説明

鉱物性結合剤をベースとする調製物中の乾燥助剤としてのアルデヒド−縮合物の使用

鉱物性の建築材料中の水性重合体分散液の乾燥の際の助剤としての、スルホン化されたフェノール類、ナフタレン類又はスルホン化された多核芳香族化合物の単独での又はこれらの混合物のC2〜C6−モノ−及び/又はジアルデヒド−縮合生成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に鉱物性の建築材料、例えば石膏、セメント又はモルタル用の水性重合体分散液の噴霧乾燥の際の乾燥助剤としての、スルホン化されたフェノール類、スルホン化されたナフタレン類、及び他のスルホン化された多核芳香族化合物のC2〜C6−モノアルデヒド−縮合生成物及び/又はジアルデヒド−縮合生成物の使用に関する。
【0002】
さらに、本発明は、本発明によるアルデヒド−縮合生成物を有する鉱物性の建築材料に関する。
【0003】
水性重合体分散液は、例えば結合剤として、特に合成樹脂しっくい又は高度に顔料添加された内部用塗料、接着剤、コンクリート、モルタル又は被覆剤用の結合剤として既に使用されている。しかしながら、頻繁に、水性重合体分散液ではなく、粉末の形状の重合体を使用することが望ましい。
【0004】
この重合体を粉末の形状で得るために、分散液に乾燥工程、例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥を行わなければならない。この噴霧乾燥の場合に、この重合体分散液は熱空気流中に噴霧されかつ脱水され、この場合、乾燥空気と噴霧される分散液は有利に並流で乾燥機を通るように案内される。
【0005】
この得られた重合体粉末は、しかしながら、再分散の際に得られた重合体粒子の直径分布は、一般に水性の出発分散液中の直径分布とは異なるため、一般に水性媒体中でのその再分散性は十分に満足できるものではないという欠点を有する。この理由は、水性重合体分散液が、重合体溶液とは異なり、熱力学的に安定な系を形成しないことにある。むしろ、この系は、小さな一次粒子からより大きな二次粒子にまとまる(斑点形成、凝結)ことにより重合体/分散媒の界面を小さくしようとする。これは、水性媒体中で分散して分布する状態で、分散剤、例えば乳化剤及び保護コロイドの添加により長時間抑制することができる。水性重合体分散液の乾燥の際に、分散剤のこの作用はもはや十分ではないことが多く、一定の程度で不可逆的な二次粒子形成が生じる。つまり、この二次粒子は再分散の際に維持され、再分散の範囲内で得られた水性重合体分散液の適用技術的特性を低下させる。
【0006】
乾燥時の二次粒子形成を抑制するか又は少なくとも低下させるために、以前から、いわゆる乾燥助剤を使用することが公知である。これはしばしば噴霧助剤ともいわれる、それというのも噴霧乾燥が不可逆的に凝集した二次粒子の形成を特に促進するためである。この効果は、ポリマー粒子のガラス転移温度(及びそれと共に軟化温度又は最低皮膜形成温度)が低くなればそれだけ顕著になり、特にこのガラス転移温度が乾燥温度を下回る場合には顕著になる。同時に、この乾燥助剤は一般に乾燥機壁部に付着するポリマー皮膜の形成を低減し、粉末収量を高める。
【0007】
乾燥助剤の使用は、多数の刊行物から公知である。DE-A-24 45 813は、水性系中で再分散可能な粉末状のポリマーを記載していて、前記ポリマーは乾燥助剤として、芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとからなる水溶性の、スルホン酸基又はスルホナート基含有の縮合生成物1から20質量%を含有する。この縮合生成物は、特にフェノールスルホン酸−又はナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物である。
【0008】
EP-A 078 449は、50℃未満のガラス転移温度を有する重合体の水性分散液の噴霧乾燥による耐ブロッキング性の、水中で再分散可能な重合体粉末の製造方法を記載している。この分散液は、噴霧助剤として、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとからなる水溶性共重合体及び/又はナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合生成物の水溶性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する。
【0009】
同じように、EP-A 407 889は、水性重合体分散液から、水中で再分散可能な重合体粉末を製造するための噴霧助剤としての、フェノールスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合生成物の水溶性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の使用を記載する。
【0010】
WO 2005/021145は、分散助剤としてのo−クレゾール−スルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物の使用が開示されている。
