説明

鉄筋結束機のワイヤ端部保持機構

【課題】常に確実にワイヤの両端を鉄筋の裏側にとどめることができるとともに、ワイヤ片が詰まるのを良好に防止する。
【解決手段】結束機本体に装着したワイヤリールからワイヤ5を引き出して先端に設けたガイド部6に送り、ワイヤに巻き癖を付けて鉄筋のまわりに巻き回した後にワイヤ5の終端部を切断するとともに、巻き回した部分を捩って鉄筋を結束する鉄筋結束機において、ガイド部6の内面に固定されてワイヤ5の送り方向に沿うようにワイヤ貫通孔17が貫通形成された切断型14と、切断型14の周囲に回動可能に設けられて回動時に刃部がワイヤ貫通孔17を貫通したワイヤ5の終端部をワイヤ貫通孔17の開口面に沿って切断するカッタ本体15とを有するワイヤ切断機構を備え、カッタ本体15の刃部15aには、カッタ本体15が回動したとき、切断したワイヤ5の端部近傍に係合して該端部近傍を折り曲げて保持可能な係合部30を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤリールから引き出したワイヤを結束機本体の先端に設けたガイド部から鉄筋のまわりに送り出してその周囲にループ状に巻き回した後に捩って鉄筋を結束する鉄筋結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋結束用のワイヤは、特許文献1、2に示されるように、鉄筋結束機の先端に設けられた嘴状のガイド部を交叉した2本の鉄筋の表側又は上から反対側に差し込み、鉄筋結束機のワイヤリールから引き出して上記ガイド部で巻き癖をつけたワイヤをカールさせながら送り出して鉄筋のまわりにループ状に巻き回すように構成されている。ワイヤを鉄筋のまわりに巻き回した後、ワイヤの終端部をカッターで切断し、ワイヤループの一部を捩り用フックで掴んで回転させることによりワイヤを捩じり、鉄筋を緊縛して結束する。
【0003】
ところで、鉄筋を結束するときは、鉄筋結束機のガイド部を2本の鉄筋の交差部の一方(表側)から他方(裏側)に入れ込み、結束後はガイド部を引き出す操作をする。また、鉄筋のまわりに巻き回されたワイヤの始端部と終端部は捩り部分から離れた位置にあるのが普通であり、両端部は必ずフリーになる。したがって通常は、図7(a)に示されるように、ワイヤ5の2つの端部5a、5bは捩り部分5cと反対側に置かれるが、ワイヤを捩るときにワイヤの端部が捩りの影響でワイヤループの横に飛び出すようなことがあり、ワイヤの捩り終了後、ガイド部を鉄筋から外すために鉄筋結束機を引き戻すときに、同図(b)に示されるように、フリーになっているワイヤ5の2つの端部5a、5bのいずれか又は両方がガイド部等に引っかかり、鉄筋結束機とともに、鉄筋の捩り部分5c側に移動してしまうことがある)。この場合、ワイヤの端部は捩り部側にはみ出して鉄筋から離れてしまうので、見栄えが悪くなるだけでなく、この状態でコンクリートを打つと、その表面からワイヤの端部が突出することがある。ワイヤがコンクリート面から露出すると、雨水がワイヤとコンクリートとの間の隙間を通って内部に浸入し、ひび割れを発生させる原因となる。
【0004】
そのため、カッターとガイド部先端部とにワイヤを変形させて保持させる機構が提案された。これによれば、ワイヤの終端部はガイド部に保持されるので、結束後にガイド部を引き出すとき、ワイヤの始端部は保持されたワイヤの終端部に押さえ込まれるので、両端部ともに鉄筋の裏側にとどめることができる。
【特許文献1】実用新案登録第2552384号
【特許文献2】特許第3438562号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワイヤリール内にワイヤの残量がほとんどなくなり、最終回で使用されたワイヤの終端部とワイヤリール側に残ったワイヤの端部との間隔が短いときは、その残りのワイヤ片がカッターとガイド部先端部とに引っかかったまま詰まってしまうことがある。
【0006】
ワイヤが詰まってしまうと、ワイヤリールを交換して新しいワイヤを送ることができないので、ガイド部を分解してワイヤ片を除去しなければならない。
【0007】
