鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造
【課題】本発明は、こうした熱橋現象を抑止することができ十分な省エネルギー効果を発揮することが可能な鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造を提供することを目的とするものである。
【解決手段】外壁構造3には、鉄筋コンクリート壁30の両側に断熱性の高い型枠ユニットパネル31が壁面に沿って設けられており、型枠ユニットパネル31の間に取付固定された長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して外装材33が取り付けられている。窓枠38の取付部分には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材39を介して窓枠38が取り付けられている。屋上構造5には、断熱材52が敷設されており、屋上構造5の周囲にはパラペット構造6が断熱性の高い支持部材により支持固定されている。
【解決手段】外壁構造3には、鉄筋コンクリート壁30の両側に断熱性の高い型枠ユニットパネル31が壁面に沿って設けられており、型枠ユニットパネル31の間に取付固定された長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して外装材33が取り付けられている。窓枠38の取付部分には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材39を介して窓枠38が取り付けられている。屋上構造5には、断熱材52が敷設されており、屋上構造5の周囲にはパラペット構造6が断熱性の高い支持部材により支持固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の内部と外部との間の熱の移動を小さくする断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の断熱構造は、建築物の省エネルギー効果に優れていることから、近年住宅等の建築物に施工されるようになってきている。建築物の断熱は、建築物の内部と外部との間の熱伝導、熱輻射、熱対流といった熱移動をできるだけ抑えることが必要で、そのために建築物の屋外側全体を断熱材で覆うように施工する外張断熱構造や建築物の屋内側全体を断熱材で覆うように施工する内張断熱構造が提案されている。
【0003】
こうした断熱材で建築物全体を覆う構造とすることは、内部と外部との間の熱移動を抑えて冷暖房の効率を向上させることができ、省エネルギー効果を高めることが可能となる。例えば、特許文献1では、型枠兼用の断熱材を用いて鉄筋コンクリート壁の内側及び外側に断熱材を配置し、断熱屋根板を載置することで鉄筋コンクリート構造物の外周部を断熱するようにした点が記載されている。
【0004】
しかしながら、建築物全体を断熱材で隙間なく覆うことは構造上難しい場合がある。例えば、鉄筋コンクリート造や鉄骨造建築物では、バルコニー、庇、パラペット、外廊下といった外側に突出した構造を構築することが多く、こうした突出構造を通して熱移動が生じる熱橋現象で断熱効果が低下するようになる。また、窓枠といった取付部分でも断熱材で覆うことはできないため、熱橋現象が生じやすく断熱効果が低下する。
【0005】
このような熱橋現象に対しては、例えば、特許文献2では、断熱板に貫通孔を形成して突出構造を支持する上端支持筋及び下端支持材を挿入して構成した外断熱形成具が記載されている。また、特許文献3では、躯体外壁面に断熱層を挟んで躯体梁と平行に設けられた二重梁により外装用二重壁を構築して突出構造を構築した点が記載されている。また、特許文献4では、パラペット全体を断熱材で覆うことで建物全体の断熱性を向上させた点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−162252号公報
【特許文献2】特許第3958335号公報
【特許文献3】特許第4025910号公報
【特許文献4】特許第4198141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した熱橋現象は、熱伝導率のよい部材を通して外部と内部との間を熱が移動する現象であるが、上述した突出構造が外部に露出しているため、突出構造と内部構造との間で熱移動が生じると、建物の外部と内部との間の断熱効果が低下するのは避けられない。
【0008】
特許文献2では、突出構造との間に断熱板を設けて断熱効果を高めているものの上端支持筋や下端支持材を通して熱橋現象が生じるようになり、その分断熱効果が低下する。また、特許文献3では、断熱効果が得られるものの二重梁を構築するためのコスト負担が大きくならざるを得ない。特許文献4では、パラペットを通じた熱橋現象を確実に防止できるものの断熱材で覆うためパラペットの外観デザインに制約が生じ、また断熱材の消費量が多くなってその分コスト負担が大きくなる。
【0009】
そこで、本発明は、こうした熱橋現象を抑止することができ十分な省エネルギー効果を発揮することが可能な鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造は、基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、鉄筋コンクリートの少なくとも外面を覆うように断熱材が配設された外壁構造と、屋上面を覆うように断熱材が敷設された屋上構造と、前記外壁構造に連設されたスラブ構造及び前記屋上構造を支持する鉄骨構造とを備えた鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造において、前記外壁構造又は前記屋上構造に取り付けられる部材は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記外壁構造には、前記取付部材が前記断熱材の間に密着して固定されており、前記取付部材には取付金具を介して外装材が取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記外壁構造には、前記取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記屋上構造の周囲に突設されたパラペット構造を有しており、前記パラペット構造は、前記屋上構造に長繊維補強硬化性樹脂発泡体を介して固定された複数の支持部材に取り付けられるとともに前記屋上構造との間に断熱材が配設されていることを特徴とする。さらに、前記パラペット構造は、前記支持部材に固定された枠部材と、前記枠部材を覆うように取り付けられた外装材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のような構成を有することで、木質構造材に用いられる木材と同程度の機械的な強度を有し木材よりも熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体を熱橋現象が生じる箇所に設けているので、熱橋現象を抑止して断熱効果を高めることができる。
