説明

鉄鉱石の造粒物の製造方法、造粒物

【課題】疑似粒子が簡単に破壊しない良好な圧壊強度を有し、かつ、造粒性が良好な粉鉄鉱石の造粒物を得る方法を提供する。
【解決手段】低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部と、水3〜25質量部を、粉鉄鉱石100質量部に加えることを特徴とする粉鉄鉱石の造粒物の製造方法である。さらにCaOないしCa(OH)21.0〜3.0質量部を加えると好ましい。低分子界面活性剤は、疎水基としてアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の少なくとも一つ以上を含み、親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上を含むと好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石の造粒物の製造方法、造粒物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に製鉄工程における高炉装入用原料としては、粉鉄鉱石に水や造粒剤を添加して混練して製造した擬似造粒物を焼結機で焼成した焼結鉱が用いられる。
【0003】
疑似造粒物が焼結原料充填層において目詰まりを起こして通気性が低下し燃料であるコークスの燃焼速度が遅くなると、焼結鉱の生産効率が低下するという問題が発生するため、疑似造粒物を構成する疑似粒子が簡単に破壊しない良好な圧壊強度を有し、かつ、造粒性が良好な造粒物を得ることが重要な課題である。ここで、造粒性が良好であるとは、疑似造粒物を構成する疑似粒子のうちその粒径の小さいものが占める割合を少ないことであり、例えば、0.25mm未満の粒径を有する疑似粒子の占める割合が3%以下である。
【0004】
造粒性が良好な造粒物を得るために、例えば、ベントナイト、リグニン亜硫酸塩(パルプ廃液)、澱粉、砂糖、糖蜜、水ガラス、セメント、ゼラチン、コーンスターチ等のバインダー機能を有する粘結剤を造粒剤として使用することが検討されていたが、現在では、生石灰がバインダー機能を有する粘結剤として広く使用されている。これは、生石灰は、前記の粘結剤に比して、造粒性が良好な造粒物を得られ易く、かつ、疑似粒子の圧壊強度が高く崩壊し難いことによる。
【0005】
しかし、生石灰を用いる場合その使用量を多くしないと十分な効果が得られない上に、2質量%以上添加しても造粒性の向上効果は頭打ちとなる傾向があることからコストパフォーマンスが良くないと指摘されていた。
【0006】
特許文献1ないし特許文献2では、バインダーとしての機能のみならず水を取り込んでいる凝集体を破壊して分散させる機能を有する造粒剤を用い、粉鉄鉱石を十分に分散させることで、水が効率よく粉鉄鉱石を造粒する作用を発揮する方法、並びに、バインダーとしての機能のみならず水を取り込んでいる凝集体を破壊して分散させる機能を有する造粒剤としてカルボキシル基を有する高分子化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−076132号公報
【特許文献2】特開2004−076133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1ないし特許文献2に開示される方法では、0.25mm未満の粒径を有する疑似粒子の占める割合が3%以下とする要求を十分満足することができない。
【0009】
本発明は、疑似造粒物を構成する疑似粒子のうちその粒径の小さいものが占める割合を少ないこと、例えば、0.25mm未満の粒径を有する疑似粒子の占める割合が3%以下とする、というきびいしい要求に応えられる粉鉄鉱石の造粒物の製造方法並びにその造粒物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)粉鉄鉱石に低分子界面活性剤を加えて造粒することを特徴とする粉鉄鉱石の造粒物の製造方法であって、粉鉄鉱石を100質量部とした場合に、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部を水3〜25質量部に溶解して粉鉄鉱石を100質量部に加えることを特徴とする粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
(2)さらにCaOないしCa(OH)21.0〜3.0質量部を加えることを特徴とする(1)に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
(3)前記低分子界面活性剤は、疎水基としてアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の少なくとも一つ以上を含み、
親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上
を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
(4)前記スルホン酸基(−SO3H)および/または−SO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルベンゼンスルホン酸塩を含む有機化合物であり、前記硫酸エステル基(−OSO3H)および/または−OSO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルエーテル硫酸エステルおよび/またはアルキルエーテル硫酸エステル塩を含む有機化合物であることを特徴とする(3)に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