本発明は上記問題点を解消し、常に確実にワイヤの両端を鉄筋の裏側にとどめることができるとともに、ワイヤ片が詰まるのを良好に防止することができる鉄筋結束機のワイヤ端部保持機構を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、鉄筋を結束する結束機本体に装着したワイヤリールからワイヤを引き出して結束機本体の先端に設けたガイド部に送り、該ガイド部でワイヤに巻き癖を付けてガイド部の内側に配置された鉄筋のまわりに送り出してその周囲に巻き回した後にワイヤの元側を切断するとともに、巻き回した部分を捩って上記鉄筋を結束する鉄筋結束機において、上記ガイド部の内面に固定されて上記ワイヤの送り方向に沿うようにワイヤ貫通孔が貫通形成された切断型と、切断型の周囲に回動可能に設けられて回動時に刃部がワイヤ貫通孔を貫通したワイヤの終端部をワイヤ貫通孔の開口面に沿って切断するカッタ本体とを有するワイヤ切断機構を備え、上記カッタ本体の刃部には、上記カッタ本体が回動したとき、切断したワイヤの終端部近傍に係合して該終端部近傍を折り曲げて保持可能な係合部を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記係合部が、上記カッタ本体の刃部の先端を鋭角に形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明は、結束機本体に、先端のガイド部の内面に固定されて上記ワイヤの送り方向に沿うようにワイヤ貫通孔が貫通形成された切断型と、切断型の周囲に回動可能に設けられて回動時に刃部がワイヤ貫通孔を貫通したワイヤの終端部をワイヤ貫通孔の開口面に沿って切断するカッタ本体とを有するワイヤ切断機構を備え、上記カッタ本体の刃部には、上記カッタ本体が回動したとき、切断したワイヤの終端部近傍に係合して該終端部近傍を折り曲げて保持可能な係合部を形成した構成であるから、ワイヤ端部が切断され、捩り作動が終了して鉄筋を結束し終わるまでワイヤの端部は上記係合部に保持されている。従って、鉄筋結束後にガイド部を引き出すまで、ワイヤの始端部は保持されたワイヤの終端部に押さえ込まれるので、両端部ともに鉄筋の裏側にとどめることができる。また、ワイヤリール内のワイヤの残量がほとんどない状態になって、短いワイヤ片が最後に残っても、このワイヤ片はカッタ本体の刃部の係合部に係合しているだけなので、簡単に外れる。したがって、ワイヤ片が詰まるのを良好に防止することができる。
【0011】
また、カッタ本体だけでワイヤの終端部の保持ができるので、他の部材の形状を制約することがない。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、上記係合部は上記カッタ本体の刃部の先端を鋭角に形成してなるものであるから、特別の部材を必要としない。したがって、改良に伴うコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3において符号1は鉄筋結束機を示す。鉄筋結束機1は、結束機本体2に設けられた収納室3に、鉄筋結束用のワイヤ5を巻き付けたワイヤリールを装着し、トリガ4を引き操作することにより、上記ワイヤリールを回転させながらワイヤ5を結束機本体2の先端に設けられたガイド部6に送り、該ガイド部6でワイヤ5に巻き癖を付けてガイド部6の内側に配置された鉄筋7のまわりに送り出してその周囲に巻き回した後にワイヤ5の元側を切断するとともに、巻き回した部分を捩って上記鉄筋7を結束するものである。
【0014】
結束機本体2にはワイヤリールから引き出されたワイヤ5を通す案内管8が設けられている。案内管8の一端8aは収納室3に開口し、他端8bはガイド部6の手前に位置している。案内管8の中途部には、ワイヤ5の送り手段が配設され、電動モータ(図示せず)によりワイヤ5を前方に送り出すようになっている。
【0015】
案内管8の先には、結束機本体2に送り込まれたワイヤ5がカールして出て行くように巻き癖を付けるガイド部6が形成されている。ガイド部6の先端は、円弧状に湾曲しており、ここで巻き癖を付けて下部ガイド9との間で鉄筋7のまわりを周回させるようになっている。
【0016】
ガイド部6には案内管8の内部を真直状にガイドされて通ってきたワイヤ5をカールさせて巻き癖を付けて送りだす癖付け機構が設けられている。
【0017】
すなわち、ガイド部6にはJ字形のガイドフレーム13が設けられ、ガイドフレーム13には、ワイヤリールからのワイヤ5の送りをガイドする案内管8の端部と、所定量のワイヤ5を送り出した後に切断するためのワイヤ切断機構11と、ワイヤ切断機構11を経て送られたワイヤ5を湾曲させるカールガイド12とが順に配置固定されている。
【0018】
案内管8の端部8bはガイドフレーム13の先端に近い湾曲部の基部に配置されている。また、案内管8の端部8bは絞られてワイヤ5が決められた位置から導出されるようになっている。導出されたワイヤ5は所定量送り出されて鉄筋7に巻き回された後、切断機構11によって切断される。
