説明

鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両

【課題】各走行速度パターンごとの閾値を必要とせず、重大な異常が発生する前の異常をも検出又は検知することが可能な鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両を提供すること。
【解決手段】鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を備え、前記振動検出装置は、前記車体の振動加速度から前記鉄道車両の振動を検出する振動検出手段を備え、前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記車体振動加速度から異なる2つの周波数帯域成分を検出するフィルタ処理手段を備え、フィルタ処理手段から検出された2つの車体加速度の振幅比率を計算する振幅比率計算手段と、前記振幅比率計算手段の結果から異常判定する異常判定処理手段を備えた鉄道車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する鉄道車両の異常状態、特に軌道異常や車両異常を監視する鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両の状態監視装置(異常検出装置)として、車両のばね装置上側の車体床上に設置された鉛直方向の振動加速度を検出し、検出した振動加速度の所定の周波数範囲における絶対値の最大値を測定し、該最大値と各走行速度パターンごとに記録した限界値(以下、閾値と略す)と比較し、当該周波数範囲における鉛直方向の振動加速度の絶対値の最大値が、車両走行中に検出された走行速度に対応する限界値を超えた場合に、鉄道車両が脱線したものと判定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO00/09379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来技術によれば、鉄道車両の脱線したことを検知することを目的とするものであり、その脱線を検知する前の車両異常を事前に検出することまでは考慮されていない。また、従来技術にあっては、走行速度に対応する閾値は車両が各路線を各走行パターンごとに走行した時の値である。つまり、鉄道車両を所定の路線で走行速度を変化させながら走行させ、脱線を検知するための閾値として所定速度ごとに定められた限界鉛直方向加速度(閾値)を取得するのに時間を要し、該閾値を記録しておく記録手段の容量が大きくなり、また、閾値の選定には走行速度が必要となるためシステムが複雑になるという課題がある。ここで、所定の閾値とは、鉄道車両の状態、つまり異常を判定するための異常判定用基準値を意味する。
【0005】
本発明の目的は、係る従来技術の課題に鑑み、各走行速度パターンごとの閾値を必要とせず、重大な異常が発生する前の異常をも検出又は検知することが可能な鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、例えば、鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を備え、前記振動検出装置は、前記車体の振動加速度から前記鉄道車両の振動を検出する振動検出手段を備え、前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記車体振動加速度から異なる2つの周波数帯域成分を検出するフィルタ処理手段を備え、フィルタ処理手段から検出された2つの車体加速度の振幅比率を計算する振幅比率計算手段と、前記振幅比率計算手段の結果から異常判定する異常判定処理手段を備えたものである。
【0007】
また、前記鉄道車両は前記異常検出装置の振幅比率算出処理手段が、更に前記車体振動加速度から一定量の加速度信号を抽出する窓フィルタと、前記窓フィルタで抽出した車体加速度信号のRMS(Root Mean Square)値、又は最大値を算出する計算処理部とを備え、前記フィルタ処理手段がバンドパスフィルタを備えたものである。
【0008】
また、前記鉄道車両は前記振幅比率が所定時間内に、所定回数以上の閾値を超えたかどうか判定する前記異常判定処理手段と、を備えたものである。
【0009】
また、前記鉄道車両は前記異常検出装置が前記振動検出手段の前記車体振動加速度から異なる3つ以上の周波数帯域成分を検出するフィルタ処理手段を備え、前記フィルタ処理手段から検出された3つ以上の前記車体加速度から構成できる組合せで振幅比率を計算する振幅比率計算手段と、前記振幅比率計算手段の結果から異常判定する異常判定処理手段を備えたものである。
【0010】
また、前記鉄道車両は走行速度を検出する走行速度検出装置と、前記走行速度検出装置から検出した信号を用いて前記異常検出装置の前記フィルタ処理手段の遮断周波数を自動設定するフィルタ係数変換処理装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄道車両の状態の異常有無を、正確に、確実に監視することができる。
【0012】
また、異常有無の監視等に際しては、従来技術の如く、走行速度パターンごとの閾値を必要とせず行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の一実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である(実施例1)。
【図2】図2は図1の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロー図である。
【図3】図3は本発明の鉄道車両の状態監視装置の信号に対する窓フィルタ適用例とRMS値の振幅比率算出例を示す図である。