【0011】
この先行技術において開示された噴霧助剤の欠点は、一方でホルムアルデヒドの使用であり、他方でフェノールスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物の使用の際に生じる噴霧乾燥粉末の着色である。
【0012】
本発明の根底をなす課題は、重合体分散液から、水中で良好に再分散可能でかつ先行技術の欠点を有していないポリマー粉末を製造することができる、鉱物性の建築材料中で使用するための乾燥助剤を提供することである。
【0013】
意外にも、前記課題は、スルホン化された芳香族化合物のC2〜C6アルデヒド−縮合生成物を使用する場合に解決されることが見出された。さらに、このC2〜C6アルデヒド−縮合生成物はセメントの水和の際にわずかな遅延を示す。
【0014】
従って、本発明の主題は、鉱物性の建築材料中の水性重合体分散液の乾燥の際の助剤としてのC2〜C6アルデヒド−縮合生成物の使用である。
【0015】
本発明により使用される乾燥助剤の製造は、一般に、酸性の、特に硫酸性の反応条件下での、C2〜C6アルデヒドの、スルホン化されたフェノール類、スルホン化されたナフタレン類又は他のスルホン化された多核芳香族化合物による縮合により行われる。フェノール類とは、例えばフェノール、オルト−クレゾール、メタ−クレゾール、パラ−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸であると解釈され;ナフタレン類とは非置換、一置換及び多置換であることができるようなものであると解釈される。1つ又は複数の置換基が存在する場合、この置換基は、例えばC1〜C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル又は他の基、例えばヒドロキシ−、メトキシ−、エトキシ−、アミン−、ジメチルアミン、エチルメチルアミン−、ジエチルアミン−から相互に無関係に選択される。使用された化合物は、例えばベンゼン、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼン、クメン、パラ−メチルクメン、ビフェニル、2−メチルビフェニル、3−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、パラ−テルフェニル、インデン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、9−メチルアントラセン、9−フェニルアントラセンであることができる。この場合、スルホン化されたフェノール類、スルホン化されたナフタレン類又は他のスルホン化された多核芳香族化合物が提供されるか又は公知の方法(J. March著, Advanced Organic Chemistry, 3rd ed, John Wiley, New York 1985, p. 473 ff及びそこに引用された文献を参照)でin situで製造することができる。有利に、例えばフェノールスルホン酸又はナフタレンスルホン酸は、硫酸、有利に濃硫酸を用いたスルホン化によりin situで製造される。この縮合は、スルホン化されたフェノール類又はスルホン化されたナフタレン類又は他のスルホン化された多核芳香族化合物とC2〜C6アルデヒドとの、酸性の条件下で、有利に硫酸性の反応条件下で、特に濃硫酸中での反応により行われる。例えば、フェノールスルホン酸又はナフタレンスルホン酸はin situで製造される場合、この縮合はC2〜C6アルデヒドを硫酸性反応混合物に添加することにより導入される。アルデヒド:フェノールスルホン酸のモル比は、1:1〜1:2の範囲内、有利に1:1.3から1:1.7の範囲内にある。有利に、このC2〜C6アルデヒドは水溶液として添加される。所望の分子量を生じさせるために、この縮合反応は原則として90〜110℃の範囲内の温度で、有利に約100℃で実施される。この反応時間は、原則として、2〜6時間、有利に3〜5時間である。この塩が乾燥助剤として適している場合には、この縮合に引き続き、適当な塩基性金属塩又はアミンを用いて中和を実施し、その際、金属塩又はアミンは有利に水溶液又は分散液として使用される。
【0016】
乾燥助剤の適用される量は、分散液の重合体の質量に対して、有利に1〜30質量%、有利に3〜15質量%、特に有利に5〜12質量%である。
【0017】
特に、本発明による化合物は、重合体分散液の乾燥のために、この重合体が+115℃〜−60℃の、有利に≦65℃、特に有利に≦50℃、殊に特に有利に≦25℃、さらに特に有利に≦0℃のガラス転移温度(DSC、中心温度、ASTM D 3418−82)を有するのが有利である。一般に、この重合体のガラス転移温度は、≧−60℃、有利に≧−40℃、特に≧−20℃である。
【0018】