【0012】
すなわち、外壁構造又は屋上構造に取り付けられる部材は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して取り付けられているので、取付部分において生じやすい熱橋現象を長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材により抑止することが可能となる。
【0013】
外壁構造では、遮熱シートや外装材を保持する取付部材を通じて熱橋現象が生じるようになるが、取付部材を長繊維補強硬化性樹脂発泡体で構成すれば断熱効果をさらに高めることができる。また、窓枠の取付部分においても窓枠の金属枠部材が壁構造の木質構造部材と接触することで熱橋現象が生じるようになるが、金属枠部材に当接する部分に長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を設けて窓枠を取り付けるようにすれば、取付部材により熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。
【0014】
また、屋上構造では、周囲に突設されたパラペット構造を通じて熱橋現象が生じるようになるが、パラペット構造を屋上構造に支持する複数の取付部材を長繊維補強硬化性樹脂発泡体を介して固定し、屋上構造とパラペット構造との間に断熱材を配設すれば、パラペット構造と屋上構造との間の熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。
【0015】
以上のように、断熱材で覆うことができない取付部分に機械的強度が大きく熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を配設して熱橋現象を遮断することで、断熱材による断熱効果をさらに向上させて優れた省エネルギー効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】外装材及び遮熱シートの保持構造に関する部分拡大断面図である。
【図3】取付部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図4】保持構造に関する水平方向の拡大断面図である。
【図5】窓枠の取付部分に関する一部拡大断面図である。
【図6】枠部材を外壁構造に隣接配置した部分に関する拡大断面図である。
【図7】枠部材を庇に隣接配置した部分に関する拡大断面図である。
【図8】取付部材の変形例を用いた構造に関する拡大断面図である。
【図9】別の屋上構造の断熱構造に関する概略断面図である。
【図10】屋上構造の変形例の断熱構造に関する概略断面図である。
【図11】図10に示す屋上構造の変形例に関する概略断面図である。
【図12】既存の折版屋根構造に断熱構造を施工する場合の屋上構造に関する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。図1に示す鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物は、地盤にコンクリートを打設して形成される床下構造1と、床下構造1の上部に構築される床構造2と、床下構造1の上部に構築される鉄筋コンクリート壁を備えた外壁構造3と、外壁構造3に架設される鉄筋コンクリートスラブを備えたスラブ構造4と、外壁構造3の上部に構築される鉄筋コンクリートスラブを備えた屋上構造5と、屋上構造5の周囲に取り付けられるパラペット構造6とを備えており、主要な骨組構造は公知の鉄骨材を組み合わせた鉄骨造で構成されている。
【0019】
こうした鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物は、耐震強度、耐火性及び防音性に関して優れた鉄筋コンクリート造及び細くて軽量な鉄骨材を用いることで良好な施工を有する鉄骨造の両方の利点を備えた混構造である。
【0020】
床下構造1は、地盤に対して公知の施工方法により鉄筋コンクリートからなる基礎コンクリート10及び土間コンクリート11が形成されている。そして、基礎コンクリート10の両側には複数の型枠ユニットパネル12が隙間なく配列されて接合している。型枠ユニットパネル12は、発泡合成樹脂材料からなる板状の断熱材であり、コンクリートを打設する際に型枠として使用され、基礎コンクリート10が形成された後は両側にそのまま接合した状態で断熱構造として用いられる。
【0021】
断熱材として使用される発泡合成樹脂材料は、公知のものを使用すればよく、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォームが挙げられ、発泡合成樹脂材料以外にも、不燃性の無機質発泡材料を用いることもできる。そして、ポリスチレンフォームが断熱性及び加工性の観点からみて好ましい。
【0022】
また、土間コンクリート11の下面には板状の断熱材13が隙間なく敷設されており、基礎コンクリート10及び土間コンクリート11を断熱材で覆うことにより床下構造1における外部と内部との間の熱移動を抑えて断熱効果を高めている。
【0023】
床構造2は、土間コンクリート11上に立設された鋼製の床束20に支持されて大引き21が横設されており、大引き21上には根太22が配列されている。そして、根太22の上面には床板23が平面状に配列されて取り付けられている。床構造2では、床下構造1に断熱材が設けられているため、断熱材は設けられていない。
【0024】
外壁構造3は、柱、梁、桁、筋交いといった公知の鉄骨材を用いて骨組みが構築され、外壁面に沿って鉄筋コンクリート壁30が形成されている。鉄筋コンクリート壁30は、鉄筋を公知の施工方法で配筋してコンクリートを打設することで構築される。鉄筋コンクリート壁30には、床下構造1と同様に型枠ユニットパネル31が両側に隙間なく配列されて全面を覆うように接合している。型枠ユニットパネル31は、型枠ユニットパネル12と同様に発泡合成樹脂材料からなる板状の断熱材であり、コンクリートを打設する際に型枠として使用され、鉄筋コンクリート壁30が形成された後は両側にそのまま接合した状態で断熱構造として用いられる。
【0025】
外壁構造3の内側には、型枠ユニットパネル31を覆うように内装材32が取り付けられており、外壁構造3の外側には、型枠ユニットパネル31を覆うように遮熱シート35及び外装材33が取り付けられている。遮熱シート35と外装材33との間には通気層34が形成されており、通気層34内に常時空気を流通させることで型枠ユニットパネル31内部の水分を外部に放出するとともに外装材33の放熱を行うことができる。
【0026】
図2は、外装材33及び遮熱シート35の保持構造に関する垂直方向に沿う部分拡大断面図(図2(a))及び水平方向に沿う部分拡大断面図(図2(b))である。断熱材である型枠ユニットパネル31の間には外装材33及び遮熱シート35を保持するための取付部材36が固定されている。取付部材36には、取付金具37がネジ止めされている。取付金具37は、外壁構造の上下方向に延設された細幅の板状体で、両側部分が折り曲げられて段差状に形成されている。外装材33は、取付金具37の両側部分に固定されて保持され、遮熱シート35は取付部材36及び取付金具37の間に圧接保持されている。