【図4】図4は本発明の鉄道車両の状態監視装置の一実施例における閾値判定処理と異常判定処理を示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は車両の走行速度と分岐通過時のインパルス振動を含む車体左右振動加速度の時刻歴波形を示す図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)は台車部品故障等の異常振動を含む車体左右振動加速度の時刻歴波形とPSDを示す図である。
【図7】図7はフィルタ処理した台車部品故障等の異常振動を含む車体左右振動加速度の時刻歴波形とRMS値を示す図である。
【図8】図8は図7のRMS値に対するRMS値振幅比率の適用例を示す図である。
【図9】図9(a)、(b)、(c)は車両の走行速度と蛇行動等の異常振動を含む車体左右振動加速度の時刻歴波形とPSDを示す図である。
【図10】図10はフィルタ処理した蛇行動等の異常振動を含む車体左右振動加速度の時刻歴波形とRMS値を示す図である。
【図11】図11は図10のRMS値に対するRMS値振幅比率の適用例を示す図である。
【図12】図12は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置の閾値判定処理と異常判定処理を示す図である(実施例2)。
【図13】図13は図12の振動波形に対するRMS値振幅比率の適用例を示す図である。
【図14】図14は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である(実施例3)。
【図15】図15は図14の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロー図である。
【図16】図16は走行速度条件に対応したフィルタ適用例を示す図である。
【図17】図17は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である(実施例4)。
【図18】図18は図17の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロー図である。
【図19】図19は図17の鉄道車両の状態監視装置の信号に対する窓フィルタ適用例とRMS値の振幅比率算出例を示す図である。
【図20】図20は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である。(実施例5)
【図21】図21は図20の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロー図である。
【図22】図22(a)、(b)は指令信号に対応したフィルタ適用例を示す図である。
【図23】図23は指令信号に対応したフィルタ適用例で、正常状態と異常状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、その詳細説明を省略する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の一実施例(実施例1)の鉄道車両の状態監視装置の構成例を示すシステム構成図である。
【0016】
図1において、軌道(線路)1上を走行する車両7は車体6と台車5から構成されている。車体6は、空気ばね4を介して台車5(1台車のみ図示)に搭載される。台車5は台車枠3と輪軸2から構成されている。台車枠3には、軸ばね8を介して輪軸2の軸受けハウジングとなる軸箱9が取付けられる。輪軸2は回転運動するものである。
【0017】
なお、車体6や台車5等への加速度計の設置が可能であるが、本実施例では車体6に設置する加速度計として説明する。
【0018】
また、加速度の方向は水平前後方向及び水平左右方向、垂直方向のいずれにおいても適用可能であるが、本実施例では水平左右方向について説明する。
【0019】
また、2つ以上の異なる周波数帯域成分を検出するフィルタ処理部を備えても良いが、本実施例では2つの異なる周波数帯域成分を検出するフィルタ処理部を備える場合について説明する。
【0020】
また、振動検出装置は複数台設置しても良いが、本実施例では振動検出装置を1つとして説明する。
【0021】
車両7の車体6の床面上には、車体6の左右振動加速度を計測する車体加速度計100が設置されている。車体加速度計100は、車体加速度計100の電圧21aを検出する車体加速度検出装置11を備えている。車体加速度計100の電圧21aは車体加速度検出装置11によって車体左右振動加速度信号22aとして検出される。すなわち、車体加速度計100を含む車体加速度検出装置11は、車両7の振動を検出する振動検出手段を構成している。
【0022】
車両7の異常を検出する異常検出装置20は、車体加速度検出装置11に電気的に接続され、車体加速度検出装置11の車体左右振動加速度信号22aを受け、これらの信号をもって車両の異常を検出するものである。
【0023】
換言すれば、鉄道車両の車体振動情報を含む車体左右振動加速度信号に基づいて、該鉄道車両の異常を検知する異常検知装置であって、その具体例としては、車体加速度検出装置11に接続され、車体左右振動加速度信号22aを受けるフィルタ処理部A12及びフィルタ処理部B13と、これらのフィルタ処理部で抽出された周波数帯域の異なる車体左右振動加速度信号23a及び車体左右振動加速度信号24aを受けるRMS値計算処理部A14,B15と、これらのRMS値計算処理部で計算されたRMS信号25aとRMS信号26aとの振幅比率を算出し、振幅比率信号27aを出力する振幅比率算出処理部16と、該振幅比率信号27aと閾値記憶部10にて事前に記憶された閾値信号30aを受け、閾値判定処理を実行し、閾値判定処理信号28aを出力する閾値判定処理部17と、該閾値判定処理信号28aを受け、異常判定処理を実行し、異常判定処理信号29aを出力する異常判定処理部18と、異常判定処理信号29aを受け、判定結果を出力する判定結果出力処理部19から構成されている。異常検出装置20は車体6側に設置されるが、その設置箇所は判定結果が確認可能な位置であるならばどこでも良い。RMS計算処理部A14、B15で処理するに際しては、フィルタ処理部A12、13Bを通過した信号に対して窓フィルタ(後述)にて所定の時間、車体左右振動加速度を抽出する。
