説明

銅合金板材およびその製造方法

【課題】高強度を維持しながら、ノッチング後の曲げ加工性などの曲げ加工性に優れ且つ耐応力緩和性にも優れたCu−Ti系銅合金板材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】1.2〜5.0質量%のTiを含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板材において、板面上で無作為に選んだ同一の形状および大きさの複数の領域のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値を最大結晶粒径、最小値を最小結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値を平均結晶粒径とすると、平均結晶粒径が5〜25μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が0.20以下であり、銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たす結晶配向を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金板材およびその製造方法に関し、特に、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気電子部品に使用するCu−Ti系銅合金板材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気電子部品に使用される材料には、電気電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐えることができる高い強度が要求される。また、コネクタなどの電気電子部品は、一般に曲げ加工により成形されることから、その材料には、優れた曲げ加工性も要求される。さらに、コネクタなどの電気電子部品間の接触信頼性を確保するために、その材料には、接触圧力が時間とともに低下する現象(応力緩和)に対する耐久性、すなわち耐応力緩和性に優れていることも要求される。
【0003】
近年、コネクタなどの電気電子部品は、高集積化、小型化および軽量化が進む傾向にあり、それに伴って、素材である銅や銅合金の板材には、薄肉化の要求が高まっている。そのため、素材に要求される強度のレベルは、一層厳しくなっており、具体的には、0.2%耐力が850MPa以上、好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは950MPa以上の強度レベルが望まれている。
【0004】
また、コネクタなどの電気電子部品の小型化や形状の複雑化に伴い、銅合金板材の曲げ加工品の形状や寸法精度を向上させることが求められている。また、銅合金板材の曲げ加工性に対する要求は、曲げ部に割れが生じないだけではなく、曲げ加工品の形状や寸法精度を確保できることも重要である。さらに、銅合金板材の曲げ加工においてスプリングバックの問題がある。なお、スプリングバックとは、材料を加工後に金型から取り出したときに弾性的な変形の回復が起こり、金型の中で加工されていたときの形状とは一致しなくなる現象である。
【0005】
特に、素材に要求される強度レベルが一層厳しくなるに伴い、スプリングバックの問題が顕在化し易くなる。例えば、箱形曲げ加工部を有するコネクタ端子では、スプリングバックによって端子の形状と寸法が狂って使用できなくなる場合もある。そのため、最近では、素材の曲げ加工を施す部位にノッチを付ける加工(ノッチング)を施し、その後、そのノッチに沿って曲げ加工を行う所謂ノッチング後曲げ加工法を適用することが多くなっている。しかし、このノッチング後曲げ加工法は、ノッチングによってノッチ部の近傍が加工硬化されるため、その後の曲げ加工において割れが生じ易くなる。そのため、ノッチング後曲げ加工法は、材料にとって非常に厳しい曲げ加工である。
【0006】
さらに、コネクタなどの電気電子部品が過酷な環境で使用される場合が多くなるに従って、耐応力緩和性に対する要求も厳しくなっている。例えば、自動車用コネクタのように高温に曝される環境下で使用される場合には、耐応力緩和性が特に重要になる。なお、応力緩和とは、コネクタなどの電気電子部品を構成する素材のばね部の接触圧力が、常温では一定の状態に維持されても、比較的高温(例えば100〜200℃)の環境下では時間とともに低下するという、一種のクリープ現象である。すなわち、金属材料に応力が付与されている状態において、マトリックスを構成する原子の自己拡散や固溶原子の拡散によって転位が移動して、塑性変形が生じることにより、付与されている応力が緩和される現象である。
【0007】
しかし、強度と曲げ加工性の間や、曲げ加工性と耐応力緩和性の間には、それぞれトレードオフの関係があるので、従来、このようなコネクタなどの通電部品に使用される材料として、用途に応じて強度、曲げ加工性または耐応力緩和性が良好な板材が適宜選択されて使用されている。
【0008】
銅合金板材中でCu−Ti系銅合金板材は、Cu−Be系銅合金板材に次いで高い強度を有し、Cu−Be系銅合金板材より優れた耐応力緩和性を有し、コストと環境負荷の観点からCu−Be系銅合金板材より有利な銅合金板材である。そのため、一部のCu−Be系銅合金板材の代替材として、Cu−Ti系銅合金(例えば、C199(Cu−3.2質量%Ti))板材がコネクタ材などに使用されている。しかし、Cu−Ti系銅合金板材は、高強度Cu−Be系銅合金(例えば、C17200)板材と比べて、同等な曲げ加工性を有する場合には強度が及ばず、同等な強度を有する場合には曲げ加工性が及ばないことが知られている。
【0009】
Cu−Ti系銅合金板材の強度を向上させる方法として、Tiの添加量を増加する方法や、高質別材を選択する方法がある。しかし、Tiの添加量を増加する方法では、Ti濃度が高過ぎる(例えば、Ti含有量が5質量%以上)と、熱間圧延や冷間圧延において割れが生じ易く、生産性が著しく低下してしまう。また、粗大な析出物が発生し易く、最終製品の板材は、強度が高いものの、曲げ加工性の低下によって、一般的な電気電子部品用材料として利用できなくなってしまう。一方、高質別材を選択する方法では、時効処理前後の圧延率を増大して強度を向上させるため、最終製品の板材は、強度が高いものの、異方性が生じてしまう。すわなち、圧延方向に平行な方向の曲げ加工性(曲げ軸が圧延面内において圧延方向に垂直な所謂GoodWayの曲げ加工性)は比較的良好であるものの、圧延方向に垂直な方向の曲げ加工性(曲げ軸が圧延方向に平行な所謂BadWayの曲げ加工性)が著しく悪くなることが知られている。
【0010】
一般に、銅合金板材の曲げ加工性を改善するためには、結晶粒を微細化する方法が有効であり、Cu−Ti系銅合金板材の場合も同様である。しかし、結晶粒径が小さくなるに従って単位体積当たりに存在する結晶粒界の面積が大きくなるため、結晶粒を微細化すると、クリープ現象の一種である応力緩和を助長する要因となってしまう。また、比較的高温環境で使用される板材では、原子の粒界に沿った拡散速度が粒内の拡散速度より著しく速いので、結晶粒を過度に微細化(例えば、5μm以下に微細化)すると、板材の本来の耐応力緩和性が低下するという問題がある。
【0011】
特に、Cu−Ti系銅合金板材では、主に結晶粒内の変調構造(スピノーダル構造)の形態で析出物が存在し、再結晶粒の成長をピンニングする作用の第2相粒子の析出物が比較的少なく、溶体化処理過程中で再結晶粒の生成時間のずれにより、混粒組織を生じ易いという特徴があり、均一で微細な結晶粒を生成させるのが容易ではない。
【0012】
近年、Cu−Ti系銅合金板材の特性を改善する方法として、結晶粒の微細化や結晶方位(集合組織)を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0013】
【特許文献1】特開2002−356726号公報(段落番号0014−0016)
【特許文献2】特開2004−231985号公報(段落番号0007−0015)
【特許文献3】特開2006−241573号公報(段落番号0006−0010)
【特許文献4】特開2006−274289号公報(段落番号0007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
Cu−Ti系銅合金では、Tiは、母相内に周期的な濃度変動を有する変調構造(スピノーダル構造)と、第2相粒子であるTiとCuの金属間化合物(β相)の2種類の形態で存在する。変調構造は、Ti溶質原子濃度の連続的なゆらぎによって生成し、且つ母相と完全な整合性を保ちながら生成する構造である。このような変調構造のCu−Ti系銅合金板材は、著しく硬化し、且つ延性(曲げ加工性)の損失が少ない。一方、β相は、通常の結晶粒内と粒界に点在する析出物であり、粗大化し易く、また、変調構造より硬化作用が極めて小さいにもかかわらず、板材の延性の損失が著しく大きい。
【0015】
すなわち、Cu−Ti系銅合金板材の強度と曲げ加工性を両立するために、変調構造を発達させ、β相の生成を抑制することが有効である。また、Cu−Ti系銅合金板材の曲げ加工性のもう一つ重要な影響因子は結晶粒径であり、結晶粒径を小さくする程、曲げ変形歪を分散させ、曲げ加工性を向上させることができる。
【0016】
しかし、Cu−Ti系銅合金板材の結晶粒径は、最終溶体化工程の再結晶で決定され、再結晶粒の成長をピンニングする作用を有するβ相の生成を抑制すると、結晶粒が粗大化し易くなるという問題がある。また、Cu−Ti系銅合金板材には、溶体化処理中に再結晶粒の生成時間のずれによって混粒組織が生じ易いという特徴があり、均一で微細な結晶粒を生成させるのが容易ではないため、曲げ変形中に粒径が異なる組織の境界付近に割れが生じ易い。さらに、Cu−Ti系銅合金板材の強度を向上させるために、時効処理前後の圧延率を増大すると、曲げ加工性の異方性が生じ易くなるという問題がある。
【0017】
また、銅合金板材の結晶粒を微細化するための一般的な方法として、溶体化処理を合金組成の固溶線以下の温度域で行う方法がある。この方法によってCu−Ti系銅合金板材の結晶粒を微細化すると、Tiの全量を固溶させるのではなく、ピンニングする作用を有するβ相としてTiの一部を残留させるので、結晶粒を微細化することができるものの、β相の残留によって、結晶粒の微細化による曲げ加工性の向上の効果が相殺されてしまう。
【0018】
例えば、特許文献1の方法では、溶体化処理を合金組成の固溶線より10〜60℃低い温度域で行って、0.2%耐力が900MPa程度のCu−Ti系銅合金板材を得ることができるが、そのBadWay曲げの最小曲げ半径R/tが5程度に止まっている。
【0019】
特許文献2の方法では、Cu−Ti合金にFe、Co、Niなどを添加することにより、TiとFeなどの添加元素の金属間化合物を生成させ、β相の代わりに、これらの金属間化合物が再結晶粒界をピンニングして結晶粒を微細化しているが、Feなどの第3元素とTiとの金属間化合物の形成によって、Tiの変調組織の発達が阻害されるという欠点があり、十分に特性を改善することができない。
【0020】
特許文献3の方法では、強度と導電率を向上させるために{220}面と{111}面のX線回折強度比をI{220}/I{111}>4にしている。このように{220}面を主方位成分とする圧延集合組織に調整することは、強度と導電率を向上させるのに有効であるが、{220}面が圧延集合組織であり、BadWayの曲げ加工性が著しく低下することがわかった。
【0021】
特許文献4の方法では、曲げ加工性を改善するために、{111}正極点図上において{110}<115>、{110}<114>、{110}<113>を含む4つの領域内でX線回折強度の極大値が5.0〜15.0(但し、ランダム方位に対する強度比)になるように集合組織を制御し、また、このような集合組織を得るために、溶体化処理前の冷間圧延率を85〜97%にしている。このような集合組織は、典型的な合金型の圧延集合組織({110}<112>〜{110}<100>)であり、その{111}正極点図が70/30黄銅の{111}正極点図に類似している(例えば、丸善株式会社、日本金属学会編「金属データブック」改訂3版、361頁参照)。このように、従来の一般的な集合組織をベースに結晶方位分布を調整する方法では、曲げ加工性の大幅な改善は困難であり、特許文献4の方法では、0.2%耐力が870MPa程度のCu−Ti系銅合金板材を得ることができるが、その曲げ加工性R/tは1.6に止まっている。
【0022】
