説明

銀コーティング物及び製造方法

硫酸銀を含む銀組成物、及び基材上に前記組成物をコーティングする方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年4月14日に出願された米国特許出願シリアル番号11/105,954号の一部継続出願であって、本明細書中にその全てが組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
創傷は湿潤環境においてより効果的に癒される一方で、細菌感染の危険性が増大する。細菌感染を治療するのに抗生物質を使用することで、細菌の耐性が強まる可能性がある。銀化合物は、細菌耐性の発生の危険性が最小限となるよう表面に抗菌効果を付与することで知られている。銀は、創傷床のような湿潤環境に接触している際、表面からの銀イオンの持続放出性によって表面に放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
硝酸銀及びスルファジアジン銀のような銀組成物は、様々な用途において使用される効果的な抗菌剤である。しかしながら、それらは典型的に光安定性がなく、皮膚に接触するとしみを残し、硝酸銀である場合には、水性環境では迅速に効果が減少し得る。抗菌剤としての銀塩の使用には、米国特許第2,791,518号(ストークス(Stokes))他、(アンモニア、硝酸銀及び硝酸バリウムの第1溶液;塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムの第2溶液の使用);及び米国特許第6,669,981号(パーソンズ(Parsons)他)、(水/有機溶媒中の銀塩に、続いて1つ以上の安定化剤(例えばアンモニウム塩、チオ硫酸塩、塩化物及び/又は過酸化物)を使用)に記載されるように、光安定性を向上する安定化剤の使用を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本発明は、基材上の硫酸銀のコーティング方法に関する。コーティングされた硫酸銀組成物は、容易に実現可能な保存状態の下で安定化剤の付加をせずに、色安定性がある。
【0005】
1つの態様において、本発明は抗菌物品の作製方法を提供する。この方法は、安定化剤が100ppm未満の量で組成物中に存在するという条件における、硫酸銀を含む組成物の調製;基材上の硫酸銀組成物のコーティング;及び硫酸銀組成物が初期色を顕す温度における、コーティングされた基材の乾燥;を包含し、ここで、乾燥された硫酸銀組成物には色安定性がある。
【0006】
もう1つの態様において、抗菌医薬物品が提供される。物品は、基材上にコーティングされた硫酸銀組成物を包含し、抗菌物品内に1000ppmの量で安定化剤が存在し、コーティングされた硫酸銀組成物には色安定性がある。
【0007】
もう1つの態様において、抗菌物品の作製方法は、硫酸銀及び水の組成物の調製;基材上の硫酸銀組成物のコーティング;硫酸銀組成物が初期色を顕す温度における、コーティングされた基材の乾燥;及び50%以下の相対湿度における乾燥された硫酸銀組成物の維持;を包含して提供され、ここで抗菌物品には色安定性がある。
【0008】
その他の態様において、抗菌物品の作製方法は、硫酸銀を含む組成物の調製;基材上の硫酸銀組成物のコーティング;及び硫酸銀組成物が初期色を顕す温度における、コーティングされた基材の乾燥;を包含して提供され、ここで、乾燥された硫酸銀組成物には色安定性があり、安定化剤は1000ppm未満の量で抗菌物品中に存在する。
【0009】
もう1つの態様において、銀化合物は不織布ガーゼ、織布ガーゼ、フィルム、ハイドロコロイドなどの基材上にコーティングされてよい。
本文中の、「色安定性」は、基材上にコーティングされた乾燥した硫酸銀組成物の色が、光(例えば、蛍光、自然光、紫外線)に晒されていない基材上の同一のコーティングされた組成物と比較して、長期にわたり(好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、さらにより好ましくは少なくとも48時間、及びさらにより一層好ましくは1週間)人間の目に対して色及び/又は色の均一性において著しい変化を示さないことを意味する。好ましくは、「色安定性」は、基材上にコーティングされた乾燥した硫酸銀組成物の色が、光(例えば、蛍光、自然光、紫外線)に晒されていない基材上の同一のコーティングされた組成物と比較して、長期にわたり(好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、さらにより好ましくは少なくとも48時間、及びさらにより一層好ましくは1週間)人間の目に対して目に見える変化を示さないことを意味する。
【0010】
色変化は、多くの評価尺度を使用する多くの方法で評価できる。例えば、色変化は、蛍光灯のもとで目視による順位付けによって評価できる。試料は、目視による比較をもとにして色度標準と比較され、評価が与えられる。この評価尺度における、0、1、2は白〜クリーム色を包含して「白っぽい」と分類され、3〜5は淡い黄色〜明黄色を包含して「黄色っぽい」と分類され、6〜10は赤褐色〜暗褐色と分類される。色変化は、処置後の評価から初期の評価を引くことで得られる評価の差異である。評価が正値であるということは外観において黒化を表し、評価が負値であるということは外観において明化を表している。この尺度における1以下の色変化は、色が実質的に均一であるならば容認できる。もし色が不均一である場合は、色変化が0.5であっても「著しい」及び、容認不可能な変化であると判断される。
【0011】
色変化は、ミノルタクロマメーター(Minolta Chroma Meter)(CR−300、ニュージャージー州モーウォー(Mahwah)のコニカミノルタフォトイメージングUSA株式会社(Konica Minolta Photo Imaging U.S.A., Inc.)によって製造される)など、三刺激値を使用する比色計を使用しても測定できる。この尺度における15%以下の「Y」値の色変化は、色が均一であるならば容認できる。もし色が不均一である場合は、「Y」値における色変化が5%であっても「著しい」」及び、容認不可能な変化であると判断される。
【0012】
色変化はASTMD2244に従って、比色計を使用しても測定できる。所定の時間曝露した後の試料と未曝露の試料間おけるCIELAB色差(DE*)を測定することができる。参考のみを目的とするが、約2単位のDE*又は色変化はかろうじて肉眼で検出可能であり、20以上のDE*は十分又は「著しく」、容認不可能な色変化であることを示す。
「室温」は、典型的には23℃+/−2℃である平均室温を意味する。
「相対湿度」は、所定の温度において大気を飽和する量に対する大気中に存在する水蒸気量の比率である。
【0013】
本明細書で使用する時、「a」「an」「the」「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は同じ意味で使用される。また、本明細書において端点による数の範囲の列挙の詳細説明には、その範囲内に包含されるすべての数(例えば1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)が含まれる。
【0014】
用語「含む」及びこの変形は、これらの用語が現れる説明及び請求項を制限する意図を持たない。
語句「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の環境において特定の利益を供し得る発明の実施形態を表す。しかしながら、同様又は他の環境において、他の実施形態が好まれるかもしれない。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、発明の範囲内から他の実施形態を排除する事を意図するものではない。
【0015】