この場合、分散された重合体のガラス転移温度Tgを評価することがしばしば役立つ(Fox (T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. (Ser. II) 1, 123 [1956]及びUIImanns Encyklopaedie der technischen Chemie, Weinheim (1980), p. 17, 18)。
【0019】
有利に、数平均分子量Mn<1500ダルトンを有するアルデヒド縮合物が乾燥助剤として使用される。
【0020】
従って、本発明の主題は、数平均分子量Mn<1500ダルトンを有するアルデヒド縮合物又はその塩の、水性重合体分散液の乾燥の際の助剤としての使用である。
【0021】
有利に、この縮合生成物は、噴霧助剤の製造の際の実施例において記載されているようにゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された、500〜1500ダルトン、特に600〜1200ダルトンの範囲内の平均分子量Mnを有する。不均一性(Mw/Mnとして定義される)は、5〜15の範囲内、有利に5〜11の範囲内である。10000ダルトンを越える分子量を有する縮合物の割合は、全体の縮合生成物の有利に25質量%未満、特に20質量%未満である。
【0022】
この縮合生成物をその塩の形で使用する場合、原則としてアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩、つまりアンモニア又は有機アミン、例えばトリエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエチルアミンとの塩が使用される。アルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩が有利である。
【0023】
有利に、乾燥されるべき重合体は、
(a) ビニル芳香族化合物、α,β−モノエチレン性不飽和C3〜C6−カルボン酸とC1〜C12−アルカノール、有利にC1〜C8−アルカノールとからのエステル、C1〜C15−カルボン酸のビニルエステル並びにアリルエステル及びブタジエンから選択される少なくとも1種のモノマー80〜100質量%、及び
(b) 少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種のその他のモノマー0〜20質量%
を有する重合体である。
【0024】
この場合、Cn〜Cmの表現は、それぞれの種類の化合物の本発明の範囲内で可能な炭素の数に関する。アルキル基は、線状又は分枝状であることができる。Cn〜Cm−アルキルアリールは、Cn〜Cm−アルキル基を有するアリール基を表す。
【0025】
ビニル芳香族化合物の例は、スチレン、α−メチルスチレン又はビニルトルエン、例えばo−ビニルトルエンである。
【0026】
α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のエステルは、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸のエステルである。このようなエステルの例は、メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、n−ブチル(メタ)アクリラート、iso−ブチル(メタ)アクリラート、t−ブチル(メタ)アクリラート、エチルヘキシル(メタ)アクリラート、デシル(メタ)アクリラート又はドデシル−(メタ)アクリラートである。
【0027】
使用可能なビニルエステル及びアリルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニル−n−ブチラート、ビニルラウラート及びビニルフェルザタート(Vinylversatate)並びに相応するアリルエステルである。
【0028】
特に有利なモノマー(a)は、n−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、メチルメタクリラート及びスチレンである。
【0029】
モノマー(b)は、有利に上記のα,β−モノエチレン性不飽和C3〜C6−カルボン酸及び相応するニトリル、アミド、モノ−又はジアルキルアルデヒド及びそのヒドロキシアルキルエステルである。環式ラクタムのN−ビニル誘導体及び上述のC3〜C6−カルボン酸のモノ−又はジアルキルアミノアルキルアミド及びその四級化生成物、例えばトリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリラート及びトリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドも適している。
【0030】
特に有利なモノマー(b)は、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、四級化ビニルイミダゾール、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、トリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリラート及びトリアルキルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドである。