また、銅合金板材にノッチング後曲げ加工法を採用することは、曲げ加工品の形状や寸法精度を向上させるためには効果的である。しかし、特許文献1〜4の方法のように、結晶粒および集合組織を制御したCu−Ti系銅合金板材では、ノッチング後曲げ加工法によって割れが生じるのを防止することまでは考慮されておらず、ノッチング後の曲げ加工性が十分に改善されないことがわかった。
【0023】
また、Cu−Ti系銅合金板材は、スプリングバックにより曲げ加工品の形状や寸法精度を確保し難いという問題がある。スプリングバックを低減するためには、ノッチング後曲げ加工法が有効であるが、このノッチング後曲げ加工法は、ノッチングによってノッチ部の近傍を加工硬化させることから、その後の曲げ加工において割れが生じ易い。そのため、Cu−Ti系銅合金板材では、ノッチング後曲げ加工法を工業的に採用するには至っていないのが現状である。
【0024】
さらに、上述したように結晶粒を微細化すると、曲げ加工性の向上にはある程度有効である反面、クリープ現象の一種である応力緩和の克服にはマイナス要因になる。このように、曲げ加工性を十分に向上させるのが難しい状況下で、さらに耐応力緩和性を向上させるのは困難であった。
【0025】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、高強度を維持しながら、ノッチング後の曲げ加工性などの曲げ加工性に優れ且つ耐応力緩和性にも優れたCu−Ti系銅合金板材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、1.2〜5.0質量%のTiを含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板材において、板面上で無作為に選んだ同一の形状および大きさの複数の領域のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値を最大結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最小値を最小結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値を平均結晶粒径とすると、平均結晶粒径を5〜25μmにし、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径を0.20以下にするとともに、その板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とし、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たす結晶配向を有するようにすることにより、高強度を維持しながら、ノッチング後の曲げ加工性などの曲げ加工性に優れ且つ耐応力緩和性にも優れたCu−Ti系銅合金板材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
すなわち、本発明による銅合金板材は、1.2〜5.0質量%のTiを含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有し、板面上で無作為に選んだ同一の形状および大きさの複数の領域のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値を最大結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最小値を最小結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値を平均結晶粒径とすると、平均結晶粒径が5〜25μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が0.20以下であり、その板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とし、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たす結晶配向を有することを特徴とする。
【0028】
この銅合金板材は、その板面における{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とし、純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とすると、I{220}/I{220}≦4.0を満たす結晶配向を有するのが好ましい。
【0029】
また、上記の銅合金板材が、1.5質量%以下のNi、1.0質量%以下のCoおよび0.5質量%以下のFeからなる群から選ばれる1種以上の元素をさらに含む組成を有するのが好ましく、1.2質量%以下のSn、2.0質量%以下のZn、1.0質量%以下のMg、1.0質量%以下のZr、1.0質量%以下のAl、1.0質量%以下のSi、0.1質量%以下のP、0.05質量%以下のB、1.0質量%以下のCr、1.0質量%以下のMn、1.0質量%以下のV、1.0質量%以下のAg、1.0質量%以下のBeおよび1.0質量%以下のミッシュメタルからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲でさらに含む組成を有するのが好ましい。
【0030】
また、上記の銅合金板材の0.2%耐力が850MPa以上であり、銅合金板材から長手方向が圧延方向LDになるように切り出した試験片を曲げ軸を圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向TDにして90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDになるように切り出した試験片を曲げ軸をLDにして90°W曲げ試験を行った場合に、LDとTDのいずれも90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが1.0以下であるのが好ましい。
【0031】
また、本発明による銅合金板材の製造方法は、1.2〜5.0質量%のTiを含み、必要に応じて1.5質量%以下のNi、1.0質量%以下のCoおよび0.5質量%以下のFeからなる群から選ばれる1種以上の元素を含み、さらに必要に応じて1.2質量%以下のSn、2.0質量%以下のZn、1.0質量%以下のMg、1.0質量%以下のZr、1.0質量%以下のAl、1.0質量%以下のSi、0.1質量%以下のP、0.05質量%以下のB、1.0質量%以下のCr、1.0質量%以下のMn、1.0質量%以下のV、1.0質量%以下のAg、1.0質量%以下のBeおよび1.0質量%以下のミッシュメタルからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造した後、950℃〜500℃における熱間圧延として950℃〜700℃で最初の圧延パスを行った後に700℃未満〜500℃で圧延率30%以上の熱間圧延を行い、次いで、圧延率85%以上で冷間圧延を行った後、750〜1000℃の温度域で5秒〜5分間保持する溶体化処理を行い、次いで、圧延率0〜50%で冷間圧延を行った後、300〜550℃で時効処理を行い、その後、圧延率0〜30%で仕上げ冷間圧延を順次行うことにより、銅合金板材を製造することを特徴とする。
【0032】
この銅合金板材の製造方法において、950℃〜700℃の温度域における熱間圧延の圧延率を60%以上にするのが好ましく、熱間圧延と溶体化処理の間の冷間圧延の圧延率90%以上にするのが好ましい。
【0033】
また、上記の銅合金板材の製造方法において、溶体化処理を、750〜1000℃の温度域において上記の組成を有する銅合金の固溶線より30℃以上高い温度で保持して熱処理することによって行い、この保持時間を、溶体化処理後の銅合金板材の平均結晶粒径が5〜25μmになるように調整するのが好ましい。また、上記の銅合金板材の製造方法において、上記の銅合金の組成で最大硬度が得られる時効温度をT(℃)、その最大硬度をH(HV)とすると、時効処理の時効温度を300〜550℃においてT±10℃の温度に設定し、時効処理の時効時間を時効処理後の硬さが0.90H〜0.95Hの範囲になる時間に調整するのが好ましい。さらに、仕上げ冷間圧延後に150〜450℃で低温焼鈍を行ってもよい。
【0034】
さらに、本発明によるコネクタ端子は、上記の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする。
【0035】
なお、本明細書中において、「最大結晶粒径」とは、銅合金板材の板面(圧延面)上で同一の形状および大きさの複数の領域を無作為に選び、それぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値をいい、例えば、銅合金板材の板面(圧延面)の光学顕微鏡写真上で2辺が圧延方向(LD)に平行で他の2辺が圧延方向に垂直な方向(TD)に平行な100μm×100μmの正方形の10個の視野を無作為に選び、それぞれの視野において、結晶粒径の平均値d、d、…、d10をそれぞれJIS H0501の切断法によって測定し、これらの平均値d、d、…、d10のうちの最大値をいう。また、「最小結晶粒径」とは、上記のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最小値をいい、例えば、上記のそれぞれの視野における結晶粒径の平均値d、d、…、d10のうちの最小値をいう。さらに、「平均結晶粒径」とは、上記のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値をいい、例えば、上記のそれぞれの視野における結晶粒径の平均値d、d、…、d10の平均値dAVE=(d、d、…、d10)/10をいう。なお、上記のそれぞれの視野における結晶粒径は、それぞれの視野において、圧延方向に垂直な方向(TD)に延びる長さ100μmの線分によって完全に切られる結晶粒の切断長さをJIS H0501の切断法によって測定することによって求めることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高強度を維持しながら、ノッチング後の曲げ加工性などの曲げ加工性に優れ且つ耐応力緩和性にも優れたCu−Ti系銅合金板材およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明による銅合金板材の実施の形態は、1.2〜5.0質量%のTiを含み、必要に応じて1.5質量%以下のNiと1.0質量%以下のCoと0.5質量%以下のFeからなる群から選ばれる1種以上の元素を含み、さらに必要に応じて1.2質量%以下のSn、2.0質量%以下のZn、1.0質量%以下のMg、1.0質量%以下のZr、1.0質量%以下のAl、1.0質量%以下のSi、0.1質量%以下のP、0.05質量%以下のB、1.0質量%以下のCr、1.0質量%以下のMn、1.0質量%以下のV、1.0質量%以下のAg、1.0質量%以下のBeおよび1.0質量%以下のミッシュメタルからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板材において、板面上で無作為に選んだ同一の形状および大きさの複数の領域のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値を最大結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最小値を最小結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値を平均結晶粒径とすると、平均結晶粒径が5〜25μmであり、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が0.20以下であり、銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たし、さらに、銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度をI{220}、純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とすると、I{220}/I{220}≦4.0を満たす結晶配向を有する。
【0038】
この銅合金板材において、特に、LD(圧延方向)の0.2%耐力が850MPa以上、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験において割れが生じない最小曲げ半径Rと板厚tとの比R/tの値がLDおよびTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)のいずれも1.0以下になる曲げ加工性を備えるのが好ましい。