(5)前記アルキルベンゼンスルホン酸塩がドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのいずれかであり、前記アルキルエーテル硫酸エステル塩がラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、オクチルエーテル硫酸エステルナトリウム、ヘキサデシルエーテル硫酸エステルナトリウムのいずれかであることを特徴とする(4)に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
(6)前記粉鉄鉱石の0.25mm以下の粒子の中に10μm以下の超微粒子が20質量%以上含有されていることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
(7)低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜9.09質量%を有することを特徴とする粉鉄鉱石の造粒物。
(8)低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のものの含有量が0.0097〜9.01質量%であり、さらにCaOないしCa(OH)20.901〜2.9質量%を有することを特徴とする(7)に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
(9)前記低分子界面活性剤は、疎水基としてアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の少なくとも一つ以上を含み、
親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上
を含むことを特徴とする(7)又は(8)に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
(10)前記スルホン酸基(−SO3H)および/または−SO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルベンゼンスルホン酸塩を含む有機化合物であり、前記硫酸エステル基(−OSO3H)および/または−OSO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルエーテル硫酸エステルおよび/またはアルキルエーテル硫酸エステル塩を含む有機化合物であることを特徴とする(9)に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
(11)前記アルキルベンゼンスルホン酸塩がドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのいずれかであり、前記アルキルエーテル硫酸エステル塩がラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、オクチルエーテル硫酸エステルナトリウム、ヘキサデシルエーテル硫酸エステルナトリウムのいずれかであることを特徴とする(10)に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、疑似造粒物を構成する疑似粒子のうちその粒径の小さいものが占める割合を少ないこと、例えば、0.25mm未満の粒径を有する疑似粒子の占める割合が3%以下となるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、低分子界面活性剤による粉鉄鉱石の造粒物を製造する方法である。
【0013】
第1の実施形態の対象となる粉鉄鉱石は特に限定しないが、篩分けされた粉鉄鉱石のうち0.25mm以下の粒子の中に10μm以下の超微粒子が20質量%以上含有されていることが望ましい。10μm以下の超微粒子が20質量%以上含有されているとバインダーとして十分に機能するからである。また、粉鉄鉱石中に占める0.25mm以下の粒子の割合が10質量%以上であると好ましい。
【0014】
造粒物を製造するにあたって、粉鉄鉱石を100質量部とした場合に、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部と、水3〜25質量部を、粉鉄鉱石100質量部に加える。
【0015】
(低分子界面活性剤)
発明者らは、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部を造粒剤として用いると良好な造粒性を有する造粒物を得られることを見出した。ここで、低分子界面活性剤とは、親水基と疎水基を有する低分子化合物を言う。
【0016】
粉鉄鉱石を造粒する場合、0.5mm以下の微粒子が直径1〜3mmの核粒子に付着して疑似粒子が作られる。このとき、粉鉄鉱石中に含有する直径が10μm以下の超微粒子がバインダーとして機能する。ただし、超微粒子は核粒子に付着しているのでこのままではバインダーとして機能させることはできず、超微粒子を核粒子から離して分散させる必要がある。本発明において、造粒時に粉鉄鉱石に低分子界面活性剤を添加することで、核粒子から超微粒子を積極的に分散させうる効果(以下、「超微粒子の分散効果」という。)を奏することを見出した。
【0017】
ここで低分子界面活性剤の分子量が450を超えると、水に溶解しにくくなるので、その上限を450とした。また、低分子界面活性剤の分子量が280未満であると界面活性剤としての機能が不十分になるので、その下限を280とした。これは、疎水基が構成する疎水部分の大きさが不十分になるものと推定している。
【0018】
本発明で用いられる低分子界面活性剤は、疎水基としてアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の少なくとも一つ以上を含み、親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される基(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上を含むアニオン性界面活性剤(水中で解離して、負のイオンとなる親水基を有する界面活性剤)であることが望ましい。これは、疎水基部分がアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の界面活性剤は、これらの疎水基部分が粒子に吸着しやすく、さらに親水基がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上を含むアニオン性の基である場合、粒子を分散させる能力が特に優れているためである。