【0031】
有利な重合体分散液は、さらに、分散された重合体粒子の重量平均直径dwは≧100nm、特に有利に≧300nmである重合体分散液である。通常では、dwは≦2000nmである。さらに、この分散された重合体粒子の直径が、広い直径範囲にわたって分布している場合が有利である。
【0032】
粒子サイズのdw値とは、通常では、粒子サイズの重量平均として定義され、これはW. Scholtan及びH. Lange著, Kolloid-Z, und Z.-Polymere 250 (1972), p. 782 - 796の方法による分析的超遠心を用いて測定される。この超遠心測定法は、試料の粒子直径の積分質量分布を提供する。このことから、粒子のどのくらいの質量パーセントが所定のサイズ以下の直径を有するかが推知される。
【0033】
直径分布の幅を特性決定するための適当な尺度は、商Q=(d90−d10)/d50であり、この場合、dmは、分散されたポリマー粒子のm質量%が上回らない直径である。有利に、Qは0.5〜1.5である。このような粒子分布幅を有する重合体分散液の製造は、当業者に例えばDE-A 43 07 683から公知である。
【0034】
重合体の重量平均分子量Mw対数平均分子量Mnの比率は、1〜30又は1〜20又は1〜8である。この分子量は、従って、ほぼ均一であるか、又は所定の幅にわたり分布していることができる。
【0035】
乾燥されるべき重合体分散液の製造は公知である。一般に、この製造はラジカル重合によって行われ、この重合は有利に極性溶剤、特に水中で実施される。所望の分子量の調整のために、この分子量を調整する物質を併用することもできる。適当な分子量調整剤は、例えばチオール基及び/又はシラン基を有する化合物(例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン又はメルカプトプロピルトリメトキシシラン)、アリルアルコール又はアルデヒド、例えばアセトアルデヒド等である。
【0036】
適当な開始剤は、例えば有機又は無機のペルオキシド、例えばペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムもしくはペルオキソ二硫酸アンモニウム、又は水溶性の及びモノマーに可溶のアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸並びに2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、酸化剤、例えば過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシドと、還元剤、例えば亜硫酸−及び亜硫酸水素−カリウム、ナトリウム、アンモニウム並びにアスコルビン酸とからなるレドックス開始剤系(この場合、熱分解によりフリーラジカルを形成することができる酸化剤単独でも使用可能であり)、並びに接触開始剤系、例えばH22/Fe2+/H+の系である。モノマー割合に対する開始剤の割合は、有利に0.01〜5質量%、特に0.1〜3質量%である。この重合は、モノマー組成物に応じて溶液重合として又は乳化重合として行うことができる。
【0037】
重合体分散液を乳化重合により製造する場合に、これは通常の方法で行われる。一般に、保護コロイド、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン又はセルロース誘導体又はアニオン性及び/又は非イオン性乳化剤、例えばエトキシル化されたモノ−、ジ−又はトリアルキルフェノール、エトキシル化された脂肪アルコール及びC8〜C12−アルキルスルファートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、エトキシル化されたC12〜C18−アルコールの硫酸半エステル、C12〜C18−アルキルスルホン酸、C9〜C18−アルキルアリールスルホン酸及びスルホン化されたアルキルジフェニルエーテルが使用される。この重合温度は、一般に30〜120℃、特に70〜100℃の範囲内にある。
【0038】
この分散液は、一次分散液、つまりラジカル水性エマルション重合の方法により直接得られた重合分散液であることができる。これは二次分散液であることもでき、つまり溶液重合により得られた重合体を後から水性ポリマー分散液に変換される。
【0039】
重合体分散液の乾燥は、通常の方法で、例えば凍結乾燥により又は有利に噴霧乾燥により行うことができる。噴霧乾燥の場合には、この熱空気流の入口温度が100〜200℃、有利に120〜160℃の範囲内であり、かつこの熱空気流の出口温度が30〜90℃、有利に60〜80℃の範囲内にあるように行われる。この熱空気流内における水性重合体分散液の噴霧は、例えば1成分−又は多成分ノズルによるか又は回転ディスクを介して行うことができる。この重合体粉末の分離は、通常に、サイクロン又はフィルター分離器の使用下で行う。噴霧される水性重合体分散液及び熱空気流は有利に並流で案内される。