本発明の上記開示は、本発明の開示された各実施形態を、またはあらゆる実施を記載しようと意図していない。以下の説明は、説明に役立つ実施形態をより詳細に例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、水性組成物中に硫酸銀を溶解し、基材上へ組成物をコーティングし、コーティングされた基材を乾燥することで硫酸銀をコーティングする方法を提供する。硫酸銀でコーティングされた基材は、アンモニア、アンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、及び炭酸アンモニウム)、チオ硫酸塩、金属の非水溶性塩(例えば塩化物のようなハロゲン化物)、過酸化物、三ケイ酸マグネシウム、及び/又はポリマー類のような典型的な安定化剤を付加することなく、光(例えば可視光、紫外線)及び熱に対する安定性を保持する。好ましくは、安定化剤として機能する任意の成分は、硫酸銀組成物の総重量に対して100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは20ppm未満の量で存在する。あるいは、安定化剤として機能する任意の成分は、基材上にコーティングされた乾燥した硫酸銀組成物を含む抗菌物質の総重量に対して、1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、最も好ましくは100ppm未満で存在する。
【0017】
得られた硫酸銀溶液を含有する溶液は、好ましくは吸収性基材にコーティングできるが、非吸収性基材であっても使用され得る。コーティングされた基材は、水及び有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、又は水混和性である他の有機溶剤)のような揮発性成分を除くために乾燥される。室温又はコーティングされた基材を加熱することで乾燥は達成できる。加熱により乾燥工程は促進される。好ましい実施形態において、コーティングされた基材は銀化合物の減少を最小限に抑え、基材として使用される際のセルロース性材料の酸化も防ぐために、190℃未満、より好ましくは170℃未満、さらにより好ましくは140℃未満の温度で乾燥される。
【0018】
さらに、被酸化性基材(綿等)の引っ張り強度は、基材上の硫酸銀組成物が低温、好ましくは140℃未満、より好ましくは100℃未満、及び最も好ましくは70℃未満で乾燥される際、最大化される。
【0019】
一度乾燥されると、基材は硫酸銀が被覆された状態を保持する。コーティングされた組成物には、典型的には主要量で硫酸銀が含有される。組成物中の銀成分の総重量に対して、好ましくは20重量%未満、及びより好ましくは10重量%未満で、低濃度の金属銀が存在してもよい。ある実施形態において、出発原料及び乾燥温度を選択することで、本質的に基材上に硫酸銀以外の残留物を残さないコーティングをもたらし、乾燥することで基材上から銀溶液の他の全成分が除去される。
【0020】
塗布される際、硫酸銀溶液は基材の内部を浸透し、含浸する。例えば、ガーゼが使用される際、銀溶液はガーゼの繊維の間に含浸する。
基材上の硫酸銀の濃度は、溶液中の硫酸銀の量、基材の単位面積に塗布される全溶液量、及び乾燥温度に依存する。基材上の硫酸銀濃度は、典型的には30mg/cm2未満であって、特定の実施形態においては5mg/cm2未満である。好ましい実施形態において、基材上の硫酸銀の濃度は、0.001mg/cm2〜5mg/cm2の範囲であり、特定の実施形態において0.001mg/cm2〜1mg/cm2の範囲である。
【0021】
基材は、天然又は合成化合物から作製される織布又は不織布材料であってよい。基材は多孔質又は無孔質材料であってよい。それは、例えば編生地、発泡体、ハイドロコロイドであってよい。
【0022】
ポリサッカライド又は変性ポリサッカライド、再生セルロース(レーヨン等)、紙、綿、商標名テンセル(TENSEL)として入手可能なもの、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース性材料が使用され得る。さらに、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、コラーゲン、ゼラチン、を使用してよい。使用してもよい非吸収性基材としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
基材に好適な他の材料としては、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンジフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、スチレン−エチレンブチレン−スチレンエラストマー、スチレン−ブチレン−スチレンエラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンエラストマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。他の基材材料は、本明細書中で以下に記載される。材料の様々な組み合わせは、基材内で包含されてよい。特定の実施形態において、基材には、セルロース性材料、ナイロン、ポリエステル繊維、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される材料が挙げられる。特定の実施形態において、基材はセルロース性材料を包含する。特定の実施形態において、セルロース性基材は綿を包含する。
【0024】
本発明の方法は、酸を使用せずに基材上にコーティングされる硫酸銀溶液を提供する。酸が存在することで、セルロース性材料は加水分解され得る。本方法のこの態様は、セルロース性基材を弱めることなくコーティングが塗布されることを可能とする。好ましくは、コーティング溶液は少なくとも4、より好ましくは少なくとも5のpHを有する。好ましくは、コーティング溶液は9以下のpHを有する。
【0025】
高温によっても銀塩によるセルロースの酸化が促進され、引っ張り強度を低下させ、基材上の硫酸銀組成物の色を変化させる影響がもたらされる。綿のようなセルロース性材料上での色変化は、セルロース性基材の酸化に伴う、銀塩から金属銀への還元によるものであるようである。酸化された綿は、低い引っ張り強さを有する。
【0026】
セルロース性基材又は他の容易に酸化される基材(例えば、硝酸銀被酸化性基材)上にコーティングされる場合、物品の色は、炉のような乾燥器における乾燥温度及び時間に比例して変化する。一般的に、硫酸銀組成物でコーティングされた基材を約100℃以下で15分間乾燥する時、色の変化は見られない。例えば、濡れた綿を約100℃を超える炉温度で乾燥する時、綿基材は炉の温度に比例して黒化し、黄色、茶色、暗褐色の順に変化する。
【0027】
ポリエステルのような容易に酸化されない合成基材が硫酸銀コーティング溶液によってコーティングされ、乾燥される際、ポリエステルは100℃を超える温度で乾燥されても白色のままである。
【0028】
一旦コーティングされると、銀組成物は色安定性(つまり、本明細書中で定義されるような光に対して安定である)を有することが好ましい。加えて、組成物は熱及び/又は水分のうち少なくとも1つに対して安定性があることも好ましい。選択した基材に関わらず、コーティングされた硫酸銀組成物は色安定性がある。乾燥後に硫酸銀溶液が顕す初期の色は、光への曝露を伴うかもしくは伴わずに、長期にわたり(好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、さらにより好ましくは少なくとも48時間、及びさらに一層より好ましくは少なくとも1週間)、目立つ変化無しに保たれる。
【0029】
コーティングされた硫酸銀組成物の色安定性は、数種の利点を提供する。色安定性は、エンドユーザーに、製品が高品質を持続するという指標になる。さらに色安定性は、その機能(つまり銀放出、抗菌活性)が本質的に長期にわたり(好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、さらにより好ましくは少なくとも48時間、及びさらに一層より好ましくは少なくとも1週間)持続することを示し、基材上の銀の形態が目立って変化しないことを示す。
【0030】
かかる組成物は、医薬物品、特に創傷包帯及び創傷湿布材料に有用であるが、幅広い種類の他の製品が硫酸銀組成物でコーティングされることが可能である。
