説明

鉱石粉の熱間強度増進固化材、それを用いた鉱石粉のペレット及びその製造方法

【課題】冷間強度が従来の固化材と同等以上であり、かつ、熱間強度の発現性や耐磨耗性に優れる、鉱石粉の熱間強度増進固化材、それを用いたペレット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポルトランドセメントとポゾラン反応性物質を含有してなり、スラグを含まない鉱石粉の熱間強度増進固化材であり、ポゾラン反応性物質の比表面積が2500cm/g以上である熱間強度増進固化材であり、ポゾラン反応性物質がフライアッシュである熱間強度増進固化材である。セメントが早強ポルトランドセメントである前記熱間強度増進固化材であり、アルカノールアミンを含有する前記熱間強度増進固化材である。さらに、前記熱間強度増進固化材を用いたペレット及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所、製鋼工場、及び非鉄精錬所等で発生する鉱石粉のペレタイジングに使用する鉱石粉の熱間強度増進固化材、それを用いた鉱石粉のペレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所、製鋼工場、及び非鉄精錬所等の工場内で発生するダストなどの鉱石粉の有効利用や、良質な鉱物資源の枯渇を背景として、鉱石粉のペレタイジングが行なわれている。
【0003】
鉱石粉のペレタイジング法として、ドラム型やパン型のペレタイザーを使用してペレタイジング後に焼成する焼成ペレット法や、省エネルギー化を目的として焼成工程を省略したコールドペレット法が知られている。
【0004】
これら鉱石粉のペレタイジング法で使用する鉱石粉の固化材としては、普通ポルトランドセメントからなる固化材、生石灰と高炉スラグからなる固化材、アルミン酸カルシウム系化合物と微粉末無機質材料からなる固化材、普通ポルトランドセメントとカルシウムアルミネートからなる固化材、フライアッシュと塩化カルシウムからなる固化材が知られている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
鉱石粉とその熱間強度増進固化材を用いたペレットを高炉へ投入後、600〜1000℃で焼成後の圧縮強度(熱間強度)は、従来の普通ポルトランドセメントを使用した固化材では約3〜5N/mmである。また、屋外で養生した後、高炉へ投入する直前の圧縮強度(冷間強度)は、通常、約3〜10N/mmが必要とされている。なお、ペレットと同じく製鉄原料として焼結鉱が使用されているが、その熱間強度は耐磨耗性を示す還元粉化指数によって数値化され、その還元粉化指数は、高炉へ投入後、600〜1000℃焼成後で2〜35質量%とされている。
【0006】
また、フライアッシュとトリアルカノールアミンを含有してなるセメント混和材が知られている(特許文献3、特許文献4参照)。これら混和材はコンクリートの初期強度の向上を目的としたものであり、本発明が解決しようとする熱間強度の向上に関する課題とは異なる。
【0007】
【非特許文献1】天野繁、阿部幸弘、山口一成、松岡裕直、高野正市、相田実生、守田和之、セメントレスコールドペレットの開発、鉄と鋼、第77年(1991)第6号、pp.45〜52
【非特許文献2】Masanori Nakano,Masaaki Naito,Kenichi Higuchi and Koji Morimoto, Non−spherical Carbon Composite Agglomerates:Lab−scale Manufacture and Quality Assessment, ISIJ International,Vol.44,No.12,pp.2079〜2085(2004)
【非特許文献3】T.C.EISELE and S.K.KAWATRA,A REVIEW OF BINDERS IN IRON ORE PELLETIZATION,Mineral Processing & Extractive Metall.Rev.,Vol.24,pp.1〜90(2003)
【特許文献1】特開平05−171303号公報
【特許文献2】特公平05−073707号公報
【特許文献3】特公昭54−43008号公報
【特許文献4】特開2000−281403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、冷間強度が従来の鉱石粉の固化材と同等以上であり、かつ、熱間強度の発現性や耐磨耗性に優れる、鉱石粉の熱間強度増進固化材、それを用いたペレット及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)ポルトランドセメント70〜90部とポゾラン反応性物質10〜30部とを含有してな、スラグを含まない鉱石粉の熱間強度増進固化材、
(2)ポゾラン反応性物質がフライアッシュである(1)の熱間強度増進固化材、