【0039】
[合金組成]
本発明による銅合金板材は、CuとTiを含むCu−Ti系銅合金からなる板材、好ましくは、Cu−Tiの2元素銅合金からなる板材であり、必要に応じて、少量のNi、Co、Fe、その他の元素を含有してもよい。
【0040】
Tiは、Cuマトリックスにおいて時効硬化作用が高い元素であり、銅合金板材の強度および耐応力緩和性の向上に寄与する。Cu−Ti系銅合金では、溶体化処理によって過飽和固溶体を生成させ、より低温で時効を行うと、準安定相である変調構造(スピノーダル構造)が発達し、さらに時効を続けると、安定相(β相)が生成する。変調構造とは、通常の核生成および成長による析出物とは異なり、核生成を必要とせず、溶質原子濃度の連続的なゆらぎによって生成し且つ母相と完全な整合性を保ちながら生成する構造である。この変調構造の発達階段では、Cu−Ti系銅合金板材が著しく硬化し、且つ板材の延性の損失が少ない。一方、安定相(β相)は、通常の結晶粒内と粒界に点在する析出物であり、粗大化し易く、準安定相である変調構造より硬化作用が小さいにもかかわらず、板材の延性の損失が大きい。
【0041】
したがって、Cu−Ti系銅合金板材の強度を高めるためには、できるだけ準安定相によって高強度化を図り、安定相(β相)の生成を抑制するのが好ましい。Ti含有量が1.2質量%未満では、準安定相による強化作用を十分に引き出すことが難しい。一方、Ti含有量が5.0質量%を超えて過剰になると、安定相(β相)が生成し易く、熱間加工および冷間加工において割れが生じ易く、生産性の低下を招き易い。また、溶体化処理が可能な温度域が狭くなり、良好な特性を引き出すことが困難になる。したがって、Ti含有量は、1.2〜5.0質量%であるのが好ましく、2.0〜4.0質量%であるのがさらに好ましく、2.5〜3.5質量%であるのが最も好ましい。
【0042】
Ni、CoおよびFeは、Tiとの金属間化合物を形成して銅合金板材の強度の向上に寄与する元素であり、必要に応じてこれらの1種以上を添加してもよい。特に、Cu−Ti系銅合金の溶体化処理では、これらの金属間化合物が結晶粒の粗大化を抑制するので、より高温域における溶体化処理が可能になり、Tiを十分に固溶させる上で有利になる。但し、Fe、CoおよびNiの含有量が過剰になると、金属間化合物の生成によって消費されるTiの量が多くなるので、固溶するTiの量が必然的に少なくなり、強度の低下を招き易くなる。したがって、Ni、Co、Feを添加する場合は、Ni含有量を1.5質量%以下、Co含有量を1.0質量%以下、Fe含有量を0.5質量%以下にするのが好ましく、Ni含有量を0.05〜1.5質量%、Co含有量を0.05〜1.0質量%、Fe含有量を0.05〜0.50質量%にするのがさらに好ましく、Ni含有量を0.1〜1.0質量%、Co含有量を0.1〜0.5質量%、Fe含有量を0.1〜0.3質量%にするのが最も好ましい。
【0043】
Snは、銅合金板材の固溶強化作用と耐応力緩和性の向上作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには、Sn含有量が0.1質量%以上であるのが好ましい。但し、Sn含有量が1.0質量%を超えると、鋳造性と導電率が著しく低下してしまうので、銅合金板材がSnを含有する場合には、Sn含有量は、0.1〜1.0質量%であるのが好ましく、0.1〜0.5質量%であるのがさらに好ましい。
【0044】
Znは、銅合金板材のはんだ付け性および強度を向上させる作用の他、鋳造性を改善させる作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには、Zn含有量が0.1質量%以上であるのが好ましい。また、銅合金板材がZnを含有する場合には、安価な黄銅スクラップを使用することができる。但し、Zn含有量が2.0質量%を超えると、導電性や耐応力腐食割れ性が低下し易いので、銅合金板材がZnを含有する場合には、0.1〜2.0質量%であるのが好ましく、0.3〜1.0質量%であるのがさらに好ましい。
【0045】
Mgは、銅合金板材の耐応力緩和性の向上作用と脱S作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには、Mg含有量が0.01質量%以上であるのが好ましい。但し、Mgは酸化され易い元素であり、Mg含有量が1.0質量%を超えると、鋳造性が著しく低下してしまうので、銅合金板材がMgを含有する場合には、Mg含有量は、0.01〜1.0質量%であるのが好ましく、0.1〜0.5質量%であるのがさらに好ましい。
【0046】
銅合金板材は、必要に応じて、その他の元素として、1.0質量%以下のZr、1.0質量%以下のAl、1.0質量%以下のSi、0.1質量%以下のP、0.05質量%以下のB、1.0質量%以下のCr、1.0質量%以下のMn、1.0質量%以下のV、1.0質量%以下のAg、1.0質量%以下のBe、1.0質量%以下のミッシュメタルの1種以上を含有してもよい。例えば、ZrとAlは、Tiとの金属間化合物を形成することができ、Siは、Tiとの析出物を生成することができる。また、Cr、Zr、MnおよびVは、不可避的不純物として存在するSやPbなどと高融点化合物を形成し易く、Cr、B、P、Zrおよびミッシュメタル(Ce、La、Dy、Nd、Yなどを含む希土類元素の混合物)は、鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与し得る。さらに、AgおよびBeは、導電率の大きな低下がなく強度を向上させる効果を有する。
【0047】
銅合金板材がZr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、V、Ag、Beおよびミッシュメタルの1種以上を含有する場合には、各元素の作用を十分に得るために、これらの元素の総量を0.01質量%以上にするのが好ましい。但し、これらの元素を多量に含有すると、熱間加工性または冷間加工性に悪影響を与え、コスト的にも不利になる。したがって、Sn、ZnおよびMgと、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、V、Ag、Beおよびミッシュメタルの合計の含有量は、3質量%以下であるのが好ましく、2質量%以下であるのがさらに好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましく、0.5質量%以下であるのが最も好ましい。
【0048】
[平均結晶粒径]
平均結晶粒径が小さい程、曲げ加工性の向上に有利であるが、Cu−Ti系銅合金では、結晶粒の微細化に伴って、β相が残留し易くなるという問題がある。また、平均結晶粒径が小さ過ぎると、耐応力緩和性が悪くなり易い。平均結晶粒径は、5μm以上、好ましくは8μm以上であれば、銅合金板材を車載用コネクタに使用する場合でも満足できるレベルの耐応力緩和性を確保し易く、10μm以上であるのがさらに好ましい。但し、平均結晶粒径が大きくなり過ぎると曲げ部の表面が肌荒に(粗く)なり易く、曲げ加工性を低下させる場合がある。したがって、平均結晶粒径は、25μm以下であるのが好ましく、20μm以下であるのがさらに好ましく、15μm以下であるのが最も好ましい。最終的な平均結晶粒径は、溶体化処理後の段階における結晶粒径によってほぼ決定される。したがって、平均結晶粒径の制御は、溶体化処理条件の調整によって行うことができる。
【0049】
[結晶粒径分布]
Cu−Ti系銅合金は、溶体化処理中の再結晶粒の生成時間のずれにより、混粒組織を生じ易いという特徴があり、曲げ変形中に粒径が異なる組織の境界付近に割れが生じ易い。そのため、板面上で無作為に選んだ同一の形状および大きさの複数の領域のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値を最大結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最小値を最小結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値を平均結晶粒径とすると、結晶粒径の均一性を示す(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は、0.20以下であるのが好ましく、0.15以下であるのがさらに好ましい。
【0050】
[集合組織]
Cu−Ti系銅合金の板面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成されており、他の結晶面からのX線回折強度は、これらの結晶面からのX線回折強度に比べて非常に小さい。また、通常の製造方法によって製造されたCu−Ti系銅合金の板材では、{420}面からのX線回折強度は、無視される程度に弱くなるが、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態によれば、{420}を主方位成分とする集合組織を有するCu−Ti系銅合金板材を製造することができる。また、この集合組織が強く発達している程、以下のように曲げ加工性の向上に有利になることがわかった。
【0051】
結晶のある方向に外力が加えられたときの塑性変形(すべり)の生じ易さを示す指標としてシュミット因子がある。結晶に加えられる外力の方向とすべり面の法線とのなす角度をφ、結晶に加えられる外力の方向とすべり方向とのなす角度をλとすると、シュミット因子はcosφ・cosλで表され、その値は0.5以下の範囲をとる。シュミット因子が大きい程(すなわち0.5に近い程)、すべり方向へのせん断応力が大きいことを意味する。したがって、ある結晶にある方向から外力を付与したとき、シュミット因子が大きい程(すなわち0.5に近い程)、その結晶は変形し易いことになる。Cu−Ti系銅合金の結晶構造は面心立方(fcc)であるが、面心立方晶のすべり系は、すべり面{111}、すべり方向<110>であり、実際の結晶においても、シュミット因子が大きい程、変形し易く加工硬化も小さくなることが知られている。
【0052】
面心立方晶のシュミット因子の分布を表した標準逆極点図を図1に示す。図1に示すように、<120>方向のシュミット因子は0.490であり、0.5に近い。すなわち、<120>方向に外力が付与されると、面心立方晶は非常に変形し易い。その他の方向のシュミット因子は、<100>方向が0.408、<113>方向が0.445、<110>方向が0.408、<112>方向が0.408、<111>方向が0.272である。
【0053】
また、{420}を主方位成分とする集合組織は、{420}面、すなわち{210}面が板面(圧延面)とほぼ平行である結晶の存在割合が多い集合組織を意味する。主方位面が{210}面である結晶では、板面に垂直な方向(ND)が<120>方向であり、そのシュミット因子は0.5に近いので、NDへの変形は非常に容易であり、加工硬化の程度も小さい。一方、Cu−Ti系銅合金の一般的な圧延集合組織は、{220}を主方位成分とし、この場合、{220}面、すなわち{110}面が板面(圧延面)とほぼ平行である結晶の存在割合が多い。主方位面が{110}面である結晶は、NDが<110>方向であり、そのシュミット因子は0.4程度であるから、主方位面が{210}面である結晶と比べて、NDへの変形に伴う加工硬化の程度が大きくなる。また、Cu−Ti系銅合金の一般的な再結晶集合組織は、{311}を主方位成分とする。主方位面が{311}面である結晶は、NDが<113>方向であり、そのシュミット因子は0.45程度であるので、主方位面が{210}面である結晶と比べると、NDへの変形に伴う加工硬化の程度が大きくなる。
【0054】
ノッチング後曲げ加工法においては、NDへの変形における加工硬化の程度が極めて重要である。ノッチングはNDへの変形であり、ノッチングによって板厚が減少した部分の加工硬化の程度が、その後、ノッチに沿って曲げた場合の曲げ加工性を大きく支配するからである。銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とし、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たすような{420}を主方位成分とする集合組織の場合、従来のCu−Ti系銅合金の圧延集合組織または再結晶集合組織と比べて、ノッチングによる加工硬化の程度が小さくなり、これによってノッチング後の曲げ加工性を顕著に向上させる。
【0055】
