説明

鉄道軌道

【課題】
列車が橋もしくは陸橋を通過する際の低周波数の振動を低減し、低コストで形成可能である、鉄道軌道を提供する。
【解決手段】
少なくとも1つの弾性層(8,8’,8”)が、下部構造(5)に対してレール(2)を弾性支承するために設けられている、レール(2)とレール(2)を担持する道床(3)を有する上部構造(1)と、橋又は陸橋によって構成されかつ複数の橋脚(6)と橋脚によって担持された橋上構造(7)を有する下部構造(5)とを備えた鉄道軌道において、それぞれの橋脚(6)の上に延在する上部構造(1)の第1のゾーン(9)内の、少なくとも1つの弾性層(8,8’,8”)の道床係数の値を、橋脚(6)間の領域内に延在する上部構造(1)の第2のゾーン(10)内よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弾性層が、下部構造に対してレールを弾性支承するために設けられている、レールとレールを担持する道床を有する上部構造と、橋又は陸橋によって構成されかつ複数の橋脚と橋脚によって担持された橋上構造を有する下部構造とを備えた鉄道軌道に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道は、様々な形成が公知である。鉄道軌道は、上部構造と上部構造を担持する下部構造によって構成される。軌道本体と呼ばれる上部構造は、レールとレールを担持する道床を有し、しばしば枕木を介在させている。道床は、例えば砕石床として形成することができる。コンクリートから成る道床を有するいわゆる「省力化軌道」も公知である。
【0003】
線路構造では、振動を低減するため、従って鉄道車両のコンポーネントと砕石床を保護するため及び固体伝送音を低減するために弾性層を使用することも既に公知である。このような弾性層は、上部構造の道床と下部構造間、又は枕木と道床間、又はレールと枕木間、又はレールを担持する中間プレートと枕木間、又は枕木のない軌道本体の場合はレール又は中間プレートと道床間に配設される。
【0004】
低い位置にある土地を横断するため、鉄道軌道の軌道本体は、しばしば陸橋もしくは橋を介して案内される。このような鉄道橋は、通常はいわゆる橋上構造を担持する橋脚上にある。橋上構造は、通常は、その曲げ剛性を介して負荷を受け止めることができる橋梁もしくは「梁」に相応する軌道プレートから成る。橋脚(支持部)は、交通負荷と橋上構造の負荷を受け止め、この負荷を伝える。この場合、橋脚及び橋上構造は共に鉄道軌道の下部構造を構成する。
【0005】
特に高速列車が古い構造の橋もしくは陸橋上を走行する場合には、鉄道軌道を疲労させ、周辺の人々、例えば隣の住民にも知覚可能な低周波数の振動が生じるという問題が生じる。このような古い橋及び陸橋は、ノンプレストレストコンクリートを備え、これにより、列車が通過する際に橋脚間の領域が沈下する。鉄道軌道の垂直方向の道床強度は、2つの橋脚間の中央領域が最低で、橋脚上が最高で、2つの橋脚間の中央と橋脚間に最低の道床強度と最高の道床強度間の移行部が生じる。従って、支持部の間隔が周期的な橋又は陸橋の場合、軌道に対してこの基本条件も周期的に変化する。これにより、周期的な荷重変動が軌道に生じ、この荷重変動は、振動、軌道要素の高い摩耗等のような望ましくない効果を生じさせてしまう。
【0006】
橋及び陸橋の新しい構造では、このような周期的な荷重変動の回避もしくは低減をするために、テンションを加えたケーブルを再調整する可能性を有するプレストレストコンクリート構造が使用される。これにより、列車が通過する際に十分平坦な軌道を提供することができる。古い構造で生じる振動を低減するため、既に、付加的に橋脚を組み込んだり、橋もしくは陸橋から鉄道軌道の上部構造を切り離したりすることが提案されている。これらの措置は、非常に高い費用と結び付いている。
【0007】
特許文献1からは、所望のレベルにレールを後から正確に適合させるために、レールの敷設後にレールの下に配設した熱可塑性のプレートを電流によって加熱し、これによりプレートを軟らかくし、レールの適切なレベル調整を可能にすることが公知である。熱可塑性プレートの冷却時間及び硬化時間は数分である。
【0008】
特許文献2からは、走行中の鉄道車両の動的作用からレールを絶縁する鉄道レール用の弾性支持装置が公知である。レールの振動は、鉄道車両にも環境にも伝達される。その結果、レールの振動と車両自身の振動間に共振も生じる。支持装置は、短時間でレールの振動を減衰させ、これにより共振が回避される。支持装置は、コンクリート基盤内に設けられたシート内に配設されている減衰材料から成るクッションの上に規則的な間隔で各レールの脚部を載置するために形成されている。各支持部の減衰クッションの動的剛性は、相対的に硬い支持部と相対的に軟らかい支持部が交互になるように選択されている。この場合、硬い支持部の動的剛性はレールの剛性よりも高く、軟らかい支持部の動的剛性はレールの剛性よりも低い。