硫酸銀にコーティングされた基材の安定性は、室温における相対湿度が50%以下;より好ましくは30%以下;及び最も好ましくは20%以下で維持される際に、延長及び/又は増加する。相対湿度は、以下に挙げるいくつかの方法によって硫酸銀でコーティングされた基材において30%以下、及び好ましくは20%以下まで削減できる。1)30%以下、好ましくは20%以下の相対湿度を有する環境下にコーティングされた基材を配置し、次に同一の環境において製品を梱包する;2)炉内でメッシュを乾燥し、ただちにメッシュを梱包する;及び3)梱包内に乾燥剤を付加する。好ましくは、乾燥した硫酸銀組成物中で低相対湿度を維持するために、物品は、PET/アルミホイル/LLDPE材料構造を有する、イリノイ州クリスタルレイク(Crystal Lake)のテクニパック社(Technipaq, Inc.)のテクニポーチ梱包(Techni-Pouch package)のような低湿気透過速度(MVTR)を有する梱包中に梱包されるべきである。低相対湿度は、硫酸銀処理された綿の熱安定性を増大する。
【0031】
硫酸銀を包含する銀化合物は、制限された溶解度及び固有の解離平衡定数に一部基づいて、長期にわたって銀イオンの持続放出性を提供する。硫酸銀組成物は、基材上にコーティングされる際に組成物が色安定性を残存するのであれば、色安定性がないものを含めて、その他の銀塩を様々な量で有してもよい。硫酸銀に加え、基材上にコーティングされ得る他の銀化合物には、酸化銀、酢酸銀、硝酸銀、塩化銀、乳酸銀、リン酸銀、ステアリン酸銀、チオシアン酸銀、サッカリン酸銀、アントラニル酸銀、及び炭酸銀が挙げられる。好ましくは、硫酸銀以外の銀化合物の量は、基材上にコーティングされる硫酸銀組成物中の銀成分の総重量パーセント(重量%)に対して、20重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。金属銀もまた基材上に存在してよい。
【0032】
色安定性が限定的である他の銀塩と共に硫酸銀を含有する場合、基材にコーティングされる硫酸銀は安定性を維持する。好ましくは、硫酸銀の量は、基材上にコーティングされる硫酸銀組成物中の銀成分の総重量パーセント(重量%)に対して、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、及び最も好ましくは少なくとも90重量%である。
【0033】
物品は、様々なコーティング方法に従って、本明細書中に記載の銀溶液を使用して調製できる。多孔質基材がコーティングされる際、使用される工程は、典型的に、組成物によってほとんどの開口に遮断を残さないで、織糸、フィラメント、又は穿孔又はミクロ孔質フィルムのようなフィルムへのコーティングを可能とする。使用される支持体の構造によって、用いられる溶液の量は広い範囲で変動する。
【0034】
硫酸銀コーティング溶液は、硫酸銀と蒸留水を混合することで調製される。硫酸銀コーティング溶液は、室温において、約0.6%までの水溶性濃度範囲を有してよい。場合によって、温水中で硫酸銀を溶解することで高濃度の硫酸銀を得ることができる。場合によって、硫酸ナトリウムのような他の形態の硫酸塩も付加してよい。
【0035】
工程は連続工程として達成することができるか、又は単一工程において又は単一コーティング溶液を用いて達成し得る。コーティング剤を塗布する工程には高温を必要とせず、70℃未満の温度で塗布できる。コーティング溶液は、基材の有害反応を最少化するために、9未満、及び好ましくは7未満のpHで維持できる。コーティング溶液は、4を超えるpHで維持できる。
【0036】
本方法の変形によると、基材は銀組成物の溶液を通過し得る。次に、硫酸銀組成物でコーティングされた基材を、例えば炉において溶液の構成成分を蒸発するのに十分な温度で乾燥する。温度は、好ましくは、190℃未満、より好ましくは170℃未満、及び最も好ましくは140℃未満である。
【0037】
硫酸銀溶液も、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、又はスプレーコーティングのような既知のコーティング技術を使用してキャリアウェブ又は支持材(以下に記載)上にコーティングできる。好ましいコーティングは、グラビアコーティングである。
【0038】
医薬物品
本発明の銀組成物は、多岐にわたる製品において使用することができるが、好ましくは医薬物品に使用される。かかる医薬物品は、創傷包帯、創傷湿布材料、又は創傷に直接又は接触して適用される他の材料の形態となり得る。他に可能性のある製品としては、衣服、寝具類、マスク、ダストクロス、靴の中敷き、おむつ、及び、毛布、外科用ドレープ及び手術着のような医療材料が挙げられる。
【0039】
銀組成物は、様々な裏材(つまり支持基材)上にコーティングされ得る。裏材又は支持基材は、多孔質又は無孔質であってよい。本発明の組成物は、例えば、支持基材上にコーティングされるか、又は支持基材に浸透されてよい。
【0040】
好適な材料は、好ましくは可撓性であって、布地、不織又は製織ポリマー性ウェブ、ポリマーフィルム、ハイドロコロイド、発泡体、金属ホイル、紙、及び/又はそれらの組み合わせであってよい。より具体的には、本発明の銀組成物を有する綿ガーゼが有用である。特定の実施形態において、透過性(例えば水蒸気に対して)であって、有孔構造(つまりスクリム)を使用するのが望ましい。特定の実施形態において、基材は、米国特許出願公開番号第2004/0180093号及び2005/0124724号に記載するような親水性ポリマー又は親水性粒子を含有する疎水性ポリマーマトリックスのようなハイドロコロイドであり得る。
【0041】
基材(つまり裏材)は、好ましくは、創傷液、水蒸気、及び空気の通過が可能な多孔質である。特定の実施形態において、基材は実質的に液体、特に創傷滲出物に対して不透過性である。特定の実施形態において、基材は液体、特に創傷滲出物を吸収することができる。特定の実施形態において、基材は、有孔液体透過性基材である。
【0042】
好適な多孔質基材には、編物、織布(例えば、チーズクロス及びガーゼ)、不織布(スパンボンドされている不織布、及びBMF(ブラウンマイクロファイバー)を包含する)、押出し多孔質シート、及び穿孔シートが挙げられる。多孔質基材における開口(つまり開口部)は、高い通気性を実現するために、寸法及び数が十分である。特定の実施形態において、多孔質基材は、1センチメートルあたり少なくとも1つの開口を有する。特定の実施形態において、多孔質基材は、1センチメートルあたり225以下の開口を有する。特定の実施形態において、開口は、少なくとも0.1ミリメートル(mm)の平均開口部寸法(つまり開口部の最大寸法)を有する。特定の実施形態において、開口は、0.5センチメートル(cm)以下の平均開口部寸法(つまり開口部の最大寸法)を有する。
【0043】
特定の実施形態において、多孔質基材は少なくとも5g/m2の坪量を有する。特定の実施形態において、多孔質基材は1000g/m2以下の坪量を有し、いくつかの実施形態において200g/m2以下の坪量を有する。
【0044】
多孔質基材(つまり裏材)は、好ましくは可撓性でありかつ引き裂きに対して抵抗性がある。特定の実施形態において、多孔質基材の厚みは少なくとも0.0125mmである。特定の実施形態において、多孔質基材の厚みは15mm以下であって、特定の実施形態においては3mm以下である。
【0045】
裏材又は支持基材の材料としては、綿、レーヨン、ウール、麻布、黄麻、ナイロン、ポリエステル類、ポリアセテート類、ポリアクリル酸類、アルギン酸塩類、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、天然ゴム、ポリエステル類、ポリイソブチレン、ポリオレフィン(例えばポリプロピレンポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、及びエチレンブチレンコポリマー)、ポリウレタン(ポリウレタン発泡体を包含する)、ポリビニルクロライド及びエチレン−ビニルアセテートを包含するビニル類、ポリアミド類、ポリスチレン類、繊維ガラス、セラミック繊維及び/又はそれらの組み合わせの様な材料で作製された紙、天然又は合成繊維、糸、及びヤーンを包含する多岐にわたる材料が挙げられる。
