鉄道車両
【課題】窓隅部を含んだ吹寄せ部をシアプレートによって補強した鉄道車両を提供すること。
【解決手段】窓開口部21が形成され、外板11の車内面側に骨部材12,13が縦横に接合された側構体1を有するものであって、外板11の車内面側には、窓開口部21横の吹寄せ部全体にシアプレート31が接合され、そのシアプレート31は、窓開口部21の上下にまで突き出た突起部31aを備え、窓隅部R1〜R4を含む窓開口部21の枠形状に沿って端部が形成された鉄道車両。
【解決手段】窓開口部21が形成され、外板11の車内面側に骨部材12,13が縦横に接合された側構体1を有するものであって、外板11の車内面側には、窓開口部21横の吹寄せ部全体にシアプレート31が接合され、そのシアプレート31は、窓開口部21の上下にまで突き出た突起部31aを備え、窓隅部R1〜R4を含む窓開口部21の枠形状に沿って端部が形成された鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構体を構成する外板の吹寄せ部にシアプレートを接合して剛性を高めた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、屋根構体、側構体、台枠及び妻構体が互いに接合されて車両用構体が構成されているが、車体の自重や乗客などの垂直荷重によって側構体に対してせん断力などが作用するため、剛性を高めた構造にすることが必要である。そうした場合、車両用構体を構成する外板はそれ自体が骨部材を有するものではないので、剛性を高めるため、断面がハット形状の横骨や縦骨などの骨部材が外板に接合される。
【0003】
剛性を高めるための従来構造としては、例えば下記特許文献1に、図13に示すものが開示されている。これは、側構体の一部である中間窓ブロックを示した図である。中間窓ブロック101は、幕パネル102と、窓枠パネル103と、一対の吹寄せパネル104と、腰パネル106とが互いに接合されたものである。パネル102,104,106は、平板の外板に剛性を高める波板が重ねられ、外板と接触する波板の谷部がレーザ溶接などによって接合されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、図14に示す構造が開示されている。図14は、側構体の開口部周辺の構造を示した図である。外板200に形成された開口部201は、行先表示器が設けられる矩形状の開口である、そうした表示用の開口部201には、その周りを縁取るように同一形状の開口部が形成された、枠形状のシアプレート202が接合されている。シアプレート202は、断面がハット形状の横骨210とともに、図示するように外板200に接合され、例えば、シアプレート202とフランジ部231とを連続したレーザ溶接によって接合されている。
【特許文献1】特開2005−263126号公報
【特許文献2】特開2007−112344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような波板は、そのための専用プレス機を用いたのでは加工コストが非常に高くなってしまう。その一方で、専用プレス機を使用しなければ、圧延のステンレス板を波形に加工することは容易ではない。
また、吹寄せ部に関しては、特許文献2のシアプレートを設けることが考えられるが、特許文献2では、開口面積の小さい行先表示用の開口部を対象にしている。そのため、窓開口部や入口開口部のような面積の大きい開口部には、その周りを縁取るように開口を形成した枠形状のシアプレートを張り合わすことは好ましくない。シアプレートが外板全体の大きさになってしまい、車体重量を重くしてしまうからである。
【0006】
一方で、鉄道車両の側構体には、出入口や窓などの大きな開口部が形成され、台車による支点からの反力が支点近傍の吹寄せ部に大きなせん断力となって作用する。そのため、吹寄せ部は、強度不足によって外板面へのシワが発生し易い箇所となるので、特に応力が集中する窓隅部を含む吹寄せ部を補強することが必要になる。この点、従来の鉄道車両は、多くの補強部材が用いられ、構造が複雑で部品点数が多くなってしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、窓隅部を含んだ吹寄せ部をシアプレートによって補強した鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄道車両は、窓開口部が形成され、外板の車内面側に骨部材が車体高さ方向と車体長手方向の縦横に接合された側構体を有するものであって、前記外板の車内面側には、前記窓開口部横の吹寄せ部全体にシアプレートが接合され、そのシアプレートは、前記窓開口部の上下にまで突き出た突起部を備え、窓隅部を含む前記窓開口部の枠形状に沿って端部が形成されたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記シアプレートが、前記窓開口部の枠形状に沿って形成された端部の一部或いは全部にヘリ曲部が形成されたものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る鉄道車両は、前記シアプレートが、骨部材として機能するように起立した複数の立体部が形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記立体部が、断面がコの字形状、台形形状あるいは山形形状であって、前記シアプレートは、その一つ立体部ごとに形成された分割プレートが連結されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記立体部が、断面がコの字形状または台形形状であって、前記シアプレートは、当該立体部の頂部ごとに分けられた分割プレートが、当該頂部を接合することにより連結されたものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る鉄道車両は、前記立体部が縦骨と同方向に形成されたものであって、隣り合う立体部同士が、当該シアプレートを前記外板に対して溶接するための間隔をあけて形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記窓開口部の上下に前記外板に接合された骨部材を備え、その骨部材は、前記窓開口部の枠形状に沿ってヘリ曲部が形成され、そのヘリ曲部が、前記窓隅部に対応して形成された前記シアプレートのヘリ曲部と連続するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記骨部材が前記シアプレートの突起部とガセットによって連結され、そのガセットにも前記骨部材と突起部の両ヘリ曲部に重なるヘリ曲部が形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、強度不足によって外板面へのシワが発生し易い吹寄せ部に対し、シアプレートを接合して剛性を高めることができる。