(3)ポゾラン反応性物質の比表面積が2500cm/g以上である(1)又は(2)の熱間強度増進固化材、
(4)ポルトランドセメントが早強ポルトランドセメントである(1)〜(3)のいずれかの熱間強度増進固化材、
(5)アルカノールアミンを含有する(1)〜(4)のいずれかの熱間強度増進固化材、
(6)アルカノールアミンの含有量がポゾラン反応性物質100部に対して0.1〜20部である(6)の熱間強度増進固化材、
(7)減水剤を含有してなる(1)〜(6)のいずれかの鉱石粉の熱間強度増進固化材、
(8)減水剤が固形分で固化材100部に対して0.5〜8部である(7)の鉱石粉の熱間強度増進固化材、
(9)減水剤が、R1O(A1O)mR2[ただし、A1Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物であり、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数で20〜150である]で示されるアルケニルエーテル、及びZ[O(A2O)nR3]a[ただし、Zは2〜8の水酸基で含有する化合物の残基であり、A2Oは、炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物で、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R3は炭素数2〜5のアルケニル基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で0または1以上の数であり、aは2〜8である]で示されるポリアルケニルエーテルと、無水マレイン酸との共重合体からなる(7)又は(8)の鉱石粉の熱間強度増進固化材、
(10)鉱石粉、(1)〜(9)のうちのいずれかの鉱石粉の熱間強度増進固化材、及び水を含有してなることを特徴とするペレット、
(11)固化材が鉱石粉100部に対して3〜20部である請求項10記載のペレット、
(12)水/(鉱石粉+熱間強度増進固化材)比(質量)が、0.03〜0.3である(10)又は(11)のペレット、
(13)鉱石粉、(1)〜(9)のうちいずれかの鉱石粉の熱間強度増進固化材、及び水を混合したものをペレタイジングし、養生するペレットの製造方法、
(14)固化材を鉱石粉100部に対して3〜20部混合する請求項13に記載のペレットの製造方法、
(15)水/(鉱石粉+固化材)比(質量)が0.03〜0.3である(13)又は(14)のペレットの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鉱石粉の熱間強度増進固化材、それを用いたペレット及びその製造方法によれば、冷間強度が従来の固化材と同等以上であり、かつ、熱間強度の発現性や耐磨耗性に優れている鉱石粉のペレットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0012】
本発明は、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質、さらには、アルカノールアミンを配合した特定の化学組成を有する鉱石粉の熱間強度増進固化材(以下、本固化材という)に関する。
【0013】
本発明でいう鉱石粉とは、例えば、金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、そう鉛鉱、すず鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クローム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ニツケル鉱、及びコバルト鉱などを発生源とするダストを指し、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
【0014】
本発明で使用するポルトランドセメントとは、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱などの各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、フライアッシュなどを混合したフィラーセメント、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメントなどが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が併用可能である。冷間強度の発現性から早強ポルトランドセメントの使用が好ましい。なお、フライアッシュセメントにはポゾラン反応性物質であるフライアッシュが含まれているため、ポゾラン反応性物質を配合することなく、フライアッシュセメントのみ、あるいはフライアッシュセメントに対してアルカノールアミンを配合して使用することも可能である。
【0015】