また、I{420}/I{420}>1.0を満たすような{420}を主方位成分とする集合組織の場合、主方位面が{210}面である結晶では、板面内、すなわち{210}面内に、別の<120>方向と<100>方向があり、これらは互いに直交する。実際には、LDが<100>方向、TDが<120>方向である。具体的な結晶方向で例示すると、例えば、主方位面が(120)面である結晶では、LDが[001]方向、TDが[−2、1、0]方向である。このような結晶のシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.490である。これに対し、Cu−Ti系銅合金の一般的な圧延集合組織では、主方位面が{110}面、LDが<112>方向、TDが<111>方向であり、板面内のシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.272になる。また、Cu−Ti系銅合金の一般的な再結晶集合組織では主方位面が{113}面、LDが<112>方向、TDが<110>方向であり、板面内のシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.408になる。このように、LDおよびTDのシュミット因子を見ると、{420}を主方位成分とする集合組織の場合、従来のCu−Ti系銅合金の圧延集合組織あるいは再結晶集合組織と比べて、板面内における変形が容易であるといえる。この点も、ノッチング後の曲げ加工における割れを防止する上で有利に作用していると考えられる。
【0056】
また、金属板の曲げ加工では、各結晶粒の結晶方位が異なるので、一様に変形するのではなく、曲げ加工時に変形し易い結晶粒と変形し難い結晶粒が存在する。曲げ加工の程度が増大するに伴って、変形し易い結晶粒が優先的に変形し、金属板の曲げ部の表面には、結晶粒間における不均一な変形に起因して微小の凹凸が生じ、これがしわに発展して、場合によっては割れ(破壊)に至る。上述したようにI{420}/I{420}>1.0を満たすような集合組織を有する金属板は、従来の集合組織の金属板と比べて、各結晶粒がNDに変形し易く、板面内にも変形し易くなっている。これにより、特に結晶粒を微細化しなくても、ノッチング後の曲げ加工性および通常の曲げ加工性を顕著に向上させることができると考えられる。
【0057】
このような結晶配向は、銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とし、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たす。面心立方晶のX線回折パターンでは、{420}面の反射は生じるが、{210}面の反射は生じないので、{210}面の結晶配向は、{420}面の反射によって評価される。
【0058】
また、{420}を主方位成分とする集合組織は、溶体化処理による再結晶集合組織として形成される。しかし、銅合金板材を高強度化するためには、溶体化処理後に冷間圧延するのが好ましい。この冷間圧延率が増加するに伴って、{220}を主方位成分とする圧延集合組織が発達していく。{220}方位密度の増大に伴って、{420}方位密度は減少するが、{420}/I{420}>1.0を維持するように、冷間圧延率を調整すればよい。しかし、{220}を主方位成分とする集合組織が発達し過ぎると、加工性が低下する場合があるので、銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とし、純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とすると、I{220}/I{220}≦4.0を満たすことが好ましい。また、強度と曲げ加工性の両方をさらに向上させるためには、1.0≦I{220}/I{220}≦3.0を満たすのが好ましい。
【0059】
このような特異な結晶配向を有する銅合金板材では、この銅合金板材に特有な高強度が維持されるとともに、曲げ加工性を向上させるために結晶粒を極度に微細化する必要がなくなり、Tiの添加による耐応力緩和性を向上させる作用を十分に発揮させることができる。
【0060】
[特性]
Cu−Ti系銅合金板材を用いたコネクタなどの電気電子部品をさらに小型化および薄肉化するためには、0.2%耐力は、好ましくは850MPa以上、さらに好ましくは900MPa以上、最も好ましくは950MPa以上の強度レベルである。上述した化学組成を満たす銅合金原料から後述する製造方法によって、この強度特性を有する銅合金板材を製造することができる。
【0061】
また、銅合金板材の通常の曲げ加工性の評価として、LDとTDのいずれも90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが、1.0以下であるのが好ましく、0.5以下であるのがさらに好ましい。また、曲げ加工品の形状や寸法精度を向上させるために、LDのノッチング後の曲げ加工性の評価として、R/tが0であること、すなわち、割れが認められないのが好ましい。なお、LDの曲げ加工性は、LDが長手方向になるように切り出した試験片で評価される曲げ加工性(ノッチング後の曲げ加工性の場合も同じ)であり、その試験における曲げ軸はTDになる。同様に、TDの曲げ加工性は、TDが長手方向になるように切り出した験片で評価される曲げ加工性であり、その試験における曲げ軸はLDになる。
【0062】
また、耐応力緩和性については、銅合金板材を車載用コネクタなどに使用する場合は、TDの耐応力緩和性が特に重要であるため、長手方向がTDである試験片を用いた応力緩和率によって応力緩和性を評価するのが好ましい。応力緩和性の評価方法として、200℃で1000時間保持した場合に、応力緩和率が5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのがさらに好ましい。
【0063】
[製造方法]
上述したような銅合金板材は、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態によって製造することができる。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態は、上述した組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程と、この溶解・鋳造工程の後に、950℃〜700℃で最初の圧延パスを行い、700℃未満〜500℃で圧延率30%以上の圧延を行う熱間圧延工程と、この熱間圧延工程の後に、圧延率85%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、この第1の冷間圧延工程の後に、750〜1000℃で5秒〜5分間保持する溶体化処理を行う溶体化処理工程と、この溶体化処理工程の後に、圧縮率0〜50%で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、この第2の冷間圧延工程の後に、300〜550℃で時効処理を行う時効処理工程と、この時効処理工程の後に、圧延率0〜30%の仕上げ冷間圧延を行う仕上げ冷間圧延工程と、この仕上げ冷間圧延工程の後に、必要に応じて150〜450℃で低温焼鈍を行う低温焼鈍工程とを備えている。以下、これらの工程について詳細に説明する。なお、熱間圧延後には、必要に応じて面削、酸洗などを行い、各熱処理後には、必要に応じて酸洗、研磨、脱脂を行ってもよい。
【0064】
(溶解・鋳造工程)
銅合金の原料を溶解した後、連続鋳造や半連続鋳造などにより鋳片を製造する。なお、Tiの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気中または真空溶解炉で原料を溶解するのがよい。また、鋳造後には、必要に応じて均熱処理(または熱間鍛造)を行ってもよい。
【0065】
(熱間圧延工程)
通常、Cu−Ti系銅合金の熱間圧延は、圧延途中で析出物が生成しないようにするため、700℃以上、好ましくは750℃以上の高温域で行い、この圧延終了後に急冷する。しかし、このような一般的な熱間圧延条件では、本発明による銅合金板材のように均一な結晶粒組織および特異な集合組織を有する銅合金板材を製造することは困難である。すなわち、このような一般的な熱間圧延条件では、後工程の条件を広範囲に変化させても、変動係数CV<0.45の均一な結晶粒を有し、{420}を主方位方向に有する銅合金板材を製造することは困難である。そのため、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、950℃〜700℃の温度域で最初の圧延パスを行い、700℃未満〜500℃の温度域で圧延率30%以上の圧延を行う。
【0066】
鋳片を熱間圧延する際に、再結晶が生じ易い700℃以上の高温域で最初の圧延パスを行うことによって、鋳造組織を破壊し、成分と組織の均一化を図ることができる。しかし、950℃を超えると、合金成分の偏析箇所など、融点が低下している部分で割れが生じない温度域にする必要がある。したがって、熱間圧延工程中における完全な再結晶が確実に生じるようにするためには、950℃〜700℃の温度域で圧延率60%以上の圧延を行うのが好ましく、これによって組織の均一化が一層促進される。なお、1パスで圧延率60%を得るためには大きな圧延荷重が必要であるので、多パスに分けてトータル60%以上の圧延率を確保してもよい。また、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、熱間圧延工程において、圧延歪が生じ易い700℃未満〜500℃の温度域で30%以上の圧延率を確保する。このようにして、一部の析出物を生成させ、後工程の冷間圧延と溶体化処理の組み合わせによって、均一な粒径を有する結晶粒組織および{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が形成され易くなる。なお、この際も700℃未満〜500℃の温度域で複数パスの圧延を行うことができる。また、この温度域で40%以上の圧延率にするのが好ましい。熱間圧延の最終パス温度は、600℃以下にするのが好ましい。熱間圧延におけるトータルの圧延率は80〜97%程度にすればよい。
【0067】
なお、ある温度域における圧延率ε(%)は、その温度域で連続して行われる圧延パスのうち、最初の圧延パスの前の鋳片の板厚をt(mm)、最後の圧延パス終了後の鋳片の板厚をt(mm)とすると、ε=(t−t)×100/tによって算出される。例えば、最初の圧延パスに供する鋳片の板厚が120mmであり、700℃以上の温度域で圧延を行って、700℃以上の温度で行われた最後の圧延パス終了時に板厚が30mmになり、引き続いて圧延を継続して、熱間圧延の最終パスを700℃未満〜400℃の範囲で行い、最終的に板厚10mmの熱間圧延材を得たとする。この場合、700℃以上の温度域で行われた圧延の圧延率は、(120−30)×100/120=75(%)、700℃未満〜400℃の温度域における圧延率は、(30−10)×100/30=66.7(%)になり、熱間圧延におけるトータルの圧延率は、(120−10)×100/120=91.7(%)になる。
【0068】
(第1の冷間圧延工程)
溶体化処理前に行う冷間圧延工程では、圧延率を85%以上にする必要があり、90%以上にするのが好ましい。このような高い圧延率で加工された材料に対し、次工程で溶体化処理を行うことにより、高い圧延率で導入される歪が再結晶の核として機能し、均一な結晶粒径を有する結晶粒組織を得ることができるとともに、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織を形成することができる。特に、再結晶集合組織は、再結晶前の冷間圧延率に大きく依存する。具体的には、{420}を主方位成分とする結晶配向は、冷間圧延率が60%以下では殆ど生成せず、冷間圧延率が約60〜80%の領域では冷間圧延率の増加に伴って漸増し、冷間圧延率が約85%を超えると急激な増加に転じる。{420}方位が十分に優勢な結晶配向を得るためには、85%以上の冷間圧延率にする必要があり、90%以上にするのが好ましい。なお、冷間圧延率の上限は、ミルパワーなどにより必然的に制約を受けるので、特に規定する必要はないが、エッジ割れなどを防止する観点から、99%程度以下で良好な結果を得ることができる。
【0069】
なお、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、通常の銅合金板材の製造方法で行われているように、熱間圧延後で溶体化処理前に中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで1回ないし複数回の冷間圧延が行われると、溶体化処理直前の冷間圧延の圧延率が低くなって、溶体化処理によって形成される結晶粒組織の粒径の変動係数が大きくなってしまい、また、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が著しく弱化してしまうので、そのような冷間圧延を行わない。