そのため、部品点数を少なくしながらも強度不足を補い、特に窓開口部の窓隅部に沿って突起部を形成して補強することで、応力が集中する箇所も十分に強度を確保することが可能である。そして、窓開口部の窓隅部や、その他の枠形状に沿った箇所にヘリ曲部を形成することで、より剛性を高めることができる。また、本発明の鉄道車両によれば、シアプレートに骨部材として機能する立体部を形成することにより、骨部材を別途接合する必要がなくなる。その際、シアプレートを複数の分割プレートを連結して構成することで、分割プレート1枚の形状を単純にして加工コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係る鉄道車両の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の鉄道車両を構成する側構体を示した図である。この鉄道車両は、ステンレス製構体であって、その側構体1が構体ブロックなどのパーツを接合して組み合わされた車両用構体によって構成されている。車両用構体は、側構体1の上部には屋根構体が、前後には妻構体がそれぞれ接合され、更にその下には台枠が接合されている。側構体1は、2つの車端窓ブロック2と中間窓ブロック3、そして窓ブロック2,3の間に3つの側入口ブロック4が接合されている。車端窓ブロック2や中間窓ブロック3は、例えば上下に分けられた上部外板と下部外板との接合によって側外板が形成され、その車体内側には剛性を保つため骨部材などが接合されている。
【0013】
次に図2は、中間窓ブロックを車内側から示した図であり、両端には接合された側入口ブロック4が示されている。中間窓ブロック3は、外板11に骨部材を接合して構成されている。図3乃至図5は、そうした構造が分かりやすいように、それぞれ中間窓ブロックの腰部、吹寄せ部、幕部を横方向に切った図2のA−A断面、B−B断面そしてC−C断面を示した図であり、図6は、腰部を縦方向に切った図2のD−D断面図である。
【0014】
中間窓ブロック3は、厚さ2mmのステンレス製の外板11に対し、厚さ1.5mmステンレス製板材から形成された補強部材である横骨12と縦骨13とが接合されている。なお、以下の説明において、特定の横骨12又は縦骨13を他のものと区別する場合には、a,b…の符号を付して示す。横骨12及び縦骨13は、そのほとんどが図6に示すように、断面がコの字に折り曲げられた立体部301と、その両側に張り出したフランジ部302が連続したハット形状をしたものである。
【0015】
本実施形態では、例えば図6に示すように、横骨12が外板11に直接接合され、その横骨12の上に重ねて縦骨13が接合されている。横骨12は、外板11に重ねられたフランジ部302に沿うようにレーザ溶接が行われ、縦骨13は、そのフランジ部が横骨12の立体部301に重ねられ、その重なった部分にレーザ溶接が行われる。本実施形態では、骨部材の接合にレーザ溶接が使用されるが、接合手段としてはレーザ溶接の他、スポット溶接や栓溶接を使用してもよい。また、本実施形態でも部分的には栓溶接なども使用されている。
【0016】
腰部では、図2に示すように、4本の横骨12が外板11に接合され、その横骨12の上には、窓開口部21の下の4本の縦骨13aと、窓開口部21の左右の縦辺に沿って2本の縦骨13bとが接合されている。左右の縦骨13bの間には内骨16が配置され、図6に示すように、縦骨13aの上端を被せるようにして接合されている。内骨16はL字形断面の板材であって、横骨12bの立体部301にはレーザ溶接によって接合され、縦骨13a,13bには栓溶接によって接合されている。
【0017】
最上部の横骨12bは、上方に延びたフランジ部311が形成され、その先端には車内側に折り曲げられたヘリ曲部311aが形成され、窓開口部21の窓枠剛性が高められている。そして、側外板を構成する上部外板11と下部外板11との境目Pがこのフランジ部311の高さにあり、上部に分割された外板11は段差のない車体表面になるように構成されている。一方、外板11の下方には、台形形状の断面をした長土台14が接合され、下側のフランジ部14aが下方に延びて内側の側梁17に沿って形成されている。また、外板11は、その下端部分が側梁17やフランジ部14aに重ねて接合されている。
【0018】
ここで図7は、中間窓ブロック3の左側端部を示した図3の一部拡大図である。側入口ブロック4との連結部分であり、側入口フレーム18が外板11の外側に重ねて接合されている。外板11の内側には縦骨13cが接合されているが、この縦骨13cは、立体部301の側面と片側のフランジ部302に切欠き131(図2参照)が複数形成され、横骨12の先端の端部が挿入されている。縦骨13cの接合は、外板11に当てられたフランジ部302のレーザ溶接によって行われるが、表面側には側入口フレーム18があるため、縦方向の溶接痕が車体表面に現れることはない。
【0019】
次に、中間窓ブロック3の幕部には、図5に示すように、外板11に対して横骨12dが直接接合され、その上に縦骨13dが重ねられて接合が行われる。図8は、幕部を示した図2のE−E断面図である。外板11には横骨12dが接合され、その上端部に横骨12dのフランジ部302と屋根構体8の端部が重ねられて接合されている。一方、幕部における最下部の横骨12eは、下方に延びたフランジ部313が形成され、その先端には内側に折り曲げられたヘリ曲部313aが形成され、窓開口部21の窓枠剛性が高められている。そして、その横骨12eには、立体部301に同じく断面がコの字形の内骨26が重ねられて接合されている。