【0019】
なかでも、アルキルベンゼンスルホン酸塩および/またはアルキルエーテル硫酸エステル塩を含む低分子界面活性剤が、超微粒子の分散効果に優れている。アルキルベンゼンスルホン酸塩は、疎水基としてアリール基、親水基として−SO3Mを有している。アルキルエーテル硫酸エステル塩は、疎水基としてオキシアルキレン基、親水基として−OSO3Mを有している。アルキルベンゼンスルホン酸塩として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用することが好ましい。アルキルエーテル硫酸エステル塩として、ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、オクチルエーテル硫酸エステルナトリウム、ヘキサデシルエーテル硫酸エステルナトリウムを使用することが好ましい。
【0020】
(水の添加量)
造粒時に添加する水の添加量が3.0質量部未満の場合には低分子界面活性剤による超微粒子の分散効果を十分に奏しないためか、良好な造粒性を有する造粒物を得られないので水の添加量の下限を3.0質量部とする。
【0021】
水の添加量が25.0質量部を超える場合には全体がスラリー化し、造粒物を得ることができなくなるか、造粒機の容器壁面への付着が激しく生産性の低下を招くことがあるので、水の添加量の上限を25質量部とする。
【0022】
(造粒物の組成)
本発明の粉鉄鉱石の造粒物の組成は、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜9.09(=10/110×100)質量%である。
【0023】
造粒物に含まれる元素の成分割合は、蛍光X線分析、ICP発光分析により同定することができる。また、造粒物中の結晶相は、粉末X線回折により同定することができる。
【0024】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施の形態の低分子界面活性剤に加え、CaOないしCa(OH)2を添加して粉鉄鉱石の造粒物を製造する方法である。
【0025】
第2の実施形態の対象となる粉鉄鉱石は特に限定しないが、第1の実施の形態と同様、篩分けされた粉鉄鉱石のうち0.25mm以下の粒子の中に10μm以下の超微粒子が20質量%以上含有されていることが望ましい。10μm以下の超微粒子が20質量%以上含有されているとバインダーとして十分に機能するからである。また、粉鉄鉱石中に占める0.25mm以下の粒子の割合が10質量%以上であると好ましい。
【0026】
造粒物を製造するにあたって、粉鉄鉱石を100質量部とした場合に、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部とCaOないしCa(OH)2を1.0〜3.0質量部と水3.0〜25.0質量部を粉鉄鉱石100質量部に加える。
【0027】
(CaOないしCa(OH)2
発明者らは、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部と共にCaOないしCa(OH)21.0〜3.0質量部を用いると良好な造粒性を有するだけでなく、疑似粒子の圧壊強度が比較的高い造粒物を得られることを見出した。
【0028】
これは、直径が10μm以下の超微粒子とCaOないしCa(OH)2が互いに補完しあって核粒子間の結合を強化することにより、疑似粒子の圧壊強度を高めているものと発明者らは考察している。
【0029】
CaOないしCa(OH)2が1.0質量部未満だと疑似粒子の圧壊強度の向上が不十分であることから、CaOないしCa(OH)2の含有量の下限を1.0質量部とした。また、CaOないしCa(OH)2が3.0質量部超であると疑似粒子の圧壊強度の向上効果が頭打ちになりコストが嵩むことから、CaOないしCa(OH)2の含有量の上限を3.0質量部とする。
【0030】
(低分子界面活性剤、水の添加量)
第2の実施の形態で用いる低分子界面活性剤の種類及び添加量、水の添加量については、第1の実施の形態と同様とすると好ましい。
【0031】
(造粒物の組成)
第2の実施の形態で製造される造粒物の組成は、低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.0097(=0.01/103×100)〜9.01(=10/111×100)質量%及びCaOないしCa(OH)20.901(=1/111×100)〜2.9(=3/103×100)質量%である。
【0032】
造粒物に含まれる元素の成分割合は、蛍光X線分析、ICP発光分析により同定することができる。また、造粒物中の結晶相は、粉末X線回折により同定めることができる。
【実施例】
【0033】
表1には、粉鉄鉱石I、IIの粒径分布を示した。
【0034】
粉鉄鉱石I、IIは、5mm超、2〜5mm、1〜2mm、0.5〜0.25mm、0,25mm未満と篩分けした場合に、表1に示すように0.25mm以下の粒子の内に10μm以下の微粒子を含有する割合が20%以上のものである。10μm以下の微粒子の量は、篩で0.25mm以下の試料を用い、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した。
【0035】
