説明

銀ナノ粒子を製造するプロセス

【課題】電子機器の電気伝導性要素を製作するのに適した、液体処理可能な、安定な銀含有ナノ粒子組成物を調製する低コストの製造方法を提供する。
【解決手段】銀塩、有機アミン、第1の溶媒および第2の溶媒を含む第1の混合物を入れることと;第1の混合物と還元剤溶液とを反応させ、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を作成することとを含む、銀ナノ粒子を製造するプロセス。第1の溶媒の極性指数は3.0未満であり、第2の溶媒の極性指数は3.0より大きい。このナノ粒子は、第1の溶媒への分散性または可溶性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、均一で安定な銀ナノ粒子を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
液相成長技術を用いて電子回路要素を製作することは、この技術が、従来の主要なアモルファスシリコン技術と比べ、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED)、RFIDタグ、光電池などのエレクトロニクス用途に潜在的に低コストの代替技術を与えるため、有益であろう。しかし、実際の用途で必要な導電性、処理および費用の要求事項を満たす機能性電極、ピクセルパッドおよび導電性トレース、配線およびトラックの液相成長法および/またはパターニングには、大きな問題がある。銀(Ag)金属は、電子機器用導電性要素として特に興味深い。なぜなら、銀は、金(Au)よりもかなり安く、銅(Cu)よりもかなり優れた環境安定性をもつからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
銀ナノ粒子を製造する従来法では、過剰量の安定化剤を使用していた。それに加え、得られた生成物は、典型的には不規則であり、不安定であった。その結果、この生成物は、粒子が凝集し、貯蔵寿命が短かった。
【0004】
したがって、電子機器の電気伝導性要素を製作するのに適した、液体処理可能な、安定な銀含有ナノ粒子組成物を調製する低コスト法が必須であり、本開示の実施形態によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
種々の実施形態では、銀ナノ粒子を製造するプロセスが開示されている。このプロセスは、溶媒2種類の混合物の使用を含む。銀ナノ粒子は、通常は、第1の溶媒に分散性であるが、第2の溶媒には分散しない。
【0006】
いくつかの実施形態では、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を製造するプロセスが開示されている。銀塩、有機アミン、第1の有機溶媒および第2の有機溶媒を含む第1の混合物が入れられる。この第1の混合物を還元剤と反応させ、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を作成する。還元剤は、第1の溶媒、第2の溶媒、またはこれらの混合物で希釈することができる。第1の溶媒は、極性指数が3.0以下であり、第2の溶媒は、極性指数が3.0より大きい。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子は、第2の溶媒よりも第1の溶媒に分散しやすい。
【0007】
ある実施形態では、第1の溶媒は、極性指数が2.5以下であり、第2の溶媒は、極性指数が3.5以上である。他の実施形態では、第1の溶媒と第2の溶媒の極性指数の差は、少なくとも2.0である。
【0008】
第1の溶媒は、デカリン、トルエン、キシレン、ビシクロヘキシル、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭化水素であってもよい。第2の溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。ある特定の実施形態では、第1の溶媒がデカリンであり、第2の溶媒がメタノールである。
【0009】
第1の混合物中、第2の溶媒に対する第1の溶媒の容積比は、約1:1〜約10:1であってもよい。
【0010】
有機アミンは、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジヘプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、1,2−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、およびN,N,N’,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミンなど、またはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0011】
この反応は、約−30℃〜約65℃の温度で起こってもよい(約40℃の温度を含む)。
【0012】
還元剤は、ヒドラジン化合物であってもよい。ヒドラジン化合物は、構造
N−NR
を有していてもよく、式中、R、R、RおよびRは、独立して、水素、アルキルおよびアリールから選択される。
【0013】
第1の混合物中、銀塩に対する有機アミンのモル比は、約1:1〜約10:1であってもよい。より特定的には、銀塩に対する有機アミンのモル比は、約1:1〜約5:1であってもよい。
【0014】
銀塩は、酢酸銀、硝酸銀、酸化銀、銀アセチルアセトナート、安息香酸銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、クエン酸銀、フッ化銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、亜硝酸銀、過塩素酸銀、リン酸銀、硫酸銀、硫化銀、およびトリフルオロ酢酸銀からなる群から選択されてもよい。