【0009】
更に、特許文献3からは、軌道装置の砕石用の弾性基盤が公知である。この基盤は、それぞれの軸負荷に対して必要な道床係数と必要な固有振動数を備える。
【0010】
非特許文献1からは、長手方向に不均質な軌道で枕木に対して弾性ソール付けを使用することが分かる。
【0011】
非特許文献2では、隣接する軌道及びポイントの軌道剛性の違いを橋渡しするために、砕石内に設置したポイントのために段階付けをしたバネ剛性を有するポイントの前後に移行領域が設けられている。
【特許文献1】独国特許第2 360 826号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 169 187号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第34 03 234号明細書
【非特許文献1】Besohlte Schwellen; Mueller-Boruttau, Kleinert; ETR-Aufsatz Heft 3/2001 http://www.spreepolymer.de/pdf/ETR.pdf
【非特許文献2】ERL-Elastische Rippenplattenlagerung; Produktionformation vom September 2004; BWG Gesellshaft mbH; http://www.bwg.cc/downloads/BWG erl de.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、列車が橋もしくは陸橋を通過する際の低周波数の振動を低減し、低コストで形成可能である、冒頭で述べた様式の鉄道軌道を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する鉄道軌道によって解決される。それぞれの橋脚の上に延在する上部構造の第1のゾーン内の、少なくとも1つの弾性層の道床係数の値が、橋脚間の領域内に延在する上部構造の第2のゾーン内よりも小さいことによって、軌道の道床を全体的に均質化、即ち補正することができる。これにより、周期的な荷重変動が本質的に低減される。既存の鉄道軌道は、この方法で少なくとも1つの弾性層を後から投入することによって更新することができる。本発明により、軌道本体の費用のかかる構造もしくは上部構造と下部構造の費用のかかる切離しもしくは橋又は陸橋での高価な更新措置を回避することができる。
【0014】
本発明の有利な実施形では、レールは、レールの長手方向に互いに間隔を置いた支承箇所において道床によって担持されており、第1のゾーンと第2のゾーンは、それぞれレール用の複数の支承箇所に渡って延在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の更なる利点及び詳細を、以下で添付した概略図を基にして説明する。
【0016】
本発明による鉄道軌道の第1の実施形は、図1及び2に図示されている。鉄道軌道は、レール2と道床3を有する上部構造1を備える。レール2は、道床3によって担持されるが、支承箇所4では枕木12によって間接的に担持される。鉄道軌道は、更に、橋又は陸橋によって構成される下部構造5を備える。橋又は陸橋は、高架橋とも呼ばれる。下部構造5は、複数の橋脚6と橋脚によって担持された橋上構造7を有する。下部構造5に対してレール2を弾性的に支承するための弾性層8が設けられている。弾性層は、上部構造1の道床3と下部構造5間に配設されている。
【0017】
それぞれの橋脚6の上に延在する上部構造1の第1のゾーン9内の弾性層8の道床係数の値は、橋脚6間の領域内に延在する上部構造1の第2のゾーン10内よりも小さい。これにより、本発明による弾性層8を有していない鉄道軌道と比べてレールの道床を全体的に均質化することができる。結果として、この道床の均質化によって、負荷を受けた際のゾーン10内の撓みとゾーン9内の撓みの差が、従って本発明による弾性層8を有していない1桁のmm範囲内にある鉄道軌道の起伏が小さくなる。従って、本発明による鉄道軌道を通過する鉄道車両によって引き起こされる共振の強度が同様に低減される。高速列車が通常速度で、鉄道橋の橋脚間隔が通常の約25mである場合、共振のこの強度低減は、環境に対して低周波数の周波数領域(20Hzまで)内で、合法的な放出限界値もしくは環境汚染限界値を遵守することができるように作用する。
【0018】
説明したように、レール2は、レール2の長手方向に互いに間隔を置いた支承箇所4において道床3によって担持されている。この場合、第1のゾーン9と第2のゾーン10は、それぞれレール2用の複数の支承箇所4に渡って、特に10以上の支承箇所4に渡って延在する。例えば、第1のゾーン9と第2のゾーン10は、それぞれ約20本の枕木に渡って延在させることができる。