【0046】
裏材はまた、延伸剥離特性を有して提供され得る。延伸剥離は、物品が表面から引っぱられる際に、著しく目立つ残留物を残さずに表面から離れることで特徴付けられる接着物品の特性を指す。例えば、フィルム裏材は、エラストマー及び熱可塑性A−B−Aブロックコポリマーを包含し、低ゴム弾性率、少なくとも200%の縦方向破断伸長、及び13.8メガパスカル(MPa)(2,000psi)以下の50%ゴム弾性率を有する高伸長性及び高弾力性のエラストマー組成物から形成され得る。かかる裏材は米国特許第4,024,312号(コープマン(Korpman))に記載されている。あるいは、裏材は米国特許第5,516,581号(クラッケル(Kreckel)他)に記載のもののように伸長性が高く、実質的に回復不可能であることができる。
【0047】
特定の実施形態において、接着剤(例えば、感圧性接着剤)は溶液でコーティングされた物品に添加されてよいことは当然の事だが、本発明のコーティングされた基材は非接着性である。本明細書中で使用する時、基材にコーティングされた本発明の銀組成物は創傷組織に顕著に接着しないので、はがす際に痛み及び/又は創傷組織の破壊を引き起こさない。そして米国特許出願公開番号2005/0123590号に記載するように、1N/cm未満の鋼からの180°剥離強度を示す。
【0048】
特定の実施形態において、銀組成物でコーティングされた基材は、透過性の非接着外層によって片面又は両面にコーティングされ、創傷への接着及び付着を削減する。非接着層はコーティング又は貼合などで、基材へ接着され得る。あるいは、コーティングされた基材は、スリーブのような非接着層内に封入され得る。非接着層は、綿ガーゼ上のナイロン又はペルフルオロ化材料コーティングのような非接着性の織布又は不織布から作製され得る。非接着層は、封入された銀コーティング基材からの材料付着を防止する。同時に、非接着層はコーティングされた基材からの銀の持続放出性に悪影響を与えない。
【0049】
もう1つの実施形態において、裏材又は支持基材は非接着材料によって構成され得る。例えば、米国特許公開番号2004/0180093号、2005/0123590号、及び2005/0124724号に記載するように、非接着親水性ポリマーは、裏材又は支持材料として又は透過性の多孔質基材上にコーティングされて使用することができる。
【0050】
所望であれば、コーティングされた基材は2つの保護被膜(たとえば、ポリエステル薄膜)によってコーティングできる。これらの被膜は、場合により、粘着防止処理を包含し、物品の梱包及び扱いの際に取り出すのを容易にできるように機能する。所望であれば、コーティングされた基材は、使用に好適な寸法に個別に圧縮切断され、密封袋に梱包され、滅菌され得る。
【0051】
医薬物品に使用される感圧性接着剤は、本発明の物品が使用できる。つまり、感圧性接着剤材料は、本発明の物品に適用でき、例えば、物品を皮膚に接着するために、周辺に塗布される。
【実施例】
【0052】
実施例
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によってさらに例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。指示がない限り、全ての部数及びパーセントは重量基準であり、水は全て蒸留水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1
ガラス瓶に0.867グラム(g又はgm)の硫酸銀及び200gの蒸留水を入れ、瓶にふたをして、室温においてローラー上で一晩攪拌することで、硫酸銀コーティング溶液を調製した。pH試験紙を使用して、本溶液のpHを5.1と測定した。得られた硫酸銀(3000マイクログラム(μg)Ag/g)溶液を、ポリスチレンディッシュに包蔵されるメッシュに染み込むようにピペットで溶液を移すことで100%綿スパンレース不織布メッシュ(コットエース(COTTOASE)、20ppm未満の塩化物を含有)上にコーティングした。不織布メッシュは、重さが0.65g、10.19cm×12.7cm(4インチ×5インチ)のメッシュ片上で5.5gの溶液で処理した。メッシュを乾燥のために炉内につるす前に、メッシュから約1グラムのコーティング溶液を滴下させた。炉内でメッシュから幾らかの追加の溶液を滴下させた(推定1g)。コーティングされたメッシュを強制空気循環炉(ウィスコンシン州イーストトロイ(East Troy)のウィスコンシンオーブンカンパニー(Wisconsin Oven Company)から入手可能な(メマートユニバーサルオーブン(Memmert Universal Oven)))内で、66℃で15分間加熱して乾燥した。実施例1で得られたものは、白色を顕す材料であった。色及び曝露における色変化を表1に記した。
【0055】
比較例A及びB
比較例Aを得るため実施例1に従って、酢酸銀(3000μg Ag/g)溶液を調製し、100%綿スパンレース不織布メッシュ(コットエース(COTTOASE))上にコーティング及び乾燥した。pH試験紙を使用し、この酢酸銀溶液は5.2のpHを有すると測定した。色及び曝露における色変化を表1に記した。比較例Bを得るため実施例1に従って、乳酸銀(3000μg Ag/g)溶液を調製し、100%綿スパンレース不織布メッシュ(コットエース(COTTOASE))上にコーティング及び乾燥した。pH試験紙を使用し、この乳酸銀溶液は5.3のpHを有すると測定した。色及び曝露における色変化を表1に記した。実施例1及び比較例A及びBの試料を20%の一定湿度の部屋及び同様に50%一定湿度の部屋(双方共に23℃)に置き、室内蛍光灯に曝露した。曝露前後の視覚的な色を記し、結果を表1に提示した。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例2
不織布スパンレースPET(デュポンソンタラ(Dupont SONTARA)8010;平方メートルあたり45グラム(gsm))をイソプロパノールでコーティングすることで処理した。蒸留水による洗浄でイソプロパノールを除き、得られたPET不織布を硫酸銀溶液でコーティングした。0.6重量%のAg2SO4を作製するために、十分量のAg2SO4を溶解する以外は実施例1と同様にして硫酸銀を調製し、試料を180℃で20分間乾燥した。PETで処理して得られた硫酸銀は白色であり、室温において20%RH又は50%RHのもと、室内蛍光灯下で2週間後に色の変化はなかった。
【0058】
実施例3
不織布スパンレース100%綿(スパンテック(Spuntech)にて製造;700ppmの塩化物イオンを含有)を実施例2と同様にして調製された硫酸銀(0.6重量%Ag2SO4)溶液でコーティングし、60℃で15分間乾燥した。最初、材料は白色であった。室内蛍光灯下で50%RHのもと、4日で黒化した。
【0059】
実施例4
140℃で約15分間乾燥する以外は実施例1と同様にして、実施例4を調製した。
実施例5
硫酸塩/硫酸ナトリウムコーティング溶液(3000μg Ag/g)を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例5を調製した。0.34gのNa2SO4をコーティング溶液に加え、実施例1に記載するのと同様にしてコーティング溶液を調製した。pH試験紙を使用し、この溶液は5.3のpHを有すると測定決定した。綿不織布(コットエース(COTTOASE))にコーティングし、140℃で約15分間乾燥した。
【0060】
実施例4及び実施例5の乾燥した試料を、濡れた紙タオル(100%RH)の入った瓶の中に入れ、他の試料を所定の湿度(20%RH又は50%RH)で平衡化し、次に、色安定性に対する水の影響を評価するために、低MVTRヒートシール可能なホイル梱包にてパッケージ化した。色は、初期試料と一週間経った後の試料とを視覚によって比較することで評価した。
【0061】
【表3】