本固化材にスラグを併用することは、鉱石粉のペレットの還元粉化指数を増加するために好ましくない。本発明で云うスラグとは、高炉で銑鉄を製造する際に副産物として発生する高炉水砕スラグや高炉徐冷スラグ、製鋼工程で発生する転炉スラグや電気炉スラグなどの製鋼スラグを指す。ポルトランドセメントに高炉水砕スラグを混合してなる高炉セメントは、本発明では使用しない。
【0016】
本発明で使用するポゾラン反応性物質とは、それ自体には水硬性を持たないが、ポルトランドセメントの水和反応によって生成する水酸化カルシウムと反応してカルシウムシリケート系水和物を生成する物質をさし、例えばフライアッシュ、シリカフューム、籾殻灰、粗粒アッシュ(石炭灰)、火山灰、けいそう土、珪酸白土、溶融シリカ、シラスバルーン、及びライスハスクアッシュ(もみ殻灰)などが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能であり、このうち、経済性からもフライアッシュの使用が好ましい。ポゾラン反応性物質の粒子形状は、粒子の充填性や焼結反応時のネック成長のしやすさからも球状であることが好ましい。また、高炉操業時に支障となるナトリウム、カリウム、及びリン成分をなるべく含まないポゾラン反応性物質の使用が好ましい。
ポゾラン反応性物質の粒度は、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)で、2500cm/g以上が好ましく、3000cm/g以上がより好ましい。この範囲外では、冷間強度や熱間強度の発現性が低下する場合がある。なお、熱間強度を向上する点からもポゾラン反応性物質はあらかじめ粉砕したものを使用すると良い。
【0017】
ポルトランドセメントとポゾラン反応性物質の配合割合は、特に限定されるものではないが、ポルトランドセメント70〜90部とポゾラン反応性物質10〜30部が好ましく、ポルトランドセメント75〜85部とポゾラン反応性物質15〜25部がより好ましい。この範囲外では、冷間強度や熱間強度が充分に得られなくなる場合がある。
【0018】
本発明では熱間強度の向上を目的として、ポルトランドセメントとポゾラン反応性物質からなる熱間強度増進固化材に対して、アルカノールアミンを使用できる。
本発明で使用するアルカノールアミンとは、構造式においてN−R−OH構造を有する有機化合物である。ここで、Rはアルキル基又はアリル基と呼ばれる原子団であり、例えば、メチレン基、エチレン基、及びn−プロピレン基等の直鎖型のアルキル基、イソプロピル基などの枝分かれ構造を有するアルキル基、並びに、フェニル基やベンジル基などの芳香族環を有するアリル基などが挙げられる。
また、Rは窒素原子と2箇所以上で結合していてもよく、Rの一部又は全部が環状構造であってもよい。
さらに、Rは複数の水酸基と結合していてもよく、アルキル基の一部に炭素や水素以外の元素、例えば、イオウ、フッ素、塩素、及び酸素等が含まれていてもよい。
このようなアルカノールアミンの例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン、及びこれらの誘導体等が挙げられ、本発明ではこれらのうちの一種又は二種以上を使用することができる。
【0019】
アルカノールアミンと本固化材の配合割合は、特に限定されるものではないが、本固化材に含まれるポゾラン反応性物質100部に対してアルカノールアミン0.1〜20部が好ましく、0.5〜15部がより好ましい。この範囲外では、冷間強度や熱間強度が充分に得られなくなる場合がある。
【0020】
本発明では、熱間強度をさらに向上するために減水剤をさらに使用することが好ましい。
減水剤の種類としては、アルキルアリルスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系高分子化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の減水剤を使用するものであり、液状、粉状のいずれも使用できる。
なかでも、R1O(A1O)mR2[ただし、A1Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物であり、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数で20〜150である]で示されるアルケニルエーテル、及びZ[O(A2O)nR3]a[ただし、Zは2〜8の水酸基で含有する化合物の残基であり、A2Oは、炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物で、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R3は炭素数2〜5のアルケニル基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で0または1以上の数であり、aは2〜8である]で示されるポリアルケニルエーテルと、無水マレイン酸との共重合体からなる減水剤の使用が好ましい。