【0015】
有機アミンで安定化された銀ナノ粒子の粒径の標準偏差は、約3nm未満であってもよい。より特定的には、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子の粒径の標準偏差は、約2.5nm未満であってもよい。
【0016】
また、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を製造するプロセスが開示されている。銀塩、有機アミン、第1の有機溶媒および第2の有機溶媒を含む出発物質の混合物を入れる。第1の溶媒は、極性指数が3.0以下であり、第2の溶媒は、極性指数が3.0より大きい。この出発物質の混合物中の第2の溶媒は、第2の溶媒のみで希釈した還元剤、または第1の溶媒および第2の溶媒の混合物で希釈した還元剤を加えている間に入れてもよい。出発物質の混合物に還元剤を加え、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を生成する反応混合物を作成する。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子は、第2の溶媒をさらに加えて最終混合物を作成することによって沈殿する。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子は、第2の溶媒よりも第1の溶媒に分散しやすい。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子の粒径の標準偏差は、約3nm未満であってもよい。より特定的には、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子の粒径の標準偏差は、約2.5nm未満であってもよい。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子は、平均粒径が約7〜約10nmであってもよい。
【0017】
さらに、導電性要素を製造するプロセスが開示されている。このプロセスは、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を含む組成物を約60℃〜約140℃の温度でアニーリングすることを含む。より特定的には、アニーリング温度は、約60℃〜80℃であってもよい。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子は、本明細書および上に開示した方法によって製造される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本開示にしたがって製作された薄膜トランジスタの第1の実施形態をあらわす。
【図2】図2は、本開示にしたがって製作された薄膜トランジスタの第2の実施形態をあらわす。
【図3】図3は、本開示にしたがって製作された薄膜トランジスタの第3の実施形態をあらわす。
【図4】図4は、本開示にしたがって製作された薄膜トランジスタの第4の実施形態をあらわす。
【図5】図5は、本開示の例示的なプロセスによって製造される組成物を用いて印刷した線の画像である。
【図6A】図6Aは、本開示の例示的なプロセスによって製造される銀ナノ粒子のTEM画像である。
【図6B】図6Bは、従来の既知プロセスによって製造される銀ナノ粒子のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示されている構成要素、プロセス、装置のもっと完全な理解は、添付の図面を参照することによって得られるだろう。これらの図は、簡便のため、また本開示を示しやすくすることに基づく単なる模式図であり、したがって、機器またはその構成要素の相対寸法および大きさを示すこと、および/または、例示的な実施形態の範囲を定義または限定することを意図していない。
【0020】
明確性のために、以下の記載で専門用語を使用するが、この用語は、図面で説明するために選択される実施形態の特定の構造のみを指すことを意図するものではなく、本開示の範囲を定義または限定することを意図するものでもない。図面および以下の記載において、同じ数字の記載は、同様の機能を有する構成要素を指すと理解されるべきである。
【0021】
用語「ナノ」は、「銀ナノ粒子」で使用される場合、粒径が約1000nm未満であることを示す。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、粒径が約0.5nm〜約1000nm、約1nm〜約500nm、約1nm〜約100nm、特に、約1nm〜約20nmである。粒径は、本明細書では、TEM(透過型電子顕微鏡)で決定した場合の銀ナノ粒子の平均径であると定義される。
【0022】
ある量と組み合わせて用いられる修飾語句「約」は、述べられている値を含み、その内容によって示されている意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。ある範囲に関して用いられる場合、修飾語句「約」は、2つの終点値の絶対値によって定義される範囲も開示しているものと考えるべきである。例えば、「約2〜約4」の範囲は、「2〜4」の範囲も開示している。
【0023】
本開示は、銀ナノ粒子を作成するプロセスに関する。一般的に、銀塩、有機アミン、第1の有機溶媒および第2の有機溶媒を含む第1または出発物質の混合物が作られる。第1の混合物を還元剤と反応させ、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を作成する。有機アミンで安定化された銀ナノ粒子は、第2の溶媒よりも第1の溶媒に分散しやすい。得られたナノ粒子は、粒径の標準偏差が小さいことからわかるように、粒径の均一さが高まっている。それに加え、ナノ粒子を低温でアニーリングし、導電性が良好な導電性要素を作成することができる。