【0020】
続いて、せん断力のかかりやすい吹寄せ部には、図2に示すように、補強部材としてシアプレート31が張り合わされている。このシアプレート31は、板厚2mmの外板11に対し、厚さ1.5mmのステンレス鋼板あって、窓開口部21の左右両側の吹寄せ部にそれぞれ設けられている。シアプレート31は、吹寄せ部全体に重なる大ききであって、特に窓開口部21の窓隅部R1〜R4の周りに沿うように突起部31aが上下に形成され、その窓隅部R1〜R4を補強する形状になっている。
【0021】
吹寄せ部では、こうしたシアプレート31の上から骨部材を接合した構成になっている。そして、シアプレート31によって剛性を高めているため、中間の縦骨13を省略した構造になっている。吹寄せ部は、図4に示すように、外板11にシアプレート31が重ねられてレーザ溶接によって接合されているが、横骨12と同様に車体横方向にレーザを走らせて接合される。そうしたシアプレート31に対し、横骨12fがレーザ溶接によって接合され、その両端部に縦骨13b,13cが接合されている。縦骨13bは、片側を長くして段差のついた一方のフランジ部314がシアプレート31に当てられて接合されている。この場合、縦方向にレーザ溶接を行っても、シアプレート31が間にあるため、外板11の表面に縦方向の溶接痕は現れない。
【0022】
外板11は、端部が応力を受けて変形し易いため、外形線に沿って骨部材を接合するなどして強度を確保しているが、本実施形態では、窓開口部21の窓枠に沿って起立したヘリ曲部が形成されている。そこで、シアプレート31には、窓開口部21の形状に沿って図4に示すようにヘリ曲部31bが形成されている。更に、窓開口部21の上下にも同様にヘリ曲部が形成されている。ここで図9及び図10は、窓隅部R1或いはR2を示した図であり、いずれも図(a)は図2の一部拡大図であり、図(b)はその横方向断面図である。
【0023】
図9に示す窓開口部21の下の腰部には、前述したように横骨12bが外板11に接合され、それに内骨16が突き出すように接合されている(図6参照)。内骨16は、その端部がガセット25によって縦骨13bと栓溶接によって接合されている。横骨12bは、窓開口部21側のフランジ部311が上方に延び、先端が折り曲げられたヘリ曲部311aになっている。フランジ部311は、シアプレート31の突起部31aと干渉しないように切り欠かれ、フランジ部311のヘリ曲部311aと、シアプレート31のヘリ曲部31bは、窓開口部21の枠形状に沿って連続している。そして、フランジ部311とシアプレート31とはガセット32によって連結され、そのガセット32にもヘリ曲部32aが形成されている。なお、こうした構造は窓開口部21において左右対称に形成され、右側の窓隅部R4にも同様に構成されている。
【0024】
次に、図10に示す窓開口部21の上の腰部には、前述したように横骨12eが外板11に接合され、それに内骨26が重ね合わせて接合されている(図8参照)。内骨26には切欠き部が形成され、そこに縦骨13bの端部が挿入されて接合されている。横骨12eは、窓開口部21側のフランジ部315が延び、先端が折り曲げられたヘリ曲部315aになっている。フランジ部315は、シアプレート31の突起部31aと干渉しないように切り欠かれ、フランジ部315のヘリ曲部315aと、シアプレート31のヘリ曲部31bは、窓開口部21の枠形状に沿って連続している。そして、フランジ部315とシアプレート31とはガセット33によって連結され、そのガセット33にもヘリ曲部33aが形成されている。なお、こうした構造は窓開口部21において左右対称に形成され、右側の窓隅部R3にも同様に構成されている。
【0025】
よって、本実施形態の鉄道車両では、こうした構造の側構体を構成することにより、次のような効果を奏する。すなわち、鉄道車両の吹寄せ部は、強度不足によって外板面へのシワが発生し易いが、本実施形態では吹寄せ部にシアプレート31を重ねて剛性を高めることで強度不足を補っている。特に、窓開口部21の窓隅部R1〜R4に対して突起部31を形成して補強しているため、高い応力が発生する箇所も十分に強度を確保することができている。更に、窓開口部21の窓隅部R1〜R4を含む枠形状に沿って、シアプレート31のヘリ曲部31bや骨部材のフランジ部311,315のヘリ曲部311a,315aが形成されているため、この点でもより剛性を高めた構成になっている。従って、側構体に面積の大きい窓開口部21が形成された鉄道車両であっても、車体剛性を向上させて面外変形に対する強度を増加させることができた。また、窓開口部21の枠形状に沿って周状にヘリ曲部31b,311a,315aが形成されているため、これが窓周囲のシールだまりを兼ねることもできる。
【0026】
ところで、車体の剛性については窓開口部などの割付けによる影響も大きいため、割付けによっては本実施形態で示した平板形状シアプレート31では十分に剛性を確保することができない場合もあり得る。そこで、より剛性を高めるためには、吹寄せ部に起立した立体部を設けることにより面外変形を抑え、鉄道車両の車体剛性を向上させることが望ましい。そこで、吹寄せ部に張り合わせるシアプレートについて、立体部を有する他の実施形態について説明する。
【0027】
図11は、立体部を有するシアプレートを示した断面図であり、図4と同様に吹寄せ部の縦方向断面(図2のB−B矢視とは反対方向の断面)を示した図である。前記実施形態と同様に、外板11に対してシアプレート40が張り合わされ、レーザ溶接によって一体に接合されている。本実施形態では、3枚の分割プレート41,42,43が連結されてシアプレート40が構成されている。分割プレート41,42,43には、その1枚ごとに縦骨として機能する立体部42が一つずつ形成されている。
【0028】
シアプレート40を複数の分割プレート41,42,43によって構成しているのは、立体部45ごとに分け、分割プレート毎の形状を単純にしたためである。つまり、特許文献1のような波板にしてしまうと、プレス加工によるシアプレートの製造コストが非常に高くなってしまうからである。また、シアプレート40は、隣り合う立体部45の距離を離している。これは、シアプレート40を外板11にレーザ溶接によって接合する際、レーザを横方向に走行させるため、十分な溶接距離を確保して接合強度が得られるようにするためである。