【0021】
減水剤の使用量は、固形分で本固化材100部に対して0.5〜8部が好ましく、1〜6部がより好ましい。0.5部未満では効果がなく、8部を超えると熱間強度の向上が少なく、不経済となる。
【0022】
これら使用材料を混合する方法は特に限定されるものではなく、セメントクリンカーを粉砕してポルトランドセメントにする際にポゾラン反応性物質と混合粉砕する方法、あるいはペレットを製造する際に各材料を鉱石粉に対して投入混合する方法などが挙げられる。
【0023】
本固化材の使用量は、鉱石粉100部に対して、3〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましい。この範囲未満では冷間強度と熱間強度の発現性が不良となる場合があり、この範囲より多くなると不経済となるため好ましくない。
【0024】
水/(鉱石粉+本固化材)比は、特に限定されるものではないが、質量比で0.03〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。この範囲未満では冷間強度が不良となる場合があり、高炉投入後の還元反応が不良となる場合がある。この範囲を超えると、焼成後に熱収縮によるひび割れが生じて熱間強度が低下する場合がある。
【0025】
本固化材を用いたペレットの製造には、高炉へ投入後にペレットの還元性を向上するために、コークス粉を加えることが可能である。また、ペレタイジング直後の初期強度の向上を目的に、ジエチレングリコールを加えることも可能である。
さらに、急結剤、増粘剤、収縮低減剤、及び凝結調整剤等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
【0026】
本固化材を用いたペレットの製造方法は、ペレタイジング工程と養生工程に大別される。ペレタイジング方法は特に限定されるものではなく、例えば、ドラム型やパン型の造粒機を使用したペレタイジングの他、加圧成形法、湿式加圧成形法、及び押出成形法などが挙げられる。
【0027】
また、ペレタイジングしたペレットの養生方法は、特に限定されるものではなく、常温常圧養生の他、オートクレーブ養生、蒸気養生、湿空養生、又は加熱養生などが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
「実験例1」
表1に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質を配合して固化材を調製した。鉱石粉100部に対して、調製した固化材13部を混合し、鉱石粉と調製した固化材の合計100部に対して、水を15部配合して混練物を調製した。調製した混練物の50gをφ40mmの金型成形ダイスに詰め、島津製作所社製、SSP−10A型、FT−IR用プレス機を用い、成形圧力7.8MPaの荷重をかけて30秒間保持し、保持後、脱型してφ40×16mmのペレットをペレタイジングした。
ペレタイジングしたペレットを常温常圧養生で養生し、ペレットの冷間強度と熱間強度を測定した。結果を表1に併記する。
【0030】
<使用材料>
ポルトランドセメントA:早強ポルトランドセメント、電気化学工業社製、商品名「デンカ早強ポルトランドセメント」、ブレーン値4500cm/g、比重3.12、CaO 72%、Al5%、SiO 23%
ポルトランドセメントB:普通ポルトランドセメント、電気化学工業社製、商品名「デンカ普通ポルトランドセメント」、ブレーン値3150cm/g、比重3.13、CaO 72%、Al6%、SiO 22%
ポゾラン反応性物質イ−a:フライアッシュ、石炭火力発電所産、JIS II種適合品、ブレーン値3700cm/g、比重2.35、CaO 6%、Al 27%、SiO 67%
高炉水砕スラグ:新日鐵高炉セメント社製、商品名「エスメントスーパー60P」、ブレーン値6000cm/g、比重2.91、CaO 49%、Al 16%、SiO 35%
鉱石粉:鉄鉱石粉、ヘマタイト鉱、比重4.95、篩下3mm品
水:水道水
【0031】
<養生方法>
常温常圧養生:ペレットを作製後、ビニール袋に入れて口を輪ゴムで縛って封緘し、20℃の大気圧環境下で14日間養生した。
【0032】
<測定方法>
冷間強度:作製したペレットを20℃室温環境下で封かん養生し、材齢14日の圧縮強度を測定した。
熱間強度:作製したペレットを20℃室温環境下で封かん養生し、材齢14日に、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、最高温度900℃で焼成し、最高温度に到達後、炉内温度が20℃になったことを確認した後に炉外へ取り出し、20℃室温環境下で3時間放冷した後に圧縮強度を測定した。