【0070】
(溶体化処理工程)
通常の銅合金板材の製造方法では、溶体化処理は、溶質元素のマトリックス中への再固溶と再結晶化のために行われるが、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、さらに{420}を主方位成分とする再結晶集合組織を形成するためにも行われる。この溶体化処理は、銅合金組成の固溶線(平衡状態図から確定される固溶線)より30℃以上高い温度で行うことが必要であり、温度が低過ぎるとβ相の固溶も不十分になる。一方、温度が高過ぎると結晶粒が粗大化してしまう。いずれの場合も、最終的に曲げ加工性の優れた高強度の銅合金板材を得ることが困難になる。そのため、溶体化処理の温度が固溶線より50〜100℃高い温度範囲であるのが好ましい。
【0071】
また、この溶体化処理は、再結晶粒の平均粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が5〜25μmになるように、好ましくは8〜20μmになるように、750〜1000℃の温度域の加熱炉で保持時間を設定して熱処理を行うのが好ましい。再結晶粒の粒径が微細になり過ぎると、{420}を主方位成分とする再結晶集合組織が弱くなり、また、耐応力緩和性を向上させる上でも不利になる。一方、再結晶粒の粒径が粗大になり過ぎると、曲げ加工部の表面が肌荒に(粗く)なり易い。なお、再結晶粒の粒径は、溶体化処理前の冷間圧延率や化学組成によって変動するが、それぞれの合金について予め実験により溶体化処理ヒートパターンと平均結晶粒径との関係を求めておくことにより、750〜1000℃の温度域の保持時間を設定することができる。具体的には、本発明による銅合金板材の化学組成では、750〜1000℃の温度で5秒〜5分間保持する加熱条件において適正な条件を設定することができる。
【0072】
(第2の冷間圧延工程)
続いて、0〜50%の圧延率で冷間圧延を行う。この段階における冷間圧延は、その後の時効処理中の析出を促進する効果があり、これによって導電率や硬さなどの必要な特性を引き出すための時効温度を低下させ、あるいは、時効時間を短くすることができる。
【0073】
この冷間圧延によって{220}を主方位成分とする集合組織が発達していくが、50%以下の冷間圧延率の範囲では、{420}面が板面に平行な結晶粒も未だ十分に残存している。この段階の冷間圧延は、圧延率50%以下で行う必要があり、圧延率0〜40%で行うのが好ましい。圧延率が高過ぎると、{420}/I{420}>1.0を満たすような理想的な結晶配向が得られ難くなる。なお、圧延率が0%である場合は、溶体化処理後に第2の冷間圧延を行わず、直接時効処理を行うことを意味する。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、生産性を向上させるために、この第2の冷間圧延工程を省略してもよい。
【0074】
(時効処理工程)
時効処理工程では、銅合金板材の導電性と強度を向上させるために有効な条件の中で、あまり温度を上げ過ぎないようにする。時効処理温度が高くなり過ぎると、溶体化処理によって発達させた{420}を優先方位とする結晶配向が弱められ、結果的に十分な曲げ加工性の改善効果が得られない場合がある。具体的には材温が300〜550℃になる温度で行うのが好ましく、350〜500℃になる温度がさらに好ましい。時効処理時間は、60〜600分間程度の範囲で設定することができる。時効処理中に表面酸化膜を極力抑制するために、時効処理を水素、窒素またはアルゴン雰囲気中で行ってもよい。
【0075】
また、Cu−Ti系銅合金では、安定相(β相)の生成を極力回避するのが好ましい。そのため、Cu−Ti系銅合金の組成で最大硬度が得られる時効温度をT(℃)、その最大硬さをH(HV)とすると、時効処理工程において時効温度を300〜550℃の範囲内で且つT±10℃の温度とし、時効時間を時効後の硬さが0.90H〜0.95Hの範囲になる時間にするのが好ましい。最大硬度が得られる時効温度T(℃)、およびその最大硬さH(HV)は、予備実験により把握しておくことができる。本発明による銅合金板材の組成範囲であれば、通常、24時間以内の時効時間で最大硬度に到達する。
【0076】
なお、強度レベルの要求があまり高くない場合(例えば、0.2%耐力が900MPa程度)には、以下の仕上げ冷間圧延工程と低温焼鈍工程を省略することができる。
【0077】
(仕上げ冷間圧延工程)
仕上げ冷間圧延は、強度レベル(特に0.2%耐力)を向上させる効果が極めて高い。仕上げ冷間圧延の圧延率が低過ぎると、十分な強度が得られない可能性があるが、圧延率の増大に伴って、{220}を主方位成分とする圧延集合組織が発達していく。一方、仕上げ冷間圧延の圧延率が高過ぎると、{220}方位の圧延集合組織が相対的に優勢になり過ぎて、強度とBadWayの曲げ加工性を高レベルで両立した結晶配向を実現することができない。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、仕上げ冷間圧延の圧延率を0〜30%にするのが好ましく、10〜20%にするのがさらに好ましい。この仕上げ冷間圧延によって、{420}/I{420}>1.0を満たす結晶配向を維持することができる。なお、圧延率が0%である場合は、この冷間圧延が行われないことを意味する。
【0078】
最終的な板厚は、0.05〜1.0mm程度にするのが好ましく、0.08〜0.5mmにするのがさらに好ましい。
【0079】
(低温焼鈍工程)
仕上げ冷間圧延後には、銅合金板材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和性の向上のために、低温焼鈍を行ってもよい。特に、Cu−Ti系銅合金の場合、適正な温度範囲内における低温焼鈍により、低温焼鈍硬化の効果がある。この低温焼鈍の加熱温度は、材温が150〜450℃になるように設定するのが好ましい。この低温焼鈍により、強度、導電率、曲げ加工性および耐応力緩和性を同時に向上させることができる。この加熱温度が高過ぎると、短時間で軟化し、バッチ式でも連続式でも特性のバラツキが生じ易くなる。一方、加熱温度が低過ぎると、上記の特性の改善効果が十分に得られない。上記の温度における保持時間は、5秒以上にするのが好ましく、通常1時間以内で良好な結果が得られる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明による銅合金板材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0081】
[実施例1〜12]
3.18質量%のTiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例1)、4.08質量%のTiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例2)、3.58質量%のTiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例3)、4.64質量%のTiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例4)、2.86質量%のTiと0.12質量%のCoと0.22質量%のNiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例5)、2.32質量%のTiと0.14質量%のFeと0.11質量%のSnと0.36質量%のZnを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例6)、1.93質量%のTiと0.54質量%のNiと0.08質量%のSnと0.10質量%のMgと0.11質量%のZrを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例7)、1.55質量%のTiと0.12質量%のNiと0.21質量%のCrと0.03質量%のBを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例8)、3.20質量%のTiと0.14質量%のAlと0.03質量%のPを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例9)、3.06質量%のTiと0.12質量%のVと0.06質量%のMnを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例10)、3.14質量%のTiと0.12質量%のAgと0.06質量%のBeを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例11)、3.35質量%のTiと0.24質量%のミッシュメタルを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例12)、をそれぞれ溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造して、それぞれ厚さ60mmの鋳片を得た。
【0082】
それぞれの鋳片を950℃に加熱した後に抽出し、熱間圧延を開始した。この熱間圧延では、750℃以上の温度域における圧延率が60%以上になり且つ700℃未満の温度域でも圧延が行われるようにパススケジュールを設定した。なお、700℃未満〜500℃における熱間圧延率をそれぞれ42%(実施例1)、35%(実施例2)、32%(実施例3)、30%(実施例4)、50%(実施例5)、57%(実施例6)、50%(実施例7)、55%(実施例8)、45%(実施例9)、40%(実施例10)、40%(実施例11)、40%(実施例12)とし、熱間圧延の最終パス温度は600℃〜500℃の間とした。また、鋳片からのトータルの熱間圧延率は約95%であった。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。
【0083】
次いで、それぞれ圧延率98%(実施例1)、92%(実施例2)、95%(実施例3)、90%(実施例4)、90%(実施例5)、96%(実施例6)、98%(実施例7)、96%(実施例8)、96%(実施例9)、95%(実施例10)、86%(実施例11)、92%(実施例12)で冷間圧延を行った後、溶体化処理を行った。この溶体化処理では、各実施例の溶体化処理後の平均結晶粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が5〜25μmになるように、各々の合金組成に応じて750〜1000℃の温度域で各々の合金組成の固溶線より30℃以上高い温度に設定し、保持時間を5秒〜5分間の範囲で調整して熱処理を行った。具体的には、900℃で15秒間(実施例1)、950℃で15秒間(実施例2)、900℃で25秒間(実施例3)、1000℃で15秒間(実施例4)、850℃で20秒間(実施例5)、850℃で15秒間(実施例6)、830℃で15秒間(実施例7)、850℃で8秒間(実施例8)、900℃で18秒間(実施例9)、900℃で20秒間(実施例10)、900℃で25秒間(実施例11)、900℃で20秒間(実施例12)の熱処理を行った。
【0084】
次いで、溶体化処理後の板材に対して、それぞれ圧延率15%(実施例1)、20%(実施例2)、0%(実施例3)、25%(実施例4)、15%(実施例5)、45%(実施例6)、20%(実施例7)、20%(実施例8)、15%(実施例9)、0%(実施例10)、0%(実施例11)、0%(実施例12)で冷間圧延を行った
【0085】
このようにして得られた板材について、予備実験として300〜550℃の温度範囲で最大24時間までの時効処理実験を行って、合金組成に応じて最大硬さになる時効処理条件(時効温度T(℃)、時効時間t(分)、最大硬さH(HV))を把握した。そして、時効温度をT±10℃の範囲内の温度に設定するとともに、時効時間をtより短い時間であり且つ時効後の硬さが0.90H〜0.95Hの範囲になる時間に設定した。
【0086】
次に、時効処理後の板材に対して、それぞれ圧延率10%(実施例1)、0%(実施例2)、12%(実施例3)、0%(実施例4)、15%(実施例5)、0%(実施例6)、25%(実施例7)、30%(実施例8)、15%(実施例9)、25%(実施例10)、10%(実施例11)、15%(実施例12)で仕上げ冷間圧延を行った後、450℃の焼鈍炉内で1分間保持する低温焼鈍を行った。
【0087】