【0024】
ここで、異常検出装置20の振幅比率算出処理部16は、RMS値計算処理部A14からのRMS信号25aとRMS値計算処理部B15からのRMS信号26aに基づき、車体左右振動加速度信号23aと車体左右振動加速度24aとの振幅比率を計算する振幅比率計算手段を構成している。閾値判定処理部17は、振幅比率算出処理部16の振幅比率信号27aに基づき前記振幅比率と閾値記憶部10にて事前に記憶された閾値信号30aとを判定する閾値判定処理手段を構成し、また、異常判定処理部18及び判定結果出力処理部19は、前記閾値判定処理部17の閾値判定処理信号28a及び異常判定処理部18の異常判定処理信号29aに基づき得られる結果から異常判定する異常判定処理手段を構成している。
【0025】
閾値判定処理部17による閾値判定処理に際しては、振幅比率算出処理による振幅比率信号と比較するための閾値(後述)を記憶する記憶手段を備えている。なお、RMS(Root Mean Square)は、もとの値を2乗した上で相加平均し平方根をとったものであり、その計算処理は周知であるので、詳細説明は省略する。
【0026】
次に、図2〜図4によって、本発明の一実施例の鉄道車両の状態監視装置における異常検出装置20の処理動作、つまりフィルタ処理、RMS値計算処理、振幅比率算出処理、閾値判定処理及び異常判定処理などの処理フローについて詳細に説明する。
【0027】
図2は、異常検出装置20の異常検出・判定処理を示すフローである。同図において、車体加速度信号入力から異常判定結果が出力されるまでの流れを説明する。図2において、sはステップ(step)を意味する。
【0028】
まず、異常検出装置20は、フィルタ処理部A12、B13において、車体加速度検出装置11から車体左右振動加速度信号22aの入力(s1)を受け、該信号からある周波数帯域幅Aを抽出するためのフィルタ処理Aを実行し(s2)、該信号からある周波数帯域幅Bを抽出するためのフィルタ処理Bを実行し(s3)、かつ一定量の信号数を抽出するために窓フィルタを掛ける処理を実行する(s4)。
【0029】
次に、異常検出装置20は、RMS計算処理部A14,B15において、フィルタ処理部12A、13Aにて抽出した車体左右振動加速度信号23a、24aに対してRMS値計算処理を実行する(s5)。RMS値は対象となる信号の集合に対して、各値を2乗した上で相加平均し、平方根をとったものであり、振動の大きさを示す一指標である。
【0030】
また、異常検出装置20は、振幅比率算出処理部16において、RMA計算処理部A14,B15にて計算した車体左右振動加速度信号のRMS値25a、26aを基に、車体左右振動加速度信号23aのRMS値と車体左右振動加速度信号24aのRMS値の振幅比率の計算を実行し(s6)、振幅比率算出信号27aを出力する。
【0031】
次に、異常検出装置20は、閾値判定処理部17において、振幅比率算出処理部16にて算出した振幅比率に基づく振幅比率信号27aと予め設定してある所定の閾値に対して閾値判定処理を実行(s7)し、閾値判定処理信号28aを出力する。ここで、予め設定してある所定の閾値とは、振幅比率が正常範囲にあるのか、異常範囲にあるのかを判定するために設定した異常判定用閾値を示す。具体的には、後述する。
【0032】
最後に、異常検出装置20は、異常判定処理部18において、振幅比率信号27aに対する閾値判定結果(閾値判定処理信号28a)から異常有無を判定(s8)し、異常判定処理信号29aを出力する。そして、判定結果出力処理部19において、異常判定処理信号29aに基づき異常判定結果を出力する(s9)。この異常判定結果は、図示されていないが、車両7側にて異常が確認可能な場所、例えば車体6の運転室に運転者が異常を確認しやすい位置に設置された異常確認のための装置に異常判定結果を示すアラーム信号を出力する手段をもって通知される。この異常通知は、例えばディスプレイなどの表示部への表示や装置に搭載されたスピーカなどによるアラーム音などによってなされる。
【0033】
図3は、上述した車体左右振動加速度信号(波形)22aに対するフィルタ処理適用例と窓フィルタの適用例とRMS値の振幅比率算出例を示す図であり、図2の処理s2〜s6に対応する。
【0034】
フィルタ処理部A12のフィルタA42とフィルタ処理部B13のフィルタB43は、それぞれある周波数帯域幅をもつバンドパスフィルタであり、車体左右振動加速度41(図1の車体左右振動加速度信号22aに対応)から車体左右振動加速度A51(図1の車体左右振動加速度信号23aに対応)と車体左右振動加速度B52(図1の車体左右振動加速度信号24aに対応)を抽出する。
【0035】
すなわち、本実施例では、前記車体振動加速度信号から異なる2つの周波数帯域成分を検出する前記フィルタ処理手段を構成するフィルタ処理部が、少なくとも2つのフィルタからなる。これらのフィルタは、図3に示す如く、周波数帯域の範囲(周波数帯域幅)が異なるバンドパスフィルタから構成している。本実施例では、周波数帯域は、それらの一部が重なる周波数帯域を有するバンドバスフィルタを使用しているが、これに限定されるものではない。フィルタ処理部A12及びフィルタ処理部B13のバンドバスフィルタA42、B43の後段には、窓フィルタ50,50が用いられる。
【0036】