【0024】
例示的な銀塩としては、酢酸銀、硝酸銀、酸化銀、銀アセチルアセトナート、安息香酸銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、クエン酸銀、フッ化銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、亜硝酸銀、過塩素酸銀、リン酸銀、硫酸銀、硫化銀およびトリフルオロ酢酸銀が挙げられる。銀塩粒子は、望ましくは、溶液中で均一に分散させるために微細であり、これによって、効率よく反応する。
【0025】
いくつかの実施形態では、得られた銀ナノ粒子は、元素状の銀または銀コンポジットで構成される。この場合、銀コンポジットは、銀以外に、(i)1つ以上の他の金属、(ii)1つ以上の非金属のうちいずれか、または両方を含んでいてもよい。適切な他の金属としては、例えば、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In,およびNiが挙げられ、特に、遷移金属、例えば、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Ni、およびこれらの混合物が挙げられる。例示的な金属コンポジットは、Au−Ag、Ag−Cu、Au−Ag−CuおよびAu−Ag−Pdである。金属コンポジットに適切な非金属としては、例えば、Si、CおよびGeが挙げられる。銀コンポジットの種々の構成要素は、例えば、約0.01重量%〜約99.9重量%、特に、約10重量%〜約90重量%の範囲の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、銀コンポジットは、銀と、1種類、2種類またはそれ以上の他の金属とで構成される金属アロイであり、銀は、例えば、少なくとも約20重量%のナノ粒子、特に、約50重量%より多いナノ粒子を含み、約50重量%〜約95重量%、好ましくは、約60重量%〜約95重量%、または約70重量%〜約95重量%の範囲を含む。含有量は、任意の適切な方法によって分析することができる。例えば、銀含有量は、TGA分析または灰分法から得ることができる。この場合、第1の混合物は、所望な場合、銀コンポジットを作成するのに必要な他の金属塩も含んでいてもよい。
【0026】
有機アミンは、ナノ粒子の安定化剤として作用し、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンであってもよい。例示的な有機アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジヘプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、プロピルブチルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、プロピルペンチルアミン、ブチルペンチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、1,2−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン,およびN,N,N’,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミンなど、またはこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、銀ナノ粒子は、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミンまたはヘキサデシルアミンで安定化される。
【0027】
還元剤は、特定の実施形態では、ヒドラジン化合物である。ヒドラジン化合物は、以下の式
N−NR
を有していてもよく、式中、R、R、R,およびRは、独立して、水素、アルキルおよびアリールから選択される。より特定的な実施形態では、ヒドラジン化合物は、式RN−NHを有し、RおよびRのうち、少なくとも1つは水素ではない。例示的なヒドラジン化合物としては、フェニルヒドラジンが挙げられる。
【0028】
第1または出発物質の混合物で使用される第1の有機溶媒は、第2の有機溶媒よりも極性が低い。この第1の溶媒は、反応プロセス中に生成する不安定な状態または安定な状態の金属ナノ粒子の分散を促進することができる。いくつかの実施形態では、第1の有機溶媒の極性指数(PI)は、3.0以下である。極性指数は、溶質と溶媒との間の分子間引力の指標であり、ヒルデブランド溶解度パラメータとは異なり、このパラメータと相関はない。
【0029】
第1の有機溶媒は、炭素原子を約6〜約28個含む炭化水素であってもよく、置換または非置換であってもよく、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素であってもよい。全ての炭化水素の極性指数が3.0以下であるとはかぎらないことを注記しておくべきである。例示的な炭化水素としては、脂肪族炭化水素、例えば、ヘプタン(PI=0.0)、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、イソパラフィン系炭化水素、例えば、イソデカン、イソドデカン、および市販のイソパラフィン混合物、例えば、ISOPAR E、ISOPAR G、ISOPAR H、ISOPAR LおよびISOPAR M(上述のものはすべてExxon Chemical Companyによって製造された)など;環状脂肪族炭化水素、例えば、ビシクロプロピル、ビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、シクロペンチルシクロヘキサン、スピロ[2,2]ヘプタン、ビシクロ[4,2,0]オクタンヒドロインダン、デカヒドロナフタレン(すなわち、ビシクロ[4.4.0]デカンまたはデカリン)など;芳香族炭化水素、例えば、トルエン(PI=2.3−2.4)、ベンゼン(PI=2.7−3)、クロロベンゼン(PI=2.7)、o−ジクロロベンゼン(PI=2.7)、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0030】