【0062】
実施例6
コーティング溶液が硝酸銀及び硫酸銀の混合物を含有する以外は、実施例1に概説される手順を使用して、実施例6を作製した。90gの硫酸銀水溶液(3000μg Ag/g)及び10gの硝酸銀水溶液(3000μg Ag/g)を混合してコーティング溶液を作製した。pH試験紙を使用し、この酢酸銀溶液は5.3のpHを有すると測定した。この硫酸銀/硝酸銀コーティング溶液を綿不織布(コットエース(COTTOASE)にコーティングし、次に、60℃で15分間乾燥した。乾燥したメッシュは白色で、20%RH及び50%RHで24時間を超えて色安定性(室内蛍光灯及び室温)があった。
【0063】
実施例7〜10
実施例7〜10を実施例1と同様にして作製した。硫酸銀コーティング溶液を0.867gの硫酸銀及び200gの蒸留水を混合することで作製した。実施例7〜10を作製するために、表3に示すように、この溶液を綿不織布(コットエース(COTTOASE))にコーティングし、室温にて乾燥した。
【0064】
実施例11〜14
硫酸塩/硫酸ナトリウムコーティング溶液(3000μg Ag/g)を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例11〜14を作製した。0.867gの硫酸銀、0.34gのNa2SO4、及び200gの蒸留水を混合することで溶液を作製した。実施例11〜14を作製するために、表3に示すように、この溶液を綿不織布(コットエース(COTTOASE))にコーティングし、室温にて乾燥した。
【0065】
綿を水(対照)、硫酸銀溶液(3000μg Ag/g、実施例7〜10)、又は硫酸銀/硫酸ナトリウム溶液(3000μg Ag/g、実施例11〜14)で処理し、炉内で3に示す所定の温度で15分間乾燥した際の引っ張り強度(横断方向)及び色に対する、綿不織布(コットエース(COTTOASE))の乾燥温度の影響を測定した。トゥイングアルバート試験機(Thwing Albert tester)(EJA/2000型、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia)のトゥイングアルバート社(Thwing Albert Company))を使用し、試料幅2.54cm、標点距離10.16cm、及びクロスヘッド速度12.7cm/分として、引っ張り強度をASTM試験方法第D3759−83に従って測定した。報告されているのは、破断の時点で引っ張り強度値を得るために試験試料にかけられた最大の力を試料の幅で割ったものである。単位は力(N)/試料幅(cm)である。破断における引張り強度は、各実施例において横方向で9回実行された。表における結果は、平均値であり括弧内は標準偏差である。
【0066】
【表4】