【0027】
取付部材36に使用される材料としては、断熱性の高く機械的強度の大きい材料が用いられ、長繊維補強硬化性樹脂発泡体が好適である。長繊維補強硬化性樹脂発泡体は、無機質又は有機質の長繊維を多数本糸長方向に揃えて発泡性が付与された硬質ウレタン樹脂又は硬質ポリエステル樹脂に埋設して成形されたもので、木材と同様の機械的強度を有するとともに木材よりも低い熱伝導率を有している。例えば、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体をガラス長繊維で強化したもの(例;積水化学工業株式会社製のFFU(登録商標))では、木材と同程度の比重及び機械的強度を有し、熱伝導率が木材の半分以下となっている。そのため、こうした材料を取付部材36に用いることで、外装材33の保持構造の構造材を通して発生する熱橋現象を抑止することができる。
【0028】
図3は、取付部材36に関する平面図、正面図及び側面図である。取付部材36は、中心部に固定ネジを挿入する貫通孔36aが形成されており、取付部材36の4つの側面36bは、膨出するように湾曲形成されている。
【0029】
図4は、保持構造に関する水平方向の拡大断面図である。取付部材36は、型枠ユニットパネル31の間に形成された空隙に嵌め込まれて、貫通孔36aに挿入された固定ネジ36cにより鉄筋コンクリート壁30に固定されている。取付部材36の側面36bは、型枠ユニットパネル31に圧接して平面状に変形し隙間のない密着した状態となる。
【0030】
貫通孔36aは樹脂材料が埋め込まれ、取付部材36の取付金具37の取付面は平面状に形成されており、取付部材36及び型枠ユニットパネル31の外表面はほぼ面一に形成されている。そして、取付部材36及び型枠ユニットパネル31の外表面を覆うように張り付けられた遮熱シート35は、取付金具37の中央部分の固定部37aが固定ネジにより取付部材36の取付面に固定されることで保持される。また、固定部37aの両側の保持部37bは、段差状に折り曲げられて形成されており、保持部37bの取付面に外装材33が当接してネジ止めにより保持される。取付金具37の保持部37bが段差状に形成されているため、外装材33と遮熱シート35との間に隙間が形成されて通気層34となっている。
【0031】
外壁構造3の一部は、矩形状に開口部が形成されて公知の窓枠38が取り付けられる。開口部の内周には、枠状に取付部材39が接合固定されており、窓枠38は取付部材39を介して取り付けられるようになっている。取付部材39に使用される材料には、取付部材36と同様の長繊維補強硬化性樹脂発泡体が用いられ、そのため取付部材39は木材と同程度の比重及び機械的強度を有し、熱伝導率が木材の半分以下となっている。こうした材料を取付部材39に用いることで、窓枠38から外壁構造3の構造材を通じて発生する熱橋現象を抑止することができる。
【0032】
図5は、窓枠38の取付部分に関する一部拡大断面図である。外壁構造3の開口部の内周面に取付部材39を固定し、取付部材39に窓枠38の金属製枠部材38a及び樹脂製枠部材38bをネジ等により固定する。熱伝導率の高い金属製枠部材38aは取付部材39に固定されることで、熱橋現象は抑止され、内装材32は熱伝導率の低い樹脂製枠部材38bに接した状態となるので、内装材32を通じた熱橋現象は抑止されるようになる。そのため、窓枠38の取付部分における断熱効果を高めることが可能となる。
【0033】
スラブ構造4は、鉄骨材を組み付けた骨組みに架設された波形鋼板40と、波形鋼板40の上面に形成された鉄筋コンクリートスラブ41で構成される。波形鋼板40は、鉄骨材に溶接等により固定され、波形鋼板40の上面に鉄筋を平面状に配筋してコンクリートを打設することで鉄筋コンクリートスラブ41が打設される。
【0034】
屋上構造5は、鉄骨材を組み付けた骨組みに架設された波形鋼板50と、波形鋼板50の上面に形成された鉄筋コンクリートスラブ51と、鉄筋コンクリートスラブ51の上面に敷設された断熱材52と、断熱材52の上面に通気層53を介して敷設された防水下地材54と、防水下地材54の表面に施工された防水層55で構成される。波形鋼板50は、鉄骨材に溶接等により固定され、波形鋼板50の上面に鉄筋を平面状に配筋してコンクリートを打設することで鉄筋コンクリートスラブ51が打設される。
【0035】
屋上構造5の全面を覆うように敷設された断熱材52は、外壁構造3の型枠ユニットパネル31の頂部に隙間なく接合しており、接合部分において確実に断熱効果を奏するようになっている。
【0036】
屋上構造5は、外壁構造3から外側に延設した庇5aが形成されている。庇5aは、外壁構造3から外方に突出した鉄骨材に波形鋼板50が延設されて屋上構造5と同様の構造で構築される。外壁構造3との接合部分には波形鋼板50に連結孔50aが穿設されており、連結孔50aに鉄筋を挿通して鉄筋コンクリート壁30及び鉄筋コンクリートスラブ51が連結されている。
【0037】
庇5aの下面及び側面には、それぞれ断熱材52a及び52bが張り付けられており、断熱材52aは外壁構造3の型枠ユニットパネル31と隙間なく接合し、断熱材52bは断熱材52と隙間なく接合している。そのため、庇5a全体が断熱材で覆われるようになり、断熱効果が向上する。
【0038】
パラペット構造6は、屋上構造5の周囲に取り付けられた枠部材60と、枠部材60の外側面に張り付けられた外装材61と、枠部材60の上面に固定された笠木62と、枠部材60の下面に固定された水切り63から構成されている。
【0039】
図6は、枠部材60を外壁構造3に隣接配置した部分に関する拡大断面図である。枠部材60は、波形鋼板50に固定された棒状の取付部材64により支持固定されている。取付部材64は、上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなり、波形鋼板50の上面に沿って所定間隔を空けて複数配置されている。取付部材64は、例えばその周囲を囲むように配置された固定具を波形鋼板50に固定することにより取り付けられる。外壁構造3の型枠ユニットパネル31には、取付部材64を挿通する挿通孔31aが穿設されており、取付部材64は、挿通孔31aを貫通して先端部が外方に突出し、枠部材60が突出した先端部に固定されている。
【0040】
取付部材64は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなっているので、断熱性及び機械強度に優れており、パラペット構造6と外壁構造3との間の熱の移動を抑止するように作用する。また、外壁構造3の型枠ユニットパネル31の挿通孔31aに取付部材64が隙間なく接合しているので、接合部分を通した熱の移動を抑止でき、断熱効果を向上させることが可能となる。
【0041】