【0029】
分割プレート41,42,43は、重ね継手46が溶接によって接合され、1枚のシアプレート40となっている。シアプレート40の全体形状は、図2に示すシアプレート31と同様であり、分割プレート43は、窓開口部21の窓隅部R1,R2に沿うように突起部(図2の31a)が形成れている。更に、窓開口部21側の分割プレート43には、前記実施形態のシアプレート31と同様に、図2に示す窓開口部21の枠形状に沿ってヘリ曲部41aが形成されている。なお、シアプレート40では、断面が台形形状の立体部45としたが、その他、骨部材のようなコの字形状や三角の山形などであってもよい。
【0030】
次に、図12は、図11で示したシアプレート40の変形例を示した図である。このシアプレート50は4枚の分割プレート51,52,53,54が連結されているが、特に立体部55を溶接継手として構成されたものである。立体部55は、隣り合う分割プレート(例えば53,54)の端部に形成されたいわゆるZ形状の起立面56a,56bが重なって継手になり、レーザ溶接などによって接合される。よって、このシアプレート50は、高さを変えた起立面56a,56bを形成するだけで、特別な継手形状の加工を必要としない。しかも、分割プレート51,52,53,54の端部に形成する起立面56a,56bは、図11の立体部45に比べて加工がし易く、そのため加工コストをより低く抑えることができる。
【0031】
以上、本発明に係る鉄道車両の一実施形態について説明したが、本発明は、こうした実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、吹寄せ部全体に重ねる大きさのシアプレート31を示したが、例えば、図12に示したシアプレート50の分割プレート51,52,53について左側の起立面56bを無くし、互いを連結しないようにした複数枚のものであってもよい。
また、レーザ溶接を適用した構体を前提として説明したが、必ずしもレーザ溶接を適用する必要はなく、スポット溶接やアーク溶接などで施工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】鉄道車両の一実施形態についてその側構体を示した図である。
【図2】鉄道車両の中間窓ブロックを接車内側から示した図である。
【図3】中間窓ブロックの腰部を横方向に切った図2のA−A断面図である。
【図4】中間窓ブロックの吹寄せ部を横方向に切った図2のB−B断面図である。
【図5】中間窓ブロックの幕部を横方向に切った図2のC−C断面図である。
【図6】中間窓ブロックの腰部を縦方向に切った図2のD−D断面図である。
【図7】中間窓ブロックの左側端部を示した図3の一部拡大図である。
【図8】中間窓ブロックの幕部を縦方向に切った図2のE−E断面図である。
【図9】窓開口部における腰部側の窓隅部を拡大して示した図である。
【図10】窓開口部における幕部側の窓隅部を拡大して示した図である。
【図11】立体部を有する吹寄せ部のシアプレートを示した断面図である。
【図12】立体部を有する吹寄せ部のシアプレートを示した断面図である。
【図13】従来の鉄道車両ついて側構体の一部である中間窓ブロックを示した図である。
【図14】従来の鉄道車両ついて側構体の開口部周辺の構造を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 側構体
3 中間窓ブロック
11 外板
12 横骨
13 縦骨
21 窓開口部
31 シアプレート
31a 突起部
31b ヘリ曲部
R1〜R4 窓隅部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構体を構成する外板の吹寄せ部にシアプレートを接合して剛性を高めた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、屋根構体、側構体、台枠及び妻構体が互いに接合されて車両用構体が構成されているが、車体の自重や乗客などの垂直荷重によって側構体に対してせん断力などが作用するため、剛性を高めた構造にすることが必要である。そうした場合、車両用構体を構成する外板はそれ自体が骨部材を有するものではないので、剛性を高めるため、断面がハット形状の横骨や縦骨などの骨部材が外板に接合される。
【0003】
剛性を高めるための従来構造としては、例えば下記特許文献1に、図13に示すものが開示されている。これは、側構体の一部である中間窓ブロックを示した図である。中間窓ブロック101は、幕パネル102と、窓枠パネル103と、一対の吹寄せパネル104と、腰パネル106とが互いに接合されたものである。パネル102,104,106は、平板の外板に剛性を高める波板が重ねられ、外板と接触する波板の谷部がレーザ溶接などによって接合されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、図14に示す構造が開示されている。図14は、側構体の開口部周辺の構造を示した図である。外板200に形成された開口部201は、行先表示器が設けられる矩形状の開口である、そうした表示用の開口部201には、その周りを縁取るように同一形状の開口部が形成された、枠形状のシアプレート202が接合されている。シアプレート202は、断面がハット形状の横骨210とともに、図示するように外板200に接合され、例えば、シアプレート202とフランジ部231とを連続したレーザ溶接によって接合されている。
【特許文献1】特開2005−263126号公報
【特許文献2】特開2007−112344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような波板は、そのための専用プレス機を用いたのでは加工コストが非常に高くなってしまう。その一方で、専用プレス機を使用しなければ、圧延のステンレス板を波形に加工することは容易ではない。