特定の実施形態では、第1の有機溶媒は、トルエン、キシレン、デカリン、ビシクロヘキシル、およびこれらの混合物からなる群から選択される炭化水素である。トルエンは、極性指数が2.3〜2.4であり、キシレンは、極性指数が2.4〜2.5である。デカリンおよびビシクロヘキシルは、極性指数が0.2〜0.5であると概算される。より特定的な実施形態では、第1の有機溶媒は、デカリンであり(デカヒドロナフタレンとしても知られている)、式C1018を有する。第1の溶媒は、互いに可溶性であり、また、以下に記載する性質を有する1種類、2種類、3種類またはそれ以上の溶媒の混合物であってもよい。このような混合物では、各溶媒は、任意の適切な容積比または質量比で存在していてもよい。この観点で、用語「混和性」は、典型的には、2種類の液体があらゆる比率で可溶性であることを指し、第1の溶媒として使用可能な種々の溶媒を必要としない。
【0031】
第2の有機溶媒は、第1の有機溶媒よりも極性が高い。第2の溶媒は、還元剤(典型的には液体形態である)と良好な可溶性を有していなければならない。いくつかの実施形態では、第2の有機溶媒の極性指数は、3.0より大きい。例示的な第2の溶媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、塩化メチレン(PI=3.4)、およびこれらの混合物が挙げられる。全てのアルコール、エーテル、ケトンおよびエステルの極性指数が3.0より高いわけではないことを注記しておくべきである。例示的なアルコールとしては、メタノール(PI=5.1〜6.6)、エタノール(PI=5.2)、n−プロパノール(PI=4.0〜4.3)、n−ブタノール(PI=3.9〜4.0)、イソブチルアルコール(PI=3.9)、イソプロピルアルコール(PI=3.9〜4.3)、2−メトキシエタノール(PI=5.7)などが挙げられる。例示的なエーテルとしては、テトラヒドロフラン(THF)(PI=4.0〜4.2)、ジオキサン(PI=4.8)などが挙げられる。例示的なケトンとしては、アセトン(PI=5.1〜5.4)、メチルエチルケトン(PI=4.5〜4.7)、メチル n−プロピルケトン(PI=4.5)、メチルイソブチルケトン(PI=4.2)などが挙げられる。例示的なエステルとしては、酢酸エチル(PI=4.3〜4.4)、酢酸メチル(PI=4.4)、酢酸 n−ブチル(PI=4.0)などが挙げられる。特定の実施形態では、第2の溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ある実施形態では、第2の溶媒はメタノールである。第2の溶媒は、第1の溶媒より沸点が低くてもよい。望ましくは、第2の溶媒は、沸点が80℃以下である。また、第2の溶媒は、互いに可溶性であり、また、以下に記載する性質を有する1種類、2種類、3種類またはそれ以上の溶媒の混合物であってもよい。このような混合物では、各溶媒は、任意の適切な容積比または質量比で存在していてもよい。
【0032】
第1の種類の溶媒および第2の種類の溶媒は、通常は、互いに可溶性ではない。言い換えると、両者を混合すると、第1の種類の溶媒および第2の種類の溶媒は、2つの視覚的に検出可能な相に分離する。
【0033】
分散性または溶解性は、典型的には、濃度(すなわち、容積あたりの重量)の観点で測定される。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、第1の溶媒への分散性または溶解性が少なくとも0.2g/cmである。特定の実施形態では、銀ナノ粒子は、第2の溶媒に溶解も分散もしない(すなわち、混和しない)。
【0034】
本開示の二成分溶媒系の使用によって、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を作成するのに必要な有機アミンの量をかなり減らすことができる。有機アミンの量が減ると、必要な溶媒の合計量も減り、費用が安くなり、廃棄の問題もある程度軽減する。したがって、開示されているプロセスは、環境にも優しい。
【0035】
ある特定の実施形態では、第1の有機溶媒は、極性指数が2.5以下であり、第2の有機溶媒は、極性指数が3.5以上である。他の実施形態では、第1の溶媒と第2の溶媒の極性指数の差は、少なくとも2.0である。言い換えると、第2の溶媒の極性指数から第1の溶媒の極性指数を引くと、2.0以上である。
【0036】
第1の混合物中、銀塩に対する有機アミンのモル比は、約1:1〜約10:1であってもよい。ある実施形態では、このモル比は、約1:1〜約3:1であってもよい。第1の混合中、第2の溶媒に対する第1の溶媒の容積比は、約1:1〜約10:1であってもよい。
【0037】