図7は、枠部材60を庇5aに隣接配置した部分に関する拡大断面図である。この場合にも庇5aに延設された波形鋼板50に取付部材64が支持固定される。取付部材64は、庇5aの側面に設けた断熱材52bに穿設された挿通孔を通して先端部が突出し、突出した先端部に枠部材60が固定される。そして、断熱材52bの挿通孔と取付部材64とを隙間なく接合することで断熱効果を向上させることができる。
【0042】
図8は、取付部材64の変形例を用いた構造に関する拡大断面図である。この例では、取付部材64は、金属製でL字状のアングル65を備えており、アングル65の建物内部に埋設される部分は断熱効果の大きい発泡樹脂材料からなる被覆部66で覆われている。そして、アングル65は、波形鋼板50に沿って配置されて取付具により固定されている。アングル65の折れ曲り部分65aは、外部に露出して枠部材60に固定されており、取付部材64により枠部材60が支持されるようになっている。
【0043】
金属製のアングル65は熱伝導率が高いが、被覆部66により外壁構造3との間の熱の移動が抑止されるため、断熱効果を高めることができる。
【0044】
なお、以上説明した例では、屋上構造に設けたパラペット構造について説明したが、ベランダ、バルコニー、外廊下といった構造に取り付けられるパラペット構造についても同様の断熱構造を構築することができる。
【0045】
上述した例では、屋上構造5に波形鋼板50を固定し、波形鋼板50に取付部材64を介してパラペット構造6を固定するようにしているが、屋上構造5を従来のコンクリートスラブ又は鉄骨梁の構造とすることもできる。図9は、こうした構造の屋上構造5’の断熱構造に関する概略断面図である。この例では、屋上構造5’は、コンクリートスラブ50’の上面に外壁構造から連続する断熱材51’及び遮熱シート52’が敷設されており、断熱材51’及び遮熱シート52’は、取付部材53’により取付部材36と同様に保持されている。遮熱シート52’の上部には、受け梁54’が架設されて取付部材53’においてネジ止めにより固定されている。そして、受け梁54’の上面に折版屋根構造55’が構築されている。また、受け梁54’は、端部を折り曲げてパラペット構造とすることもでき、端部に枠部材60を取り付けてパラペット構造を構築することもできる。
【0046】
屋上構造5’の周囲に形成されたパラペット構造6’は、断熱材51’及び遮熱シート52’から連続する断熱材及び遮熱シート並びに外壁構造から延設された断熱材及び遮熱シートにより全体が覆われている。したがって、屋上構造5’及びパラペット構造6’は、断熱材及び遮熱シートにより外部との間で熱的に遮断されるようになり、断熱効果を格段に向上させることができる。取付部材53’は、取付部材36と同様に上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなり、受け梁54’を支持するとともに断熱材51’の間に密着して取り付けられることで、断熱効果を高めることができる。
【0047】
図10は、屋上構造の変形例の断熱構造に関する概略断面図である。この例では、図9に示す屋上構造の断熱構造の上部に屋根構造7が構築されている。コンクリートスラブ50’の上面には、断熱材51’及び遮熱シート52’が敷設されており、遮熱シート52’の上部には束受小梁70が架設されている。束受小梁70には鉄骨束71が立設されており、鉄骨束71の上部に屋根構造7が構築されている。
【0048】
取付部材53’は、取付部材36と同様に上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなり、断熱材51’の間に密着した状態でコンクリートスラブ50’に取付部材36と同様に取付固定されている。取付部材53’は、鉄骨束71の下方に配置されて束受小梁70を支持固定しており、そのため、鉄骨束71を通じた熱橋現象は、取付部材53’により遮断することができ、断熱効果を高めることが可能となる。
【0049】
図11は、図10に示す屋上構造の変形例に関する概略断面図である。この例では、勾配のあるコンクリートスラブ50”の上面に断熱材51”及び遮熱シート52”が敷設され、遮熱シート52”の上部に母屋72が架設されて屋根構造7が構築されている。そして、母屋72の下部には、上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材53”が配置されて取付部材53’と同様に支持固定するようになっている。そのため、母屋72を通じた熱橋現象は、取付部材53”により遮断することができ、断熱効果を高めることが可能となる。
【0050】
図12は、既存の折版屋根構造に断熱構造を施工する場合の屋上構造に関する概略断面図である。既存の折版屋根構造8の上面には、断熱材80が取付部材82により保持されて面一に敷設されている。断熱材80の上面には遮熱シート81が覆うように敷き詰められている。そして、遮熱シート81の上部に受け梁83が架設されて取付部材82にネジ止めにより支持固定されている。そして、受け梁83の上面に新たな折版屋根84が取り付けられて、断熱構造を備えた新しい折版屋根構造8’が構築されている。この場合にも受け梁83は、上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材82に支持されているので、受け梁83を通じた熱橋現象を取付部材82により遮断することができ、断熱効果を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 床下構造
2 床構造
3 外壁構造
4 スラブ構造
5 屋上構造
6 パラペット構造
30 鉄筋コンクリート壁
31 型枠ユニットパネル
32 内装材
33 外装材
34 通気層
35 遮熱シート
36 取付部材
37 取付金具
38 窓枠
39 取付部材
60 枠部材
64 取付部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の内部と外部との間の熱の移動を小さくする断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の断熱構造は、建築物の省エネルギー効果に優れていることから、近年住宅等の建築物に施工されるようになってきている。建築物の断熱は、建築物の内部と外部との間の熱伝導、熱輻射、熱対流といった熱移動をできるだけ抑えることが必要で、そのために建築物の屋外側全体を断熱材で覆うように施工する外張断熱構造や建築物の屋内側全体を断熱材で覆うように施工する内張断熱構造が提案されている。
【0003】
こうした断熱材で建築物全体を覆う構造とすることは、内部と外部との間の熱移動を抑えて冷暖房の効率を向上させることができ、省エネルギー効果を高めることが可能となる。例えば、特許文献1では、型枠兼用の断熱材を用いて鉄筋コンクリート壁の内側及び外側に断熱材を配置し、断熱屋根板を載置することで鉄筋コンクリート構造物の外周部を断熱するようにした点が記載されている。
【0004】
しかしながら、建築物全体を断熱材で隙間なく覆うことは構造上難しい場合がある。例えば、鉄筋コンクリート造や鉄骨造建築物では、バルコニー、庇、パラペット、外廊下といった外側に突出した構造を構築することが多く、こうした突出構造を通して熱移動が生じる熱橋現象で断熱効果が低下するようになる。また、窓枠といった取付部分でも断熱材で覆うことはできないため、熱橋現象が生じやすく断熱効果が低下する。