このようにして実施例1〜12の銅合金板材を得た。なお、必要に応じて途中で面削を行い、銅合金板材の板厚を0.15mmに揃えた。
【0088】
次に、これらの実施例で得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率を以下のように調べた。
【0089】
結晶粒組織の平均結晶粒径は、銅合金板材の板面(圧延面)を研磨した後にエッチングし、その面の光学顕微鏡写真上で2辺が圧延方向(LD)に平行で他の2辺が圧延方向に垂直な方向(TD)に平行な100μm×100μmの正方形の10個の視野を無作為に選び、それぞれの視野において、JIS H0501の切断法によって結晶粒径を測定し、各々の視野における結晶粒径の平均値d、d、…、d10を算出し、これらの結晶粒径の平均値d、d、…、d10の平均値dAVE=(d、d、…、d10)/10として算出した。なお、結晶粒は、溶体化処理後の圧延によって圧延方向に延びるが、溶体化処理後に圧延した後の結晶粒の圧延方向に垂直な方向(TD)の長さは、溶体化処理後の結晶粒のTDの長さとほぼ同じであるため、結晶粒径の測定は、圧延方向に垂直な方向(TD)の結晶粒の長さを測定することによって行った。その結果、平均結晶粒径は、それぞれ8μm(実施例1)、12μm(実施例2)、16μm(実施例3)、6μm(実施例4)、18μm(実施例5)、15μm(実施例6)、10μm(実施例7)、14μm(実施例8)、11μm(実施例9)、12μm(実施例10)、16μm(実施例11)、12μm(実施例12)であった。
【0090】
また、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は、各々の視野における結晶粒径の平均値d、d、…、d10の最大値を最大結晶粒径dmax、最小値を最小結晶粒径dminとし、(dmax−dmin)/dAVEとして算出した。その結果、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は、それぞれ0.06(実施例1)、0.08(実施例2)、0.09(実施例3)、0.12(実施例4)、0.08(実施例5)、0.05(実施例6)、0.07(実施例7)、0.10(実施例8)、0.14(実施例9)、0.11(実施例10)、0.09(実施例11)、0.06(実施例12)であった。
【0091】
X線回折強度(X線回折積分強度)の測定は、銅合金板材の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げした試料を用意し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧40kV、管電流30mAの条件で、試料の研磨仕上げ面について{420}面のX線回折強度I{420}と{220}面のX線回折強度I{220}を測定することによって行った。一方、同じX線回折装置を用いて、同じ測定条件で、純銅標準粉末の{420}面のX線回折強度I{420}と{220}面のX線回折強度I{220}も測定した。これらの測定値を用いて、X線回折強度比I{420}/I{420}と、X線回折強度比I{220}/I{220}を求めた。その結果、I{420}/I{420}とI{220}/I{220}は、それぞれ1.3と2.8(実施例1)、1.6と2.6(実施例2)、1.5と2.7(実施例3)、2.0と2.6(実施例4)、1.4と3.2(実施例5)、2.0と2.6(実施例6)、1.5と2.8(実施例7)、1.4と2.6(実施例8)、1.2と3.2(実施例9)、1.1と3.6(実施例10)、1.6と2.5(実施例11)、1.4と2.7(実施例12)であった。
【0092】
銅合金板材の導電率は、JIS H0505の導電率測定方法に従って測定した。その結果、導電率は、それぞれ13.2%IACS(実施例1)、12.2%IACS(実施例2)、12.4%IACS(実施例3)、13.0%IACS(実施例4)、13.6%IACS(実施例5)、14.5%IACS(実施例6)、15.1%IACS(実施例7)、16.2%IACS(実施例8)、12.4%IACS(実施例9)、12.6%IACS(実施例10)、13.1%IACS(実施例11)、12.8%IACS(実施例12)であった。
【0093】
銅合金板材の機械的特性としての引張強さとして、銅合金板材のLD(圧延方向)の引張試験用の試験片(JIS Z2201の5号試験片)をそれぞれ3個ずつ採取し、それぞれの試験片についてJIS Z2241に準拠した引張試験を行い、平均値によってLDの引張強さと0.2%耐力を求めた。その結果、LDの引張強さと0.2%耐力は、それぞれ1005MPaと935MPa(実施例1)、1016MPaと915MPa(実施例2)、976MPaと905MPa(実施例3)、1025MPaと946MPa(実施例4)、980MPaと912MPa(実施例5)、986MPaと888MPa(実施例6)、968MPaと892MPa(実施例7)、976MPaと965MPa(実施例8)、1025MPaと955MPa(実施例9)、1036MPaと970MPa(実施例10)、1025MPaと955MPa(実施例11)、1034MPaと967MPa(実施例12)であった。
【0094】
銅合金板材の応力緩和性を評価するために、銅合金板材から長手方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の曲げ試験片(幅10mm)を採取し、試験片の長手方向中央部の表面応力が0.2%耐力の80%の大きさになるようにアーチ曲げした状態で固定した。なお、表面応力は、表面応力(MPa)=6Etδ/L(但し、Eは弾性係数(MPa)、tは試料の厚さ(mm)、δは試料のたわみ高さ(mm))により定められる。この状態の試験片を大気中において200℃で1000時間保持した後の曲げ癖から、応力緩和率(%)=(L−L)×100/(L−L)(但し、Lは治具の長さ、すなわち、試験中に固定されている試料端間の水平距離(mm)、Lは試験開始時の試料長さ(mm)、Lは試験後の試料端間の水平距離(mm))を用いて、応力緩和率を算出した。その結果、応力緩和率は、それぞれ2.4%(実施例1)、2.2%(実施例2)、2.8%(実施例3)、3.1%(実施例4)、2.2%(実施例5)、3.4%(実施例6)、3.3%(実施例7)、3.4%(実施例8)、3.6%(実施例9)、3.3%(実施例10)、2.2%(実施例11)、2.3%(実施例12)であった。なお、応力緩和率が5%以下であれば、車載用コネクタとして使用しても高い耐久性を有すると評価され、合格と判定した。
【0095】
銅合金板材の通常の曲げ加工性を評価するために、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)の曲げ試験片と長手方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の曲げ試験片(いずれも幅10mm)をそれぞれ3個ずつ採取し、それぞれの試験片についてJIS H3110に準拠した90°W曲げ試験を行った。この試験後の試験片について、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れが生じない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって、LDとTDのそれぞれのR/t値を求めた。LDおよびTDのそれぞれ3個の試験片のうち、それぞれ最も悪い結果の試験片の結果を採用してR/t値とした。その結果、LDとTDのR/tは、それぞれ0.0と0.5(実施例1、4、11)、0.0と0.0(実施例2、3、6、7、8)、0.0と0.3(実施例5)、0.0と0.7(実施例9、12)、0.0と0.8(実施例10)であった。
【0096】
銅合金板材のノッチング後の曲げ加工性を評価するために、銅合金板材から長手方向がLDの短冊形試料(幅10mm)を採取し、図2および図3に示すように略台形の断面形状の凸部が上面に形成されたノッチ形成治具(凸部先端のフラット面の幅0.1mm、両側面角度45°)10を用いて、図3に示すように矢印A方向に20kNの荷重を付与することにより、試料12の全幅にわたって延びるノッチを形成した。なお、ノッチの方向(すなわち溝に対して平行な方向)は、試料の長手方向(矢印B方向)に対して垂直な方向であった。このようにして用意した3個のノッチ付き曲げ試験片12’のそれぞれのノッチ12’aの深さを実測したところ、図4に模式的に示すノッチ12’aの深さδは、板厚tの1/4〜1/6程度であった。これらの3個のノッチ付き曲げ試験片12’について、それぞれJIS H3110に準拠した90°W曲げ試験を行った。この90°W曲げ試験は、下型の中央突起部先端のRを0mmとした治具を用いて、ノッチ付き曲げ試験片12’を、ノッチ形成面が下向きになり、下型の中央突起部先端がノッチ部分に合致するようにセットして行った。この試験後の3個の試験片について、それぞれ曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって100倍の倍率で観察して、割れの有無を判断することによって、最も悪い試験片の結果を採用して、銅合金板材のノッチング後の曲げ加工性を評価した。その結果、いずれの実施例でも、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められず、ノッチング後の曲げ加工性は良好であった。
【0097】
[比較例1]
実施例1と同じ組成の銅合金を使用し、700℃未満〜500℃における熱間圧延率を20%とし、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、800℃で150秒間の熱処理を行った。
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0098】
その結果、平均結晶粒径は5μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.42であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.6と4.4であった。また、導電率は13.3%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ1001MPaと928MPaであった。さらに、応力緩和率は4.2%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ2.0と3.0であり、また、ノッチング後の曲げ加工部で破断した。
【0099】
[比較例2]
実施例2と同じ組成の銅合金を使用し、700℃未満〜500℃における熱間圧延率を25%とし、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行った以外は、実施例2と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、950℃で15秒間の熱処理を行った。
【0100】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0101】
その結果、平均結晶粒径は12μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.36であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.4と3.2であった。また、導電率は12.6%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ996MPaと906MPaであった。さらに、応力緩和率は3.9%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ1.0と2.5であり、また、ノッチング後の曲げ加工部で破断した。
【0102】
[比較例3]
実施例3と同じ組成の銅合金を使用し、700℃未満〜500℃における熱間圧延率を0%、すなわち、熱間圧延終了温度を700℃以上とし、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行った以外は、実施例3と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、850℃で120秒間の熱処理を行った。
【0103】
それぞれの比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0104】