【0019】
ワイヤ切断機構11は、ワイヤ5の送り量が所定量に達すると、ワイヤ5を切断するように構成されている。すなわち、ワイヤ切断機構11はガイドフレーム13に固定された軸状の切断型14と、切断型14の周囲に回動可能に設けられたカッタ本体15とカッタ本体15を回動させる駆動レバー16とから構成されている。
【0020】
切断型14には、ワイヤ5の送り方向に沿ってワイヤ貫通孔17が貫通形成されている。ワイヤ貫通孔17の一端は案内管8の端部8bに向かって開口し、他端はカールガイド12に向かって開口している。また、ワイヤ貫通孔17の径は、案内管8から送られたワイヤ5が貫通して通過するときにワイヤ5が接触しない程度に形成されている。
【0021】
カッタ本体15は回動することによって刃部分15aがワイヤ貫通孔17のカールガイド12側の端部を開口面18に沿って移動するように作動するもので、ワイヤ貫通孔17にワイヤ5を貫通させた後に、駆動レバー16によりカッタ本体15を回動させ、その刃部分をワイヤ貫通孔17のカールガイド12側の端部を開口面に沿って移動するので、ワイヤ5が切断されるようになっている。
【0022】
次に、カールガイド12は両側のガイドフレーム13の先端側に固定され、図2に示されるように、両側のガイドフレーム13と協働してワイヤ5をカールする方向に案内するガイド溝20を形成している。
【0023】
なお、ガイド部6には、カールガイド12の隣に、カールガイド12から送り出され、ループ状に周回して戻ってきたワイヤ5の始端部を拾い込み、再び次の周回送りのためにガイドするカール拾いこみガイド22(図3参照)が形成されている。
【0024】
上記構成において、案内管8から送り出されたワイヤ5は切断型14のワイヤ貫通孔17を通ってカールガイド12のガイド溝20に沿ってさらに送り出されるが、ガイド面にはワイヤ5の送り速度に伴い一定の圧力で接するので、ワイヤ5には湾曲状に曲げられて巻き癖が付けられる。
【0025】
ところで、上記案内管8の端部(端部近傍でもよい)には、第1のガイドピン23と第2のガイドピン24が設けられている。第1のガイドピン23と第2のガイドピン24は案内管8の内側に突出し、第1のガイドピン23の下端と第2のガイドピン24の上端との間の寸法はワイヤ5の直径とほぼ同じ間隔に設定されている。これにより、ワイヤ5の曲げの外側を構成する外側面は第1のガイドピン23により、またワイヤ5の曲げの内側を構成する内側面は第2のガイドピン24にガイドされて通る。
【0026】
また、カールガイド12の先端内側には第3のガイドピン25が設けられている。第3のガイドピン25はカールガイド12のガイド面よりもわずかに内側に突出するように取り付けられている。したがって、カールガイド12のガイド溝20に沿って送り出されたワイヤ5の曲げの外側面は第3のガイドピン25に接触して図1の下方に送られる。なお、上記第1〜第3のガイドピン25は超硬ピンやセラミックピンのように硬度が高い材料から構成するのが好ましい。
【0027】
以上のように、案内管8から送り出されたワイヤは、案内管8の先端側に配置された第1のガイドピン23と第2のガイドピン24に接触し、切断型14を通過した後、ワイヤ5はカールガイド12の内側面に沿って送り出され、第3のガイドピン25に当たって強く曲げの癖が付けられる。このように、ワイヤ5は硬度が高い第1〜第3のガイドピン23〜25に接触し、案内管8の先端や切断型14やガイド溝20に直接に接触することはない。
【0028】
なお、ガイド部6でワイヤ5に巻き癖を付けてガイド部6の内側に配置された鉄筋7のまわりに送り出してその周囲に巻き回した後、ワイヤ5の元側は切断機構11によって切断されるとともに、巻き回された部分は捩り装置により捩られて上記鉄筋7を結束する。
【0029】
ワイヤ捩り装置は、図6(a)(b)に示されるように、図1のP部に設けられた1対のフック28を開閉自在に枢着したスリーブ29を電動モータにより前進移動させてフック28を閉じ作動させることにより、同図(c)のように鉄筋のまわりにループ状に巻き回されたワイヤ5を把持した後、スリーブ29とともにフック28を回転させてワイヤ5を捩って鉄筋を結束し、その後フック28を逆回転させるとともにスリーブ29を後退移動させてワイヤ5から離脱させて初期位置に戻すようにしたものである。そして、上記スリーブがワイヤループを掴みに前進するときに上述の切断機構11の駆動レバー16を作動させてワイヤ5を切断(剪断)する。