【0019】
「道床剛性」とも呼ばれる道床係数の単位は、N/mmである。即ち、これは、面に対する剛性(N/mm)もしくはバネ剛性である。更に、道床係数は、1mmの付加的な沈下(撓み)を得るための付加的な圧力(N/mm)と見なすこともできる。
【0020】
この実施例では、弾性層8の道床係数は、第1のゾーン9と第2のゾーン10に渡って一定である。換言すれば、第1のゾーン9内の弾性層8は、ゾーン9のそれぞれに対してそれぞれ一定の所定の道床係数の値を備える。第2のゾーン10内では、同様に一定の道床係数の値を備えるが、ここでは相応にゾーン9内よりも高い。
【0021】
道床係数の値をゾーン9及び/又はゾーン10に沿って段階的に変化させることも考慮及び実施可能である。例えば、ゾーン10内の道床係数は、特に均質な道床の推移を形成することによって負荷を受けた際にレールの弾性曲線を少ない起伏を有する所定の所望の撓み推移に適合させるために、このゾーンに隣接する2つのゾーン9に接するその縁部からこのゾーン10の中心に向かって、ゾーン9の小さい値に続くより小さな値からより大きな値に上昇させてもよい。
【0022】
図1及び2による実施例では、第1のゾーン9と第2のゾーン10は、鉄道軌道の長手方向に直接連続している。前段で説明した変化する道床係数の推移の形成の意味で、第1のゾーン9と第2のゾーン10間に、道床係数が第1のゾーン9の内の道床係数のそれぞれの値と第2のゾーン10内の道床係数のそれぞれの値の間にある値を有するそれぞれ少なくとも1つの別のゾーン11を配置することも考慮及び実施可能である。このような実施形が図5に概略的に図示されている。望むようにレールに沿った道床の推移を形成するために、相応の道床係数を有する別のゾーンを設けることもできる。
【0023】
更に、道床3と下部構造5間の弾性層8の代わりに、レール2と橋上構造7間の領域に弾性層を形成する更なる可能性もある。更にまた、図3に図示した実施形では、レール2は、枕木12によって砕石床の形態で形成された道床3上に担持されている。ここで弾性層8’は、それぞれの枕木12と道床3間に配設されている。従って、各枕木12の下には、全体として枕木12を弾性的に道床3から切り離す弾性層8’の一部分が存在する。優れていることに、枕木12と道床3間に配設された層8’のそれぞれの弾性部分は、相応の枕木12の広がり全体に渡って延在する。
【0024】
図1による実施例と同様に、それぞれの橋脚6の上に延在する上部構造1の第1のゾーン9内の弾性層8’の道床係数の値は、橋脚6間の領域内に延在する上部構造1の第2のゾーン10内よりも小さいが、レール2は、レール2の長手方向に互いに間隔を置いた支承箇所4において道床3によって担持されており、第1のゾーン9と第2のゾーン10は、それぞれレール2用の複数の支承箇所4に渡って延在する。
【0025】
第1の実施形と第2の実施形を組み合わせることも、従って上部構造1の道床3と下部構造5間の弾性層8に加えて枕木12と道床3間に弾性層8’を形成することも考慮及び実施可能である。
【0026】
第3の実施形は図4に図示されている。この形成は、前記の実施形に相応するが、ここでは弾性層8”がそれぞれのレール2の下面に直接配設されていることが相違する。この弾性層8”のそれぞれの部分は、レール2とそれぞれの枕木12間に存在する。
【0027】
この第3の実施形を第1又は第2の実施形と組み合わせること又はこれらを組み合わせたものと組み合わせることも、基本的に考慮及び実施可能である。
【0028】
枕木のない軌道本体では、弾性層は、レールとコンクリート製の道床の間又はレールを固定する中間プレートとコンクリート製の道床の間に設けることができる。このような弾性層は、更にまたそれぞれ1つの支承ポイントに存在する複数の部分によって構成することができる。この場合、レールと道床間に一貫した弾性層を設けることも基本的に考慮及び実施可能である。
【0029】
弾性層8,8’,8”は、弾性成分が可塑成分を少なくとも上回り、特にエラストマ又は熱可塑性のエラストマによって構成される弾性材料から成る。この場合、有利な材料は、例えばポリウレタンエラストマ又はゴムエラストマである。
【0030】
道床係数の異なる弾性層8,8’,8”は、弾性層8,8’,8”を構成する硬さもしくは剛性の異なる使用材料によって実現することができる。硬くなるほど道床係数は高くなる。この場合、優れていることに、硬さの異なるエラストマ又は熱可塑性のエラストマを使用することができる。例えば、硬度の異なるPUエラストマが公知である。
【0031】
その代わり又はこれに加えて、道床係数の適合は、形状を介して、特に弾性層8,8’,8”の厚さの違い又は弾性的な支承部を延在させる面積の違いによって得ることもできる。例えば、支承面積は、ラスタ状に配設された穴により多少小さくすることができる。
【0032】