窓フィルタ50は、ある所定の長さ(時間)をもっており、その長さの中で、ある周波数帯域幅を持つ車体左右振動加速度信号A51、B52から車体左右振動加速度RMS値A53、B54が算出される。
【0037】
RMS値振幅比率55は車体左右振動加速度RMS値A53(例えば、Xとする)に対する車体左右振動加速度RMS値B54(例えば、Yとする)の比率(Y/X)として算出される。なお、窓フィルタ50内の加速度信号は時々刻々と変化するため、車体左右振動加速度RMS値A53と車体左右振動加速度RMS値B54とRMS値振幅比率55は一定値をとらず時々刻々と変化する。
【0038】
なお、ここではRMS値を例としたが、最大値についても同様に適用可能であり、最大値振幅比率を算出する場合は、車体左右振動加速度信号A51と車体左右振動加速度信号B52の絶対値から最大値を算出し、振幅比率を計算する。
【0039】
上述した算出を実行するためには、前記窓フィルタで抽出した加速度信号のRMS値、又は最大値を算出する計算処理部を備える。
【0040】
図4はRMS値振幅比率55に対する閾値判定処理と異常判定処理の例であり、図2の処理s7〜s9に対応する。同図において、判定処理部90は、RMS値振幅比率55(RMS値振幅比率:A)と所定の閾値αとの大小関係を比較判定する。例えば、閾値αは事前に健全な車両の振動値の振幅比率を走行試験或いは解析結果より算出しておき、その算出結果を基に設定する。この閾値αは、例えばRAMなどからなる記憶部10に記憶しておく。記憶手部は、閾値のみを記憶しておくだけの容量の小さい記憶メモリで済み、ここで、簡単とは、従来技術の如く、走行速度パターンごとに閾値レベルを設定する必要がないものに対してである。閾値を記録する記録手段の容量を小さくできるため、簡素なシステム構成で精度良く簡単に異常検知することができる。
【0041】
判定処理部90はRMS値振幅比率55が所定の閾値αより小さい場合には、「異常無し」92と判定し、RMS値振幅比率55が所定の閾値αより大きい場合には、「異常有り」91と判定する。
なお、図4はRMS値振幅比率55を例としたが、最大値振幅比率においても同様の判定処理で適用できる。その際、閾値は所定の値を設定する必要がある。
【0042】
次に、図5〜図11によって、本発明の一実施例の鉄道車両の状態監視装置における異常検出装置20について、具体的な異常状態を想定した振動波形を用いて、異常検知処理方法を説明する。
【0043】
まず、図5(a)及び(b)は、横軸に時間〔S〕、縦軸に走行速度〔km/h〕及び横軸に時間〔S〕、縦軸に車体加速度〔m/S〕を示し、一般的な走行速度44(含車体加速度)及び車体加速度45(含振動波形/分岐通過時のインパルス外乱46)の時刻歴波形を示す図である。
【0044】
同図において、車両7は停車時(0km/h)から一定速度区間まで加速し、一定速度区間から減速区間にかけて減速して停車する。この時、図5(b)の車体左右振動加速度45は図5(a)の走行速度44に依存する。このため、加速時に車体左右振動加速度45は徐々に大きくなり、一定速度区間で車体左右振動加速度45は走行速度44に応じた大きさの振動レベルをとり、減速時に車体左右振動加速度45は徐々に小さくなる。なお、車両は分岐区間や継ぎ目等を通過する際にはインパルス状の振動波形46(分岐通過時のインパルス外乱)が発生する。
【0045】
以下、図6〜図8に基づき台車部品等の不具合により発生する振動に対して振幅比率の算出例について説明する。
【0046】
図6(a)、(b)及び(c)は、走行速度44’、車体左右振動加速度49及びそのパワースペクトル密度60、63、64を示す波形図である。
【0047】
図6(b)の車体左右振動加速度49について、異常振動発生区間で発生した異常振動は台車部品等の不具合により発生する異常振動を想定している。パワースペクトル密度(以下、PSD:Pоwer
Spectral Densityと略す)60、63、64(図6c参照)は車体左右振動加速度49から分岐区間を含む時間間隔60’、異常振動が発生する時間間隔63’、64’で算出している。PSD60は分岐通過時等に瞬間的に立ち上るピークを有し、PSD63は台車部品の不具合等により立ち上がるピークを有する。PSD64は走行速度が小さい(遅い)ため、PSDが全体的に小さい。
【0048】
ここで、振幅比率を算出する上で適用するフィルタA42’とフィルタB43’について説明すると、フィルタA42’はPSD60のピーク周波数を捉えるように、バンドパスフィルタを用いて、ピーク周波数を中心にある周波数帯域幅を持たせた遮断周波数fA1と遮断周波数fA2を設定する。
【0049】
次に、フィルタB43’はPSD63のピーク周波数を捉えるように、バンドパスフィルタを用いて、全てのピーク周波数を含む周波数帯域幅を持たせた遮断周波数fB1と遮断周波数fB2を設定する。
【0050】
図7は前記フィルタA42’とフィルタB43’により抽出された時刻歴波形とRMS値を示している。同図において、車体左右振動加速度70はフィルタA42’により抽出された時刻歴波形であり、RMS値72は車体左右振動加速度70に対してRMS値計算を適用したものである。同様に、車体左右振動加速度71はフィルタB43’により抽出された時刻歴波形であり、RMS値73は車体左右振動加速度71に対してRMS値計算を適用したものである。フィルタA42’とフィルタB43’により、分岐区間における車体左右振動加速度70と車体左右振動加速度71がほぼ等しく、RMS値も同様にRMS値72とRMS値73がほぼ等しい。また、異常振動区間において、車体左右振動加速度71は台車部品等の不具合による振動成分のみが抽出され、車体左右振動加速度70と車体左右振動加速度71は車両の加減速に伴って、振動レベルが減少している。これはRMS値72、73についても同様である。
【0051】