表2にはA〜Lの造粒剤の名称を示した。A〜Iは本発明の方法に用いる疎水基及び親水基を有する低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のものである。このうち、Aはアルキルベンゼンスルホン酸塩としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(分子量348)、Bはアルキルエーテル硫酸エステル塩としてラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム(分子量378)である。また、Lは本発明の方法に用いないポリアクリル酸ナトリウムとした。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
粉鉄鉱石I、IIに対してA〜Lの造粒剤を用いて造粒を実施した結果を表3、表4に示した。表2、4において、本発明範囲から外れる数値・符号にアンダーラインを付している。
【0039】
表3に本発明例の結果を示し、表4は比較例の結果を示している。
【0040】
評価は、造粒性、造粒物の圧壊強度ともに合格している場合に合格(○)とし、それ以外は不合格とした。
【0041】
造粒性については、0.25mm未満の疑似粒子が3%以内のものを合格、3%超のものは不合格とした。
【0042】
造粒物の圧壊強度については、粒径が4mm〜6mmの疑似粒子を10個選び、圧縮試験機で荷重を加えて疑似粒子が圧壊する荷重F(kgf)(以下、「圧壊荷重」という。)を測定してその断面積S(cm2)で除した値の平均値が10kgf/cm2以上を合格、10kgf/cm2未満を不合格とした。
【0043】
造粒物の強度測定は、ここで、断面積としては、疑似粒子を球とみなして当該球をその中心を含む面で切断した面の断面積S(cm2)とした。すなわち、球の直径がd(cm)であれば、S=π×(d/2)×(d/2)であるから、圧壊強度PはP=F/S=4F/πd2と算出される。ここで、疑似粒子の直径dの決定にあたっては、例えば、疑似粒子の径を計測してその最大値dmaxと最小値dminを計測してその平均値daを疑似粒子の直径dとする。10kgf/cm2の圧壊強度試験は、5mmの直径を有する球の中心を含む平面で切断した断面の面積が0.2cm2(≒0.25cm×0.25cm×π)であるから、2kgf程度の荷重Fが直径5mmの疑似粒子にかかっていることに相当する。
【0044】
以下、具体的な実施例について示す。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
(低分子界面活性剤を加えて造粒する場合)
表1に記載する鉄鉱石Iを100質量部とした場合に、造粒剤A〜G、L0.002〜1質量部を、水10〜33質量部に溶解して、用意した鉄鉱石Iの100質量部に加えて造粒処理を行う。造粒にあたって、回転速度20min-1で5分間パン型ミキサーを回転させる。
【0048】
鉄鉱石Iを造粒した結果につては本発明例1〜5、21、23、25、26、比較例1〜5、21、24に記載した。本発明の方法を用いた本発明例1〜5、21、23、25、26は0.25mm未満の疑似粒子の占める割合が3%以下で、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2であり合格している。一方、比較例1〜5、21、24は、0.25mm未満の疑似粒子の占める割合は3%超であり、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2未満であり不合格である。
【0049】
表1に記載する鉄鉱石IIを100質量部とした場合に、造粒剤A、B、L0.002〜1質量部を、水10〜33質量部に溶解して、用意した鉄鉱石Iの100質量部に加えて造粒処理を行う。造粒にあたって、回転速度20min-1で5分間パン型ミキサーを回転させる。
【0050】
鉄鉱石IIを造粒した結果につては本発明例6〜10、比較例6〜10に記載した。本発明の方法を用いた本発明例6〜10は0.25mm未満の疑似粒子の占める割合が3%以下で、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2であり合格している。一方、比較例6〜10は、0.25mm未満の疑似粒子の占める割合は3%超であり、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2未満であり不合格である。
【0051】
(低分子界面活性剤とCaOおよび/またはCa(OH)2を用いた場合)
表1に記載する鉄鉱石Iを100質量部とした場合に、造粒剤A、B、E、F、L0.002〜1質量部を、水10〜33質量部に溶解して、用意した鉄鉱石Iの100質量部に加えて造粒処理を行う。造粒にあたって、回転速度20min-1で5分間パン型ミキサーを回転させる。
【0052】
鉄鉱石Iを造粒した結果につては本発明例11〜20、22、24、27、比較例11〜20、22、23、25に記載した。本発明の方法を用いた本発明例11〜20、22、24、27は0.25mm未満の疑似粒子の占める割合が3%以下で、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2であり合格している。一方、比較例11〜20、22、23、25は、0.25mm未満の疑似粒子の占める割合は3%超であり、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2未満であり不合格である。
【0053】
(分子量による効果)
表1に記載する鉄鉱石Iを100質量部とした場合に、造粒剤H〜K0.3質量部を、水10〜11質量部に溶解して、用意した鉄鉱石Iの100質量部に加えて造粒処理を行う。造粒にあたって、回転速度20min-1で5分間パン型ミキサーを回転させる。
【0054】