優れていることに、第1のゾーン9及び第2のゾーン10内の少なくとも1つの弾性層8の道床係数の値は、レール2の道床係数の値よりも小さい。
【0033】
本発明は、特にノンプレストレストの橋上構造を有する橋又は陸橋用に有利に使用可能である。再調整の可能性を有していないプレストレストコンクリート構造では、同様に鉄道軌道の有利な均質化を得ることができる。再調整の可能性を有するプレストレストコンクリート構造でも、本発明は更なる最適化のために使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による鉄道軌道の第1の実施形の中心縦断面図を示す。
【図2】図1の切断線A−Aに沿った鉄道軌道の上部構造と橋上構造の一部の横断面図を示す。
【図3】本発明による鉄道軌道の第2の実施形の図2と同様の横断面図を示す。
【図4】本発明による鉄道軌道の第3の実施形の図2と同様の横断面図を示す。
【図5】本発明による鉄道軌道の第4の実施形の図1と同様の中心縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 上部構造
2 レール
3 道床
4 支承箇所
5 下部構造
6 橋脚
7 橋上構造
8 層
9 ゾーン
10 ゾーン
11 ゾーン
12 枕木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弾性層(8,8’,8”)が、下部構造(5)に対してレール(2)を弾性支承するために設けられている、レール(2)とレール(2)を担持する道床(3)を有する上部構造(1)と、橋又は陸橋によって構成されかつ複数の橋脚(6)と橋脚によって担持された橋上構造(7)を有する下部構造(5)とを備えた鉄道軌道において、
それぞれの橋脚(6)の上に延在する上部構造(1)の第1のゾーン(9)内の、少なくとも1つの弾性層(8,8’,8”)の道床係数の値が、橋脚(6)間の領域内に延在する上部構造(1)の第2のゾーン(10)内よりも小さいことを特徴とする鉄道軌道。
【請求項2】
レール(2)が、レール(2)の長手方向に互いに間隔を置いた支承箇所(4)において道床(3)によって担持されていること、第1のゾーン(9)と第2のゾーン(10)が、それぞれレール(2)用の複数の支承箇所(4)に渡って延在することを特徴とする請求項1に記載の鉄道軌道。
【請求項3】
第1のゾーン(9)と第2のゾーン(10)の弾性層(8,8’,8”)の道床係数の値がそれぞれ一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道軌道。
【請求項4】
第1のゾーン(9)と第2のゾーン(10)が、鉄道軌道の長手方向に直接連続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の鉄道軌道。
【請求項5】
第1のゾーン(9)と第2のゾーン(10)間に、それぞれ少なくとも1つの別のゾーン(11)が位置し、このゾーン内の道床係数が、第1のゾーン(9)内の道床係数の値と第2のゾーン(10)内の道床係数の値の間を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の鉄道軌道。
【請求項6】
弾性層(8)が、上部構造(1)の道床(3)と下部構造(5)間に配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の鉄道軌道。
【請求項7】
道床(3)とレール(2)間に枕木(12)が配設されており、枕木(12)毎にレール(12)用の支承箇所(4)が存在し、弾性層(8’)が、それぞれの枕木(12)と道床(3)間に配設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の鉄道軌道。
【請求項8】
枕木(12)と道床(3)間に配設されたそれぞれの弾性層(8’)が、枕木(12)の広がり全体に渡って延在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の鉄道軌道。
【請求項9】
弾性層(8”)が、それぞれの支承箇所(4)の領域内のそれぞれのレール(2)の下面又はレール(2)を取り付ける中間プレートの下面に直接配設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の鉄道軌道。
【請求項10】
第1のゾーン(9)及び第2のゾーン(10)内の少なくとも1つの弾性層(8)の道床係数の値が、レール(2)の道床係数の値よりも小さいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の鉄道軌道。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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