その結果、平均結晶粒径は18μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.35であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.3と4.1であった。また、導電率は12.7%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ963MPaと898MPaであった。さらに、応力緩和率は4.2%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ1.5と2.5であり、また、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められた。
【0105】
[比較例4]
実施例4と同じ組成の銅合金を使用し、700℃未満〜500℃における熱間圧延率をそれぞれ0%、すなわち、熱間圧延終了温度を700℃以上とし、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行った以外は、実施例4と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、950℃で15秒間の熱処理を行った。
【0106】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0107】
その結果、平均結晶粒径は5μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.33であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ00.7と3.8であった。また、導電率は13.1%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ1011MPaと952MPaであった。さらに、応力緩和率は5.4%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ2.0と3.5であり、また、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められた。
【0108】
[比較例5]
実施例5と同じ組成の銅合金を使用し、700℃未満〜500℃における熱間圧延率を15%とし、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行い、時効後の最大硬さに対する時効後の硬さが1.00になるように時効時間を設定した以外は、実施例5と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、850℃で15秒間の熱処理を行った。
【0109】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0110】
その結果、平均結晶粒径は3μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.28であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.3と4.3であった。また、導電率は14.1%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ986MPaと908MPaであった。さらに、応力緩和率は7.6%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ2.0と5.0であり、また、ノッチング後の曲げ加工部で破断した。
【0111】
[比較例6]
溶製した銅合金を1.08質量%のTiと0.17質量%のMgと0.20質量%のZrを含み、残部がCuからなる銅合金とし、700℃未満〜500℃における熱間圧延率を45%、溶体化処理前の冷間圧延率を96%、溶体化処理後の冷間圧延率を50%、仕上げ冷間圧延率を20%とした以外は、実施例1〜12と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、750℃で20秒間の熱処理を行った。
【0112】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0113】
その結果、平均結晶粒径は8μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.35であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.3と4.3であった。また、導電率は22.5%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ842MPaと768MPaであった。さらに、応力緩和率は6.4%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ1.0と2.5であり、また、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められた。
【0114】
[比較例7]
溶製した銅合金を5.22質量%のTiと0.15質量%のNiと0.15質量%のZnを含み、残部がCuからなる銅合金とした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例では、Ti含有量が多過ぎたので、適正な溶体化条件を取れず、製造途中に割れが生じ、評価できる板材を製造することができなかった。
【0115】
[比較例8]
実施例1と同じ組成の銅合金を使用し、溶体化処理時間を10分間と長くした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、溶体化処理温度を900℃とした。
【0116】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0117】
その結果、平均結晶粒径は62μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.06であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ1.8と2.4であった。また、導電率は12.7%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力は、それぞれ928MPaと856MPaであった。さらに、応力緩和率は2.0%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ2.0と2.5であり、また、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められた。
【0118】
[比較例9]
実施例1と同じ組成の銅合金を使用し、溶体化処理温度を700℃と低くして溶体化処理時間を10分間と長くした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。
【0119】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0120】
その結果、平均結晶粒径は3μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.48であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.2と6.1であった。また、導電率は15.6%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ1026MPaと945MPaであった。さらに、応力緩和率は11.6%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDのR/tは3.0であり、TDのR/tは5.0でも割れた。また、ノッチング後の曲げ加工部で破断した。
【0121】
[比較例10]
実施例1と同じ組成の銅合金を使用し、仕上げ冷間圧延率を55%とした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。なお、溶体化処理では、900℃で15秒間の熱処理を行った。
【0122】
得られた銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0123】
その結果、平均結晶粒径は8μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.06であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.2と5.6であった。また、導電率は12.4%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ1114MPaと1056MPaであった。さらに、応力緩和率は6.4%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはいずれも5.0でも割れた。また、ノッチング後の曲げ加工部で破断した。
【0124】
[比較例11]
市販の代表的なCu−Ti系銅合金(C199−1/2H、板厚0.15mm)の板材を用意し、これらの銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0125】
その結果、平均結晶粒径は7μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.25であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.5と3.3であった。また、導電率は13.1%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ854MPaと766MPaであった。さらに、応力緩和率は5.8%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ1.5と2.0であり、また、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められた。
【0126】
[比較例12]
市販の代表的なCu−Ti系銅合金(C199−EH、板厚0.15mm)の板材を用意し、これらの銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織の平均結晶粒径、X線回折強度、導電率、引張強さ、0.2%耐力、通常の曲げ加工性、ノッチング後の曲げ加工性、応力緩和率について、実施例1〜12と同様の方法により調べた。
【0127】
その結果、平均結晶粒径は7μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径は0.28であり、X線回折強度比I{420}/I{420}とI{220}/I{220}はそれぞれ0.3と3.9であった。また、導電率は12.4%IACSであり、LDの引張強さと0.2%耐力はそれぞれ962MPaと902MPaであった。さらに、応力緩和率は6.2%であり、通常の曲げ加工性の評価としてLDとTDのR/tはそれぞれ2.0と4.0であり、また、ノッチング後の曲げ加工部で破断した。
【0128】
これらの実施例および比較例の組成および製造条件をそれぞれ表1および表2に示し、組織および特性についての結果をそれぞれ表3および表4に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
なお、表4の銅合金板材の通常の曲げ加工性の評価の欄では、R/t=5.0でも割れた場合に、それ以上の評価を行わないで、「破」と表示した。また、表4の銅合金板材のノッチング後の曲げ加工性を評価の欄では、ノッチング後の曲げ加工部の表面および断面に割れが認められないものを「〇」、割れが認められたものを「×」、曲げ加工部で破断したものを「破」と表示し、それぞれ3個の試験片のうち、最も悪い試験片の結果を採用して、「○」、「×」、「破」の評価を行い、○評価のものを合格と判定した。
【0134】