また、吹寄せ部に関しては、特許文献2のシアプレートを設けることが考えられるが、特許文献2では、開口面積の小さい行先表示用の開口部を対象にしている。そのため、窓開口部や入口開口部のような面積の大きい開口部には、その周りを縁取るように開口を形成した枠形状のシアプレートを張り合わすことは好ましくない。シアプレートが外板全体の大きさになってしまい、車体重量を重くしてしまうからである。
【0006】
一方で、鉄道車両の側構体には、出入口や窓などの大きな開口部が形成され、台車による支点からの反力が支点近傍の吹寄せ部に大きなせん断力となって作用する。そのため、吹寄せ部は、強度不足によって外板面へのシワが発生し易い箇所となるので、特に応力が集中する窓隅部を含む吹寄せ部を補強することが必要になる。この点、従来の鉄道車両は、多くの補強部材が用いられ、構造が複雑で部品点数が多くなってしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、窓隅部を含んだ吹寄せ部をシアプレートによって補強した鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄道車両は、窓開口部が形成され、外板の車内面側に骨部材が車体高さ方向と車体長手方向の縦横に接合された側構体を有するものであって、前記外板の車内面側には、前記窓開口部横の吹寄せ部全体にシアプレートが接合され、そのシアプレートは、前記窓開口部の上下にまで突き出た突起部を備え、窓隅部を含む前記窓開口部の枠形状に沿って端部が形成されたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記シアプレートが、前記窓開口部の枠形状に沿って形成された端部の一部或いは全部にヘリ曲部が形成されたものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る鉄道車両は、前記シアプレートが、骨部材として機能するように起立した複数の立体部が形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記立体部が、断面がコの字形状、台形形状あるいは山形形状であって、前記シアプレートは、その一つ立体部ごとに形成された分割プレートが連結されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記立体部が、断面がコの字形状または台形形状であって、前記シアプレートは、当該立体部の頂部ごとに分けられた分割プレートが、当該頂部を接合することにより連結されたものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る鉄道車両は、前記立体部が縦骨と同方向に形成されたものであって、隣り合う立体部同士が、当該シアプレートを前記外板に対して溶接するための間隔をあけて形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記窓開口部の上下に前記外板に接合された骨部材を備え、その骨部材は、前記窓開口部の枠形状に沿ってヘリ曲部が形成され、そのヘリ曲部が、前記窓隅部に対応して形成された前記シアプレートのヘリ曲部と連続するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両は、前記骨部材が前記シアプレートの突起部とガセットによって連結され、そのガセットにも前記骨部材と突起部の両ヘリ曲部に重なるヘリ曲部が形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、強度不足によって外板面へのシワが発生し易い吹寄せ部に対し、シアプレートを接合して剛性を高めることができる。そのため、部品点数を少なくしながらも強度不足を補い、特に窓開口部の窓隅部に沿って突起部を形成して補強することで、応力が集中する箇所も十分に強度を確保することが可能である。そして、窓開口部の窓隅部や、その他の枠形状に沿った箇所にヘリ曲部を形成することで、より剛性を高めることができる。また、本発明の鉄道車両によれば、シアプレートに骨部材として機能する立体部を形成することにより、骨部材を別途接合する必要がなくなる。その際、シアプレートを複数の分割プレートを連結して構成することで、分割プレート1枚の形状を単純にして加工コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係る鉄道車両の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の鉄道車両を構成する側構体を示した図である。この鉄道車両は、ステンレス製構体であって、その側構体1が構体ブロックなどのパーツを接合して組み合わされた車両用構体によって構成されている。車両用構体は、側構体1の上部には屋根構体が、前後には妻構体がそれぞれ接合され、更にその下には台枠が接合されている。側構体1は、2つの車端窓ブロック2と中間窓ブロック3、そして窓ブロック2,3の間に3つの側入口ブロック4が接合されている。車端窓ブロック2や中間窓ブロック3は、例えば上下に分けられた上部外板と下部外板との接合によって側外板が形成され、その車体内側には剛性を保つため骨部材などが接合されている。
【0013】
次に図2は、中間窓ブロックを車内側から示した図であり、両端には接合された側入口ブロック4が示されている。中間窓ブロック3は、外板11に骨部材を接合して構成されている。図3乃至図5は、そうした構造が分かりやすいように、それぞれ中間窓ブロックの腰部、吹寄せ部、幕部を横方向に切った図2のA−A断面、B−B断面そしてC−C断面を示した図であり、図6は、腰部を縦方向に切った図2のD−D断面図である。
【0014】
中間窓ブロック3は、厚さ2mmのステンレス製の外板11に対し、厚さ1.5mmステンレス製板材から形成された補強部材である横骨12と縦骨13とが接合されている。なお、以下の説明において、特定の横骨12又は縦骨13を他のものと区別する場合には、a,b…の符号を付して示す。横骨12及び縦骨13は、そのほとんどが図6に示すように、断面がコの字に折り曲げられた立体部301と、その両側に張り出したフランジ部302が連続したハット形状をしたものである。
【0015】