【0005】
このような熱橋現象に対しては、例えば、特許文献2では、断熱板に貫通孔を形成して突出構造を支持する上端支持筋及び下端支持材を挿入して構成した外断熱形成具が記載されている。また、特許文献3では、躯体外壁面に断熱層を挟んで躯体梁と平行に設けられた二重梁により外装用二重壁を構築して突出構造を構築した点が記載されている。また、特許文献4では、パラペット全体を断熱材で覆うことで建物全体の断熱性を向上させた点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−162252号公報
【特許文献2】特許第3958335号公報
【特許文献3】特許第4025910号公報
【特許文献4】特許第4198141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した熱橋現象は、熱伝導率のよい部材を通して外部と内部との間を熱が移動する現象であるが、上述した突出構造が外部に露出しているため、突出構造と内部構造との間で熱移動が生じると、建物の外部と内部との間の断熱効果が低下するのは避けられない。
【0008】
特許文献2では、突出構造との間に断熱板を設けて断熱効果を高めているものの上端支持筋や下端支持材を通して熱橋現象が生じるようになり、その分断熱効果が低下する。また、特許文献3では、断熱効果が得られるものの二重梁を構築するためのコスト負担が大きくならざるを得ない。特許文献4では、パラペットを通じた熱橋現象を確実に防止できるものの断熱材で覆うためパラペットの外観デザインに制約が生じ、また断熱材の消費量が多くなってその分コスト負担が大きくなる。
【0009】
そこで、本発明は、こうした熱橋現象を抑止することができ十分な省エネルギー効果を発揮することが可能な鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造は、基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、鉄筋コンクリートの少なくとも外面を覆うように断熱材が配設された外壁構造と、屋上面を覆うように断熱材が敷設された屋上構造と、前記外壁構造に連設されたスラブ構造及び前記屋上構造を支持する鉄骨構造とを備えた鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造において、前記外壁構造又は前記屋上構造に取り付けられる部材は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記外壁構造には、前記取付部材が前記断熱材の間に密着して固定されており、前記取付部材には取付金具を介して外装材が取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記外壁構造には、前記取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記屋上構造の周囲に突設されたパラペット構造を有しており、前記パラペット構造は、前記屋上構造に長繊維補強硬化性樹脂発泡体を介して固定された複数の支持部材に取り付けられるとともに前記屋上構造との間に断熱材が配設されていることを特徴とする。さらに、前記パラペット構造は、前記支持部材に固定された枠部材と、前記枠部材を覆うように取り付けられた外装材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のような構成を有することで、木質構造材に用いられる木材と同程度の機械的な強度を有し木材よりも熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体を熱橋現象が生じる箇所に設けているので、熱橋現象を抑止して断熱効果を高めることができる。
【0012】
すなわち、外壁構造又は屋上構造に取り付けられる部材は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して取り付けられているので、取付部分において生じやすい熱橋現象を長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材により抑止することが可能となる。
【0013】
外壁構造では、遮熱シートや外装材を保持する取付部材を通じて熱橋現象が生じるようになるが、取付部材を長繊維補強硬化性樹脂発泡体で構成すれば断熱効果をさらに高めることができる。また、窓枠の取付部分においても窓枠の金属枠部材が壁構造の木質構造部材と接触することで熱橋現象が生じるようになるが、金属枠部材に当接する部分に長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を設けて窓枠を取り付けるようにすれば、取付部材により熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。
【0014】
また、屋上構造では、周囲に突設されたパラペット構造を通じて熱橋現象が生じるようになるが、パラペット構造を屋上構造に支持する複数の取付部材を長繊維補強硬化性樹脂発泡体を介して固定し、屋上構造とパラペット構造との間に断熱材を配設すれば、パラペット構造と屋上構造との間の熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。
【0015】
以上のように、断熱材で覆うことができない取付部分に機械的強度が大きく熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を配設して熱橋現象を遮断することで、断熱材による断熱効果をさらに向上させて優れた省エネルギー効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】外装材及び遮熱シートの保持構造に関する部分拡大断面図である。
【図3】取付部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図4】保持構造に関する水平方向の拡大断面図である。
【図5】窓枠の取付部分に関する一部拡大断面図である。
【図6】枠部材を外壁構造に隣接配置した部分に関する拡大断面図である。
【図7】枠部材を庇に隣接配置した部分に関する拡大断面図である。
【図8】取付部材の変形例を用いた構造に関する拡大断面図である。
【図9】別の屋上構造の断熱構造に関する概略断面図である。
【図10】屋上構造の変形例の断熱構造に関する概略断面図である。
【図11】図10に示す屋上構造の変形例に関する概略断面図である。
【図12】既存の折版屋根構造に断熱構造を施工する場合の屋上構造に関する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。図1に示す鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物は、地盤にコンクリートを打設して形成される床下構造1と、床下構造1の上部に構築される床構造2と、床下構造1の上部に構築される鉄筋コンクリート壁を備えた外壁構造3と、外壁構造3に架設される鉄筋コンクリートスラブを備えたスラブ構造4と、外壁構造3の上部に構築される鉄筋コンクリートスラブを備えた屋上構造5と、屋上構造5の周囲に取り付けられるパラペット構造6とを備えており、主要な骨組構造は公知の鉄骨材を組み合わせた鉄骨造で構成されている。