【0030】
ところで、図4(a)に示されるように、カッタ本体15の刃部15aにはワイヤの終端部を保持可能な係合部30が形成され、この係合部30によってワイヤ端部保持機構が形成されている。すなわち、上記係合部30は、切断時にワイヤ貫通孔17を貫通したワイヤ5の下面に係合可能な第1の係合面31と、第1の係合面31の先端部から鋭角に形成されてワイヤ5切断後にワイヤ5の下面に係合可能な第2の係合面32とから構成されている。
【0031】
上記構成によれば、カッタ本体15の刃部15aには係合部30が形成されているから、ワイヤ5がガイド部6で巻き癖を付けられて鉄筋7の周囲に巻き回された後、ワイヤ切断機構11が作動し、カッタ本体15が回動するとき、その途中で、同図(b)のように、係合部30の第1の係合面31が切断されつつあるワイヤ5の終端部5bの近傍に係合してこれを押し上げる。これにより、ワイヤ5の一部はガイド溝20の溝底に当たるがそれ以上は押し上げることはできないから、ワイヤ5終端部近傍は第1の係合面31の先端部33で折り曲げられる。カッタ本体15が回動を終了した後も、同図(c)に示されるように、ワイヤ5の終端部5bは第1の係合面31の先端33に引っかかり、第2の係合面32に係合した状態で保持される。したがって、鉄筋結束後に結束機本体2とともにガイド部6を引き出すまで、図5に示されるように、ワイヤ5の始端部5aは、ガイド部6に保持されたワイヤ5の終端部5bを含む部分に引っかかって押さえ込まれるので、勝手に動くことができず、図7(a)に示されるように、ワイヤ5の両端部5a、5bともに鉄筋の裏側にとどめることができる。また、ワイヤリール内のワイヤ5の残量がほとんどない状態になって、図4(c)のように短いワイヤ片5pが最後に残っても、このワイヤ片5pはカッタ本体15の係合部30に係合しているだけなので、簡単に外れる。したがって、ワイヤ片5pがガイド部6内に詰まるのを良好に防止することができる。
【0032】
しかも、カッタ本体15だけでワイヤ5の終端部の保持ができるので、他の部材の形状を制約することがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る鉄筋結束機の側面図
【図2】上記鉄筋結束機のガイド部の内部構成図
【図3】図2のA−A線上の断面図
【図4】(a)(b)(c)は癖付け機構の作動態様説明図
【図5】上記鉄筋結束機を斜め下から見た斜視図
【図6】(a)(b)(c)は捩り機構の要部を上から見た作動説明図
【図7】(a)(b)は鉄筋の結束状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0034】
5 ワイヤ
6 ガイド部
14 切断型
15 カッタ本体
15a 刃部
17 ワイヤ貫通孔
30 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を結束する結束機本体に装着したワイヤリールからワイヤを引き出して結束機本体の先端に設けたガイド部に送り、該ガイド部でワイヤに巻き癖を付けてガイド部の内側に配置された鉄筋のまわりに送り出してその周囲に巻き回した後にワイヤの元側を切断するとともに、巻き回した部分を捩って上記鉄筋を結束する鉄筋結束機において、
上記ガイド部の内面に固定されて上記ワイヤの送り方向に沿うようにワイヤ貫通孔が貫通形成された切断型と、切断型の周囲に回動可能に設けられて回動時に刃部がワイヤ貫通孔を貫通したワイヤの終端部をワイヤ貫通孔の開口面に沿って切断するカッタ本体とを有するワイヤ切断機構を備え、
上記カッタ本体の刃部には、上記カッタ本体が回動したとき、切断したワイヤの終端部近傍に係合して該終端部近傍を折り曲げて保持可能な係合部を形成した
ことを特徴とする鉄筋結束機のワイヤ端部保持機構。
【請求項2】
上記係合部は、上記カッタ本体の刃部の先端を鋭角に形成してなることを特徴とする、請求項1に記載の鉄筋結束機のワイヤ端部保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137894(P2010−137894A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316889(P2008−316889)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】