【0040】
本発明による使用されるアルデヒド−縮合生成物は、乾燥されるべき分散液に乾燥の前に水溶液として又は固体として添加することができる。これが一次分散液である場合に、乾燥助剤は、乳化重合の前、乳化重合の間及び/又は乳化重合の後に添加することができる。
【0041】
本発明によるC2〜C6−アルデヒド−縮合生成物として、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、ペンタナール又はヘキサナール及びそれらの異性体化合物、並びに相応するアルデヒド混合物を、スルホン化されたフェノール類、スルホン化されたナフタレン類及び他のスルホン化された多核芳香族化合物と共に使用する。
【0042】
フェノール類とは、例えばフェノール、オルト−クレゾール、メタ−クレゾール、パラ−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸であると解釈され;ナフタレン類及びジヒドロキシフェニルスルホンとは、非置換、一置換及び多置換であることができるようなものであると解釈される。1つ又は複数の置換基が存在する場合、この置換基は、例えばC1〜C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル又は他の基、例えばヒドロキシ−、メトキシ−、エトキシ−、アミン−、ジメチルアミン、エチルメチルアミン−、ジエチルアミン−から相互に無関係に選択される。フェノールの概念は、その類縁の化合物、例えばベンゼン、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼン、クメン、パラ−メチルクメンであるとも解釈される。多核芳香族化合物とは、例えばビフェニル、2−メチルビフェニル、3−メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、パラ−テルフェニル、インデン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、9−メチルアントラセン又は9−フェニル−アントラセンであると解釈される。
【0043】
本発明による乾燥助剤の他に、さらに、公知の乾燥助剤、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の単独重合体等を併用することもできる。貯蔵の際に重合体粉末の凝集を抑制するために、凝結防止剤、例えば高分散シリカ(これは、通常では水性重合体分散液の乾燥のために使用される)も使用することができる。噴霧乾燥の場合に、この凝結防止剤は一般に別々に噴霧される。
【0044】
本発明の主題は、本発明により得られた重合体粉末でもある。この重合体粉末は、鉱物性の建築材料、ペイント、塗料及び接着剤及び合成樹脂しっくい(EP-A 629 650に記載されているようなもの)中の結合剤及として、特に鉱物性の建築材料用に適している。
【0045】
本発明の範囲内で鉱物性の建築材料とは、例えば、水と混合して固体に硬化する無機の、一般に鉱物性の物質であると解釈される。この場合、水で硬化される物質(潜在水硬性結合剤)、例えば石膏又は石膏含有調製物、例えば、モデリング石膏、しっくい石膏又は化粧しっくい用石膏、成型用石膏、石膏塗装剤、ソーレルセメント、マグネシア結合剤及び白しっくい、並びに水硬性結合剤、例えば石灰、セメント又はモルタルとは区別される。ここで使用された「石膏」の概念は、硬石膏も、硫酸カルシウム半水和物を含む。
【0046】
典型的には、この乾燥モルタルは、鉱物質の結合剤の量に対して、0.1〜200質量%の変性する重合体粉末を含有する。
【0047】
この加工特性の改善のために、乾燥モルタルに、多様にセルロース誘導体及びマイクロシリカが添加される。炭酸カルシウム及び石英砂は、一般に通常の骨材を形成する。消泡剤(「乾燥モルタル」の観点で有利に粉末の形)の添加により、固化した状態で、固化されたセメント状モルタルの実際の気泡含有量(1〜20体積%)を達成することができる。
【0048】
以下の実施例は本発明をより説明するが、本発明を限定するものではない。
【0049】
実施例
分散液
水150g、
エトキシル化されたp−イソオクチルフェノール(EO度25)の20%の水溶液5.6g、
硫酸化されかつエトキシル化されたp−イソオクチルフェノール(EO度25)のNa塩の35質量%の水溶液0.48g、
10質量%のギ酸水溶液3.9g、
炭酸水素ナトリウム1.7g及び
20質量%のポリアクリルアミド水溶液3.4g
からなる混合物を90℃に加熱した。引き続き、この混合物に、同時に最初にかつ90℃の内部温度を維持しながら2時間に、
n−ブチルアクリラート291.2g
スチレン250.0g
アクリルアミド11.2g
エトキシル化されたp−イソオクチルフェノール(EO度25)の20質量%の水溶液8.4g