図8は、図7のRMS値に対するRMS値振幅比率の適用例である。同図において、振幅比率74はRMS値72(例えば、Xとする)に対するRMS値73(例えば、Yとする)の比率(Y/X)を示している。分岐区間ではRMS値72、73がほぼ等しく、振幅比率74はその前後区間の比率と差が出ない。また、異常振動区間ではRMS値73がRMS値72より大きく算出されるため、振幅比率74はRMS値73とRMS値72の比率分大きく計算される。さらに、走行速度が小さい場合、RMS値73とRMS値72も小さくなるため、振幅比率74は小さくならず、速度依存性を排除することができる。この時、例えば閾値150を設定することにより、異常振動区間の振動波形のみ異常検知することができる。なお、振幅比率66は車体左右加速度45(図5参照)に対して適用したものである。
【0052】
次に、図9〜図11に基づき、ある速度以上で発生する蛇行動振動に対して振幅比率の算出例について説明する。
【0053】
図9(a)、(b)及び(c)は、走行速度44’、車体左右振動加速度47及びそのパワースペクトル密度60―62を示す波形図である。
【0054】
まず、図9の車体左右振動加速度47について説明すれば、異常振動発生区間で発生した異常振動はある速度以上で発生する蛇行動といった振動波形を想定している。PSD60、61、62(図9c参照)は車体左右振動加速度47から分岐区間を含む時間間隔60’、異常振動が発生する区間の時間間隔61’、車両速度が遅い区間の時間間隔62’で算出しており、PSD60は分岐通過時等に瞬間的に立ち上るピークを有し、PSD61はある速度以上で発生する蛇行動振動特性により立ち上がるピークを有している。PSD62は異常振動が発生せず、且つ、走行速度が小さい区間であり、PSDが小さい。
【0055】
ここで、振幅比率を算出する上で適用するフィルタA42’とフィルタB43’について、フィルタA42’はPSD60のピーク周波数を捉えるように、バンドパスフィルタを用いて、ピーク周波数を中心にある周波数帯域幅を持たせた遮断周波数fA1と遮断周波数fA2を設定する。次に、フィルタB43’はPSD61のピーク周波数を捉えるように、バンドパスフィルタを用いて、全てのピーク周波数を含む周波数帯域幅を持たせた遮断周波数fB1と遮断周波数fB2を設定する。
【0056】
図10は前記フィルタA42’とフィルタB43’により抽出された時刻歴波形とRMS値を示している。同図において、車体左右振動加速度75はフィルタA42’により抽出された時刻歴波形であり、RMS値77は車体左右振動加速度75に対してRMS値計算を適用したものである。同様に、車体左右振動加速度76はフィルタB43’により抽出された時刻歴波形であり、RMS値78は車体左右振動加速度76に対してRMS値計算を適用したものである。異常振動区間について、車体左右振動加速度76は蛇行動振動成分のみが抽出されており、RMS値78についても同様である。
【0057】
図11は、図9のRMS値に対するRMS値振幅比率の適用例である。同図において、振幅比率79はRMS値77(例えば、Xとする)に対するRMS値78(例えば、Yとする)の比率(Y/X)を示している。分岐区間ではRMS値75、76がほぼ等しく、振幅比率79はその前後区間の比率と差が出ない。また、異常振動区間ではRMS値78がRMS値77より大きく算出されるため、振幅比率79はRMS値77とRMS値78の比率分大きく計算される。この時、例えば閾値150を設定することにより、異常振動区間の振動波形のみ異常検知することができる。なお、振幅比率66は車体左右加速度45に対して適用したものである。
【0058】
以上述べた本実施例によれば、1つの車体加速度から抽出した周波数帯域の異なる2つの車体加速度の振幅比率を用いて、所定の閾値に対する閾値判定処理を実施することで、走行速度依存性の影響を排除し、走行速度パターンごとの閾値を必要とせず、閾値を記録する記録部の容量を小さくでき、簡素なシステム構成で精度良く異常検知することができる。
【実施例2】
【0059】
次に、本発明の他の実施例(実施例2)について説明する。図12は本発明の実施例2の鉄道車両の状態監視装置の閾値判定処理及び異常判定処理フロー、図13は本発明の実施例2の振幅比率に対する閾値判定適用例について示したものである。実施例2は実施例1に対して、閾値判定処理に振幅比率の超過回数に対する閾値判定処理を追加している。
【0060】
本実施例は、図4の実施例1に対して、図12に示す如く、判定フロー上、判定処理部93を追加したものである。判定処理部93は、判定処理部90にて所定の振幅比率の閾値α81を超過したRMS値振幅比率55が、所定の時間内に振幅比率の閾値α(振幅比率のレベルに対する閾値)を超過した回数N(一定時間内に閾値αを超過したRMS値振幅比率Aの数)を観測し、所定の閾値超過回数の閾値β(振幅比率のレベルαの超過回数に対する閾値)と比較判定するものである。振幅比率の閾値αに対する超過回数Nが所定の閾値超過回数の閾値βより小さい場合には、「異常無し」92と判定し、振幅比率の閾値αに対する超過回数Nが所定の閾値超過回数の閾値βより大きい場合には、「異常有り」91と判定する。或いは、判定処理部93は、判定処理部90にて所定の振幅比率の閾値αを超過したRMS値振幅比率55が、振幅比率の閾値αの超過時間Tを観測しておき、所定の閾値超過時間の閾値γと比較判定するものでもよい。例えば、振幅比率の閾値αに対する超過時間Tが所定の閾値超過時間の閾値γより小さい場合には、「異常無し」と判定し、振幅比率の閾値αに対する超過時間Tが所定の閾値超過時間の閾値γより大きい場合には、「異常有り」と判定する。
【0061】