熱間回転強度(耐磨耗性):表1に示すポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質を配合して固化材を調製する。鉱石粉100部に対して、調製した固化材13部を混合し、鉱石粉と調製した固化材の合計100部に対して、水を15部配合して混練物を調製した。混練物は、パン型ペレタイザーを用いてペレットを作製し、ふるいを通して、直径が15−11mmの範囲にあるペレットを回収する。回収したペレットは、ペレットを20℃室温環境下で封かん養生し、材齢14日に、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、最高温度900℃で焼成し、最高温度に到達後、炉内温度が20℃になったことを確認した後に炉外へ取り出す。焼成後のペレットm(部)をJIS M 8720−2001「鉄鉱石−低温還元粉化試験方法」に準じた内径130mm、長さ200mmの回転ドラムへ投入し、30±1回転/分の回転速度で合計900回、回転させる。回転後、ペレットを回収し、2.8mmのふるい上に残っている質量m(部)を測定し、次式で定義される還元粉化指数(%)を求めた。還元粉化指数(%)=100−m/m×100
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果から、本固化材を使用したペレットは、熱間強度に優れていることが分かる。また、本固化材に高炉水砕スラグが含まれると、還元粉化指数は高く耐磨耗性に劣ることが分かる。すなわち、本固化材は、ポルトランドセメントとポゾラン反応性物質を適切に配合することにより、ペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0035】
「実験例2」
表2に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質、及びアルカノールアミンを配合したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0036】
<使用材料>
アルカノールアミンa:トリエタノールアミン、関東化学社製、試薬特級
【0037】
【表2】

【0038】
表2の結果から、本固化材は、アルカノールアミンを適切に配合することによって、ペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0039】
「実験例3」
表3に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質、及びアルカノールアミンを配合したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0040】
<使用材料>
ポゾラン反応性物質イ−b:ポゾラン反応性物質イをふるいにかけて分級し、ブレーン値2500cm/gに調整したもの。比重2.35、CaO 6%、Al 27%、SiO 67%
ポゾラン反応性物質イ−c:ポゾラン反応性物質イをふるいにかけて分級し、ブレーン値3000cm/gに調整したもの。比重2.35、CaO 6%、Al 27%、SiO 67%
ポゾラン反応性物質イ−d:ポゾラン反応性物質イを、振動型ボールミルを用いてブレーン値4300cm/gに粉砕したもの。比重2.35、CaO 6%、Al 27%、SiO 67%
ポゾラン反応性物質イ−e:ポゾラン反応性物質イを、振動型ボールミルを用いてブレーン値5900cm/gに粉砕したもの。比重2.35、CaO 6%、Al 27%、SiO 67%
ポゾラン反応性物質イ−f:ポゾラン反応性物質イを、振動型ボールミルを用いてブレーン値7100cm/gに粉砕したもの。比重2.35、CaO 6%、Al 27%、SiO 67%
【0041】
【表3】

【0042】
表3の結果から、本固化材は、ポゾラン反応性物質の比表面積を大きくすることによって、ペレットの冷間強度、熱間強度の発現性や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0043】
「実験例4」
表4に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質、アルカノールアミンを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0044】
<使用材料>
ポルトランドセメントC:中庸熱ポルトランドセメント、電気化学工業社製、商品名「デンカ中庸熱ポルトランドセメント」、ブレーン値3050cm/g、比重3.20、CaO 70%、Al4%、SiO 26%
ポルトランドセメントD:低熱ポルトランドセメント、太平洋セメント社製、商品名「低熱ポルトランドセメント」、ブレーン値3470cm/g、比重3.21、CaO 69%、Al3%、SiO 28%
ポルトランドセメントE:エコセメント、太平洋セメント社製、商品名「エコセメント」、ブレーン値4100cm/g、比重3.18、CaO 71%、Al9%、SiO 20%