【0019】
こうした鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物は、耐震強度、耐火性及び防音性に関して優れた鉄筋コンクリート造及び細くて軽量な鉄骨材を用いることで良好な施工を有する鉄骨造の両方の利点を備えた混構造である。
【0020】
床下構造1は、地盤に対して公知の施工方法により鉄筋コンクリートからなる基礎コンクリート10及び土間コンクリート11が形成されている。そして、基礎コンクリート10の両側には複数の型枠ユニットパネル12が隙間なく配列されて接合している。型枠ユニットパネル12は、発泡合成樹脂材料からなる板状の断熱材であり、コンクリートを打設する際に型枠として使用され、基礎コンクリート10が形成された後は両側にそのまま接合した状態で断熱構造として用いられる。
【0021】
断熱材として使用される発泡合成樹脂材料は、公知のものを使用すればよく、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォームが挙げられ、発泡合成樹脂材料以外にも、不燃性の無機質発泡材料を用いることもできる。そして、ポリスチレンフォームが断熱性及び加工性の観点からみて好ましい。
【0022】
また、土間コンクリート11の下面には板状の断熱材13が隙間なく敷設されており、基礎コンクリート10及び土間コンクリート11を断熱材で覆うことにより床下構造1における外部と内部との間の熱移動を抑えて断熱効果を高めている。
【0023】
床構造2は、土間コンクリート11上に立設された鋼製の床束20に支持されて大引き21が横設されており、大引き21上には根太22が配列されている。そして、根太22の上面には床板23が平面状に配列されて取り付けられている。床構造2では、床下構造1に断熱材が設けられているため、断熱材は設けられていない。
【0024】
外壁構造3は、柱、梁、桁、筋交いといった公知の鉄骨材を用いて骨組みが構築され、外壁面に沿って鉄筋コンクリート壁30が形成されている。鉄筋コンクリート壁30は、鉄筋を公知の施工方法で配筋してコンクリートを打設することで構築される。鉄筋コンクリート壁30には、床下構造1と同様に型枠ユニットパネル31が両側に隙間なく配列されて全面を覆うように接合している。型枠ユニットパネル31は、型枠ユニットパネル12と同様に発泡合成樹脂材料からなる板状の断熱材であり、コンクリートを打設する際に型枠として使用され、鉄筋コンクリート壁30が形成された後は両側にそのまま接合した状態で断熱構造として用いられる。
【0025】
外壁構造3の内側には、型枠ユニットパネル31を覆うように内装材32が取り付けられており、外壁構造3の外側には、型枠ユニットパネル31を覆うように遮熱シート35及び外装材33が取り付けられている。遮熱シート35と外装材33との間には通気層34が形成されており、通気層34内に常時空気を流通させることで型枠ユニットパネル31内部の水分を外部に放出するとともに外装材33の放熱を行うことができる。
【0026】
図2は、外装材33及び遮熱シート35の保持構造に関する垂直方向に沿う部分拡大断面図(図2(a))及び水平方向に沿う部分拡大断面図(図2(b))である。断熱材である型枠ユニットパネル31の間には外装材33及び遮熱シート35を保持するための取付部材36が固定されている。取付部材36には、取付金具37がネジ止めされている。取付金具37は、外壁構造の上下方向に延設された細幅の板状体で、両側部分が折り曲げられて段差状に形成されている。外装材33は、取付金具37の両側部分に固定されて保持され、遮熱シート35は取付部材36及び取付金具37の間に圧接保持されている。
【0027】
取付部材36に使用される材料としては、断熱性の高く機械的強度の大きい材料が用いられ、長繊維補強硬化性樹脂発泡体が好適である。長繊維補強硬化性樹脂発泡体は、無機質又は有機質の長繊維を多数本糸長方向に揃えて発泡性が付与された硬質ウレタン樹脂又は硬質ポリエステル樹脂に埋設して成形されたもので、木材と同様の機械的強度を有するとともに木材よりも低い熱伝導率を有している。例えば、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体をガラス長繊維で強化したもの(例;積水化学工業株式会社製のFFU(登録商標))では、木材と同程度の比重及び機械的強度を有し、熱伝導率が木材の半分以下となっている。そのため、こうした材料を取付部材36に用いることで、外装材33の保持構造の構造材を通して発生する熱橋現象を抑止することができる。
【0028】
図3は、取付部材36に関する平面図、正面図及び側面図である。取付部材36は、中心部に固定ネジを挿入する貫通孔36aが形成されており、取付部材36の4つの側面36bは、膨出するように湾曲形成されている。
【0029】
図4は、保持構造に関する水平方向の拡大断面図である。取付部材36は、型枠ユニットパネル31の間に形成された空隙に嵌め込まれて、貫通孔36aに挿入された固定ネジ36cにより鉄筋コンクリート壁30に固定されている。取付部材36の側面36bは、型枠ユニットパネル31に圧接して平面状に変形し隙間のない密着した状態となる。
【0030】
貫通孔36aは樹脂材料が埋め込まれ、取付部材36の取付金具37の取付面は平面状に形成されており、取付部材36及び型枠ユニットパネル31の外表面はほぼ面一に形成されている。そして、取付部材36及び型枠ユニットパネル31の外表面を覆うように張り付けられた遮熱シート35は、取付金具37の中央部分の固定部37aが固定ネジにより取付部材36の取付面に固定されることで保持される。また、固定部37aの両側の保持部37bは、段差状に折り曲げられて形成されており、保持部37bの取付面に外装材33が当接してネジ止めにより保持される。取付金具37の保持部37bが段差状に形成されているため、外装材33と遮熱シート35との間に隙間が形成されて通気層34となっている。
【0031】
外壁構造3の一部は、矩形状に開口部が形成されて公知の窓枠38が取り付けられる。開口部の内周には、枠状に取付部材39が接合固定されており、窓枠38は取付部材39を介して取り付けられるようになっている。取付部材39に使用される材料には、取付部材36と同様の長繊維補強硬化性樹脂発泡体が用いられ、そのため取付部材39は木材と同程度の比重及び機械的強度を有し、熱伝導率が木材の半分以下となっている。こうした材料を取付部材39に用いることで、窓枠38から外壁構造3の構造材を通じて発生する熱橋現象を抑止することができる。
【0032】