なお、実施例1において、溶体化処理前、850℃で10秒間溶体化処理を行った後、850℃で30秒間溶体化処理を行った後、850℃で60秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織の光学顕微鏡写真をそれぞれ図5A〜図5Dに示す。また、実施例1と同じ組成の銅合金を使用して、700℃未満〜500℃における熱間圧延率を実施例1より低い20%とし、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行った以外は、実施例1と同様の処理を行った比較例1において、溶体化処理前、850℃で10秒間溶体化処理を行った後、850℃で30秒間溶体化処理を行った後、850℃で60秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織の光学顕微鏡写真をそれぞれ図6A〜図6Dに示す。図5A〜図5Dに示すように、実施例1では、溶体化処理前の強圧延により、圧延後の結晶粒間の違い(結晶粒界)が認められず、溶体化処理における保持時間の変化によって平均結晶粒径が変化しながら均一な再結晶粒組織が得られた。一方、比較例1では、溶体化処理前の冷間圧延工程中に850℃×120秒間の中間焼鈍(中間溶体化処理)を挟んで複数回の冷間圧延を行ったので、溶体化処理直前の冷間圧延の圧延率が低くなっており、溶体化処理中に圧延された結晶粒毎に再結晶粒の形成と生成の時間的なずれがあり、保持時間を調整しても均一な再結晶粒組織が得られなかった。
【0135】
また、表3および表4からわかるように、実施例1〜12の銅合金板材はいずれも、平均結晶粒径が5〜25μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が0.20以下、I{420}/I{420}>1.0およびI{220}/I{220}≦4.0を満たす結晶配向を有し、0.2%耐力が850MPa以上であり、LDおよびTDのいずれもR/t値が1.0以下という優れた曲げ加工性を有する。また、実用的に重要なLDのノッチング後の曲げ加工性は、90°W曲げ試験においてR/t=0の厳しい曲げを行ったにもかかわらず、割れが生じなかった。さらに、銅合金板材を車載用コネクタなどの使用する場合に重要になるTDの応力緩和率が5%以下という優れた耐応力緩和性も有する。
【0136】
一方、比較例1〜5では、実施例1〜5と同じ組成の銅合金を使用しているが、いずれも(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が0.28以上と高く、{420}結晶面のX線回折強度が弱く、また、{220}結晶面のX線回折強度が高くなっており、強度と曲げ加工性の間や、曲げ加工性と耐応力緩和性の間にトレードオフの関係が見られた。特に、ノッチング後の曲げ加工が不可能であった。
【0137】
また、比較例6では、使用した銅合金中のTi含有量が低過ぎたことにより、析出物の生成が少なかったので、最大硬さになる条件で時効処理したにもかかわらず強度レベルが低くなっており、また、溶体化処理前の冷間圧延率を95%以上に高くしたにもかかわらず{420}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、強度レベルが低かったにもかかわらず、ノッチング後の曲げ加工性が改善されなかった。また、比較例7では、Ti含有量が高過ぎたので、適正な溶体化条件を取れず、製造途中に割れが生じ、評価できる板材を作れなかった。
【0138】
また、比較例8では、溶体化処理時間が長過ぎたため、結晶粒が粗大化し、良好な曲げ加工性が得られなかった。また、比較例9では、溶体化処理温度が700℃と低過ぎたため、再結晶自体が十分進行せずに混粒組織となり、引張強さ、曲げ加工性、耐応力緩和性の全てが悪くなった。
【0139】
比較例10では、仕上げ圧延率が高過ぎて、{420}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、逆に{220}を主方位成分とする結晶配向が強くなり過ぎて、強度は高いものの、BadWayの曲げ加工性が著しく悪くなった。
【0140】
比較例11および12では、いずれも(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が高く、{420}結晶面のX線回折強度が弱く、{220}結晶面のX線回折強度が高く、ほぼ同様の組成を有する実施例1の銅合金板材と比べて、強度、曲げ加工性、耐応力緩和性がいずれも劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】面心立方晶のシュミット因子の分布を表した標準逆極点図である。
【図2】ノッチ形成治具の断面形状を模式的に示す図である。
【図3】ノッチングの方法を説明する図である。
【図4】ノッチ付き曲げ試験片のノッチ形成部付近の断面形状を模式的に示す図である。
【図5A】実施例1において溶体化処理前の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図5B】実施例1において850℃で10秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図5C】実施例1において850℃で30秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図5D】実施例1において850℃で60秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図6A】比較例1において溶体化処理前の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図6B】比較例1において850℃で10秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図6C】比較例1において850℃で30秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図6D】比較例1において850℃で60秒間溶体化処理を行った後の銅合金板材の表面の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0142】
10 ノッチ形成治具
12 試料
12’ ノッチ付き曲げ試験片
12’a ノッチ
100 コネクタ端子
110 パイロット部
120 箱部
122 圧着部
124 箱曲げ部
126 バネ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.2〜5.0質量%のTiを含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有し、板面上で無作為に選んだ同一の形状および大きさの複数の領域のそれぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最大値を最大結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値のうちの最小値を最小結晶粒径、それぞれの領域における結晶粒径の平均値の平均値を平均結晶粒径とすると、平均結晶粒径が5〜25μm、(最大結晶粒径−最小結晶粒径)/平均結晶粒径が0.20以下であり、銅合金板材の板面における{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とし、純銅標準粉末の{420}結晶面のX線回折強度をI{420}とすると、I{420}/I{420}>1.0を満たす結晶配向を有することを特徴とする、銅合金板材。
【請求項2】
銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とし、純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度をI{220}とすると、I{220}/I{220}≦4.0を満たす結晶配向を有することを特徴とする、請求項1に記載の銅合金板材。
【請求項3】
前記銅合金板材が、1.5質量%以下のNi、1.0質量%以下のCoおよび0.5質量%以下のFeからなる群から選ばれる1種以上の元素をさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の銅合金板材。
【請求項4】
前記銅合金板材が、1.2質量%以下のSn、2.0質量%以下のZn、1.0質量%以下のMg、1.0質量%以下のZr、1.0質量%以下のAl、1.0質量%以下のSi、0.1質量%以下のP、0.05質量%以下のB、1.0質量%以下のCr、1.0質量%以下のMn、1.0質量%以下のV、1.0質量%以下のAg、1.0質量%以下のBeおよび1.0質量%以下のミッシュメタルからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銅合金板材。
【請求項5】
前記銅合金板材の0.2%耐力が850MPa以上であり、前記銅合金板材から長手方向が圧延方向LDになるように切り出した試験片を曲げ軸を圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向TDにして90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDになるように切り出した試験片を曲げ軸をLDにして90°W曲げ試験を行った場合に、LDとTDのいずれも90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが1.0以下であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の銅合金板材。
【請求項6】
1.2〜5.0質量%のTiを含み、必要に応じて1.5質量%以下のNi、1.0質量%以下のCoおよび0.5質量%以下のFeからなる群から選ばれる1種以上の元素を含み、さらに必要に応じて1.2質量%以下のSn、2.0質量%以下のZn、1.0質量%以下のMg、1.0質量%以下のZr、1.0質量%以下のAl、1.0質量%以下のSi、0.1質量%以下のP、0.05質量%以下のB、1.0質量%以下のCr、1.0質量%以下のMn、1.0質量%以下のV、1.0質量%以下のAg、1.0質量%以下のBeおよび1.0質量%以下のミッシュメタルからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造した後、950℃〜500℃における熱間圧延として950℃〜700℃で最初の圧延パスを行った後に700℃未満〜500℃で圧延率30%以上の熱間圧延を行い、次いで、圧延率85%以上で冷間圧延を行った後、750〜1000℃の温度域で5秒〜5分間保持する溶体化処理を行い、次いで、圧延率0〜50%で冷間圧延を行った後、300〜550℃で時効処理を行い、その後、圧延率0〜30%で仕上げ冷間圧延を順次行うことにより、銅合金板材を製造することを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
【請求項7】
前記950℃〜700℃の温度域における熱間圧延の圧延率を60%以上にすることを特徴とする、請求項6に記載の銅合金板材の製造方法。
【請求項8】
前記熱間圧延と溶体化処理の間の冷間圧延の圧延率90%以上にすることを特徴とする、請求項6または7に記載の銅合金板材の製造方法。
【請求項9】
前記溶体化処理を、750〜1000℃の温度域において前記組成を有する銅合金の固溶線より30℃以上高い温度で保持して熱処理することによって行い、この保持時間を、前記溶体化処理後の銅合金板材の平均結晶粒径が5〜25μmになるように調整することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
【請求項10】
前記銅合金の組成で最大硬度が得られる時効温度をT(℃)、その最大硬度をH(HV)とすると、前記時効処理の時効温度を300〜550℃においてT±10℃の温度に設定し、前記時効処理の時効時間を時効処理後の硬さが0.90H〜0.95Hの範囲になる時間に調整することを特徴とする、請求項6乃至9のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
【請求項11】
前記仕上げ冷間圧延後に150〜450℃で低温焼鈍を行うことを特徴とする、請求項6乃至10のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至5のいずれかに記載の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする、コネクタ端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公開番号】特開2010−126777(P2010−126777A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303688(P2008−303688)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】