また、図13の振幅比率に対する閾値判定適用例に示すように、RMS値振幅比率80が所定の閾値81を超過した場合、区間85では所定時間82の中でRMS値振幅比率の数83が所定の閾値(閾値を3と仮定すると)より大きく、「異常有り」と判定し、区間86では所定時間82の中でRMS値振幅比率の数84が所定の閾値(閾値を3と仮定すると)より小さく、「異常無し」と判定する。
【0062】
本実施例によれば、RMS値振幅比率55のレベルに対する閾値判定処理に加えて、新たに所定時間内に、所定回数以上の閾値を超えたかどうか判定する閾値判定処理機能を追加することで、例えばノイズや外乱等により、瞬間的に振幅比率が閾値を超過した場合に対して、検知精度を向上することができる。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の他の実施例(実施例3)について説明する。図14は本発明の実施例1の鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図に対応し、図15は本発明の実施例1の鉄道車両の状態監視装置の異常検出・判定処理フローに対応するものである。図16は本発明の実施例1のフィルタ適用例について示したものであり、実施例3は実施例1に対して、車両速度情報を新たに追加し、異常検出装置のフィルタ処理のフィルタ係数の自動変更機能を追加している。
【0064】
本実施例は、図1の実施例1に対して、図14に示す如く、システム構成上、車両側6に、車両側に設置されている車両情報システムを介して車両速度を検出する車両速度検出装置101(例えば、速発でもよい)を追加し、異常検出装置20に、前記車両速度検出装置101からの走行速度信号110aを基にフィルタ処理部A12とフィルタ処理部B13の遮断周波数といったフィルタ係数を自動変更するフィルタ変換処理部102を追加したものである。
【0065】
同図において、フィルタ変換処理部102は、車両7に設置されている車両速度検出装置101から出力される走行速度信号110aの入力を受け、フィルタ変換信号111aをフィルタ処理部A13とフィルタ処理部B14に出力する。フィルタ処理部A13とフィルタ処理B14はフィルタ変換信号111aで指定される遮断周波数を用いたバンドパスフィルタを車体左右振動加速度信号22aに適用する。
【0066】
また、異常検出・判定処理フローは、図2の実施例1に対して、図15に示す如く、車体加速度検出装置11から車体左右振動加速度信号22aの入力(s1)の後に、車両走行速度に基づくフィルタ処理A42とフィルタ処理B43の遮断周波数といった係数変換処理を実行する(s2−1)ものである。
【0067】
また、フィルタ適用例は、図9及び図10、図11の実施例1に対して、図16に示す如く、ある車両速度条件Vからある車両速度条件Vに変化した際に、車両速度の影響によりPSD121からPSD121’に変化した場合でも、PSD121とPSD121’のピーク周波数に併せてバンドパスフィルタ120からバンドパスフィルタ120’に自動で変化させるものである。このとき、バンドパスフィルタの周波数帯域は、fc1−fc2からfD1−fD2にシフトし、周波数帯域の重なりはない。
【0068】
また、本実施例では車体左右振動加速度に対してフィルタ処理A42、B43の適用例を示したが、車体前後加速度、並びに車体上下加速度に対しても同様に適用可能である。
【0069】
本実施例によれば、車両の走行速度に基づき、フィルタ処理部A12とフィルタ処理部B13の遮断周波数といったフィルタ係数を自動変更するフィルタ変換処理部102を追加することで、例えば、車輪回転周波数に起因して周波数が変動する振動成分に対して、常にフィルタを適用することができ、検知精度を向上することができる。
【実施例4】
【0070】
次に、本発明の他の実施例(実施例4)について説明する。図17は本発明の実施例1の鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図、図18は本発明の実施例1の鉄道車両の状態監視装置の異常検出・判定処理フローについて示したものであり、図19は本発明の実施例1のフィルタ処理及びRMS値計算処理、振幅比率計算処理について示したものであり、実施例4は実施例1に対して、方向の異なる2つの振動加速度(例えば、左右振動加速度と上下振動加速度)の振幅比率算出処理を追加している。
【0071】
本実施例は、図1の実施例1に対して、図17に示す如く、システム構成上、電圧21a’と車体加速度検出装置11’と車体上下振動加速度信号22a’を追加したものである。
同図において、電圧21a、21a’はそれぞれ方向が異なり、車体加速度検出装置11、11’にて例えばそれぞれ車体左右振動加速度信号22aと車体上下振動加速度信号22a’として検出され、車体左右振動加速度信号22aはフィルタ処理部A12、車体上下振動加速度信号22a’はフィルタ処理部B13に渡される。
【0072】
また、異常検出・判定処理フローは、図2の実施例1に対して、図18に示す如く、車体加速度検出装置11、11’からそれぞれ車体左右振動加速度信号22aと車体上下振動加速度22a’の入力(s1−3)の後に、車体左右振動加速度信号22aに対してフィルタ処理A42(s2−3)、そして、車体左右振動加速度信号22a’に対してフィルタ処理B43(s3−3)を実行するものである。
【0073】
また、フィルタ処理及びRMS値計算処理、振幅比率計算処理は、図3の実施例1に対して、図19に示す如く、車体左右振動加速度41はフィルタA42に適用され、RMS値53(例えば、Xとする)が抽出され、車体上下振動加速度41’はフィルタB43に適用され、RMS値54(例えば、Yとする)が抽出され、振幅比率(Y/X)が計算される。
【0074】
また、車体左右加速度、或いは車体上下加速度が例えば車輪回転周波数等の車両速度に依存する振動成分の影響を受ける場合、車両速度条件の変化に対応して、バンドパスフィルタの遮断周波数を自動に変化させるようにフィルタ調整して振幅比率を計算してもよい。