【0067】
引っ張り平均(標準偏差、SD);n=9;未処理対照の引っ張りは3.87(0.44)N/cmであった。
nr−未試験試料
乾燥温度が高いと、銀メッシュの引っ張り強度及び色に影響する。硫酸銀の添加によって、引っ張り強度の悪化を減じる。
【0068】
実施例15
硫酸銀(0.6重量%のAg2SO4)でコーティングした綿不織布(コットエース(COTTOASE))を使用して実施例15を調製し、125℃で約25分乾燥した。得られた色は淡黄色であった。銀処理した綿を約20%RHのもとで蛍光灯下で、色変化せずに2週間曝露した。銀イオン選択性電極((オリオン(Orion)、イリノイ州バテービア(Batavia)のVWRインターナショナル(VWR International)から入手可能)を使用して、銀イオン放出を測定した。実施例15における30mgの銀イオン/グラムの銀放出は、蒸留水中に試料を入れた後2分以内で測定した。
【0069】
実施例16
ガラス瓶に0.1445gの硫酸銀及び200gの蒸留水を入れ、瓶にふたをして、室温においてシェイカー内で一晩攪拌することで、硫酸銀コーティング溶液を調製した。得られた硫酸銀(約500μg)Ag/g)溶液を、ポリスチレンディッシュに含有されるメッシュに染み込むようにピペットで溶液を移すことで100%綿スパンレース不織布メッシュ(コットエース(COTTOASE)、20ppm未満の塩化物を含有)上にコーティングした。各不織布メッシュ片(50gsm)を、10cm×10cm(4インチ×4インチ)のメッシュ片を5gの溶液で処理した。メッシュを乾燥のために炉内につるす前に、メッシュから約1グラムのコーティング溶液を滴下させた。炉内でメッシュから幾らかの追加の溶液を滴下させた(推定1g)。コーティングされたメッシュを強制空気循環炉(ウィスコンシン州イーストトロイ(East Troy)のウィスコンシンオーブン社(Wisconsin Oven Company)から入手可能な(メマートユニバーサルオーブン(Memmert Universal Oven))内で、66℃で12分間加熱して乾燥した。乾燥後、得られた材料は外観において白色であった。これらのコーティングされた試料をアルミホイル(光から保護する)で包み、約20%相対湿度の環境下で蛍光灯(フィリップス(Philips)、F32T8/TL735、ユニバーサル/ハイビジョン、E4)に曝露するか、又は、50%相対湿度の環境下で蛍光灯(フィリップス(Philips)、F32T8/TL735、ユニバーサル/ハイビジョン、K4)に曝露するかを行った。ミノルタクロマメーター(Minolta Chroma Meter)(CR−300、ニュージャージー州モーウォー(Mahwah)のコニカミノルタフォトイメージングUSA株式会社(Konica Minolta Photo Imaging U.S.A., Inc.)によって製造される)を使用して、これらの試料の色CIE三刺激値を経時的に測定した。結果を表4に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
比較例C−未コーティング基材
実施例16に使用された未コーティング綿基材の経時的な色CIE三刺激値も測定した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。結果は表5に記される。
【0072】
【表6】