本実施形態では、例えば図6に示すように、横骨12が外板11に直接接合され、その横骨12の上に重ねて縦骨13が接合されている。横骨12は、外板11に重ねられたフランジ部302に沿うようにレーザ溶接が行われ、縦骨13は、そのフランジ部が横骨12の立体部301に重ねられ、その重なった部分にレーザ溶接が行われる。本実施形態では、骨部材の接合にレーザ溶接が使用されるが、接合手段としてはレーザ溶接の他、スポット溶接や栓溶接を使用してもよい。また、本実施形態でも部分的には栓溶接なども使用されている。
【0016】
腰部では、図2に示すように、4本の横骨12が外板11に接合され、その横骨12の上には、窓開口部21の下の4本の縦骨13aと、窓開口部21の左右の縦辺に沿って2本の縦骨13bとが接合されている。左右の縦骨13bの間には内骨16が配置され、図6に示すように、縦骨13aの上端を被せるようにして接合されている。内骨16はL字形断面の板材であって、横骨12bの立体部301にはレーザ溶接によって接合され、縦骨13a,13bには栓溶接によって接合されている。
【0017】
最上部の横骨12bは、上方に延びたフランジ部311が形成され、その先端には車内側に折り曲げられたヘリ曲部311aが形成され、窓開口部21の窓枠剛性が高められている。そして、側外板を構成する上部外板11と下部外板11との境目Pがこのフランジ部311の高さにあり、上部に分割された外板11は段差のない車体表面になるように構成されている。一方、外板11の下方には、台形形状の断面をした長土台14が接合され、下側のフランジ部14aが下方に延びて内側の側梁17に沿って形成されている。また、外板11は、その下端部分が側梁17やフランジ部14aに重ねて接合されている。
【0018】
ここで図7は、中間窓ブロック3の左側端部を示した図3の一部拡大図である。側入口ブロック4との連結部分であり、側入口フレーム18が外板11の外側に重ねて接合されている。外板11の内側には縦骨13cが接合されているが、この縦骨13cは、立体部301の側面と片側のフランジ部302に切欠き131(図2参照)が複数形成され、横骨12の先端の端部が挿入されている。縦骨13cの接合は、外板11に当てられたフランジ部302のレーザ溶接によって行われるが、表面側には側入口フレーム18があるため、縦方向の溶接痕が車体表面に現れることはない。
【0019】
次に、中間窓ブロック3の幕部には、図5に示すように、外板11に対して横骨12dが直接接合され、その上に縦骨13dが重ねられて接合が行われる。図8は、幕部を示した図2のE−E断面図である。外板11には横骨12dが接合され、その上端部に横骨12dのフランジ部302と屋根構体8の端部が重ねられて接合されている。一方、幕部における最下部の横骨12eは、下方に延びたフランジ部313が形成され、その先端には内側に折り曲げられたヘリ曲部313aが形成され、窓開口部21の窓枠剛性が高められている。そして、その横骨12eには、立体部301に同じく断面がコの字形の内骨26が重ねられて接合されている。
【0020】
続いて、せん断力のかかりやすい吹寄せ部には、図2に示すように、補強部材としてシアプレート31が張り合わされている。このシアプレート31は、板厚2mmの外板11に対し、厚さ1.5mmのステンレス鋼板あって、窓開口部21の左右両側の吹寄せ部にそれぞれ設けられている。シアプレート31は、吹寄せ部全体に重なる大ききであって、特に窓開口部21の窓隅部R1〜R4の周りに沿うように突起部31aが上下に形成され、その窓隅部R1〜R4を補強する形状になっている。
【0021】
吹寄せ部では、こうしたシアプレート31の上から骨部材を接合した構成になっている。そして、シアプレート31によって剛性を高めているため、中間の縦骨13を省略した構造になっている。吹寄せ部は、図4に示すように、外板11にシアプレート31が重ねられてレーザ溶接によって接合されているが、横骨12と同様に車体横方向にレーザを走らせて接合される。そうしたシアプレート31に対し、横骨12fがレーザ溶接によって接合され、その両端部に縦骨13b,13cが接合されている。縦骨13bは、片側を長くして段差のついた一方のフランジ部314がシアプレート31に当てられて接合されている。この場合、縦方向にレーザ溶接を行っても、シアプレート31が間にあるため、外板11の表面に縦方向の溶接痕は現れない。
【0022】
外板11は、端部が応力を受けて変形し易いため、外形線に沿って骨部材を接合するなどして強度を確保しているが、本実施形態では、窓開口部21の窓枠に沿って起立したヘリ曲部が形成されている。そこで、シアプレート31には、窓開口部21の形状に沿って図4に示すようにヘリ曲部31bが形成されている。更に、窓開口部21の上下にも同様にヘリ曲部が形成されている。ここで図9及び図10は、窓隅部R1或いはR2を示した図であり、いずれも図(a)は図2の一部拡大図であり、図(b)はその横方向断面図である。
【0023】
図9に示す窓開口部21の下の腰部には、前述したように横骨12bが外板11に接合され、それに内骨16が突き出すように接合されている(図6参照)。内骨16は、その端部がガセット25によって縦骨13bと栓溶接によって接合されている。横骨12bは、窓開口部21側のフランジ部311が上方に延び、先端が折り曲げられたヘリ曲部311aになっている。フランジ部311は、シアプレート31の突起部31aと干渉しないように切り欠かれ、フランジ部311のヘリ曲部311aと、シアプレート31のヘリ曲部31bは、窓開口部21の枠形状に沿って連続している。そして、フランジ部311とシアプレート31とはガセット32によって連結され、そのガセット32にもヘリ曲部32aが形成されている。なお、こうした構造は窓開口部21において左右対称に形成され、右側の窓隅部R4にも同様に構成されている。
【0024】