図5は、窓枠38の取付部分に関する一部拡大断面図である。外壁構造3の開口部の内周面に取付部材39を固定し、取付部材39に窓枠38の金属製枠部材38a及び樹脂製枠部材38bをネジ等により固定する。熱伝導率の高い金属製枠部材38aは取付部材39に固定されることで、熱橋現象は抑止され、内装材32は熱伝導率の低い樹脂製枠部材38bに接した状態となるので、内装材32を通じた熱橋現象は抑止されるようになる。そのため、窓枠38の取付部分における断熱効果を高めることが可能となる。
【0033】
スラブ構造4は、鉄骨材を組み付けた骨組みに架設された波形鋼板40と、波形鋼板40の上面に形成された鉄筋コンクリートスラブ41で構成される。波形鋼板40は、鉄骨材に溶接等により固定され、波形鋼板40の上面に鉄筋を平面状に配筋してコンクリートを打設することで鉄筋コンクリートスラブ41が打設される。
【0034】
屋上構造5は、鉄骨材を組み付けた骨組みに架設された波形鋼板50と、波形鋼板50の上面に形成された鉄筋コンクリートスラブ51と、鉄筋コンクリートスラブ51の上面に敷設された断熱材52と、断熱材52の上面に通気層53を介して敷設された防水下地材54と、防水下地材54の表面に施工された防水層55で構成される。波形鋼板50は、鉄骨材に溶接等により固定され、波形鋼板50の上面に鉄筋を平面状に配筋してコンクリートを打設することで鉄筋コンクリートスラブ51が打設される。
【0035】
屋上構造5の全面を覆うように敷設された断熱材52は、外壁構造3の型枠ユニットパネル31の頂部に隙間なく接合しており、接合部分において確実に断熱効果を奏するようになっている。
【0036】
屋上構造5は、外壁構造3から外側に延設した庇5aが形成されている。庇5aは、外壁構造3から外方に突出した鉄骨材に波形鋼板50が延設されて屋上構造5と同様の構造で構築される。外壁構造3との接合部分には波形鋼板50に連結孔50aが穿設されており、連結孔50aに鉄筋を挿通して鉄筋コンクリート壁30及び鉄筋コンクリートスラブ51が連結されている。
【0037】
庇5aの下面及び側面には、それぞれ断熱材52a及び52bが張り付けられており、断熱材52aは外壁構造3の型枠ユニットパネル31と隙間なく接合し、断熱材52bは断熱材52と隙間なく接合している。そのため、庇5a全体が断熱材で覆われるようになり、断熱効果が向上する。
【0038】
パラペット構造6は、屋上構造5の周囲に取り付けられた枠部材60と、枠部材60の外側面に張り付けられた外装材61と、枠部材60の上面に固定された笠木62と、枠部材60の下面に固定された水切り63から構成されている。
【0039】
図6は、枠部材60を外壁構造3に隣接配置した部分に関する拡大断面図である。枠部材60は、波形鋼板50に固定された棒状の取付部材64により支持固定されている。取付部材64は、上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなり、波形鋼板50の上面に沿って所定間隔を空けて複数配置されている。取付部材64は、例えばその周囲を囲むように配置された固定具を波形鋼板50に固定することにより取り付けられる。外壁構造3の型枠ユニットパネル31には、取付部材64を挿通する挿通孔31aが穿設されており、取付部材64は、挿通孔31aを貫通して先端部が外方に突出し、枠部材60が突出した先端部に固定されている。
【0040】
取付部材64は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなっているので、断熱性及び機械強度に優れており、パラペット構造6と外壁構造3との間の熱の移動を抑止するように作用する。また、外壁構造3の型枠ユニットパネル31の挿通孔31aに取付部材64が隙間なく接合しているので、接合部分を通した熱の移動を抑止でき、断熱効果を向上させることが可能となる。
【0041】
図7は、枠部材60を庇5aに隣接配置した部分に関する拡大断面図である。この場合にも庇5aに延設された波形鋼板50に取付部材64が支持固定される。取付部材64は、庇5aの側面に設けた断熱材52bに穿設された挿通孔を通して先端部が突出し、突出した先端部に枠部材60が固定される。そして、断熱材52bの挿通孔と取付部材64とを隙間なく接合することで断熱効果を向上させることができる。
【0042】
図8は、取付部材64の変形例を用いた構造に関する拡大断面図である。この例では、取付部材64は、金属製でL字状のアングル65を備えており、アングル65の建物内部に埋設される部分は断熱効果の大きい発泡樹脂材料からなる被覆部66で覆われている。そして、アングル65は、波形鋼板50に沿って配置されて取付具により固定されている。アングル65の折れ曲り部分65aは、外部に露出して枠部材60に固定されており、取付部材64により枠部材60が支持されるようになっている。
【0043】
金属製のアングル65は熱伝導率が高いが、被覆部66により外壁構造3との間の熱の移動が抑止されるため、断熱効果を高めることができる。
【0044】
なお、以上説明した例では、屋上構造に設けたパラペット構造について説明したが、ベランダ、バルコニー、外廊下といった構造に取り付けられるパラペット構造についても同様の断熱構造を構築することができる。
【0045】
上述した例では、屋上構造5に波形鋼板50を固定し、波形鋼板50に取付部材64を介してパラペット構造6を固定するようにしているが、屋上構造5を従来のコンクリートスラブ又は鉄骨梁の構造とすることもできる。図9は、こうした構造の屋上構造5’の断熱構造に関する概略断面図である。この例では、屋上構造5’は、コンクリートスラブ50’の上面に外壁構造から連続する断熱材51’及び遮熱シート52’が敷設されており、断熱材51’及び遮熱シート52’は、取付部材53’により取付部材36と同様に保持されている。遮熱シート52’の上部には、受け梁54’が架設されて取付部材53’においてネジ止めにより固定されている。そして、受け梁54’の上面に折版屋根構造55’が構築されている。また、受け梁54’は、端部を折り曲げてパラペット構造とすることもでき、端部に枠部材60を取り付けてパラペット構造を構築することもできる。
【0046】
屋上構造5’の周囲に形成されたパラペット構造6’は、断熱材51’及び遮熱シート52’から連続する断熱材及び遮熱シート並びに外壁構造から延設された断熱材及び遮熱シートにより全体が覆われている。したがって、屋上構造5’及びパラペット構造6’は、断熱材及び遮熱シートにより外部との間で熱的に遮断されるようになり、断熱効果を格段に向上させることができる。取付部材53’は、取付部材36と同様に上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなり、受け梁54’を支持するとともに断熱材51’の間に密着して取り付けられることで、断熱効果を高めることができる。
【0047】
図10は、屋上構造の変形例の断熱構造に関する概略断面図である。この例では、図9に示す屋上構造の断熱構造の上部に屋根構造7が構築されている。コンクリートスラブ50’の上面には、断熱材51’及び遮熱シート52’が敷設されており、遮熱シート52’の上部には束受小梁70が架設されている。束受小梁70には鉄骨束71が立設されており、鉄骨束71の上部に屋根構造7が構築されている。
【0048】