硫酸化された及びエトキシル化されたp−イソオクチルフェノールのNa塩(EO度25)の20質量%の水溶液11.5g及び
水162.9g
からなる水性モノマーエマルション742.8gを
及び、2.5時間に、水90g中のペルオキソ二硫酸ナトリウム3.3gの溶液を連続的に添加した。その後に、この反応混合物を、更に120minに90℃で撹拌し、60℃に冷却した。水5.5g中のt−ブチルヒドロペルオキシド1.1gの溶液を添加した後に、この温度で1時間に、水15g中のヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム0.6gを添加し、0.5時間後撹拌した。15分後に室温に冷却し、10質量%のアンモニア水溶液3.5gで中和した。濾過後に、固体含有率54.5%、20℃で2.5cmの層厚で0.01質量%の分散液の光透過率(LD値)9%及びpH値7.3を有する分散液が得られた。この重合体のガラス温度(DSC中心点、上記参照)は+15℃であった。得られた重合体分散液の固体含有率は58.7%、LD値17%、TgFox 7℃及びpH値7.2であった。
【0050】
本発明による及び比較の噴霧助剤の製造
一般的な前書き:
分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で行う。
【0051】
固定相:エチレングリコールジメタクリラートで架橋したポリ−(2−ヒドロキシメタクリラート)−ゲル(PSS社(Mainz、ドイツ国)のHEMA BIOとして市販)
展開剤:テトラヒドロフラン(THF)30質量%、アクリルニトリル10質量%、1モル濃度のNaNO3溶液60質量%からなる混合物
内部標準:展開剤に対して0.001質量%のベンゾフェノン
流量:1.5ml/min
濃度:内部標準を有する展開剤中で1質量%
検出:254nmでのUV/可視光分光分析
PSS社のポリスチレン−校正部材を用いた校正
n:数平均分子量[g/mol]
w:重量平均分子量[g/mol]。
【0052】
噴霧助剤S1
反応体:
a) フェノール、
b) 濃硫酸、
c) グリオキサール。
【0053】
手順:
フェノール275.40gを撹拌装置中に装入し、20分間に濃硫酸(96質量%)338.6gを添加する。この場合、温度は105℃を上回らないように留意する。引き続き、この反応混合物を100〜105℃で30分間撹拌する(スルホン化反応)。この反応混合物を50℃に冷却し、50〜55℃の内部温度を維持しながら、40質量%のグリオキサール水溶液145.1gを90分間に少しずつ添加した。添加の完了後に、すぐに水100gを添加し、95〜100℃に加熱し、この温度で3時間さらに反応させた(縮合反応)。これを60℃に冷却し、さらに水162gを添加した。引き続き、水酸化カルシウム241gを添加し、この後、この混合物を20μm篩を介して濾別した。こうして得られた水溶液のpHは7.8gであった。
【0054】
噴霧助剤SV1
フェノール137.7gを撹拌装置中に装入し、20分間に濃硫酸(96質量%)169.3gを添加する。この場合、温度は105℃を上回らないように留意する。引き続き、この反応混合物を100〜105℃で30分間撹拌する(スルホン化反応)。この反応混合物を50℃に冷却し、50〜55℃の内部温度を維持しながら、30質量%のホルムアルデヒド水溶液100.7gを4時間に少しずつ添加した。添加の完了後に、すぐに水50gを添加し、95〜100℃に加熱し、この温度で4時間さらに反応させた(縮合反応)。これを60℃に冷却し、さらに水802gを添加した。引き続き、水酸化カルシウム130gを添加し、この後、この混合物を20m篩を介して濾別した。こうして得られた水溶液のpH値は7.9であった。
【表1】

【0055】
本発明による及び比較の重合体粉末の製造
乾燥した重合体粉末の製造のために、重合体分散液を固体含有率45%に及び噴霧助剤を固体含有率30%に希釈した。次いで、急速にかつ強く撹拌しながらこの噴霧助剤を分散器に添加した。この噴霧乾燥を、ディス噴霧器又は二成分ノズル噴霧器を備えたGEA Wiegand GmbH社(管轄領域Niro)のMinor実験室乾燥機中で、130℃の塔入口温度及び60℃の塔出口温度(性能:噴霧供給量約2kg/h)で行った。粘着防止剤として、噴霧供給物と同時に、微細粒シリカ約2〜3質量%(固体重合体混合物に対して)をこの乾燥室内へ供給した。量比、乾燥条件並びにその結果を第1表にまとめた。
【0056】
重合体粉末の再分散性は、次に記載するようにして調査した:
ガラス瓶中に完全脱塩水90gを秤量し、粉末10gを添加する。この混合物をUltra-Turraxで9500rpmで1min撹拌し、メスシリンダーに移す。プラスチック栓で閉鎖したメスシリンダーを動かさずに72時間貯蔵する。この再分散液を、引き続き良好に振盪し、72μm篩を介して濾過した。この篩を乾燥庫中に80℃で12時間貯蔵し、秤量された粉末量(10g)に関する乾燥した凝集物のパーセンテージを決定する。
【0057】
第1表:噴霧乾燥した重合体粉末の評価
【表2】

分散液100質量部に対する固体の噴霧助剤の質量割合