次に、図10に示す窓開口部21の上の腰部には、前述したように横骨12eが外板11に接合され、それに内骨26が重ね合わせて接合されている(図8参照)。内骨26には切欠き部が形成され、そこに縦骨13bの端部が挿入されて接合されている。横骨12eは、窓開口部21側のフランジ部315が延び、先端が折り曲げられたヘリ曲部315aになっている。フランジ部315は、シアプレート31の突起部31aと干渉しないように切り欠かれ、フランジ部315のヘリ曲部315aと、シアプレート31のヘリ曲部31bは、窓開口部21の枠形状に沿って連続している。そして、フランジ部315とシアプレート31とはガセット33によって連結され、そのガセット33にもヘリ曲部33aが形成されている。なお、こうした構造は窓開口部21において左右対称に形成され、右側の窓隅部R3にも同様に構成されている。
【0025】
よって、本実施形態の鉄道車両では、こうした構造の側構体を構成することにより、次のような効果を奏する。すなわち、鉄道車両の吹寄せ部は、強度不足によって外板面へのシワが発生し易いが、本実施形態では吹寄せ部にシアプレート31を重ねて剛性を高めることで強度不足を補っている。特に、窓開口部21の窓隅部R1〜R4に対して突起部31を形成して補強しているため、高い応力が発生する箇所も十分に強度を確保することができている。更に、窓開口部21の窓隅部R1〜R4を含む枠形状に沿って、シアプレート31のヘリ曲部31bや骨部材のフランジ部311,315のヘリ曲部311a,315aが形成されているため、この点でもより剛性を高めた構成になっている。従って、側構体に面積の大きい窓開口部21が形成された鉄道車両であっても、車体剛性を向上させて面外変形に対する強度を増加させることができた。また、窓開口部21の枠形状に沿って周状にヘリ曲部31b,311a,315aが形成されているため、これが窓周囲のシールだまりを兼ねることもできる。
【0026】
ところで、車体の剛性については窓開口部などの割付けによる影響も大きいため、割付けによっては本実施形態で示した平板形状シアプレート31では十分に剛性を確保することができない場合もあり得る。そこで、より剛性を高めるためには、吹寄せ部に起立した立体部を設けることにより面外変形を抑え、鉄道車両の車体剛性を向上させることが望ましい。そこで、吹寄せ部に張り合わせるシアプレートについて、立体部を有する他の実施形態について説明する。
【0027】
図11は、立体部を有するシアプレートを示した断面図であり、図4と同様に吹寄せ部の縦方向断面(図2のB−B矢視とは反対方向の断面)を示した図である。前記実施形態と同様に、外板11に対してシアプレート40が張り合わされ、レーザ溶接によって一体に接合されている。本実施形態では、3枚の分割プレート41,42,43が連結されてシアプレート40が構成されている。分割プレート41,42,43には、その1枚ごとに縦骨として機能する立体部42が一つずつ形成されている。
【0028】
シアプレート40を複数の分割プレート41,42,43によって構成しているのは、立体部45ごとに分け、分割プレート毎の形状を単純にしたためである。つまり、特許文献1のような波板にしてしまうと、プレス加工によるシアプレートの製造コストが非常に高くなってしまうからである。また、シアプレート40は、隣り合う立体部45の距離を離している。これは、シアプレート40を外板11にレーザ溶接によって接合する際、レーザを横方向に走行させるため、十分な溶接距離を確保して接合強度が得られるようにするためである。
【0029】
分割プレート41,42,43は、重ね継手46が溶接によって接合され、1枚のシアプレート40となっている。シアプレート40の全体形状は、図2に示すシアプレート31と同様であり、分割プレート43は、窓開口部21の窓隅部R1,R2に沿うように突起部(図2の31a)が形成れている。更に、窓開口部21側の分割プレート43には、前記実施形態のシアプレート31と同様に、図2に示す窓開口部21の枠形状に沿ってヘリ曲部41aが形成されている。なお、シアプレート40では、断面が台形形状の立体部45としたが、その他、骨部材のようなコの字形状や三角の山形などであってもよい。
【0030】
次に、図12は、図11で示したシアプレート40の変形例を示した図である。このシアプレート50は4枚の分割プレート51,52,53,54が連結されているが、特に立体部55を溶接継手として構成されたものである。立体部55は、隣り合う分割プレート(例えば53,54)の端部に形成されたいわゆるZ形状の起立面56a,56bが重なって継手になり、レーザ溶接などによって接合される。よって、このシアプレート50は、高さを変えた起立面56a,56bを形成するだけで、特別な継手形状の加工を必要としない。しかも、分割プレート51,52,53,54の端部に形成する起立面56a,56bは、図11の立体部45に比べて加工がし易く、そのため加工コストをより低く抑えることができる。
【0031】
以上、本発明に係る鉄道車両の一実施形態について説明したが、本発明は、こうした実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、吹寄せ部全体に重ねる大きさのシアプレート31を示したが、例えば、図12に示したシアプレート50の分割プレート51,52,53について左側の起立面56bを無くし、互いを連結しないようにした複数枚のものであってもよい。
また、レーザ溶接を適用した構体を前提として説明したが、必ずしもレーザ溶接を適用する必要はなく、スポット溶接やアーク溶接などで施工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】鉄道車両の一実施形態についてその側構体を示した図である。
【図2】鉄道車両の中間窓ブロックを接車内側から示した図である。
【図3】中間窓ブロックの腰部を横方向に切った図2のA−A断面図である。
【図4】中間窓ブロックの吹寄せ部を横方向に切った図2のB−B断面図である。
【図5】中間窓ブロックの幕部を横方向に切った図2のC−C断面図である。
【図6】中間窓ブロックの腰部を縦方向に切った図2のD−D断面図である。
【図7】中間窓ブロックの左側端部を示した図3の一部拡大図である。
【図8】中間窓ブロックの幕部を縦方向に切った図2のE−E断面図である。
【図9】窓開口部における腰部側の窓隅部を拡大して示した図である。
【図10】窓開口部における幕部側の窓隅部を拡大して示した図である。
【図11】立体部を有する吹寄せ部のシアプレートを示した断面図である。
【図12】立体部を有する吹寄せ部のシアプレートを示した断面図である。