第1の混合物に還元剤が加えられる場合、典型的には、還元剤を溶媒で希釈する。還元剤が希釈される溶媒は、典型的には、第2の種類の溶媒である。銀ナノ粒子を生成する反応は、約マイナス30℃〜約プラス65℃(すなわち、約−30℃〜約+65℃)の温度で起こってもよい。反応が終了した後、さらなる量の第2の種類の溶媒を加え、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を沈殿させることができる。一般的に、最終混合物中の第2の種類の溶媒の合計量は、最終混合物中の第1の種類の溶媒の量よりも多く、これにより、沈殿が促進される。いくつかの実施形態では、第2の種類の溶媒に対する第1の種類の溶媒の最終容積比は、約1:2〜約1:5であってもよい。
【0038】
本開示のプロセスによって作成された銀ナノ粒子は、優れた形状および粒径均一性を示す。特に、このナノ粒子は、一貫したもっと丸い形状を示す。このナノ粒子を含むインクは、ナノ粒子の粒径、形状および均一性が少なくとも部分的に優れているため、優れた吐出性を示す。このナノ粒子を含むインクは、3.5ヶ月間経変させた後でさえ、良好な安定性を示し、吐出が容易であり、黒い点が生じていない。黒い点がないことは、開示されたプロセスによってナノ粒子を製造することによって、粒子の凝集が減っているか、または起こっていないことを示す。本開示に従って製造されたナノ粒子を用い、導電性を損なうことなく、低いアニーリング温度を使用することができる。特に、約60℃〜約140℃のアニーリング温度を使用してもよく、一方、他のナノ粒子組成物には、一般的に約120℃〜180℃の温度が必要である。特定の実施形態では、アニーリング温度は、約60℃〜約80℃であってもよい。また、開示されているプロセスは、ナノ粒子を安定化させるのに必要な有機アミンの量を減らす。結果的に、溶媒合計量も減ると考えられ、このプロセスは、「環境に優しい」と考えられるだろう。
【0039】
銀ナノ粒子の粒径は、粒子の平均径によって決定される。銀ナノ粒子は、平均径が約100ナノメートル以下、好ましくは、20ナノメートル以下であってもよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、平均径が、約1ナノメートル〜約15ナノメートルであり、約3ナノメートル〜約10ナノメートルの範囲を含む。それに加え、銀ナノ粒子は、非常に均一な粒径を有し、粒径分布が狭い。粒径分布は、平均粒径の標準偏差を用いて定量することができる。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、平均粒径の標準偏差が3nm以下(2.5nm以下を含む)の狭い粒径分布を有する。ある実施形態では、銀ナノ粒子は、平均粒径が約1ナノメートル〜約10ナノメートルであり、標準偏差が約1ナノメートル〜約3ナノメートルである。理論によって限定されないが、粒径分布が狭く、粒径が小さいことによって、溶媒中におくとナノ粒子が分散しやすくなり、均一な銀ナノ粒子が自己整列するため、物体の上により均一なコーティングを与えることができると考えられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子(その表面に有機アミンを有する)のさらなる処理によって、例えば、(例えば、電子機器を製作するための)液相成長技術と適合させることができる。このようなさらなる組成物処理は、例えば、適切な液体に銀含有ナノ粒子を溶解または分散させることであってもよい。
【0041】
銀ナノ粒子を溶媒に分散または溶解し、液相成長溶液として使用可能な銀ナノ粒子組成物を作成することができる。銀ナノ粒子は、溶媒に非常に分散性である。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子組成物は、約5重量%〜約80重量%(wt%)の銀ナノ粒子を含み、約5重量%〜約60重量%の銀ナノ粒子、または約8wt%〜約40wt%、または約10wt%〜約20wt%の範囲を含む。
【0042】
銀ナノ粒子を溶解または分散させるのに、炭化水素、ヘテロ原子含有芳香族化合物、アルコールなどを含め、極性指数が3.0以下の任意の適切な溶媒を使用してもよい。ここでも、全ての炭化水素、ヘテロ原子含有芳香族化合物、アルコールが、必ずしも極性指数が3.0以下というわけではない。例示的なヘテロ原子含有芳香族化合物としては、クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼンおよびニトロトルエンが挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、炭素原子を約6〜約28個含む炭化水素溶媒、例えば、炭素原子を約7〜約18個含む芳香族炭化水素、炭素原子を約8〜約28個含む直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素、または炭素原子を約6〜約28個含む環状脂肪族炭化水素である。他の実施形態では、溶媒は、単環または多環の炭化水素であってもよい。単環溶媒としては、環状テルペン、環状テルピネンおよび置換シクロヘキサンが挙げられる。多環溶媒としては、別個の環系を有する化合物、環系があわさった化合物、縮合環系および架橋環系を有する化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、多環溶媒としては、ビシクロプロピル、ビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、シクロペンチルシクロヘキサン、スピロ[2,2]ヘプタン、スピロ[2,3]ヘキサン、スピロ[2,4]ヘプタン、スピロ[3,3]ヘプタン、スピロ[3,4]オクタン、ビシクロ[4,2,0]オクタンヒドロインダン、デカヒドロナフタレン(ビシクロ[4.4.0]デカンまたはデカリン)、ペルヒドロフェナントロリン、ペルヒドロアントラセン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,1]オクタンなどが挙げられる。