説明

鉄鋼生産に関する方法

本発明は、鉄鋼、好ましくはステンレス鋼の酸洗段階からの金属汚染された使用済み酸洗剤の中和において形成された水酸化物スラッジを処理し、鉄鋼生産に関連して水酸化物スラッジのフッ化カルシウムを天然ホタル石の代わりにフラックス剤として利用する、鉄鋼生産に関する方法に関するものである。そのため、反応中和剤の添加が連続的に働くpH電極によって監視され、pH値が9.0と9.5の間の範囲に調節される。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、鉄鋼生産、好ましくはステンレス鋼生産においてフラックス剤として使用可能な生成物の組成を最適化する方法に関するものである。
【0002】
鋼、特にステンレス鋼の生産には焼なましおよび酸洗段階が含まれる。焼なましは鋼のミクロ組織の再結晶化を目的とする熱処理であり、鋼を延性化する。焼なまし段階において、酸化層が鋼の表面上に形成され、クロム欠乏層が酸化層の直下に形成される。これら2つの層は共に酸洗いによって除去される。
【0003】
酸洗段階において、鉄鋼製品は酸、ほとんどの場合は異なる酸の混合物によって処理され、これによって表面の望ましくない析出金属が除去される。硝酸HNO3およびフッ化水素酸HFの混合物がステンレス鋼の酸洗いに最も有効である。溶解した金属から、プロセスから除去する必要のある金属錯体および沈殿物が形成される。特にフッ化物を含む硝酸とフッ化水素酸との混合物などの混酸を含む使用済み酸洗液を処理することは困難である。また、ステンレス鋼の生産において、たとえば鉄、クロム、およびニッケル酸化物の含有量が処理上問題となる。
【0004】
酸洗い後、鉄鋼製品は水で洗浄され、それによって酸性洗浄水が生成される。金属錯体および沈殿物の形の溶解金属は酸性洗浄水と同様に、環境に影響を及ぼす廃棄物を構成し、特別な処理をして環境被害を起こさないようにする必要がある。他のプロセス産業の場合と同様に、鉄鋼産業においても廃棄物の回収および閉サイクル化の対象が存在する。
【0005】
国際公開第2005/098054号公報には、鉄鋼生産に関連して鉄鋼、好ましくはステンレス鋼の酸洗三回からの金属汚染された使用済み酸洗剤を中和することによって生成された水酸化物スラッジを処理する方法が開示されている。使用済み酸洗液の中和はpHが約9〜10になるまで、アルカリ、通常は水酸化カルシウムCa(OH)2を添加することによって行われるが、他のアルカリ添加物、たとえば炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)も使用してもよい。中和に先立って、ネオライト酸洗段階(pH6〜6.5)からの液のクロム還元を行ってもよい。ピクリング酸の遊離酸が再生され、選択接触除去制御または過酸化水素処理によって亜硝酸ヒューム(NOx)を還元することができる。中和後、中和された酸洗液は脱水されて乾物含有量が少なくとも30重量%になる。この脱水された生成物は水酸化物スラッジと呼ばれ、少なくともフッ化水素酸が酸洗液として用いられる場合およびステンレス鋼生産の場合においては、カルシウムまたはモリブデン酸鉄に加えて、特にフッ化カルシウム(CaF2)、硫酸カルシウム(CaSO4)および鉄、クロム、およびニッケル水酸化物を含む。水酸化物スラッジは乾燥および焼成または焼結されて機械的に安定な生成物となり、水酸化物スラッジのフッ化カルシウムは鉄鋼生産に関連してフラックス剤として天然ホタル石の代わりに用いることができる。
【0006】
国際公開第2005/098054号公報にはさらに、ロータリーキルンで行われた水酸化物スラッジ焼成実験が示されていて、安定した生成物が得られたことが記載されている。水酸化物スラッジが特別に高い55〜60%の水分含有率であったことにより焼成中に異常問題が生じたため、これらの実験についてはこれ以上述べられていない。この実験の1つの結論は、もし水酸化物スラッジの水分含有量およびロータリーキルンの回転速度が十分低ければ、水酸化物スラッジの細粒分を減らすことができるであろうということである。
【0007】
本発明の目的は、従来技術のいくつかの欠点を排除し、鉄鋼、好ましくはステンレス鋼の酸洗段階からの金属汚染された使用済み酸洗剤を中和することによって生成された水酸化物スラッジの改善および最適化された処理方法を実現して、ロータリーキルンで安定した生成物を生産することである。本発明の基本的な特徴は特許請求の範囲に示される。
【0008】
本発明は、参照された国際公開第2005/098054号公報に記載されている方法に基づいていて、溶解工場のスラグ形成剤としての水酸化物スラッジの組成を最適化する。本発明によれば、鉄鋼生産、特にステンレス鋼生産からの使用済み酸洗液は制御された方法で中和されて、ロータリーキルンでの焼成および/また焼結工程の後に安定した生成物を得る。したがって、使用済み酸洗液の中和には自動pH測定が利用される。中和剤の添加は自己洗浄式pH電極によって監視される。pH電極は連続的に運転され、これらpH電極によってpH値は9.0から9.5の範囲に調節される。このpH範囲は、中和される使用済み酸洗液の全質量の最大5%、好ましくは最大2%の量の反応中和剤を添加することによって達成される。
【0009】
中和処理される水酸化物スラッジの組成はステンレス鋼のグレードの違いに大きく依存するが、それはステンレス鋼のグレードの違いによって異なる方法で処理および酸洗いする必要があるためである。したがって、pH測定は自動的に行われ、中和剤の添加は連続的な方式で監視される。さらに、中和剤の過剰な添加が避けられて、中和処理される水酸化物スラッジには基本的に余分な中和剤が存在しないことが保証される。