ポルトランドセメントF:フライアッシュセメント、電気化学工業社製、商品名「デンカフライアッシュセメント(B種)」、ブレーン値3500cm/g、比重2.96、CaO 71%、Al5%、SiO 24%
【0045】
【表4】

【0046】
表4の結果から、本固化材は、ポルトランドセメントの種類に関わらず、ペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0047】
「実験例5」
表5に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質、アルカノールアミンを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0048】
<使用材料>
ポゾラン反応性物質ロ:シリカフューム、中国産、ブレーン値22000cm/g、比重、CaO 0%、Al 1%、SiO 99%
ポゾラン反応性物質ハ:石炭灰、石炭火力発電所産、ブレーン値4400cm/g、比重2.39、CaO 7%、Al 18%、SiO 60%
【0049】
【表5】

【0050】
表5の結果から、本固化材は、ポゾラン反応性物質の種類に関わらず、ペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0051】
「実験例6」
表6に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質、アルカノールアミンを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0052】
<使用材料>
アルカノールアミンb:トリイソプロパノールアミン、関東化学社製、試薬特級
アルカノールアミンc:エタノールアミン、関東化学社製、試薬特級
アルカノールアミンd:ジエタノールアミン、関東化学社製、試薬特級
アルカノールアミンe:N−メチルジエタノールアミン、和光化学社製、試薬
アルカノールアミンf:N,N−ジメチルエタノールアミン、和光化学社製、試薬
アルカノールアミンg:N,N−ジ−n−ブチルエタノールアミン、和光化学社製、試薬
アルカノールアミンh:N−アミノエチルエタノールアミン、和光化学社製、試薬
【0053】
【表6】

【0054】
表6の結果から、本固化材は、アルカノールアミンの種類に関わらず、ペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0055】
「実験例7」
表7に示す、ポルトランドセメント、ポゾラン反応性物質イ−a20部、及びアルカノールアミンa1部使用して固化材を調製し、減水剤の添加量(水溶液と固形分換算)を変えたこと以外は実験例1と同様に行った。強度の測定結果を表7に示す。
【0056】
<使用材料>
減水剤:市販品(ポリアルケニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体)、60%水溶液
【0057】
【表7】

【0058】
表7の結果から、本固化材は、減水剤を添加すると、添加率に比例してペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【0059】
「実験例8」
ポルトランドセメントA80部、ポゾラン反応性物質イ−a20部、及びアルカノールアミンa1部使用して固化材を調製し、鉄鉱石粉100部に対して、表8に示す量を混合したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表8に併記する。
【0060】
【表8】

【0061】
表8の結果から、本固化材を鉱石粉に適切な量を配合することで、優れたペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性が得られることが分かる。
【0062】
「実験例9」
ポルトランドセメントA80部、ポゾラン反応性物質イ−a20部、及びアルカノールアミンa1部使用して固化材を調製し、鉄鉱石粉100部に対して、調製した固化材13部を混合し、鉄鉱石粉と調製した固化材の合計に対する質量比で、表8に示す水を配合したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表9に併記する。
【0063】
【表9】

【0064】
表9の結果から、本固化材の水/(鉱石粉+本固化材)比を適切な範囲にすることによって、優れたペレットの冷間強度、熱間強度や耐磨耗性が得られることが分かる。
【0065】
「実験例10」
ポルトランドセメントA80部、ポゾラン反応性物質イ20部、及びアルカノールアミンa1部使用して固化材を調製し、鉄鉱石粉100部に対して、調製した固化材13部を混合し、鉄鉱石と調製した固化材の合計100部に対して、水15部を配合してペレットを作製した。