他の例示的な溶媒としては、限定されないが、ヘキサン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、イソパラフィン系炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラリン、ヘキサリン、デカリン、環状テルペン、シクロデセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−tert−ブチル−1−シクロヘキセン、メチルナフタレン、およびこれらの混合物を挙げることができる。用語「環状テルペン」には、単環モノテルペン、例えば、リモネン、セリネン、テルピノレン、およびテルピネオール;二環モノテルペン、例えば、α−ピネン;および環状テルピネン、例えば、γ−テルピネンおよびα−テルピネンが含まれる。用語「イソパラフィン系炭化水素」は、分岐鎖アルカンを指す。例示的なアルコールとしては、テルピネオール(例えば、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、およびこれらの混合物)が挙げられる。
【0043】
望ましくは、銀ナノ粒子を溶解するのに用いられる溶媒は、表面張力が低い溶媒である。この観点で、表面張力は、単位長さあたりの力(ニュートン/メートル)、単位面積あたりのエネルギー(ジュール/平方メートル)の単位、または溶媒とガラス表面との間の接触角で測定することができる。表面張力が低い溶媒は、35mN/m未満(33mN/m未満、30mN/m未満、または28mN/m未満を含む)の表面張力を有する。特定の実施形態では、銀ナノ粒子組成物中で使用される溶媒は、デカリン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ビシクロヘキサン、イソパラフィン系炭化水素などである。
【0044】
液相成長溶液にある種の低表面張力添加剤を加え、均一にコーティングするために液体組成物の表面張力を下げることができる。ある実施形態では、低表面張力添加剤は、改質ポリシロキサンである。改質ポリシロキサンは、ポリエーテル改質されたアクリル官能性ポリシロキサン、ポリエーテル−ポリエステル改質ヒドロキシル官能性ポリシロキサン、またはポリアクリレート改質ヒドロキシル官能性ポリシロキサンであってもよい。例示的な低表面張力添加剤としては、BYKから入手可能なSILCLEAN添加剤が挙げられる。BYK−SILCLEAN 3700は、メトキシプロピルアセテート溶媒中のヒドロキシル官能性シリコーン改質ポリアクリレートである。BYK−SILCLEAN 3710は、ポリエーテル改質アクリル官能性ポリジメチルシロキサンである。BYK−SILCLEAN 3720は、メトキシプロパノール溶媒中のポリエーテル改質ヒドロキシル官能性ポリジメチルシロキサンである。他の実施形態では、低表面張力添加剤は、フルオロカーボン改質ポリマー、低分子フルオロカーボン化合物、ポリマーフルオロカーボン化合物などである。例示的なフルオロカーボンで改質された分子添加剤またはポリマー添加剤としては、フルオロアルキルカルボン酸、Efka(登録商標)−3277、Efka(登録商標)−3600、Efka(登録商標)−3777、AFCONA−3037、AFCONA−3772、AFCONA−3777、AFCONA−3700などが挙げられる。他の実施形態では、低表面張力添加剤は、アクリレートコポリマーである。例示的なアクリレートポリマー添加剤またはアクリレートコポリマー添加剤としては、King Industriesから入手可能なDisparlon(登録商標)添加剤、例えば、Disparlon(登録商標)L−1984、Disparlon(登録商標)LAP−10、Disparlon(登録商標)LAP−20などが挙げられる。低表面張力添加剤の量は、約0.0001wt%〜約3wt%であってもよく、約0.001wt%〜約1wt%、または約0.001wt%〜約0.5wt%の範囲を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子を含む液体銀ナノ粒子組成物は、表面張力が低く、例えば、32mN/m未満であり、30mN/m未満、または28mN/m未満、または25mN/m未満の範囲を含む。特定の実施形態では、液体組成物は、表面張力が約22mN/m〜約28mN/mであり、約22mN/m〜約25mN/mの範囲を含む。極性の低い表面を有する銀ナノ粒子を用いることによって、低表面張力溶媒に銀ナノ粒子を溶解/分散させることによって、または、レベリング剤のような低表面張力添加剤を加えることによって、またはこれらを組み合わせることによって、低い表面張力を達成することができる。
【0046】
銀ナノ粒子からの導電性要素の製作は、(i)スクリーン/ステンシル印刷、スタンピング、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などのような印刷、および(ii)スピンコーティング、浸漬コーティング、ブレードコーティング、キャスト成型、浸漬などのようなコーティングを含む任意の適切な液相成長技術を用いる実施形態で行うことができる。成長させた銀ナノ粒子は、この段階で導電性を示してもよく、示さなくてもよい。
【0047】
得られた導電性要素を、電子機器(例えば、薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード、RFID(無線自動識別)タグ、光電池、および導電性要素または構成要素を必要とする電子機器)の導電性電極、導電性パッド、導電性配線、導電性トラックなどとして使用することができる。ある実施形態では、導電性要素を薄膜トランジスタで使用する。
【0048】