【図13】従来の鉄道車両ついて側構体の一部である中間窓ブロックを示した図である。
【図14】従来の鉄道車両ついて側構体の開口部周辺の構造を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 側構体
3 中間窓ブロック
11 外板
12 横骨
13 縦骨
21 窓開口部
31 シアプレート
31a 突起部
31b ヘリ曲部
R1〜R4 窓隅部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口部が形成され、外板の車内面側に骨部材が車体高さ方向と車体長手方向の縦横に接合された側構体を有する鉄道車両であって、
前記外板の車内面側には、前記窓開口部横の吹寄せ部全体にシアプレートが接合され、そのシアプレートは、前記窓開口部の上下にまで突き出た突起部を備え、窓隅部を含む前記窓開口部の枠形状に沿って端部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記シアプレートは、前記窓開口部の枠形状に沿って形成された端部の一部或いは全部にヘリ曲部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する鉄道車両において、
前記シアプレートは、骨部材として機能するように起立した複数の立体部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載する鉄道車両において、
前記立体部は、断面がコの字形状、台形形状あるいは山形形状であって、前記シアプレートは、その一つ立体部ごとに形成された分割プレートが連結されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項3に記載する鉄道車両において、
前記立体部は、断面がコの字形状または台形形状であって、前記シアプレートは、当該立体部の頂部ごとに分けられた分割プレートが、当該頂部を接合することにより連結されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載する鉄道車両において、
前記立体部は縦骨と同方向に形成されたものであって、隣り合う立体部同士が、当該シアプレートを前記外板に対して溶接するための間隔をあけて形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載する鉄道車両において、
前記窓開口部の上下に前記外板に接合された骨部材を備え、その骨部材は、前記窓開口部の枠形状に沿ってヘリ曲部が形成され、そのヘリ曲部が、前記窓隅部に対応して形成された前記シアプレートのヘリ曲部と連続するようにしたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項8】
請求項7に記載する鉄道車両において、
前記骨部材は、前記シアプレートの突起部とガセットによって連結され、そのガセットにも前記骨部材と突起部の両ヘリ曲部に重なるヘリ曲部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項1】
窓開口部が形成され、外板の車内面側に骨部材が車体高さ方向と車体長手方向の縦横に接合された側構体を有する鉄道車両であって、
前記外板の車内面側には、前記窓開口部横の吹寄せ部全体にシアプレートが接合され、そのシアプレートは、前記窓開口部の上下にまで突き出た突起部を備え、窓隅部を含む前記窓開口部の枠形状に沿って端部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記シアプレートは、前記窓開口部の枠形状に沿って形成された端部の一部或いは全部にヘリ曲部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する鉄道車両において、
前記シアプレートは、骨部材として機能するように起立した複数の立体部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載する鉄道車両において、
前記立体部は、断面がコの字形状、台形形状あるいは山形形状であって、前記シアプレートは、その一つ立体部ごとに形成された分割プレートが連結されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項3に記載する鉄道車両において、
前記立体部は、断面がコの字形状または台形形状であって、前記シアプレートは、当該立体部の頂部ごとに分けられた分割プレートが、当該頂部を接合することにより連結されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載する鉄道車両において、
前記立体部は縦骨と同方向に形成されたものであって、隣り合う立体部同士が、当該シアプレートを前記外板に対して溶接するための間隔をあけて形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載する鉄道車両において、
前記窓開口部の上下に前記外板に接合された骨部材を備え、その骨部材は、前記窓開口部の枠形状に沿ってヘリ曲部が形成され、そのヘリ曲部が、前記窓隅部に対応して形成された前記シアプレートのヘリ曲部と連続するようにしたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項8】
請求項7に記載する鉄道車両において、
前記骨部材は、前記シアプレートの突起部とガセットによって連結され、そのガセットにも前記骨部材と突起部の両ヘリ曲部に重なるヘリ曲部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−12861(P2010−12861A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173328(P2008−173328)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】
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