72時間後に固体含有率10%で
72μm篩を介して濾過した凝集物(80℃で一晩中乾燥)の、再分散された粉末量に対する比較。
【0058】
標準モルタル中での試験
この重合体粉末を、標準モルタル中で、着色及びDIN EN 196-1:2005 (B)による機械的強度を試験した。このために、1:10のプラスチック対セメント比を選択し、かつW/Z=0.45の水/セメント比を選択した。この重合体粉末を、標準モルタル(25%白色セメントCEM I 42, 5R、25%標準砂EKI, II, III)と混合した。水と混合した後に、この4×4×16cmのサイズの標準角柱を製造した。24時間後並びに7日後に、曲げ引っ張り強さをN/mm2で、圧縮強さをN/mm2で決定した。これを、第2表中にまとめた。
【0059】
第2表:標準モルタル中での重合体粉末の試験
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物性の建築材料中の水性重合体分散液の乾燥の際の助剤としての、スルホン化されたフェノール類、ナフタレン類又はスルホン化された多核芳香族化合物の単独での又はこれらの混合物のC2〜C6−モノ−及び/又はジアルデヒド−縮合生成物の使用。
【請求項2】
前記分散液の重合体は、115℃を下回るガラス転移温度を有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記重合体が、
a) ビニル芳香族化合物、α,β−不飽和C3〜C6−カルボン酸又はC4〜C8−ジカルボン酸とC1〜C12−アルカノールとのエステル、C1〜C15−カルボン酸のビニルエステル及びアリルエステル及びブタジエンから選択される少なくとも1種のモノマー80〜100質量%、及び
b) 少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する、少なくとも1種の他のモノマー0〜20質量%を
含有する、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記モノマーa)が、n−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、メチルメタクリラート及び/又はスチレンのグループから選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記モノマーb)が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリラートのグループから選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記C2〜C6モノ−及び/又はジアルデヒドは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール又はヘキサナールのグループから選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
乾燥助剤として、請求項1から6までのいずれか1項に定義された少なくとも1種のアルデヒド−縮合生成物を使用することを特徴とする、重合体分散液を乾燥する方法。
【請求項8】
重合体に対して、乾燥助剤1〜30質量%を使用することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記重合体の乾燥を噴霧乾燥により行う、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
請求項7から9までのいずれか1項記載の方法によって得られる、重合体粉末。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項に定義された乾燥助剤を有する、請求項10記載の重合体粉末。
【請求項12】
水硬性に硬化する材料、ペイント、塗料、接着剤、被覆材料並びに合成樹脂しっくい中の結合剤として及び鉱物性の建築材料の変性のための、請求項10又は11記載の重合体粉末の使用。
【請求項13】
請求項10又は11のいずれか1項記載の重合体粉末を含有する鉱物性の結合建築材料。
【請求項14】
鉱物性の結合剤 20〜60質量%、
請求項10又は11のいずれか1項記載の重合体粉末 0.1〜25質量%、
通常の助剤 25質量%まで、及び
残りの量として、添加物、例えば砂、充填剤、顔料、天然繊維及び/又は合成繊維
からなる乾燥モルタル調製物の形の、請求項13記載の鉱物性の結合建築材料。

【公表番号】特表2012−500295(P2012−500295A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522495(P2011−522495)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060334
【国際公開番号】WO2010/018150
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】