図1において、基材およびゲート電極の両方として作用する高度にnドープされたシリコンウエハ18と、熱によって成長させた酸化ケイ素絶縁誘電層14とを含み、その上部に2つの金属接点であるソース電極20およびドレイン電極22が堆積した薄膜トランジスタ構造10が模式的に示されている。金属接点20および22の上およびその間には、本明細書に示されているように、半導体層12がある。
【0049】
図2は、基材36と、ゲート電極38と、ソース電極40と、ドレイン電極42と、絶縁誘電層34と、半導体層32とで構成される別の薄膜トランジスタ構造30を模式的に示す。
【0050】
図3は、基材およびゲート電極の両方として作用する高度にnドープされたシリコンウエハ56と、熱によって成長させた酸化ケイ素絶縁誘電層54と、半導体層52とを含み、その上部にソース電極60およびドレイン電極62が堆積したさらなる薄膜トランジスタ構造50を模式的に示す。
【0051】
図4は、基材76と、ゲート電極78と、ソース電極80と、ドレイン電極82と、半導体層72と、絶縁誘電層74とで構成されるさらなる薄膜トランジスタ構造70を模式的に示す。
【0052】
基材は、例えば、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜またはシートで構成されていてもよい。構造的に可とう性の機器の場合、プラスチック基材(例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなど)を使用してもよい。基材の厚みは、約10マイクロメートル〜10ミリメートルを超えてもよく、例示的な厚みは、特に、可とう性プラスチック基材の場合、約50マイクロメートル〜約2ミリメートル、ガラスまたはケイ素のような剛性基材の場合、約0.4〜約10ミリメートルである。
【0053】
ゲート電極、ソース電極、および/またはドレイン電極は、本開示の実施形態によって製作される。ゲート電極層の厚みは、例えば、約10〜約2000nmの範囲である。ソース電極およびドレイン電極の典型的な厚みは、例えば、約40nm〜約1マイクロメートルであり、より特定的な厚みは、約60〜約400nmである。
【0054】
絶縁誘電層は、一般的に、無機材料膜または有機ポリマー膜であってもよい。絶縁層として適切な無機材料の具体例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、ジルコニウムチタン酸バリウムなどが挙げられ、絶縁層用の有機ポリマーの具体例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂などが挙げられる。絶縁層の厚みは、例えば、使用する誘電材料の誘電定数に依存して、約10nm〜約500nmである。絶縁層の例示的な厚みは、約100nm〜約500nmである。絶縁層は、例えば、約10−12S/cm未満の導電率を有していてもよい。
【0055】
例えば、絶縁層およびソース/ドレイン電極の間に、およびこれに接するように配置されるのは、半導体層であり、半導体層の厚みは、一般的に、例えば、約10nm〜約1マイクロメートル、または約40〜約100nmである。この層を作成するために任意の半導体材料を使用してもよい。例示的な半導体材料としては、位置的に規則的なポリチオフェン、オリゴチオフェン、ペンタセン、および米国特許第6,621,099号;第6,770,904号;および第6,949,762号;および「Organic Thin Film Transistors for Large Area Electronics」、C.D.DimitrakopoulosおよびP.R.L.Malenfant、Adv.Mater.、Vol.12、No.2、pp.99−117(2002)に開示されている半導体ポリマーが挙げられ、これらの開示内容は、全体的に本明細書に参考として組み込まれる。半導体層を作成するのに任意の適切な技術を使用してもよい。このような方法には、基材と、粉末形態で化合物を保持する供給源容器を含むチャンバに約10−5〜10−7torrの減圧をかける方法がある。化合物が基材に対して昇華するまで、容器を加熱する。半導体層は、一般的に、例えば、半導体の溶液または分散物のスピンコーティング、キャスト成型、スクリーン印刷、スタンピング、またはジェット印刷のような溶液プロセスによって製作することができる。
【0056】
絶縁誘電層、ゲート電極、半導体層、ソース電極およびドレイン電極は、任意の順序で作成され、特に、ゲート電極および半導体層が両方とも絶縁層に接している実施形態では、ソース電極およびドレイン電極は、両方とも半導体層に接している。「任意の順序で」との句は、順次作成することや、同時に作成することを含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極を同時に作成してもよく、順次作成してもよい。薄膜トランジスタの組成、製作および操作は、Baoら、米国特許第6,107,117号に記載されており、この開示内容は、全体的に本明細書に参考として組み込まれる。銀ナノ粒子は、任意の適切な表面(例えば、基材、誘電層または半導体層)の上に層として堆積させることができる。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