分子量を本発明の範囲としたものを本発明例28〜33とし、分子量を本発明の範囲外としたものを比較例26〜31とした。本発明の方法を用いた本発明例28〜33は0.25mm未満の疑似粒子の占める割合が3%以下で、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2であり合格している。一方、比較例26〜31は、0.25mm未満の疑似粒子の占める割合は3%超であり、圧壊強度試験結果も10kgf/cm2未満であり不合格である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉鉄鉱石に低分子界面活性剤を加えて造粒する粉鉄鉱石の造粒物の製造方法であって、
粉鉄鉱石を100質量部とした場合に、
低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜10質量部と、
水3〜25質量部を、
粉鉄鉱石100質量部に加えることを特徴とする粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
【請求項2】
さらにCaOないしCa(OH)21.0〜3.0質量部を加えることを特徴とする請求項1に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
【請求項3】
前記低分子界面活性剤は、疎水基としてアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の少なくとも一つ以上を含み、
親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
【請求項4】
前記スルホン酸基(−SO3H)および/または−SO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルベンゼンスルホン酸塩を含む有機化合物であり、前記硫酸エステル基(−OSO3H)および/または−OSO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルエーテル硫酸エステルおよび/またはアルキルエーテル硫酸エステル塩を含む有機化合物であることを特徴とする請求項3に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
【請求項5】
前記アルキルベンゼンスルホン酸塩がドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのいずれかであり、前記アルキルエーテル硫酸エステル塩がラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、オクチルエーテル硫酸エステルナトリウム、ヘキサデシルエーテル硫酸エステルナトリウムのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
【請求項6】
前記粉鉄鉱石の0.25mm以下の粒子の中に10μm以下の超微粒子が20質量%以上含有されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粉鉄鉱石の造粒物の製造方法。
【請求項7】
低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のもの0.01〜9.09質量%を有することを特徴とする粉鉄鉱石の造粒物。
【請求項8】
低分子界面活性剤であってその分子量が280〜450のものの含有量が0.0097〜9.01質量%であり、
さらにCaOないしCa(OH)20.901〜2.9質量%
を有することを特徴とする請求項7に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
【請求項9】
前記低分子界面活性剤は、疎水基としてアルキル基、アルキルエステル基、オキシアルキレン基、アリール基の少なくとも一つ以上を含み、
親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基、あるいは、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、−M2PO4で表される塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)の少なくとも一つ以上
を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
【請求項10】
前記スルホン酸基(−SO3H)および/または−SO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルベンゼンスルホン酸塩を含む有機化合物であり、前記硫酸エステル基(−OSO3H)および/または−OSO3Mで表わされる塩(Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属)を含む低分子界面活性剤がアルキルエーテル硫酸エステルおよび/またはアルキルエーテル硫酸エステル塩を含む有機化合物であることを特徴とする請求項9に記載の粉鉄鉱石の造粒物。
【請求項11】
前記アルキルベンゼンスルホン酸塩がドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのいずれかであり、前記アルキルエーテル硫酸エステル塩がラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、オクチルエーテル硫酸エステルナトリウム、ヘキサデシルエーテル硫酸エステルナトリウムのいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の粉鉄鉱石の造粒物。

【公開番号】特開2013−87335(P2013−87335A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229492(P2011−229492)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】