用ラチス鉄筋13とによって構成されている。
【0017】
そして、本実施形態では、主筋用ラチス鉄筋13の上側の各頂部13aは、それぞれ、圧縮主鉄筋11に該圧縮主鉄筋上部に位置するように溶接によって接合され、主筋用ラチス鉄筋13の下側の各頂部13bは、それぞれ、引張主鉄筋12に該引張主鉄筋下部に位置するように溶接によって接合されている。このように、主鉄筋11,12にせん断補強を施してなる主鉄筋用ラチストラス鉄筋10が構成されている。
【0018】
図3は図1における配力鉄筋用ラチストラス鉄筋の正面図である。
【0019】
図3に示すように、各配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20は、直線状をなして上下に前記主鉄筋用ラチストラス鉄筋10よりも狭い所要間隔で平行配置された上側の圧縮配力鉄筋21と下側の引張配力鉄筋22と、この圧縮配力鉄筋21と引張配力鉄筋22とを交互に結ぶように連続波型状に形成されて延びる配力筋用ラチス鉄筋23とによって構成されている。
【0020】
そして、本実施形態では、圧縮配力鉄筋21と引張配力鉄筋22間に配力筋用ラチス鉄筋23が挟まれる状態で、配力筋用ラチス鉄筋23の上側の各頂部23aは、それぞれ、圧縮配力鉄筋21に溶接によって接合され、配力筋用ラチス鉄筋23の下側の各頂部23bは、それぞれ、引張配力鉄筋22に溶接によって接合されている。このように、配力鉄筋21,22にせん断補強を施してなる配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20が構成されている。
【0021】
図4は図1の構造鉄筋のA矢視正面図、図5は図1の構造鉄筋のB矢視側面図である。
【0022】
そして、本実施形態による鉄筋コンクリート版は、前記のように構成される多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋10と多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20とを備え、これら多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋10と多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20とを、図4,図5に示すように、並列配置されている主鉄筋用ラチストラス鉄筋10に該各主鉄筋用ラチストラス鉄筋10のほぼ三角形状をなす開口部を通るように配力筋用ラチストラス鉄筋20を該配力筋用ラチストラス鉄筋全長にわたって貫き通した状態で、格子状に交差させることにより、構造鉄筋を構成するようにしている。
【0023】
よって、予め、工場で主鉄筋用ラチストラス鉄筋10及び配力鉄筋用ラチストラス鉄筋20を製作しておき、これらを用いることにより、現場において、せん断補強が施された構造鉄筋を容易に組み立てることができるので、せん断補強が施された鉄筋コンクリート版を容易に製作することができる。そして、本発明による鉄筋コンクリート版は、床版として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による鉄筋コンクリート版の構造鉄筋を示す平面図である。
【図2】図1における主鉄筋用ラチストラス鉄筋の正面図である。
【図3】図1における配力鉄筋用ラチストラス鉄筋の正面図である。
【図4】図1の構造鉄筋のA矢視正面図である。
【図5】図1の構造鉄筋のB矢視側面図である。
【図6】従来の鉄筋コンクリート版の構造鉄筋を示す平面図である。
【図7】図6の構造鉄筋のA矢視正面図である。
【符号の説明】
【0025】
10…主鉄筋用ラチストラス鉄筋
11…圧縮主鉄筋
12…引張主鉄筋
13…主筋用ラチス鉄筋
20…配力鉄筋用ラチストラス鉄筋
21…圧縮配力鉄筋
22…引張配力鉄筋
23…配力筋用ラチス鉄筋
30…コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鉄筋及び配力鉄筋を有し、せん断補強が施された構造鉄筋と、この構造鉄筋を包含するように打設されたコンクリートとを備えた鉄筋コンクリート版であって、
前記構造鉄筋が、多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋と多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋とを格子状に交差させて配置し、十字に交差する各交点を接合して構成されており、
前記多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋の各々が、直線状をなして上下に平行配置された圧縮主鉄筋及び引張主鉄筋と、この圧縮主鉄筋と引張主鉄筋とを交互に結ぶように連続波型状に形成されて延びる主筋用ラチス鉄筋とによって構成されるとともに、前記多数の配力鉄筋用ラチストラス鉄筋の各々が、直線状をなして上下に平行配置された圧縮配力鉄筋及び引張配力鉄筋と、この圧縮配力鉄筋と引張配力鉄筋とを交互に結ぶように連続波型状に形成されて延びる配力筋用ラチス鉄筋とによって構成されており、
かつ、前記多数の主鉄筋用ラチストラス鉄筋と前記多数の配力筋用ラチストラス鉄筋とが、並列配置されている主鉄筋用ラチストラス鉄筋に該各主鉄筋用ラチストラス鉄筋の開口部を通るように配力筋用ラチストラス鉄筋を配力筋用ラチストラス鉄筋全長にわたって貫き通した状態で、格子状に交差させて配置されていること、
を特徴とする鉄筋コンクリート版。
【請求項2】
前記鉄筋コンクリート版が床版として用いられるものであることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−101044(P2010−101044A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272251(P2008−272251)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】