取付部材53’は、取付部材36と同様に上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなり、断熱材51’の間に密着した状態でコンクリートスラブ50’に取付部材36と同様に取付固定されている。取付部材53’は、鉄骨束71の下方に配置されて束受小梁70を支持固定しており、そのため、鉄骨束71を通じた熱橋現象は、取付部材53’により遮断することができ、断熱効果を高めることが可能となる。
【0049】
図11は、図10に示す屋上構造の変形例に関する概略断面図である。この例では、勾配のあるコンクリートスラブ50”の上面に断熱材51”及び遮熱シート52”が敷設され、遮熱シート52”の上部に母屋72が架設されて屋根構造7が構築されている。そして、母屋72の下部には、上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材53”が配置されて取付部材53’と同様に支持固定するようになっている。そのため、母屋72を通じた熱橋現象は、取付部材53”により遮断することができ、断熱効果を高めることが可能となる。
【0050】
図12は、既存の折版屋根構造に断熱構造を施工する場合の屋上構造に関する概略断面図である。既存の折版屋根構造8の上面には、断熱材80が取付部材82により保持されて面一に敷設されている。断熱材80の上面には遮熱シート81が覆うように敷き詰められている。そして、遮熱シート81の上部に受け梁83が架設されて取付部材82にネジ止めにより支持固定されている。そして、受け梁83の上面に新たな折版屋根84が取り付けられて、断熱構造を備えた新しい折版屋根構造8’が構築されている。この場合にも受け梁83は、上述した長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材82に支持されているので、受け梁83を通じた熱橋現象を取付部材82により遮断することができ、断熱効果を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 床下構造
2 床構造
3 外壁構造
4 スラブ構造
5 屋上構造
6 パラペット構造
30 鉄筋コンクリート壁
31 型枠ユニットパネル
32 内装材
33 外装材
34 通気層
35 遮熱シート
36 取付部材
37 取付金具
38 窓枠
39 取付部材
60 枠部材
64 取付部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、鉄筋コンクリートの少なくとも外面を覆うように断熱材が配設された外壁構造と、屋上面を覆うように断熱材が敷設された屋上構造と、前記外壁構造に連設されたスラブ構造及び前記屋上構造を支持する鉄骨構造とを備えた鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造において、前記外壁構造又は前記屋上構造に取り付けられる部材は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して取り付けられていることを特徴とする鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造。
【請求項2】
前記外壁構造には、前記取付部材が前記断熱材の間に密着して固定されており、前記取付部材には取付金具を介して外装材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建築物の断熱構造。
【請求項3】
前記外壁構造には、前記取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物の断熱構造。
【請求項4】
前記屋上構造の周囲に突設されたパラペット構造を有しており、前記パラペット構造は、前記屋上構造に長繊維補強硬化性樹脂発泡体を介して固定された複数の支持部材に取り付けられるとともに前記屋上構造との間に断熱材が配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の建築物の断熱構造。
【請求項5】
前記パラペット構造は、前記支持部材に固定された枠部材と、前記枠部材を覆うように取り付けられた外装材とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の建築物の断熱構造。
【請求項1】
基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、鉄筋コンクリートの少なくとも外面を覆うように断熱材が配設された外壁構造と、屋上面を覆うように断熱材が敷設された屋上構造と、前記外壁構造に連設されたスラブ構造及び前記屋上構造を支持する鉄骨構造とを備えた鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造において、前記外壁構造又は前記屋上構造に取り付けられる部材は、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して取り付けられていることを特徴とする鉄骨併用鉄筋コンクリート壁式構造建築物の断熱構造。
【請求項2】
前記外壁構造には、前記取付部材が前記断熱材の間に密着して固定されており、前記取付部材には取付金具を介して外装材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建築物の断熱構造。
【請求項3】
前記外壁構造には、前記取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物の断熱構造。
【請求項4】
前記屋上構造の周囲に突設されたパラペット構造を有しており、前記パラペット構造は、前記屋上構造に長繊維補強硬化性樹脂発泡体を介して固定された複数の支持部材に取り付けられるとともに前記屋上構造との間に断熱材が配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の建築物の断熱構造。
【請求項5】
前記パラペット構造は、前記支持部材に固定された枠部材と、前記枠部材を覆うように取り付けられた外装材とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の建築物の断熱構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−202396(P2011−202396A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70297(P2010−70297)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505459493)株式会社三輝設計事務所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505459493)株式会社三輝設計事務所 (4)
【Fターム(参考)】
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