【0073】
比較例D
実施例16で示されるような光曝露条件へ曝露している間に、商業的に入手可能な創傷包帯の経時的な色CIE三刺激値も測定した。この商業的に入手可能な創傷包帯(アクアセル(Aquacel)Ag、ロット5F05519;コンバテック(ConvaTec))は、安定化剤として機能する高濃度の塩化物を有する塩化銀/アルギン酸銀を含有し、初期色がオフホワイトであった。光への曝露の間、試料の色は著しい灰色になった。これらの実験結果を表6に示す。
【0074】
【表7】

【0075】
比較例Dから得られた試料を、銀イオン選択性電極(オリオン(Orion)、イリノイ州バテービア(Batavia)のVWRインターナショナル(VWR International)から入手可能)を使用して銀放出を測定した。曝露された比較例Dからの試料及び曝露されていないいくつかを測定し、双方ともに30分間で0.07mgの銀イオン/試料のグラム未満の放出度合いを有していた。
【0076】
実施例17
ガラス瓶に0.289gの硫酸銀及び200gの蒸留水を入れて硫酸銀溶液を調製する以外は、実施例16と同様の方法で試料を調製した。得られた硫酸銀溶液は約1000μg Ag/gであった。この試料の色は白色であった。実施例16に記載されたように、同じ基材上でこのコーティング溶液を使用して色測定から得られた結果を表7に示す。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0077】
【表8】

【0078】
銀イオン選択性電極(オリオン(Orion)、イリノイ州バテービア(Batavia)のVWRインターナショナル(VWR International)から入手可能)を使用して、20%相対湿度に保存された実施例17の試料の蒸留水及び硝酸ナトリウムの溶液への銀放出を測定した。イオン強度調整剤として硝酸ナトリウムを使用した。約20%相対湿度のもとで120時間光に曝露された実施例17の試料(0.1102g)は、98gの蒸留水及び2.96gの5M硝酸ナトリウム中に30分入れられた間に、試料1グラム当たり4.5mgの銀イオンを放出した。光に曝露されない(ホイル内で120時間)実施例17の試料(0.1328g)は、98gの蒸留水及び2.96gの5M硝酸ナトリウム中に30分入れられた間に、試料1グラム当たり5.5mgの銀イオンを放出した。
【0079】
実施例18
ガラス瓶に0.578gの硫酸銀及び200gの蒸留水を入れて硫酸銀溶液を調製する以外は、実施例16と同様の方法で試料を調製した。得られた硫酸銀溶液は約2000μg Ag/gであった。実施例16に記載されるように、同じ基材上でこのコーティング溶液を使用して色監視実験から得られた結果を表8に示す。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。試料の初期色は、外観上白色であった。
【0080】
【表9】

【0081】
実施例19
ガラス瓶に0.867gの硫酸銀及び200gの蒸留水を入れて硫酸銀溶液を調製する以外は、実施例16と同様の方法で試料を調製した。得られた硫酸銀溶液は約3000μg Ag/gであった。試料の色は、外観上白色であった。このコーティング溶液を使用する色監視実験を表9に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0082】
【表10】

【0083】
実施例20
ガラス瓶に1.156gの硫酸銀及び200gの蒸留水を入れて硫酸銀溶液を調製する以外は、実施例16と同様の方法で試料を調製した。得られた硫酸銀溶液は約4000μg Ag/gであった。試料の色は、外観上白色であった。このコーティング溶液を使用する色監視実験を表10に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0084】
【表11】

【0085】
実施例21
乾燥温度が170℃である以外は、実施例16と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は黄色であった。色監視実験の結果を表11に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0086】
【表12】

【0087】
実施例22
乾燥温度が170℃である以外は、実施例17と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は明黄色であった。色監視実験の結果を表12に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0088】
【表13】

【0089】
銀イオン選択性電極(オリオン(Orion)、イリノイ州バテービア(Batavia)のVWRインターナショナル(VWR International)から入手可能)を使用して、20%相対湿度に保存された実施例22から得られた試料の蒸留水及び硝酸ナトリウムの溶液への銀放出を測定した。約20%相対湿度のもとで120時間光に曝露された実施例22の試料(0.0962g)は、98gの蒸留水及び2.96gの5M硝酸ナトリウム中に30分入れられた間に、試料1グラム当たり4.9mgの銀イオンを放出した。光に曝露されない(ホイル内で120時間)実施例22の試料(0.0954g)は、98gの蒸留水及び2.96gの5M硝酸ナトリウム中に30分入れられた間に、試料1グラム当たり4.6mgの銀イオンを放出した。
【0090】
実施例23
乾燥温度が170℃である以外は、実施例19と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は明黄色であった。色監視実験の結果を表13に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0091】
【表14】

【0092】
実施例24
乾燥温度が170℃である以外は、実施例20と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は明黄色であった。色監視実験の結果を表14に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0093】
【表15】

【0094】
実施例25
基材が、40ppm未満の塩化物を含有する、ウィスコンシン州グリーンベイ(Green Bay)のグリーン・ベイ・ノンウーヴンズ社(Green Bay Nonwovens)からのテンセル(TENCEL)/PET、70/30テンセル(Tencel)/ポリエステル24メッシュ孔スパンレース不織布(グレードSX−524、38g/m2、白色)であり、乾燥温度が170℃である以外は、実施例17と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は明黄色であった。色監視実験の結果を表15に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0095】
【表16】

【0096】
銀イオン選択性電極(オリオン(Orion)、イリノイ州バテービア(Batavia)のVWRインターナショナル(VWR International)から入手可能)を使用して、20%相対湿度に保存された実施例25から得られた試料の蒸留水及び硝酸ナトリウムの溶液への銀放出を測定した。約20%相対湿度のもとで120時間光に曝露された実施例25の試料(0.0992g)は、98gの蒸留水及び2.96gの5M硝酸ナトリウム中に30分入れられた間に、試料1グラム当たり4.9mgの銀イオンを放出した。光に曝露されない(ホイル内で120時間)実施例22の試料(0.0949g)は、98gの蒸留水及び2.96gの5M硝酸ナトリウム中に30分入れられた間に、試料1グラム当たり4.7mgの銀イオンを放出した。
【0097】
実施例26
基材が、日本のサンテックユニオン(Suntec Union)(日清紡績株式会社、AN20601050、60g/m2)からの100%綿不織布片(11.11cm×11.11cm(4.375インチ×4.375インチ))であり、乾燥温度が170℃であり、試料をホイル袋に入れた以外は、実施例17と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は明黄色であった。色監視実験の結果を表16に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0098】
【表17】