【0075】
また、本実施例では車体左右振動加速度と車体上下振動加速度に対して、それぞれのRMS値に対する振幅比率を算出したが、車体左右振動加速度と車体前後振動加速度、或いは車体前後振動加速度と車体上下振動加速度としてもよい。
【0076】
本実施例によれば、測定方向の異なる2つの振動加速度のRMS値に対する振幅比率を算出することで、各方向間の振動成分のバランスを検出し、バランスが正常状態から離れていることを判定することにより異常検知することができる。
【実施例5】
【0077】
次に、本発明の他の実施例(実施例5)について説明する。図20はエンジン201の駆動力で発電機202を回して電力を得る設備を搭載する電源車200に対する鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図であり、実施例5は実施例3に対して、エンジン201や発電機202の不具合、或いはエンジン201や発電機202に起因して、加振源が車両側にある場合に対応するものである。発電機202は、エンジン201の上部に設置されている。なお、車体に搭載するエンジンや発電機に限らず、例えば、台車モータや駆動装置、ジャーナル軸受等、車両側搭載機器を加振源とした場合にも適用可能である。
【0078】
また、本実施例では車体左右振動加速度に対してフィルタ処理A42、B43の適用例を示したが、車体前後加速度、並びに車体上下加速度に対しても同様に適用可能である。
【0079】
本実施例は、図14の実施例3に対して、図20に示す如く、システム構成上、電源車200はエンジン201の駆動力で発電機202を回して電力を得る設備を搭載し、フィルタ変換処理部102にエンジン201の回転数を制御する指令装置203からの指令信号220aを追加したものである。
【0080】
同図において、フィルタ変換処理部102は、電源車200に設置されている車両速度検出装置101から出力される走行速度信号110aの入力を受け、フィルタ変換信号111aをフィルタ処理部A13とフィルタ処理部B14に出力する。フィルタ処理部A13とフィルタ処理B14はフィルタ変換信号111aで指定される遮断周波数を用いたバンドパスフィルタを車体左右振動加速度信号22aに適用する。
【0081】
また、異常検出・判定処理フローは、図2の実施例1に対して、図21に示す如く、車体加速度検出装置11から車体左右振動加速度信号22aの入力(s1)の後に、指令信号20aに基づくフィルタ処理A42とフィルタ処理B43の係数変換処理を実行する(s2−4)ものである。
【0082】
また、フィルタ適用例は、図9及び図10、図11の実施例1に対して、図22に示す如く、ある指令信号sからある指令信号sに不連続的に変化した際、指令信号によりPSD221からPSD221’に変化した場合でも、PSD221とPSD221’のピーク周波数に併せてバンドパスフィルタ220からバンドパスフィルタ220’に自動で変化させるものである。また、振幅比率はバンドパスフィルタ222で抽出される車体左右振動加速度のRMS値(例えば、Xとする)に対して、バンドパスフィルタ220、220’で抽出される車体左右振動加速度のRMS値(例えば、Yとする)に対する比率(Y/X)を計算するものとし、各指令信号s、sに対する閾値をそれぞれ事前に選定しておき、各指令信号s、sの状態に併せて切り替える。図23に示す如く、PSDが正常状態231から異常状態232に変化した場合に振幅比率が大きくなり、事前に選定した閾値と比較判定することで異常検出することができる。
【0083】
本実施例によれば、車両の走行速度に基づき、フィルタ処理部A12とフィルタ処理部B13の遮断周波数といったフィルタ係数を自動変更するフィルタ変換処理部102を追加することで、例えば、車輪回転周波数に起因して周波数が変動する振動成分に対して、常にフィルタを適用することができ、検知精度を向上することができる。
【0084】
以上述べた本発明の各実施例によれば、例えば鉄道車両のだ行動振動、空気ばね・左右動ダンパ等のサスペンション等の故障状態の異常有無を、正確に、確実に監視することができる。また、異常監視に際しては、従来技術の如く、走行速度パターンごとの閾値レベルを必要としないため、システム構成などを簡素化でき、且つ閾値のための記憶容量を大きくする必要がなく、車両走行速度の影響を排除できる。
【符号の説明】
【0085】
1:軌道 2:輪軸
3:台車枠 4:空気ばね
5:台車 6:車体
7:車両 8:軸ばね
9:軸箱
11:車体加速度検出装置 12:フィルタ処理部A
13:フィルタ処理部B 14:RMS値計算処理部A
15:RMS値計算処理部B 16:振幅比率算出処部
17:閾値判定処理部 18:異常判定処理部
19:判定結果出力処理部 20:異常検出装置
21a:電圧 22a:車体左右振動加速度信号
23a:フィルタ処理された車体左右振動加速度信号A
24a:フィルタ処理された車体左右振動加速度信号B
25a:RMS信号A 26a:RMS信号B
27a:振幅比率信号 28a:閾値判定処理信号
29a:異常判定処理信号
41:車体左右振動加速度波形 42、42’:フィルタ処理A
43、43’:フィルタ処理B 44、44’:走行速度
46:分岐通過時のインパルス外乱 48:蛇行動等の異常振動波形
49:台車部品故障等の異常振動波形 50:窓フィルタ
51:フィルタ処理された車体左右振動加速度信号A
52:フィルタ処理された車体左右振動加速度信号B
53:車体左右振動加速度信号AのRMS値
54:車体左右振動加速度信号BのRMS値
55:RMS値振幅比率
60:分岐通過時のインパルス外乱に対するPSD
61:蛇行動等の異常振動に対するPSD
63:台車部品故障等の異常振動に対するPSD
100:車体加速度計 101:車両速度検出装置