【0010】
本発明の方法における中和剤はカルシウム含有化合物であり、これは中和される使用済み酸洗液の混合物に良好に溶解する。中和剤は、非常に良好な反応性を有する良質の水酸化カルシウムCa(OH)2が好ましい。このことは、本発明の方法に適した水酸化カルシウムが、基本的に二酸化ケイ素(SiO2)などの一般的な不純物を含まないことを意味している。中和のための他の実施例は炭酸カルシウムCaCO3である。
【0011】
水酸化カルシウムを本発明による中和剤として使用する場合、中和生成物である水酸化物スラッジの水分を45〜50%に調節するのが有利である。もし水酸化物スラッジがロータリーキルンでさらに処理するのに有利なこの範囲と比較して過剰な水分を含む場合、過剰な水分を脱水または水酸化物スラッジを温風で加熱して蒸発させることによって除去する。
【0012】
好ましい水分含有量を有する水酸化物スラッジはロータリーキルンで 950〜1050℃の温度範囲においてさらに処理されて、十分に焼成され、機械的に安定し、塵埃の少ないロータリーキルン生成物が得られる。必要であれば、ロータリーキルン生成物はさらに、ブリケットに所望の強度を与える結合物質として基本的に炭素を含まないフッ化カルシウムCaF2の存在下で、さらにブリケット製造機で処理される。ロータリーキルン生成物および/または生産されたブリケットはフラックス剤として通常のホタル石CaF2の代わりに、またはホタル石と共にたとえばステンレス鋼生産用AOD炉またはCLU炉で利用することができる。
【0013】
本発明によれば、中和される使用済み酸洗液の全質量の最大5%、好ましくは最大2%の量の水酸化カルシウムを使用する場合、水酸化物スラッジにおける以下の利点が達成されて、ロータリーキルンでの処理後の最終生成物の品質が改善されることがわかる。すなわち、
1.ロータリーキルン生成物のフッ化カルシウムCaF2濃度はロータリーキルン生成物の全質量の45〜55%のレベルに保つことができ、これはスラグ形成剤にとって好都合である。
2.微細物(粒子径2mm未満のロータリーキルン生成物)の量は低レベル、好ましくはロータリーキルン生成物の全質量の25%に保つことができる。
3.ブリケットの品質は、長期間にわたって貯蔵およびたとえばAOD炉またはCLU炉でさらに処理するのに十分な強さを保つ。フッ化カルシウムなどの結合物質の添加はブリケットに必要な強度を与えるために必要である。
4.ロータリーキルン生成物の有害な六価クロム(Cr6+)濃度は、ロータリーキルン生成物の全質量の0.5%未満に保つことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼、好ましくはステンレス鋼の酸洗段階からの金属汚染された使用済み酸洗剤の中和において形成された水酸化物スラッジを処理し、鉄鋼生産に関連して水酸化物スラッジのフッ化カルシウムを天然ホタル石の代わりにフラックス剤として利用する、鉄鋼生産に関連する方法において、反応中和剤の添加が連続的に働くpH電極によって監視され、pH値が9.0と9.5の間の範囲に調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記pH値は中和される前記使用済み酸洗液の全質量の最大5%の中和剤を添加することによって調節されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記pH値は中和される前記使用済み酸洗液の全質量の最大2%の中和剤を添加することによって調節されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の方法において、前記pH値を調節する中和剤は水酸化カルシウムCa(OH)2であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1、2または3に記載の方法において、前記pH値を調節する中和剤は炭酸カルシウムCaCO3であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法において、前記中和された水酸化物スラッジの水分含有量が45〜50%であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、前記中和された水酸化物スラッジがロータリーキルンにおいて950〜1050℃の温度範囲で焼成および焼結されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記ロータリーキルンからの生成物は、結合物質として基本的に炭素を含まないフッ化カルシウム粉末を用いてブリケット化されることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−536264(P2009−536264A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508404(P2009−508404)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000120
【国際公開番号】WO2007/128864
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(591064047)オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン (21)
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
【Fターム(参考)】