15ミリリットルのデカリンおよび2.5ミリリットルのメタノール中、10グラムの酢酸銀および27.8グラムのドデシルアミンの混合物を250ミリリットル反応フラスコに入れた。窒素雰囲気下で撹拌しつつ、反応フラスコを約20分間かけて約50℃まで加熱した。次いで、この混合物を40℃まで冷却した。この混合物に、0.5ミリリットルのメタノール中の3.56グラムのフェニルヒドラジンの混合物をゆっくりと加えた。得られた混合物を、40℃でさらに1.5時間撹拌した。50ミリリットルのメタノールを加え、生成物が析出した。混合物を約10分間撹拌した後、沈殿を濾過し、次いで、100ミリリットルビーカー中、15ミリリットルのメタノール中で30分間撹拌した。得られた生成物を濾過によって集め、減圧下、室温で一晩乾燥させ、銀ナノ粒子を6.7グラム得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1で製造した銀ナノ粒子を15wt%トルエンに溶かした溶液を調製した。ガラススライド上にこの溶液をスピンコーティングすることによって、ガラススライド上に銀ナノ粒子の薄い膜を得た。この薄い膜をホットプレート上、110℃で10分間加熱した。得られた薄い膜は輝いていて、鏡のようであり、厚みは約95ナノメートルであった。導電性は、従来の4プローブ技術を用いて測定した。アニーリングした銀膜は、非常に導電性であり、6.8×10S/cmの高い導電性を有していた。銀ナノ粒子のコーティング溶液は、沈殿することなく2ヶ月間にわたって非常に安定であった。
【0059】
(実施例3)
実施例1で製造した銀ナノ粒子0.8グラムをデカリン1.2グラムに溶解することによって銀ナノ粒子インクを調製した。この溶液を1μmフィルタで濾過し、この溶液は40wt%の銀ナノ粒子を含んでいた。
【0060】
Dimatixプリンタをもちいてインクジェット印刷することによって、ガラス基板上に一連の薄い線を得た。この薄い線は、長さが1ミリメートルおよび3ミリメートルであった。次いで、ガラス上に印刷したパターンを、ホットプレート上、80℃で20分間加熱した。厚みが約150ナノメートル、幅が約50μmの導電性の線が形成された。アニーリングした線は、1.92×10S/cmの高い導電性を示した。
【0061】
(実施例4)
実施例3に記載した40wt%銀ナノ粒子インクを3.5ヶ月間経変させ、次いで、Dimatixインクジェット印刷によって安定性を調べた。困難なく、ガラス基材上に線を印刷した。この線は、非常に滑らかであり、典型的に粒子凝集によって生じる黒い点はなかった。この線を図5に示している。ホットプレート上、80℃で20分間アニーリングした後、得られた導電性の線は、平均厚みが約155ナノメートルであり、平均幅は約60μmであった。導電性は、実施例3で試験した新しいインクの導電性と同様であった。この優れたインク安定性は、開示されているプロセスによって製造した銀ナノ粒子が、非常に安定であり、かなりの凝集または他の種類の分解を受けていないことを示している。
【0062】
(実施例5)
実施例1で製造したナノ粒子を、TEMを用いて調べ、無溶媒プロセスによって製造したナノ粒子と比較した。無溶媒プロセスにおいて、安定化剤は、溶媒として作用した。この銀ナノ粒子をメタノール中で析出させ、これを濾過によって集めた。図6Aは、開示されているプロセスによって調製した銀ナノ粒子をあらわし、一方、図6Bは、1回の溶媒プロセスを用いて調製した銀ナノ粒子をあらわす。これらの2つの画像において、赤い粒子をデータ分析に選択し、黒い粒子はデータ分析のために選択しなかった。赤い粒子は、丸みが0.9〜1.2(球=1.0)であり、平均径は、2nm〜15nmであった。この閾値から、個々の銀ナノ粒子のみが考慮されており、凝集した銀は除外されていることは確実であった。この方法は、異なるサンプル間で平均粒径を直接比較するための標準的な測定技術を与えた。
【0063】
開示されているプロセスを用いて調製した銀ナノ粒子は、かなり丸く、均一な形状を示した。図6Aの銀ナノ粒子は、平均粒径約7.5ナノメートルを示し、標準偏差はわずか2.2ナノメートルであった。一方、他のプロセスによって製造され、図6Bに示された銀ナノ粒子は、平均粒径が約7.7ナノメートルであり、標準偏差は4.3ナノメートルであった。無溶媒プロセスの図6Bには、かなり高い割合で凝集物が存在していることも注記しておくべきである。これらの凝集物は、例えば、導電性要素を作るときに有用ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀塩、有機アミン、第1の有機溶媒および第2の有機溶媒を含む第1の混合物を入れることと;
第1の混合物と還元剤とを反応させ、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を作成することとを含み、
第1の溶媒は、極性指数が3.0以下であり、第2の溶媒は、極性指数が3.0より大きい、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を製造するプロセス。
【請求項2】
銀塩、有機アミン、極性指数が3.0以下の第1の有機溶媒、および極性指数が3.0より大きい第2の有機溶媒を含む第1の混合物を入れることと;
第1の混合物と還元剤とを反応させ、有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を作成することと;
この有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を基板の上に堆積させることと;
この堆積した有機アミンで安定化された銀ナノ粒子を約60℃〜約140℃の温度でアニーリングし、導電性要素を製造する、導電性要素を製造するプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2013−28864(P2013−28864A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149749(P2012−149749)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】