102:フィルタ変換処理部 150:閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と台車枠と輪軸より構成される鉄道車両において、
前記鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を備え、
前記振動検出装置は、前記車体の振動加速度から前記鉄道車両の振動を検出する振動検出手段を含み、
前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記車体振動加速度から異なる2つ以上の周波数帯域成分を検出するフィルタ処理手段を含み、前記フィルタ処理手段から検出された2つ以上の車体振動加速度の振幅比率を計算する振幅比率計算手段と、前記振幅比率計算手段の結果から異常判定する異常判定処理手段を含む、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両において、前記振動検出装置が前記車体の台車枠、或いは軸箱体の振動を検出する振動検出手段を含む、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2記載の鉄道車両において、
前記異常検出装置の前記振幅比率計算処理手段が、
前記車体振動加速度から一定量の加速度信号を抽出する窓フィルタと、
前記窓フィルタで抽出した加速度信号から時刻歴波形のRMS値、又は最大値を算出する計算処理部と、
前記振幅比率を算出する振幅比率算出処理部とからなり、
前記フィルタ処理手段が、周波数帯域の範囲が異な周波数帯域をパスするバンドパスフィルタである、
ことを備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載の鉄道車両において、
前記振幅比率が所定時間内に、所定回数以上の閾値を超えたかどうか判定する前記異常判定処理手段、又は所定閾値を超過した前記振幅比率の超過時間が所定時間以上の閾値を超えたかどうか判定する前記異常判定処理手段と、を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載の鉄道車両において、
前記鉄道車両の走行速度を検出する走行速度検出装置と、前記走行速度検出装置から検出した信号を用いて前記異常検出装置の前記フィルタ処理手段の遮断周波数を自動設定するフィルタ係数変換処理装置を含む、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
車体と台車枠と輪軸より構成される鉄道車両に用いられる鉄道車両の状態監視装置において、
前記鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した車体加速度信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を含み、
前記振動検出装置は、前記車体の振動加速度から前記鉄道車両の車体振動加速度を検出する振動検出手段を含み、
前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記車体振動加速度から異なる2つの周波数帯域成分を検出するフィルタ処理手段を含み、フィルタ処理手段から検出された2つの車体加速度の振幅比率を計算する振幅比率計算手段と、前記振幅比率計算手段の結果から異常判定する異常判定処理手段からなる
ことを特徴とする鉄道車両の状態監視装置。
【請求項7】
車体と台車枠と輪軸より構成される鉄道車両と、前記鉄道車両の振動を検出し、該検出信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する鉄道車両の状態監視方法において、
前記鉄道車両の1つの車体振動加速度から検出した異なる2つ以上の周波数帯域成分をもつ加速度の振幅比率を計算する振幅比率計算ステップと、
前記振幅比率と所定の閾値との大小を判定する閾値判定処理ステップと、
前記閾値判定処理ステップの判定結果から異常判定する異常判定処理ステップと、を備えたことを特徴とする鉄道車両の状態監視方法。
【請求項8】
請求項7記載の状態監視方法において、
前記車体振動加速度から一定量の加速度信号を抽出する窓フィルタにより、加速度信号から時刻歴波形のRMS値、又は最大値を算出する計算処理ステップと、
前記フィルタ処理手段のバンドパスフィルタで抽出した加速度信号のピーク周波数捉える周波数帯域幅を持たせる遮断周波数を設定するステップと、を備えたことを特徴とする鉄道車両の状態監視方法。
【請求項9】
請求項7乃至請求項8記載の鉄道車両の状態監視方法において、
前記振幅比率が所定時間内に、所定回数以上の閾値を超えたかどうか判定する前記異常判定処理計算ステップ、又は所定閾値を超過した前記振幅比率の超過時間が所定時間以上の閾値を超えたかどうか判定する前記異常判定処理ステップと、を備えたことを特徴とする鉄道車両の状態監視方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9記載の鉄道車両の状態監視方法において、
前記鉄道車両の走行速度を検出する走行速度検出ステップと、前記走行速度検出装置から検出した信号を用いて前記異常検出装置の前記フィルタ処理手段の遮断周波数を自動設定するフィルタ係数変換処理ステップと、備えたことを特徴とする鉄道車両の状態監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−78213(P2012−78213A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223884(P2010−223884)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】