【0099】
実施例27
基材が、40ppm未満の塩化物を含有するウィスコンシン州グリーンベイ(Green Bay)のグリーン・ベイ・ノンウーヴンズ社(Green Bay Nonwovens)からの100%テンセル繊維の不織布であるテンセル(TENCEL)である以外、実施例23と同様の方法で試料を調製した。得られた材料は明黄色であった。色監視実験の結果を表17に示した。曝露条件は、実施例16に示すとおりである。
【0100】
【表18】

【0101】
本発明の範囲および趣旨を逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当分野の技術者には明らかとなるであろう。当然のことながら、本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではない、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において上述した特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌物品の作製方法であって、
安定化剤が100ppm未満の量で組成物中に存在するという条件において、硫酸銀を含む組成物を調製すること;
基材上に前記硫酸銀組成物をコーティングすること;及び
前記硫酸銀組成物が初期色を顕す温度において、前記コーティングされた基材を乾燥すること
を含み、ここで、前記乾燥された硫酸銀組成物に色安定性がある前記作製方法。
【請求項2】
前記安定化剤が50ppm未満の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定化剤が20ppm未満の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗菌物品が室温において50%RH以下の環境で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗菌物品が室温において20%RH以下の環境で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記硫酸銀組成物が、硫酸銀以外の銀組成物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記銀化合物が、酸化銀、硝酸銀、酢酸銀、クエン酸銀、塩化銀、乳酸銀、リン酸銀、ステアリン酸銀、チオシアン酸銀、炭酸銀、サッカリン酸銀、アントラニル酸銀及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属銀をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記銀化合物が、前記組成物の銀成分の総重量に対して、20重量%未満の組成物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記硫酸銀は、前記組成物の銀成分の総重量に対して、組成物の少なくとも60重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記硫酸銀は、組成物の銀成分の総重量に対して、組成物の少なくとも90重量%の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング溶液のpHが少なくとも4である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング溶液のpHが9以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記硫酸銀組成物が、本質的にいずれの酸も含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記初期色が、白色、黄色、金色、黄褐色、及び茶色からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が190℃未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記温度が170℃未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が140℃未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記温度が70℃未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が不織布ガーゼ、織布ガーゼ、フィルム、又はハイドロコロイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基材が、セルロース性材料、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンジフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、スチレン−エチレンブチレン−スチレンエラストマー、スチレン−ブチレン−スチレンエラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンエラストマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基材がセルロース性材料を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記セルロース性基材が綿を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
基材上にコーティングされた硫酸銀組成物を含む抗菌医薬物品であって、前記抗菌物品内に1000ppm未満の量で安定化剤が存在し、コーティングされた硫酸銀組成物は色安定性がある前記抗菌性医薬物品。
【請求項25】
前記安定化剤が500ppm未満の量で存在する、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記安定化剤が100ppm未満の量で存在する、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記抗菌物品が室温において50%RH以下の環境で維持される、請求項24に記載の物品。
【請求項28】
前記抗菌物品が室温において20%RH以下の環境で維持される、請求項24に記載の物品。
【請求項29】
前記硫酸銀組成物が、硫酸銀以外の銀化合物をさらに含む、請求項24に記載の物品。
【請求項30】
前記銀化合物が、酸化銀、硝酸銀、酢酸銀、塩化銀、乳酸銀、リン酸銀、ステアリン酸銀、チオシアン酸銀、炭酸銀、サッカリン酸銀、アントラニル酸銀及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記銀化合物が、前記組成物の銀成分の総重量に対して、20重量%未満の組成物を含む、請求項29に記載の物品。
【請求項32】
前記硫酸銀は、前記組成物の銀成分の総重量に対して、組成物の少なくとも90重量%の量で組成物中に存在する、請求項29に記載の物品。
【請求項33】
金属銀をさらに含む、請求項29に記載の物品。
【請求項34】
前記硫酸銀組成物が、白色、黄色、黄褐色、及び茶色から成る群から選択される初期色を有する、請求項29に記載の物品。
【請求項35】
前記基材が不織布ガーゼ、織布ガーゼ、フィルム、又はハイドロコロイドである、請求項29に記載の物品。
【請求項36】
前記基材が、セルロース性材料、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンジフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、スチレン−エチレンブチレン−スチレンエラストマー、スチレン−ブチレン−スチレンエラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンエラストマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含む、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
前記基材がセルロース性材料を含む、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記セルロース性基材が綿を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗菌物品の作製方法であって、
硫酸銀及び水の組成物を調製すること;
基材上に前記硫酸銀組成物をコーティングすること;
前記硫酸銀組成物が初期色を顕す温度において、前記コーティングされた基材を乾燥すること;及び
50%以下の相対湿度において、前記乾燥された硫酸銀組成物を維持すること
を含み、ここで、前記抗菌物品に色安定性がある前記作製方法。
【請求項40】
抗菌物品の作製方法であって、
硫酸銀を含む組成物を調製すること;
基材上に前記硫酸銀組成物をコーティングすること;及び
前記硫酸銀組成物が初期色を顕すために、ある温度でコーティングした前記基材を乾燥すること
を含み、ここで、前記乾燥した硫酸銀組成物に色安定性があり、及び安定化剤が1000ppm未満の量で前記抗菌物品内に存在する前記作製方法。
【請求項41】
前記安定化剤が500ppm未満の量で存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記安定化剤が100ppm未満の量で存在する、請求項41に記載の方法。

【公表番号】特表2008−537986(P2008−537986A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506482(P2008−506482)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/010977
【国際公開番号】WO2006/113052
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】