作製したペレットのペレタイジング後の養生方法を表10に示すとおり変えたこと以外は、実験例1と同様に行なった。結果を表10に併記する。
【0066】
<養生方法>
蒸気養生 :ペレットをペレタイジング後、2時間前置きした後、昇温15℃/分、最高温度70℃で3時間保持の条件で蒸気養生した。翌日、養生槽から取り出し、20℃環境下で13日間養生した。
オートクレーブ養生:ペレットをペレタイジング後、気圧窯へ投入し、蒸気圧10気圧、温度170℃の環境下で6時間養生した。養生後、20℃の室温環境下で14日まで養生した。
湿空養生:ペレットをペレタイジング後、湿度100%、20℃の室温環境下で14日間養生した。
加熱養生:ペレットをペレタイジング後、封かんして20℃室温環境下で1日養生し、その後、40℃の乾燥機中で13日間養生した。
【0067】
【表10】

【0068】
表10の結果から、本固化材は、養生方法に関わらず、ペレットの冷間強度、熱間強度の発現性や耐磨耗性を向上させることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の鉱石粉の熱間強度増進固化材、それを用いたペレット及びその製造方法によれば、冷間強度が従来の固化材と同等以上であり、かつ、熱間強度の発現性に優れている鉱石粉のペレットが得られるので、製鉄所、製鋼工場、及び非鉄精錬所などで発生する集じんダストのペレタイジングに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント70〜90質量部とポゾラン反応性物質10〜30質量部とを含有してなり、スラグを含まない鉱石粉の熱間強度増進固化材。
【請求項2】
ポゾラン反応性物質がフライアッシュである請求項1に記載の熱間強度増進固化材。
【請求項3】
ポゾラン反応性物質の比表面積が2500cm/g以上である請求項1又は請求項2に記載の熱間強度増進固化材。
【請求項4】
ポルトランドセメントが早強ポルトランドセメントである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間強度増進固化材。
【請求項5】
アルカノールアミンを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間強度増進固化材。
【請求項6】
アルカノールアミンの含有量がポゾラン反応性物質100質量部に対して0.1〜20質量部である請求項6に記載の熱間強度増進固化材。
【請求項7】
減水剤を含有してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉱石粉の熱間強度増進固化材。
【請求項8】
減水剤が固形分で固化材100質量部に対して0.5〜8質量部である請求項7に記載の鉱石粉の熱間強度増進固化材。
【請求項9】
減水剤が、R1O(A1O)mR2[ただし、A1Oは炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物であり、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数で20〜150である]で示されるアルケニルエーテル、及びZ[O(A2O)nR3]a[ただし、Zは2〜8の水酸基で含有する化合物の残基であり、A2Oは、炭素数2〜3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物で、2種以上のときはブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、R3は炭素数2〜5のアルケニル基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で0または1以上の数であり、aは2〜8である]で示されるポリアルケニルエーテルと、無水マレイン酸との共重合体からなる請求項7又は8に記載の鉱石粉の熱間強度増進固化材。
【請求項10】
鉱石粉、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の鉱石粉の熱間強度増進固化材、及び水を含有してなることを特徴とするペレット。
【請求項11】
固化材が鉱石粉100質量部に対して3〜20質量部である請求項10記載のペレット。
【請求項12】
水/(鉱石粉+熱間強度増進固化材)比(質量)が、0.03〜0.3である請求項10又は11のペレット。
【請求項13】
鉱石粉、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の鉱石粉の熱間強度増進固化材、及び水を混合したものをペレタイジングし、養生することを特徴とするペレットの製造方法。
【請求項14】
固化材を鉱石粉100質量部に対して3〜20質量部混合する請求項13に記載のペレットの製造方法。
【請求項15】
水/(鉱石粉+固化材)比(質量)が0.03〜0.3である請求項13又は14に記載のペレットの製造方法。